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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047362
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 9/09 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
F15B9/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152942
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】久保 大和
【テーマコード(参考)】
3H001
【Fターム(参考)】
3H001AA01
3H001AB06
3H001AE14
(57)【要約】
【課題】本発明は、第1可変絞り弁或いは第2可変絞り弁の絞り係数が変化しても目標推力に対する追従性能の悪化を抑制できるシリンダ装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のシリンダ装置Aは、シリンダ2と、シリンダ2内に移動自在に挿入されてシリンダ2内を二つの作動室R1,R2に区画するピストン3と、互いに並列して作動室R1,R2同士を連通する第1流路4と第2流路5と、第1流路4に設けられた第1可変絞り弁6と、第2流路5に直列に設けられる第2可変絞り弁7およびモータ8によって駆動される双方向吐出型のポンプ9とを有する液圧シリンダ1と、第1可変絞り弁6、第2可変絞り弁7およびモータ8を制御するコントローラ11とを備え、PID制御部21と、比例ゲインを補正する比例ゲイン補正部24と、微分ゲインを補正する微分ゲイン補正部25とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内に移動自在に挿入されて前記シリンダ内を二つの作動室に区画するピストンと、互いに並列して前記作動室同士を連通する第1流路と第2流路と、前記第1流路に設けられた第1可変絞り弁と、前記第2流路に直列に設けられる第2可変絞り弁およびモータによって駆動される双方向吐出型のポンプとを有する液圧シリンダと、
前記第1可変絞り弁、前記第2可変絞り弁および前記モータを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記液圧シリンダの目標推力をPID補償して前記モータへ与える電流指令を生成するPID制御部と、前記PID制御部の比例ゲインを補正する比例ゲイン補正部と、前記PID制御部の微分ゲインを補正する微分ゲイン補正部とを有し、
前記比例ゲイン補正部と前記微分ゲイン補正部は、前記第1可変絞り弁の絞り係数と前記第2可変絞り弁の絞り係数とに基づいて、それぞれ前記比例ゲインと前記微分ゲインを補正する
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記PID制御部の積分ゲインを前記液圧シリンダ内の液体の体積弾性係数に基づいて補正する積分ゲイン補正部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記比例ゲイン補正部が補正した前記比例ゲインの変化を緩和する比例ゲイン処理部と、
前記微分ゲイン補正部が補正した前記微分ゲインの変化を緩和する微分ゲイン処理部とを有し、
前記PID制御部は、前記比例ゲイン処理部で処理した比例ゲインと、前記微分ゲイン処理部で処理した微分ゲインとを用いて前記電流指令を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記目標推力の入力を受けてフィードフォワード制御によって前記PID制御部が求める電流指令に加算する加算電流指令を求めるフィードフォワード制御部を有し、前記推力制御部が求めた前記電流指令と前記フィードフォワード制御部が求めた前記加算電流指令とを加算して前記モータに供給すべき目標電流を指示する最終電流指令を生成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリンダ装置としては、たとえば、車両の車体と車軸との間に介装されるアクティブサスペンション等に適用され、具体的には、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内を二つの作動室に区画するピストンと、ピストンに連結されるロッドと、並列して二つの作動室を連通する第1流路および第2流路と、第1流路に設けられた第1可変絞り弁と、第2流路に直列に設けられた第2可変絞り弁および双方向吐出型のポンプと、ポンプを駆動するモータとを有する油圧シリンダと、第1可変絞り弁、第2可変絞り弁およびモータを制御する制御装置とを備えて構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、従来のシリンダ装置は、アクティブサスペンションとして使用される場合、シリンダが車体と車軸の一方に連結されるとともに、ロッドが車体と車軸の他方に連結され、ポンプをモータによって駆動することによって推力を発生して、車体の振動を抑制できる。
【0004】
さらに、従来のシリンダ装置では、油圧シリンダが外力によって強制的に伸縮させられる場合、第2流路を流れる作動油によってポンプが回転させられるため、モータが制動領域で使用されて発電して回生電力が発生する。このようにモータが制動領域で使用される場合、モータが発生するトルクによってポンプが作動油の流れに抵抗を与える。そのため、油圧シリンダは、外力による油圧シリンダの伸縮を妨げる推力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-196597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシリンダ装置では、第1可変絞り弁の絞り係数と第2可変絞り弁の絞り係数の調整によって、ポンプを通過する作動油量の調整とモータが負担するトルクを調整できる。なお、絞り係数は、単位時間当たり流量を圧力で割った値であり、絞り係数を小さくすれば可変絞り弁における抵抗が大きくなることを示している。
【0007】
モータが制動状態にある場合、モータのトルクを縦軸に採り、モータの回転速度を横軸に採ったグラフ上で、原点を通ってモータを短絡した際のトルクと回転速度との関係を示す短絡曲線に接する直線の傾きの2分の1の傾きを持つ直線(回生効率最大直線)上に、モータが出力しているトルクとモータの回転速度との交点(モータの動作点)があると回生効率が最大となる。
【0008】
よって、従来のシリンダ装置では、モータが制動状態にある場合、モータが出力しているトルクとモータの回転速度との交点が回生効率最大直線上に配置されるように、第1可変絞り弁における絞り係数と第2可変絞り弁における絞り係数とを調整している。
【0009】
このように従来のシリンダ装置では、モータが制動状態にある場合にモータの回生効率を最大とすることを狙ってモータの動作点を回生効率最大直線上に配置するように第1可変絞り弁と第2可変絞り弁との絞り係数を制御するが、第1可変絞り弁と第2可変絞り弁との絞り係数を変化させると、シリンダ装置の特性が変化するためにシリンダ装置の目標推力に対するシリンダ装置の実推力の追従性能が悪化してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、第1可変絞り弁或いは第2可変絞り弁の絞り係数が変化しても目標推力に対する追従性能の悪化を抑制できるシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の課題解決手段におけるシリンダ装置は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内を二つの作動室に区画するピストンと、互いに並列して作動室同士を連通する第1流路と第2流路と、第1流路に設けられた第1可変絞り弁と、第2流路に直列に設けられる第2可変絞り弁およびモータによって駆動される双方向吐出型のポンプとを有する液圧シリンダと、第1可変絞り弁、第2可変絞り弁およびモータを制御するコントローラとを備え、コントローラは、液圧シリンダの目標推力をPID補償してモータへ与える電流指令を生成するPID制御部と、PID制御部の比例ゲインを補正する比例ゲイン補正部と、PID制御部の微分ゲインを補正する微分ゲイン補正部とを有し、比例ゲイン補正部と微分ゲイン補正部は、第1可変絞り弁の絞り係数と第2可変絞り弁の絞り係数とに基づいてそれぞれ比例ゲインと微分ゲインを補正する。
【0012】
このように構成されたシリンダ装置よれば、第1可変絞り弁の絞り係数および第2可変絞り弁の絞り係数が変化しても、PID制御部で使用する比例ゲインと微分ゲインとがその時の第1可変絞り弁の絞り係数および第2可変絞り弁の絞り係数に最適化される。
【0013】
また、シリンダ装置におけるコントローラは、PID制御部の積分ゲインを液圧シリンダ内の液体の体積弾性係数に基づいて補正する積分ゲイン補正部を備えてもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、液体の体積弾性係数が変化してシリンダ装置の特性が変化しても、目標推力に対する液圧シリンダの実推力の追従性の悪化を抑制できる。
【0014】
さらに、シリンダ装置におけるコントローラは、比例ゲイン補正部が補正した比例ゲインの変化を緩和する比例ゲイン処理部と、微分ゲイン補正部が補正した微分ゲインの変化を緩和する微分ゲイン処理部とを有し、PID制御部は、比例ゲイン処理部で処理した比例ゲインと、微分ゲイン処理部で処理した微分ゲインとを用いて電流指令を生成してもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、第1可変絞り弁の絞り係数と第2可変絞り弁の絞り係数とが変化して比例ゲインと微分ゲインとが補正されても、PID制御部で使用する比例ゲインの値と微分ゲインの値とが急変するのが緩和されて、PID制御部が出力する電流指令の急変も緩和されるので、液圧シリンダの推力の急変も緩和できる。
【0015】
さらに、シリンダ装置におけるコントローラは、目標推力の入力を受けてフィードフォワード制御によってPID制御部が求める電流指令に加算する加算電流指令を求めるフィードフォワード制御部を備え、PID制御部が求めた電流指令とフィードフォワード制御部が求めた加算電流指令とを加算してモータに供給するべき目標電流を指示する最終電流指令を生成してもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、液圧シリンダの実推力をフィードバックしないフィードフォワード制御部が推力指令に対して液圧シリンダの応答遅れを考慮していち早く液圧シリンダの推力が推力指令に追従するような加算電流指令を求め、PID制御部の電流指令に加算電流指令を加算して最終電流指令を生成するので、目標推力に対する液圧シリンダの追従性に影響を与えずに目標推力に対する応答性を向上させ得る。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明のシリンダ装置によれば、第1可変絞り弁或いは第2可変絞り弁の絞り係数が変化しても目標推力に対する追従性能の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施の形態におけるシリンダ装置の概念図である。
図2図2は、一実施の形態におけるシリンダ装置の流量と差圧の関係を示したモデル図である。
図3図3は、モータの回転速度をポンプの通過流量に対応させるとともに、モータのトルクを液体がポンプを通過する際の差圧(圧力損失)に対応させたグラフである。
図4図4は、モータの回転速度と出力可能なトルクの範囲を示す図である。
図5図5は、コントローラの構成を示した図である。
図6図6は、絞り弁制御部の構成を示した図である。
図7図7は、推力制御部の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるシリンダ装置Aは、図1に示すように、液圧シリンダ1と、コントローラ11とを備えて構成されている。
【0019】
以下、シリンダ装置Aの各部について詳細に説明する。液圧シリンダ1は、図1に示すように、シリンダ2と、シリンダ2内に移動自在に挿入されてシリンダ2内を二つの作動室R1,R2に区画するピストン3と、互いに並列して作動室R1,R2同士を連通する第1流路4と第2流路5と、第1流路4の途中に設けられた第1可変絞り弁6と、第2流路5の途中に直列に設けられる第2可変絞り弁7およびモータ8によって駆動される双方向吐出型のポンプ9とを備えて構成され、シリンダ2内には液体が充填され密閉されている。また、ピストン3はシリンダ2内に移動自在に挿通されるロッド10に連結されており、この液圧シリンダ1の場合、シリンダ2の両端からロッド10が突出する、いわゆる、両ロッド型のシリンダ装置とされている。
【0020】
そして、液圧シリンダ1を車両に適用する場合、シリンダ2を車両のばね上部材およびばね下部材のうち一方に連結し、ロッド10をばね上部材およびばね下部材のうち他方に連結して、ばね上部材とばね下部材との間に介装すればよい。液圧シリンダ1は、車両に適用されて使用される場合、発揮する推力によってばね上部材である車両の車体とばね下部材である車両の車輪の振動を抑制する。
なお、本書では、ロッド10がピストン3とともにシリンダ2に対して図1中上方へ移動する場合に液圧シリンダ1が伸長作動すると言い、反対に、ロッド10がピストン3とともにシリンダ2に対して図1中下方へ移動する場合に液圧シリンダ1が収縮作動すると言う。なお、液圧シリンダ1は、図示したところでは、両ロッド型に設定されているが、片ロッド型に設定されてもよい。
【0021】
シリンダ2内は、前述したようにピストン3によって図1中上方の伸側の作動室R1と図1中下方の圧側の作動室R2とに区画されており、各作動室R1,R2内には作動油等の液体が充填されている。液体は、作動油の他にも水や水溶液といった他の液体であってもよい。なお、液圧シリンダ1は、前述したように両ロッド型の液圧シリンダとされており、シリンダ2に対してロッド10がピストン3とともに図1中上下方向に移動してもシリンダ2内でロッド10が押し退ける容積が変化しないため、ロッド10がシリンダ2内に出入りする体積の補償をするリザーバを備えていないが、液体の温度変化による体積変化を補償するためにシリンダ2内に連通されるアキュムレータを備えていてもよい。
【0022】
ポンプ9は、双方向吐出型に設定され、たとえば、ベーンポンプ、ギアポンプやアキシャルポンプ等、図示しない回転軸を備えて当該回転軸の回転によって流体を吸込んで吐出することができるとともに、逆に流体の流れによって回転軸を強制的に駆動することができるものであればよい。さらに、ポンプ9の回転軸は、モータ8に接続されており、モータ8は、通電によって駆動することができるとともに、ポンプ9側からの入力によって強制的に回転駆動させられると発電してポンプ9の回転を抑制するトルクを発生するモータであればよく、直流、交流を問わず、種々の形式のモータ、たとえば、ブラシレスモータ、誘導モータ、同期モータ等を採用することができる。
【0023】
液圧シリンダ1は、モータ8によってポンプ9を回転駆動して液体を伸側の作動室R1から圧側の作動室R2へ、あるいは、圧側の作動室R2から伸側の作動室R1へ第2流路5を介して送り込むことで、自発的に伸縮できるとともに、望む方向へ推力を発生することができる。また、液圧シリンダ1は、液圧シリンダ1が外部入力によって強制的に伸縮させられる場合、伸側の作動室R1から圧側の作動室R2へ、あるいは、圧側の作動室R2から伸側の作動室R1へ、第2流路5を介して移動する液体の流れにモータ8のトルクが伝達されるポンプ9で抵抗を与えて伸縮を妨げる方向に推力を発生することができる。
【0024】
さらに、液圧シリンダ1が強制的に伸縮させられる場合、第2流路5を行き来する液体の流れによってポンプ9を介してモータ8が強制的に駆動されるため、モータ8によって液体の運動エネルギが電気エネルギに変換されて電力回生できる。なお、モータ8によって回生した電力は、外部機器へ送電してもよいし、蓄電器に蓄電するようにしてもよい。
【0025】
転じて、第1可変絞り弁6は、ポンプ9を迂回して作動室R1,R2同士を連通する第1流路4に設けられており、第2可変絞り弁7は、ポンプ9とともに第2流路5に設けられている。よって、第1可変絞り弁6は、第2可変絞り弁7およびポンプ9に対して並列に配置されている。これら第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7は、開度や弁通路長を変更することで、圧力損失に対する通過流量の比である絞り係数を変更することができるようになっており、具体的にはたとえば、可変チョークや可変オリフィスといった種々の弁を使用することができ、また、図示しない弁体をソレノイドやモータ等の駆動源で駆動することによって絞り係数を変更できるようになっている。これら第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7における絞り係数を変更する駆動源はコントローラ11によって制御される。
【0026】
なお、ポンプ9と第2可変絞り弁7の配置関係であるが、ポンプ9は作動室R1と作動室R2のいずれに側に配置してもよい。また、シリンダ2内に充填される流体は、たとえば、油、水、水溶液、気体等、どのような流体を使用しても良い。
【0027】
さて、このように構成された液圧シリンダ1は、モータ8にコントローラ11側から電力供給してポンプ9を駆動させる場合には、自ら伸縮するアクチュエータとして機能することができるが、反対に、外力を受けて液圧シリンダ1が伸縮させられる場合、モータ8のトルクでポンプ9の回転を抑制する、すなわち、モータ8を制動領域で使用してモータ8にポンプ9の回転方向とは逆のトルクを発生させるようにし、モータ8、第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7とで協働して減衰力を発生できる。そして、モータ8を制動領域で使用する際、これら第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7の絞り係数を調節することによってモータ8の回転速度とトルクをコントロールすることが可能である。
【0028】
なお、モータ8に電流を与えてポンプ9を駆動する、つまり、モータ8を力行領域で使用して、液圧シリンダ1をアクチュエータとして機能させる場合、第1可変絞り弁6を全閉として第1流路4を介しての作動室R1,R2同士が連通されないようにしつつ、第2可変絞り弁7を全開として第2可変絞り弁7によって液体の流れに無用な抵抗を与えてエネルギ損失を生じないようにする。
【0029】
ここで、液圧シリンダ1が外力で伸縮させられる場合におけるモータ8の負荷(回転速度とトルク)のコントロールについて、図2に示すモデル図を使用して説明する。なお、ポンプ9は、モータ8から伝達されるトルクによって液体の流れに抵抗を与え、液体通過時に圧力損失を生じさせることから、可変絞り弁と同等に取り扱うことができるため、図2中では、モータ8およびポンプ9を一つの可変絞り弁Mとして記載している。
【0030】
そして、液圧シリンダ1の伸縮時における一方の作動室R1と他方の作動室R2との差圧をΔPとし、一方の作動室R1から流出する流体の単位時間当たりの流量(以下、単に流量という)をQとし、第1可変絞り弁6を通過する流体の流量q1を第1可変絞り弁6で生じる差圧(圧力損失)ΔPで除した比である絞り係数をC1とし、第2可変絞り弁7を通過する流体の流量q2を第2可変絞り弁7で生じる差圧(圧力損失)Δp2で除した比である絞り係数をC2とし、モータ8とポンプ9でなる可変絞り弁Mを通過する流体の流量q2を可変絞り弁Mで生じる差圧(圧力損失)Δpmで除した比である絞り係数をC3とすると、下記(1)式が得られる。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、C=C2×C3/(C2+C3)とおくと、(1)式は下記(2)式と書くことができる。
【0033】
【数2】
【0034】
さらに、全体の流量Q=q1+q2が成り立ち、第1可変絞り弁6で生じる差圧ΔPは、第2可変絞り弁7とモータ8とポンプ9でなる可変絞り弁Mの全体で生じる差圧に等しいので、以下の(3)式が成立する。
【0035】
【数3】
【0036】
(3)式を(2)式に代入してまとめると、以下の(4)式を得る。
【0037】
【数4】
【0038】
そして、上記(4)式から理解できるように、流量Qおよび差圧ΔPを変化させない場合、絞り係数C1を変更することで、流量q2を変更することができる。
【0039】
つまり、絞り係数C1を変更することによってポンプ9を迂回する第1可変絞り弁6における流量q1を調整することで、可変絞り弁Mを通過する流量q2を変更することができ、たとえば、第1可変絞り弁6を全閉状態から全開状態に移行する場合、流量q2を増減させて、モータ8の回転速度を増減させることができる。
【0040】
また、第2可変絞り弁7と可変絞り弁Mにおける流量はq2であり、全体の差圧はΔPであり、可変絞り弁Mにおける差圧(圧力損失)はΔpmであり、第2可変絞り弁7と可変絞り弁Mの合成絞り係数Cは、上述のようにC=C2×C3/(C2+C3)となるため、第2可変絞り弁7と可変絞り弁Mにのみ着目して整理すると、下記(5)式を得る。
【0041】
【数5】
【0042】
そして、上記(5)式から理解できるように、流量q2および差圧ΔPを変化させない場合、絞り係数C2を変更することで、可変絞り弁Mにおける差圧Δpmを変更することができる。
【0043】
つまり、絞り係数C2を変更することによってポンプ9を流体が通過する際に生じる差圧Δpmを変更することができ、たとえば、第2可変絞り弁7を全閉状態から全開状態に移行する場合、差圧Δpmを増減させて、モータ8で負担すべきトルクを増減させることができる。
【0044】
以上のことを、流量Qおよび差圧ΔPを一定にした状態において、モータ8の回転速度をポンプ9の通過流量に対応させるとともに、モータ8のトルクを流体がポンプ9を通過する際の差圧(圧力損失)に対応させた図3に示すグラフを参照して説明すると、第2可変絞り弁7の絞り係数C2を変更することでモータ8の負担すべきトルク(負担トルク)を縦軸に沿って調節でき、第1可変絞り弁6の絞り係数C1を変更することでモータ8の回転速度を横軸に沿って調節することができるということになる。モータ8の負担トルクは、モータ8とポンプ9との間で作用するトルクであり、シリンダ装置Aが所望の推力を出力するためにモータ8からポンプ9に加える必要があるトルクと看做すことができる。なお、本書では、液圧シリンダ1が自発的に伸縮している場合であっても負担トルクという名称を用いる。
【0045】
詳しくは、図3中の点aは、第2可変絞り弁7を全開にして絞り係数C2を最大にし、第1可変絞り弁6を全閉にして絞り係数C1を最小にした状態におけるモータ8の回転速度と負担トルクとの関係を示し、点bは、第2可変絞り弁7を全開にして絞り係数C2を最大にし、第1可変絞り弁6を全開にして絞り係数C1を最大にした状態におけるモータ8の回転速度と負担トルクとの関係を示し、点cは、第2可変絞り弁7を全閉にして絞り係数C2を最小にし、第1可変絞り弁6を全閉にして絞り係数C1を最小にした状態におけるモータ8の回転速度と負担トルクとの関係を示し、点dは、第2可変絞り弁7を全閉にして絞り係数C2を最小にし、第1可変絞り弁6を全開にして絞り係数C1を最大にした状態におけるモータ8の回転速度と負担トルクとの関係を示している。すなわち、第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7における絞り係数C1,C2を変更することで点a,b,c,dで囲まれる範囲でモータ8の回転速度と負担トルクを調節することができる。
【0046】
具体的には、モータ8の回転速度と負担トルクの交点(モータの動作点)が点aにあるときに、第1可変絞り弁6における絞り係数C1を大きくしていくと、点b側へシフトさせることができ、第2可変絞り弁7における絞り係数C2を小さくしていくと、点c側へシフトさせることができ、第1可変絞り弁6における絞り係数C1を大きくし第2可変絞り弁7における絞り係数C2を小さくしていくと点d側へシフトさせることができるのである。つまり、第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7の絞り係数を制御することで、モータ8の回転速度と負担トルクをコントロールすることができるのである。
【0047】
なお、図3の説明において流量Qおよび差圧ΔPを一定にした状態を仮定しているため、モータ8の負担トルクが0であるのに回転している状態や回転速度が0であるのに負担トルクがある状態は生じないので、点bと点dを結ぶ線および点dと点cを結ぶ線は、モータ8の動作点が採りえる範囲の境界を示しており、モータ8の動作点は、上記線上の値を採ることは無い。
【0048】
ところで、モータ8の任意の回転速度に対して出力することが可能な負担トルク範囲は、図4に示すように、負担トルクを縦軸に採り回転速度を横軸に採った回転速度トルク座標系のグラフにおいて、第1象限および第2象限中で横軸に平行な直線とこの直線の両端に連なる曲線とでなる出力限界線z1と、第3象限および第4象限中で横軸に平行な直線とこの直線の両端に連なる曲線とでなる出力限界線z2とで囲まれたハッチングで示した領域となる。なお、出力限界線中の直線は、モータ8の負担トルクの上限を示しており、コントローラ11内に設けられる図示しない電流リミッタによって電流が制限されることに起因して生じる境界である。出力限界線中の曲線もまた、その時の回転速度において出力可能な負担トルク領域と出力不可能な負担トルク領域とを仕切る線であり、図示しない電源電圧、モータ8の誘起電力等の特性によって決せられる境界線である。モータ8が正転方向のトルクの符号を正とするとともに逆転方向のトルクの符号を負とし、モータ8が正転方向に回転する場合の回転速度の符号を正とするとともに逆転方向のトルクの符号を負としている。
【0049】
この図4から理解できるように、モータ8は、各象限にて回転速度が高くなればなるほど出力可能な負担トルクの上限が小さくなる。すなわち、第1可変絞り弁6を閉弁して第1流路4を遮断して作動室R1,R2を行き交う液体の全流量をポンプ9に流す場合、液圧シリンダ1の伸縮速度が高くなればなるほど、モータ8の回転速度も高くなりモータ8の出力可能な負担トルクが小さくなることになる。なお、図4中に示した破線は、回生効率が最大となる回転速度と負担トルクとの関係を示す回生効率最大直線であり、当該回生効率最大直線上にモータ8の動作点がある場合に回生効率が最大となる。
【0050】
また、第2象限の回転速度が負で負担トルクが正である領域および第4象限の回転速度が正で負担トルクが負である領域では、モータ8は電力回生を行うことができる制動領域で動作しており、第1象限の回転速度が正で負担トルクが正である領域および第3象限の回転速度が負で負担トルクが負である領域では、モータ8は、電力を消費して力行する力行領域で動作していることを示している。よって、モータ8は、制動領域で動作している場合に制動状態にあり、力行領域で動作している場合に力行状態にある。
【0051】
そして、モータ8が制動領域で動作している場合であって、図4中であって回生効率最大直線よりも横軸側にある点gと点hとを比較すると、回転速度が高い点hの方がモータ8の回生電力が大きくなる。回生効率最大直線は、モータ8の回転速度と回生効率を最大とするトルクとの関係を示す直線であり、モータ8の動作点が回生効率最大直線上にあると、その時の回転速度において回生効率が最大となる。また、モータ8の回転速度をより高速にすれば回生電力をより大きくできる余地がある。
【0052】
よって、本実施の形態のコントローラ11は、図5に示すように、モータ8のトルクを制御して液圧シリンダ1の実推力を目標推力に追従させるための推力制御部20の他に、推力制御部20とは独立してモータ8の回生電力を高める絞り弁制御部30を備えている。
【0053】
まず、絞り弁制御部30について説明すると、絞り弁制御部30は、図6に示すように、モータ8の回転速度とトルクとを監視して、第1可変絞り弁6を制御する第1可変絞り弁制御部31と、第2可変絞り弁7を制御する第2可変絞り弁制御部32とを備えている。モータ8の回転速度については、モータ8が図示しないロータの回転位置を検知可能なレゾルバ等のセンサを備えている場合には、当該センサが検知するロータの回転位置情報から得ればよい。モータ8のトルクについてはモータ8をDCモータ或いはDCモータと等価なモータとする場合にはモータ8に流れる電流に比例するから電流をそのままトルクと看做すことができ、モータ8の電流を検知するセンサをモータ制御部40が備えているので、モータ制御部40から電流値を入手してモータ8のトルクとして利用すればよい。
【0054】
なお、絞り弁制御部30は、モータ8の回転速度を検知するセンサと、モータ8のトルクを検知するセンサ或いはモータ8の電流を検知するセンサを個別に備えていてもよい。絞り弁制御部30は、モータ8の回転速度とトルクとを所定の演算周期で順次取り込み、取り込んだ回転速度とトルクとを第1可変絞り弁制御部31と第2可変絞り弁制御部32とによって処理する。絞り弁制御部30は、モータ8のトルクを処理するが、前述したように、モータ8に流れる電流をトルクと看做すことができるので、モータ8に流れる電流をトルクとして取り扱って処理すればよい。絞り弁制御部30は、モータ8の回転速度とトルクとを監視して、モータ8の動作点が回転速度とトルクのグラフ上のどの位置にあるか把握する。そして、絞り弁制御部30は、モータ8の動作状態に応じて、第1可変絞り弁6と第2可変絞り弁7の絞り係数を制御する。
【0055】
第1可変絞り弁制御部31は、第1可変絞り弁6の駆動源へ通電するための駆動回路を含み、モータ8が制動状態で動作している場合、モータ8の回転速度を高くするように第1可変絞り弁6の絞り係数を小さくする回生制御を行うとともに、モータ8が力行状態で動作している場合には、第1可変絞り弁6の絞り係数を予め設定される初期値にするように制御する。初期値は、モータ8が力行状態で動作している際に、液圧シリンダ1の推力制御に適する値に設定されている。モータ8が力行状態で動作している場合、第1可変絞り弁6が流路を大きくしているとポンプ9から作動室R1或いは作動室R2へ供給される液体が第1流路4を通過して逃げてしまうので、初期値は、第1可変絞り弁6を閉弁或いは開度が極小さくするように最小値に設定されるとよい。
【0056】
第2可変絞り弁制御部32は、第2可変絞り弁7の駆動源へ通電するための駆動回路を含み、基本的には、第2可変絞り弁7の絞り係数を最大として第2可変絞り弁7の流路面積を制御上最大とする。第2可変絞り弁7は、ポンプ9が吐出する液体の通過を妨げ、液圧シリンダ1がアクチュエータとして動作する際には抵抗となってしまうので、第2可変絞り弁制御部32は、モータ8の動作点が力行領域にあってモータ8が力行状態で動作中は、第2可変絞り弁7の絞り係数を最大とする。なお、第2可変絞り弁7は、第2流路5を通過する液体の流れに抵抗を与えるため、絞り係数の増減によってモータ8が負担するトルクを増減させ得る。第2可変絞り弁制御部32は、モータ8の動作点が制動領域にあってモータ8の動作状態が制動状態である場合も基本的には第2可変絞り弁7の絞り係数を最大として第2可変絞り弁7の流路面積を制御上最大とするが、モータ8の動作点が出力不可能な負担トルク領域にならないように、第2可変絞り弁7の絞り係数を増加させてモータ8の動作点で負担するトルクを減少させる。簡単には、モータ8を駆動する電源電圧によってモータ8の回転速度において出力可能なトルクの上限(トルク上限)が一義的に決まるので、第2可変絞り弁制御部32は、モータ8のトルクがその時の回転速度におけるトルク上限から所定値を差し引いた値以上になると、第2可変絞り弁7の絞り係数を小さくして、モータ8が負担するトルクを減少させるようにすればよい。なお、第2可変絞り弁7の絞り係数を前述の回生効率最大直線上に乗せて回生効率を最大化したい場合、第2可変絞り弁7の絞り係数を求める際に、液圧シリンダ1の実推力の情報が必要となるので、絞り弁制御部30は、実推力検知部41から実推力を得て、回転速度とトルクに加えて実推力に基づいて前記絞り係数を求めてもよい。
【0057】
以上のように、絞り弁制御部30は、モータ8の回転速度とトルクとを監視し、モータ8の動作点が出力不可能な負担トルク領域にならないように、第2可変絞り弁7の絞り係数を制御するとともに、モータ8の動作状態が制動状態である場合には、回生電力を高めるために、第1可変絞り弁6の絞り係数を小さくして、第1流路4を通過する液体の流量を小さくてポンプ9が設置される第2流路5を流れる液体の流量を多くして、モータ8の回転速度を高める。なお、絞り弁制御部30は、前述したところでは、モータ8が制動状態にある場合に、モータ8の回転速度を高めて、モータ8の回生電力を向上させる回生制御を行っているが、モータ8の動作点が回生効率最大直線に配置されるように、第1可変絞り弁制御部31および第2可変絞り弁制御部32で第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7の絞り係数を制御するようにして、回生効率を高める回生制御を行ってもよい。
【0058】
つづいて、推力制御部20は、図7に示すように、上位の制御装置からの液圧シリンダ1の目標推力を指示する推力指令を受けてモータ8に供給すべき目標電流をPID制御に基づいて求めるPID制御部21およびフィードフォワード制御部22と、PID制御部21とフィードフォワード制御部22とが出力する各電流指令を加算してモータ8の目標電流を指示する最終電流指令を生成する加算部23と、PID制御部21がPID補償(比例積分微分補償)時に使用する比例ゲイン、微分ゲインおよび積分ゲインをそれぞれ補正する比例ゲイン補正部24、微分ゲイン補正部25および積分ゲイン補正部26と、比例ゲイン補正部24が補正した比例ゲインを処理する比例ゲイン処理部27と、微分ゲイン補正部25が補正した微分ゲインを処理する微分ゲイン処理部28と、積分ゲイン補正部26が補正した積分ゲインを処理する積分ゲイン処理部29と、加算部23が生成した最終電流指令を受け取るとモータ8に流れる電流をフィードバックしてモータ8に流れる電流を目標電流通りに制御するモータ制御部40とを備えている。
【0059】
なお、推力指令は、本実施の形態では、液圧シリンダ1を車両に適用して、上位の制御装置は、主としてばね上部材としての車体の振動の抑制を目的して液圧シリンダ1に発生するべき推力を求める。推力指令は、車体の振動の低減のみならずばね下部材としての車輪の振動の抑制の低減も可能となるように求められてもよい。また、推力制御部20は、上位の制御装置から推力指令を入手するのではなく、車両における車体、或いは車体および車輪の振動情報を検知するか、或いはこれらの振動情報を車両から受け取って、自ら推力指令を求めてもよい。
【0060】
PID制御部21は、詳しくは図示しないが、目標推力と液圧シリンダ1の実推力との制御偏差を求めて、当該制御偏差に比例ゲインを乗じて比例補償する比例パスと、当該制御偏差を微分するとともに微分ゲインを乗じて微分補償する比例パスと、当該制御偏差を積分するとともに積分ゲインを乗じて積分補償する比例パスとを備えて、3つの各パスで処理した値を加算した値を電流指令として出力する。なお、コントローラ11は、液圧シリンダ1の実推力を検知する実推力検知部41を備えており、実推力検知部41が検知する液圧シリンダ1の実推力が推力制御部20に目標推力とともに入力される。実推力検知部41は、図7に示すように、たとえば、作動室R1の圧力を検知する圧力センサ41aと、作動室R2の圧力を検知する圧力センサ41bと、作動室R1の圧力と作動室R2の圧力との差にピストン3の受圧面積を乗じて液圧シリンダ1が発生している実推力を求める演算部41cとを備えて構成される。また、液圧シリンダ1が発生する実推力は、ロッド10に設けられれる荷重の検知によって把握できるので、実推力検知部41はロッド10に作用する荷重を検知するセンサとされてもよい。また、推力制御部20は、図示はしないが、実推力検知部41に代えて、実際に液圧シリンダ1が出力している推力を検知するのではなく液圧シリンダ1の実推力を推定する実推力推定部を備えていてもよい。実推力推定部は、前述の圧力や荷重の検知に代えて、たとえば、第1可変絞り弁6、第2可変絞り弁7における絞り係数、モータ8の回転速度、トルクといった液圧シリンダ1の状態量を検知して、当該状態量から液圧シリンダ1の実推力を推定するオブザーバ、或いは、車体の変位と速度といったシリンダ装置Aが搭載されたシステムの状態量を検知して当該状態量から液圧シリンダ1の実推力を推定するオブザーバとされてもよい。また、実推力推定部は、車体と車軸とに取り付けられた加速度センサの情報から液圧シリンダ1の実推力を推定してもよく、このように実推力推定部は、シリンダ装置Aの制御以外の用途に使用されているセンサ情報から実推力を推定してもよい。
【0061】
ここで、絞り弁制御部30によって第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7の絞り係数が変化して、液圧シリンダ1の目標推力から液圧シリンダ1の推力までの特性が変化してしまう。よって、液圧シリンダ1の実推力をフィードバックして単にPID制御部21がPID補償して電流指令を生成してモータ8を制御する場合、第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7の前後で圧力変動が生じて液圧シリンダ1の推力が急変し、液圧シリンダ1の実推力の推力指令に対する追従性能が悪化してしまう。
【0062】
そこで、本実施の形態のコントローラ11では、絞り弁制御部30によって第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7の絞り係数が変化すると、当該変化に応じて、比例ゲインを補正する比例ゲイン補正部24と、微分ゲインを補正する微分ゲイン補正部25とを備えている。
【0063】
ここで、液圧シリンダ1のピストン3の受圧面積をAとし、モータ8の粘性抵抗をCmとし、モータ8のロータにおける慣性モーメントをImとし、モータ8のトルク定数をKtとし、第1可変絞り弁6の絞り係数をfv1とし、第2可変絞り弁7の絞り係数をfv2とし、液圧シリンダ1内の液体の体積弾性係数をKとし、ポンプ9の押し退け容積をVpとし、液圧シリンダ1の作動室R1,R2の初期容積をVとし、ラプラス演算子sとすると、液圧シリンダ1のモータ8に与える電流imから液圧シリンダ1が発生する実推力faまでの伝達関数G(s)は、以下の式6で表すことができる。
【0064】
【数6】
【0065】
また、PID制御部21における比例ゲインをKpとし、PID制御部21における微分ゲインをKdとし、PID制御部21における積分ゲインをKiとすると、PID制御部21の伝達関数C(s)は、以下の式7で表すことができる。
【0066】
【数7】
【0067】
モータ制御部40によって制御されるモータ8の電流が電流指令に対して遅れ無く追従すると仮定すれば、目標推力fa,cmdから液圧シリンダ1の実推力faまでの伝達関数は、以下の式8で表される。
【0068】
【数8】
【0069】
式8から分母のsとsの係数が第1可変絞り弁6の絞り係数fv1と第2可変絞り弁7の絞り係数fv2をパラメータとして変化することが理解できる。よって、式8から、絞り弁制御部30の制御によって、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数が変化すると、シリンダ装置Aにおけるシステムの伝達関数が変化し、目標推力に対する液圧シリンダ1の推力の応答性が変化するのを確認できる。
【0070】
他方、式8の分母におけるsの係数には、微分ゲインKdが含まれており、sの係数には比例ゲインKpが含まれている。よって、第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数の変化に応じて、比例ゲインKpと微分ゲインKdの値を変更すれば、第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数の変化による液圧シリンダ1の推力の目標推力に対する追従性能の悪化を抑制できる。
【0071】
そこで、比例ゲイン補正部24は、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数の情報を得て、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数との値からPID制御部21がその時の第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数との値に最適な比例ゲインを求め、PID制御部21の比例ゲインを求めた値に補正する。また、微分ゲイン補正部25は、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数の情報を得て、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数との値からPID制御部21がその時の第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数との値に最適な微分ゲインを求め、PID制御部21の微分ゲインを求めた値に補正する。
【0072】
このように、PID制御部21で使用する比例ゲインと微分ゲインとが、その時の第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とに適した比例ゲインと微分ゲインとに補正されるので、PID制御部21が目標推力と実推力とから電流指令を求めると、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とが変化しても、目標推力に対する液圧シリンダ1の実推力の追従性の悪化を抑制できる。なお、絞り弁制御部30は、第1可変絞り弁6と第2可変絞り弁7を制御しており、第1可変絞り弁6と第2可変絞り弁7の各絞り係数を調整するための指令を生成して第1可変絞り弁6と第2可変絞り弁7の駆動源へ与えるので、第1可変絞り弁6と第2可変絞り弁7の各絞り係数を把握できる。よって、比例ゲイン補正部24および微分ゲイン補正部25は、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数の情報を絞り弁制御部30から得ればよい。また、比例ゲイン補正部24および微分ゲイン補正部25は、第1可変絞り弁6の駆動源と第2可変絞り弁の駆動源へ供給される電流を検知して各絞り係数の情報を得てもよい。
【0073】
比例ゲイン補正部24は、具体的には、たとえば、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数から比例ゲインを求めるマップを利用してその時の、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数に最適となる比例ゲインを求める。また、微分ゲイン補正部25は、具体的には、たとえば、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数から微分ゲインを求めるマップを利用してその時の、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数に最適となる微分ゲインを求める。
【0074】
詳細には、まず、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数を予め定めた所定値に設定しておき、液圧シリンダ1に対してPID制御部21の比例ゲイン、微分ゲインおよび積分ゲインを目標推力に対して液圧シリンダ1の実推力が追従するように調整して、基準となる比例ゲイン、微分ゲインおよび積分ゲインを求める。
【0075】
このようにして基準となる比例ゲイン、微分ゲインおよび積分ゲインに設定されたPID制御部21で液圧シリンダ1を制御するようにし、種々の周波数の目標推力と、徐々に周波数が変化する目標推力をPID制御部21に与えて液圧シリンダ1を制御させて、実推力の出力を計測して、シリンダ装置Aの目標推力から実推力までの伝達関数を求め、当該伝達関数の分母のsとsの係数の値を算出する。
【0076】
そして、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数を変化させてシリンダ装置Aの伝達関数の変化を把握して、第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数に対して最適となる比例ゲインを得るための比例ゲインマップと、第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数に対して最適となる微分ゲインを得るための微分ゲインマップを得る。
【0077】
このようにして得られた比例ゲインマップを利用して、比例ゲイン補正部24は、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とからPID制御部21に最適となる比例ゲインを求める。また、微分ゲイン補正部25も微分ゲインマップを利用して、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とからPID制御部21に最適となる微分ゲインを求める。
【0078】
そして、PID制御部21における比例ゲインと微分ゲインは、比例ゲイン補正部24が求めた比例ゲインと微分ゲイン補正部25が求めた微分ゲインとに補正されるので、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数が変化しても、比例ゲインと微分ゲインが各絞り係数の変化に応じて最適化されるので、液圧シリンダ1の実推力が応答性よく目標推力に追従するようになる。
【0079】
比例ゲイン補正部24が求めた比例ゲインと微分ゲイン補正部25が求めた微分ゲインを直ちにPID制御部21で利用してもよいが、比例ゲインと微分ゲインとの値が急変すると、PID制御部21が生成する電流指令も急変する可能性がある。そこで、推力制御部20は、比例ゲイン補正部24が求めた比例ゲインをローパスフィルタ処理して比例ゲインの変化を緩和する比例ゲイン処理部27と、微分ゲイン補正部25が求めた微分ゲインをローパスフィルタ処理して微分ゲインの変化を緩和する微分ゲイン処理部28とを備えている。
【0080】
このように、推力制御部20は、比例ゲイン補正部24が求めた比例ゲインの変化を緩和する比例ゲイン処理部27と、微分ゲイン補正部25が求めた微分ゲインの変化を緩和する微分ゲイン処理部28とを備えており、PID制御部21における比例ゲインの値と微分ゲインの値とが比例ゲイン処理部27で処理した比例ゲインの値と微分ゲイン処理部28で処理した微分ゲインの値とに変更される。よって、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とが変化して比例ゲインと微分ゲインとが補正されても、PID制御部21で使用する比例ゲインの値と微分ゲインの値とが急変するのが緩和されて、PID制御部21が出力する電流指令の急変も緩和されるので、液圧シリンダ1の推力の急変も緩和できる。
【0081】
なお、本実施の形態の推力制御部20は、積分ゲイン補正部26を備えている。前述した式8中で積分ゲインKfの係数eのパラメータとして液圧シリンダ1の液体の体積弾性係数Kが含まれている。液体の体積弾性係数Kは、液体の圧力によって変化する。よって、積分ゲイン補正部26は、実推力検知部41からシリンダ2内の圧力の情報を得て体積弾性係数Kを推定して、推定した体積弾性係数Kに最適となる積分ゲインを求めて、PID制御部21における積分ゲインを求めた積分ゲインに補正する。積分ゲイン補正部26は、たとえば、シリンダ装置Aを使用した際における温度の平均値において、圧力から体積弾性係数Kを求める数式を用いて体積弾性係数Kを求めればよい。また、液体の温度と圧力と体積弾性係数Kとの関係をマップ化しておき、積分ゲイン補正部26は、シリンダ2内の液体の温度を検知する温度センサを用いて液体の温度を検知し、検知した温度と圧力とからマップ演算によって体積弾性係数Kを求めてもよい。
【0082】
そして、PID制御部21における積分ゲインは、積分ゲイン補正部26が求めた積分ゲインに補正されるので、液体の体積弾性係数Kが変化してシリンダ装置Aの特性が変化しても、積分ゲインと微分ゲインが体積弾性係数Kの変化に応じて最適化されるので、液圧シリンダ1の実推力が応答性よく目標推力に追従するようになる。
【0083】
積分ゲイン補正部26が求めた積分ゲインを直ちにPID制御部21で利用してもよいが、比例ゲインと微分ゲインとの値が急変すると、PID制御部21が生成する電流指令も急変する可能性がある。そこで、推力制御部20は、積分ゲイン補正部26が求めた積分ゲインをローパスフィルタ処理して積分ゲインの変化を緩和する積分ゲイン処理部29を備えている。
【0084】
このように、推力制御部20は、積分ゲイン補正部26が求めた積分ゲインの変化を緩和する積分ゲイン処理部29を備えており、PID制御部21における積分ゲインの値が積分ゲイン処理部29で処理した積分ゲインの値に変更される。よって、液体の体積弾性係数Kが変化して積分ゲインが補正されても、PID制御部21で使用する積分ゲインの値が急変するのが緩和されて、PID制御部21が出力する電流指令の急変も緩和されるので、液圧シリンダ1の推力の急変も緩和できる。
【0085】
なお、体積弾性係数Kは、式8における分母のsとsの係数のパラメータとして含まれている。よって、比例ゲイン補正部24と微分ゲイン補正部25においても、第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数のみならず体積弾性係数Kの変化にも対応して最適な比例ゲインと微分ゲインを求めて比例ゲインと微分ゲインとを補正してもよい。体積弾性係数Kの変化に対してどのように比例ゲインと微分ゲインとを求めるかについては、体積弾性係数Kの値を変化させた際の伝達関数の変化を計測して比例ゲインと微分ゲインを最適に設定できるマップを作成すればよい。
【0086】
以上の通り、本実施の形態のシリンダ装置Aでは、PID制御によってコントローラ11が目標推力の入力を受けてモータ8に出力させるべき電流指令を求めるPID制御部21を備える他に、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とに基づいて比例ゲインを補正する比例ゲイン補正部24と微分ゲインを補正する微分ゲイン補正部25とを備えているので、絞り弁制御部30によって第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7の絞り係数が変更されても、液圧シリンダ1の目標推力に対する追従性の悪化を抑制できる。
【0087】
フィードフォワード制御部22は、上位の制御装置から入力される推力指令から液圧シリンダ1の応答性を向上させるために、PID制御部21が求めた電流指令に加算すべき加算電流を求める。フィードフォワード制御部22は、推力指令に対して液圧シリンダ1の応答遅れを考慮していち早く液圧シリンダ1の推力が推力指令に追従するような加算電流を求める。フィードフォワード制御部22は、液圧シリンダ1の実推力をフィードバックしないので、目標推力に対する追従性に影響を与えずに液圧シリンダ1の目標推力に対する応答性を向上させる。
【0088】
加算部23は、PID制御部21が目標推力から求めた電流指令とフィードフォワード制御部22が目標推力から求めた加算電流指令とを加算して、モータ8に供給すべき目標電流を指示する最終電流指令を生成して、モータ制御部40へ電流指令を入力する。
【0089】
モータ制御部40は、詳しくは図示しないが、モータ8を駆動する駆動回路と、モータ8の実電流をフィードバックして加算部23から入力される電流指令が指示する目標電流とモータ8に流れる実電流との制御偏差に基づいて駆動回路を駆動してモータ8をPWM制御する制御器とを備えている。モータ制御部40は、加算部23から入力される電流指令にしたがって、電流指令が指示する目標電流にモータ8の電流が追従するように制御する。なお、モータ制御部40は、モータ8の形式によってモータ8の電流制御に適した駆動回路を備えて、電流指令にしたがってモータ8の電流を制御可能であればよい。
【0090】
なお、コントローラ11は、実推力検知部41における圧力センサ41a,41b、モータ制御部40における駆動回路および絞り弁制御部30における駆動回路を除き、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、推力指令、モータ8の回転速度およびトルク(電流)およびシリンダ2内の圧力の信号を取り込むためのインターフェースと、モータ8、第1可変絞り弁6および第2可変絞り弁7を制御するのに必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、前記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、前記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、コントローラ11における推力制御部20および絞り弁制御部30の各部は、CPUの前記プログラムの実行により実現できる。また、コントローラ11は、CPUの前記プログラムの実行による実現にかえて、アナログの電子回路によって実現されてもよい。
【0091】
以上、本実施の形態のシリンダ装置Aは、シリンダ2と、シリンダ2内に移動自在に挿入されてシリンダ2内を二つの作動室R1,R2に区画するピストン3と、互いに並列して作動室R1,R2同士を連通する第1流路4と第2流路5と、第1流路4に設けられた第1可変絞り弁6と、第2流路5に直列に設けられる第2可変絞り弁7およびモータ8によって駆動される双方向吐出型のポンプ9とを有する液圧シリンダ1と、第1可変絞り弁6、第2可変絞り弁7およびモータ8を制御するコントローラ11とを備え、コントローラ11は、液圧シリンダ1の目標推力をPID補償してモータ8へ与える電流指令を生成するPID制御部21と、PID制御部21の比例ゲインを補正する比例ゲイン補正部24と、PID制御部21の微分ゲインを補正する微分ゲイン補正部25とを有し、比例ゲイン補正部24と微分ゲイン補正部25は、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とに基づいてそれぞれ比例ゲインと微分ゲインを補正する。このように構成されたシリンダ装置Aによれば、第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数が変化しても、PID制御部21で使用する比例ゲインと微分ゲインとがその時の第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数に最適化される。よって、本実施の形態のシリンダ装置Aによれば、第1可変絞り弁6或いは第2可変絞り弁7の絞り係数が変化しても目標推力に対する追従性能の悪化を抑制できる。
【0092】
また、本実施の形態のシリンダ装置Aにおけるコントローラ11は、PID制御部21の積分ゲインを液圧シリンダ1内の液体の体積弾性係数Kに基づいて補正する積分ゲイン補正部26を備えている。このように構成されたシリンダ装置Aによれば、液体の体積弾性係数Kが変化してシリンダ装置Aの特性が変化しても、目標推力に対する液圧シリンダ1の実推力の追従性の悪化を抑制できる。
【0093】
さらに、本実施の形態のシリンダ装置Aにおけるコントローラ11は、比例ゲイン補正部24が補正した比例ゲインの変化を緩和する比例ゲイン処理部27と、微分ゲイン補正部25が補正した微分ゲインの変化を緩和する微分ゲイン処理部28とを有し、PID制御部21は、比例ゲイン処理部27で処理した比例ゲインと、微分ゲイン処理部28で処理した微分ゲインとを用いて電流指令を生成する。このように構成されたシリンダ装置Aによれば、第1可変絞り弁6の絞り係数と第2可変絞り弁7の絞り係数とが変化して比例ゲインと微分ゲインとが補正されても、PID制御部21で使用する比例ゲインの値と微分ゲインの値とが急変するのが緩和されて、PID制御部21が出力する電流指令の急変も緩和されるので、液圧シリンダ1の推力の急変も緩和できる。
【0094】
また、本実施の形態のシリンダ装置Aにおけるコントローラ11は、モータ8が制動状態の場合に、第1可変絞り弁6の絞り係数および第2可変絞り弁7の絞り係数のいずれか一方または両方をモータ8の回生電力を高くするように制御する絞り弁制御部30を備えている。このように構成されたシリンダ装置Aによれば、第1可変絞り弁6或いは第2可変絞り弁7の絞り係数を変化させてもPID制御部21による制御によって目標推力に対する液圧シリンダ1の応答性の悪化を抑制できるので、液圧シリンダ1の追従性の抑制と、絞り弁制御部30により回生電力の向上とを両立できる。
【0095】
さらに、本実施の形態のシリンダ装置Aにおけるコントローラ11は、目標推力の入力を受けてフィードフォワード制御によってPID制御部21が求める電流指令に加算する加算電流指令を求めるフィードフォワード制御部22を備え、PID制御部21が求めた電流指令とフィードフォワード制御部22が求めた加算電流指令とを加算してモータ8に供給するべき目標電流を指示する最終電流指令を生成する。このように構成されたシリンダ装置Aによれば、液圧シリンダ1の実推力をフィードバックしないフィードフォワード制御部22が推力指令に対して液圧シリンダ1の応答遅れを考慮していち早く液圧シリンダ1の推力が推力指令に追従するような加算電流指令を求め、PID制御部21の電流指令に加算電流指令を加算して最終電流指令を生成するので、目標推力に対する液圧シリンダ1の追従性に影響を与えずに目標推力に対する応答性を向上させ得る。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1・・・液圧シリンダ、2・・・シリンダ、3・・・ピストン、4・・・第1流路、5・・・第2流路、6・・・第1可変絞り弁、7・・・第2可変絞り弁、8・・・モータ、9・・・ポンプ、11・・・コントローラ、21・・・PID制御部、22・・・フィードフォワード制御部、24・・・比例ゲイン補正部、25・・・微分ゲイン補正部、26・・・積分ゲイン補正部、27・・・比例ゲイン処理部、28・・・微分ゲイン処理部、30・・・絞り弁制御部、A・・・シリンダ装置、R1,R2・・・作動室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7