(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047382
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】機器の制御装置、機器、機器の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A63H 11/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
A63H11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152969
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】二村 渉
(72)【発明者】
【氏名】市川 英里奈
(72)【発明者】
【氏名】肥後 富男
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA06
2C150CA02
2C150DA24
2C150DA26
2C150DF04
2C150DF33
2C150EB01
2C150ED42
2C150ED56
2C150EF16
2C150EF23
2C150EF29
2C150FA03
(57)【要約】
【課題】衝撃を受けたときの可動部の損傷を抑える。
【解決手段】制御装置100の制御部110は、機器が衝撃を受ける可能性のあるかどうかを判定し、可動部220が機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、可動部220を、第1状態から可動部220に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる処理を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた生物を模した機器の制御装置であって、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定する処理と、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる処理と、
を実行する制御部を備える、
機器の制御装置。
【請求項2】
前記第2状態は、前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることのできない状態であり、
前記制御部は、
前記可動部が前記第1状態にあるときに、前記機器に前記生物を模した前記可動部を用いない動作も含んだ第1動作を実行させ、
前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定した場合に、前記可動部を前記第1状態から前記第2状態に移行させるとともに、前記機器を前記第1動作の実行を停止した実行停止状態にする、
請求項1に記載の機器の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記可動部を前記第1状態から前記第2状態に移行させてから第1の時間が経過した後に、前記可動部を前記第2状態から前記第1状態に移行させるとともに、前記機器の前記実行停止状態を解除する、
請求項2に記載の機器の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記機器の前記実行停止状態を解除してから第2の時間が経過した後に、前記可動部を前記第1状態に戻す、
請求項3に記載の機器の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定した場合に、前記可動部を前記第1状態から前記第2状態に移行させるとともに、前記衝撃を受けたときにおける前記生物の反応を模した動作であって、前記可動部の物理的な動作を必要としない第2動作を前記機器に実行させる、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記機器が衝撃を受ける可能性がある状態として、前記機器が互いに異なる複数の状態のいずれにあるか否かを判定し、判定した状態に応じて、前記第1の時間の長さを異ならせる、
請求項3に記載の機器の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記機器が衝撃を受ける可能性がある状態として、前記機器が互いに異なる複数の状態のいずれにあるか否かを判定し、判定した状態に応じて、前記第2の時間の長さを異ならせる、
請求項4に記載の機器の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記機器が受ける可能性がある衝撃の強さを推定し、推定した衝撃の強さに応じて、前記第1の時間または前記第2の時間の長さを異ならせる、
請求項4に記載の機器の制御装置。
【請求項9】
前記機器は、少なくとも加速度センサとジャイロセンサの一方を含むセンサを備え、
前記制御部は、
前記センサの検出値に応じて、前記機器が受ける可能性がある衝撃の強さを推定する、
請求項8に記載の機器の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、
疑似的な感情を示す感情データを設定し、
前記設定された感情データに基づいて前記第1の時間又は前記第2の時間の長さを異ならせる、
請求項4に記載の機器の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記機器が衝撃を受ける可能性があると予め定めた時間継続して判定された場合に、前記可動部を前記第2状態に制御する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記機器が衝撃を受ける可能性がある状態として、前記機器の落下状態、転がり状態、つまみ上げ状態、回転状態のすくなくとも何れかの状態を検出可能である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項13】
前記可動部はモータを備え、
前記制御部は、前記第2状態として、前記モータをフリー状態に制御する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項14】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機器の制御装置を備えた機器。
【請求項15】
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた生物を模した機器の制御方法であって、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定し、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる、
機器の制御方法。
【請求項16】
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた生物を模した機器の制御装置が備える制御部に、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定する処理と、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の制御装置、機器、機器の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット等の機器を友達やペットのような親しみのある存在に近づけるように、その動作を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ユーザが撫でたり抱き上げたり声をかけたりする等の外部刺激を加えたときに、実際のペットのような振る舞いをする犬型のロボット装置について記載されている。ロボット装置は、サーボモータ等(駆動部)を含む可動部を備えており、サーボモータ等を駆動してギア部材等で連結されている頭部等を可動させることにより、このような振る舞いを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなロボット装置は、子供のようなユーザによって乱暴に扱われて壁に投げつけられたり、誤って床に落とされたりする場合がある。このような場合、ロボット装置には壁や床との衝突により強い衝撃が加わるため、可動部が大きな損傷を受け、ロボット装置が故障してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、衝撃を受けたときの可動部の損傷を抑えることができる機器の制御装置、機器、機器の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る機器の制御装置の一様態は、
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた生物を模した機器の制御装置であって、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定する処理と、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる処理と、
を実行する制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝撃を受けたときの可動部の損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るロボットの外観を示す図である。
【
図2】実施形態に係るロボットの側面から見た断面図である。
【
図3】実施形態に係るロボットの筐体を説明する図である。
【
図4】実施形態に係るロボットのひねりモータの動きの一例を説明する図である。
【
図5】実施形態に係るロボットのひねりモータの動きの一例を説明する他の図である。
【
図6】実施形態に係るロボットの上下モータの動きの一例を説明する図である。
【
図7】実施形態に係るロボットの上下モータの動きの一例を説明する他の図である。
【
図8】実施形態に係るロボットの機能構成を示すブロック図である。
【
図9】実施形態に係る制御内容テーブルの一例を説明するための図である。
【
図10】実施形態に係るロボット制御処理のフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る落下検出処理のフローチャートである。
【
図12】実施形態に係る転がり検出処理のフローチャートである。
【
図13】実施形態に係るつまみ上げ検出処理のフローチャートである。
【
図14】実施形態に係る回転検出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0010】
(実施形態)
本発明における機器の制御装置を
図1に示すロボット200に適用した実施形態について、図面を参照して説明する。実施形態に係るロボット200は、小型の動物を模したペットロボットである。なお、理解を容易にするため、
図1には前後左右及び上下の方向を示しており、この方向を適宜参照しながら説明する。ロボット200は、
図1に示すように、目を模した装飾部品202及びふさふさの毛203を備えた外装201に覆われている。また、外装201の中には、ロボット200の筐体207が収納されている。
図2に示すように、ロボット200の筐体207は、頭部204、連結部205及び胴体部206で構成され、頭部204と胴体部206とが連結部205で連結されている。なお、
図2においては、図面の見やすさを考慮して、ハッチングを省略している。
【0011】
胴体部206は、
図2に示すように、前後方向に延びている。胴体部206は、ロボット200が置かれている床やテーブル等の載置面101に外装201を介して載置される。また、
図2に示すように、胴体部206の前端部にはひねりモータ221が備えられており、頭部204が連結部205を介して胴体部206の前端部に連結されている。そして、連結部205には、上下モータ222が備えられている。なお、
図2では、ひねりモータ221は胴体部206に備えられているが、連結部205に備えられていてもよいし、頭部204に備えられていてもよい。
【0012】
連結部205は、連結部205を通り胴体部206の前後に延びる第1回転軸を中心として(ひねりモータ221により)回転自在に、胴体部206と頭部204とを連結している。筐体207の正面図として
図4及び
図5に示すように、ひねりモータ221は、頭部204を、胴体部206に対して、第1回転軸を中心として時計回り(右回り)に正転角度範囲内で回転(正転)させたり、反時計回り(左回り)に逆転角度範囲内で回転(逆転)させたりする。なお、この説明における時計回りは、頭部204から胴体部206の方向を見た時の時計回りである。また、時計回りの回転を「右方へのひねり回転」、反時計回りの回転を「左方へのひねり回転」とも呼ぶことにする。右方又は左方にひねり回転させる角度の最大値は任意であるが、本実施形態では左右とも90度まで回転可能であるものとする。
図3に示す、頭部204を右方へも左方へもひねっていない状態における頭部204の角度(以下「ひねり基準角度」)を0度とする。
図4に示す、最も左方へひねり回転(反時計回りに回転)させた時の頭部204の角度を-90度とする。
図5に示す、最も右方へひねり回転(反時計回りに回転)させた時の頭部204の角度を+90度とする。
【0013】
また、連結部205は、連結部205を通り胴体部206の幅方向(左右方向)に延びる第2回転軸を中心として(上下モータ222により)回転自在に、胴体部206と頭部204とを連結する。筐体207の側面図として
図6及び
図7に示すように、上下モータ222は、頭部204を、第2回転軸を中心として上方に正転角度範囲内で回転(正転)させたり、下方に逆転角度範囲内で回転(逆転)させたりする。上方又は下方に回転させる角度の最大値は任意だが、本実施形態では上下とも75度まで回転可能であるものとする。
図2に示す、頭部204を上方にも下方にも回転させていない状態における頭部204の角度(以下「上下基準角度」)を0度とする。
図6に示す、最も上方に回転させた時の頭部204の角度を+75度とする。
図7に示す、最も下方に回転させた時の頭部204の角度を-75度とする。なお、頭部204は、第2回転軸を中心とする上下の回転によって上下基準角度又は上下基準角度より下方に回転している場合は、ロボット200が置かれている床やテーブル等の載置面101に、外装201を介して接触可能である。なお、
図2では、第1回転軸と第2回転軸とが互いに直交している例が示されているが、第1及び第2回転軸は互いに直交していなくてもよい。
【0014】
また、ロボット200は、
図2に示すように、頭部204にタッチセンサ211を備え、ユーザが頭部204を撫でたり叩いたりしたことを検出することができる。また、胴体部206にもタッチセンサ211を備え、ユーザが胴体部206を撫でたり叩いたりしたことを検出することができる。
【0015】
また、ロボット200は、胴体部206に加速度センサ212を備え、ロボット200の姿勢(向き)の検出や、ユーザによって持ち上げられたり、向きを変えられたり、投げられたりしたことを検出することができる。また、ロボット200は、胴体部206にジャイロセンサ213を備え、ロボット200が転がったり回転したりしていることを検出することができる。
【0016】
また、ロボット200は、胴体部206にマイクロフォン214を備え、外部の音を検出することができる。さらに、ロボット200は、胴体部206にスピーカ215を備え、スピーカ215を用いてロボット200の鳴き声(効果音)を発することができる。
【0017】
なお、本実施形態では加速度センサ212、ジャイロセンサ213、マイクロフォン214及びスピーカ215が胴体部206に備えられているが、これらの全て又は一部が頭部204に備えられていてもよい。また、胴体部206に備えられた加速度センサ212、ジャイロセンサ213、マイクロフォン214及びスピーカ215に加えて、これらの全て又は一部を頭部204にも備えるようにしてもよい。また、タッチセンサ211は、頭部204及び胴体部206にそれぞれ備えられているが、頭部204又は胴体部206のいずれか片方のみに備えられていてもよい。またこれらはいずれも複数備えられていてもよい。
【0018】
次に、ロボット200の機能構成について説明する。ロボット200は、
図8に示すように、機器の制御装置100と、外部刺激取得部210と、可動部220と、音声出力部230と、操作入力部240と、電源制御部250と、を備える。そして、機器の制御装置100は、制御部110と、記憶部120と、通信部130と、を備える。
図8では、機器の制御装置100と、外部刺激取得部210、可動部220、音声出力部230、操作入力部240及び電源制御部250とが、バスラインBLを介して接続されているが、これは一例である。機器の制御装置100と、外部刺激取得部210、可動部220、音声出力部230、操作入力部240及び電源制御部250とは、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の有線インタフェースや、Bluetooth(登録商標)等の無線インタフェースで接続されていてもよい。また、制御部110と記憶部120や通信部130とは、バスラインBL等を介して接続されていてもよい。
【0019】
機器の制御装置100は、制御部110及び記憶部120により、ロボット200の動作を制御する。
【0020】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等で構成され、記憶部120に記憶されたプログラムにより、後述する各種処理(ロボット制御処理、落下検出処理、転がり検出処理、つまみ上げ検出処理、回転検出処理等)を実行する。なお、制御部110は、複数の処理を並行して実行するマルチスレッド機能に対応しているため、後述する各種処理(ロボット制御処理、落下検出処理、転がり検出処理、つまみ上げ検出処理、回転検出処理等)を並行に実行することができる。また、制御部110は、クロック機能やタイマー機能も備えており、日時等を計時することができる。
【0021】
記憶部120は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等で構成される。ROMには、制御部110のCPUが実行するプログラム及びプログラムを実行する上で予め必要なデータが、記憶されている。フラッシュメモリは書き込み可能な不揮発性のメモリであり、電源OFF後も保存させておきたいデータが記憶される。RAMには、プログラム実行中に作成されたり変更されたりするデータが記憶される。
【0022】
通信部130は、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等に対応した通信モジュールを備え、スマートフォン等の外部装置とデータ通信する。データ通信の内容としては、例えば、後述するアラーム機能やスリープ機能の設定に用いるアラーム設定データやスリープ設定データがある。
【0023】
外部刺激取得部210は、前述したタッチセンサ211、加速度センサ212、ジャイロセンサ213、及びマイクロフォン214を備える。制御部110は、バスラインBLを介して、外部刺激取得部210が備える各種センサが検出した検出値をロボット200に作用する外部刺激を表す外部刺激データとして取得する。なお、外部刺激取得部210は、タッチセンサ211、加速度センサ212、ジャイロセンサ213、マイクロフォン214以外のセンサを備えてもよい。外部刺激取得部210が備えるセンサの種類を増やすことにより、制御部110が取得できる外部刺激の種類を増やすことができる。
【0024】
タッチセンサ211は、何らかの物体が接触したことを検出する。タッチセンサ211は、例えば圧力センサや静電容量センサにより構成される。制御部110は、タッチセンサ211からの検出値に基づいて、接触強度や接触時間を取得し、これらの値に基づいて、ユーザによってロボット200が撫でられていることや、叩かれたりしていること等の外部刺激を検出することができる。
【0025】
加速度センサ212は、ロボット200の胴体部206の前後方向(X軸方向)、幅(左右)方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)から成る3軸方向の加速度を検出する。加速度センサ212は、ロボット200が静止しているときには重力加速度を検出するので、制御部110は、加速度センサ212が検出した重力加速度に基づいて、ロボット200の現在の姿勢を検出することができる。また、例えばユーザがロボット200を持ち上げたり投げたりした場合には、加速度センサ212は、重力加速度に加えてロボット200の移動に伴う加速度を検出する。したがって、制御部110は、加速度センサ212が検出した検出値から重力加速度の成分を除去することにより、ロボット200の動きを検出することができる。
【0026】
ジャイロセンサ213は、ロボット200の胴体部に回転が加えられたときの角速度を検出する。具体的には、ジャイロセンサ213は、胴体部206の前後方向(X軸方向)を軸とした回転、幅(左右)方向(Y軸方向)を軸とした回転、及び上下方向(Z軸方向)を軸とした回転から成る3軸回転の角速度を検出する。制御部110は、加速度センサ212が検出した検出値とジャイロセンサ213が検出した検出値とを組み合わせることで、ロボット200の動きをより精度よく検出することができる。
【0027】
なお、タッチセンサ211と加速度センサ212とジャイロセンサ213とは同期が取れており、同じタイミングで接触の強さ、加速度、角速度をそれぞれ検出し、検出値を制御部110に出力している。具体的には、タッチセンサ211と加速度センサ212とジャイロセンサ213とは、例えば0.1秒毎に、同じタイミングで接触の強さ、加速度、角速度を検出している。
【0028】
マイクロフォン214は、ロボット200の周囲の音を検出する。制御部110は、マイクロフォン214が検出した音の成分に基づき、例えばユーザがロボット200に呼びかけていることや、手を叩いていること等を検出することができる。
【0029】
可動部220は、ロボット200に物理的な動作を実行させるための機構であり、ひねりモータ221及び上下モータ222などの駆動部と、駆動部の力を伝達して頭部204などを動かすための連結部材やギア部材等を備える。可動部220(ひねりモータ221及び上下モータ222)は、制御部110によって駆動される。ひねりモータ221及び上下モータ222は、サーボモータであり、制御部110から動作時間及び動作角度が指定されて回転を指示されると、指定された動作時間後までに、指定された動作角度の位置まで回転するように動作する。その結果、ロボット200は、例えば頭部204を持ち上げたり(第2回転軸を中心として上方に回転させたり)、横にひねったり(第1回転軸を中心として右方又は左方にひねり回転させたり)するような動作を表現することができる。これらの動作を表現するために可動部220を駆動するためのモーションデータは、後述する制御内容テーブル123に記録されている。
【0030】
音声出力部230は、スピーカ215を備え、制御部110が音のデータを音声出力部230に入力することにより、スピーカ215から音が出力される。例えば、制御部110がロボット200の鳴き声のデータを音声出力部230に入力することにより、ロボット200は疑似的な鳴き声を発する。この鳴き声のデータも効果音データとして、制御内容テーブル123に記録されている。
【0031】
操作入力部240は、例えば、操作ボタン、ボリュームつまみ等から構成される。操作入力部240は、ユーザ(所有者や被貸与者)による操作、例えば、電源ON/OFF、出力音のボリューム調整等を受け付けるためのインタフェースである。
【0032】
電源制御部250は、サブマイコン、充電IC(Integrated Circuit)、電源制御IC、受電部等を備え、ロボット200のバッテリの充電、残量の取得、ロボット200の電源制御等を行う。
【0033】
次に、機器の制御装置100の記憶部120に記憶されるデータのうち、本実施形態に特徴的なデータである、感情データ121、感情変化データ122、制御内容テーブル123について順に説明する。
【0034】
感情データ121は、ロボット200に疑似的な感情を持たせるためのデータである。例えば、感情データ121は、安心度(不安度)、興奮度(無気力度)等を個別に数値化した多次元のデータである。
【0035】
感情変化データ122は、感情データ121が示すロボット200の擬似的な感情の変化度合を示すデータである。例えば、感情変化データ122は、感情データ121が示す安心度(不安度)や興奮度(無気力度)の値の個別の変化量を示すデータである。感情変化データ122によって、ロボット200の擬似的な感情の変化の傾向が分かるため、感情変化データ122は、ロボット200の擬似的な性格(シャイであるか、陽気であるか、活発であるか、甘えん坊であるか等)を表すデータであるともいえる。
【0036】
なお、感情データ121と感情変化データ122については、種々の形式のデータが採用可能である、例えば、感情データ121と感情変化データ122を特開2021-69767号に記載されている形式のデータとしてもよい。
【0037】
制御内容テーブル123には、
図9に示すように、制御条件と制御データとが対応して記憶されている。制御部110は、制御条件(例えば、何らかの外部刺激が検出された)が満たされると、対応する制御データ(可動部220で動作を表現するためのモーションデータ及び、音声出力部230から効果音を出力するための効果音データ)に基づき、可動部220及び音声出力部230を制御する。
【0038】
モーションデータは、
図9に示すように、可動部220を制御する一連のシーケンスデータ(「時間(ミリ秒):上下モータ222の回転角度(度):ひねりモータ221の回転角度(度)」の並び)である。例えば、体を撫でられたら、最初(0秒時)は上下モータ222及びひねりモータ221の回転角度を0度(上下基準角度及びひねり基準角度)にし、0.5秒時に上下モータ222の回転角度が60度になるように頭部204を上げ、1秒時にひねりモータ221の回転角度が60度になるように頭部204をひねり、というように制御部110は可動部220を制御する。
【0039】
また、効果音データは、
図9では、わかりやすく示すために、各効果音データを説明する文章が記載されているが、実際にはこれらの文章で説明されている効果音データ自身(サンプリングされた音のデータ)が、効果音データとして制御内容テーブル123に格納されている。
【0040】
なお、
図9に示す制御内容テーブルでは、制御条件に感情(感情データ121で表される)に関する条件が含まれていないが、制御条件に感情に関する条件を含めることにより、感情に応じて制御データを変化させてもよい。
【0041】
次に、
図10に示すフローチャートを参照しながら、機器の制御装置100の制御部110が実行するロボット制御処理について説明する。ロボット制御処理は、機器の制御装置100が、外部刺激取得部210からの検出値等に基づいて、ロボット200の動作や鳴き声を制御する処理である。ユーザがロボット200の電源を入れると、後述する各種の検出処理等と並行に、このロボット制御処理のスレッドが実行開始される。ロボット制御処理により、可動部220や音声出力部230(音出力部)が制御され、ロボット200の動きが表現されたり、鳴き声等の音が出力されたりする。
【0042】
まず、制御部110は、感情データ121、感情変化データ122等の各種データを初期化する(ステップS101)。なお、ロボット200の起動の2回目以降は、ステップS101において、ロボット200の電源が前回切られた時点での各値を設定するようにしてもよい。これは、前回電源を切る操作が行われた時に制御部110が各データの値を記憶部120の不揮発メモリ(フラッシュメモリ等)に保存し、その後、電源が入れられた時に、当該保存した値を各データの値に設定することで実現可能である。
【0043】
続いて、制御部110は、後述する各種の検出処理(落下検出処理、転がり検出処理、つまみ上げ検出処理、回転検出処理)で設定、参照される各種の停止フラグ(落下停止フラグ、転がり停止フラグ、つまみ上げ停止フラグ、回転停止フラグ)と各種のカウンタ(落下判別用カウンタ、転がり判別用カウンタ、つまみ上げ検出用カウンタ、回転検出用カウンタ、落下停止カウンタ、転がり停止カウンタ、つまみ上げ停止カウンタ、回転停止カウンタ)の値を「0」に初期化する(ステップS102)。
【0044】
続いて、制御部110は、各種停止フラグ(落下停止フラグ、転がり停止フラグ、つまみ上げ停止フラグ、及び回転停止フラグ)の値が全て「0」あるか否かを判別する(ステップS103)。
【0045】
値が「0」でない、即ち値が「1」である停止フラグがある場合(ステップS103;No)、後述する各種の検出処理の何れかでロボット200の異常状態が検出されていることになる。そのため、制御部110は、全ての停止フラグの値が「0」になるまでロボット制御処理の以降のステップを実行せずに待機する。これにより、ロボット200は動作刺激に応じた動作や、呼吸のような自発的な動作をしなくなり、動物が気絶したような状態(気絶状態)を示すことになる。
【0046】
一方、各種停止フラグの値が全て「0」である場合(ステップS103;Yes)、制御部110は、外部刺激取得部210が検出した検出値を取得する(ステップS104)。そして制御部110は、取得した検出値に基づいて、外部刺激が存在したか否かを判定する(ステップS105)。
【0047】
外部刺激が存在したなら(ステップS105;Yes)、制御部110は、ステップS104で取得した外部刺激の検出値に応じて感情変化データ122を取得する(ステップS106)。具体的には、例えば、外部刺激として頭部204のタッチセンサ211により頭部204が撫でられたことを検出すると、ロボット200は疑似的な安心感を得るので、制御部110は、感情データ121に含まれる安心度の値に加算する加算量を示す感情変化データ122を取得する。
【0048】
そして、制御部110は、ステップS106で取得された感情変化データ122に応じて感情データ121を設定する(ステップS107)。具体的には、例えば、ステップS106で感情変化データ122として安心度の値の加算量が取得されていたなら、制御部110は、感情データ121に含まれる安心度の値にこの加算量を加算する。
【0049】
続いて、制御部110は、制御内容テーブル123を参照して、当該取得した外部刺激の検出値により満たされる制御条件に対応した制御データを取得する(ステップS108)。
【0050】
そして、制御部110は、ステップS108で取得した制御データを再生し(ステップS109)、ステップS103に戻る。これにより、ロボット200は、外部刺激に応じた動作を実行することができる。なお、設定されている感情データ121に基づいて、再生する制御データの内容を調整(変更)してもよい。
【0051】
一方、ステップS105で、外部刺激が存在しなかったなら(ステップS105;No)、制御部110は、自発的な動作(生物の呼吸を模した動作である呼吸模倣動作等)を行うか否かを判定する(ステップS110)。自発的な動作を行うか否かの判定方法は任意だが、本実施形態では、呼吸周期(例えば2秒)毎にステップS110の判定がYesになり、呼吸模倣動作が行われるものとする。
【0052】
自発的な動作を行わないなら(ステップS110;No)、制御部110はステップS103に戻る。自発的な動作を行うなら(ステップS110;Yes)、制御部110は、自発的な動作(例えば、呼吸模倣動作)を実行し(ステップS111)、ステップS103に戻る。
【0053】
この自発的な動作の制御データも(例えば
図9の「制御条件」の「呼吸周期が経過した」に示すように)制御内容テーブル123に記憶されている。ステップS111においても、外部刺激が存在したときと同様に、設定されている感情データ121に基づいて自発的な動作の制御内容を調整(変更)してもよい。
【0054】
次に、
図11~14に示すフローチャートを参照しながら、機器の制御装置100の制御部110が実行する各種の異常状態を検出する検出処理(落下検出処理、転がり検出処理、つまみ上げ検出処理、回転検出処理)について説明する。これらの各検出処理は、ロボット200に電源が投入されている間、上述したロボット制御処理と並行して0.1秒毎に繰り返し実行される割り込み処理である。落下検出処理、転がり検出処理、つまみ上げ検出処理、回転検出処理は排他的制御がなされており、2以上の検出処理が同時に実行されることはないものとする。これらの各検出処理によって、衝撃を受ける可能性のある異常状態(落下状態、転がり状態、つまみ上げ状態、回転状態)が検出され、異常状態が検出された場合に可動部220が衝撃を抑えるような状態に制御される。
【0055】
始めに、落下検出処理について、
図11を参照して詳細に説明する。
【0056】
まず、制御部110は、落下停止フラグの値が「1」であるか否かを判別する(ステップS201)。
【0057】
落下停止フラグの値が「1」でない(ステップS201;No)、即ち「0」の場合、制御部110は、落下カウンタの値が「2」以上であるか否かを判別する(ステップS202)。
【0058】
落下カウンタの値が「2」より小さい場合(ステップS202;No)、制御部110は、加速度センサ212が検出した、ロボット200の前後方向(X軸方向)の加速度aXと、左右方向(Y軸方向)の加速度aYと、上下方向(Z軸方向)の加速度aZとを読み出す(ステップS203)。
【0059】
そして、制御部110は、以下の式(1)に示すように、読み出した加速度aX、aY、aZを合成した加速度ベクトルの値Vを算出する(ステップS204)。
【0060】
【0061】
そして、制御部110は、ロボット200が自由落下しているかどうかを判定するために、算出した加速度ベクトルVが自由落下とみなす加速度閾値GTより小さいか否かを判別する(ステップS205)。完全な自由落下の場合、加速度ベクトルVは0となるが、自由落下の際に回転運動なども加わる可能性があるため、加速度閾値GTはある程度余裕を持たせた値(例えば、重力加速度の1/5の値)に設定するのが望ましい。
【0062】
加速度ベクトルVが加速度閾値GTより小さい場合(ステップS205;Yes)、制御部110は、落下カウンタの値に1を加算する(ステップS206)。そして落下検知処理は終了する。
【0063】
一方、加速度ベクトルVが加速度閾値GT以上の場合(ステップS205;No)、現在ロボット200は自由落下していないこととなるため、制御部110は、落下カウンタと落下停止フラグの値を「0」に初期化する(ステップS207)。そして落下検知処理は終了する。
【0064】
落下カウンタの値が「2」以上の場合(ステップS202;Yes)、0.1秒毎に繰り返し実行される直近2回以上の落下検知処理で、加速度ベクトルVが加速度閾値GTより小さいと連続して判定されたこととなり、継続して0.2秒以上、ロボット200は落下状態にあることがわかる。そのため、制御部110は、落下停止フラグを「1」に設定するとともに、落下カウンタと落下停止カウンタを「0」に初期化する(ステップS208)。落下停止フラグを「1」に設定することで、前述したロボット制御処理のフロー(
図10)は停止し、外部刺激に応じた制御データの再生処理(ステップS109)や、呼吸などの自発的な動作(ステップS110)は実行されなくなり、ロボット200はあたかも気絶したような状態(気絶状態)となる。
【0065】
図11に戻り、続いて、制御部110は、可動部220をフリー状態に制御する(ステップS209)。具体的には、制御部110は、ひねりモータ221及び上下モータ222に停止信号を送信する。停止信号を受信したひねりモータ221及び上下モータ222は駆動を停止し、トルクのかからないフリー状態となる(例えば、コイルモータであれば、コイルをオープンにした状態となる)。これにより、その後落下によって床やテーブル等にロボット200が衝突しても、可動部220に加わるダメージを低減することができる。例えば、頭部204が床やテーブル等に衝突しても、頭部204を動かすための可動部220の連結部材やギア部材等が衝撃を受けた方向に抵抗無く自由に動くので、これらの部材に無理な力が加わることが無く、これらの部材が破損したり、モータが損傷したりするのを防止することができる。
【0066】
続いて、制御部110は、ロボット200が模している生き物が落下中に発すると想定される悲鳴音を音声出力部から出力させ(S210)、落下検知処理は終了する。なお、制御部110は、ロボット200の疑似的な感情や性格に応じて、出力させる非鳴音の内容を異ならせてもよい。例えば、ロボット200がシャイな性格を有していたり、無気力な感情を有していたりする場合、制御部110は、非鳴音の音量を小さくしてもよいし、非鳴音を出力しないようにしてもよい。
【0067】
一方、落下停止フラグの値が「1」である場合(ステップS201;Yes)、現在ロボット200は気絶状態となっている。そのため、制御部110は、このような状態からロボット200を回復させる制御を行う。即ち、この場合まず制御部110は、落下停止カウンタの値に「1」をプラスする。(ステップS211)。
【0068】
そして、制御部110は、落下停止カウンタの値が「50」以上であるか否かを判別する(ステップS212)。
【0069】
落下停止カウンタの値が「50」未満の場合(ステップS212;No)、落下停止フラグを「1」にしてロボット制御処理を停止(ロボット200を気絶)させてから十分な時間(5秒以上)が経過しておらず、このタイミンでロボット200が回復すると生き物としての違和感があるため、回復のための処理は実行せずに落下検知処理は終了する。
【0070】
一方、落下停止カウンタの値が「50」以上である場合(ステップS212;Yes)、落下停止フラグを「1」にしてロボット制御処理を停止(ロボット200を気絶)させてから十分な時間(5秒以上)が経過していることとなる。そのため、制御部110は、落下停止フラグと落下停止カウンタを「0」に設定する(ステップS213)。これにより、ロボット制御処理(
図10)は再開し、外部刺激に応じた制御データの再生(ステップS109)や、呼吸などの自発的な動作(ステップS110)が実行され、ロボット200は気絶状態から回復したような振る舞いを示すことになる。また、ステップS109やステップS110の実行によって適宜ひねりモータ221及び上下モータ222が駆動し、可動部220のフリー状態は解除される。以上で落下検知処理は終了する。
【0071】
続いて、転がり検出処理について、
図12を参照して、前述した落下検知処理と異なる部分を中心に説明する。
【0072】
転がり検出処理は、基本的に落下検知処理と同様の処理である。但し転がり検出処理では、ロボット200の落下状態の代わりに転がり状態を検出する点が異なる。従って、転がり検出処理では、ジャイロセンサ213からロボット200の前後方向(X軸方向)を軸とした回転の角速度rXが読み出され(ステップS303)、角速度rXの絶対値が転がり閾値RXTより大きい場合に(ステップS305;Yes)、ロボット200が回転状態であると判定して転がりカウンタが加算される(ステップS306)。それ以外のステップについては、落下検知処理と実質的に同様であるため説明を省略する。
【0073】
続いて、つまみ上げ検出処理について、
図13を参照して、前述した落下検出処理と異なる部分を中心に説明する。
【0074】
つまみ上げ検出処理は、基本的に落下検知処理と同様の処理である。但しつまみ上げ検知処理では、ロボット200の落下状態の代わりにつまみ上げ状態を検出する点が異なる。従って、つまみ上げ検知処理では、加速度センサからロボット200の上下方向(Z軸方向)の加速度aZが読み出され(ステップS403)、加速度aZの値がつまみ上げ閾値GZTより大きい場合に(ステップS405;Yes)、ロボット200がつまみ上げ状態であると判定してつまみ上げカウンタが加算される(ステップS406)。それ以外のステップについては、落下検出処理と実質的に同様であるため説明を省略する。
【0075】
続いて、回転検出処理について、
図14を参照して、前述した落下検出処理と異なる部分を中心に説明する。
【0076】
回転検出処理は、基本的に落下検知処理と同様の処理である。但し回転検知処理では、ロボット200の落下状態の代わりに回転状態を検知する点が異なる。従って、回転検知処理では、ジャイロセンサ213からロボット200の上下方向(Z軸方向)を軸とした回転の角速度rZが読み出され(ステップS503)、角速度rZの絶対値が回転閾値RZTより大きい場合に(ステップS505;Yes)、ロボット200が回転状態であると判定して回転カウンタが加算される(ステップS506)。それ以外のステップについては、落下検出処理と実質的に同様であるため説明を省略する。
【0077】
このように、本実施形態に係る機器の制御装置100によれば、ロボット200が衝撃を受ける可能性があると判定された場合(異常状態(落下状態、転がり状態、つまみ上げ状態、回転状態の何れか)であると判定された場合)に、可動部220が動作可能な状態(第1状態)から、可動部220に加わる衝撃を抑えるためのフリー状態(第2状態)に移行される。これにより、ロボット200が衝撃を受けた場合の可動部220の損傷を抑えることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態に係る機器の制御装置100によれば、ロボット200が衝撃を受ける可能性があると判定された場合(異常状態が検出された場合)に、可動部220をフリー状態に移行させるとともに、衝撃を受けたときにおける生物の反応を模した可動部220を必要としない動作(例えば、
図11のステップS210、
図12のステップS310、
図13のステップS410、及び
図14のステップS510での非鳴音の出力、第2動作)が実行される。これにより、生き物らしさをより表現できるとともに、異常状態の発生を周囲のユーザに報知することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態に係る機器の制御装置100によれば、異常状態が検出されると、停止フラグが「1」に設定されてロボット制御処理(
図10)が停止する。これによりロボット200は、可動部220を用いない動作(例えば音声出力部230の動作)も含んだ動作(第1動作)の実行が全て停止した気絶状態(実行停止状態)となる。そのため、衝撃を受けて気絶した本物の生き物のような挙動を再現することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態に係る機器の制御装置100によれば、可動部220をフリー状態(第2状態)に移行させてから第1の時間(実施形態では5秒)が経過してから、停止フラグが「0」にリセットされてロボット制御処理が再開し、可動部220が動作可能な状態(第1状態)に移行するとともに、ロボット200の気絶状態(実行停止状態)は解除される。これにより、気絶後しばらく時間が経ってから回復して動けるようになるような本物の生き物のような挙動を再現することが可能となる。
【0081】
また、本実施形態に係る機器の制御装置100によれば、各検出処理で異常状態検出の条件が連続して満たされた回数がカウントされ、当該回数が「2」以上、即ち、ロボット200が衝撃を受ける可能性があると予め定めた時間(0.2秒)継続して判定された場合に、可動部220をフリー状態に制御する。このようにすることで異常状態検出の精度を向上させることが可能となる。
【0082】
(変形例)
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。例えば、上記実施形態では、衝撃を受ける可能性のある異常状態として、ロボット200の落下状態、転がり状態、つまみ上げ状態、及び回転状態を検出したが、異常状態はこれに限定されるものではなく、直後に衝撃を受ける可能性のある他の状態を異常状態として検出してもよい。
【0083】
上記実施形態では、異常状態が検出された場合に、衝撃からのダメージを低減させるための状態として可動部220をフリー状態に制御したが、他の状態に可動部220を制御してもよい。例えば、出力を通常よりも小さくする省エネ動作モード等に可動部220を制御してもよい。
【0084】
上記実施形態では、気絶状態から第1の時間(5秒)が経過後、直ちにロボット200は回復して全ての動作を再開することが可能であるが、段階的に気絶状態から回復するようにロボット200を制御してもよい。具体的には、制御部110は、可動部220をフリー状態に移行してから3秒後に、可動部220のフリー状態を維持したまま停止フラグを「0」にして気絶状態(実行停止状態)を解除し、可動部220による動作以外の動作(例えば音声出力部230からの音の出力)を実行可能とし、その後、2秒(第2の時間)が経過後、可動部220をフリー状態から動作可能な状態(第1状態)に移行させて全ての動作を実行可能とさせてもよい。このようにすることで、本物の生き物のような挙動をより再現することが可能となる。
【0085】
上記実施形態では、落下状態、転がり状態、つまみ上げ状態、及び回転状態の何れの異常状態によってロボット200が気絶状態となった場合でも、その後、一律に5秒後(第1の時間経過後)にロボット制御処理が再開されてロボット200の動作は回復した。しかしながら、判定した異常状態に応じて、気絶から回復するまでの時間(第1の時間)の長さを異ならせてもよい。これは、
図11のステップS212、
図12のステップS312、
図13のステップS412、及び
図14のステップS512において停止カウンタと比較する値「50」を適宜変更することで実現できる。また、判定した異常状態に応じて、前述した第2の時間の長さを異ならせてもよい。このようにすることで、ロボット200が異常状態から回復するまでのタイミングにバリエーションを持たせることができ、より生き物らしく動作させることが可能となる。
【0086】
また、制御部110は、検出処理(落下検出処理、転がり検出処理、つまみ上げ検出処理、回転検出処理)において、ロボット200が受ける衝撃の強さを推定できるようにしてもよい。例えば、加速度センサ212又はジャイロセンサ213の検出値と閾値との乖離度からこのような衝撃の強さを推定すればよい。そして、制御部110は、推定した衝撃の強さに応じて、前述した第1の時間又は第2の時間を異ならせるようにロボット200を制御してもよい。これにより、例えば、非常に高速な回転状態を検出した場合は、第1の時間を大きくして、低速な回転状態検出時よりも回復までの時間を長くするような制御が可能となり、より実際の生き物のようにロボット200を動作させることが可能となる。
【0087】
また、制御部110は、設定されている感情データ121に基づいて、上述した第1の時間又は第2の時間の長さを異ならせるようにロボット200を制御してもよい。これにより、例えば、設定されている感情データ121が悲しみや不安や無気力である感情示している場合は、第1の時間を大きくして、通常の感情よりも異常状態からの回復までの時間を長くするような制御が可能となり、より実際の生き物のようにロボット200を動作させることが可能となる。
【0088】
また、上述の実施形態では、ロボット200に機器の制御装置100が内蔵されている構成としたが、機器の制御装置100はロボット200に内蔵されていなくてもよい。例えば、機器の制御装置100を、ロボット200に内蔵されずに別個の装置(例えばサーバ)として構成されてもよい。この場合、ロボット200も通信部を備え、機器の制御装置100の通信部130とロボット200の通信部とがお互いにデータを送受信できるように構成されている。そして、制御部110は、両通信部を介して、外部刺激取得部210が検出した外部刺激を取得し、可動部220や音声出力部230を制御する。
【0089】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲とを逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、前述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0090】
100…機器の制御装置、101・・・載置面、110…制御部、120…記憶部、121…感情データ、122…感情変化データ、123…制御内容テーブル、130…通信部、200…ロボット、201…外装、202…装飾部品、203…毛、204…頭部、205…連結部、206…胴体部、207…筐体、210…外部刺激取得部、211…タッチセンサ、212…加速度センサ、213…ジャイロセンサ、214…マイクロフォン、215…スピーカ、220…可動部、221…ひねりモータ、222…上下モータ、230…音声出力部、240…操作入力部、250…電源制御部、BL…バスライン
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る機器の制御装置の一様態は、
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた機器の制御装置であって、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定する処理と、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる処理と、
を実行する制御部を備える。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた機器の制御装置であって、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定する処理と、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる処理と、
を実行する制御部を備える、
機器の制御装置。
【請求項2】
前記可動部はモータを備え、
前記制御部は、前記第2状態として、前記モータをフリー状態に制御する、
請求項1に記載の機器の制御装置。
【請求項3】
前記第2状態は、前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることのできない状態であり、
前記制御部は、
前記可動部が前記第1状態にあるときに、前記機器に前記可動部を用いない動作も含んだ第1動作を実行させ、
前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定した場合に、前記可動部を前記第1状態から前記第2状態に移行させるとともに、前記機器を前記第1動作の実行を停止した実行停止状態にする、
請求項1に記載の機器の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記可動部を前記第1状態から前記第2状態に移行させてから第1の時間が経過した後に、前記可動部を前記第2状態から前記第1状態に移行させるとともに、前記機器の前記実行停止状態を解除する、
請求項3に記載の機器の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記機器の前記実行停止状態を解除してから第2の時間が経過した後に、前記可動部を前記第1状態に戻す、
請求項4に記載の機器の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定した場合に、前記可動部を前記第1状態から前記第2状態に移行させるとともに、前記可動部の物理的な動作を必要としない第2動作を前記機器に実行させる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記機器が衝撃を受ける可能性がある状態として、前記機器が互いに異なる複数の状態のいずれにあるか否かを判定し、判定した状態に応じて、前記第1の時間の長さを異ならせる、
請求項4に記載の機器の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記機器が衝撃を受ける可能性がある状態として、前記機器が互いに異なる複数の状態のいずれにあるか否かを判定し、判定した状態に応じて、前記第2の時間の長さを異ならせる、
請求項5に記載の機器の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記機器が受ける可能性がある衝撃の強さを推定し、推定した衝撃の強さに応じて、前記第1の時間または前記第2の時間の長さを異ならせる、
請求項5に記載の機器の制御装置。
【請求項10】
前記機器は、少なくとも加速度センサとジャイロセンサの一方を含むセンサを備え、
前記制御部は、前記センサの検出値に応じて、前記機器が受ける可能性がある衝撃の強さを推定する、
請求項9に記載の機器の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記機器が衝撃を受ける可能性があると予め定めた時間継続して判定された場合に、前記可動部を前記第2状態に制御する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記機器が衝撃を受ける可能性がある状態として、前記機器の落下状態、転がり状態、つまみ上げ状態、回転状態のすくなくとも何れかの状態を検出可能である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項13】
前記機器は、生物を模した機器であって、
前記第1動作は、前記生物を模した動作であり、
前記制御部は、
前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定した場合に、前記可動部を前記第1状態から前記第2状態に移行させるとともに、前記生物が衝撃を受けたときにおける前記生物の反応を模した動作であって、前記可動部の物理的な動作を必要としない第2動作を実行させる、
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の機器の制御装置。
【請求項14】
前記機器は、生物を模した機器であって、
前記制御部は、
前記生物の疑似的な感情を示す感情データを設定し、
前記設定された感情データに基づいて前記第1の時間又は前記第2の時間の長さを異ならせる、
請求項5に記載の機器の制御装置。
【請求項15】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機器の制御装置を備えた機器。
【請求項16】
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた機器の制御部が、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定し、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる、
機器の制御方法。
【請求項17】
物理的な動作を行う機構である可動部を備えた機器の制御部に、
前記機器が衝撃を受ける可能性があるか否かを判定する処理と、
前記可動部が前記機器に物理的な動作を実行させることの可能な第1状態にある場合において、前記機器が衝撃を受ける可能性があると判定したときに、前記可動部を、前記第1状態から前記可動部に加わる衝撃を抑えるための第2状態に移行させる処理と、
を実行させるプログラム。