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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047373
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/08 20060101AFI20240329BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240329BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H02K9/08 Z
H02K11/33
H02K9/19 A
H02K9/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152957
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】城ノ戸 拓真
(72)【発明者】
【氏名】畑中 聖二
(72)【発明者】
【氏名】上田 良一
【テーマコード(参考)】
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP16
5H609QQ02
5H609QQ05
5H609QQ07
5H609QQ10
5H609QQ23
5H609RR02
5H609RR40
5H609RR42
5H609RR43
5H609RR53
5H609RR54
5H609RR63
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB02
5H611BB04
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】ハウジングに電力変換装置を内装する構成の回転電機において、電力変換装置を適切に冷却できる回転電機を提供することを目的とする。
【解決手段】
回転軸40を有するロータ30と、ロータ30の外周に備えられるステータ20と、ステータ20との間で電力を授受する電力変換装置50と、ロータ30、ステータ20及び電力変換装置50を収容する筒状のハウジング10と、を備える回転電機である。回転軸40は、ロータ30の軸方向端部から軸方向に延設して形成される延設部41を有し、電力変換装置50は、ステータ30の軸方向端部よりも軸方向外側に配置され、延設部41の周囲を囲むように形成され、ハウジング10は、電力変換装置50を取り囲むように冷媒流路11を備え、延設部41は、電力変換装置50とステータ30の軸方向端部との間に配置され、回転軸40の回転に伴って回転することで径方向外側に送風するファン60を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に備えられるステータと、前記ステータとの間で電力を授受する電力変換装置と、前記ロータ、前記ステータ及び前記電力変換装置を収容する筒状のハウジングと、を備える回転電機であって、
前記回転軸は、前記ロータの軸方向端部から軸方向に延設して形成される延設部を有し、
前記電力変換装置は、前記ステータの軸方向端部よりも軸方向外側に配置され、前記延設部の周囲を囲むように形成され、
前記ハウジングは、前記電力変換装置を取り囲むように冷媒流路を備え、
前記延設部は、前記電力変換装置と前記ステータの軸方向端部との間に配置され、前記回転軸の回転に伴って回転することで径方向外側に送風するファンを備える、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記ハウジングの内周壁は、前記ステータの軸方向端部よりも軸方向外側に、前記内周壁よりも外径側に拡径された拡径部を有し、前記ステータが固定される箇所の前記内周壁と前記拡径部との間に段差部が形成される、
回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記ハウジングの内周壁は、前記ステータの軸方向端部よりも軸方向外側に、周方向に沿って溝部が形成され、前記溝部に円環状部材が嵌装されることにより、前記内周壁から内径側に起立する第1の起立部が形成される、
回転電機。
【請求項4】
請求項2に記載の回転電機であって、
前記ステータの軸方向端部にはコイルエンドが軸方向外側に突設して備えられ、
前記段差部は、その軸方向位置が、前記ステータの軸方向端部と前記コイルエンドの軸方向端部との間に配置される、
回転電機。
【請求項5】
請求項2に記載の回転電機であって、
前記段差部は、軸方向外側に向かうにつれて径方向外側に拡大するように傾斜して形成される、
回転電機。
【請求項6】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記ハウジングは、前記電力変換装置を取り囲む位置に、内周壁から内側に立設するフィンを備え、
前記フィンは、軸方向に延設される、
回転電機。
【請求項7】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記電力変換装置は、
制御基板、パワーモジュール及び平滑コンデンサを備え、
前記ステータの軸方向端部側から、前記制御基板、前記パワーモジュール及び前記平滑コンデンサが積層して配置され、
前記制御基板には、前記制御基板の前記ステータに対向する面において、径方向内側から径方向外側に向かうにつれて、起立高さが高くなるように電気部品が実装される、
回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機であって、
前記制御基板にはケーブルが接続され、
前記ケーブルは、前記制御基板の表面に沿って、径方向内側から径方向外側に向かうように配索される、
回転電機。
【請求項9】
請求項7に記載の回転電機であって、
前記ハウジングの内周壁であって、前記パワーモジュールに対向する箇所には、前記内周壁から内径側に起立する第2の起立部を有し、
前記第2の起立部は、軸方向外側に向かうにつれて起立高さが高くなる傾斜部を有する、
回転電機。
【請求項10】
請求項4に記載の回転電機であって、
前記ファンは、前記ファンが設けられる軸方向位置よりも前記ステータ側に向かって、径方向外側に送風するように構成される、
回転電機。
【請求項11】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記ファンは、前記延設部に遠心クラッチ機構を介して固定され、
前記遠心クラッチ機構は、前記回転軸の回転速度が所定回転速度以上となった場合に、前記延設部から前記ファンへの回転の伝達を切り離す、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機との間で電力を授受するインバータ(電力変換装置)は、パワーモジュール等を適切に冷却する必要がある。ハウジング内にステータ及びロータと電力変換装置とを内装する構成の回転電機では、ステータ及びロータの熱が電力変換装置に伝達しやすいので、電力変換装置を冷却するための工夫が必要となる。
【0003】
特許文献1には、モータハウジング内にインバータ回路を有する制御装置が備えられ、回転軸に固定された冷却ファンが空気吸入孔から吸入した空気によって、制御装置を空冷する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-274992号公報
【発明の概要】
【0005】
従来技術のように、ハウジング外部の空気により電力変換装置を空冷する構成では、空気の温度がハウジング外部の環境温度に依存するので、必ずしも適切に電力変換装置を冷却できないという問題がある。
【0006】
本発明は、ハウジングに電力変換装置を内装する構成の回転電機において、電力変換装置をより効果的に冷却できる回転電機を提供することを目的とする。
【0007】
本発明のある態様は、回転軸を有するロータと、ロータの外周に備えられるステータと、ステータとの間で電力を授受する電力変換装置と、ロータ、ステータ及び電力変換装置を収容する筒状のハウジングと、を備える回転電機に適用される。回転軸は、ロータの軸方向端部から軸方向に延設して形成される延設部を有する。電力変換装置は、ステータの軸方向端部よりも軸方向外側に配置され、延設部の周囲を囲むように形成される。ハウジングは、電力変換装置を取り囲むように冷媒流路を備える。延設部は、電力変換装置とステータの軸方向端部との間に配置され、回転軸の回転に伴って回転することで径方向外側に送風するファンを備える。
【0008】
本発明によれば、ハウジング内における電力変換装置とステータとの間でファンが径方向外側に送風するので、ステータの熱が電力変換装置に伝達しにくくすることができる。さらに、ファンによる送風がハウジングの冷媒流路を流れる冷媒と熱交換を行うことで、ハウジングの内部の空気の温度の上昇が抑制され、電力変換装置を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の回転電機の軸方向断面図である。
図2図2は、回転電機の径方向断面図である。
図3図3は、電力変換装置付近の説明図である。
図4図4は、変形例の電力変換装置付近の説明図である。
図5図5は、別の変形例の電力変換装置付近の説明図である。
図6図6は、さらに別の変形例の電力変換装置付近の説明図である。
図7図7は、さらに別の変形例の電力変換装置付近の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機としてのモータ1の説明図であり、軸方向の断面図を示す。図2は、モータ1の径方向断面図であり、図1のII-II断面図を示す。
【0012】
モータ1は、円環状に形成されたステータ20と、ステータ20の内側に回転自在に装着されたロータ30と、ステータ20との間で電力を授受する電力変換装置50と、ステータ20、ロータ30及び電力変換装置50を内装するハウジング10と、を備えて構成される。
【0013】
本実施形態のモータ1は、電動自動車やハイブリッド自動車に搭載され、車輪を駆動する電動機として機能する。また、モータ1は、車輪の回転による駆動力を受けて発電(回生)を行なう発電機としても機能する。なお、モータ1は、自動車以外の装置、例えば各種電気機器又は産業機械の駆動装置として用いられてもよい。
【0014】
ハウジング10は円筒形状を有し、ハウジング10の内周には、ステータ20の外周が内接して固定される。ハウジング10の軸方向の端部(図1中右側)には、ハウジング10の開口部を覆うカバー13が固定される。ハウジング10は、図1中左側の端部にも図示しないカバーが備えられており、ハウジング10の内部は気密構造として構成され、ハウジング10の外部の空気が侵入しにくいように構成される。
【0015】
ステータ20は、図示しないスロット内にコイルを備える。ステータ20の軸方向の両端部にコイルエンド21が突設する。
【0016】
ロータ30は、ステータ20の内側に回転自在に配置される。ロータ30は、回転軸40を同軸に備える。
【0017】
回転軸40は、ロータ30と同軸に回転する。回転軸40のうち、ロータ30の軸方向端部よりも軸方向外側(図1中右側)には、延設部41が延設する。延設部41は、ベアリング45を介してカバー13に支持される。
【0018】
電力変換装置50は、ステータ20及びロータ30の軸方向端部よりも軸方向外側に配置される。図2に示すように、電力変換装置50は、延設部41の周囲を取り囲むように、円環状に形成される。電力変換装置50の周囲はハウジング10に覆われている。
【0019】
なお、ハウジング10の内周のうち、ステータ20及びロータ30よりも軸方向外側の円筒状の空間を、電力変換装置50が収容される「電力変換装置収容室150」と呼ぶ。
【0020】
電力変換装置収容室150を構成するハウジング10には、第1の冷媒流路11が備えられる。第1の冷媒流路11は、モータ1の外部から送られる冷媒が循環し、ハウジング10の内部の空気と熱交換を行う。
【0021】
ハウジング10は、ステータ20の外周部分に第2の冷媒流路12を備える。第2の冷媒流路12は、冷媒によりステータ20を外側から冷却する。第1の冷媒流路11と第2の冷媒流路12とは、冷媒がハウジング10の内部で連通するように構成される。
【0022】
電力変換装置収容室150において、回転軸40の延設部41には、ファン60が備えられる。ファン60は、ステータ20のコイルエンド21の軸方向端部と電力変換装置50の軸方向内側との間に位置するように配置される。ファン60は延設部41に固定され、延設部41の回転(すなわち回転軸40の回転)により回転することで、電力変換装置収容室150内の空気を、径方向外側に送風するように構成されている。
【0023】
次に、電力変換装置50の構成を説明する。
【0024】
図3は、本実施形態のモータ1の電力変換装置50を中心とした拡大断面図である。
【0025】
電力変換装置50は、制御基板51、パワーモジュール52、平滑コンデンサ53及び導体54を備える。これらは図2で前述したように円環状に形成され、電力変換装置収容室150内で、延設部41の周囲に配置される。導体54は、例えばバスバーやハーネス等により構成される。
【0026】
電力変換装置50は、ステータ20の軸方向端部から軸方向外側(図3中右側)に向けて、制御基板51、パワーモジュール52及び平滑コンデンサ53の順に、固定部材55により若干の間隔を開けて積層されて配置される。
【0027】
制御基板51は、パワーモジュール52の動作(スイッチング)を制御する。パワーモジュール52は、複数のスイッチング素子を有し、バッテリ(図示せず)から導体54を介して供給される直流電力を交流電力に変換して、ステータ20のコイルに供給する。また、モータ1の回生時には、ステータ20のコイルから供給される交流電力を直流電力に変換して、導体54を介して回生電力を出力する。平滑コンデンサ53は、回路内を流れる直流電力を平滑化する。
【0028】
制御基板51の表面及び裏面には、電気部品51a、51b及びコネクタ51dが実装される。
【0029】
パワーモジュール52は、その表面及び裏面に冷却器52a、52bを備える。冷却器52a、52bは、複数のフィンを有し、周囲の空気との間で熱交換を行うことにより、スイッチング素子を冷却する。
【0030】
ハウジング10内にステータ20及び電力変換装置50を備えるモータ1は、ファン60による送風によって、電力変換装置50の冷却を行う。ハウジング10は、ステータ20が嵌装されている箇所よりも軸方向外側に、ハウジング10の内周壁が拡径された拡径部150aを有する。ハウジング10の内周壁は、ステータ20が固定される部位と、拡径部150aとの間で段差部14が形成される。段差部14は、径方向に沿う壁状の構造である。
【0031】
段差部14は、ハウジング10内周壁において、ステータ20の軸方向端部よりも軸方向外側で、コイルエンド21の軸方向端部よりも軸方向内側となる位置に配置される。
【0032】
ファン60は、回転軸40の回転により径方向外側に送風する。ファン60は、ファン60が設けられる延設部41の軸方向位置よりも軸方向内側に送風が向かうように、その羽根形状が構成されている。
【0033】
ファン60の送風は、ハウジング10の内周壁へと向かい、拡径部150aの内周壁に衝突した後に、軸方向へと向きを変える。このとき、段差部14の存在によって、空気が、図2中の矢印で示すように軸方向外側に向かい、コイルエンド21側には流れにくくなる。
【0034】
段差部14によって軸方向外側へと向かった空気は、ハウジング10の内周壁を沿うように軸方向外側へと流れる。ハウジング10は、電力変換装置50を取り囲む位置に、拡径部150a(ハウジング10の内周壁)から内側に立設するフィン18を備える。フィン18は、図3に示すように、段差部14からカバー13に渡って軸方向に延設される。なお、フィン18は、図2に示すように周方向に所定間隔で複数配置されていてもよいし、一つのみであってもよい。これにより、ファン60により送風された空気が軸方向に流れやすくなるとともに、空気と第1の冷媒流路11との接触面積が増加し、熱交換効率を上昇できる。
【0035】
ハウジング10の内周壁を沿った空気の一部は、ハウジング10の内周壁から離間して、内径側、すなわち、電力変換装置50側に向かう。この空気は、制御基板51とパワーモジュール52との間の空隙、及び、パワーモジュール52と平滑コンデンサ53の間の空隙を流れる。空気が冷却器52a、52bの表面に流れることで、パワーモジュール52が冷却される。
【0036】
ハウジング10の内周壁に沿って軸方向外側に流れた空気は、カバー13に衝突して、径方向内側に移動する。この空気は、平滑コンデンサ53の内径側の延設部41付近の空間へと流れる。ここで、空気は軸方向内側へと向きを変えて、ファン60に戻る。ファン60は、延設部41付近から空気を吸い込み、再び径方向外側へと送風する。
【0037】
このような構成により、電力変換装置収容室150内において、ファン60による送風が、電力変換装置50の周囲を循環することにより、電力変換装置50を冷却することができる。ファン60の送風は、ステータ20のコイルエンド21と電力変換装置50との間に流れてエアカーテンが形成されるので、コイルエンド21の熱が電力変換装置50に伝達しにくくなる。電力変換装置収容室150の内周壁に向かった空気は、内周壁に沿うように流れ、第1の冷媒流路11と熱交換が行われることで、電力変換装置収容室150内で循環する空気の温度が低下する。これにより、電力変換装置50をより効率よく冷却することができる。
【0038】
ファン60の送風は、ステータ20のコイルエンド21と電力変換装置50の制御基板51との間に送られる。ここで、制御基板51のコイルエンド21に対向する面に配置される電気部品51a、51bは、内径側、すなわち、ファン60に近い側に起立高さの低い電気部品51a(例えば、マイコンや表面実装IC等)が配置され、外径側、すなわち、ファン60から遠い側に起立高さの高い電気部品51b(例えばトランスやコイルなど)が配置される。このような構成により、ファン60の送風の入口となる内径側で空気の圧損を抑制でき、空気の滞留を抑制できる。
【0039】
同様に、制御基板51のパワーモジュール52に対向する面では、外径側、すなわち、ハウジング10の内周壁に近い側に起立高さの低い電気部品51aが配置され、内径側、すなわち、延設部41に近い側に起立高さの高い電気部品51bが配置される。このような構成により、ハウジング10の内周壁から離間して制御基板51とパワーモジュール52との間に流れる空気について、入口となる外径側で空気の圧損を抑制できる。
【0040】
また、図2に示すように、制御基板51は、コネクタ51dを介してケーブル51cが接続される。コネクタ51dは、その長辺が延設部41の接線方向に沿うように配置される。これにより、コネクタ51dに接続されるケーブル51cは、制御基板51の半径方向に配索される。このような構成により、ケーブル51c及びコネクタ51dがファン60の送風の向きに沿うように配置されるので、空気の圧損を抑制でき、空気が滞留を抑制できる。
【0041】
図3を参照して、回転軸40の延設部41とファン60との間には、遠心クラッチ機構61を備える。遠心クラッチ機構61は、回転軸40の回転速度が所定回転速度以上(例えば10,000rpm)となった場合に連結が解除され、延設部41とファン60との間で回転の伝達が連結を切り離される。これにより、ファン60が送風を行わなくなる。
【0042】
モータ1の回転速度が大きくなった場合は、ファン60の送風量が大きくなる。これにより電力変換装置収容室150内での空気の乱流が大きくなり、比較的温度の高いコイルエンド21の周囲の空気を巻き込むことで、電力変換装置収容室150内の空気の温度が上昇してしまう。これに対して、遠心クラッチ機構61を備えることで、回転速度が大きい場合にファン60による送風を抑制して、電力変換装置収容室150内での乱流の発生を抑制することができる。なお、遠心クラッチ機構61は、必ずしも備えていなくてもよい。
【0043】
以上説明したように、モータ1は、回転軸40を有するロータ30と、ロータ30の外周に備えられるステータ20と、ステータ20との間で電力を授受する電力変換装置50と、ロータ30、ステータ20及び電力変換装置50を収容する筒状のハウジング10と、を備える。回転軸40は、ロータ30の軸方向端部から軸方向に延設して形成される延設部41を有する。電力変換装置50は、ステータ20の軸方向端部よりも軸方向外側に配置され、延設部41の周囲を囲むように形成される。ハウジング10は、電力変換装置50を取り囲むように冷媒流路(第1の冷媒流路11)を備え、延設部41は、電力変換装置50とステータ20の端部との間に配置され、回転軸40の回転に伴って回転することで径方向外側に送風するファン60を備える。
【0044】
このような構成により、電力変換装置50とステータ20との間でファン60が径方向外側に送風するので、ステータ20(特にコイルエンド21)の熱が電力変換装置50に伝達しにくくするとともに、電力変換装置50が収容される電力変換装置収容室150内の空気温度を均一にすることができる。さらに、ファン60の送風がハウジング10の内周壁に向かうことで、ハウジング10の第1の冷媒流路11を流れる冷媒と熱交換が行われ、ハウジング10の内部の空気の温度の上昇が抑制されるので、電力変換装置50を効率よく冷却することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、段差部14により、ファン60の送風が軸方向外側に向きを変えるように構成したが、必ずしも段差部14を備えていなくてもよい。ファン60の送風はハウジング10の内周壁に衝突したとき、その一部が軸方向内側(図3中左側)に向かい、その他が軸方向外側(図3中右側)に向かう。軸方向内側に向かった空気はステータ20の軸方向端部に衝突して向きを軸方向外側に変える。従って、段差部14を備えない構成、言い換えると、拡径部150aを有さず、電力変換装置収容室150においてもハウジング10の内径がステータ20の外径と同じ構成であっても、ファン60の送風は、軸方向外側に向きを変えて、ハウジング10の内周壁に沿って流れる。
【0046】
また、本実施形態では、ハウジング10の内周壁は、ステータ20の軸方向端部よりも軸方向外側で、内周壁よりも外径側に拡径された拡径部150aを有し、ステータ20が固定される箇所の内周壁と拡径部150aとの間に段差部14が形成される。
【0047】
このような構成により、ファン60の送風がハウジング10の内周壁の段差部14によって軸方向外側に向きを変えられるので、空気が、電力変換装置収容室150の内周壁を沿うように軸方向外側へと流れやすくなる。
【0048】
また、本実施形態では、ステータ20の軸方向端部にはコイルエンド21が軸方向外側に突設して備えられ、段差部14は、その軸方向位置が、ステータ20の軸方向端部とコイルエンド21の軸方向端部との間に配置される。
【0049】
このような構成により、ファン60の送風がハウジング10の内周壁に衝突する箇所の面積を大きくすることができるので、乱流の発生を抑制でき、ステータ20のコイルエンド21等の高温となる部分に空気が巻き込まれて電力変換装置50に送られることを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、ハウジング10は、電力変換装置50を取り囲む位置に、内周壁から内側に立設するフィン18を備え、フィン18は、軸方向に延設される。
【0051】
このような構成により、ハウジング10の内周壁を流れる空気と第1の冷媒流路11との接触面積が増加するので、空気の冷却をより促進できる。
【0052】
また、本実施形態では、電力変換装置50は、制御基板51、パワーモジュール52及び平滑コンデンサ53を備え、ステータ20の軸方向端部側から、制御基板51、パワーモジュール52及び平滑コンデンサ53が積層して配置され、制御基板51には、制御基板51のステータ20に対向する面において、径方向内側から径方向外側に向かうにつれて、起立高さが高くなるように実装される。
【0053】
このような構成により、ファン60の送風が、電力変換装置50とステータ20との間で電気部品51a、51bに妨げられることなく空気の圧損を抑制するとともに、空気の滞留を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、制御基板51にはケーブル51cが接続され、ケーブル51cは、制御基板51の表面に沿って、径方向内側から径方向外側に向かうように配索される。
【0055】
このような構成により、ケーブル51cがファン60の送風の向きに沿うように配置されるので、空気の圧損を抑制するとともに、空気の滞留を抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、ファン60は、ファン60が設けられる軸方向位置よりもステータ20側に向かって、径方向外側に送風するように構成される。
【0057】
このような構成により、ファン60の送風がハウジング10の内周壁の段差部14に当接しやすくなるので、ハウジング10の内周壁での乱流の発生を抑制して、軸方向外側に向きを変えやすくなる。
【0058】
また、本実施形態では、ファン60は、延設部41に遠心クラッチ機構61を介して固定され、遠心クラッチ機構61は、回転軸40の回転速度が所定回転速度以上となった場合に、延設部41からファン60への回転の伝達を切り離す。
【0059】
このような構成により、回転軸40の回転速度が大きい場合にファン60による送風を抑制するので、電力変換装置収容室150内での乱流の発生が増大することを抑制できる。
【0060】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0061】
図4は、本実施形態の変形例のモータ1の電力変換装置50を中心とした拡大断面図である。
【0062】
図4に示す変形例では、段差部14に代えて、円環状部材15により形成される起立部15aを有する点が特徴である。
【0063】
電力変換装置収容室150において、ハウジング10の内周壁には、周方向に沿って溝部10aが形成されている。溝部10aには、円環状部材15が嵌装される。このような構成により、ハウジング10の内周壁から円環状部材15が内径側に起立する起立部15a(第1の起立部)が形成される。
【0064】
起立部15aは、図3で前述した段差部14と同様に、ハウジング10の内周壁の、ステータ20の軸方向端部よりも軸方向外側で、コイルエンド21の軸方向端部よりも軸方向内側となる位置に配置される。
【0065】
このように、ハウジング10の内周壁に拡径部150aを形成することなく、溝部10a及び円環状部材15により起立部15aを形成することによっても、ファン60から送風されハウジング10の内周壁に衝突した空気が、起立部15aによって軸方向外側へと向きを変えられて、ハウジング10の内周壁を沿って軸方向外側に流れる。
【0066】
このように、本実施形態の変形例では、ハウジング10の内周壁は、ステータ20の軸方向端部よりも軸方向外側で、周方向に沿って溝部10aが形成され、溝部10aに円環状部材15が嵌装されることにより、ハウジング10の内周壁から内径側に起立する起立部15a(第1の起立部)が形成されるので、ファン60の送風を起立部15aによって軸方向外側に向きを変えることができる。
【0067】
図5は、本実施形態の別の変形例のモータ1の電力変換装置50を中心とした拡大断面図である。
【0068】
図5に示すモータ1は、ハウジング10の内周壁が、ステータ20が固定される部位と、拡径部150aとの間で段差部14aが形成される。段差部14aは、軸方向外側に向かうにつれてハウジング10の内周壁が径方向外側に拡大するように傾斜して形成される。この傾斜は、ハウジング10の内周壁に対して90度以上となるように、鈍角に形成される。
【0069】
このように、段差部14aをこのように内周壁に対して傾斜して形成することにより、ファン60から送風された空気が、段差部14aによって、軸方向外側へとより容易に向きを変えることができる。これにより、前述の図3に示す段差部14と比較して、空気の圧損や乱流の発生が低減され、電力変換装置50の冷却をより促進できる。
【0070】
このように、本実施形態の変形例では、段差部14aは、軸方向外側に向かうにつれて径方向外側に拡大するように傾斜して形成されるので、ファン60から送風された空気が、傾斜状の段差部14aにより、空気の圧損や乱流の発生を低減しながら、軸方向外側へとより容易に向きを変えることができる。
【0071】
図6は、本実施形態のさらに別の変形例のモータ1の電力変換装置50を中心とした拡大断面図である。
【0072】
図6に示すモータ1は、図4に示す構成の変形例であり、電力変換装置収容室150の内周壁の溝部10aに嵌装される円環状部材16により形成される起立部16a(第1の起立部)の内周面が、軸方向外側に向かうにつれて径方向外側に拡大するように傾斜する傾斜部16bとして構成される。傾斜部16bは、ハウジング10の内周壁に対して90度以上となるように、鈍角に形成される。
【0073】
円環状部材16により構成される傾斜部16bをこのように内周壁に対して傾斜して形成することにより、図5に示す変形例と同様に、ファン60から送風された空気が軸方向外側へとより容易に向きを変えることができる。これにより、前述の図4に示す起立部15aと比較して、空気の圧損や乱流の発生が低減され、電力変換装置50の冷却をより促進できる。
【0074】
図7は、本実施形態のさらに別の変形例のモータ1の電力変換装置50を中心とした拡大断面図である。
【0075】
図7に示すモータ1は、図3に示す構成の変形例であり、電力変換装置収容室150の拡径部150aにおいて、軸方向で制御基板51とパワーモジュール52との間の位置に、溝部10bと溝部10bに嵌装される円環状部材17を備えた。円環状部材17は、電力変換装置収容室150の内周壁に起立する起立部17a(第2の起立部)として構成されるとともに、軸方向外側に向かうにつれて径方向内側に縮径するように鈍角に傾斜して形成される傾斜部17bを有する。
【0076】
ハウジング10の内周壁において、制御基板51とパワーモジュール52との間の位置に傾斜部17bを備えることによって、電力変換装置収容室150の内周壁を軸方向に流れる空気の一部を、制御基板51とパワーモジュール52との間に流通させることができる。これにより、空気がパワーモジュール52の冷却器52aの表面に積極的に流れることにより、パワーモジュール52の冷却をより促進できる。
【0077】
このように、本実施形態の変形例では、ハウジング10の内周壁であって、パワーモジュール52に対向する箇所には、内周壁から内径側に起立する第2の起立部(起立部17a)を有し、起立部17aは、軸方向外側に向かうにつれて起立高さが高くなる傾斜部17bを有するので、ハウジング10の内周壁を軸方向に流れる空気の一部を、パワーモジュール52側に流通させることができる。
【0078】
なお、図7に示す構成は、図3に示す構成と同様の段差部14を有するが、これに限られない。段差部14に代えて起立部15aを備える構成(図4)、傾斜する段差部14aを備える構成(図5)、又は、傾斜部16bを有する起立部16aを備える構成(図6)に、起立部17a及び傾斜部17bを備えてもよい。
【0079】
以上本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0080】
本実施形態のファン60は、回転軸40の回転により径方向外側に送風するものであればどのような構成を採用してもよく、例えばシロッコファン、遠心ファンを用いることができる。
【0081】
また、本実施形態の円環状部材15、16、17は、円環状の金属材料により構成され、その一箇所に切欠が形成されることで、溝部10a、10bに容易に嵌装されるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1:モータ、10:ハウジング、10a:溝部、11:第1の冷媒流路、14:段差部、14a:段差部、15:円環状部材、15a:起立部、16:円環状部材、16a:起立部、17:円環状部材、17a:起立部、17b:傾斜部、18:フィン、20:ステータ、21:コイルエンド、30:ロータ、40:回転軸、41:延設部、50:電力変換装置、51:制御基板、51a、51b:電気部品、51c:ケーブル、51d:コネクタ、52:パワーモジュール、52a、52b:冷却器、53:平滑コンデンサ、54:導体、60:ファン、61:遠心クラッチ機構、150:電力変換装置収容室、150a:拡径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7