(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047312
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240329BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652H
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/78 652C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152860
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドレインリークを抑制する炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置100において、炭化珪素基板10は、第1導電型を有するドリフト領域11と、ドリフト領域11上に設けられ第1導電型とは異なる第2導電型を有するボディ領域12と、ボディ領域12上に設けられ、第2導電型を有するコンタクト領域18と、を有する。さらに、第1主面1には、ゲートトレンチ5が設けられており、ドリフト領域11は、側面3に露出し、かつ、ボディ領域12に接する第1領域11Aと、第1領域11A及びボディ領域12に接する第2領域11Bと、を有する。第1領域11Aは、側面3と第2領域11Bとの間にあり、第2領域11Bにおける第1導電型の不純物の第2実効濃度は、第1領域11Aにおける第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低く、第1主面1に垂直な平面視で、コンタクト領域18と第2領域11Bとが重なる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、
第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、
前記ボディ領域上に設けられ、前記第2導電型を有するコンタクト領域と、
を有し、
前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されたゲートトレンチが設けられており、
前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続されたソース電極を有し、
前記ドリフト領域は、
前記側面に露出し、かつ前記ボディ領域に接する第1領域と、
前記第1領域および前記ボディ領域に接する第2領域と、
を有し、
前記第1領域は、前記側面と前記第2領域との間にあり、
前記第2領域における前記第1導電型の不純物の第2実効濃度は、前記第1領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低く、
前記第1主面に垂直な平面視で、前記コンタクト領域と前記第2領域とが重なる、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域を有する、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記ドリフト領域は、前記第1領域および前記第2領域と前記第2主面との間の第3領域を有する、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記炭化珪素基板は、前記第2領域と、前記ボディ領域または前記コンタクト領域とに接し、前記第2導電型を有する保護領域を有し、
前記第2領域は、前記第1領域と前記保護領域との間にあり、
前記保護領域における前記第2導電型の不純物の第4実効濃度は、前記コンタクト領域における第3実効濃度よりも低く、
前記第1主面に垂直な平面視で、前記コンタクト領域と前記保護領域とが重なる、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記炭化珪素基板は、
前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域と、
前記第2領域および前記ボディ領域に接し、前記第2導電型を有する保護領域と、
を有し、
前記ドリフト領域は、前記第1領域および前記第2領域と前記第2主面との間の第3領域を有し、
前記第3領域の一部は、前記電界緩和領域と前記保護領域との間にあり、
前記保護領域における前記第2導電型の不純物の第4実効濃度は、前記コンタクト領域における第3実効濃度よりも低く、
前記第1主面に垂直な平面視で、前記コンタクト領域と前記保護領域とが重なる、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ゲートトレンチおよび前記電界緩和領域は、第1仮想直線に沿って延び、
前記電界緩和領域は、
前記第1仮想直線に垂直な第2仮想直線に沿って第1寸法を有する第4領域と、
前記第1仮想直線に沿って前記第4領域につながり、前記第2仮想直線に沿って前記第1寸法よりも小さい第2寸法を有する第5領域と、
を有し、
前記第1主面に垂直な平面視で、前記第2仮想直線に沿って前記保護領域と前記第5領域とが並ぶ、請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
複数の前記コンタクト領域が、前記第1仮想直線に沿って断続的に配置され、
複数の前記第4領域および複数の前記第5領域が前記第1仮想直線に沿って交互に配置されている、請求項6に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記保護領域の下面は、前記電界緩和領域の上面よりも前記第2主面に近い、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記第1実効濃度は前記第2実効濃度の2倍以上である、請求項1、請求項2、請求項5、請求項6または請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、
第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、
前記ボディ領域上に設けられ、前記第2導電型を有するコンタクト領域と、
を有し、
前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されたゲートトレンチが設けられており、
前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続されたソース電極を有し、
前記炭化珪素基板は、前記コンタクト領域と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する保護領域を有し、
前記保護領域における前記第2導電型の不純物の第4実効濃度は、前記コンタクト領域における第3実効濃度よりも低い、炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記ドリフト領域は、
前記側面に露出し、かつ前記ボディ領域に接する第1領域と、
前記第1領域および前記保護領域と前記第2主面との間の第3領域と、
を有し、
前記第1領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度は、前記第3領域における前記第1導電型の不純物の第5実効濃度よりも高い、請求項10に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含む、請求項1、請求項2、請求項5、請求項6、請求項7、請求項10または請求項11に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体装置の一つとして、主面に形成されたゲートトレンチの下方に電界シールド領域が設けられたトレンチ型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、炭化珪素半導体装置に対してドレインリークの更なる抑制が望まれている。
【0005】
本開示は、ドレインリークを抑制できる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、前記ボディ領域上に設けられ、前記第2導電型を有するコンタクト領域と、を有し、前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されたゲートトレンチが設けられており、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続されたソース電極を有し、前記ドリフト領域は、前記側面に露出し、かつ前記ボディ領域に接する第1領域と、前記第1領域および前記ボディ領域に接する第2領域と、を有し、前記第1領域は、前記側面と前記第2領域との間にあり、前記第2領域における前記第1導電型の不純物の第2実効濃度は、前記第1領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低く、前記第1主面に垂直な平面視で、前記コンタクト領域と前記第2領域とが重なる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ドレインリークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その1)である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その2)である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その3)である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その4)である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図(その1)である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図(その2)である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置における電界緩和領域の上面を含む平面の構成を示す図である。
【
図19】
図19は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第4実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図21】
図21は、第5実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本開示では数字の前に負の符号を付している。また、以下の説明では、XYZ直交座標系を用いるが、当該座標系は、説明のために定めるものであって、半導体装置の姿勢について限定するものではない。また、XY面視を平面視といい、任意の点からみて、+Z方向を上方、上側または上ということがあり、-Z方向を下方、下側または下ということがある。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、前記ボディ領域上に設けられ、前記第2導電型を有するコンタクト領域と、を有し、前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されたゲートトレンチが設けられており、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続されたソース電極を有し、前記ドリフト領域は、前記側面に露出し、かつ前記ボディ領域に接する第1領域と、前記第1領域および前記ボディ領域に接する第2領域と、を有し、前記第1領域は、前記側面と前記第2領域との間にあり、前記第2領域における前記第1導電型の不純物の第2実効濃度は、前記第1領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低く、前記第1主面に垂直な平面視で、前記コンタクト領域と前記第2領域とが重なる。
【0012】
ドリフト領域が第1領域および第2領域を有し、第1主面に垂直な平面視でコンタクト領域と第2領域とが重なり、第2実効濃度が第1実効濃度よりも低い。このため、第2実効濃度が第1実効濃度と等しい場合と比較して、コンタクト領域と第2主面との間のpn接合界面の近傍において空乏層が広がりやすく、電界集中を緩和できる。従って、電界集中に起因するドレインリークを抑制できる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域を有してもよい。この場合、ゲートトレンチの近傍での電界集中を緩和できる。
【0014】
〔3〕 〔1〕または〔2〕において、ドリフト領域は、前記第1領域および前記第2領域と前記第2主面との間の第3領域を有してもよい。第3領域が電流経路の一部として機能する。
【0015】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、前記炭化珪素基板は、前記第2領域と、前記ボディ領域または前記コンタクト領域とに接し、前記第2導電型を有する保護領域を有し、前記第2領域は、前記第1領域と前記保護領域との間にあり、前記保護領域における前記第2導電型の不純物の第4実効濃度は、前記コンタクト領域における第3実効濃度よりも低く、前記第1主面に垂直な平面視で、前記コンタクト領域と前記保護領域とが重なってもよい。この場合、コンタクト領域と第2主面との間のpn接合界面の近傍において空乏層が更に広がりやすく、電界集中を更に緩和できる。従って、ドレインリークを更に抑制できる。
【0016】
〔5〕 〔1〕において、前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域と、前記第2領域および前記ボディ領域に接し、前記第2導電型を有する保護領域と、を有し、前記ドリフト領域は、前記第1領域および前記第2領域と前記第2主面との間の第3領域を有し、前記第3領域の一部は、前記電界緩和領域と前記保護領域との間にあり、前記保護領域における前記第2導電型の不純物の第4実効濃度は、前記コンタクト領域における第3実効濃度よりも低く、前記第1主面に垂直な平面視で、前記コンタクト領域と前記保護領域とが重なってもよい。この場合、コンタクト領域と第2主面との間のpn接合界面の近傍において空乏層が更に広がりやすく、電界集中を更に緩和できる。従って、ドレインリークを更に抑制できる。
【0017】
〔6〕 〔5〕において、前記ゲートトレンチおよび前記電界緩和領域は、第1仮想直線に沿って延び、前記電界緩和領域は、前記第1仮想直線に垂直な第2仮想直線に沿って第1寸法を有する第4領域と、前記第1仮想直線に沿って前記第4領域につながり、前記第2仮想直線に沿って前記第1寸法よりも小さい第2寸法を有する第5領域と、を有し、前記第1主面に垂直な平面視で、前記第2仮想直線に沿って前記保護領域と前記第5領域とが並んでもよい。この場合、保護領域と電界緩和領域との間の距離が大きく、第3領域内の電流経路の電気抵抗を低減できる。
【0018】
〔7〕 〔6〕において、複数の前記コンタクト領域が、前記第1仮想直線に沿って断続的に配置され、複数の前記第4領域および複数の前記第5領域が前記第1仮想直線に沿って交互に配置されていてもよい。この場合、電流経路の偏在を抑制しやすい。
【0019】
〔8〕 〔5〕から〔7〕のいずれかにおいて、前記保護領域の下面は、前記電界緩和領域の上面よりも前記第2主面に近くてもよい。この場合、電界集中を更に緩和しやすく、ドレインリークを更に抑制しやすい。
【0020】
〔9〕 〔1〕から〔8〕のいずれかにおいて、前記第1実効濃度は前記第2実効濃度の2倍以上であってもよい。この場合、電界集中をより緩和しやすく、ドレインリークをより抑制しやすい。
【0021】
〔10〕 本開示の他の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、前記ボディ領域上に設けられ、前記第2導電型を有するコンタクト領域と、を有し、前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されたゲートトレンチが設けられており、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続されたソース電極を有し、前記炭化珪素基板は、前記コンタクト領域と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する保護領域を有し、前記保護領域における前記第2導電型の不純物の第4実効濃度は、前記コンタクト領域における第3実効濃度よりも低い。
【0022】
第1主面に垂直な平面視でコンタクト領域と保護領域とが重なり、第4実効濃度が第3実効濃度よりも低い。このため、コンタクト領域と第2主面との間のpn接合界面の近傍において空乏層が広がりやすく、電界集中を緩和できる。従って、電界集中に起因するドレインリークを抑制できる。
【0023】
〔11〕 〔10〕において、前記ドリフト領域は、前記側面に露出し、かつ前記ボディ領域に接する第1領域と、前記第1領域および前記保護領域と前記第2主面との間の第3領域と、を有し、前記第1領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度は、前記第3領域における前記第1導電型の不純物の第5実効濃度よりも高くてもよい。この場合、電界集中を更に緩和しやすく、ドレインリークを更に抑制しやすい。
【0024】
〔12〕 〔1〕から〔11〕のいずれかにおいて、前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含んでもよい。側面が{0-33-8}面を含むことで、ゲートトレンチの側面において良好な移動度が得られ、チャネル抵抗を低減できる。
【0025】
[本開示の実施形態]
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は、炭化珪素を用いたいわゆる縦型のMOS型電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)に関し、このMOS型FETは炭化珪素半導体装置の一例である。
図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。
図2から
図5は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
図3は、
図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
図4は、
図1中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
図5は、
図1中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0026】
図1から
図5に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、ソース電極60と、ドレイン電極70と、バリアメタル膜84とを主に有している。
【0027】
炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1とは反対の第2主面2とを有する。第1主面1および第2主面2はXY平面に平行であり、第1主面1は第2主面2からみて+Z方向にある。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50および炭化珪素エピタキシャル層40は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、例えば窒素(N)等のn型不純物を含み、n型の導電型(第1導電型)を有する。
【0028】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、例えば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、例えば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0029】
炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、電界緩和領域16と、接続領域17と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0030】
ドリフト領域11は、窒素またはリン(P)等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11は炭化珪素単結晶基板50の上に設けられている。ドリフト領域11は、第1領域11Aと、第2領域11Bと、第3領域11Cとを主に有している。
【0031】
ボディ領域12は、アルミニウム(Al)等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。ボディ領域12はドリフト領域11の上に設けられている。
【0032】
ソース領域13は、窒素またはリン等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ソース領域13はボディ領域12の上に設けられている。ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられている。ソース領域13は第1主面1を構成する。
【0033】
コンタクト領域18は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は第1主面1を構成する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は、第6領域18Aと、第7領域18Bとを主に有している。
【0034】
第1主面1に、側面3と底面4とにより規定される複数のゲートトレンチ5が設けられている。ゲートトレンチ5は、例えばY軸に沿って延びる。Y軸に沿って複数のゲートトレンチ5が一定の間隔で配置されている。また、X軸に沿って複数のゲートトレンチ5が一定の間隔で配置されている。複数のゲートトレンチ5がアレイ状に設けられていてもよい。側面3は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11の一部とを貫通し、ドリフト領域11に至る。底面4は側面3と連なる。底面4はドリフト領域11に位置する。例えば、底面4は第1主面1および第2主面2と平行である。Y軸に垂直な断面視で、底面4を含む仮想平面P1に対する側面3の角度θ1は、例えば45°以上65°以下である。角度θ1は、例えば50°以上であってもよい。角度θ1は、例えば60°以下であってもよい。側面3は、好ましくは{0-33-8}面を有する。{0-33-8}面は、優れた移動度が得られる結晶面である。本開示では、Y軸に平行な第1仮想直線L1およびX軸に平行な第2仮想直線L2を用いて各部位の位置関係を説明することがある。
【0035】
電界緩和領域16は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。電界緩和領域16は、ゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間にある。電界緩和領域16の上端面は、例えばゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間にある。電界緩和領域16の上端面の一部は、ボディ領域12の下端面の一部に対向する。電界緩和領域16は、ゲートトレンチ5と同様に、Y軸に沿って延びる。第1主面1に垂直な平面視で、電界緩和領域16はゲートトレンチ5と重なる。第1主面1に垂直な平面視で、Y軸に沿って電界緩和領域16が複数のゲートトレンチ5と重なっていてもよい。また、X軸に沿って複数の電界緩和領域16が一定の間隔で配置されている。複数の電界緩和領域16がストライプ状に設けられていてもよい。
【0036】
コンタクト領域18の第6領域18Aは、X軸に沿って隣り合うゲートトレンチ5の間にある。X軸に沿って隣り合う2つのゲートトレンチ5の間において、第6領域18Aとソース領域13とがY軸に沿って交互に設けられていてもよい。例えば、第6領域18Aがゲートトレンチ5の長手方向の端部の近傍にあり、ソース領域13がゲートトレンチ5の長手方向の中央部の近傍にあってもよい。第6領域18AはX軸に沿ってゲートトレンチ5の両側に設けられている。
【0037】
コンタクト領域18の第7領域18Bは、第1主面1に垂直な平面視で、Y軸に沿って隣り合うゲートトレンチ5の間にある。第7領域18Bは、X軸に沿って第6領域18Aにつながる。第6領域18Aと第7領域18BとがX軸に沿って交互に設けられている。例えば、第6領域18AのY軸に沿った第3寸法W3は、第7領域18BのY軸に沿った第4寸法W4よりも大きい。
【0038】
接続領域17は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。接続領域17は、コンタクト領域18と電界緩和領域16とを電気的に接続する。接続領域17は、第1主面1に垂直な平面視で、Y軸に沿って隣り合うゲートトレンチ5の間にある。接続領域17は、第1主面1に垂直な平面視で、第6領域18Aの一部と第7領域18Bとに重なる。接続領域17は電界緩和領域16に接する。接続領域17は少なくともボディ領域12または第7領域18Bの一方に接する。接続領域17がボディ領域12および第7領域18Bの各々に接してもよい。接続領域17は、電界緩和領域16とコンタクト領域18との間にある。
【0039】
ドリフト領域11の第1領域11Aは側面3に露出し、かつボディ領域12に接する。ドリフト領域11の第2領域11Bは第1領域11Aおよびボディ領域12に接する。第1主面1に垂直な平面視で、コンタクト領域18と第2領域11Bとが重なる。第1領域11Aは、側面3と第2領域11Bとの間にある。第1領域11Aおよび第2領域11Bの厚さは、例えば0.1μm以上0.5μm以下である。ドリフト領域11の第3領域11Cは炭化珪素単結晶基板50に接してもよい。第1領域11Aおよび第2領域11Bは、第3領域11Cとボディ領域12との間にある。第1領域11Aの下端面および第2領域11Bの下端面が、第3領域11Cの上端面に接する。第3領域11Cが側面3に露出してもよい。第3領域11Cが底面4に露出してもよい。底面4と第2主面2との間において、第3領域11Cが電界緩和領域16を囲んでいてもよい。底面4と電界緩和領域16の上端面との間に第3領域11Cの一部があってもよい。電界緩和領域16の下端面と第2主面2との間に第3領域11Cの他の一部があってもよい。X軸に沿って隣り合う電界緩和領域16の間に第3領域11Cの更に他の一部があってもよい。
【0040】
ゲート絶縁膜81は、例えば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、例えば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜81は、側面3および底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4においてドリフト領域11に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4において第3領域11Cに接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3において第1領域11Aおよび第3領域11Cに接する。ゲート絶縁膜81は第2領域11Bから離れている。ゲート絶縁膜81は、第1主面1においてソース領域13に接していてもよい。
【0041】
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81の上に設けられている。ゲート電極82は、例えば導電性不純物を含むポリシリコン(ポリSi)から構成されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。ゲート電極82は、側面3および底面4に対向する。ゲート電極82の一部が第1主面1に対向してもよい。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5と同様に、Y軸に沿って延びる。第1主面1に垂直な平面視で、ゲート電極82が複数のゲートトレンチ5と重なってもよい。
【0042】
層間絶縁膜83はゲート電極82を覆う。層間絶縁膜83はゲート電極82およびゲート絶縁膜81に接する。層間絶縁膜83は、例えば酸化膜である。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜83は、ゲート電極82とソース電極60とを互いに電気的に絶縁している。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に設けられていてもよい。層間絶縁膜83の上面は、曲率が連続的に変化する曲面であってもよい。層間絶縁膜83の上面は、ゲートトレンチ5の上方において+Z方向に凸となる曲面であってもよい。
【0043】
層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81には、X軸に沿って一定の間隔でコンタクトホール90が形成されている。コンタクトホール90は、X軸に沿って隣り合うコンタクトホール90の間にゲートトレンチ5が位置するように配置されている。コンタクトホール90はY軸に沿って延びる。コンタクトホール90を通じて、ソース領域13および第6領域18Aが層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81から露出している。第7領域18Bは層間絶縁膜83により覆われていてよい。
【0044】
バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83の上面と、ゲート絶縁膜81の側面とを覆う。バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81の各々と接している。バリアメタル膜84は、例えば窒化チタン(TiN)を含む材料から構成されている。
【0045】
ソース電極60は第1主面1に接する。ソース電極60は、コンタクトホール90内に設けられたコンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域18に接している。コンタクト電極61は、例えばニッケルシリサイド(NiSi)を含む材料から構成されている。コンタクト電極61が、チタン(Ti)と、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。コンタクト電極61は、ソース領域13およびコンタクト領域18とオーミック接合している。ソース配線62は、バリアメタル膜84の上面および側面と、コンタクト電極61の上面とを覆う。ソース配線62は、バリアメタル膜84およびコンタクト電極61の各々と接している。ソース配線62は、例えばアルミニウムを含む材料から構成されている。
【0046】
ドレイン電極70は第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、例えばニッケルシリサイドを含む材料から構成されている。ドレイン電極70がチタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合している。
【0047】
炭化珪素単結晶基板50とドリフト領域11との間に、窒素等のn型不純物を含み、n型の導電型を有するバッファ層が設けられていてもよい。また、ソース電極60の一部を覆うパッシベーション膜が設けられていてもよい。
【0048】
ドリフト領域11に関し、第2領域11Bにおけるn型不純物の第2実効濃度は、第1領域11Aにおけるn型不純物の第1実効濃度よりも低い。第1実効濃度は第2実効濃度の、好ましくは2倍以上であり、より好ましくは3倍以上であり、更に好ましくは5倍以上である。例えば、第2実効濃度は1×1016cm-3以上5×1016cm-3以下であり、第1実効濃度は1×1017cm-3以上1×1018cm-3以下である。第3領域11Cにおけるn型不純物の第5実効濃度は、第1実効濃度よりも低くてもよく、第2実効濃度と同程度であってもよい。第1領域11Aは電流拡散領域とよばれることがある。
【0049】
コンタクト領域18におけるp型不純物の第3実効濃度は、ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度よりも高くてもよい。例えば、第3実効濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であり、ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度は5×1017cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0050】
ソース領域13におけるn型不純物の実効濃度は、ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度よりも高くてもよい。ソース領域13におけるn型不純物の実効濃度は、例えば1×1019cm-3程度である。また、電界緩和領域16におけるp型不純物の実効濃度および接続領域17におけるp型不純物の実効濃度は、例えば5×1017cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0051】
本開示において、第1導電型の不純物の実効濃度とは、第1導電型の不純物の濃度から第2導電型の不純物の濃度を減じて得られる濃度であり、第2導電型の不純物の実効濃度とは、第2導電型の不純物の濃度から第1導電型の不純物の濃度を減じて得られる濃度である。実効濃度は、例えば走査型静電容量顕微鏡(scanning capacitance microscope:SCM)を用いて測定できる。
【0052】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の製造方法について説明する。
図6から
図15は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の製造方法を示す断面図である。
図6から
図15は、
図3に示す断面の変化を示す。
【0053】
まず、
図6に示されるように、炭化珪素単結晶基板50を準備する。次に、炭化珪素単結晶基板50の上に炭化珪素エピタキシャル層41を形成する。例えば、炭化珪素単結晶基板50は、窒素等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。例えば、炭化珪素エピタキシャル層41は窒素等のn型不純物を添加したエピタキシャル成長により形成できる。
【0054】
次に、
図7に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層41へのイオン注入を行い、電界緩和領域16を形成する。電界緩和領域16を形成するためのイオン注入においては、例えばアルミニウム等のp型不純物をイオン注入する。
【0055】
次に、
図8に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層41の上に炭化珪素エピタキシャル層42を形成する。例えば、炭化珪素エピタキシャル層42は窒素等のn型不純物を添加したエピタキシャル成長により形成できる。
【0056】
次に、
図9に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層42へのイオン注入を行い、ドリフト領域11の第1領域11A、ボディ領域12、ソース領域13、接続領域17(
図4および
図5参照)およびコンタクト領域18を形成する。炭化珪素エピタキシャル層42の第1領域11Aと同じ深さで第1領域11Aが形成されていない部分が第2領域11Bとなり、炭化珪素エピタキシャル層42の残部および炭化珪素エピタキシャル層41が第3領域11Cとなる。ボディ領域12、接続領域17またはコンタクト領域18を形成するためのイオン注入においては、例えばアルミニウム等のp型不純物をイオン注入する。第1領域11Aまたはソース領域13を形成するためのイオン注入においては、例えばリン等のn型不純物をイオン注入する。このようにして、第1主面1と、第2主面2とを有する炭化珪素基板10が得られる。
【0057】
次に、
図10に示されるように、ソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11に複数のゲートトレンチ5を形成する。ゲートトレンチ5は、次のようにして形成できる。
【0058】
まず、ゲートトレンチ5を形成しようとする領域上に開口を有するマスク(図示せず)を形成する。次に、マスクを用いて、ソース領域13の一部と、ボディ領域12の一部と、ドリフト領域11の一部とをエッチングにより除去する。エッチングは、例えば反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)である。エッチングにより、ゲートトレンチ5を形成しようとする領域に、第1主面1に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられ、かつ第1主面1とほぼ平行な底部とを有する凹部が形成される。
【0059】
次に、凹部において熱エッチングを行う。熱エッチングは、第1主面1上にマスクが形成された状態で、例えば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、例えば、塩素(Cl2)、三塩化ホウ素(BCl3)、六フッ化硫黄(SF6)または四フッ化炭素(CF4)を含む。例えば、塩素ガスと酸素(O2)ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、例えば窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガスまたはヘリウム(He)ガス等を用いることができる。
【0060】
上記熱エッチングにより、第1主面1にゲートトレンチ5が形成される。ゲートトレンチ5は、ドリフト領域11からなる底面4と、ソース領域13およびボディ領域12を貫通して底面4に連なる側面3とを有する。熱エッチング後に、マスクを第1主面1から除去する。
【0061】
次に、
図11に示されるように、ゲート絶縁膜81を形成する。例えば炭化珪素基板10を熱酸化することにより、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11と、コンタクト領域18とに接するゲート絶縁膜81が形成される。具体的には、炭化珪素基板10を、酸素を含む雰囲気中において、例えば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱する。これにより、第1主面1と、側面3と、底面4とに接するゲート絶縁膜81が形成される。なお、ゲート絶縁膜81が熱酸化により形成された場合、厳密には、炭化珪素基板10の一部がゲート絶縁膜81に取り込まれる。このため、以降の処理では、熱酸化後のゲート絶縁膜81と炭化珪素基板10との間の界面に第1主面1、側面3および底面4が若干移動したものとする。
【0062】
次に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素基板10に対して熱処理(NOアニール)を行ってもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素基板10が、例えば1100℃以上1400℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜81とボディ領域12との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。
【0063】
次に、
図12に示されるように、ゲート電極82を形成する。ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に形成される。ゲート電極82は、例えば減圧CVD(Low Pressure - Chemical Vapor Deposition:LP-CVD)法により形成される。ゲート電極82は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11との各々に対面するように形成される。
【0064】
次に、
図13に示されるように、ゲート電極82を覆い、かつゲート絶縁膜81と接する層間絶縁膜83を形成する。層間絶縁膜83は、例えば、CVD法により形成される。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成される。層間絶縁膜83の一部がゲートトレンチ5の内部に形成されてもよい。次に、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81のエッチングを行うことで、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81にコンタクトホール90を形成する。この結果、ソース領域13およびコンタクト領域18の第6領域18Aが層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81から露出する。
【0065】
次に、
図14に示されるように、層間絶縁膜83の上面および側面と、ゲート絶縁膜81の側面とを覆うバリアメタル膜84を形成する。バリアメタル膜84は、例えばスパッタリング法による成膜およびRIEにより形成される。バリアメタル膜84は、例えば窒化チタンを含む材料から構成される。次に、第1主面1においてソース領域13およびコンタクト領域18に接するコンタクト電極61用の金属膜(図示せず)を形成する。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばスパッタリング法により形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばニッケルを含む材料から構成される。次に、合金化アニールを行う。コンタクト電極61用の金属膜が、例えば900℃以上1100℃以下の温度で5分間程度保持される。これにより、コンタクト電極61用の金属膜の少なくとも一部が、炭化珪素基板10が含む珪素と反応してシリサイド化する。この結果、ソース領域13および第6領域18Aとオーミック接合するコンタクト電極61が形成される。コンタクト電極61が、チタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されてもよい。
【0066】
次に、
図15に示されるように、ソース配線62を形成する。具体的には、コンタクト電極61およびバリアメタル膜84を覆うソース配線62が形成される。ソース配線62は、例えばスパッタリング法により形成される。ソース配線62は、例えばアルミニウムまたは銅を含む材料から構成される。ソース配線62がアルミニウムおよび銅を含む材料から構成されてもよい。例えば、ソース配線62は、アルミニウム膜またはアルミニウム合金膜である。このようにして、コンタクト電極61とソース配線62とを有するソース電極60が形成される。次に、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合するドレイン電極70を形成する。
【0067】
ソース配線62を覆うパッシベーション膜を形成し、パッシベーション膜に、ソース配線62の一部が露出する開口部を形成してもよい。パッシベーション膜は、例えばポリイミドを含む材料から構成される。パッシベーション膜は、例えば塗布法により形成される。パッシベーション膜をプラズマCVD法により形成してもよい。ポリイミドが感光性を備える場合、露光および現像により開口部を形成できる。
【0068】
このようにして、炭化珪素半導体装置100を製造できる。
【0069】
第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100では、ドリフト領域11が第1領域11Aおよび第2領域11Bを有し、第1主面1に垂直な平面視でコンタクト領域18と第2領域11Bとが重なり、第2実効濃度が第1実効濃度よりも低い。このため、第2実効濃度が第1実効濃度と等しい場合と比較して、コンタクト領域18と第2主面2との間のpn接合界面の近傍において空乏層が広がりやすく、電界集中を緩和できる。従って、電界集中に起因するドレインリークを抑制できる。特に、第1実効濃度が第2実効濃度の2倍以上であることで、逆の見方をすると、第2実効濃度が第1実効濃度の1/2以下であることで、電界集中をより緩和しやすく、ドレインリークをより抑制しやすい。
【0070】
また、ゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間に電界緩和領域16が設けられているため、ゲートトレンチ5の近傍での電界集中を緩和できる。
【0071】
炭化珪素半導体装置100では、オン時に、ソース電極60とドレイン電極70との間では、主として、ソース領域13、ボディ領域12、第1領域11A、第3領域11C、炭化珪素単結晶基板50の順で電子が移動する。つまり、第3領域11Cが電流経路の一部として機能する。
【0072】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として、コンタクト領域18の第6領域18Aと第2主面2との間に保護領域が設けられている点で第1実施形態と相違する。
図16および
図17は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図16は、
図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
図17は、
図1中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0073】
図16および
図17に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200では、炭化珪素基板10が、第2領域11Bに接する保護領域14を有する。保護領域14は、ボディ領域12またはコンタクト領域18に接する。保護領域14は、第2領域11Bおよび第3領域11Cにも接する。第2領域11Bは、第1領域11Aと保護領域14との間にある。保護領域14の厚さは、例えば0.1μm以上0.5μm以下である。第1主面に垂直な平面視で、コンタクト領域18と保護領域14とが重なる。保護領域14は、例えば第1主面に垂直な平面視で第6領域18Aと重なる。保護領域14は、第1主面1に垂直な平面視で、X軸に沿って隣り合うゲートトレンチ5の間にある。第3領域11Cの一部が電界緩和領域16と保護領域14との間にある。
【0074】
保護領域14は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。保護領域14におけるp型不純物の第4実効濃度は、コンタクト領域18における第3実効濃度よりも低い。第4実効濃度は、例えば1×1016cm-3以上1×1017cm-3以下である。
【0075】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同じである。
【0076】
第2実施形態によっても第1実施形態と同じ効果が得られる。また、第2実施形態では、保護領域14におけるp型不純物の第4実効濃度がコンタクト領域18におけるp型不純物の第3実効濃度よりも低い。このため、コンタクト領域18と第2主面2との間のpn接合界面の近傍において空乏層が更に広がりやすく、電界集中を更に緩和できる。従って、電界集中に起因するドレインリークを更に抑制できる。
【0077】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として、電界緩和領域16の構成の点で第2実施形態と相違する。
図18は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置における電界緩和領域の上面を含む平面の構成を示す図である。
図19は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図19は、
図18中のXIX-XIX線に沿った断面図に相当する。
【0078】
図18および
図19に示されるように、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置300では、電界緩和領域16が、第4領域16Aと、第5領域16Bとを有する。第5領域16Bは、第1仮想直線L1に沿って第4領域16Aにつながる。第1主面1に垂直な平面視で、第1仮想直線L1に垂直な第2仮想直線L2に沿って保護領域14と第5領域16Bとが並ぶ。第4領域16Aは、第2仮想直線L2に沿って第1寸法W1を有する。第5領域16Bは、第2仮想直線L2に沿って第1寸法W1よりも小さい第2寸法W2を有する。複数のコンタクト領域18が第1仮想直線L1に沿って断続的に配置され、複数の第4領域16Aおよび複数の第5領域16Bが第1仮想直線L1に沿って交互に配置されている。
【0079】
第3実施形態の他の構成は第2実施形態と同じである。
【0080】
第3実施形態によっても第2実施形態と同じ効果が得られる。また、第3実施形態では、第1主面1に垂直な平面視で、第2仮想直線L2に沿って保護領域14と第5領域16Bとが並び、第5領域16Bの第2寸法W2は第4領域16Aの第1寸法W1よりも小さい。このため、第2実施形態と比較して、保護領域14と電界緩和領域16との間の距離が大きい。従って、第3領域11C内の電流経路の電気抵抗を低減できる。
【0081】
特に、複数のコンタクト領域18が第1仮想直線L1に沿って断続的に配置され、複数の第4領域16Aおよび複数の第5領域16Bが第1仮想直線L1に沿って交互に配置されていることで、電流経路の偏在を抑制しやすい。
【0082】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、主として、保護領域14の構成の点で第3実施形態と相違する。
図20は、第4実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図20は、
図18中のXIX-XIX線に沿った断面図に相当する。
【0083】
図20に示されるように、第4実施形態に係る炭化珪素半導体装置400では、保護領域14の下面14Yが電界緩和領域16の上面16Xよりも第2主面2に近い。つまり、第2仮想直線L2に沿って、保護領域14の下面14Yは、隣り合う2個の電界緩和領域16の間にある。
【0084】
第4実施形態の他の構成は第3実施形態と同じである。
【0085】
第4実施形態によっても第3実施形態と同じ効果が得られる。また、第4実施形態では、保護領域14の下面14Yが電界緩和領域16の上面16Xよりも第2主面2に近いため、電界集中を更に緩和しやすく、電界集中に起因するドレインリークを更に抑制しやすい。
【0086】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、主として、ドリフト領域11の構成の点で第4実施形態と相違する。
図21は、第5実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図21は、
図18中のXIX-XIX線に沿った断面図に相当する。
【0087】
図21に示されるように、第5実施形態に係る炭化珪素半導体装置500では、ドリフト領域11が、第1領域11Aおよび第3領域11Cを含むが、第2領域11Bを含まない。第1領域11Aは、第4実施形態において第2領域11Bがある範囲まで広がっている。従って、保護領域14は第1領域11Aおよび第3領域11Cに接する。
【0088】
第5実施形態の他の構成は第4実施形態と同じである。
【0089】
第5実施形態によっても第4実施形態と同じ効果が得られる。
【0090】
第2実施形態、第3実施形態および第4実施形態においても、ドリフト領域11が第2領域11Bを含まなくてもよく、保護領域14が第1領域11Aおよび第3領域11Cに接していてもよい。
【0091】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域
11A 第1領域
11B 第2領域
11C 第3領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
14 保護領域
14Y 下面
16 電界緩和領域
16A 第4領域
16B 第5領域
16X 上面
17 接続領域
18 コンタクト領域
18A 第6領域
18B 第7領域
40、41、42 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
60 ソース電極
61 コンタクト電極
62 ソース配線
70 ドレイン電極
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
83 層間絶縁膜
84 バリアメタル膜
90 コンタクトホール
100、200、300、400、500 炭化珪素半導体装置
L1 第1仮想直線
L2 第2仮想直線
P1 仮想平面
W1 第1寸法
W2 第2寸法
W3 第3寸法
W4 第4寸法
θ1 角度