(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047358
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】掘削土飛散防止具
(51)【国際特許分類】
E21B 4/06 20060101AFI20240329BHJP
E21B 12/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
E21B4/06
E21B12/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152934
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】511113785
【氏名又は名称】株式会社ミライト・ワン
(71)【出願人】
【識別番号】522379875
【氏名又は名称】株式会社ユニエックス
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】浦川 幸司
(72)【発明者】
【氏名】三谷 哲也
(72)【発明者】
【氏名】茂木 貞延
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA05
2D129BA22
2D129DA23
2D129DA24
2D129DB05
2D129DC01
2D129DC05
2D129DC13
2D129DC44
2D129DC53
2D129EB38
2D129HB05
(57)【要約】
【課題】養生作業に要する時間を削減することに加えて、掘削時の準備作業に要する時間を削減することができ、さらに嵩張ることなく保管、運搬することができる掘削土飛散防止具を提供する。
【解決手段】中空筒状のハンマケース3を含むダウンザホールハンマ2に装着されて、ハンマケース3の外面に沿って上向きに吹き上げられる掘削土を受け止める掘削土飛散防止具1を対象とする。柔軟性を有するシート体で部分円環状に形成され、小径側の円弧縁部16がハンマケース3の外周面に接する状態で、当該ハンマケース3に対して下拡がりの傘状姿勢で装着される本体シート12と、ハンマケース3に装着された本体シート12を位置保持するためのストッパー13とを備えている
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状のハンマケース(3)を含むダウンザホールハンマ(2)に装着されて、ハンマケース(3)の外面に沿って上向きに吹き上げられる掘削土を受け止める掘削土飛散防止具であって、
柔軟性を有するシート体で部分円環状に形成され、小径側の円弧縁部(16)がハンマケース(3)の外周面に接する状態で、当該ハンマケース(3)に対して下拡がりの傘状姿勢で装着される本体シート(12)と、
ハンマケース(3)に装着された本体シート(12)を位置保持するためのストッパー(13)と、
を備えていることを特徴とする掘削土飛散防止具。
【請求項2】
ストッパー(13)が、本体シート(12)の小径側の円弧縁部(16)に沿って固定されて、ハンマケース(3)に磁気吸着する複数個の装着マグネット(19)で構成されている請求項1に記載の掘削土飛散防止具。
【請求項3】
本体シート(12)に、ハンマケース(3)に装着した際の当該本体シート(12)の重畳部分(22)を連結するための連結手段(23)が設けられている請求項1または2に記載の掘削土飛散防止具。
【請求項4】
連結手段(23)が、本体シート(12)の重畳部分(22)において下側に位置する本体シート(12)の上面に配される吸着体(24)と、本体シート(12)の重畳部分(22)において上側に位置する本体シート(12)の下面に配され、吸着体(24)に磁気吸着する連結マグネット(25)とを含む請求項3に記載の掘削土飛散防止具。
【請求項5】
本体シート(12)に、ハンマケース(3)の周囲に傘状に巻回装着された本体シート(12)の形状を保持する保形手段(30)が設けられている請求項1または2に記載の掘削土飛散防止具。
【請求項6】
保形手段(30)が、本体シート(12)の部分円環形状に沿って固定された、可撓性を有する金属製のワイヤーロープ(31)で構成されている請求項5に記載の掘削土飛散防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウンザホールハンマ式の掘削工法において、掘削土の飛散を防止する掘削土飛散防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
ダウンザホールハンマ式の掘削工法においては、掘削中の孔とダウンザホールハンマとの隙間から、同ハンマの動作用の空気とともに掘削土がハンマ外面に沿うように上方に向かって勢いよく吹き上げられる。そのため、掘削場所周辺の広範な建物等に対して養生を行う必要があり、当該養生作業に多大な時間と手間を要していた。そこで、養生作業に要する時間を削減するために、掘削土飛散防止具で掘削土の飛散を防止することが、例えば特許文献1(発明の名称:削孔装置)に開示されている。特許文献1の削孔装置は、筒状の外周壁と、該外周壁の上端側を覆う天井壁と、該天井壁に設けられる円筒壁とを備えるユニット本体と、円筒壁内に内挿されるとともにダウンザホールハンマが挿通される調整アダプタとで掘削土飛散防止具(作業支援ユニット)が構成される。調整アダプタは、筒体と、該筒体の外周面上に径方向外方へ延出する複数の調整リブとを備えており、調整リブの延出寸法は、調整アダプタの筒体の外径とユニット本体の円筒壁の内径との間の寸法差に対応して調整可能である。掘削土飛散防止具は、掘削作業におけるダウンザホールハンマの触れ止め装置を兼ねている。
【0003】
特許文献1の掘削土飛散防止具を用いれば、動作用の空気とともに上方に吹き上げられる掘削土を外周壁、天井壁、および調整アダプタで受け止めて、掘削土が周囲に飛散することを確実に防ぐことができる。これにより、掘削土飛散防止具を用いない場合に比べて、養生対象がより小さな範囲で済み、養生作業に要する手間や時間を大幅に削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の掘削土飛散防止具は、その形成素材は明記されていないものの、触れ止め装置を兼ねていることからして、金属などの剛体で形成されていると考えられる。このため、掘削作業のたびに、重量物である掘削土飛散防止具の地面上への設置、および地面上からの撤去を行うことが必要であり、これら掘削土飛散防止具の設置作業や撤去作業に多くの時間と手間を要する。また、掘削土飛散防止具の地面上への設置後、調整アダプタにダウンザホールハンマを挿通し、調整リブの調整作業を行う必要もあり、この調整リブの調整作業にも多くの時間と手間を要する。さらに、特許文献1の掘削土飛散防止具は嵩張るものであり、保管や運搬が容易でない不利もある。
【0006】
本発明は、養生作業に要する時間を削減することに加えて、掘削時の準備作業に要する時間を削減することができ、さらに嵩張ることなく保管、運搬することができる掘削土飛散防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、中空筒状のハンマケース3を含むダウンザホールハンマ2に装着され、ハンマケース3の外面に沿って上向きに吹き上げられる掘削土を受け止める掘削土飛散防止具1を対象とする。掘削土飛散防止具1は、柔軟性を有するシート体で部分円環状に形成され、小径側の円弧縁部16がハンマケース3の外周面に接する状態で、当該ハンマケース3に対して下拡がりの傘状姿勢で装着される本体シート12と、ハンマケース3に装着された本体シート12を位置保持するためのストッパー13とを備えている。
【0008】
ストッパー13は、本体シート12の小径側の円弧縁部16に沿って固定され、ハンマケース3に磁気吸着する複数個の装着マグネット19で構成されている。
【0009】
本体シート12に、ハンマケース3に装着した際の当該本体シート12の重畳部分22を連結するための連結手段23が設けられている。
【0010】
連結手段23は、本体シート12の重畳部分22において下側に位置する本体シート12の上面に配される吸着体24と、本体シート12の重畳部分22において上側に位置する本体シート12の下面に配され、吸着体24に磁気吸着する連結マグネット25とを含んで構成されている。
【0011】
本体シート12に、ハンマケース3の周囲に傘状に巻回装着された本体シート12の形状を保持する保形手段30が設けられている。
【0012】
保形手段30は、本体シート12の部分円環形状に沿って固定された、可撓性を有する金属製のワイヤーロープ31で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の掘削土飛散防止具においては、本体シート12を柔軟性を有するシート体で部分円環状に形成し、当該本体シート12が、小径側の円弧縁部16がハンマケース3の外周面に接する状態で、当該ハンマケース3に対して下拡がりの傘状姿勢で装着されるようにした。このように、本体シート12が下拡がりの傘状姿勢でハンマケース3に装着されるようになっていると、掘削作業時において、掘削土がダウンザホールハンマ2の外面に沿って動作用の空気とともに上方に吹き上げられた場合でも、当該掘削土は本体シート12で受止められるので、掘削土が不用意に周囲に飛散されることを効果的に防ぐことができる。以上より、本発明の掘削土飛散防止具1を用いれば、掘削作業に先立つ養生エリアがより狭い範囲で済み、養生作業に要する時間や手間を大幅に削減することができる。
【0014】
また、ハンマケース3に装着された本体シート12を位置保持するためのストッパー13が設けられていると、部分円環状の本体シート12をハンマケース3の周囲に巻回し、ハンマケース3に対してストッパー13で位置保持するだけで、簡単に掘削土飛散防止具1をハンマケース3に装着することができ、また逆の手順でストッパー13を解除するだけで、簡単に掘削土飛散防止具1をハンマケース3から分離することができる。したがって、本発明によれば、掘削土飛散防止具1のハンマケース3に対する設置(装着)作業、或いはハンマケース3からの掘削土飛散防止具1の撤去(分離)作業が容易であり、掘削時の準備作業に要する時間や掘削後の撤去作業に要する時間を大幅に削減することができる。
【0015】
さらに本発明の掘削土飛散防止具においては、本体シート12を柔軟性を有するシート体で部分円環状に形成したので、例えば本体シート12を円錐形状に丸める、あるいは複数回折り畳むことにより、不使用時における掘削土飛散防止具1の容量をコンパクト化することができる。したがって、嵩張ることなく掘削土飛散防止具1を保管、運搬することができる。
【0016】
ストッパー13が、本体シート12の小径側の円弧縁部16に沿って固定され、ハンマケース3に磁気吸着する複数個の装着マグネット19で構成されていると、本体シート12の小径側の円弧縁部16がハンマケース3に接するように、ハンマケース3に対して装着マグネット19を吸着させつつ、本体シート12をハンマケース3の外周に巻回するだけで、掘削土飛散防止具1を装着することができる。また、装着マグネット19をハンマケース3から引き剥がすように本体シート12を引っ張るだけで、掘削土飛散防止具1を分離することができる。
【0017】
本体シート12に、ハンマケース3に装着した際の当該本体シート12の重畳部分22を連結する連結手段23が設けられていると、本体シート12の端部どうしを一体化して重畳部分22に隙間が形成されることを解消することができる。これによれば、当該隙間部分を介して掘削土が飛散することを防ぐことができるので、より信頼性に優れた掘削土飛散防止具を得ることができる。
【0018】
連結手段23が、本体シート12の重畳部分22において下側に位置する本体シート12の上面に配される吸着体24と、本体シート12の重畳部分22において上側に位置する本体シート12の下面に配され、吸着体24に磁気吸着する連結マグネット25とを含んで構成されていると、吸着体24に連結マグネット25を吸着させるだけの簡単な操作で、本体シート12の重畳部分22を連結して一体化することができる。
【0019】
本体シート12に、ハンマケース3の周囲に傘状に巻回装着された本体シート12の形状を維持する保形手段30が設けられていると、掘削土を受け止めた際の本体シート12の変形を抑制できるので、掘削土を的確に受け止めて飛散を防止することができる。
【0020】
保形手段30が、本体シート12の円環形状に沿って固定された、可撓性を有する金属製のワイヤーロープ31で構成されていると、金属製のワイヤーロープ31の弾性復元力を利用して本体シート12を展張することができるので、簡素な構成で本体シート12を傘状の形状に維持することができる。また、金属製のワイヤーロープ31は、本体シート12の形状の変化に追随して屈曲および伸展するので、本体シート12が平面状に展開された状態、本体シート12がハンマケース3に巻回された状態、あるいは本体シート12が円錐形状に丸められた状態など、本体シート12の形態に自在に適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る掘削土飛散防止具の縦断面図であり、
図3におけるA-A線断面図である。
【
図2】ダウンザホールハンマによる掘削工法を示す側面図である。
【
図3】ダウンザホールハンマに掘削土飛散防止具を装着した状態の横断平面図である。
【
図4】掘削土飛散防止具を平面状に展開した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
図1から
図5に、本発明に係る掘削土飛散防止具の実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1、
図3および
図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2に示すように掘削土飛散防止具1は、ダウンザホールハンマ2に装着されるものである。ダウンザホールハンマ2は、中空筒状のハンマケース3と、該ハンマケース3に組み込まれるハンマ本体4とを備えており、ハンマ本体4は地面を掘削するビット5と、該ビット5を駆動するピストン6とを備えている。ビット5はハンマケース3の下端から下方に突出するように配されており、ピストン6はハンマケース3の内部に配されている。ピストン6は、コンプレッサ7から供給される加圧空気で上下駆動され、ピストン6の上下動をビット5に伝動することにより、ビット5が上下に振動する。ダウンザホールハンマ2は、ビット5の振動で地面を破砕しつつその全体を回転させて削孔を行う。
【0023】
ダウンザホールハンマ2は、作業車両8の荷台に搭載されるクレーン装置9で吊り下げ支持された状態で削孔に供される。ピストン6を駆動したのちの空気はハンマケース3の下端から排出される。ハンマケース3の直径はビット5の直径よりも小さく設定されており、掘削により生じた掘削土は、ビット5の下端から排出された空気とともに、掘削中の孔とハンマケース3(ダウンザホールハンマ2)との隙間から地上に排出される。このとき、ピストン6に供給される空気は加圧されているので、掘削土は前記隙間からハンマケース3の外面に沿うように上方に向かって勢いよく吹き上げられる。この吹き上げられた掘削土が周囲に飛散することを防止するため、ダウンザホールハンマ2に、本実施形態の掘削土飛散防止具1が装着される。
【0024】
図4に示すように掘削土飛散防止具1は、部分円環状に形成され、ハンマケース3の周囲に巻回される本体シート12と、ハンマケース3に巻回された本体シート12を位置保持する保持手段(ストッパー)13などを備える。本体シート12は、基布の両面に樹脂がコーティングされた柔軟性を有するシート体からなり、同型の部分円環状に切り出された表地14および裏地15が、その小径側の円弧縁部16、大径側の円弧縁部17、および両円弧縁部16・17を接続する直線縁部18・18で縫着されている(
図5参照)。
図1に示すように掘削土飛散防止具1は、本体シート12の小径側の円弧縁部16がハンマケース3の周囲に接する状態で、本体シート12が下向きに拡がる傘状に(下拡がりの傘状姿勢で)1回転以上巻回されるようにハンマケース3に装着される。本実施形態では、本体シート12の周方向の長さ寸法は、ハンマケース3に1回転半程度巻回できる寸法に設定されている。掘削中の孔とハンマケース3との隙間からハンマケース3の外面に沿うように上方に向かって勢いよく吹き上げられる掘削土は、ハンマケース3に巻回装着された傘状の本体シート12の下面で受け止められ下方に落下し、掘削中の孔の周囲に堆積される。
【0025】
保持手段13は、ハンマケース3に磁気吸着する複数個の装着マグネット19で構成されている。
図4に示すように装着マグネット19は、本体シート12の小径側の円弧縁部16に沿って固定されており、小径側の円弧縁部16には、8個の装着マグネット19が等間隔置きに固定されている。各装着マグネット19を、ハンマケース3に磁気吸着させることにより、掘削土飛散防止具1をハンマケース3に装着することができる(
図1参照)。各装着マグネット19は、本体シート12に対してねじ等の締結具で固定することができる。また、装着マグネット19による保持力を強固にするために、装着マグネット19はネオジム磁石で構成することが好ましい。
【0026】
本体シート12は、ハンマケース3に対して1回転以上巻回されるので、
図3に示すようにハンマケース3に巻回された本体シート12は、その端部どうしが上下に重畳する。当該重畳部分22が連結されていない場合、重畳部分22に隙間が生じて、該隙間を介して掘削土が本体シート12の上方にすり抜け飛散するおそれがあるが、このような不具合を解消するために、本実施形態においては、本体シート12の重畳部分22を連結するための連結手段23が設けられている。重畳部分22においては、本体シート12の左端が右端の上側に被さるように、両端は重畳される。
図1および
図3に示すように、掘削土飛散防止具1をハンマケース3に装着したとき、重畳部分22にある装着マグネット19は、本体シート12を介してハンマケース3に磁気吸着し、その他の装着マグネット19は、ハンマケース3に直接磁気吸着する。
【0027】
図4に示すように連結手段23は、上吸着板(吸着体)24と、該上吸着板24に磁気吸着する下連結マグネット(連結マグネット)25と、下吸着板26と、該下吸着板26に磁気吸着する上連結マグネット27とで構成される。上吸着板24は、重畳部分22において下側に位置する本体シート12の上面(表地14側)に配され、下連結マグネット25は、重畳部分22において上側に位置する本体シート12の下面(裏地15側)に配される。また、下吸着板26は、重畳部分22において上側に位置する本体シート12の下面(裏地15側)に配され、上連結マグネット27は、重畳部分22において下側に位置する本体シート12の上面(表地14側)に配される。
【0028】
詳しくは、上吸着板24は、本体シート12を平面状に展開した状態において、本体シート12の右半部における大径側の円弧縁部17と両円弧縁部16・17の略中間位置とに設けられており、各位置において本体シート12の周方向にそれぞれ3個の上吸着板24が配されている。下連結マグネット25は、本体シート12の左端側の直線縁部18の略中央位置と大径側の円弧縁部17の近傍とに配されている。本体シート12の重畳部分22において、上吸着板24に下連結マグネット25が磁気吸着することにより、本体シート12の左端が本体シート12の右半部の上面に連結される。
【0029】
また、下吸着板26は、本体シート12を平面状に展開した状態において、本体シート12の左半部における大径側の円弧縁部17に設けられており、同円弧縁部17において本体シート12の周方向に3個の下吸着板26が配されている。上連結マグネット27は、本体シート12の右端側の直線縁部18の大径側の円弧縁部17の近傍に配されている。本体シート12の重畳部分22において、下吸着板26に上連結マグネット27が磁気吸着することにより、本体シート12の右端が本体シート12の左半部の下面に連結される。本体シート12に対する下連結マグネット25および上連結マグネット27の固定方法は、先の装着マグネット19と同様であり、保持力を強固にするためにネオジム磁石で構成することが好ましい。また、上吸着板24および下吸着板26は、本体シート12に対してリベットなどで固定することができる。
【0030】
掘削土飛散防止具1は、本体シート12をハンマケース3に巻回装着する形態であるので、1種の本体シート12でハンマケース3の直径寸法が異なる複数のダウンザホールハンマ2に装着することができる。ハンマケース3の直径寸法の大小によって、ハンマケース3に巻回された本体シート12の重畳部分22の周方句の長さ寸法は大小に変化する。ハンマケース3の直径寸法が大きくなると、本体シート12の重畳部分22は、その周方向の長さ寸法が小さくなり、逆にハンマケース3の直径寸法が小さくなると、本体シート12の重畳部分22は、その周方向の長さ寸法が大きくなる。そのため、上吸着板24および下吸着板26は、周方向に複数個設けられている。両吸着板24・26は3個以上設けられていてもよい。
【0031】
本体シート12は柔軟性を有するシート体から形成されているので、ハンマケース3に巻回したとき、本体シート12だけでは下向きに広がる傘状の形状を維持することができないおそれがある。そこで、ハンマケース3に巻回された本体シート12の傘形状を維持するため、本体シート12には傘形状を保持するための保形手段30が設けられている。保形手段30は、可撓性を有する金属製のワイヤーロープ31からなる。
【0032】
ワイヤーロープ31は、本体シート12の大径側の円弧縁部17と両円弧縁部16・17の略中間位置とに本体シート12の部分円環形状に沿って同心状に配されており、ワイヤーロープ31の内外において、表地14と裏地15とを縫着することにより本体シート12に固定されている(
図6参照)。ハンマケース3に掘削土飛散防止具1を装着したときのワイヤーロープ31は、本体シート12を平面状に展開した状態におけるワイヤーロープ31に比べて、曲率半径が大きくなるように撓み変形されており、ワイヤーロープ31の弾性復元力で本体シート12が展張され、該本体シート12は下向きに広がる傘状の形状を維持することができる。
【0033】
図4において、符号32は、掘削土飛散防止具1を取り扱う際に使用する持手であり、持手32は、本体シート12の左半部および右半部にそれぞれひとつずつ設けられている。持手32を使用することにより、掘削土飛散防止具1の装着、分離、あるいは運搬を容易に行うことができる。ここで、掘削土飛散防止具1の装着方法の一例を説明する。まず、本体シート12を展開した状態の掘削土飛散防止具1を、
図4における後方側から持手32・32を利用して持ち上げ、本体シート12の周方向の中央位置にある装着マグネット19をハンマケース3に吸着させる。次いで、本体シート12の右半部を、小径側の円弧縁部16がハンマケース3の外周面に接するようにしながら、装着マグネット19を順次ハンマケース3に吸着させ、続いて、本体シート12の左半部を、本体シート12の右半部に被せつつ、小径側の円弧縁部16がハンマケース3の外周面に接するようにしながら、装着マグネット19を順次ハンマケース3に吸着させる。これにて、ダウンザホールハンマ2(ハンマケース3)への掘削土飛散防止具1の装着が完了する。
【0034】
掘削土飛散防止具1から掘削土飛散防止具1を分離するときには、重畳部分22において上側に被さっている本体シート12の端部を掴んで引っ張り、本体シート12をハンマケース3から引き剥がすようにすればよい。分離した掘削土飛散防止具1は、いずれかの端部から円環形状に沿って本体シート12を丸めることにより円錐形状に巻き取って、コンパクト化することができる。
【0035】
掘削土飛散防止具1は、ダウンザホールハンマ2に対して高さ位置が限定されることなく装着できるので、掘削作業の開始時には地面から80cm程度の高さ位置に掘削土飛散防止具1を装着する。これにて、掘削作業の開始時において掘削位置を目視することができ、的確な位置にビット5が配されているかを確認しながら掘削を開始することができる。なお、地面上に設置される形態の従来の掘削土飛散防止具では、掘削位置の目視は困難である。掘削作業が進行し、掘削土飛散防止具1が地面に近づいた時には、ダウンザホールハンマ2の動作を一時停止し、掘削土飛散防止具1を地面から離れた位置に装着し直すことで、さらに掘削作業を進めることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態の掘削土飛散防止具1においては、柔軟性を有するシート体で部分円環状に形成した本体シート12をハンマケース3の外周面に下向きに広がる傘状に1回転半巻回するように構成したので、本体シート12でダウンザホールハンマ2の外面に沿って動作用の空気とともに上方に吹き上げられる掘削土を受け止め、該掘削土が周囲に飛散されることを防止できる。また、掘削土飛散防止具1は、部分円環状の本体シート12をハンマケース3の周囲に巻回し、ハンマケース3に対して保持手段13で位置保持するだけの簡単な操作でダウンザホールハンマ2に装着でき、保持手段13を解除するだけでダウンザホールハンマ2から分離できるので、従来必要であった調整リブの調整作業を省略でき、掘削土飛散防止具1の設置(装着)作業、撤去(分離)作業を簡略化できる。さらに、本体シート12を円錐形状に丸めることにより、不使用時における掘削土飛散防止具1の容量をコンパクト化できる。このように、本実施形態の掘削土飛散防止具によれば、掘削土の飛散を防止して養生作業に要する時間を削減することに加え、ダウンザホールハンマ2に対する掘削土飛散防止具1の着脱を簡便に行うことができるので、掘削時の準備作業に要する時間を大幅に削減することができる。また、不使用時の容量をコンパクト化することができるので、嵩張ることなく保管、運搬することができる。
【0037】
保持手段13を、本体シート12の小径側の円弧縁部16に沿って固定され、ハンマケース3に磁気吸着する複数個の装着マグネット19で構成したので、本体シート12の小径側の円弧縁部16がハンマケース3に接するように、ハンマケース3に対して装着マグネット19を吸着させつつ、本体シート12を巻回するだけで、ダウンザホールハンマ2に掘削土飛散防止具1を装着することができる。また、装着マグネット19をハンマケース3から引き剥がすように本体シート12を引っ張るだけで、ダウンザホールハンマ2から掘削土飛散防止具1を分離することができる。
【0038】
本体シート12に、ハンマケース3に巻回された本体シート12の重畳部分22を連結する連結手段23を設けたので、本体シート12の端部どうしを一体化して重畳部分22に隙間が形成されることを解消することができる。これにより、当該隙間部分を介して掘削土が飛散することを防ぐことができるので、より信頼性に優れた掘削土飛散防止具を得ることができる。連結手段23を、本体シート12の重畳部分22に配される、上吸着板24、下連結マグネット25、下吸着板26、および上連結マグネット27などで構成したので、各吸着板24・26に各連結マグネット25・27を吸着させるだけの簡単な操作で、本体シート12の重畳部分22を連結して一体化することができる。
【0039】
本体シート12に、ハンマケース3の周囲に傘状に巻回装着された本体シート12の形状を維持する保形手段30を設けたので、掘削土を受け止めた際の本体シート12の変形を抑えて、掘削土を的確に受け止めて、掘削土の飛散を防止できる。また、保形手段30を本体シート12の円環形状に沿って固定された、可撓性を有する金属製のワイヤーロープ31で構成したので、ワイヤーロープ31の弾性復元力を利用して本体シート12を展張することができ、簡素な構成で本体シート12を傘状の形状に維持することができる。また、ワイヤーロープ31は、本体シート12の形状の変化に追随して屈曲および伸展するので、本体シート12が平面状に展開された状態、本体シート12がハンマケース3に巻回された状態、あるいは本体シート12が円錐形状に丸められた状態など、本体シート12の形態に自在に適応できる。
【0040】
上記以外に、保持手段13は、フックと、ハンマケース3の周方向に配されてフックに係止される伸縮性を有するバンドとで構成し、バンドの収縮力を利用して小径側の円弧縁部16でハンマケース3を巻き締めることにより本体シート12を位置保持する形態を採ることができる。連結手段23は、ホックあるいは面ファスナーで構成することができる。保形手段30は、可撓性を有する樹脂棒材で構成することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 掘削土飛散防止具
2 ダウンザホールハンマ
3 ハンマケース
12 本体シート
13 ストッパー(保持手段)
16 小径側の円弧縁部
19 装着マグネット
22 重畳部分
23 連結手段
24 吸着体(上吸着板)
25 連結マグネット(下連結マグネット)
30 保形手段
31 ワイヤーロープ