(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047338
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152904
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 豊
(72)【発明者】
【氏名】黒木 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堂場 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 信
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022JJ11
3F022LL12
3F022MM01
3F022QQ04
(57)【要約】
【課題】走行フロアにおいて走行経路を密に設定しつつ、柱と搬送車との干渉を避けることが可能とする。
【解決手段】複数の走行フロアFのそれぞれに形成された走行面Ffを走行する搬送車を備え、搬送車は、直進走行を行うと共に、その場で上下軸心まわりに旋回する旋回動作を実行して方向転換を行うように構成されている。柱1は、走行フロアFを上下方向に貫通して走行面Ffよりも上側に突出するように配置されている。柱1を貫通させるために走行フロアFに設けられた柱用貫通孔5が、上下方向視で第1直進軌跡T1、第2直進軌跡T2、及び、旋回軌跡Trと重複せず、且つ、第1接線TL1及び第2接線TL2の少なくとも一方と重複するように配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に並ぶ複数階層の走行フロアと、複数の前記走行フロアを支持する支持フレームと、複数の前記走行フロアのそれぞれに形成された走行面を走行する搬送車と、を備えた物品搬送設備であって、
前記支持フレームは、複数の柱と複数の梁とが組み合わされて構成され、
複数の前記走行フロアのそれぞれの前記走行面は、平面状に並べられた複数の床板の上面により形成され、
前記搬送車は、直進走行を行うと共に、その場で上下軸心まわりに旋回する旋回動作を実行して方向転換を行うように構成され、
前記走行面に沿う方向のうち特定の方向を第1方向とし、前記走行面に沿う方向のうち前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記走行面には、前記第1方向に沿う前記搬送車の走行経路である第1走行経路と、前記第2方向に沿う前記搬送車の走行経路である第2走行経路と、前記第1走行経路と前記第2走行経路とが交差する箇所に配置されて前記旋回動作が許容される旋回位置と、が設定され、
前記柱は、少なくともいずれかの層の前記走行フロアを上下方向に貫通して前記走行面よりも上側に突出するように配置され、
前記第1走行経路を直進走行する前記搬送車の軌跡を第1直進軌跡とし、前記第2走行経路を直進走行する前記搬送車の軌跡を第2直進軌跡とし、前記旋回位置において前記旋回動作を行う前記搬送車の軌跡を旋回軌跡とし、前記第1方向と平行な前記旋回軌跡の外縁の接線を第1接線とし、前記第2方向と平行な前記旋回軌跡の外縁の接線を第2接線として、
前記柱を貫通させるために前記走行フロアに設けられた柱用貫通孔が、上下方向視で前記第1直進軌跡、前記第2直進軌跡、及び、前記旋回軌跡と重複せず、且つ、前記第1接線及び前記第2接線の少なくとも一方と重複するように配置されている、物品搬送設備。
【請求項2】
前記柱用貫通孔が、前記第1接線及び前記第2接線の双方と重複するように配置されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記柱は、4つの側面を有する四角柱状に形成され、
4つの前記側面のそれぞれに、前記梁を前記柱に連結するための連結部材が取り付けられ、
前記連結部材が、前記柱用貫通孔を貫通するように配置されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記床板は、上下方向視で矩形状に形成され、
前記床板の四隅のうち少なくとも一部に切欠きが設けられ、
隣接する4枚の前記床板のそれぞれに形成された前記切欠きの集合により、1つの前記柱用貫通孔が形成されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記走行面における複数箇所に、当該箇所の位置情報を保持する位置情報保持部が設けられ、
前記旋回位置は、前記位置情報保持部の位置に基づいて設定されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に並ぶ複数階層の走行フロアと、複数の前記走行フロアを支持する支持フレームと、複数の前記走行フロアのそれぞれに形成された走行面を走行する搬送車と、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流倉庫等の物品搬送設備において物品搬送の自動化が進んでいる。このような物品搬送設備では、例えば特開2022-050240号公報(特許文献1)に開示されているような搬送車(10)が多く活用されている。搬送車(10)は、無人で走行フロアを走行して物品を搬送するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送車が走行するための走行フロアを複数階層に亘って設けることにより、設備の活用の幅が広がり、設備全体としての能力向上が期待できる。複数階層の走行フロアを設けるには、それらを支えるための柱が必須となる。しかし、柱と搬送車との干渉は避けなければならないため、柱の配置位置には、搬送車の走行経路との関係で制約がある。例えば柱と走行経路との間にゆとりを持たせるために走行フロアを平面的に広げることが考えられるが、走行フロアを単に広げようとすると、無駄なスペースが生じて、空間効率が低下し易い。
【0005】
上記実状に鑑みて、走行フロアにおいて走行経路を密に設定しつつ、柱と搬送車との干渉を避けることが可能な物品搬送設備の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上下方向に並ぶ複数階層の走行フロアと、複数の前記走行フロアを支持する支持フレームと、複数の前記走行フロアのそれぞれに形成された走行面を走行する搬送車と、を備えた物品搬送設備であって、
前記支持フレームは、複数の柱と複数の梁とが組み合わされて構成され、
複数の前記走行フロアのそれぞれの前記走行面は、平面状に並べられた複数の床板の上面により形成され、
前記搬送車は、直進走行を行うと共に、その場で上下軸心まわりに旋回する旋回動作を実行して方向転換を行うように構成され、
前記走行面に沿う方向のうち特定の方向を第1方向とし、前記走行面に沿う方向のうち前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記走行面には、前記第1方向に沿う前記搬送車の走行経路である第1走行経路と、前記第2方向に沿う前記搬送車の走行経路である第2走行経路と、前記第1走行経路と前記第2走行経路とが交差する箇所に配置されて前記旋回動作が許容される旋回位置と、が設定され、
前記柱は、少なくともいずれかの層の前記走行フロアを上下方向に貫通して前記走行面よりも上側に突出するように配置され、
前記第1走行経路を直進走行する前記搬送車の軌跡を第1直進軌跡とし、前記第2走行経路を直進走行する前記搬送車の軌跡を第2直進軌跡とし、前記旋回位置において前記旋回動作を行う前記搬送車の軌跡を旋回軌跡とし、前記第1方向と平行な前記旋回軌跡の外縁の接線を第1接線とし、前記第2方向と平行な前記旋回軌跡の外縁の接線を第2接線として、
前記柱を貫通させるために前記走行フロアに設けられた柱用貫通孔が、上下方向視で前記第1直進軌跡、前記第2直進軌跡、及び、前記旋回軌跡と重複せず、且つ、前記第1接線及び前記第2接線の少なくとも一方と重複するように配置されている。
【0007】
本構成によれば、各走行フロアにおいて走行経路を密に設定しつつ、走行経路を走行する搬送車と柱との干渉を避けることができる。また、柱が走行フロアを貫通して走行面よりも上側に突出することを許容した構成であるため、走行フロアの外縁だけでなく走行フロアの中央側にも柱を配置することができる。従って、複数階層の走行フロアの剛性を確保し易い。
【0008】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】物品搬送設備の1階走行フロア及び2階走行フロアを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して物品搬送設備の実施形態について説明する。
【0011】
〔物品搬送設備の概略〕
まず、
図1を参照して、物品搬送設備の概略について説明する。
図1に示すように、物品搬送設備100は、上下方向に並ぶ複数階層の走行フロアFと、複数の走行フロアFを支持する支持フレームSFと、複数の走行フロアFのそれぞれに形成された走行面Ffを走行する搬送車Vと、を備えている。各階層の走行フロアFにおいて、複数の搬送車Vが走行面Ffを走行している。
【0012】
図1に示す例では、物品搬送設備100は、2階層の走行フロアFを備えている。
図1は、1階の走行フロアFと2階の走行フロアFを示している。但し、このような構成に限定されることなく、物品搬送設備100は、3階層以上の走行フロアFを備えていてもよい。
【0013】
搬送車Vは、物品Gを搬送するように構成されている。搬送車Vは、直進走行を行うと共に、その場で上下軸心まわりに旋回する旋回動作を実行して方向転換を行うように構成されている。搬送車Vは、直進走行と旋回動作とを行うことにより、1階の走行フロアF及び2階の走行フロアFのそれぞれにおいて、走行面Ff上を自在に走行することが可能となっている。
【0014】
物品搬送設備100は、複数階層(本例では2階層)の走行フロアFに亘って搬送車Vを昇降させる一対のリフタLと、物品Gが供給される物品供給部Pgと、物品供給部Pgから供給された物品Gを搬送車Vに引き渡す作業が行われる作業エリアWAと、物品Gの仕分け作業が行われる仕分けエリアSAと、仕分けエリアSAにおける仕分け作業によって発生した空の容器Cを回収する空容器回収装置Bと、を備えている。
【0015】
本実施形態では、作業エリアWA及び仕分けエリアSAの双方が、1階の走行フロアFと同じレベルに設けられている。そして、2階の走行フロアFには、作業エリアWA及び仕分けエリアSAの双方が設けられていない。
【0016】
作業エリアWAは、1階の走行フロアFにおける搬送車Vの走行経路Rと、物品供給部Pgと、の双方に隣接するように配置されている。本実施形態では、物品供給部Pgは、物品Gを、供給容器Cpに収容した状態で作業エリアWAに供給する。作業エリアWAでは、供給容器Cpに収容された物品Gを取り出して、走行経路Rで待機する搬送車Vに当該物品Gを引き渡す作業が行われる。搬送車Vへの物品Gの引き渡しは、供給容器Cpとは別の容器Cに物品Gを収容した状態で行われてもよいし、物品Gを容器Cに収容することなくそのまま引き渡す態様で行われてもよい。本実施形態では、作業エリアWAでの上記作業が、作業者Wによって行われる。但し、作業者Wではなく、ロボットによって上記作業が行われてもよいし、作業者W及びロボットの双方によって上記作業が行われてもよい。
【0017】
仕分けエリアSAは、作業エリアWAとは離れた場所において走行経路Rに隣接するように配置されている。搬送車Vは、作業エリアWAで受け取った物品Gを仕分けエリアSAに搬送する。仕分けエリアSAでは、搬送車Vによって搬送された物品Gの仕分け作業が行われる。本実施形態では、仕分けエリアSAは、複数の仕分けコンベヤScを備えている。搬送車Vは、複数の仕分けコンベヤScの何れかに物品Gを引き渡す。仕分けエリアSAでは、搬送車Vによって仕分けコンベヤScに引き渡された物品Gの仕分け作業が行われる。仕分け作業は、予め定められたオーダー情報に基づいて行われる。例えば、オーダー情報には、例えば、顧客情報、出荷先情報、物品種別情報などの各種情報が含まれる。
【0018】
搬送車Vは、容器Cに収容された物品Gを仕分けエリアSAに搬送する場合には、容器Cごと物品Gを仕分けコンベヤScに引き渡す。この場合、仕分けエリアSAでは、搬送車Vによって搬送された容器Cから物品Gを取り出す取出作業が行われる。この取出作業により発生した空の容器Cは、空容器回収装置Bによって回収される。空容器回収装置Bによって回収された空の容器Cは、回収経路Rbに沿って作業エリアWAまで搬送され、作業エリアWAでの作業に用いられる。本実施形態では、仕分けエリアSAでの仕分け作業(上記取出作業を含む)が、作業者Wによって行われる。但し、作業者Wではなく、ロボットによって仕分け作業が行われてもよいし、作業者W及びロボットの双方によって仕分け作業が行われてもよい。
【0019】
搬送車Vは、物品Gを仕分けエリアSAに引き渡した後は、リフタLに乗って、他階の走行フロアF(本例では2階の走行フロアF)へ向かう。そして、搬送車Vは、2階の走行フロアFを走行して他のリフタLに乗り、上述の作業エリアWA及び仕分けエリアSAが設けられた階の走行フロアF(本例では1階の走行フロアF)へ戻る。戻った搬送車Vは、上記同様に、作業エリアWAにおいて物品Gを受け取り、当該物品Gを仕分けエリアSAへ搬送する。
【0020】
〔走行フロアの構成〕
次に、走行フロアFの構成について詳細に説明する。上述のように、複数の走行フロアFは、支持フレームSFによって支持されている。
【0021】
図2に示すように、支持フレームSFは、複数の柱1(
図5参照)と複数の梁2とが組み合わされて構成されている。柱1は、上下方向に沿って延びている。梁2は、柱1に連結されており、水平方向に沿って延びている。
【0022】
本実施形態では、柱1は、4つの側面10を有する四角柱状に形成されている。柱1は、中空に形成されている。4つの側面10のそれぞれに、梁2を柱1に連結するための連結部材3が取り付けられている。従って、1本の柱1には、最大で4本の梁2を連結することが可能となっている。これによれば、走行面Ffの外縁以外の領域に柱1を配置する場合に、当該柱1に最大で4本の梁2を連結することができるため、梁2を用いた走行フロアFの支持を適切に行い易い。なお、柱1に連結する梁2の本数は、任意に定めることができる。
【0023】
連結部材3は、柱1の側面10に対して、梁2の延在方向の端部を連結するように構成されている。本例では、柱1に取り付けられた連結部材3が、梁2を支持することにより、梁2が柱1に連結される。
【0024】
本実施形態では、連結部材3は、梁2を下方から支持する支持部30と、支持部30における幅方向(上下方向及び梁2の延在方向の双方に直交する方向)の両端部のそれぞれから下方に延在する一対の側壁部31と、支持部30から上向きに屈曲されて柱1の側面10に沿って延在する上方固定部32と、一対の側壁部31のそれぞれから上記幅方向の内側に屈曲されて柱1の側面10に沿って延在する側方固定部33と、を備えている。
【0025】
連結部材3における上方固定部32及び側方固定部33が、柱1の側面10に固定されている。本例では、柱1の側面10には貫通孔10hが形成されている。そして、上方固定部32及び側方固定部33は、貫通孔10hを貫通するリベットによって、柱1の側面10に固定されている。
【0026】
梁2は、連結部材3の支持部30によって支持される被支持部20と、被支持部20における幅方向(上下方向及び梁2の延在方向の双方に直交する方向)の両端部のそれぞれから下方に垂下する一対の垂下部21と、を備えている。被支持部20は、支持部30に対して上方に配置されている。一対の垂下部21のそれぞれは、一対の側壁部31のうち上記幅方向の同じ側に配置された側壁部31に対して上記幅方向の外側に配置されている。これにより、梁2の延在方向に沿う延在方向視において、梁2が連結部材3を覆うように配置されている。この状態において、梁2は、ボルト等の締結部材によって連結部材3に固定される。
【0027】
図3に示すように、梁2の上面に、床板4が載置されている。床板4は、ボルト等の締結部材によって梁2に固定されている。本実施形態では、柱1の周囲を囲むように複数の床板4(本例では4枚の床板4)が配置されている。1枚の床板4は、1本の柱1に連結されると共に互いに隣接する一対の梁2それぞれの上面に載置された状態で、当該一対の梁2に固定されている。
【0028】
複数の走行フロアFのそれぞれの走行面Ffは、平面状に並べられた複数の床板4の上面により形成されている(
図5も参照)。複数の床板4のそれぞれは、上下方向視で矩形状に形成されている。同じ大きさの同種類の床板4を複数用いて走行面Ffが形成されていてもよいし、大きさが異なる複数種類の床板4を用いて走行面Ffが形成されていてもよい。また、上下方向視での形状が正方形状あるいは長方形状の複数種類の床板4を用いて走行面Ffが形成されていてもよい。
【0029】
図3に示すように、走行フロアFには、柱1が配置される柱用貫通孔5が設けられている。柱1は、柱用貫通孔5を貫通するように配置されることで、走行フロアFを上下方向に貫通している。
【0030】
柱1は、少なくともいずれかの層の走行フロアFを上下方向に貫通して走行面Ffよりも上側に突出するように配置されている。本実施形態では、柱1は、少なくとも最下層の走行フロアFを上下方向に貫通して走行面Ffよりも上側に突出するように配置されている。このように、柱1が走行フロアFを貫通して走行面Ffよりも上側に突出することを許容した構成であるため、走行フロアFの外縁だけでなく走行フロアFの中央側にも柱1を配置することができる。従って、複数階層の走行フロアFの剛性を確保し易い。
【0031】
本実施形態では、複数の柱1のうち一部は最下層の走行フロアFのみを貫通している。すなわち本例では、複数の柱1のうち一部は1階の走行フロアFのみを貫通している。また、詳細な図示は省略するが、複数の柱1のうち他の一部は、最下層及びその上層の走行フロアFを貫通している。すなわち本例では、複数の柱1のうち他の一部は、1階の走行フロアF及び2階の走行フロアFの双方を貫通している。
【0032】
本実施形態では、柱1に取り付けられた連結部材3が、柱用貫通孔5を貫通するように配置されている。このように、本実施形態では、柱用貫通孔5を連結部材3の配置領域としても利用している。そのため、連結部材3による柱1と梁2の適切な連結を実現しつつ、当該連結部材3を配置することによる走行フロアFの拡大を抑制することができる。
【0033】
本実施形態では、連結部材3の一部分が、柱用貫通孔5を貫通するように配置されている。詳細には、連結部材3における上方固定部32が、柱用貫通孔5を貫通し、走行面Ffよりも上方に配置されている。連結部材3は、梁2を下方から支持しているところ、連結部材3における柱1に固定される部分の上下方向の範囲が広く確保されていると、水平方向に延びる梁2を支持する際の支持強度を向上できるので好ましい。上記構成によれば、連結部材3における上方固定部32が、柱用貫通孔5を貫通し、走行面Ffよりも上方に配置されているため、連結部材3における柱1に固定される部分の上下方向の範囲を広く確保することができる。そのため、梁2を支持する際の支持強度を向上させることができる。
【0034】
一方で、連結部材3における支持部30は、梁2を下方から支持している。さらにこの梁2は、走行面Ffを形成する床板4を下方から支持している。従って、連結部材3における支持部30及び支持部30よりも下の部分は、走行面Ffよりも下方に配置されている。このような構成により、連結部材3における上方固定部32以外の部分は、走行面Ffよりも下方にされるため、柱用貫通孔5の大きさは、上方固定部32が貫通可能な大きさであればよく、連結部材3における上方固定部32以外の部分は貫通させる必要がない。従って、上方固定部32を走行面Ffよりも上方に配置しながらも上下方向視での柱用貫通孔5の寸法を小さく抑え易く、ひいては、走行フロアFの拡大を抑制することが可能となる。
【0035】
搬送車Vは、以上のように構成された走行フロアFの走行面Ffを走行するように構成されている。
【0036】
図4は、走行面Ffの一部を簡略的に示している。走行面Ffに沿う方向のうち特定の方向を第1方向Xとし、走行面Ffに沿う方向のうち第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとする。
【0037】
走行面Ffには、第1方向Xに沿う搬送車Vの走行経路Rである第1走行経路R1と、第2方向Yに沿う搬送車Vの走行経路Rである第2走行経路R2と、第1走行経路R1と第2走行経路R2とが交差する箇所に配置されて搬送車Vの旋回動作が許容される旋回位置Prと、が設定されている。
【0038】
本実施形態では、複数の第1走行経路R1と複数の第2走行経路R2とが、上下方向視において格子状を成すように設定されている。上述のように、搬送車Vは、直進走行を行うと共に、その場で上下軸心まわりに旋回する旋回動作を実行して方向転換を行うように構成されている。搬送車Vは、直進走行と旋回動作とを組み合わせて実行することにより、走行面Ff上に設定された何れの走行経路Rも走行することが可能となっている。
【0039】
本実施形態では、走行面Ffにおける複数箇所に、当該箇所の位置情報を保持する位置情報保持部Inが設けられている。本例では、複数の位置情報保持部Inを繋ぐように走行経路Rが設定されている。より詳細には、第1方向Xに並んで配置された複数の位置情報保持部Inを繋ぐように第1走行経路R1が設定されている。第2方向Yに並んで配置された複数の位置情報保持部Inを繋ぐように第2走行経路R2が設定されている。
【0040】
本実施形態では、旋回位置Prは、位置情報保持部Inの位置に基づいて設定されている。換言すれば、搬送車Vは、位置情報保持部Inが配置された位置において、旋回動作を行うように構成されている。
【0041】
本実施形態では、位置情報保持部Inには、固有の識別情報が設定されている。本例では、識別情報には、位置情報保持部Inが設けられた位置を示すアドレス情報が含まれている。搬送車Vは、位置情報保持部Inを検出するための検出部(不図示)を備えている。そして、搬送車Vは、この検出部によって位置情報保持部Inを検出することにより、当該位置情報保持部Inが設けられた位置、すなわち、検出時における自車の現在位置を把握可能となっている。例えば、位置情報保持部Inとして、識別情報を保有した1次元コード又は2次元コードを用いることができる。或いは、位置情報保持部Inとして、識別情報を保有したRFIDタグ(Radio Frequency Identification Tag)を用いることができる。
【0042】
図5に示すように、第1走行経路R1を直進走行する搬送車Vの軌跡を第1直進軌跡T1とし、第2走行経路R2を直進走行する搬送車Vの軌跡を第2直進軌跡T2とし、旋回位置Prにおいて旋回動作を行う搬送車Vの軌跡を旋回軌跡Trとする。これら第1直進軌跡T1、第2直進軌跡T2、及び旋回軌跡Trは、実際には目に見えないものであるが、
図5では、これらの軌跡を可視化して示している。
【0043】
走行面Ffより上側に突出する柱1は、第1直進軌跡T1、第2直進軌跡T2、及び旋回軌跡Trの各軌跡と上下方向視で重複しないように配置されている。上述のように、柱1は、走行フロアFに形成された柱用貫通孔5に配置される。柱用貫通孔5は、第1直進軌跡T1、第2直進軌跡T2、及び旋回軌跡Trの各軌跡と上下方向視で重複しないように配置されている。本例では、上下方向視において、柱用貫通孔5の内部に、柱1及び当該柱1の側面10に取り付けられた各連結部材3の一部分が配置されている。
【0044】
上述のように、床板4は、上下方向視で矩形状に形成されている。
図6に示すように、本実施形態では、床板4の四隅のうち少なくとも一部に切欠き40が設けられている。切欠き40は、上下方向視で床板4の中心に向けて切り欠くように形成されている。そして、柱1の周囲に隣接して配置された複数の床板4のそれぞれに形成された切欠き40の集合によって、柱用貫通孔5が形成されている。
図6に示す例では、隣接する4枚の床板4のそれぞれに形成された切欠き40の集合により、1つの柱用貫通孔5が形成されている。但し、柱用貫通孔5は、必ずしも4枚の床板4を用いて形成されるものではない。例えば、走行面Ffの外縁では、2枚または3枚の床板4のそれぞれに形成された切欠き40の集合によって1つの柱用貫通孔5が形成され、当該柱用貫通孔5に柱1が配置される。
【0045】
上述したが、
図6に示すように、柱用貫通孔5は、上下方向視で第1直進軌跡T1、第2直進軌跡T2、及び、旋回軌跡Trと重複しないように配置されている。また、第1方向Xと平行な旋回軌跡Trの外縁の接線を第1接線TL1とし、第2方向Yと平行な旋回軌跡Trの外縁の接線を第2接線TL2として、柱用貫通孔5は、第1接線TL1及び第2接線TL2の少なくとも一方と上下方向視で重複するように配置されている。これらの全ての条件を満たす位置に、柱用貫通孔5が配置されている。すなわち、柱1を貫通させるために走行フロアFに設けられた柱用貫通孔5が、上下方向視で第1直進軌跡T1、第2直進軌跡T2、及び、旋回軌跡Trと重複せず、且つ、第1接線TL1及び第2接線TL2の少なくとも一方と重複するように配置されている。これにより、各走行フロアFにおいて走行経路Rを密に設定しつつ、走行経路Rを走行する搬送車Vと柱1との干渉を避けることができる。
【0046】
本実施形態では、柱用貫通孔5が、第1接線TL1及び第2接線TL2の双方と重複するように配置されている。これにより、各走行フロアFにおいて走行経路Rを更に密に設定することができる。本例では、柱用貫通孔5の周囲に隣接して配置された全て(図示の例では4つ)の旋回軌跡Trについて、各旋回軌跡Trの外縁の第1接線TL1及び第2接線TL2の全てが、当該柱用貫通孔5に重複している。これにより、柱用貫通孔5の周囲の複数の位置情報保持部In(旋回位置Pr)を互いに接近して配置することができる。走行フロアFの大きさは、走行面Ff上に配置された複数の位置情報保持部Inの間隔にも依存しているため、上記構成のように柱用貫通孔5の周囲の複数の位置情報保持部Inを互いに接近して配置することで、走行フロアFの拡大抑制にも寄与できる。
【0047】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0048】
(1)上記の実施形態では、柱用貫通孔5が、第1接線TL1及び第2接線TL2の双方と上下方向視で重複するように配置されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、柱用貫通孔5は、第1接線TL1及び第2接線TL2の何れか一方のみと上下方向視で重複し、何れか他方には上下方向視で重複していなくてもよい。
【0049】
(2)上記の実施形態では、連結部材3が、柱用貫通孔5を貫通するように配置されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、連結部材3の全体が床板4よりも下方に配置され、柱用貫通孔5を貫通しない態様であってもよい。この場合、柱用貫通孔5には柱1のみが貫通し得る。そして、上下方向視での柱用貫通孔5の寸法は、柱1の外縁に応じた大きさとされる。
【0050】
(3)上記の実施形態では、矩形状の床板4の四隅のうち少なくとも一部に切欠き40が設けられており、柱1の周囲に隣接して配置された複数の床板4のそれぞれに形成された切欠き40の集合によって柱用貫通孔5が形成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、例えば、柱用貫通孔5は、1枚の床板4における外縁部分以外の部分を貫通する1つの孔により形成されていてもよい。
【0051】
(4)上記の実施形態では、柱1が、4つの側面10を有する四角柱状に形成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、柱1は、四角柱以外の多角柱状、または円柱状に形成されていてもよい。
【0052】
(5)上記の実施形態では、走行面Ffにおける複数箇所に、当該箇所の位置情報を保持する位置情報保持部Inが設けられており、複数の位置情報保持部Inを繋ぐように走行経路Rが設定されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、位置情報保持部Inは設けられていなくてもよい。この場合、例えば、走行面Ffに磁気テープを設け、当該磁気テープによって走行経路Rが設定されていてもよい。また、走行経路Rは、走行面Ffに設けられた被検出物(位置情報保持部Inや磁気テープ等)を用いずに設定されていてもよい。
【0053】
(6)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0054】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備について説明する。
【0055】
上下方向に並ぶ複数階層の走行フロアと、複数の前記走行フロアを支持する支持フレームと、複数の前記走行フロアのそれぞれに形成された走行面を走行する搬送車と、を備えた物品搬送設備であって、
前記支持フレームは、複数の柱と複数の梁とが組み合わされて構成され、
複数の前記走行フロアのそれぞれの前記走行面は、平面状に並べられた複数の床板の上面により形成され、
前記搬送車は、直進走行を行うと共に、その場で上下軸心まわりに旋回する旋回動作を実行して方向転換を行うように構成され、
前記走行面に沿う方向のうち特定の方向を第1方向とし、前記走行面に沿う方向のうち前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記走行面には、前記第1方向に沿う前記搬送車の走行経路である第1走行経路と、前記第2方向に沿う前記搬送車の走行経路である第2走行経路と、前記第1走行経路と前記第2走行経路とが交差する箇所に配置されて前記旋回動作が許容される旋回位置と、が設定され、
前記柱は、少なくともいずれかの層の前記走行フロアを上下方向に貫通して前記走行面よりも上側に突出するように配置され、
前記第1走行経路を直進走行する前記搬送車の軌跡を第1直進軌跡とし、前記第2走行経路を直進走行する前記搬送車の軌跡を第2直進軌跡とし、前記旋回位置において前記旋回動作を行う前記搬送車の軌跡を旋回軌跡とし、前記第1方向と平行な前記旋回軌跡の外縁の接線を第1接線とし、前記第2方向と平行な前記旋回軌跡の外縁の接線を第2接線として、
前記柱を貫通させるために前記走行フロアに設けられた柱用貫通孔が、上下方向視で前記第1直進軌跡、前記第2直進軌跡、及び、前記旋回軌跡と重複せず、且つ、前記第1接線及び前記第2接線の少なくとも一方と重複するように配置されている。
【0056】
本構成によれば、各走行フロアにおいて走行経路を密に設定しつつ、走行経路を走行する搬送車と柱との干渉を避けることができる。また、柱が走行フロアを貫通して走行面よりも上側に突出することを許容した構成であるため、走行フロアの外縁だけでなく走行フロアの中央側にも柱を配置することができる。従って、複数階層の走行フロアの剛性を確保し易い。
【0057】
前記柱用貫通孔が、前記第1接線及び前記第2接線の双方と重複するように配置されている、と好適である。
【0058】
本構成によれば、各走行フロアにおいて走行経路を更に密に設定することができる。
【0059】
前記柱は、4つの側面を有する四角柱状に形成され、
4つの前記側面のそれぞれに、前記梁を前記柱に連結するための連結部材が取り付けられ、
前記連結部材が、前記柱用貫通孔を貫通するように配置されている、と好適である。
【0060】
本構成によれば、走行面の外縁以外の領域に柱を配置する場合に、当該柱に最大で4本の梁を連結することができるため、梁を用いた走行フロアの支持を適切に行い易い。そして、柱と梁とを連結するための連結部材が、柱用貫通孔を貫通するように配置されている。すなわち、柱用貫通孔を連結部材の配置領域としても利用している。そのため、連結部材による柱と梁の適切な連結を実現しつつ、当該連結部材を配置することによる走行フロアの拡大を抑制することができる。
【0061】
前記床板は、上下方向視で矩形状に形成され、
前記床板の四隅のうち少なくとも一部に切欠きが設けられ、
隣接する4枚の前記床板のそれぞれに形成された前記切欠きの集合により、1つの前記柱用貫通孔が形成されている、と好適である。
【0062】
本構成によれば、4枚の床板を並べて配置することで、柱用貫通孔を簡易に形成することができる。従って、施工が容易となる。
【0063】
前記走行面における複数箇所に、当該箇所の位置情報を保持する位置情報保持部が設けられ、
前記旋回位置は、前記位置情報保持部の位置に基づいて設定されている、と好適である。
【0064】
本構成によれば、走行面における位置情報保持部の配置位置に基づいて、搬送車の旋回軌跡に対する柱の位置を適切に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示に係る技術は、上下方向に並ぶ複数階層の走行フロアと、複数の前記走行フロアを支持する支持フレームと、複数の前記走行フロアのそれぞれに形成された走行面を走行する搬送車と、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
100 :物品搬送設備
1 :柱
10 :側面
10h :貫通孔
2 :梁
3 :連結部材
4 :床板
40 :切欠き
5 :柱用貫通孔
SF :支持フレーム
F :走行フロア
Ff :走行面
In :位置情報保持部
R :走行経路
R1 :第1走行経路
R2 :第2走行経路
TL1 :第1接線
TL2 :第2接線
Pr :旋回位置
T1 :第1直進軌跡
T2 :第2直進軌跡
Tr :旋回軌跡
V :搬送車
G :物品
X :第1方向
Y :第2方向