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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047315
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ワイピング装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B41J2/165 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152865
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】矢森 雄大
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA13
2C056JB04
2C056JB08
2C056JB10
(57)【要約】
【課題】インクジェットヘッドの側面に付着したインクの落下を防止することができるワイピング装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出するインクジェットヘッド13のインク吐出面をワイプするワイパ24と、ワイパ24の先端部がインク吐出面を摺動するようワイパをワイプ方向に移動させてワイプ動作を行うワイパ駆動部30とを備え、ワイパ24の先端部のワイプする面とは逆の面に、所定の間隔を空けて立設された複数の立設部材24Aを有し、ワイパ駆動部30が、ワイパ24をワイプ方向とは逆方向に移動させて立設部材24Aをインクジェットヘッド13の側面に接触させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出ヘッドの吐出面をワイプするワイパと、
前記ワイパの先端部が前記吐出面を摺動するよう前記ワイパをワイプ方向に移動させてワイプ動作を行うワイパ駆動部とを備え、
前記ワイパの先端部のワイプする面とは逆の面に、所定の間隔を空けて立設された複数の立設部材を有し、
前記ワイパ駆動部が、前記ワイパを前記ワイプ方向とは逆方向に移動させて前記立設部材を前記吐出ヘッドの側面に接触させるワイピング装置。
【請求項2】
前記ワイパ駆動部が、前記立設部材を前記吐出ヘッドの側面に接触させた後、さらに前記ワイパを前記ワイプ方向とは逆の方向に移動させる請求項1記載のワイピング装置。
【請求項3】
前記立設部材が、板形状または柱形状で形成されている請求項1記載のワイピング装置。
【請求項4】
前記複数の立設部材が、毛細管現象によって前記立設部材の間に前記液体が吸収されるような間隔で設けられている請求項1記載のワイピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する吐出ヘッドをワイプするワイピング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙またはフィルムなどからなる印刷媒体を搬送しつつ、インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
インクジェット印刷装置においては、インクジェットヘッドのインク吐出面にインクが固着したり、印刷用紙から発生した紙粉などのゴミが付着したりすることがある。インク吐出面にインクが固着したり紙粉が堆積したりした場合、ノズルからのインクの吐出方向の乱れや不吐出などの吐出不良が発生することがある。
【0004】
このような吐出不良を低減するため、インクジェットヘッドのノズルからインクを強制的に吐出させる、いわゆるパージを行った後、ワイパによってインク吐出面をワイプするワイプ動作が知られている。これによりインク吐出面に固着したインクとともに、インク吐出面上のゴミがワイプブレードにより除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-162824号公報
【特許文献2】特開2003-25596号公報
【特許文献3】特開平10-323986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したようにワイパによるワイプ動作を行った場合、図12Aに示すように、インク吐出面に付着したインクが、ワイパ100によって除去されるが、その除去されたインクは、インク吐出面とワイパ表面との間に滞留し、そのままワイプ方向(図12Aに示す矢印方向)に移動する。そして、ワイプ動作が終了した際には、図12Bに示すように、インクジェットヘッド101の側面101Aに付着する。
【0007】
インクジェットヘッド101の側面101Aに付着したインクは、ワイプ動作を繰り返し行ううちに増加し、重力に耐え切れなくなって下方に落下して、印刷媒体や搬送ベルトを汚してしまう問題がある。特に、搬送ベルトに設けられた吸引孔から空気を吸引して印刷媒体を吸着搬送するインクジェットヘッド印刷装置において、たとえば印刷媒体の搬送方向に直交する方向の幅が、搬送ベルトの幅よりも小さい場合には、吸引孔の吸引力が上述したインクジェットヘッド101の側面101Aに付着したインクにも影響し、インクが落下し易いという問題がある。
【0008】
上述したような問題を解決する方法として、たとえば特許文献1および特許文献2には、図13Aに示すようなワイプ動作後に、図13Bに示すようにワイプ方向と逆方向にワイプ移動させて、ワイパ100をインクジェットヘッド101の側面101Aに接触または近づけ、その後、再度ワイプ方向にワイパ100を移動させることで、側面101Aに付着したインクを除去する方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、インクジェットヘッド101の側面101Aに付着したインクを、接触させたワイパ100で引っ張ることで付着したインクを除去しているため、すなわちワイパ100の表面張力によってインクを除去しているため、ワイパ100の表面が平面である場合、除去できるインク量には限界がある。
【0010】
また、特許文献3では、ワイパの表面に溝を形成してその溝にインクを保持する方法が提案されているが、特許文献3のようにワイプする面のインク保持量を増やす形状では、ワイパ100とインクジェットヘッド101との間に滞留するインクの量を増やしてしまうことになり、逆に、インクジェットヘッド101の側面101Aに付着するインクを増やしてしまう問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、インクジェットヘッドの側面に付着したインクの落下を防止することができるワイピング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のワイピング装置は、液体を吐出する吐出ヘッドの吐出面をワイプするワイパと、ワイパの先端部が吐出面を摺動するようワイパをワイプ方向に移動させてワイプ動作を行うワイパ駆動部とを備え、ワイパの先端部のワイプする面とは逆の面に、所定の間隔を空けて立設された複数の立設部材を有し、ワイパ駆動部が、ワイパをワイプ方向とは逆方向に移動させて立設部材を吐出ヘッドの側面に接触させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイピング装置によれば、ワイパの先端部のワイプする面とは逆の面に、所定の間隔を空けて複数の立設部材を設け、ワイパをワイプ方向とは逆方向に移動させて立設部材を吐出ヘッドの側面に接触させるようにしたので、インクジェットヘッドの側面に付着したインクを複数の立設部材の表面に付着させて除去することができ、これによりインクジェットヘッドの側面に付着したインクの落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のインクジェット印刷装置の一実施形態の概略構成を示す図
図2】ヘッドユニットの一例の平面図
図3】ワイピング部の一例の概略構成を示す平面図
図4】ワイパの一例を左側から見た図
図5】立設部材のその他の例を示す図
図6】ワイパの立設部材の作用を説明するための図
図7図4に示すワイパの効果を説明するための図
図8図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
図9】搬送部およびワイピング部がワイプ位置にある状態を示す模式図
図10】ワイプ動作の間の立設部材の状態を説明するための図
図11】ワイパをワイプ方向とは逆方向に移動させている間の立設部材の状態を説明するための図
図12】従来のワイプ動作の課題を説明するための図
図13】従来のインク除去動作の課題を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明のワイピング装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドをワイプするワイピング部に特徴を有するものであるが、まずは、インクジェット印刷装置全体の構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、図1に矢印で示す上下左右が、インクジェット印刷装置1における上下左右方向とする。また、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面の手前方向を前方とし、紙面の奥側の方向を後方とする。
【0016】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、印刷部10とワイピング部20とを備えている。本実施形態においては、ワイピング部20が、本発明のワイピング装置に相当する。
【0017】
印刷部10は、複数のインクジェットヘッドが設けられたヘッドユニット11と、ヘッドユニット11に対向して設けられた搬送部12とを備えている。
【0018】
図2は、ヘッドユニット11の平面図である。ヘッドユニット11は、図2に示すように、4つのラインヘッド11C,11K,11M,11Yを備えている。4つのラインヘッド11C,11K,11M,11Yは、それぞれ6つのインクジェットヘッド13を備え、左右方向(印刷用紙Pの搬送方向)に配列されている。4つのラインヘッド11C,11K,11M,11Yは、それぞれ異なる色のインクを吐出する。本実施形態においては、ラインヘッド11Cがシアン(C)のインクを吐出し、ラインヘッド11Kがブラック(K)のインクを吐出し、ラインヘッド11Mがマゼンタ(M)のインクを吐出し、ラインヘッド11Yがイエロー(Y)のインクを吐出する。
【0019】
印刷用紙Pは、ヘッドユニット31の直下を左から右に向けて搬送されながら、複数のラインヘッド11C,11K,11M,11Yからインクが吐出されることにより印刷処理が施される。
【0020】
搬送部12は、環状の搬送ベルト123と、吸気ファン121,122と、搬送ベルト123が亘り掛けられる駆動ローラ124および従動ローラ125とを備えている。
【0021】
搬送ベルト123には、複数の吸引孔が設けられている。また、吸気ファン121,122が、搬送ベルト123における印刷用紙Pの搬送路面の裏側の面に対向する位置に設けられている。この吸気ファン121,122が回転することによって搬送ベルト123の吸引孔に吸引力が発生する。
【0022】
印刷部10に給紙された印刷用紙Pは、吸気ファン121,122の回転による吸引動作によって搬送ベルト123上に吸着し、駆動ローラ124の回転によって所定の搬送速度で搬送されながら、ヘッドユニット11から吐出されたインクによって印刷処理が施される。
【0023】
ワイピング部20は、インクジェットヘッド13のインク吐出面をワイプするワイプ動作を行う。インク吐出面とは、インクジェットヘッド13が有する多数のノズルのインク吐出口が並んだ面である。
【0024】
ワイピング部20は、図示省略した所定のアクチュエータにより、図1に示すワイピング部20の位置である退避位置と、後述のワイプ動作を行う際のワイプ位置(図9)との間で移動可能に構成されている。
【0025】
ワイピング部20は、図3に示すように、インク受け部材21と、ワイパユニット22と、ワイパ駆動部30とを備える。なお、図3は、ワイピング部20がワイプ位置に配置されている状態における図である。
【0026】
インク受け部材21は、ワイプ動作においてインクジェットヘッド13のインク吐出面から除去されて落下するインク等を受けるものである。インク受け部材21は、直方体形状に形成されている。インク受け部材21の中央部には、インクを受けるための凹部21aが形成されている。凹部21aは、平面視にて、ラインヘッド11C,11K,11M,11Yのインクジェットヘッド13が配置されている領域よりも大きく形成されている。インク受け部材21の上側は、開口されている。
【0027】
ワイパユニット22は、インクジェットヘッド13のインク吐出面をワイプする。ワイパユニット22は、取付台23と、8枚のワイパ24とを備える。
【0028】
取付台23は、ワイパ24が取り付けられるものである。取付台23は、直方体形状に形成されている。取付台23には、ネジ孔23a,23bが形成されている。ネジ孔23a,23bには、ネジ歯車25,26がそれぞれ貫通され、かつ螺合されている。ネジ歯車25,26の回転により、取付台23は、前後方向に移動する。
【0029】
ワイパ24は、インクジェットヘッド13のインク吐出面をワイプする部材である。ワイパ24は、弾性変形可能なゴム等の材料からなり、矩形の板形状で形成されている。ワイパ24の下端部は取付台23に固定されている。
【0030】
図3に示すように、8枚のワイパ24は、ワイピング部20がワイプ位置に配置されている状態において、千鳥配置のインクジェットヘッド13の前後方向に沿った各列の延長線上に位置するように配置されている。
【0031】
ワイピング部20がワイプ位置に配置されている状態において、ワイパ24の上端が、インクジェットヘッド13のインク吐出面よりも高い位置にある。ワイパ24は、ワイパ駆動部30によって後ろ側から前側に移動し、インクジェットヘッド13と接すると、弾性変形されて上側の先端部がインク吐出面を摺動(ワイプ)する。本実施形態では、後ろから前側に向かう方向をワイプ方向とする。
【0032】
また、ワイパ24の先端部には立設部材24Aが設けられている。図4は、1つのワイパ24を左側から見た図である。図4に示すように、本実施形態のワイパ24は、その先端部の表面に所定の間隔を空けて立設された複数の立設部材24Aを有する。本実施形態の立設部材24Aは、矩形の板形状で形成されている。また、立設部材24Aは、柔軟性を有するゴム・樹脂・エラストマー等の素材から形成されており、ワイパ24と同様の素材から形成されていてもよい。
【0033】
図4では、4枚の立設部材24Aを設けているが、立設部材24Aの枚数はこれに限らない。
【0034】
また、立設部材24Aは、少なくとも2枚以上設けることが好ましく、その場合、立設部材24Aの間隔は10mm以下、好ましくは5mm以下である。また、立設部材24Aの間隔は、毛細管現象によって立設部材24Aの間にインクが吸収されるような間隔であることが好ましい。
【0035】
また、立設部材24Aのワイパ24の表面からの長さについては、5mm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは3mm以下である。なお、このような長さにすることの効果については、後で詳述する。
【0036】
また、立設部材24Aの形状は、本実施形態のような板形状に限らず、円柱形状や四角柱形状などの柱形状でもよい。もしくは、半球形状または球形状でもよい。図5は、円柱形状で形成した立設部材24Aを後ろ側から見た図である。この場合も立設部材24Aの間隔は5mm以下であることが好ましく、毛細管現象によって立設部材24Aの間にインクが吸収されるような間隔であることが好ましい。また、立設部材24Aのワイパ24の表面からの長さについても、5mm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは3mm以下である。
【0037】
ここで、本実施形態のワイパ24の立設部材24Aの作用について、図6を参照しながら説明する。まず、図6Aに示すように、インクジェットヘッド13の側面13Aに向かって(後ろ側に向かって)ワイパ24を移動させる。本実施形態において、インクジェットヘッド13の側面13Aとは、インクジェットヘッド13の前側の面である。
【0038】
そして、図6Bに示すようにインクジェットヘッド13の側面13Aとワイパ24の立設部材24Aの先端とが接近した場合には、インクジェットヘッド13の側面13Aに付着したインクが、毛細管現象によって立設部材14A間に入り込む。なお、インクジェットヘッド13の側面13Aに付着したインクとは、上述したようにインクジェットヘッド13のワイプ動作によって付着したインクである。
【0039】
そして、インクジェットヘッド13の側面13Aとワイパ24の立設部材24Aの先端とが接触した後、図6Cに示すように、ワイパ24を前側に移動させることによって、インクジェットヘッド13の側面13Aに付着したインクをワイパ24側に移すことができ、これによりインクジェットヘッド13の側面13Aに付着したインクを除去することができる。これによりインクジェットヘッド13の側面に付着したインクの落下を防止することができる。
【0040】
また、図12に示した従来のワイパ100と比較すると、インクが付着するワイパ24(立設部材24Aを含む)の表面積を大きくすることができるので、インクの保持量を増加させることができ、インクの除去量を増加させることができる。また、上述したように毛細管現象によって、より多くのインクを保持することができる。
【0041】
また、図13に示した従来のワイパ100を用いてインクジェットヘッド101の側面101Aのインクを除去するためには、ワイパ100の表面をインクに接触させる必要があるため、図7Aに示すR0の範囲にワイパ100の上端部が位置するように制御する必要がある。
【0042】
これに対し、本実施形態のワイパ24は立設部材24Aを有するので、図7Bに示すR1の範囲でワイパ24の上端部の位置を制御すればよい。すなわち、立設部材24Aの長さの分だけ、インク除去効果を得ることができる範囲を広げることができるので、ワイパ24の位置制御の公差を緩和することができる。
【0043】
以上が、本実施形態のワイパ24の立設部材24Aの作用の説明である。
【0044】
次に、ワイパ駆動部30は、ワイパユニット22を前後方向に移動させる。ワイパ駆動部30は、ワイパモータ27と、駆動ベルト28と、駆動プーリ29A,29Bと、ネジ歯車25,26とを備える。
【0045】
ワイパモータ27は、ワイパユニット22を移動させるための回転駆動力を発生する。ワイパモータ27は、インク受け部材21の後壁の外側に配置されている。ワイパモータ27は、出力ギア27aを有する。出力ギア27aは、駆動ベルト28にワイパモータ27の回転駆動力を伝達する。出力ギア27aは、駆動ベルト28の中央部に配置されている。
【0046】
駆動ベルト28は、ワイパモータ27から伝達された回転駆動力を駆動プーリ29A,29Bへと伝達する。駆動ベルト28は、駆動プーリ29Aと駆動プーリ29Bとに掛け渡されている。
【0047】
駆動プーリ29A,29Bは、駆動ベルト28から伝達された回転駆動力をネジ歯車25,26へと伝達する。駆動プーリ29Aと駆動プーリ29Bとは、左右方向に互いに離間して、同じ高さに配置されている。駆動プーリ29A,29Bは、インク受け部材21の後壁に回転可能に支持されている。
【0048】
ネジ歯車25A,26Bは、駆動プーリ29A,29Bから伝達された回転駆動力によってワイパユニット22を前後方向に移動させる。ネジ歯車25,26は、前後方向における凹部21aの略全長にわたって延びている。ネジ歯車25,26の後端は、それぞれ駆動プーリ29A,29Bに固定されている。ネジ歯車25,26の前端は、インク受け部材21の前壁に回転可能に支持されている。これにより、ネジ歯車25,26は、それぞれ駆動プーリ29A,29Bとともに回転する。
【0049】
図8は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0050】
制御部40は、インクジェット印刷装置1全体を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部40は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御するものである。
【0051】
特に、本実施形態の制御部40は、インクジェットヘッド13の側面13Aに付着したインクを除去するインク除去動作を制御する。
【0052】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1のワイプ動作およびインク除去動作について説明する。
【0053】
まず、ワイプ動作を行う際、制御部40は、搬送部12およびワイピング部20をワイプ位置に配置する。具体的には、制御部40は、搬送部12を印刷位置から下降させる。次いで、制御部40は、ワイピング部20を退避位置から搬送部12上の待機位置へ移動させる。そして、制御部40は、搬送部12を上昇させて、搬送部12およびワイピング部20を図9に示すワイプ位置へ移動させる。
【0054】
搬送部12およびワイピング部20をワイプ位置に配置すると、制御部40は、パージを実行する。具体的には、制御部40は、所定のパージ圧をインクジェットヘッド13に生成してノズルからインクを排出させるよう制御する。これにより、インクジェットヘッド13のノズルからインクが押し出され、インク吐出面にインクが付着した状態となる。
【0055】
次いで、制御部40は、ワイプ動作を行う。具体的には、制御部40は、ワイパモータ27を駆動させて、ワイパユニット22のワイプ方向(前方)への移動を開始させる。ここで、ワイピング部20がワイプ位置へ移動したとき、ワイパユニット22は、最も後方のインクジェットヘッド13より後方の初期位置にある。
【0056】
ワイパユニット22が前方へ移動し、ワイパ24がインクジェットヘッド13に接触すると、ワイパ24はインクジェットヘッド13に押圧されて弾性変形する。この状態でさらにワイパユニット22が前方へ移動すると、ワイパ24の上端部がインク吐出面を摺動(ワイプ)する。これにより、インク吐出面に付着したインクが、インク吐出面上のゴミ等とともに除去される。
【0057】
この際、図10に示すように、ワイパ24の立設部材24Aが設けられた面側とは反対側の面(ワイプ面)がインク吐出面に接触するが、ワイパ24の先端部の弾性変形によって立設部材24Aも弾性変形して押しつぶされた状態となる。これにより、前回のインク除去動作によって立設部材24A間に入り込んだインクが押し出されて下方に落ちるので、立設部材24A間に入り込んだインクを除去することができる。
【0058】
そして、さらにワイパ24が前方に進み、インクジェットヘッド13のインク吐出面からワイパ24が離隔するが、この際、本実施形態では、立設部材24Aの長さを5mm以下、好ましくは3mm以下としたので、立設部材24Aが元の形状に復元する際に、立設部材24Aがインク吐出面に与える衝撃を抑制することができる。
【0059】
続いて、ワイパ24が最も前方のインクジェットヘッド13より前方まで移動すると、制御部40は、ワイパモータ27を停止する。これにより、ワイパユニット22が停止する。これにより、ワイプ動作が終了する。
【0060】
次に、制御部40は、インク除去動作を行う。具体的には、制御部40は、ワイパモータ27を駆動させて、ワイパユニット22の後方(ワイプ方向と逆方向)への移動を開始させる。なお、上述したようにワイプ動作が終了したとき、ワイパ24は、最も前方のインクジェットヘッド13より前方に配置されている。
【0061】
そして、ワイパユニット22が後方へ移動し、ワイパ24の立設部材24Aの先端がインクジェットヘッド13の側面13Aに接触した時点において、制御部40は、ワイパモータ27を停止してワイパユニット22の後方への移動を一旦停止する。そして、制御部40は、ワイパモータ27を駆動させてワイパユニット22を再び前方へ所定の距離だけ移動させ、図6Bおよび図6Cで示したように、ワイパ24の立設部材24Aの先端を、インクジェットヘッド13の側面13Aから離隔させる。
【0062】
そして、制御部40は、ワイパモータ27を停止してワイパユニット22の前方への移動を停止し、その後、ワイパモータ27を駆動させて、ワイパユニット22の後方(ワイプ方向と逆方向)への移動を開始させる。
【0063】
ワイパユニット22が後方へ移動し、ワイパ24がインクジェットヘッド13に接触すると、ワイパ24はインクジェットヘッド13に押圧されて弾性変形する。この状態でさらにワイパユニット22が後方へ移動すると、図11に示すように、ワイパ24の上端部がインク吐出面を摺動する。この際、図11に示すように、ワイパ24の立設部材24Aが設けられた面側がインク吐出面に接触し、立設部材24Aが弾性変形して押しつぶされた状態となる。これにより、立設部材24A間に入り込んだインクが押し出されて下方に落ちるので、立設部材24A間に入り込んだインクを除去することができる。
【0064】
そして、ワイパ24が最も前方のインクジェットヘッド13より前方まで移動すると、制御部40は、ワイパモータ27を停止する。これにより、ワイパユニット22が停止する。これにより、インク除去動作が終了する。
【0065】
インク除去動作の終了後、印刷動作を再開する場合、制御部40は、ワイピング部20を退避位置へ移動させるとともに、搬送部12を印刷位置へ移動させる。具体的には、まず、制御部40は、搬送部12を下降させて、搬送部12およびワイピング部20をワイプ位置から待機位置へ移動させる。
【0066】
次いで、制御部40は、ワイピング部20を搬送部12上の待機位置から退避位置へ移動させる。そして、制御部40は、搬送部12を上昇させて待機位置から印刷位置へ移動させる。この後、印刷動作が再開される。
【0067】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0068】
本発明のワイピング装置において、ワイパ駆動部は、立設部材を吐出ヘッドの側面に接触させた後、さらにワイパをワイプ方向とは逆の方向に移動させることができる。
【0069】
本発明のワイピング装置において、立設部材は、板形状または柱形状で形成することができる。
【0070】
本発明のワイピング装置において、複数の立設部材は、毛細管現象によって立設部材の間に液体が吸収されるような間隔で設けることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 インクジェット印刷装置
10 印刷部
11 ヘッドユニット
11C ラインヘッド
11K ラインヘッド
11M ラインヘッド
11Y ラインヘッド
12 搬送部
13 インクジェットヘッド
13A 側面
14A 立設部材
20 ワイピング部
21 部材
21a 凹部
22 ワイパユニット
23 取付台
23a,23b ネジ孔
24 ワイパ
24A 立設部材
25,26 ネジ歯車
25A,26B ネジ歯車
27 ワイパモータ
27a 出力ギア
28 駆動ベルト
29A,29B 駆動プーリ
30 ワイパ駆動部
40 制御部
31 ヘッドユニット
47 ワイパユニット
100 ワイパ
101 インクジェットヘッド
101A 側面
121,122 吸気ファン
123 搬送ベルト
124 駆動ローラ
125 従動ローラ
121,122 吸気ファン
P 印刷用紙
図1
図2
図3
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図13