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特開2024-47336蓋体用積層シート、蓋体、食品用包装容器及び包装食品
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  • 特開-蓋体用積層シート、蓋体、食品用包装容器及び包装食品 図1
  • 特開-蓋体用積層シート、蓋体、食品用包装容器及び包装食品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047336
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】蓋体用積層シート、蓋体、食品用包装容器及び包装食品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240329BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240329BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20240329BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20240329BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B65D65/40 D
B65D81/24 F
B65D85/50 100
B65D77/20 R
B32B27/10
B32B27/32 Z
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152900
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】竹内 礼
(72)【発明者】
【氏名】岡村 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】小出 晋也
【テーマコード(参考)】
3E035
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E035AA20
3E035AB01
3E035BA02
3E035BC01
3E035BC02
3E035BC03
3E035BD02
3E035CA04
3E067AA11
3E067AB01
3E067BA10A
3E067BB01A
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3E067BB16A
3E067BC07A
3E067CA05
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3E067GD10
3E086AB01
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3E086BA14
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB90
3E086CA01
4F100AJ06A
4F100AJ11A
4F100AK04A
4F100AK04D
4F100AK07D
4F100AK68E
4F100AR00B
4F100BA05
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4F100DE01A
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4F100EH46E
4F100EJ38
4F100GB18
4F100GB23
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4F100JA04
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4F100JD02
4F100JD15
4F100JK06
4F100JL12E
4F100JL16
4F100JM01E
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】食品用包装容器に用いられ、紙基材を含み、蓋体としての機能を維持しながら優れたリサイクル性を達成し得る蓋体を提供する。
【解決手段】蓋体用積層シート10は、開口が設けられている容器本体22と前記開口を覆う蓋体21とを備える食品用包装容器20の前記蓋体21に用いられ、耐水性を有する機能層6と、印刷層5と、紙基材4と、支持層2と、ヒートシール層1とをこの順序で含み、前記紙基材4の質量は、前記蓋体用積層シート10に含まれる他の何れの層の質量よりも大きく、前記支持層2はオレフィン系樹脂を主成分として含み、前記紙基材4を除いた前記蓋体用積層シート10の質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合が40%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられている容器本体と前記開口を覆う蓋体とを備える食品用包装容器の前記蓋体に用いられる蓋体用積層シートであって、耐水性を有する機能層と、印刷層と、紙基材と、支持層と、ヒートシール層とをこの順序で含み、前記紙基材の質量は、前記蓋体用積層シートに含まれる他の何れの層の質量よりも大きく、前記支持層はオレフィン系樹脂を主成分として含み、前記紙基材を除いた前記蓋体用積層シートの質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合が40%以上である蓋体用積層シート。
【請求項2】
前記支持層は、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含んだ請求項1に記載の蓋体用積層シート。
【請求項3】
前記ヒートシール層は、前記支持層上に塗液を塗布することにより形成した塗膜である請求項1に記載の蓋体用積層シート。
【請求項4】
前記印刷層と前記ヒートシール層との間にガスバリア性を有するガスバリア層を更に含んだ請求項1に記載の蓋体用積層シート。
【請求項5】
前記蓋体用積層シートに含まれる、前記紙基材以外の層を、プラスチックからなる層と、その他の層とに分類した場合に、前記紙基材の質量は、前記プラスチックからなる層の合計質量及び前記その他の層の合計質量と比較してより大きい請求項1に記載の蓋体用積層シート。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の蓋体用積層シートからなる蓋体。
【請求項7】
開口が設けられている容器本体と、前記開口を覆う請求項6に記載の蓋体とを備えた食品用包装容器であって、前記支持層が前記紙基材と前記食品用包装容器の内部空間との間に配置されている食品用包装容器。
【請求項8】
請求項7に記載の食品用包装容器と、前記食品用包装容器に収容された食品とを備えた包装食品。
【請求項9】
前記容器本体は前記開口の周りにフランジを有し、前記蓋体は前記ヒートシール層を介して前記フランジにヒートシールされている請求項8に記載の包装食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体用積層シート、蓋体、食品用包装容器及び包装食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の核家族化による世帯構成の変化やライフスタイルの変化に加えて、流通、冷凍及び冷蔵技術の進歩に支えられて、コンビニエンスストアやスーパマーケットなどで販売されている調理又は加工済みチルド食品及び冷凍食品の需要が伸びている。それと同時に、チルド食品及び冷凍食品を収容する包装容器の需要も伸びている。
【0003】
一方、プラスチックごみの削減が進められている中、環境負荷が小さく、再生可能な資源である紙を基材に使用した食品用包装容器の需要が高まっている。チルド食品や冷凍食品を収容する包装容器にも、基材として紙を使用した紙製の包装容器を使用することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、紙基材上にエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂を使用した2層のガスバリア層を積層してなる食品用包装材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-184138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、食品用包装容器に用いられ、紙基材を含み、蓋体としての機能を維持しながら優れたリサイクル性を達成し得る蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、開口が設けられている容器本体と前記開口を覆う蓋体とを備える食品用包装容器の前記蓋体に用いられる蓋体用積層シートであって、耐水性を有する機能層と、印刷層と、紙基材と、支持層と、ヒートシール層とをこの順序で含み、前記紙基材の質量は、前記蓋体用積層シートに含まれる他の何れの層の質量よりも大きく、前記支持層はオレフィン系樹脂を主成分として含み、前記紙基材を除いた前記蓋体用積層シートの質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合が40%以上である蓋体用積層シートが提供される。
【0008】
本発明の他の側面によると、前記支持層は、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含んだ上記側面に係る蓋体用積層シートが提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、前記ヒートシール層は、前記支持層上に塗液を塗布することにより形成した塗膜である上記側面の何れかに係る蓋体用積層シートが提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、前記印刷層と前記ヒートシール層との間にガスバリア性を有するガスバリア層を更に含んだ上記側面の何れかに係る蓋体用積層シートが提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記蓋体用積層シートに含まれる、前記紙基材以外の層を、プラスチックからなる層と、その他の層とに分類した場合に、前記紙基材の質量は、前記プラスチックからなる層の合計質量及び前記その他の層の合計質量と比較してより大きい上記側面の何れかに係る蓋体用積層シートが提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る蓋体用積層シートからなる蓋体が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、開口が設けられている容器本体と、前記開口を覆う上記側面に係る蓋体とを備えた食品用包装容器であって、前記支持層が前記紙基材と前記食品用包装容器の内部空間との間に配置されている食品用包装容器が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、上記側面に係る食品用包装容器と、前記食品用包装容器に収容された食品とを備えた包装食品が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記容器本体は前記開口の周りにフランジを有し、前記蓋体は前記ヒートシール層を介して前記フランジにヒートシールされている上記側面に係る包装食品が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、食品用包装容器に用いられ、紙基材を含み、蓋体としての機能を維持しながら優れたリサイクル性を達成し得る蓋体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る蓋体用積層シートを概略的に示す部分断面図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る包装食品を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
蓋体に紙を使用した場合、容器本体へのシール性を付与するためにヒートシール層が必要となる。また、蓋体に紙を使用した場合、開封時に紙剥け等の、紙の層間剥離や破れが起こり、これによって容器本体に蓋体が残留する等の開封不良が発生する。紙剥けを解消するために、プラスチックフィルムを使用して紙の破れを抑制する必要がある。このように、蓋体に紙を使用することで、プラスチックフィルム等の石油由来の化合物の使用量は削減できるが、シール性や開封性といった蓋体の基本的機能を維持するためには、プラスチック等の石油由来の化合物の削減量には限界がある。
【0019】
そこで、環境負荷をより低減するためには、蓋体のマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルにより、蓋体を再生利用することが考えられる。
【0020】
飲料用のPETボトルはリサイクル処理により使用済のPETボトルから飲料用のPETボトルへと再生する技術が確立している。一方、蓋体等の包装材は、多様な材料及び多層構造で構成されることが多く、ラミネート等により各層が密着している。このように、各層が異なる材質で形成されている場合、分別が難しく、再生利用時の品質低下が大きく、再生利用が難しい。
【0021】
従って、蓋体等の包装材の再生利用を考慮すると、特に包装材中に占める割合が多いプラスチックフィルムは、材質を統一することが望ましい。一方、包装材に使用される材料として、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が多用されている。このため、プラスチックフィルム等の石油由来の化合物を極力オレフィン系樹脂に統一することによって、異なる材質の混在による、再生利用時の品質低下を抑制し、包装材の再生利用への可能性を広げることが考えられる。
【0022】
このような着想に基づいて、本発明者らは、蓋体としての基本機能とリサイクル性とを両立させるという課題に取り組んだ。
【0023】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0024】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0025】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0026】
<1>第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る蓋体用積層シートを概略的に示す断面図である。
【0027】
図1に示す蓋体用積層シート10は、開口が設けられ、この開口の周りにフランジを有している容器本体と、その開口を覆う蓋体とを備えた食品用包装容器において、蓋体に用いられるものである。即ち、蓋体用積層シート10は、それ自体が蓋体として使用されるか、又は、それから切り出された部分が蓋体として使用される蓋材である。
【0028】
蓋体用積層シート10は、ヒートシール層1と、支持層2と、ガスバリア層3と、紙基材4と、印刷層5と、耐水性を有する機能層(耐水性層)6とをこの順序で含んでいる。蓋体用積層シート10は、接着層7とアンカーコート層8とを更に含んでいる。蓋体用積層シート10が含んでいる各層について、以下に説明する。
【0029】
(紙基材)
蓋体用積層シート10は、紙基材4を含んでいる。紙基材4の質量は、蓋体用積層シート10に含まれる他の何れの層の質量よりも大きい。蓋体用積層シート10の質量に占める紙基材4の質量の割合は、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、50%超であることが更に好ましい。この割合は、一例によれば80%以下であり、他の例によれば70%以下であり、更に他の例によれば65%以下である。
【0030】
蓋体用積層シート10に含まれる、紙基材4以外の層を、プラスチックからなる層と、その他の層とに分類した場合に、紙基材4の質量は、プラスチックからなる層の合計質量及びその他の層の合計質量と比較してより大きいことが好ましい。この場合、日本国では、蓋体用積層シート10を、容器包装リサイクル法上の紙として扱うことができる。
【0031】
ここで、上記の分類は、「容器包装リサイクル法 説明資料」に従う。即ち、「プラスチック」は、高分子を必須成分として含み、加工時に流動性を利用して賦形及び製品化した材料である。塗料及び接着剤は、「賦形」の概念と無関係であるため、プラスチックには含まれない。従って、図1に示す例では、ヒートシール層1がシーラント層である場合、支持層2及びこれに貼り合わされたヒートシール層1は、「プラスチックからなる層」である。また、図1に示す例では、塗工によって形成されたガスバリア層3、インキから形成された印刷層5、塗工によって形成された機能層6、接着剤からなる接着層7、及びアンカーコート剤からなるアンカーコート層8は、「その他の層」である。
【0032】
紙基材4の坪量、即ち、面積当たりの質量は、一例によれば20乃至150g/mの範囲内にあり、他の例によれば40乃至100g/mの範囲内にある。紙基材4の坪量を大きくすると、蓋体が硬くなり、開封性が低下する。坪量を小さくすると、蓋体の強度が低下する。
【0033】
なお、紙基材4の坪量を大きくすると、蓋体用積層シート10の質量に占める紙基材4の質量の割合も大きくなる。しかしながら、紙基材4の坪量を大きくすると、紙基材4の製造や蓋体用積層シート10の廃棄に伴う二酸化炭素の排出量が増加する。
【0034】
紙基材4は、植物由来のパルプを主成分とするものであれば特に制限はない。紙基材4としては、例えば、上質紙、中質紙、微塗工紙などの塗工紙、片艶紙、晒及び未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)が挙げられる。
【0035】
紙基材4は、少なくとも一方の面にコート層を有する塗工紙であることが好ましい。即ち、紙基材4は、片面塗工紙であるか又は両面塗工紙であることが好ましい。塗工紙のコート層が設けられた面は、コート層が設けられていない紙の表面と比較して、平滑性に優れている。
【0036】
紙基材4が一方の面にコート層を有する塗工紙である場合、印刷層5は、例えば、コート層上に設けることができる。この場合、高い画質の画像を印刷層5に表示させることが容易である。また、コート層を設けることにより、機能層6の下地表面も平滑になるため、機能層6の耐水性も向上する。
【0037】
紙基材4が一方の面にコート層を有する塗工紙である場合、支持層2は、コート層と向き合うように紙基材4に貼り合わせてもよい。こうすることにより、例えば、接着層7を介して紙基材4と支持層2を貼り合わせる場合には、コート層の平滑性により接着剤を含む接着層7を均一に形成し易くなり、紙基材4に対する支持層2の接着性が向上し、且つ、接着剤の使用量を低減できる。
【0038】
紙基材4として、両面にコート層を有する塗工紙を使用すると、高い画質の画像を印刷層5に表示させることが容易になり、機能層6の耐水性を向上させることができる。また、紙基材4と支持層2との間で優れた密着性を実現することが容易になる。
【0039】
コート層は、樹脂を含んでいる。コート層が含む樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合させたエチレン-α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、及びフマル酸等の不飽和カルボン酸で変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、及びスチレン-ブタジエンゴム等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2以上を組み合わせて使用してもよく、2以上を共重合させて使用してもよい。コート層は、添加剤、例えば、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、及び酸化チタン等の充填材を更に含有していてもよい。
【0040】
コート層の厚さは、0.5乃至50μmの範囲内にあることが好ましく、1乃至15μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0041】
(支持層)
支持層2は、蓋体用積層シート10の強度を向上させる。
支持層2は、ポリマーフィルムである。支持層2は、オレフィン系樹脂を主成分として含み、紙基材4を除いた蓋体用積層シート10の質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合(以下、単に「オレフィン系樹脂の割合」ともいう)が40%以上である。オレフィン系樹脂の割合は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上である。オレフィン系樹脂の割合の上限は、例えば80%である。本明細書では、オレフィン系樹脂の割合が40%以上であると、リサイクル性が優れていると評価される。
【0042】
支持層2は、オレフィン系樹脂として、好ましくは、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含んでいる。また、ポリエチレン及びポリプロピレンのホモポリマー以外にもエチレンとプロピレンの共重合体、エチレンもしくはプロピレンとその他のモノマーの共重合体などのオレフィン系樹脂を使用することも可能である。ポリエチレンは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE),直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。上記オレフィン系樹脂を混合して使用することも可能である。支持層2は、オレフィン系樹脂として、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)又はポリプロピレン(PP)を含んでいる。支持層2は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。支持層2が含む各層は、例えば、ポリエチレンからなる層であるか、ポリプロピレンからなる層である。
【0043】
支持層2は、無延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムなどの延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムである場合、二軸延伸フィルムを利用することが好ましい。二軸延伸により、フィルム面内の方向に対する破断強度等の諸物性の変動が一軸延伸に比べて小さくなる。
【0044】
支持層2は、上述したポリマー以外の材料を更に含むことができる。例えば、支持層2は、硬化剤、フィラー、アンチブロッキング剤、及び帯電防止剤などの添加剤を更に含むことができる。また、支持層2の材料として、紫外線及び電子線などの活性エネルギー線の照射による硬化するものを使用することもできる。
【0045】
支持層2の質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。支持層2の厚さを一定とした場合、この割合を大きくすると、リサイクル性が高まる。
【0046】
支持層2の厚さは、3乃至60μmの範囲内にあることが好ましく、10乃至30μmの範囲内にあることがより好ましい。支持層の面積当たりの質量は、10乃至70g/mの範囲内にあることが好ましく、15乃至50g/mの範囲内にあることがより好ましい。支持層2を厚くすると、蓋体の突き刺し強さを高めることが容易になるが、蓋体用積層シート10の質量に占める紙基材4の質量の割合を大きくすることが難しくなる。
【0047】
支持層2の破断強度は、蓋体と容器本体との間のヒートシール強さよりも大きいことが好ましい。ここで、支持層2の破断強度が蓋体と容器本体との間のヒートシール強さよりも大きいことは、MDにおいて、支持層の破断強度が蓋体と容器本体との間のヒートシール強さよりも大きく、且つ、TDにおいて、支持層の破断強度が蓋体と容器本体との間のヒートシール強さよりも大きいことを意味している。ここで、「MD」はMachine Directionであり、「TD」はTransverse Directionである。
【0048】
支持層2の破断強度は、JIS Z1707:2019「食品包装用プラスチックフィルム通則」に規定された測定方法で得られる引張力である。なお、この引張力(N/15mm)は、試験片が破壊した時の最大力を、試験片の幅15mm相当の力(N/15mm)に換算した値である。蓋体と容器本体との間のヒートシール強さについては後述する。
【0049】
支持層2の破断強度が、蓋体と容器本体との間のヒートシール強さよりも大きい場合、蓋体を容器本体から剥離する際に、紙剥けを生じ難い。例えば、支持層2の破断強度が30N/15mmより大きい場合、ヒートシール強さが30N/15mm程度までは紙剥け発生を抑制できる。ここで、「紙剥け」とは、蓋体を容器本体から剥離した場合に、紙基材の凝集破壊が生じて、蓋体の一部が容器本体に残留することである。紙剥けを生じると、容器本体に収容された内容物を取り出し難くなることがある。
【0050】
ヒートシール強さは、包装容器の用途や目的に応じて調整される。例えば、易開封性を付与するために、ヒートシール強さを小さくする場合がある。それ故、支持層2の破断強度は、30N/15mm超である必要はない。支持層2の破断強度は、特に限定されないが、10乃至100N/15mmの範囲内にあることが好ましく、25乃至85N/15mmの範囲内にあることがより好ましい。上述の破断強度を大きくすると、紙剥けを抑制するために積層体を補強する効果が大きくなる。但し、破断強度を大きくするべく支持層2を厚くすると、支持層2の製造や蓋体用積層シート10の廃棄に伴う二酸化炭素の排出量及びコストが増加する。
【0051】
支持層2の形成手段としては、接着剤を介して紙基材4にラミネートする手法が利用でき、このラミネート法としては、溶剤系接着剤を用いるドライラミネート法、無溶剤系接着剤を用いるノンソルラミネート法、及び溶融樹脂を接着剤として用いるサンドラミネート法などがある。また、押出しラミネート法など、支持層2は、これを構成する組成物を溶融させた状態で押出して、紙基材4上に直接形成することもできる。このときも、必要に応じて、紙基材4上に接着層7を形成してもよい。
【0052】
(ガスバリア層)
ガスバリア層3は、酸素バリア性及び水蒸気バリア性などのガスバリア性を有している。ガスバリア層3は、後述する包装食品において、容器外部の酸素、水蒸気、及び香気成分等のガスが容器内へ侵入することを抑制する。これにより、ガスバリア層3は、包装食品において、内容物である食品の劣化を抑制する。また、ガスバリア層3は、包装食品において、内容物の臭気成分等が容器外部へ拡散するのを抑制する。ガスバリア層3は、一例によれば、温度30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度が0.1乃至100cc/m/day/atmである。
【0053】
ガスバリア層3は、例えば、金属層、無機酸化物層、樹脂含有層、又は、それらの2以上の組み合わせである。電子レンジによるマイクロ波加熱が想定される場合、ガスバリア層3は、無機酸化物層、樹脂含有層、又は、それらの組み合わせであることが好ましい。
【0054】
ガスバリア層3は、塗工によって形成したものであってもよく、溶融成形によって形成したものであってもよく、無機酸化物を蒸着したものであってもよい。或いは、ガスバリア層3は、アルミニウム箔などの金属箔であってもよく、アルミニウムなどの金属を蒸着したものであってもよい。
【0055】
無機酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化ホウ素、又は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化錫、酸化ナトリウム、酸化チタン、酸化鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化イットリウムなどの金属酸化物を使用できる。
【0056】
樹脂含有層は、例えば、塗工で形成することができる。この場合、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、及びエポキシ樹脂などの樹脂を含んだ塗液を使用することができる。この塗液には、有機又は無機粒子、層状化合物、及び硬化剤などの添加物を添加してもよい。
【0057】
樹脂含有層を溶融成形によって形成する場合、その材料としては、例えば、上記樹脂又は上記樹脂と添加剤との混合物を使用することができる。溶融成形としては、例えば、Tダイやインフレーションなどの押出成形技術を利用することができる。
【0058】
溶融成形によって形成した樹脂含有層は、例えば、支持層2と貼り合わせる。樹脂含有層は、支持層2とともに、共押出によって形成してもよい。
【0059】
ガスバリア層3の厚さは、一例によれば0.01乃至30μmの範囲内にあり、他の例によれば0.1μm乃至12μmの範囲内にある。
【0060】
本実施形態では、ガスバリア層3は、紙基材4と接着層7との間に介在しているが、後述する印刷層5と後述するヒートシール層1との間であれば他の位置に存在していてもよい。即ち、ガスバリア層3は、印刷層5と紙基材4との間、接着層7と支持層2との間、支持層2とアンカーコート層8との間、またはアンカーコート層8とヒートシール層1との間に介在していてもよい。あるいは、蓋体用積層シート10にガスバリア性が要求されない場合、ガスバリア層3は省略することができる。
【0061】
(印刷層)
印刷層5は、蓋体用積層シート10又は蓋体を商業製品として実用に供するために形成される層である。印刷層5は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、及び塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダ樹脂に各種顔料、体質顔料、可塑剤、乾燥剤、及び安定剤等の添加剤が添加されているインキにより構成される層であって、文字及び絵柄等のパターンを表示している。印刷層5の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、及びシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、及びグラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。
【0062】
印刷層5の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1乃至5μmの範囲内であってもよく、0.2乃至1μmの範囲内であってもよい。
【0063】
(耐水性を有する機能層)
耐水性を有する機能層(耐水性層)6は、後述する包装食品において、結露等による水分や油等の容器外部の液体が蓋体に浸透するのを抑制して、この液体が印刷層5及び紙基材4等の層に到達することを抑制する層である。機能層6は、容器外部の液体が印刷層5及び紙基材4等の層に到達するのを抑制することで、例えば、これらの層の劣化、破壊又は密着性の低下を防ぐ。
【0064】
一例によれば、機能層6は、印刷層5の上に形成されることにより、蓋体用積層シート10のうち機能層6から紙基材4までの部分である部分積層シートの吸水度を制御する。機能層6は、以下に記載するコッブ法による蓋体用積層シートの吸水度を、20g/m以下にする耐水性を有していることが好ましい。
【0065】
ここで、吸水度とは、JIS P8140:1998「紙及び板紙-吸水度試験方法-コッブ法」に規定された方法において、測定面を機能層6の表面とし、試験片と水との接触時間300秒とした場合に得られる吸水度である。この吸水度は、上記の通り20g/m以下であることが好ましく、10g/m以下であることがより好ましく、5g/m以下であることが更に好ましい。この吸水度の下限値は、理想的には0g/mである。一例によれば、この吸水度は1g/m以上である。
【0066】
機能層6は、オーバープリントニス層(以下において、「OPニス層」という)であることが好ましい。
【0067】
機能層6は、一例によれば、耐水性樹脂を含有する。耐水性樹脂としては、上述した吸水度を実現可能な樹脂であれば、制限なく使用することができる。耐水性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、又はウレタン系樹脂を使用することができる。機能層6は、例えば、耐水性樹脂を含有する塗料を、印刷層5が形成された紙基材4上に公知の方法で塗工することにより得ることができる。上記塗料は、耐水性樹脂に加え、顔料、染料、硬化剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、及び易滑剤等の添加剤や溶剤等を更に含有することができる。
【0068】
機能層6は、十分な耐水性を維持できるように、高い耐磨耗性及び耐擦傷性を有していることが好ましい。このような観点から、機能層6の厚さ及びその材料である塗料の塗布量は、通常のOPニス層の厚さ及び通常のOPニスの塗布量より大きいことが好ましい。ここで、「塗布量」は、面積当たりの固形分質量である。
【0069】
例えば、図1に示す蓋体用積層シート10において、機能層6を形成するための塗料は、その塗布量が0.2g/m以上となるように塗工することが好ましく、2.0g/m以上となるように塗工することがより好ましい。この塗料は、その塗布量が、例えば、10g/m以下となるように塗工する。機能層6の厚さは、0.2μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。機能層6の厚さは、例えば、10μm以下である。なお、機能層6は、ラミネートによって印刷層5上に設けてもよい。
【0070】
(ヒートシール層)
ヒートシール層1は、後述する図2に示す食品用包装容器20の容器本体22への蓋体21のヒートシールを可能とし、これにより容器を密封できるものであればよい。ヒートシール層1としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(Ethylene-vinyl acetate;EVA)、アイオノマー樹脂、又は、その他のポリオレフィン類からなるフィルムが使用される。ヒートシール層1は、好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene;LLDPE)、超低密度直鎖状ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene;VLDPE)、又はポリプロピレンの何れかを少なくとも含む層である。
【0071】
ヒートシール層1として、イージーピール機能(簡易剥離機能)をもったシーラント層も使用することができる。イージーピール性とは、再剥離性及び易開封性に優れることを示す。ヒートシール層1をラミネート等により貼り合わせる手段としては、溶剤系接着剤を用いるドライラミネート法、無溶剤系接着剤を用いるノンソルラミネート法、及び溶融樹脂を接着剤として用いるサンドラミネート法などがある。また、ヒートシール層を溶融樹脂で押出し成形する場合には、押出しラミネート法を用いることもできる。
【0072】
ヒートシール層1は、例えば、ラミネートによって支持層2上に設ける。あるいは、ヒートシール層1は、支持層2上に塗液を塗布して形成した塗膜とすることもできる。塗膜は、塗液が乾燥して固まった膜状のものを指す。具体的には、ヒートシール層1は、ヒートシールニスを塗布して形成することもできる。塗工手段として、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、バーコート法などの各種コート法を用いることができる。ヒートシール層1をヒートシールニスにより形成すると、プラスチックの使用量を削減することができるとともに、紙とプラスチックフィルムの分別が容易になる。
【0073】
ヒートシール層1の厚さは、特に限定されるものではない。ヒートシール層1の厚さは、0.5乃至60μmの範囲内にあることが好ましく、1乃至30μmの範囲内にあることがより好ましい。ヒートシール層の面積当たりの質量は、0.5乃至60g/mの範囲内にあることが好ましく、0.8乃至40g/mの範囲内にあることがより好ましい。
【0074】
(接着層及びアンカーコート層)
接着層7は、支持層2とガスバリア層3との間に介在している。アンカーコート層8は、ヒートシール層1と支持層2との間に介在している。接着層7及びアンカーコート層8の一方又は双方は、省略してもよい。
【0075】
接着層7及びアンカーコート層8の材料には、これを介して接着する層の材料に応じて、必要な接着強度が得られる接着樹脂や接着剤(又はアンカーコート剤)を適宜選択して用いる。
【0076】
接着樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及びメタロセン触媒を利用して重合したエチレン-αオレフィンとの共重合体などのポリエチレン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、及びエチレン-マレイン酸共重合体などのエチレン-不飽和カルボン酸共重合体;及びアイオノマー樹脂から選択される1種又は2種以上の樹脂を使用することができる。
【0077】
接着剤は、例えば、主剤及び溶剤を含む第1組成物と、硬化剤及び溶剤を含む第2組成物とを混合してなる接着剤組成物である。この接着剤から得られる接着層7又はアンカーコート層8は、接着剤組成物中の主剤と硬化剤とが反応して生成された硬化物を含む。
【0078】
主剤の例としては、ポリオールを挙げることができる。硬化剤の例としては、イソシアネート化合物を挙げることができる。接着剤の例としては、エーテル系の二液反応型接着剤又はエステル系の二液反応型接着剤を挙げることができる。
【0079】
エーテル系の二液反応型接着剤の硬化物は、例えば、ポリエーテルポリウレタンである。ポリエーテルポリウレタンは、主剤としてのポリエーテルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成する。
【0080】
エステル系の二液反応型接着剤の硬化物は、例えば、ポリエステルポリウレタン及びポリエステルである。ポリエステルポリウレタンは、主剤としてのポリエステルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成する。
【0081】
二液反応型接着剤では、主剤としてアクリルポリオールを用いてもよい。また、上記の接着剤組成物は、加熱による溶融や低粘度化を生じるものであれば、溶剤を含んでいなくてもよい。塗工手段として、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、バーコート法などの各種コート法を用いることができる。
【0082】
上述の蓋体用積層シート10は、面積当たりの質量が、50至160g/mの範囲内にあることが好ましく、60乃至140g/mの範囲内にあることがより好ましく、90乃至130g/mの範囲内にあることがより好ましい。この値を小さくすると、蓋体の強度が低下する。この値を大きくすると、コストが高くなるのに加え、製造及び排気に伴う二酸化炭素の排出量が増加する。
【0083】
上述の蓋体用積層シート10は、蓋体として用いた場合、蓋体としての機能(強度、開封性、耐水性など)を維持しながら、プラスチックの使用量を低減し、かつ、リサイクル性を高めている。これにより、環境への負荷を低減することができる。
【0084】
蓋体が含んでいる紙及びプラスチックは、例えば、以下の方法でリサイクルすることができる可能性がある。
【0085】
先ず、蓋体が含んでいる紙とプラスチックとを互いから分離する。例えば、紙基材と、支持層を含んだプラスチック層とを互いから引き剥がす。この剥離を容易にするために、好ましくは、紙基材と支持層との間に介在した層(即ち、ガスバリア層及び接着剤層)の1以上へ、これを溶解させ得る薬剤を供給する。例えば、蓋体を水などの液状の薬剤に浸漬させる。この際、好ましくは、加熱及び加圧の少なくとも一方を行う。これにより、蓋体の端面でガスバリア層及び接着剤層の少なくとも一方を溶解させるとともに、蓋体の端面から紙基材へ薬剤を浸透させて、端面から離れた位置でもかかる層の溶解を生じさせる。或いは、超臨界流体としての薬剤を、紙基材と支持層との間に介在した層(即ち、ガスバリア層及び接着剤層)の1以上へ供給して、上記の溶解を生じさせる。その後、紙基材とプラスチック層とを互いから引き剥がす。
【0086】
次に、必要に応じて、紙基材及びプラスチック層の各々に対して、不純物を除去するための処理を行う。その後、紙基材からパルプを取得し、このパルプを製紙等へ再利用する。また、プラスチック層については、成形品の製造等へ再利用する。
【0087】
なお、薬剤を用いた処理によって、紙基材とプラスチック層とを互いから分離できる場合には、互いから分離された紙基材及びプラスチック層を含んだ液に対して、紙の溶解処理を行ってもよい。この場合、プラスチック層が分散したパルプスラリーが得られる。その後、これを固液分離することにより、上記と同様の再利用が可能である。
【0088】
本実施形態の蓋体用積層シートは、紙基材の質量が、蓋体用積層シートに含まれる他の何れの層の質量よりも大きい。従って、紙基材への薬剤の浸透を生じさせ易い。また、本実施形態の蓋体用積層シートは、紙基材を除いた蓋体用積層シートの質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合が40%以上である。それ故、上記の分離処理によって得られるプラスチックの主成分はオレフィン系樹脂である。このようなプラスチックは、再利用が容易である。
【0089】
また、上述の蓋体用積層シート10は、ガスバリア性、特には酸素バリア性の低下を生じ難い。これについて、以下に説明する。
【0090】
食品用包装容器には、充填された食品の酸化を抑えるため、外部からの酸素の侵入を防ぐ酸素バリア性に優れていることが望まれることがある。そのような食品用包装容器では、その蓋体にも酸素バリア性が求められる。
【0091】
紙を基材とする蓋体への酸素等に対するガスバリア性の付与には、例えば紙基材上に、ガスバリア層として、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルムを設けることが多い。しかしながら、蓋体が金属層を含んだ食品用包装容器には、内容物充填後の金属探知機による金属異物の混入検査ができない、金属を含むため紙として焼却処理できず、古紙としても再利用できない、電子レンジにより加熱調理されることが想定されるチルド食品等の包装容器には使用できない、といった問題がある。
【0092】
上記の通り、ガスバリア層には、金属層を含まないものもある。そのようなガスバリア層としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ナイロンMXD6などのポリアミド、及びポリアクリロニトリル等の樹脂を含んだものが使用されることが多い。金属層レスの蓋体は、上記の問題を回避し得る。
【0093】
チルド食品の流通及び保管温度は、食品別に最適な温度帯が設定されるが、一般には0乃至10℃の範囲内である。食品用包装容器にチルド食品を収容してなる包装食品は、その製造後、様々な流通経路を通って消費者の手に渡る。この過程において、例えば、消費者が店舗で包装食品を購入してから自宅の冷蔵庫に保管するまでの間や、消費者が包装食品を冷蔵庫から出してから調理を開始するまでの間、包装食品は常温環境下に置かれる。
【0094】
本発明者らは、蓋体が紙基材とガスバリア層とを含んだ食品用包装容器にチルド食品を収容してなる包装食品、特にはガスバリア層が樹脂含有層からなる包装食品は、冷蔵状態から常温環境下に晒された最初の数時間の間に、蓋体のガスバリア性、特には酸素バリア性が大きく低下することを見出した。これは、蓋体の質量に占める紙基材の質量の割合が大きい場合に顕著である。
【0095】
本発明者らは、上記の問題は、蓋体表面に生じる結露に起因するものであることをつきとめている。即ち、冷蔵環境下にあった包装物品が常温環境に晒されることにより、蓋体の外側表面に結露が生じ、その水分がガスバリア層に到達してガスバリア層が損傷を受ける。その結果、蓋体の酸素バリア性が低下する。
【0096】
上記の蓋体用積層シート10は、耐水性を有している機能層6を含んでいる。それ故、この蓋体用積層シート10を蓋材として使用した包装食品では、結露によって蓋体の外側表面に生じた水分はガスバリア層3に到達し難い。従って、この蓋体用積層シート10を蓋材として使用した包装食品では、蓋体の外側表面での結露に起因したガスバリア層3の損傷は生じ難く、酸素バリア性の低下を生じ難い。
【0097】
本発明者らは、特に、食品用包装容器にチルド食品を収容してなる包装食品は、蓋体が紙基材を含んでいる場合、蓋体を容器本体から剥離する際に紙剥けを生じ易いことを更に見出している。上記の通り、支持層2の破断強度を、蓋体と容器本体との間のヒートシール強さよりも大きくすることにより、紙剥けを生じ難くすることができる。
【0098】
なお、内容物がチルド食品である場合について上述した問題は、内容物が冷凍食品である場合にも生じ得る。ここで説明した構成は、内容物が冷凍食品である場合であっても、内容物がチルド食品である場合について上述したのと同様の効果を奏し得る。
【0099】
<2>第2実施形態
図2は、本発明の第2実施形態に係る包装食品を概略的に示す断面図である。図2示す包装食品40は、食品用包装容器20と、これに収容された食品である内容物30とを備えている。
【0100】
食品用包装容器20は、開口が設けられている容器本体22と、上記開口を覆う蓋体21とを備えている。
【0101】
容器本体22は、例えば、有底筒状である。容器本体22は、ここでは、底部と胴部(又は側壁部)とフランジ22aとを備えている。フランジ22aは、胴部の上方開口の位置で外側へ向けて広がっている。
【0102】
容器本体22は、例えば、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を含む。容器本体22は、そのガスバリア性を高めるために、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の成分を更に含んでいてもよい。また、容器本体22は、添加剤、例えば、加工性、意匠性、及び化学的耐久性の向上を目的とした添加剤を更に含んでいてもよい。
【0103】
容器本体22は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。この多層構造は、二層構造であってもよく、3以上の層を含むものであってもよい。後者の場合、多層構造は、ガスバリア層、例えば上述したエチレン-ビニルアルコール共重合体等の成分を含んだ層を中間層として含んでいてもよい。
【0104】
容器本体22には、紙を用いることもできる。内容物30が液状物を含む場合、容器本体22には、紙基材と、これに液状物が浸み込むのを防止するべく、その内容物側の面に設けられた、樹脂等からなる層とを含んだ多層構造を採用することができる。紙基材を含んだ容器本体22の材料としては、例えば、紙葉、紙粉、パルプ、又は古紙を使用することができる。容器本体22への成形には、紙パックの製造において行うような紙葉を含むシートの折り曲げや貼り付けによる方法、金型を使用したシートのプレス成型、及びパルプモールドなどの汎用技術を利用可能である。容器本体22に紙を用いることで、食品用包装容器20の全体で、その製造及び廃棄に伴う二酸化炭素の排出量の低減を図ることが可能となり、加えて本発明の蓋材と同様にリサイクル処理により紙を再利用することも可能であり、それ故、環境への負荷が小さくなる。
【0105】
蓋体21は、蓋体用積層シート10であるか、又は、それを切り出したものである。蓋体21は、容器本体22内への内容物30を収容後に、ヒートシール層1を介してフランジ22aにヒートシールされる。蓋体21がヒートシール層1を介してヒートシールされると、蓋体21に含まれる支持層2は、紙基材4と容器本体22の内部空間との間に配置される。このヒートシールにおいて、シール温度、シール圧力、及びシール時間は、適宜設定することができる。
【0106】
内容物30としての食品は、特に限定されるものではないが、チルド食品又は冷凍食品であることが好ましい。チルド食品及び冷凍食品は、例えば、調理又は加工済みの食品である。チルド食品及び冷凍食品は、例えば、焼き魚、煮魚、又は総菜である。
【0107】
この包装食品40では、上記の通り、蓋体21と容器本体22との間のヒートシール強さは、蓋体21に含まれる支持層2の破断強度よりも小さいことが好ましい。このヒートシール強さは、5N/15mm乃至60N/15mmの範囲内にあることが好ましく、10N/15mm乃至50N/15mmの範囲内にあることがより好ましい。支持層2の破断強度と、蓋体21と容器本体22との間のヒートシール強さとの差は、5乃至60N/15mmの範囲内にあることが好ましく、10乃至40N/15mmの範囲内にあることがより好ましい。ここで、ヒートシール強さは、JIS Z0238:1998「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」に規定される方法で得られる値である。
【0108】
この包装食品の製造においては、蓋体21を容器本体22へヒートシールする前に、例えば、容器本体22内へ内容物を収容した後であって、蓋体21を容器本体22へヒートシールする前に、容器本体22内のガスを公知の方法で置換してもよい。例えば、容器本体22内に不活性ガスを充填してもよい。容器内のガス組成を適切に変更することで、細菌の増殖を抑えて品質保持期間を長くしたり、酸化防止により食品の風味や色彩等を長く維持したり、ビタミンの損失を防止したりすることができる。置換ガスは、内容物30である食品の種類に応じて適宜選択する。置換ガスとしては、酸素ガス、窒素ガス及び炭酸ガスの混合ガスが好適に用いられる。
【0109】
この包装食品40が含んでいる蓋体21は、上述した蓋体用積層シート10であるか、又は、これから切り出したものである。それ故、包装食品40は、蓋体21の機能が優れているとともに、蓋体のリサイクル性が優れている。
【実施例0110】
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
【0111】
<1>蓋体用積層シートの製造
(例1)
図1に示す蓋体用積層シート10を、以下の方法により製造した。なお、本例では、ガスバリア層3及びアンカーコート層8は省略した。
【0112】
先ず、紙基材4として、坪量が52.3g/mの片面塗工紙P1を準備した。この片面塗工紙P1は一方の面にコート層を有する。
【0113】
この紙基材4のコート層上に、グラビア多色印刷機を使用して、印刷層5及び機能層6を順次形成した。印刷層5としては、通常の印刷インキを使用して、テストパターンを形成した。印刷インキの塗布量は1.0g/mとした。機能層6は、ニトロセルロース系樹脂とポリエチレン系の粒状ワックスとを主成分とするOPニス剤を使用して形成した。OPニス剤の塗布量は0.6g/mとした。これにより、紙基材4と印刷層5と機能層6とからなる積層体を形成した。
【0114】
ドライラミネートに当たっては、先ず、支持層2である二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムに、グラビアコータを使用してドライラミネート剤を塗布して、接着層7を形成した。支持層2として使用した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムは、厚みが20μm、面積当たりの質量が18.2g/m、ガラス転移温度が0℃、融点が165℃であった。ドライラミネート剤としては、ポリエステル系主剤とイソシアネート系硬化剤とを含む二液反応型の接着剤を使用した。ドライラミネート剤の塗布量は3.0g/mとした。次いで、この接着層7を間に挟んで、支持層2が紙基材4と向き合うように、上記の積層体と支持層2とを貼り合わせた。
【0115】
その後、支持層2上にヒートシール層1を形成した。ヒートシール層1は、支持層2へヒートシールニスを塗布し、塗膜を乾燥させることにより形成した。ヒートシールニスとしては、エチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分として含み、溶媒又は分散媒として水とイソプロパノールとを含む水系エマルジョン(HSニスA)を使用した。ヒートシールニスは、グラビア印刷法により、面積当たりの乾燥質量が3.0g/mとなるように塗布した。
以上のようにして、ガスバリア層3及びアンカーコート層8を省略した蓋体用積層シート10を得た。
【0116】
(例2)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シート10を製造した。即ち、本例では、支持層2として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを使用する代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを使用した。支持層2として使用した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムは、厚みが30μm、面積当たりの質量が27.3g/m、ガラス転移温度が-125℃、融点が130℃であった。
【0117】
また、本例では、アンカーコート層8を省略しなかった。アンカーコート層8は、ヒートシール層1を形成するのに先立ち、グラビアコータを使用して支持層2上へアンカーコート剤を塗布することにより形成した。アンカーコート剤としては、エステル系ポリオールとイソシアネート系硬化剤とを含む二液反応型の接着剤を使用した。アンカーコート剤は、グラビア印刷法により、面積当たりの乾燥質量が1.5g/mとなるように塗布した。
【0118】
また、本例では、ヒートシールニスとして、HSニスAの代わりに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とオレフィン系樹脂粒子とを含み、溶媒又は分散媒として酢酸エチルを含む溶剤系エマルジョン(HSニスB)を使用した。ヒートシールニスは、グラビア印刷法により、面積当たりの乾燥質量が6.0g/mとなるように塗布した。
【0119】
(例3)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シート10を製造した。即ち、本例では、紙基材4として、坪量が52.3g/mの片面塗工紙P1を使用する代わりに、坪量が73.3g/mの片面塗工紙P2を使用した。
【0120】
(例4)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シート10を製造した。即ち、本例では、紙基材4として、坪量が52.3g/mの片面塗工紙P1を使用する代わりに、坪量が73.3g/mの片面塗工紙P2を使用した。また、本例では、支持層2として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを使用する代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを使用した。支持層2として使用した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムは、厚みが30μm、面積当たりの質量が27.3g/m、ガラス転移温度が-125℃、融点が130℃であった。
【0121】
また、本例では、アンカーコート層8を省略しなかった。アンカーコート層8は、ヒートシール層1を形成するのに先立ち、グラビアコータを使用して支持層2上へアンカーコート剤を塗布することにより形成した。アンカーコート剤としては、エステル系ポリオールとイソシアネート系硬化剤とを含む二液反応型の接着剤を使用した。アンカーコート剤は、グラビア印刷法により、面積当たりの乾燥質量が1.5g/mとなるように塗布した。
【0122】
また、本例では、ヒートシールニスとして、HSニスAの代わりに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とオレフィン系樹脂粒子とを含み、溶媒又は分散媒として酢酸エチルを含む溶剤系エマルジョン(HSニスB)を使用した。ヒートシールニスは、グラビア印刷法により、面積当たりの乾燥質量が6.0g/mとなるように塗布した。
【0123】
(例5)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シート10を製造した。即ち、本例では、ガスバリア層3を省略しなかった。ガスバリア層3は、紙基材4のコート層上に印刷層5及び機能層6を形成する前に、紙基材4のコート層とは反対側の面に形成した。具体的には、ガスバリア層3は、ポリビニルアルコールを主成分として含み、無機酸化物として合成雲母を含む塗液を、面積当たりの乾燥質量が15g/mとなるように塗布することにより形成した。紙基材4とガスバリア層3との積層体は「バリア紙」と呼ぶ。例5において、紙基材4の坪量は52.3g/mであり、バリア紙の坪量は67.3g/mであった。
【0124】
(例6)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シート10を製造した。即ち、本例では、ガスバリア層3を省略しなかった。ガスバリア層3は、紙基材4のコート層上に印刷層5及び機能層6を形成する前に、紙基材4のコート層とは反対側の面に形成した。具体的には、ガスバリア層3は、ポリビニルアルコールを主成分として含み、無機酸化物として合成雲母を含む塗液を、面積当たりの乾燥質量が15g/mとなるように塗布することにより形成した。紙基材4とガスバリア層3との積層体は「バリア紙」と呼ぶ。例6において、紙基材4の坪量は52.3g/mであり、バリア紙の坪量は67.3g/mであった。
【0125】
また、本例では、支持層2として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを使用する代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを使用した。支持層2として使用した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムは、厚みが30μm、面積当たりの質量が27.3g/m、ガラス転移温度が-125℃、融点が130℃であった。
【0126】
また、本例では、アンカーコート層8を省略しなかった。アンカーコート層8は、ヒートシール層1を形成するのに先立ち、グラビアコータを使用して支持層2上へアンカーコート剤を塗布することにより形成した。アンカーコート剤としては、エステル系ポリオールとイソシアネート系硬化剤とを含む二液反応型の接着剤を使用した。アンカーコート剤は、グラビア印刷法により、面積当たりの乾燥質量が1.5g/mとなるように塗布した。
【0127】
また、本例では、ヒートシールニスとして、HSニスAの代わりに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とオレフィン系樹脂粒子とを含み、溶媒又は分散媒として酢酸エチルを含む溶剤系エマルジョン(HSニスB)を使用した。ヒートシールニスは、グラビア印刷法により、面積当たりの乾燥質量が6.0g/mとなるように塗布した。
【0128】
(比較例1)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シートを製造した。即ち、本例では、ガスバリア層3及びアンカーコート層8に加えて、支持層2及び接着層7を省略した。具体的には、本例では、紙基材4のコート層とは反対側の面に、例1と同様の方法に従ってヒートシール層1を形成した。
【0129】
(比較例2)
以下の点を除き、例3と同様の方法により、蓋体用積層シートを製造した。即ち、本例では、ガスバリア層3及びアンカーコート層8に加えて、支持層2及び接着層7を省略した。具体的には、本例では、紙基材4のコート層とは反対側の面に、例3と同様の方法に従ってヒートシール層1を形成した。
【0130】
(比較例3)
以下の点を除き、例5と同様の方法により、蓋体用積層シートを製造した。即ち、本例では、アンカーコート層8に加えて、支持層2及び接着層7を省略した。具体的には、本例では、紙基材4上に形成されたガスバリア層3の上に、例5と同様の方法に従ってヒートシール層1を形成した。
【0131】
(比較例4)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シートを製造した。即ち、本例では、支持層2として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを使用する代わりに二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。支持層2として使用した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、厚みが12μm、面積当たりの質量が16.4g/m、ガラス転移温度が69℃、融点が260℃であった。
【0132】
(比較例5)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、蓋体用積層シートを製造した。即ち、本例では、支持層2として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを使用する代わりに二軸延伸ナイロン(Ny)フィルムを使用した。支持層2として使用した二軸延伸ナイロン(Ny)フィルムは、厚みが15μm、面積当たりの質量が17.4g/m、ガラス転移温度が50℃、融点が220℃であった。
【0133】
<2>評価
例1~6及び比較例1~5の各蓋体用積層シートについて、以下の評価を行った。
【0134】
(支持層の破断強度)
各蓋体用積層シートで使用した支持層2について、JIS Z1707:2019の引張力の測定方法に準拠し破断強度を測定した。試験片の幅は15mmとし、長さは100mmとした。試験片の数は3個とした。標線間距離は50mmとし、試験速度は1000mm/分とした。破断強度の測定は、テンシロン万能試験機を用いて行った。破断強度はMD及びTDについて測定した。
【0135】
(ヒートシール強さの測定)
各蓋体用積層シートについて、上述した方法により、樹脂シートに対するヒートシール強さを測定した。
【0136】
ここでは、樹脂シートとして、一対のポリプロピレン層と、それらの間に介在した、ポリプロピレンと4質量%のエチレン-ビニルアルコール共重合体との混合物からなる層とを含んだ三層構造のシートを使用した。
【0137】
各蓋体用積層シートと樹脂シートとは、テスター産業社製 TP-701-B ヒートシールテスターを使用してヒートシールした。ここで使用したヒートシールテスターは、シールバーの幅が5mmであった。シールバーの長さ方向は、MDに対して垂直にした。ヒートシールは、各ヒートシール位置で、蓋体用積層シートと樹脂シートとの積層体へ、170℃又は190℃の温度及び0.2MPaの圧力を2秒間加えることにより行った。例1、例3、例5、比較例1、比較例2、比較例3の蓋体用積層シートについては170℃のシール温度を採用し、例2、例4、例6、比較例4、比較例5の蓋体用積層シートについては190℃のシール温度を採用した。このようにして部分的にヒートシールした各積層体から、幅が15mmの短冊形状を有し、長さ方向がMDに平行であり、一端側ではヒートシールされておらず、他端側で30乃至50mmの長さに亘ってヒートシールされた3つの試験片を切り出した。
【0138】
また、これとは別に、各蓋体用積層シートと樹脂シートとを、シールバーの長さ方向をTDに対して垂直にしたこと以外は上記と同様の方法によりヒートシールした。このようにして部分的にヒートシールした各積層体から、幅が15mmの短冊形状を有し、長さ方向がTDに平行であり、一端側ではヒートシールされておらず、他端側で30乃至50mmの長さに亘ってヒートシールされた3つの試験片を切り出した。
【0139】
次に、各試験片のヒートシール強さを、上述した方法により測定した。具体的には、ヒートシール強さの測定には、テンシロン万能試験機を使用した。各試験片のヒートシールされていない蓋体用積層シート部及び樹脂シート部を試験機の掴み具に掴ませ、それら掴み具を互いから離れる方向へ移動させた。それら掴み具の相対移動速度、即ち、剥離速度は300mm/分とした。各試験片について、その破断を生じるまでの間に加えた引張荷重の最大値を記録した。
【0140】
蓋体用積層シート毎に、長さ方向がMDに平行な3つの試験片について得られた引張荷重の最大値を算術平均することによって、MDにおけるヒートシール強さを得た。また、蓋体用積層シート毎に、長さ方向がTDに平行な3つの試験片について得られた引張荷重の最大値を算術平均することによって、TDにおけるヒートシール強さを得た。
【0141】
(開封試験)
蓋体用積層シートの各々から、複数の蓋体を切り出した。これら蓋体を用いて、図2に示す包装食品40を製造した。ここでは、容器本体22として、ヒートシール強さの測定に使用した樹脂シートをトレイ形状へ成形してなるものを使用した。容器本体22は、長辺方向の寸法が120mmであり、短辺方向の寸法が90mmである略長方形状の開口を有しており、高さが30mmであった。蓋体21のフランジ22aへのヒートシールは、フランジ22aの形状に沿うように作製した、幅が5mmのシールバーを使用し、180℃の温度及び0.2MPaの圧力を1.5秒間加えることにより行った。
【0142】
次に、各包装食品40について、容器本体22の角から蓋体21を手で剥離することにより開封した。また、開封によって、毛羽立ちや糸引きが生じたか、また、紙剥けが生じたか確認した。
【0143】
(リサイクル性)
各蓋体用積層シートについて、紙基材4を除いた蓋体用積層シートの質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合を算出した。この算出結果によりリサイクル性を評価した。
【0144】
(吸水度)
各蓋体用積層シートについて、上述したとおり、JIS P8140:1998「紙及び板紙-吸水度試験方法-コッブ法」に規定された方法に従って、機能層6側からの吸水量を測定した。
【0145】
上記の蓋体用積層シートの構成を、以下の表1に纏める。また、上記の測定及び試験の結果を、以下の表2に纏める。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
表1において、「AC層」はアンカーコート層を表している。表1及び2において、「質量」は面積当たりの質量を表している。表2において、「質量割合」と表記された欄における、「紙」、「プラスチック」及び「その他」の分類は、「容器包装リサイクル法 説明資料」に従うものである。
【0149】
また、表2の「開封試験」の「毛羽立ち・糸引き」と表記された欄において、「A」は目視により毛羽立ちや糸引きを確認することが困難であったことを示している。表2の「開封試験」の「紙剥け」と表記された欄において、「A」は紙剥けを生じなかったことを示し、「B」は紙剥けが生じたことを示している。
【0150】
表2の「リサイクル性」の「評価」と表記された欄において、「A」はオレフィン系樹脂の割合が60~100%であることを示し、「B」はオレフィン系樹脂の割合が40%以上60%未満であることを示し、「C」はオレフィン系樹脂の割合が0%以上40%未満であることを示す。なお、比較例1乃至3は、支持層を省略しているため、表2の「リサイクル性」の欄は、ブランクとした。
【0151】
表2の「吸水度」と表記された欄において、「A」は吸水量が20g/m以下であることを示す。
【0152】
表1及び2に示すように、例1乃至6に係る蓋体用積層シートでは、紙基材の質量は、蓋体用積層シートに含まれる他の何れの層の質量よりも大きく、支持層はオレフィン系樹脂から構成され、紙基材を除いた蓋体用積層シートの質量に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合が40%以上であった。かかる蓋体用積層シートからつくられる蓋体は、表1及び2に示すように、蓋体としての機能(強度、開封性、耐水性など)を維持しながら、プラスチックの使用量を低減し、かつ、リサイクル性を高めることができた。
【0153】
一方、比較例1乃至3に係る蓋体用積層シートからつくられる蓋体は、支持層を含まないため、開封試験において紙剥けが起こった。比較例4及び5に係る蓋体用積層シートからつくられる蓋体は、蓋体としての機能に問題はないが、リサイクル性を満足していなかった。
【符号の説明】
【0154】
1…ヒートシール層、2…支持層、3…ガスバリア層、4…紙基材、5…印刷層、6…機能層、7…接着層、8…アンカーコート層、10…蓋体用積層シート、20…食品用包装容器、21…蓋体、22…容器本体、22a…フランジ、30…内容物、40…包装食品。
図1
図2