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特開2024-47384美容判定システム及び官能評価システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047384
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】美容判定システム及び官能評価システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/70 20180101AFI20240329BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240329BHJP
【FI】
G16H50/70
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152971
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】301023504
【氏名又は名称】株式会社アイピーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(74)【代理人】
【識別番号】100213883
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃次
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L099AA03
(57)【要約】
【目的】脂性や乾燥に係る肌タイプと敏感肌自覚との関係を明らかにして、顧客の肌タイプをより正確に判定できる、問診による美容判定システムを提供する。
【解決手段】肌に関する設問に対する顧客の回答である問診データをプログラムの実行により処理して、美容判定を行う美容判定システムであり、因子得点係数を記憶する記憶手段を有し、前記問診データと前記因子得点係数を用いて、前記顧客の、皮脂過剰に関するO因子の得点SOと、肌乾燥に関するD因子の得点である乾燥度SDと、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点SHと、を計算して、XYZ座標軸を具えた肌タイプ識別空間における点(SO,SD,SH)の位置から、前記顧客の肌タイプを判定するための肌タイプ判定手段を有し、前記因子得点係数は、肌に関する前記設問に対する多数の被検者の回答である基礎データから因子分析法により少なくとも上記各因子を抽出して計算されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立したコンピュータ、又は、互いに双方向に通信可能な複数のコンピュータからなり、
肌に関する3つ以上の設問に対する顧客の回答である問診データを、コンピュータ制御プログラムの実行により処理して、前記顧客の美容判定を行う美容判定システムであり、
前記顧客の問診データと、コンピュータ制御プログラムと、因子得点係数と、を記憶する記憶手段を有し、
前記コンピュータ制御プログラムは、前記顧客の問診データと前記因子得点係数を用いて、前記顧客の、皮脂過剰に関するO因子の得点SOと、肌乾燥に関するD因子の得点である乾燥度SDと、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点SHと、を計算して、XYZ座標軸を備えた肌タイプ識別空間における点(SO,SD,SH)の位置から、前記顧客の肌タイプを判定するための肌タイプ判定手段を有し、
前記因子得点係数は、肌に関する前記設問に対する多数の被検者の回答である基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、前記O因子と、前記D因子と、前記H因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されている
美容判定システム。
【請求項2】
前記設問が、毛穴汚れ感覚と関係が深い、毛穴、毛穴の汚れ、毛穴の開き、毛穴の黒ずみに関する項目のうち少なくとも1つを含む請求項1に記載の美容判定システム。
【請求項3】
前記O因子の得点SO、前記H因子の得点SH及び0°<t<90°なる角度tを用いて、複合脂性度SCを、次の式1により定めて、
(式1) SC = SO×cоs(t) + SH×sin(t)
前記肌タイプ判定手段が、前記問診データに基づいて、前記顧客の複合脂性度SCを計算して、XY座標軸を備えた肌タイプ識別平面における点(SC,SD)の位置から、前記顧客の肌タイプを判定する請求項2に記載の美容判定システム。
【請求項4】
前記コンピュータ制御プログラムは、顧客又は被検者の複合脂性度SCと乾燥度SD及び0°<s<90°なる角度sを用いて、前記顧客又は被検者の肌質得点SQを、次の式2により計算する手段を有し、
(式2) SQ = SC×cоs(s) + SD×sin(s)
前記基礎データに係る設問は、前記因子分析に用いられた回答に係る設問とは別に、被検者が自分の肌タイプを敏感肌であると自覚しているか否かを問う設問である敏感肌自覚有無設問を含み、前記基礎データにおける、被検者の前記肌質得点SQ及び前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上であるように前記角度t及び角度sが定められている請求項3に記載の美容判定システム。
【請求項5】
前記問診データは更に、食生活に関する複数の設問に対する前記顧客の回答を含み、
前記記憶手段は更に、食生活に係る因子得点係数を記憶し、
前記コンピュータ制御プログラムは、食生活に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、食不規則に関するF1因子の得点SF1と、食不健康に関するF2因子の得点SF2と、を計算し、更に、0°<u<90°なる角度uを用いて、前記顧客の複合食因子の得点SFを次の式3により計算する手段を有し、
(式3) SF = SF1×cоs(u)+ SF2×sin(u)
前記基礎データは更に、食生活に関する前記複数の設問に対する多数の前記被検者の回答である食生活基礎データを含み、
食生活に係る前記因子得点係数は、前記食生活基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、食不規則に関するF1因子と、食不健康に関するF2因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されており、
食生活に係る前記因子得点係数を用いて、前記食生活基礎データにおける各被検者の、F1因子の得点SF1及びF2因子の得点SF2があらかじめ計算され、更に、複合食因子の得点SFが式3を用いてあらかじめ計算され、
前記基礎データにおける、被検者の前記複合食因子の得点SFと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上であるように前記角度uが定められている請求項4に記載の美容判定システム。
【請求項6】
前記問診データは更に、体調自覚に関する複数の設問に対する前記顧客の回答を含み、
前記記憶手段は更に、体調自覚に係る因子得点係数を記憶し、
前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、更年期特有の体調に関するT因子の得点STを計算する手段を有し、
前記基礎データは更に、体調自覚に関する前記複数の設問に対する多数の前記被検者の回答である健康基礎データを含み、
体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、更年期年齢に関するA因子と、更年期特有の体調に関するT因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されており、
体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、T因子の得点STがあらかじめ計算され、
前記基礎データにおける、被検者の前記T因子の得点STと、前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.85以上である請求項4に記載の美容判定システム。
【請求項7】
前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、循環不調に関する循環因子の得点SKを計算する手段を有し、
体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、循環不調に関する循環因子を抽出することにより計算されており、
体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、循環因子の得点SKがあらかじめ計算され、
前記基礎データにおける、被検者の前記循環因子の得点SKと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上である請求項6に記載の美容判定システム。
【請求項8】
前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、アレルギーに関するAL因子の得点SALを計算する手段を有し、
体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、アレルギーに関するAL因子を抽出することにより計算されており、
体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、AL因子の得点SALがあらかじめ計算され、
前記基礎データにおける、被検者の前記AL因子の得点SALと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.85以上である請求項6に記載の美容判定システム。
【請求項9】
前記角度tが25°以上50°以下であり、かつ、前記角度sが25°以上75°以下である請求項4~8のいずれかに記載の美容判定システム。
【請求項10】
請求項9に記載の前記コンピュータ制御プログラム。
【請求項11】
請求項9に記載のコンピュータ制御プログラムに係るパラメータを記録した、コンピュータで読取可能な記憶媒体。
【請求項12】
請求項9に記載の美容判定システムを利用した、美容商品の官能評価システムであり、評価に協力する協力者がある期間の間、前記美容商品を利用する、前と後の両時に、前記協力者に問診を行い、前記設問に対する前記協力者の回答に基づいて、前記О因子の得点、H因子の得点、複合脂性度、乾燥度、及び肌質得点のうち、いずれか1つ以上の数値を、前記期間の前と後の両時について、それぞれ計算し、前記期間における前記数値の変化量から改善効果を評価する改善効果評価手段を有する美容商品の官能評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客や被検者の肌タイプを問診データに基づいて評価する美容判定システムや、官能評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
問診データに基づいて顧客や被検者の肌タイプを評価する美容判定を行う技術として、例えば特許文献1~6に開示された技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、肌ケア製品を推奨しまたは提案するために、肌タイプを個人に割り当てるためのシステムであって、脂性または乾燥性肌の存在の度合いを表す第1の要素と、敏感性または抵抗性肌の存在の度合いを表す第2の要素を使用するシステムの技術が開示されている。この技術においては、肌の脂性と乾燥性は相対する概念であって互いに独立ではない(特許文献1の段落0023)。又、肌の脂性または乾燥性と、敏感性との関係は明らかではない。
【0004】
特許文献2には、アンケートに基づいて、ユーザの肌質を、乾燥肌、敏感肌、ノーマル肌、脂性肌の何れかに分類すること、及び、肌の敏感度を聞くアンケートを行うことが記載されているが、分類方法の詳細は不明である。
【0005】
特許文献3には、脂質の分泌特性と肌の保水性の間には相関関係は存在しないこと、及び、乾燥肌と脂性肌は相対する概念ではなく独立した概念であることが述べられている。また、この文献には、顔全体と顔の部分それぞれの脂質分泌状況とカサツキの状況を指標として、普通肌、脂性肌、乾性肌、脂性乾性肌の4つの肌分類を設けることが記載されているが、敏感肌又は肌の敏感度についての記載はない。
【0006】
特許文献4には、問診に基づき、顧客の、漢方理論上の体質に由来して現れる肌の症状を5つのタイプに分類する技術が開示され、5つのタイプのうち、タイプAではべたつき、ニキビ、毛穴の症状が、タイプBではかさつき、肌荒れ、きめ粗の症状が、タイプEでは敏感の症状が例示されている。しかし、タイプA(脂性肌)及びタイプB(乾燥肌)と、タイプE(敏感肌)との関係は明らかではない。
【0007】
特許文献5には、伝統中国医学の原理に基づいて、アンケートの回答にマルチクラス線形判別分析を用いて、ユーザの肌組成を、陽優勢、均衡-陽、均衡、均衡-陰、陰優勢からなる5つの異なる分類の1つに分類する技術が開示されている。ここで、「陽優勢」は脂性肌を含み、「陰優勢」は乾燥肌を含むゆえ、この技術においては、「脂性肌」と「乾燥肌」は独立ではなく、相対する概念として捉えられている。また、敏感肌が上記5つの分類のどこに位置づけられるのかは不明である。
【0008】
特許文献6には、年齢別に問診して基礎データを収集し、因子分析法により皮脂過剰因子と肌乾燥因子を抽出しておき、特定の年齢の被検者に問診したとき、その問診データに基づいて該被検者の肌タイプを2次元的に分類する方法の技術が開示されている。しかし、この技術では、敏感肌が上記2次元分類のどこに位置づけられるのかは不明である。
【0009】
自らの肌タイプを「敏感肌」であると自覚する女性は少なくなく、敏感肌用の化粧品も販売されているが、「敏感肌」であるという自覚(以下、敏感肌自覚と呼ぶ。)の意味するところは明確とは言えない。一般に、「敏感肌」は、化学物質、日光(紫外線)、圧力、摩擦、寒暖等の刺激に対する過敏性を意味しており、被検者の肌の状態や身心の健康状
態等を反映していると考えられる。しかし、例えば、被検者の肌の状態(脂性や乾燥に係る肌タイプ)と敏感肌自覚の関係は、全く明らかになっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2008-521145号公報
【特許文献2】特開2002-251532号公報
【特許文献3】特開2001-275990号公報
【特許文献4】特開2002-140434号公報
【特許文献5】特許第5400217号公報
【特許文献6】特許第5419004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一形態の目的は、多数の被検者の、脂性や乾燥に係る肌タイプと、敏感肌自覚との関係を明らかにすることにより、敏感肌自覚をもつ顧客の肌タイプをより正確に判定できる美容判定システムを提供することである。本発明の別の一形態の目的は、上記美容判定システムを用いた、美容商品の官能評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、独立したコンピュータ、又は、互いに双方向に通信可能な複数のコンピュータからなり、肌に関する3つ以上の設問に対する顧客の回答である問診データを、コンピュータ制御プログラムの実行により処理して、前記顧客の美容判定を行う美容判定システムであり、前記顧客の問診データと、コンピュータ制御プログラムと、因子得点係数と、を記憶する記憶手段を有し、前記コンピュータ制御プログラムは、前記顧客の問診データと前記因子得点係数を用いて、前記顧客の、皮脂過剰に関するO因子の得点SOと、肌乾燥に関するD因子の得点である乾燥度SDと、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点SHと、を計算して、XYZ座標軸を備えた肌タイプ識別空間における点(SO,SD,SH)の位置から、前記顧客の肌タイプを判定するための肌タイプ判定手段を有し、前記因子得点係数は、肌に関する前記設問に対する多数の被検者の回答である基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、前記O因子と、前記D因子と、前記H因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されている美容判定システムである。
【0013】
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記設問が、毛穴汚れ感覚と関係が深い、毛穴、毛穴の汚れ、毛穴の開き、毛穴の黒ずみに関する項目のうち少なくとも1つを含む美容判定システムである。
【0014】
本発明の第3の形態は、前記第2の形態において、前記O因子の得点SO、前記H因子の得点SH及び0°<t<90°なる角度tを用いて、複合脂性度SCを、次の式1により定めて、
(式1) SC = SO×cоs(t) + SH×sin(t)
前記肌タイプ判定手段が、前記問診データに基づいて、前記顧客の複合脂性度SCを計算して、XY座標軸を備えた肌タイプ識別平面における点(SC,SD)の位置から、前記顧客の肌タイプを判定する美容判定システムである。なお、以下の明細書本文、表、或いは図面において「複合脂性度」を単に「脂性度」と表記することがあるが、特に断らない限り両者は同義である。
【0015】
本発明の第4の形態は、前記第3の形態において、前記コンピュータ制御プログラムは、顧客又は被検者の複合脂性度SCと乾燥度SD及び0°<s<90°なる角度sを用い
て、前記顧客又は被検者の肌質得点SQを、次の式2により計算する手段を有し、
(式2) SQ = SC×cоs(s) + SD×sin(s)
前記基礎データに係る設問は、前記因子分析に用いられた回答に係る設問とは別に、被検者が自分の肌タイプを敏感肌であると自覚しているか否かを問う設問である敏感肌自覚有無設問を含み、前記基礎データにおける、被検者の前記肌質得点SQ及び前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上であるように前記角度t及び角度sが定められている美容判定システムである。
【0016】
本発明の第5の形態は、前記第4の形態において、前記問診データは更に、食生活に関する複数の設問に対する前記顧客の回答を含み、前記記憶手段は更に、食生活に係る因子得点係数を記憶し、前記コンピュータ制御プログラムは、食生活に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、食不規則に関するF1因子の得点SF1と、食不健康に関するF2因子の得点SF2と、を計算し、更に、0°<u<90°なる角度uを用いて、前記顧客の複合食因子の得点SFを次の式3により計算する手段を有し、
(式3) SF = SF1×cоs(u)+ SF2×sin(u)
前記基礎データは更に、食生活に関する前記複数の設問に対する多数の前記被検者の回答である食生活基礎データを含み、食生活に係る前記因子得点係数は、前記食生活基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、食不規則に関するF1因子と、食不健康に関するF2因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されており、食生活に係る前記因子得点係数を用いて、前記食生活基礎データにおける各被検者の、F1因子の得点SF1及びF2因子の得点SF2があらかじめ計算され、更に、複合食因子の得点SFが式3を用いてあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記複合食因子の得点SFと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上であるように前記角度uが定められている美容判定システムである。
【0017】
本発明の第6の形態は、前記第4の形態において、前記問診データは更に、体調自覚に関する複数の設問に対する前記顧客の回答を含み、前記記憶手段は更に、体調自覚に係る因子得点係数を記憶し、前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、更年期特有の体調に関するT因子の得点STを計算する手段を有し、前記基礎データは更に、体調自覚に関する前記複数の設問に対する多数の前記被検者の回答である健康基礎データを含み、体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、更年期年齢に関するA因子と、更年期特有の体調に関するT因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されており、体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、T因子の得点STがあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記T因子の得点STと、前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.85以上である美容判定システムである。
【0018】
本発明の第7の形態は、前記第6の形態において、前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、循環不調に関する循環因子の得点SKを計算する手段を有し、体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、循環不調に関する循環因子を抽出することにより計算されており、体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、循環因子の得点SKがあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記循環因子の得点SKと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上である美容判定システムである。
【0019】
本発明の第8の形態は、前記第6の形態において、前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、ア
レルギーに関するAL因子の得点SALを計算する手段を有し、体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、アレルギーに関するAL因子を抽出することにより計算されており、体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、AL因子の得点SALがあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記AL因子の得点SALと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.85以上である美容判定システムである。
【0020】
本発明の第9の形態は、前記第4~第8のいずれかの形態において、前記角度tが25°以上50°以下であり、かつ、前記角度sが25°以上75°以下である美容判定システムである。
【0021】
本発明の第10の形態は、前記第9の形態における前記コンピュータ制御プログラムである。
【0022】
本発明の第11の形態は、前記第9の形態における前記コンピュータ制御プログラムに係るパラメータを記録した、コンピュータで読取可能な記憶媒体である。
【0023】
本発明の第12の形態は、前記第9の形態における美容判定システムを利用した、美容商品の官能評価システムであり、評価に協力する協力者がある期間の間、前記美容商品を利用する、前と後の両時に、前記協力者に問診を行い、前記設問に対する前記協力者の回答に基づいて、前記О因子の得点、H因子の得点、複合脂性度、乾燥度、及び肌質得点のうち、いずれか1つ以上の数値を、前記期間の前と後の両時について、それぞれ計算し、前記期間における前記数値の変化量から改善効果を評価する改善効果評価手段を有する美容商品の官能評価システムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一形態によれば、多数の被検者の、脂性や乾燥に係る肌タイプと、敏感肌自覚との関係を明らかにすることにより、敏感肌自覚をもつ顧客の肌タイプをより正確に判定できる美容判定システムを提供することができる。本発明の別の一形態によれば、上記美容判定システムを用いた、美容商品の官能評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1Aは、複合脂性度SCと角度tの図形的意味を示す説明図であり、図1Bは、肌質得点SQと角度sの図形的意味を示す説明図である。
図2図2A及び図2Bは、美容についての設問項目を示す表図である。
図3図3A及び図3Bは、美容についての因子荷重と因子得点係数を示す表図である。
図4-1】図4-1A及び図4-1Bは、肌タイプ識別空間における敏感肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図(等高線図)である。
図4-2】図4-2A及び図4-2Bは、同じくオイリー肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図4-3】図4-3A及び図4-3Bは、同じくドライ肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図4-4】図4-4A及び図4-4Bは、同じくふつう肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図4-5】図4-5A及び図4-5Bは、同じく混合肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図4-6】図4-6A及び図4-6Bは、肌タイプ識別空間における食不規則・食不健康自覚者の割合の分布を示すグラフ図(等高線図)である。
図4-7】図4-7A及び図4-7Bは、肌タイプ識別空間における循環不調自覚者の割合の分布を示すグラフ図(等高線図)である。
図5-1】図5A図5B及び図5Cは、肌タイプ識別平面における種々の肌タイプ自覚者の割合の分布を示す表図である。
図5-2】図5D図5E及び図5Fは、肌タイプ識別平面における種々の肌タイプ自覚者の割合の分布、及び、被検者の分布を示す表図である。
図6-1】図6-1は、肌タイプ識別平面における敏感肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図(等高線図)である。
図6-2】図6-2は、同じくオイリー肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図6-3】図6-3は、同じくドライ肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図6-4】図6-4は、同じくふつう肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図6-5】図6-5は、同じく混合肌自覚者の割合の分布を示すグラフ図である。
図6-6】図6-6は、肌タイプ識別平面における食不規則・食不健康自覚者の割合の分布を示すグラフ図(等高線図)である。
図6-7】図6-7は、肌タイプ識別平面における循環不調自覚者の割合の分布を示すグラフ図(等高線図)である。
図7図7は、角度t及び角度sにより、肌質得点SQと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rがどのように変わるかを示す表図である。
図8図8は、食生活についての設問項目を示す表図である。
図9図9は、食生活についての因子得点係数を示す表図である。
図10図10は、体調自覚についての設問項目を示す表図である。
図11図11は、体調自覚についての因子得点係数を示す表図である。
図12図12Aは、独立したコンピュータからなる美容判定システムの構成図であり、図12Bは、コンピュータの構成図である。
図13図13は、コンピュータ制御プログラムの構成図である。
図14図14Aは、ネットワークを介して通信可能なサーバと端末からなる美容判定システムの構成例を示す構成図であり、図14Bは、同じく別の構成例を示す構成図である。
図15A図15Aは、肌質得点と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
図15B図15Bは、不規則な食生活と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
図15C図15Cは、不健康な食生活と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
図15D図15Dは、複合食因子の得点と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
図15E図15Eは、更年期年齢因子の得点と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
図15F図15Fは、更年期特有の体調因子の得点と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
図15G図15Gは、循環因子の得点と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
図15H図15Hは、アレルギー因子の得点と敏感肌自覚の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る美容判定システム及び官能評価システムの実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
本発明の第1の形態によれば、独立したコンピュータ、又は、互いに双方向に通信可能な複数のコンピュータからなり、肌に関する3つ以上の設問に対する顧客の回答である問診データを、コンピュータ制御プログラムの実行により処理して、前記顧客の美容判定を行う美容判定システムであり、前記顧客の問診データと、コンピュータ制御プログラムと、因子得点係数と、を記憶する記憶手段を有し、前記コンピュータ制御プログラムは、前記顧客の問診データと前記因子得点係数を用いて、前記顧客の、皮脂過剰に関するO因子
の得点SOと、肌乾燥に関するD因子の得点である乾燥度SDと、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点SHと、を計算して、XYZ座標軸を備えた肌タイプ識別空間における点(SO,SD,SH)の位置から、前記顧客の肌タイプを判定するための肌タイプ判定手段を有し、前記因子得点係数は、肌に関する前記設問に対する多数の被検者の回答である基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、(より好ましくは、互いに直交する)前記O因子と、前記D因子と、前記H因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されている美容判定システムを提供できる。
【0028】
(問診により肌タイプを判定する際に因子分析法を用いる利点)
肌の乾燥性や脂性についての顧客の主観的認識は意外にも、皮脂量や水分量の測定器による測定値と相関性が低い。これには、冷暖房等の測定場所の環境が皮膚状態に影響することや、化粧をした状態又は洗浄・洗顔の直後の状態で測定器を用いて測定するケースが多いこと等が関係していると考えられる。本発明の本形態では、問診により肌タイプを判定するにあたって、皮脂過剰、毛穴汚れ感覚及び肌乾燥などに関する直接的な設問に対する顧客の回答のみから肌タイプを判定するのではなく、肌の乾燥性や脂性などの程度を直接に尋ねる設問を減らし、因子分析法を用いてすべての設問に対する回答を総合して顧客の各因子の得点を計算し、これらの因子の得点により総合的かつ間接的に顧客の肌タイプを判定するから、当該判定の精度を高めることができる。加えて、XYZ座標軸を備えた肌タイプ識別空間における点(SO,SD,SH)の位置から、前記顧客の肌タイプを精度よく判定するから、顧客と販売者等がともに短時間で顧客の肌タイプの情報を把握し、共有することができる。
【0029】
(基礎データにおける被検者の人数)
ここで、基礎データにおける「多数の被検者」とは、限定されるものではないが、概ね1千人以上であり、好ましくは5千人以上であり、更に好ましくは1万人以上の被検者をいう。対象とする顧客層の母集団からランダムにサンプリングされたサンプル集団に属する被検者の回答からなる基礎データが大規模になるほど、各因子の得点により把握される、サンプル集団における各顧客の相対位置と、母集団における当該顧客の真の相対位置とのずれが小さくなり、肌タイプの判定精度が向上する。
【0030】
(基礎データの規模がO因子及びH因子の抽出に与える影響)
因子分析における因子数の選択の目安として、例えば、標本相関行列の1より大きい固有値の数を因子数とする方法(Kaiser-Guttman基準)がよく知られている。本発明者の経験によれば、皮脂過剰に関するО因子と毛穴汚れ感覚に関するH因子は、因子分析の対象となる基礎データに含まれる被検者の人数が約1千人であると、設問の回答についての説明力を有する線形独立な2つの因子として分離して抽出することができず、同人数が約5千人であると、辛うじて分離して抽出することができ、同人数が約1万人であると、確実に分離して抽出することができる。本発明者による特許文献6に記載された従来技術においては、基礎データに含まれる被検者の人数が4227人であったので、O因子とH因子は独立した2因子として抽出することができず、両者が重なって脂性に関係した1つの因子として把握されていた。本発明の一実施例においては、基礎データに含まれる被検者の人数が約2万人と多いので、O因子とH因子を独立した2因子として抽出することができるから、顧客の肌タイプをより細かく的確に判定することができる。
【0031】
本発明の第2の形態によれば、前記第1の形態において、前記設問が、毛穴汚れ感覚と関係が深い、毛穴、毛穴の汚れ、毛穴の開き、毛穴の黒ずみに関する項目のうち少なくとも1つを含む美容判定システムを提供できる。
【0032】
本発明の第3の形態によれば、前記第2の形態において、前記O因子の得点SO、前記H因子の得点SH及び0°<t<90°なる角度tを用いて、複合脂性度SCを、次の式
1により定めて、
(式1) SC = SO×cоs(t) + SH×sin(t)
前記肌タイプ判定手段が、前記問診データに基づいて、前記顧客の複合脂性度SCを計算して、XY座標軸を備えた肌タイプ識別平面における点(SC,SD)の位置から、前記顧客の肌タイプを判定する美容判定システムを提供できる。
【0033】
(複合脂性度SCの図形的意味)
式1により定義される複合脂性度SCの図形的意味を説明する。図1Aに示すように、横軸(O軸と呼ぶ。)にO因子の得点SO、縦軸(H軸と呼ぶ。)にH因子の得点SHをとった座標平面において、原点を通り、第1象限において横軸と角度tをなす直線をとり、この直線をC軸と呼ぶ。点(SO,SH)からC軸に下した垂線の足を点Aとする。点Aと原点との距離(より正確には符号付きの距離)が複合脂性度SCである。(図1Aでは「複合脂性度」を単に「脂性度」と表記している。)
【0034】
(複合脂性度SCを定義する動機)
既述の通り、皮脂過剰に関するО因子と毛穴汚れ感覚に関するH因子は、互いに線形独立な因子であるが、これらの因子の得点は、いずれも20代の若年の女性層において高く、非若年層の女性において低い傾向が見られ、一般的な女性の脂性感覚(年齢が進むほど脂性感覚は低下する)と一致している。そこで、O因子の得点SOとH因子の得点SHの両方を反映した複合脂性度SCを式1により定義すると、この複合脂性度SCは、すべての年齢層の女性にわたって適用可能な脂性度を表す指標として用いることができる。
【0035】
本発明の本形態においては、式1により定義される複合脂性度SCと、乾燥度SDを用いて、前記顧客の肌タイプを判定するから、すべての年齢層の女性について的確に肌タイプを判定することができる。また、本発明の本形態では、XY座標軸を備えた肌タイプ識別平面における点(SC,SD)の位置として顧客の肌タイプを視覚的に表現するから、顧客と販売者等がともに短時間で顧客の肌タイプの情報を把握して共有することができる。また、顧客及び/又は販売者等は、顧客の肌タイプをより詳細かつ的確に把握して、美容商品の購入や推奨の参考にすることができる。
【0036】
本発明の第4の形態によれば、前記第3の形態において、前記コンピュータ制御プログラムは、顧客又は被検者の複合脂性度SCと乾燥度SD及び0°<s<90°なる角度sを用いて、前記顧客又は被検者の肌質得点SQを、次の式2により計算する手段を有し、
(式2) SQ = SC×cоs(s) + SD×sin(s)
前記基礎データに係る設問は、前記因子分析に用いられた回答に係る設問とは別に、被検者が自分の肌タイプを敏感肌であると自覚しているか否かを問う設問である敏感肌自覚有無設問を含み、前記基礎データにおける、被検者の前記肌質得点SQ及び前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上であるように前記角度t及び角度sが定められている美容判定システムを提供できる。
【0037】
(肌質得点SQの図形的意味)
式2により定義される肌質得点SQの図形的意味を説明する。図1Bに示すように、横軸(C軸と呼ぶ。)に複合脂性度SC、縦軸(D軸と呼ぶ。)に乾燥度SDをとった座標平面において、原点を通り第1象限において横軸と角度sをなす直線をとり、この直線をQ軸と呼ぶ。点(SC,SD)からQ軸に下した垂線の足を点Bとする。点Bと原点との距離(より正確には符号付きの距離)が肌質得点SQである。角度sは45°と等しくてもよく、45°と等しくなくてもよい。式2によれば、角度sが45°の場合、複合脂性度SCと乾燥度SDは、肌質得点SQに同じ重みで寄与し、角度sが45°より小さい場合、複合脂性度SCは乾燥度SDより、肌質得点SQに大きな重みで寄与し、角度sが45°より大きい場合、乾燥度SDは複合脂性度SCより、肌質得点SQに大きな重みで寄
与する。
【0038】
(敏感肌自覚有無設問に対する回答と、角度t及び角度sの選択)
本発明の本形態においては、式1における角度t及び式2における角度sは、前記基礎データにおける、被検者の前記肌質得点SQ及び前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上であるように定められているから、敏感肌を自覚している顧客及び敏感肌を自覚していない顧客の、肌タイプを、敏感肌自覚と大きな相関を有する肌質得点SQと、乾燥度SDを用いてより的確に把握して、美容商品の購入や推奨の参考にすることができる。
【0039】
(相関係数Rの計算)
ここで、上記相関係数Rは、被検者の前記肌質得点SQ及び前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から次のようにして計算される。Lを3以上の整数として、前記基礎データに含まれる被検者について、肌質得点SQの値が属する区間1から区間LまでのL個の区間[x0,x1),[x1,x2),・・,[x_(L-1),xL](ただし、x0=min(SQ),xL=max(SQ))を考える。ここで、各区間の端点x0,x1,・・,xLは等間隔であり、好ましくは当該各区間には少なくとも1つの、被検者の肌質得点SQの値が含まれる。1以上L以下の任意の整数をiとして、第i番目の区間に肌質得点SQの値が属する被検者のうち、自分を敏感肌であると認識している被検者の割合をpiとして、座標平面上のL個の点(i,pi)(i=1,2,・・,L)の相関係数Rを計算する。このRが求める相関係数であり、本発明の本形態においては、Rが0.90以上であるように前記角度t及び角度sが定められているのである。特段の理由がなければ、原則として、区間の数はL=10とする。また、L個の区間のうち、ある区間(第k番目の区間とする)に肌質得点SQの値が属する被検者の数が一区間当たりの所定の下限人数に満たない時には、相関係数Rの精度を確保するため、座標平面上のL個の点(i,pi)(i=1,2,・・,L)から、その区間(第k番目の区間)に対応する点(k,pk)を除いた残りの点(除くべき点が複数あるときには、それら複数の点のすべてを除いた残りの点)を用いて、相関係数Rを計算する。特段の理由がなければ、原則として、上記の一区間当たりの所定の下限人数は、10人と有効回答者数の100分の1の人数のうち少なくない方(例えば64人)とする。
なお、ここでは被検者の肌質得点SQを用いて相関係数Rの求め方を説明したが、肌質得点SQの代わりに、被検者に係るなんらかの因子得点等の任意の数量(実数)を用いて、当該数量及び前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数を、同様にして求めることができる。
【0040】
本発明の第5の形態によれば、前記第4の形態において、前記問診データは更に、食生活に関する複数の設問に対する前記顧客の回答を含み、前記記憶手段は更に、食生活に係る因子得点係数を記憶し、前記コンピュータ制御プログラムは、食生活に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、食不規則に関するF1因子の得点SF1と、食不健康に関するF2因子の得点SF2と、を計算し、更に、0°<u<90°なる角度uを用いて、前記顧客の複合食因子の得点SFを次の式3により計算する手段を有し、
(式3) SF = SF1×cоs(u)+ SF2×sin(u)
前記基礎データは更に、食生活に関する前記複数の設問に対する多数の前記被検者の回答である食生活基礎データを含み、食生活に係る前記因子得点係数は、前記食生活基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、食不規則に関するF1因子と、食不健康に関するF2因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されており、食生活に係る前記因子得点係数を用いて、前記食生活基礎データにおける各被検者の、F1因子の得点SF1及びF2因子の得点SF2があらかじめ計算され、更に、複合食因子の得点SFが式3を用いてあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記複
合食因子の得点SFと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上であるように前記角度uが定められている美容判定システムを提供できる。
【0041】
(被検者の食生活と敏感肌自覚との関係)
本発明者は、被検者の前記複合食因子の得点SFと敏感肌自覚有無との間に、大きな相関が存在することを見出した。本発明の本形態においては、顧客及び/又は販売者等は、敏感肌を自覚している顧客及び敏感肌を自覚していない顧客の、食生活のあり様を、当該顧客の食不規則に関するF1因子の得点SF1と、食不健康に関するF2因子の得点SF2と、敏感肌自覚と大きな相関を有する複合食因子の得点SFを用いてより的確に把握して、美容商品の購入や推奨、並びに、食生活に関する助言の参考にすることができる。
【0042】
本発明の第6の形態によれば、前記第4の形態において、前記問診データは更に、体調自覚に関する複数の設問に対する前記顧客の回答を含み、前記記憶手段は更に、体調自覚に係る因子得点係数を記憶し、前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、更年期特有の体調に関するT因子の得点STを計算する手段を有し、前記基礎データは更に、体調自覚に関する前記複数の設問に対する多数の前記被検者の回答である健康基礎データを含み、体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、互いに線形独立な、(より好ましくは、互いに直交する)更年期年齢に関するA因子と、更年期特有の体調に関するT因子と、を抽出することによりあらかじめ計算されており、体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、T因子の得点STがあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記T因子の得点STと、前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.85以上である美容判定システムを提供できる。
【0043】
(被検者の、更年期特有の体調に関する自覚と敏感肌自覚との関係)
本発明者は、被検者の、更年期特有の体調に関するT因子の得点STと敏感肌自覚有無との間に、大きな相関が存在することを見出した。本発明の本形態においては、顧客及び/又は販売者等は、敏感肌を自覚している顧客及び敏感肌を自覚していない顧客の、体調自覚のあり様を、当該顧客の、更年期特有の体調に関するT因子の得点STを用いてより的確に把握して、美容商品の購入や推奨、並びに、健康に関する助言の参考にすることができる。
【0044】
本発明の第7の形態によれば、前記第6の形態において、前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、循環不調に関する循環因子の得点SKを計算する手段を有し、体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、循環不調に関する循環因子を抽出することにより計算されており、体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、循環因子の得点SKがあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記循環因子の得点SKと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.90以上である美容判定システムを提供できる。
【0045】
(被検者の循環因子の得点と敏感肌自覚との関係)
本発明者は、被検者の、循環不調に関する前記循環因子の得点SKと敏感肌自覚有無との間に、大きな相関が存在することを見出した。本発明の本形態においては、顧客及び/又は販売者等は、敏感肌を自覚している顧客及び敏感肌を自覚していない顧客の、体調自覚のあり様を、当該顧客の、循環因子の得点SKを用いてより的確に把握して、美容商品の購入や推奨、並びに、健康に関する助言の参考にすることができる。
【0046】
本発明の第8の形態によれば、前記第6の形態において、前記コンピュータ制御プログラムは、体調自覚に係る前記因子得点係数と、前記顧客の問診データを用いて、前記顧客の、アレルギーに関するAL因子の得点SALを計算する手段を有し、体調自覚に係る前記因子得点係数は、前記健康基礎データから因子分析法により、少なくとも、アレルギーに関するAL因子を抽出することにより計算されており、体調自覚に係る前記因子得点係数を用いて、前記健康基礎データにおける各被検者の、AL因子の得点SALがあらかじめ計算され、前記基礎データにおける、被検者の前記AL因子の得点SALと前記敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.85以上である美容判定システムを提供できる。
【0047】
(被検者のAL因子の得点と敏感肌自覚との関係)
本発明者は、被検者の、アレルギーに関する前記AL因子の得点SALと敏感肌自覚有無との間に、大きな相関が存在することを見出した。本発明の本形態においては、顧客及び/又は販売者等は、敏感肌を自覚している顧客及び敏感肌を自覚していない顧客の、体調自覚のあり様を、当該顧客の、AL因子の得点SALを用いてより的確に把握して、美容商品の購入や推奨、並びに、健康に関する助言の参考にすることができる。
【0048】
本発明の第9の形態によれば、前記第4~第8のいずれかの形態において、前記角度tが25°以上50°以下であり、かつ、前記角度sが25°以上75°以下である美容判定システムを提供できる。角度t及び角度sをこの範囲の値に選ぶことにより、基礎データにおける、被験者の肌質得点SQと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rが0.98以上である美容判定システムが提供される。角度sは45°と等しくてもよく、或いは等しくなくてもよい。後者の場合、角度sは、45°より小さくてもよく、或いは45°より大きくてもよい。角度tは、45°と等しくてもよく、或いは等しくなくてもよい。本形態においては、顧客の肌質得点SQが大きいほど、当該顧客が敏感肌を自覚している確率が大きい傾向があると言える。
【0049】
本発明の第10の形態によれば、前記第9の形態における前記コンピュータ制御プログラムを提供できる。
【0050】
本発明の第11の形態によれば、前記第9の形態における前記コンピュータ制御プログラムに係るパラメータを記録した、コンピュータで読取可能な記憶媒体を提供できる。ここで、前記コンピュータ制御プログラムに係るパラメータとしては、限定されるものではないが、例えば、肌診断、食生活又は健康に関する前記因子分析に係る因子荷重係数や因子得点係数、前記角度t、s、uなどを挙げることができる。
【0051】
本発明の第12の形態によれば、前記第9の形態における美容判定システムを利用した、美容商品の官能評価システムであり、評価に協力する協力者がある期間の間、前記美容商品を利用する、前と後の両時に、前記協力者に問診を行い、前記設問に対する前記協力者の回答に基づいて、前記О因子の得点、H因子の得点、複合脂性度、乾燥度、及び肌質得点のうち、いずれか1つ以上の数値を、前記期間の前と後の両時について、それぞれ計算し、前記期間における前記数値の変化量から改善効果を評価する改善効果評価手段を有する美容商品の官能評価システムを提供できる。
【0052】
通常、化粧品等の開発局面における問診による官能評価では、例えば「しっとり」の程度を例にとると、実験室内で被検者に短時間の当該化粧品等のテスト使用を行ってもらい、テストの前後にそれぞれ直接的な設問により問診を行い、選ばれた評価選択肢を保湿スケールとし、テストの前後における当該保湿スケールの変化量により改善効果を測定する方式が採用されている。一方、本発明の本形態においては、例えば、必ずしも直接的でない設問に対する回答から計算される、乾燥因子の得点である乾燥度SDを用い、ある期間
(例えば数日以上)の前後の得点変化として改善効果を測定する。本形態は、測定機器を用いない官能評価方法であり、実験室外での実際の使用条件に即した、化粧品又は美容サービスの実使用局面で利用可能な官能評価方法を提供できる。
【0053】
<1.肌タイプを3因子により判定する美容判定システム>
(基礎データと因子の抽出)
本発明者は、図2Aの表図に示す、肌タイプの分析に有用な21項目の設問セットを用いて、29歳~69歳の20000人の女性である被検者に問診して19468人から有効回答を得た。上記有効回答を基礎データとして因子分析法により解析を行った解析結果と、本発明の一形態に係る美容判定システムについて説明する。
図3Aは、上記21項目の設問セットの各設問に対する、各被検者の2択の回答の値(0又は1)からなる基礎データを、直交モデルによる因子分析法で解析して抽出された5つの因子の因子荷重を示す表図である。抽出する因子の数を5としたのは、平均0、標準偏差1に標準化した上記回答の値の共分散行列の固有値のうち、1以上であるものの個数が5であるゆえである。因子荷重の推計には最尤法を用いた。図3Aに示した因子荷重は、Kaiserの正規化を伴わないバリマックス法で収束するまで6回の回転を行った後の因子荷重である。また、図3Bは、上記の因子分析法による解析で得られた因子得点係数を示す表図である。因子の得点の計算には回帰法を用いている。任意の因子について、この因子得点係数に各被検者の設問に対する回答の値を乗じて、21の設問について和をとることにより、当該被検者のその因子に係る因子得点を(定数のずれを除いて)計算することができる。
因子1は、回答の値に対する説明力が最も高い、美白意識などの美容感覚に係る因子であり、エステティックに関わる設問項目(ハリ弾力、明るさ透明感、肌のキメ、若々しさ)との関連性が強い。本明細書では、この因子をEST因子と呼ぶ。因子2は、皮脂(多い)感覚に係る因子であり、皮脂過剰に関わる設問項目(ニキビ、ニキビあと)との関連性が強い。本明細書では、この因子をО因子と呼び、その因子得点をSОと標記する。因子3は、毛穴(汚れ)感覚に係る因子であり、毛穴不満に関わる設問項目(毛穴、毛穴の汚れ)との関連性が強い。本明細書では、この因子をH因子と呼び、その因子得点をSHと標記する。因子4は、ベースメーク感覚に係る因子であり、ベースメイクに関わる設問項目(化粧崩れ、化粧ノリが悪い、キメが粗い)との関連性が強い。本明細書では、この因子をMB因子と呼ぶ。因子5は、乾燥感覚に係る因子であり、肌乾燥に関わる設問項目(乾燥、乾燥を防ぐ)との関連性が強い。本明細書では、この因子をD因子と呼び、その因子得点である乾燥度をSDと標記する。
なお、この実施例では、各設問に対する、各被検者の2択の回答の値(0又は1)を用いたが、設問(回答の値)は、3択(0、1又は2)や4択、5択やそれ以上であっても構わない。また、この実施例においては因子の得点は回帰法で計算したが、本発明における因子の得点の計算法は回帰法に限られない。Bartlett法、Anderson-Rubin法など、因子の得点が観測量の線形結合を用いて表現できる任意の計算法が、本発明において利用可能である。
【0054】
(因子の得点の計算について)
ここで顧客の各因子の得点の計算方法と、図3Bに示す因子得点係数の規格化について補足する。第i番目の因子の得点fiは一般に、次の式4により計算できる。
(式4) fi = Σ aij × ( xj - mj)/σj
ここで、aijは基礎データに基づき因子分析法により推定された(元の)因子得点係数、xjはj番目の設問に対する当該顧客の回答の値、mj及びσjは基礎データにおけるj番目の設問に対する被検者の回答の値の平均値及び標準偏差である。Σはjについての和を意味する。式4において、jについての和は一般には、基礎データに係る問診表に記載したすべての設問にわたってとる。しかし、当該顧客に問診する際に、基礎データに係る問診表に記載した設問からいくつかの設問を選択して問診する場合には、式4における
jについての和は、問診において選択された設問にわたってとる。
さて、設問が2択の回答(0又は1)のみを有する場合には、(元の)因子得点係数aijを標準偏差σjで割った値aij/σj(=cijとおく。)を考えるのが便利である。なぜなら、被検者又は顧客の因子の得点を計算する際に、回答の値が1である設問についてcijを足し合わせるだけで、(加法的な定数を除いて)因子の得点が計算できるからである。本明細書においては、特に断らない限り、cijを因子得点係数と呼び、aijを(元の)因子得点係数と呼ぶことにする。後述する図9及び図11においても同様である。
【0055】
<1-1.肌タイプ識別空間を8つの空間領域に分割する美容判定システム>
(敏感肌自覚のある者の割合の3次元領域分布)
基礎データは、上記21項目の設問に加えて、図2Bに示す各肌タイプに当てはまるか否かを訊く2択の設問に対する回答の値(0又は1)を含んでおり、特に、自分の肌タイプが敏感肌に当てはまるか否かを訊く設問(敏感肌自覚有無設問)に対する2択の回答の値を含んでいる。基礎データに含まれる約2万人の被検者のうち、約1/3の被検者が敏感肌自覚有無設問を課された。敏感肌自覚有無設問の有効回答数は6069であり、回答者は5歳刻みの年齢階層ごとに一定割合の人数がランダムに選択されている。
上記基礎データに含まれる各被検者は、皮脂過剰に係るO因子の得点SOを第1軸(X軸)にとり、乾燥に係るD因子の得点である乾燥度SDを第2軸(Y軸)にとり、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点SHを第3軸(Z軸)にとった肌タイプ識別空間上の1点(座標が(SO,SD,SH)である点)に配置することができる。肌タイプ識別空間上の位置により、問診を受けた顧客が敏感肌自覚有無設問にYESと答える確率は異なると考えられる。そこで、得点SOがその平均値以上であるか、又は、平均値未満であるかに応じて、得点SOの2値化得点bSOをH(平均値以上の場合)又はL(平均値未満の場合)と定める。同様に、H又はLの値をとる、乾燥度SDの2値化得点をbSDと定め、得点SHの2値化得点をbSHと定める。3つの2値化得点bSH,bSO,bSDがそれぞれH又はLの値をとるから、肌タイプ識別空間は、これらの値の組み合わせに応じて2×2×2=8つの空間領域に分割される。
【0056】
【表1】
【0057】
表1は、基礎データに含まれる有効回答に係る被検者で、かつ、上記の8つの空間領域のそれぞれに含まれる被検者について、敏感肌自覚有無設問にYESと答えた被検者の割合を示す。得点SHが大きいほど、得点SOが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、概ね、敏感肌自覚者の割合は大きくなる傾向が見られる。
【0058】
(オイリー肌自覚のある者の割合の3次元領域分布)
表1は、8つの空間領域のそれぞれについて、オイリー肌自覚者の割合も示している。得点SHが大きいほど、得点SOが大きいほど、又、乾燥度SDが小さいほど、概ね、オイリー肌自覚者の割合は大きくなる傾向が見られる。
【0059】
(ドライ肌自覚のある者の割合の3次元領域分布)
表1は、8つの空間領域のそれぞれについて、ドライ肌自覚者の割合も示している。得点SHが小さいほど、得点SOが小さいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、概ね、ドライ肌自覚者の割合は大きくなる傾向が見られる。
【0060】
(ふつう肌自覚のある者の割合の3次元分布)
表1は、8つの空間領域のそれぞれについて、ふつう肌自覚者の割合も示している。得点SHが小さいほど、得点SOが小さいほど、又、乾燥度SDが小さいほど、ふつう肌自覚者の割合は大きくなる傾向が見られる。
【0061】
(混合肌自覚のある者の割合の3次元分布)
表1は、8つの空間領域のそれぞれについて、ドライでオイリーな混合肌自覚者の割合も示している。得点SHが大きいほど、得点SOが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、混合自覚者の割合は大きくなる傾向が見られる。
【0062】
(食不規則・食不健康自覚のある者の割合の3次元領域分布)
ある実施形態においては、後述するように、基礎データは、食生活についての複数の設問を含んでおり、これらの設問に対する被検者の回答を因子分析することにより、各被検者の、食不規則・食不健康に係る因子の得点SFが計算できる。当該得点SFが、平均値以上である場合に、その被検者は食不規則・食不健康自覚があるものとみなし、そうでない場合には食不規則・食不健康自覚がないものとみなす。表1は、8つの空間領域のそれぞれについて、食不規則・食不健康自覚者の割合も示している。得点SHが大きいほど、得点SOが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、食不規則・食不健康自覚者の割合は大きくなる傾向が見られる。本形態の肌タイプ判定手段は、顧客が食不規則・食不健康に係る問題を有するか否かを判定するための簡易スクリーニングツールとして用いることができる。
【0063】
(循環不調自覚のある者の割合の3次元領域分布)
ある実施形態においては、後述するように、基礎データは、体調自覚についての複数の設問を含んでおり、これらの設問に対する被検者の回答を因子分析することにより、各被検者の、循環不調に係る因子の得点SKが計算できる。当該得点SKが、平均値以上である場合に、その被検者は循環不調自覚があるものと見做し、そうでない場合には循環不調自覚がないものと見做す。表1は、8つの空間領域のそれぞれについて、循環不調自覚者の割合も示している。得点SHが大きいほど、得点SOが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、循環不調自覚者の割合は大きくなる傾向が見られる。本形態の肌タイプ判定手段は、顧客が循環不調に係る問題を有するか否かを判定するための簡易スクリーニングツールとして用いることができる。
【0064】
<1-2.肌タイプ識別空間における点の位置を用いた美容判定システム>
(敏感肌自覚のある者の割合の3次元分布)
上記基礎データに含まれる各被検者は、皮脂過剰に係るO因子の得点SOを第1軸(X軸)にとり、乾燥に係るD因子の得点である乾燥度SDを第2軸(Y軸)にとり、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点SHを第3軸(Z軸)にとった肌タイプ識別空間上の1点に配置することができる。肌タイプ識別空間上の位置により、問診を受けた顧客が敏感肌自
覚有無設問にYESと答える確率は異なると考えられる。その確率を後述する多項式ロジスティック回帰(正則化あり)の手法により推定して等高線図で示したのが図4-1である。なお、以下では、各因子の得点SО,SD及びSHの各々を、最大値を1に、かつ、最小値を0に変換する線形変換により0以上1以下の範囲の値に規格化して考察することとする。
図4-1Aは、肌タイプ識別空間における上記の確率の分布を、上記のように規格化したH因子の得点SH(以下では、Hと呼ぶ。)が0.95である平面上で示した等高線図である。当該図には、等高線に加えて100個の点がプロットされている。これらの点は、規格化したH因子の得点Hが0.90以上1.00以下である被検者を基礎データから無作為に100人抽出して、敏感肌自覚有無設問にYESと答えた者を「〇」マークで、そうでない者を「+」マークでプロットしたものである。
図4-1Bも、図4-1Aと同様に確率の分布を示す等高線図であるが、規格化したH因子の得点Hが0.05である平面上で示した等高線図であること、及び、プロットされた100個の点が、規格化したH因子の得点Hが0.00以上0.10以下である被検者を基礎データから無作為に100人抽出してプロットしたものであることが、図4-1Aとは異なっている。
両図からわかるように、皮脂過剰に係るO因子の得点SOが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、敏感肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、皮脂過剰に係るO因子の得点SO及び乾燥度SDが同じであれば、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点SHが大きいほど、概ね、敏感肌自覚者の割合は大きい傾向がある。つまり、得点SОが大きいほど、乾燥度SDが大きいほど、又、得点SHが大きいほど、敏感肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。加えて、「規格化されたH因子の得点Hが0.5未満で、かつ、規格化されたО因子の得点SOが0.8以下」又は「規格化されたH因子の得点Hが0.5以上で、かつ、規格化されたО因子の得点SOが0.7以下」の領域では、規格化されたO因子の得点SOが増えるよりも、規格化された乾燥度SDが増える方が、敏感肌自覚者の割合の増加が大きい傾向がある。
【0065】
(オイリー肌自覚のある者の割合の3次元分布)
図4-2A及び図4-2Bは、同様にして推定した、オイリー肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。両図からわかるように、皮脂過剰に係るO因子の得点SOが大きいほど、又、乾燥度SDが小さいほど、オイリー肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、皮脂過剰に係るO因子の得点SO及び乾燥度SDが同じであれば、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点が大きいほど、概ね、オイリー肌自覚者の割合は大きい傾向がある。
【0066】
(ドライ肌自覚のある者の割合の3次元分布)
図4-3A及び図4-3Bは、同様にして推定した、ドライ肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。両図からわかるように、ドライ肌自覚者の割合には、規格化された乾燥度SDが大きく影響している。乾燥度SDが大きいほど、又、皮脂過剰に係るO因子の得点SOが小さいほど、概ね、ドライ肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、皮脂過剰に係るO因子の得点SO及び乾燥度SDが同じであれば、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点が小さいほど、概ね、ドライ肌自覚者の割合は大きい傾向がある。なお、規格化されたH因子の得点Hが0.5以上で、かつ、規格化された乾燥度SDが約0.9以上と1に近い場合には、皮脂過剰に係るO因子の得点SOによらず、乾燥度SDが増えるほど、逆にドライ肌自覚者の割合が減る傾向が見られる。
【0067】
(ふつう肌自覚のある者の割合の3次元分布)
図4-4A及び図4-4Bは、同様にして推定した、ふつう肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。両図からわかるように、乾燥度SDが小さいほど、又、皮脂過剰に係るO因子の得点SOが小さいほど、概ね、ふつう肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、皮脂過剰に係るO因子の得点SO及び乾燥度SDが同じであれば、毛穴汚れ感覚
に関するH因子の得点が小さいほど、概ね、ふつう肌自覚者の割合は大きい傾向がある。
【0068】
(混合肌自覚のある者の割合の3次元分布)
図4-5A及び図4-5Bは、同様にして推定した、混合肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。規格化されたH因子の得点が例えば0.95と大きい場合には、規格化されたO因子の得点SОが約0.7で、かつ、規格化された乾燥度SDが約0.7の場合に、混合肌自覚者の割合は最大値をとり、SО又はSDが上記の最大値をとる値から平面上の距離の意味で離れると、混合肌自覚者の割合は概ね単調に減少する傾向がある。規格化されたH因子の得点が例えば0.05と小さい場合には、規格化されたO因子の得点SОが約0.8で、かつ、規格化された乾燥度SDが約1.0の場合に、混合肌自覚者の割合は最大値をとり、SО又はSDが上記の最大値をとる値から平面上の距離の意味で離れると、混合肌自覚者の割合は概ね単調に減少する傾向がある。また、皮脂過剰に係るO因子の得点SO及び乾燥度SDが同じであれば、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点が大きいほど、概ね、混合肌自覚者の割合は大きい傾向がある。
【0069】
(食不規則・食不健康自覚のある者の割合の3次元分布)
図4-6A及び図4-6Bは、図4-1A及び図4-1Bと同様にして推定した、前記実施形態における食不規則・食不健康自覚者の割合の分布を示す等高線図である。両図からわかるように、乾燥度SDが大きいほど、又、皮脂過剰に係るO因子の得点SOが大きいほど、概ね、食不規則・食不健康自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、皮脂過剰に係るO因子の得点SO及び乾燥度SDが同じであれば、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点が大きいほど、概ね、食不規則・食不健康自覚者の割合は大きい傾向がある。また、規格化されたO因子の得点SOの増加と、規格化された乾燥度SDの増加は、いずれも、食不規則・食不健康自覚者の割合の増加に寄与するが、規格されたH因子の得点Hが例えば0.95と大きい場合には、後者(規格化された乾燥度SDの増加)の方が大きく寄与し、規格化されたH因子の得点Hが例えば0.05と小さい場合には、前者(規格化されたO因子の得点SOの増加)の方が大きく寄与する。本形態の肌タイプ判定手段は、顧客が食不規則・食不健康に係る問題を有するか否かを判定するための簡易スクリーニングツールとして用いることができる。
【0070】
(循環不調自覚のある者の割合の3次元分布)
図4-7A及び図4-7Bは、図4-1A及び図4-1Bと同様にして推定した、前記実施形態における循環不調自覚者の割合の分布を示す等高線図である。両図からわかるように、乾燥度SDが大きいほど、又、皮脂過剰に係るO因子の得点SOが大きいほど、概ね、循環不調自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、皮脂過剰に係るO因子の得点SO及び乾燥度SDが同じであれば、毛穴汚れ感覚に関するH因子の得点が大きいほど、概ね、循環不調自覚者の割合は大きい傾向がある。本形態の肌タイプ判定手段は、顧客が循環不調に係る問題を有するか否かを判定するための簡易スクリーニングツールとして用いることができる。
【0071】
(多項式ロジスティック回帰による確率の推定・・3次元の場合)
肌タイプ識別空間(3つの座標軸としてX軸,Y軸及びZ軸を有するものとする。)における多項式ロジスティック回帰による確率の推定方法を、敏感肌自覚者の割合(すなわち、顧客が敏感肌自覚者である確率)の推定を例にして説明する。有効回答数をm=6069として基礎データに含まれる有効回答に係る被験者をi=1,2,・・,mで表し、第i番目の被験者のO因子の得点SО,乾燥度SD,H因子の得点SHをそれぞれ上記の通り規格化した量を順にXi,Yi,Ziとし、これらをまとめて3次元数ベクトルxi=(Xi,Yi,Zi)で表す。また、第i番目の被験者が敏感肌を自覚している場合に1,そうでない場合に0の値をとる2値データをyiとする。ある顧客の問診データから計算される各因子の規格化された得点が肌タイプ識別空間において数ベクトルx=(X,
Y,Z)で表される場合に、その顧客が敏感肌を自覚している確率p(x)を推定したい。Θを推定するべきパラメータとして、求める確率を
(式5) p(x) := p(Θ,x) := g(f(Θ,x))
の形に仮定する。(なお、記号「:=」は、左辺の量を右辺により定義することを意味する。)ここで、f(Θ,x)は3変数X,Y,Z、すなわち数ベクトルx=(X,Y,Z)の6次多項式である。Θはその係数をまとめて表したものである。ここで、定数項を含めて3変数の4次多項式には係数が35個あり、3変数の6次多項式には84個の係数がある。tを任意の実数,expを指数関数として、g(t)は次式で定義されるシグモイド関数(別名、ロジスティック関数)である。
(式6) g(t) := 1/(1+exp(-t))
パラメータΘは、次のコスト関数J=J(Θ,λ)を最小にするように決定する。
(式7) J(Θ,λ) := λ×|Θ|2/m +
Σ[-yi×lоg(p(Θ,xi))
-(1-yi)×lоg(1-p(Θ,xi))]/m
ここで、lоgは自然対数、Σはiについての和(被検者についての和)、|Θ|2は6次多項式の84個の係数のうち定数項を除く83個の係数の2乗和、正の実数λはオーバーフィッティング(ハイバリアンス)を避けるために導入した正則化パラメータである。
【0072】
(正則化パラメータλ及びしきい値cの決定)
正則化パラメータλの決定方法について説明する。あらかじめ、有効回答をした6069人の被検者に対応する基礎データを、学習用データ(4069人分のデータからなる)と検証用データ(2000人分のデータからなる)の2つにランダムに分割しておく。まず、正則化パラメータλを0.01,0.03,0.1,0.3,1,3,10,30及び100のいずれかの値に固定して、学習用データ(m=4049)についてコスト関数J(Θ,λ)を最小にするパラメータΘ=Θ(λ)を決定する。次に、決定されたパラメータΘ(λ)を用いて、検証用データに含まれる2000人の各被検者(j)について、敏感肌を自覚しているか否かを以下のようにして予測する。
p(Θ(λ),xj)≧c のとき敏感肌を自覚していると予測し、
p(Θ(λ),xj)<c のとき敏感肌を自覚していないと予測する。
ここで、cは、0以上1以下の値をとるしきい値である。
しきい値cを0.02,0.04,0.06,0.08,0.10,0.15,0.20,0.30,0.40,0.50,0.60,0.70,0.80及び0.90のいずれかの値に固定して、上記予測と、当該被検者の実際の敏感肌自覚の有無を表す値yjを比較することにより、この2値分類予測の精度を表す精度指標、例えば、Matthews相関係数を計算することができる。λとcの値の組(λ,c)を決めれば、精度指標が1つ定まる。そこで、λとcを上記のいずれかの値をとるように変えながら、精度指標を最大にする(又は最小にする)λとcの値の組(λ,c)を求めることができる。次の表2は、Matthews相関係数を最大にする正則化パラメータλとしきい値cを示している。表2には、決定されたλとcの値における、学習用データと検証用データを合わせた基礎データ全体での予測の正解率も付記した。なお、ここでは、2値分類予測の精度指標としてMatthews相関係数を用いたが、f1スコアなど公知の他の精度指標を用いてもよい。
【0073】
【表2】
【0074】
(任意の2値データにも適用可能であること)
上では、敏感肌自覚の有無を例にして確率の推定方法を説明したが、この確率の推定方法は、各被検者(i)に係る任意の2値データyiについて適用できる。2値データyiは、例えば、オイリー肌自覚の有無、ドライ肌自覚の有無、ふつう肌自覚の有無、混合肌自覚の有無、食不規則・食不健康自覚の有無、循環不調自覚の有無などであってもよい。また、2値データyiは、被検者又は顧客の自覚の有無に関係した量でなくてもよい。例えば、美容商品や美容サービスの販売店のスタッフや医師、整体師等の専門家が、被検者又は顧客の問診表を見て、或いは/及び、直接に問診・診察して、ある肌タイプに該当するか否かを判定した判定結果を表す2値データ、食生活に係る何らかの属性に該当するか否かを判定した判定結果を表す2値データ、又は、体調に係る何らかの属性に該当するか否かを判定した判定結果を表す2値データであってもよい。すなわち、本発明の基礎データは、各被検者が、肌タイプに係る所定の属性、美容に係る所定の属性、食生活に係る所定の属性、又は、体調に係る所定の属性に該当するか否かを表す2値データを含むことができ、本発明のコンピュータ制御プログラムが具える肌タイプ判定手段は、顧客の問診データから計算される当該顧客の肌タイプ識別空間上の位置に応じて、当該顧客が前記2値データに係る所定の属性に該当する確率を、多項式ロジスティック回帰の手法により推定する手段を有することができる。なお、6次多項式に替えて、4次多項式や8次多項式、10次多項式を用いてもよい。また、多項式ロジスティック回帰の手法に替えて、出力層がシグモイドニューロンで構成された多層ニューラルネットワークや、出力層としてシグモイドニューロンを付加したサポートベクトルマシン等の、他の非線形の統計的推定手法を上記確率を推定するために用いることもできる。
【0075】
本発明の美容判定システムの本実施形態においては、3つの因子の得点SO,SD,SHを用いて、xyz座標軸を具えた肌タイプ識別空間における点(SO,SD,SH)の位置により顧客の肌タイプをより細かく的確に判定するから、顧客の敏感肌自覚の有無に係る肌タイプの内容をより詳しく明らかにして、より適切な美容商品や美容サービスの提供、及び、食生活や体調に係る助言の提供に役立てることができる。
図4-1~図4-7に示す実施例においては、規格化したH因子の得点Hが0.05又は0.95である場合のみを図示したが、得点Hが0.50など他の値をとる場合も同様に図示することができる。すなわち、本実施形態の変形形態においては、顧客の3つの因子の得点が順にSO,SD,SHであるとき、xyz座標軸を具えた肌タイプ識別空間においてz座標が得点SHに等しい、xy平面に平行な平面を肌タイプ識別断面として、当該肌タイプ識別断面における点(SO,SD)の位置により顧客の肌タイプをより細かく的確に判定するから、顧客の敏感肌自覚の有無に係る肌タイプの内容をより詳しく明らかにして、より適切な美容商品や美容サービスの提供、及び、食生活や体調に係る助言の提供に役立てることができる。当該肌タイプ識別断面上には、当該顧客に係る点(SO,S
D)を示すマークに加えて、顧客が特定の肌タイプである確率の分布を示す等高線やヒートマップ等の分布グラフを表示することが好ましい。
【0076】
<2.肌タイプを2因子により判定する美容判定システム>
次に、肌タイプを2因子により判定する美容判定について説明する。皮脂過剰に係るO因子の得点SO、毛穴汚れ感覚に係るH因子の得点SH及び0°<t<90°なる角度tを用いて、式1により複合脂性度SCを計算することができる。複合脂性度SCは、2つの因子得点SОとSHを集約して表した量である。
【0077】
<2-1.肌タイプ識別平面を10×10のマス目に区切る美容判定システム>
図5Aは、複合脂性度SC及び乾燥度SDをそれぞれ、先に「相関係数Rの計算」のところで述べた方法により最大値と最小値の間を10等分して1~10の十段階で表したとき、肌タイプ識別平面上の10×10のマス目のそれぞれについて、自らの肌タイプを「敏感肌」であると答えた者の割合を示すヒートマップ図であり、図5Bは「オイリー肌」、図5Cは「ドライ肌」、図5Dは「ふつう肌」、図5Eは「ドライでオイリーな混合肌」であると、それぞれ答えた者の割合を示すヒートマップ図である。図5Fは、各マス目に属する被検者の数を示すヒートマップ図である。なお、図5A図5Fにおいては、角度tを45°として計算を行った。
図5Aより、複合脂性度SCが大きいほど、また、乾燥度SDが大きいほど、「敏感肌」と自覚している者の割合が高い傾向があることがわかる。図5Bより、複合脂性度SCが大きいほど「オイリー肌」と自覚している者の割合が高い傾向があることがわかる。また、乾燥度SDが小さいほど、「オイリー肌」と自覚している者の割合がやや高い傾向がある。図5Cより、乾燥度SDが大きいほど、また、複合脂性度SCが小さいほど、「乾燥肌」と自覚している者の割合が高い傾向があることがわかる。図5Dより、乾燥度SDが小さいほど、また、複合脂性度SCが小さいほど、「ふつう肌」と自覚している者の割合が高い傾向があることがわかる。図5Eより、複合脂性度SCが大きいほど「ドライでオイリーな混合肌」と自覚している者の割合が高い傾向があることがわかる。また、乾燥度SDが大きいほど「ドライでオイリーな混合肌」と自覚している者の割合がやや高い傾向がある。
これらの図から、乾燥度SDと集約量である複合脂性度SCは、被検者の肌タイプ自覚を統計的によく説明していることがわかる。本実施形態では、XY座標軸を備えた肌タイプ識別平面における点(SC,SD)の位置を10×10の碁盤のマス目状に配置されたマス目の1つで表して、顧客の肌タイプを視覚的に表現するから、顧客と販売者等がともに短時間で顧客の肌タイプの情報を把握して共有することができる。また、顧客及び/又は販売者等は、顧客の肌タイプ自覚を参考にしつつも、肌タイプ識別平面上の点(SC,SD)の位置により顧客の肌タイプをより詳細かつ的確に把握して、美容商品の購入や推奨の参考にすることができる。
【0078】
<2-2.肌タイプ識別平面における確率の分布を推定する美容判定システム>
(敏感肌自覚のある者の割合の2次元分布)
基礎データは、既述の通り、敏感肌自覚有無設問に対する各被検者の2択の回答の値を含んでいる。上記基礎データに含まれる各被検者は、複合脂性度SCを第1軸(X軸)にとり、乾燥度SDを第2軸(Y軸)にとった肌タイプ識別平面上の1点に配置することができる。肌タイプ識別平面上の位置により、問診を受けた顧客が敏感肌自覚有無設問にYESと答える確率は異なると考えられる。その確率を後述する多項式ロジスティック回帰(正則化あり)の手法により推定して等高線図で示したのが図6-1である。なお、以下では、複合脂性度SC及び乾燥度SDの各々を、最大値を1に、かつ、最小値を0に変換する線形変換により0以上1以下の範囲の値に規格化して考察する。図6-1には、等高線に加えて100個の点がプロットされている。これらの点は、被検者を基礎データから無作為に100人抽出して、敏感肌自覚有無設問にYESと答えた者を「〇」マークで、
そうでない者を「+」マークでプロットしたものである。また、図6-1~図6-7においては、複合脂性度SCの定義式(式1)に登場する角度tは35°とした。この角度tは、後述するように、敏感肌自覚に係る図7に示す相関係数を最大にする角度である。
図6-1から読み取れるように、敏感肌自覚者は当該図の上側ゾーンに集約される。複合脂性度SCが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、敏感肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、規格化された乾燥度SDが0.5以上の領域、又は、規格化された複合脂性度が0.8以下の領域では、規格化された複合脂性度SCが増えるよりも、規格化された乾燥度SDが増える方が、敏感肌自覚者の割合の増加が大きい傾向がある。敏感肌は基本的にドライ傾向で誘発されるが、ドライかつオイリー傾向でも誘発される場合があると言える。前者は従来より知られていたが、後者は新知見である。
【0079】
(オイリー肌自覚のある者の割合の2次元分布)
図6-2は、同様にして推定した、オイリー肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。オイリー肌自覚者は当該図の右下ゾーンに集約される。規格化された複合脂性度SCが0.8未満の領域では、複合脂性度が大きいほど、又、乾燥度が小さいほど、オイリー肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、規格化された複合脂性度SCが0.8以上の領域では、乾燥度SDが小さいほど、同オイリー肌自覚者の割合は大きい傾向がある。
【0080】
(ドライ肌自覚のある者の割合の2次元分布)
図6-3は、同様にして推定した、ドライ肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。ドライ肌自覚者は当該図の左上ゾーンに集約される。ドライ肌自覚者の割合には、規格化された乾燥度SDが大きく影響している。乾燥度SDが大きいほど、又、複合脂性度SCがが小さいほど、概ね、ドライ肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、規格化された乾燥度SDが約0.8以上と1に近い場合には、複合脂性度SCが増えるほど、ドライ肌自覚者の割合が減る傾向が見られる。
【0081】
(ふつう肌自覚のある者の割合の2次元分布)
図6-4は、同様にして推定した、ふつう肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。ふつう肌自覚者は当該図の左下ゾーンに集約される。乾燥度SDが小さいほど、又、複合脂性度SCが小さいほど、概ね、ふつう肌自覚者の割合は大きくなる傾向がある。
【0082】
(混合肌自覚のある者の割合の2次元分布)
図6-5は、同様にして推定した、ドライでオイリーな混合肌自覚者の割合の分布を示す等高線図である。規格化された複合脂性度SCが約0.75で、かつ、規格化された乾燥度SDが約0.70の場合に、混合肌自覚者の割合は最大値をとり、SC又はSDが上記の最大値をとる値から平面上の距離の意味で離れると、混合肌自覚者の割合は概ね単調に減少する傾向がある。
【0083】
(食不規則・食不健康自覚のある者の割合の2次元分布)
ある実施形態においては、後述するように、基礎データは、食生活についての複数の設問を含んでおり、これらの設問に対する被検者の回答を因子分析することにより、各被検者の、食不規則・食不健康に係る因子の得点SFが計算できる。当該得点SFが、平均値以上である場合に、その被検者は食不規則・食不健康自覚があるものとみなし、そうでない場合には食不規則・食不健康自覚がないものとみなす。図6-6は、図6-1と同様にして推定した、食不規則・食不健康自覚者の割合の分布を示す等高線図である。複合脂性度SCが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、食不規則・食不健康自覚者の割合は大きくなる傾向がある。また、規格化された複合脂性度SCの増加と、規格化された乾燥度SDの増加は、いずれも、食不規則・食不健康自覚者の割合の増加に寄与するが、前者(規格された複合脂性度SCの増加)の方が、後者(規格化された乾燥度SDの増加)よ
りもやや大きく寄与する。本形態の肌タイプ判定手段は、顧客が食不規則・食不健康に係る問題を有するか否かを判定するための簡易スクリーニングツールとして用いることができる。
【0084】
(循環不調自覚のある者の割合の2次元分布)
ある実施形態においては、後述するように、基礎データは、体調自覚についての複数の設問を含んでおり、これらの設問に対する被検者の回答を因子分析することにより、各被検者の、循環不調に係る因子の得点SKが計算できる。当該得点SKが、平均値以上である場合に、その被検者は循環不調自覚があるものと見做し、そうでない場合には循環不調自覚がないものとみなす。図6-7は、図6-1と同様にして推定した、循環不調自覚者の割合の分布を示す等高線図である。複合脂性度SCが大きいほど、又、乾燥度SDが大きいほど、循環不調自覚者の割合は大きくなる傾向がある。規格化された複合脂性度SCの増加と、規格化された乾燥度SDの増加は、いずれも、食不規則・食不健康自覚者の割合の増加に寄与し、両者の寄与度は同程度である。本形態の肌タイプ判定手段は、顧客が循環不調に係る問題を有するか否かを判定するための簡易スクリーニングツールとして用いることができる。
【0085】
(多項式ロジスティック回帰による確率の推定・・2次元の場合)
肌タイプ識別平面(2つの座標軸としてX軸,Y軸を有するものとする。)における多項式ロジスティック回帰による確率の推定方法を、敏感肌自覚者の割合(すなわち、顧客が敏感肌自覚者である確率)の推定を例にして説明する。有効回答数をm=6069として基礎データに含まれる有効回答に係る被験者をi=1,2,・・,mで表し、第i番目の被験者の複合脂性度SC,乾燥度SDをそれぞれ上記の通り規格化した量を順にXi,Yiとし、これらをまとめて2次元数ベクトルxi=(Xi,Yi)で表す。また、第i番目の被験者が敏感肌を自覚している場合に1,そうでない場合に0の値をとる2値データをyiとする。ある顧客の問診データから計算される各因子の規格化された得点が肌タイプ識別平面において数ベクトルx=(X,Y)で表される場合に、その顧客が敏感肌を自覚している確率p(x)を推定したい。Θを推定するべきパラメータとして、求める確率を
(式8) p(x) := p(Θ,x) := g(f(Θ,x))
の形に仮定する。
ここで、f(Θ,x)は2変数X,Y、すなわち数ベクトルx=(X,Y)の6次多項式である。Θはその係数をまとめて表したものである。ここで、定数項を含めて2変数の4次多項式には係数が15個あり、2変数の6次多項式には28個の係数がある。gはシグモイド関数(別名、ロジスティック関数)である。
パラメータΘは、次のコスト関数J=J(Θ,λ)を最小にするように決定する。
(式9) J(Θ,λ) := λ×|Θ|2/m +
Σ[-yi×lоg(p(Θ,xi))
-(1-yi)×lоg(1-p(Θ,xi))]/m
ここで、lоgは自然対数、Σはiについての和(被検者についての和)、|Θ|2は6次多項式の28個の係数のうち定数項を除く27個の係数の2乗和、正の実数λはオーバーフィッティング(ハイバリアンス)を避けるために導入した正則化パラメータである。
【0086】
(正則化パラメータλ及びしきい値cの決定)
正則化パラメータλ及びしきい値cの決定方法は、3次元肌タイプ識別空間の場合と同様であるから、詳細の説明は省略する。次の表3は、Matthews相関係数を最大にする正則化パラメータλとしきい値cを示している。表3には、決定されたλとcの値における、学習用データと検証用データを合わせた基礎データ全体での予測の正解率も付記した。なお、ここでは、2値分類予測の精度指標としてMatthews相関係数を用いたが、f1スコアなど公知の他の精度指標を用いてもよい。
【0087】
【表3】
【0088】
表3と表2を比べると分かるように、集約量である複合脂性度SCを含む2変数を用いる肌タイプ識別平面上での2次元解析(表3)は、3変数を用いる肌タイプ識別空間上での3次元解析(表2)とほぼ遜色のない正解率で、各2値データに係る確率の分布を推定できている。ただし、オイリー肌自覚の有無とふつう肌自覚の有無については、若干ではあるが正解率の低下が見られる。これは、皮脂過剰及び毛穴不満に係る肌タイプ自覚を正確に識別するためには、2変数よりも3変数により解析を行うことが好ましいことを意味している。
【0089】
(肌タイプ識別平面上での解析が任意の2値データにも適用可能であること)
上では、敏感肌自覚の有無を例にして、多項式ロジスティック回帰の手法による、肌タイプ識別平面における確率の推定方法を説明したが、この確率の推定方法は、既述の肌タイプ識別空間における確率の推定方法と同様に、各被検者(i)に係る任意の2値データyiについて適用できる。すなわち、本発明の基礎データは、各被検者が、肌タイプに係る所定の属性、美容に係る所定の属性、食生活に係る所定の属性、又は、体調に係る所定の属性に該当するか否かを表す2値データを含むことができ、本発明のコンピュータ制御プログラムが具える肌タイプ判定手段は、顧客の問診データから計算される当該顧客の肌タイプ識別平面上の位置に応じて、当該顧客が前記2値データに係る所定の属性に該当する確率を、多項式ロジスティック回帰の手法により推定する手段を有することができる。なお、6次多項式に替えて、4次多項式や8次多項式、10次多項式を用いてもよい。また、多項式ロジスティック回帰の手法に替えて、出力層がシグモイドニューロンで構成された多層ニューラルネットワークや、出力層としてシグモイドニューロンを付加したサポートベクトルマシン等の、他の非線形の統計的推定手法を上記確率を推定するために用いることもできる。
【0090】
本発明の美容判定システムの本実施形態においては、複合脂性度SC及び乾燥度SDを用いて、XY座標軸を具えた肌タイプ識別平面における点(SC,SD)の位置により顧客の肌タイプをより細かく的確に判定するから、顧客の敏感肌自覚の有無に係る肌タイプの内容をより詳しく明らかにして、より適切な美容商品や美容サービスの提供、及び、食生活や体調に係る助言の提供に役立てることができる。
【0091】
<3.肌質得点SQを用いた美容判定システム>
(肌質得点SQと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数R)
複合脂性度SC、乾燥度SD及び0°<s<90°なる角度sを用いて、式2により肌質得点SQを計算することができる。肌質得点SQは、2つの量SCとSDを集約して表した量である。ここで、式1に示すように、複合脂性度SCは0°<t<90°なる角度
tに依存しているから、肌質得点SQは、被検者又は顧客の、設問に対する回答の値だけでなく、2つのパラメータである角度sとtにも依存している。
図15Aは、前記基礎データにおける被験者の肌質得点SQを前述の方法で1~10の10段階に離散化して、肌質得点SQと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。角度t及び角度sはいずれも45°とした。折れ線グラフは、肌質得点SQが各区間に属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、肌質得点SQが10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは0.982(即ち、0.9643の平方根)と求められた。肌質得点SQが大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が大きく、肌質得点SQが敏感肌自覚の有無と強い相関を有することがわかる。回帰直線によれば、肌質得点SQが最も小さい区間SQ01では上記割合が約0%であるのに対して、肌質得点SQが最も大きい区間SQ10では上記割合が約59%である。つまり、やや誇張した言い方をするならば、顧客の肌質得点SQが大きいことと、当該顧客が敏感肌自覚をもつことは、ほぼ同義である。
【0092】
(角度t,sと相関係数Rの関係)
図7は、肌質得点SQ及び複合脂性度SCの定義式に登場する2つのパラメータである角度t及び角度sを、45°とは異なる角度を含む様々な角度に設定した場合の、肌質得点SQと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを示す表図である。相関係数Rは、(t,s)=(35°,40°)において、最大値R=0.996をとる。相関係数Rが0.94以上を1つの条件とすれば、25°≦t≦50°かつ25°≦s≦75°であれば、その条件は満たされる。相関係数Rが0.98以上を別の1つの条件とすれば、20°≦t≦40°かつ40°≦s≦60°であれば、その条件は満たされる。上記相関係数Rが1に近い値となるように角度t及び角度sが設定される場合には、肌質得点SQは、敏感肌自覚の有無と極めて強い相関をもつ量であると言える。
【0093】
<4.食生活と敏感肌自覚の関係>
(食生活基礎データの因子分析)
前記基礎データに含まれる被検者のうち、敏感肌自覚有無設問の対象とした6069人について、食生活について更に設問を行い、回答(0又は1)を記録した。設問は、図8の表図に示すn01~n25の25個の2択の設問である。これらの設問の回答は食生活基礎データを構成する。肌診断と同様にして、直交モデルの因子分析法により、8つの因子を抽出した。因子1はヘルシー意識、因子2(以下、F2因子と呼ぶ。)はノーヘルシー(過食傾向)、因子3(以下、F1因子と呼ぶ。)は不規則な食生活、因子4は生活習慣病の予防、因子5はサプリ志向、因子6は手軽さ志向、因子7は低加工度(少調理)、因子8はメニュー(三食・美食、少デザート・少間食)に係る因子と解釈できる。因子荷重係数は省略する。図9の表図に、回帰法で求めた因子得点係数を示す。
【0094】
(不規則な食生活と敏感肌自覚の関係)
図15Bは、前記基礎データにおける被験者の、不規則な食生活に係るF1因子の得点SF1を前述の方法で1~10の10段階に離散化して、因子得点SF1と敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。折れ線グラフは、因子得点SF1が各区間に属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、因子得点SF1が10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは0.847(即ち、0.7208の平方根)と求められた。不規則な食生活に係るF1因子の得点SF1が、敏感肌自覚の有無とやや強い相関を有することがわかる。因子得点SF1が大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が大きい。回帰直線によれば、因子得点SF1が最も小さい区間SF1_01では上記割合が約19%であ
るのに対して、因子得点SF1が最も大きい区間SF1_10では上記割合が約36%である。
【0095】
(不健康な食生活と敏感肌自覚の関係)
図15Cは、前記基礎データにおける被験者の、ノーヘルシー(過食傾向)すなわち不健康な食生活に係るF2因子の得点SF2を前述の方法で1~10の10段階に離散化して、因子得点SF2と敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。折れ線グラフは、因子得点SF2が各区間に属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、因子得点SF2が10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは0.856(即ち、0.7327の平方根)と求められた。不規則な食生活に係るF2因子の得点SF2が、敏感肌自覚の有無とやや強い相関を有することがわかる。因子得点SF2が大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が大きい。回帰直線によれば、因子得点SF2が最も小さい区間SF2_01では上記割合が約18%であるのに対して、因子得点SF2が最も大きい区間SF2_10では上記割合が約33%である。
【0096】
(複合食因子の得点SFと敏感肌自覚の関係)
因子得点SF1、因子得点SF2及び0°<u<90°なる角度uを用いて、式3により複合食因子の得点SFを計算することができる。得点SFは、2つの量SF1とSF2を集約して表した量である。式3からわかるように、得点SFは、被検者又は顧客の、設問に対する回答の値だけでなく、パラメータである角度uにも依存している。
図15Dは、前記基礎データにおける被験者の複合食因子の得点SFを前述の方法で1~10の10段階に離散化して、得点SFと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。角度uは45°とした。折れ線グラフは、得点SFが各区間に属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、得点SFが10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは0.973(即ち、0.9467の平方根)と求められた。得点SFが大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が大きく、得点SFが敏感肌自覚の有無と強い相関を有することがわかる。回帰直線によれば、得点SFが最も小さい区間SF01では上記割合が約19%であるのに対して、得点SFが最も大きい区間SF10では上記割合が約40%である。
【0097】
(角度uと相関係数Rの関係)
次に示す表4は、複合食因子の得点SFを定義する式3に登場するパラメータである角度uを、45°とは異なる角度を含む5°刻みの様々な角度に設定した場合の、得点SFと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを示している。
【0098】
【表4】
【0099】
相関係数Rは、u=35°において、最大値R=0.988をとる。相関係数Rが0.
96以上を1つの条件とすれば、u=5°,15°,20°,30°,35°,40°,45°,55°又は60°であれば、その条件は満たされる。相関係数Rが0.98以上を別の1つの条件とすれば、u=20°,30°、35°又は40°であれば、その条件は満たされる。角度uが5°で割り切れない場合には、例えば、上表の5°おきの相関係数Rの値を線形補間することにより、角度uが条件を満たすか否かを判定できる。上記の相関係数Rが1に近い値をとるように角度uが設定される場合には、複合食因子の得点SFは、敏感肌自覚の有無と強い相関をもつ量であると言える。
【0100】
<5.体調と敏感肌自覚の関係>
(健康基礎データの因子分析)
前記基礎データに含まれる被検者のうち、敏感肌自覚有無設問の対象とした6069人について、体調自覚について更に設問を行い、回答(0又は1)を記録した。設問は、図10の表図に示すh01~h25の30個の2択の設問である。これらの設問の回答は健康基礎データを構成する。肌診断と同様にして、直交モデルを用いた因子分析法により、14個の因子を抽出した。
因子1(以下、MEM因子と呼ぶ。)はメンタルの状態に関係する因子と解釈できる。因子2(以下、KT因子と呼ぶ。)は活動性の高さ、因子3(以下、CH因子と呼ぶ。)は調子の好調・亢進、因子4(以下、EYE因子と呼ぶ。)は目の疲れ、因子5(以下、A因子と呼ぶ。)は更年期年齢、因子6(以下、T因子と呼ぶ。)は更年期特有、因子7(以下、GE因子と呼ぶ。)は原因の不明瞭・曖昧さ、因子8(以下、KK因子と呼ぶ。)は期間の非連続・反復、因子9(以下、SM因子と呼ぶ。)は睡眠、因子10(以下、HR因子と呼ぶ。)は疲労、因子11(以下、AL因子と呼ぶ。)はアレルギー、因子12(以下、IT因子と呼ぶ。)は痛み、因子13(以下、NE因子と呼ぶ。)は粘膜、因子14(以下、KE因子と呼ぶ。)は血液やリンパ液等の循環不調にそれぞれ関係する因子であると解釈できる。推定された因子荷重係数は省略する。図11の表図に、回帰法で求めた因子得点係数を示す。
なお、上記の因子分析においては、更年期にありがちな症状に係る2つの因子であるA因子とT因子が抽出された。A因子は、被検者の年齢に関係して現れる更年期特有の体調に対応する因子であり、T因子は、被検者の年齢に無関係に現れる更年期特有の体調に対応する因子であると解釈できる。いわゆる若年性更年期症状には、主にT因子が関係している。
【0101】
(更年期年齢因子の得点と敏感肌自覚)
図15Eは、前記基礎データにおける被験者の、A因子(更年期年齢因子)に係る因子得点SAを前述の方法で1~10の10段階に離散化して、因子得点SAと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。折れ線グラフは、因子得点SAが各区間に属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、因子得点SAが10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは-0.511(即ち、0.2613の平方根)と求められた。A因子(更年期年齢因子)の得点SAが、敏感肌自覚の有無と多少の相関を有することがわかる。因子得点SAが大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が小さい。回帰直線によれば、因子得点SAが最も小さい区間SA01では上記割合が約27%であるのに対して、因子得点SAが最も大きい区間SA10では上記割合が約21%である。
【0102】
(更年期特有因子の得点と敏感肌自覚)
図15Fは、前記基礎データにおける被験者の、T因子(被験者の年齢に無関係に表れる更年期特有の体調因子)に係る因子得点STを前述の方法で1~10の10段階に離散化して、因子得点STと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。折れ線グラフは、因子得点STが各区間に属する被検者のう
ち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、因子得点STが10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは0.886(即ち、0.7848の平方根)と求められた。T因子の得点STが、敏感肌自覚の有無とやや強い相関を有することがわかる。因子得点STが大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が大きい。回帰直線によれば、因子得点STが最も小さい区間ST01では上記割合が約17%であるのに対して、因子得点STが最も大きい区間ST10では上記割合が約36%である。
【0103】
(循環因子の得点と敏感肌自覚)
図15Gは、前記基礎データにおける被験者の、循環因子(血液やリンパ液等の循環不調に関係する因子)に係る因子得点SKを前述の方法で1~10の10段階に離散化して、因子得点SKと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。折れ線グラフは、因子得点SKが各区間に属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、因子得点SKが10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは0.967(即ち、0.9359の平方根)と求められた。因子の得点SKが、敏感肌自覚の有無と強い相関を有することがわかる。因子得点SKが大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が大きい。回帰直線によれば、因子得点SKが最も小さい区間SK01では上記割合が約15%であるのに対して、因子得点STが最も大きい区間SK10では上記割合が約47%である。
【0104】
(アレルギーと敏感肌自覚)
図15Hは、前記基礎データにおける被験者の、アレルギーに関係したAL因子に係る因子得点SALを前述の方法で1~10の10段階に離散化して、因子得点SALと敏感肌自覚有無設問の回答の分布から計算される相関係数Rを計算した様子を示す図である。折れ線グラフは、因子得点SALが各区間に属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の割合を示し、棒グラフは、因子得点SALが10個の区間のそれぞれに属する被検者のうち、敏感肌を自覚している被検者の人数を示し、直線は、前述の方法で求めた回帰直線を示す。相関係数Rは0.858(即ち、0.7357の平方根)と求められた。因子の得点SALが、敏感肌自覚の有無とやや強い相関を有することがわかる。因子得点SALが大きいほど、敏感肌を自覚する被検者の割合が大きい。回帰直線によれば、因子得点SALが最も小さい区間SAL01では上記割合が約13%であるのに対して、因子得点STが最も大きい区間SAL10では上記割合が約50%である。
【0105】
<6.肌質得点SQと食生活又は体調自覚との関係>
式2が示すように、肌質得点SQは、複合脂性度と乾燥度の各々に正の重みを掛けて足し合わせた集約量である。図6-6及び図6-7を見ると、肌質得点SQと、食生活又は体調自覚に係る種々の因子得点との間に強い相関関係があることが推測される。次の表5は、肌質得点SQと、食生活又は体調自覚に係る種々の因子得点の統計的関係を示している。ここで、式1及び式2における角度t,sは、t=s=45°として計算した。
【0106】
【表5】
【0107】
まず、表5における最初のテーマ「肌質得点と食不規則」について説明する。基礎データに含まれる被検者の食不規則因子の得点SF1が平均値以上であるか否かに応じてSF1を、1又は0に2値化した値(2値データ)をbSF1で表す。敏感肌自覚有無設問の回答の代わりに2値化した食不規則因子の得点bSF1を用いることにより、図15Aと同様なグラフ図を描き、相関係数を計算することができる。肌質得点SQと2値データbSF1の分布から計算される相関係数Rは0.961であって1に近い大きな値である。また、回帰直線に基づいて考えた場合、肌質得点SQの最大値と最小値の間を10分割してなる10個の区間のうち、肌質得点SQの値が最も小さい第1区間で2値データbSF1が1の値をとる被検者の割合は20.4%であるのに対して、肌質得点SQの値が最も大きい第10区間で2値データbSF1が1の値をとる被検者の割合は54.9%であり、第1区間の約2.5倍となっている。肌質得点SQと2値化した食不規則因子の得点bSF1の間には上記の意味で強い相関関係がある。
【0108】
表5における残りのテーマについても同様であって、肌質得点SQと2値化した食不健康因子の得点bSF2、肌質得点SQと2値化した複合食因子の得点bSF(ここでは例として角度uは45°として計算)、肌質得点SQと2値化した更年期特有因子の得点bST、肌質得点SQと2値化した循環因子の得点bSK、及び、肌質得点SQと2値化したアレルギー因子の得点bSALの間には、それぞれ強い統計的相関がある。ただし、肌質得点SQと2値化した更年期年齢因子の得点bSAの間の統計的相関だけは小さい。本発明の美容判定システムにおける美容判定プログラムは、問診データから計算される顧客の肌質得点SQが上記の10区間のいずれの区間に属するのか、及び、当該区間において各種の2値データが1の値をとる被検者の割合または当該割合を上記回帰直線により推定した値に基づいて、当該顧客の食生活又は体調に係る助言を出力装置に出力する手段を具えることができる。
【0109】
<7.美容判定システムの構成>
<7-1.独立システム>
図12A及び図12Bは、独立したコンピュータで構成された本発明の一実施形態におけるシステムの構成を示す構成図である。本実施形態の美容判定システムは、パソコン等の独立したコンピュータ10と、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ等で構成される入力装置20と、ディスプレイ、プリンタ等で構成される出力装置40と、CPUのレジスタ、RAMやROM等のメモリなどの内部記憶手段31、及び/又は、ハードディスクドライブ(HDD)若しくはソリッドステートドライブ(SSD)若しくはUSBメモリやSDカード等のリムーバブル記憶装置若しくはCD-R若しくはDVD等の外部記憶手段(記憶媒体)32により構成されるコンピュータ読取可能な記憶手段30と、
で構成される。本美容判定システムは、顧客が操作してもよく、顧客に問診しながら美容用品店等の美容アドバイザが操作しても良い。入力装置20は、各顧客の問診データを入力するために用いられる。ここで各顧客の問診データは、美容に関する設問の回答、美容商品の利用有無、食生活に関する設問の回答、体調に関する設問の回答、年齢その他の情報などを含むことができる。コンピュータ10は、記憶手段30に記憶されたコンピュータ制御プログラム50を実行して、記憶手段30に格納された分析済パラメータ33と問診データに基づいて当該顧客の美容判定を行い、判定結果を出力装置40に出力する。分析済パラメータ33はあらかじめ、前記基礎データを因子分析法を用いて分析することにより求められており、当該分析はコンピュータ10が行ってもよく、或いは、別のコンピュータが行ってもよい。後者の場合、別のコンピュータによる分析で求められた分析済パラメータ33は、外部記憶手段(記憶媒体)32を介して、或いはネットワークを介して、コンピュータ10により読み取り可能となる。上記判定結果は、肌タイプ等の美容判定の結果に加えて、推奨すべき美容商品や、食生活又は健康に関する助言等を含むことができる。
【0110】
(コンピュータの基本構成)
図12Bは、コンピュータ10が備えることが好ましい基本構成11(基本構成A)を示している。基本構成Aは、顧客の問診データ等を入力するための入力装置20と、基礎データ、分析済パラメータ33及びコンピュータ制御プログラム50を記憶し、問診データを一時的に記憶するためのコンピュータ読取可能な記憶手段30と、美容判定等の判定結果を出力するための出力装置40と、からなる。コンピュータ10は、コンピュータ制御プログラム50を実行することにより、美容等に係る因子得点の計算や美容判定等の判定、及び判定結果の出力等を行う。記憶手段30は、内部記憶手段31及び/又は外部記憶手段32からなる。内部記憶手段31は、例えば、CPUのレジスタ、RAMやROM等のメモリ等である。外部記憶手段(記憶媒体)32は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)若しくはソリッドステートドライブ(SSD)若しくはUSBメモリやSDカード等のリムーバブル記憶装置若しくはCD-R若しくはDVD等である。なお、分析済パラメータ33とは、コンピュータ制御プログラムに係るパラメータのことであり、美容判定を行う上で必要となる、生の問診データや生の基礎データ以外の情報、例えば、基礎データにおける設問に対する回答の値の平均や標準偏差などの標準化パラメータ、因子分析法による解析で見出された因子荷重や因子得点係数、各分位点の因子の得点、分類や推奨判別に用いるしきい値、推定に用いる多項式の係数や正則化パラメータ、ニューラルネットワークにおける結合の重み等を意味する。
【0111】
(コンピュータ制御プログラム)
図13は、本発明の一実施形態におけるコンピュータ制御プログラム50の構成を示す構成図である。コンピュータ制御プログラム50は、美容判定プログラム60、食生活分析プログラム70、体調分析プログラム80および結果出力プログラム90を含む。美容判定プログラム60は、記憶手段30に格納された分析済パラメータ33と顧客の問診データに基づいて当該顧客の美容判定を行うための肌タイプ判定手段(サブプログラム)61を有する。食生活分析プログラム70は、記憶手段30に格納された食生活に係る分析済パラメータ33と顧客の問診データに基づいて当該顧客の食生活判定を行うための食生活判定手段(サブプログラム)71を有する。体調分析プログラム80は、記憶手段30に格納された体調自覚に係る分析済パラメータ33と顧客の問診データに基づいて当該顧客の体調判定を行うための体調判定手段(サブプログラム)81を有する。結果出力プログラム90は、顧客の肌タイプ判定の結果、食生活判定の結果、及び/又は体調判定の結果を出力装置40に出力するための判定結果出力手段91を有する。
【0112】
<7-2.サーバで美容判定等の判定を行うシステム>
図14Aは、本発明の別の一実施形態における、システム構成を示す構成図である。本
実施形態においては原則として、美容判定等の判定はサーバ10aで行い、入力と出力は顧客に近い端末10bで行う。本実施形態に係る美容判定システムは、イントラネット、インターネット等の有線又は無線のネットワーク12を介して双方向に通信可能なサーバ10aと端末10bとを含む。端末10bは、パソコン、スマートフォン、タブレット等のコンピュータである。端末10bには、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ等で構成される入力装置20bと、ディスプレイ、プリンタ等で構成される出力装置40bと、が接続されている。サーバ10aは、パソコン、サーバマシン等のコンピュータであり、前記基本構成Aを備える。
【0113】
端末10bは、顧客が操作してもよく、顧客に問診しながら美容用品店等の美容アドバイザが操作しても良い。端末10bはその記憶手段に、その実行により、入力装置20bを用いて顧客の問診データを入力するための問診データ入力手段(サブプログラム)51と、入力された問診データをネットワーク12を介してサーバ10aに向けて送信するための問診データ送信手段(サブプログラム)52と、を記憶している。サーバ10aはその記憶手段に、その実行により、端末10bの問診データ送信手段52により送信された顧客の問診データを受信するための問診データ受信手段(サブプログラム)54を記憶している。サーバ10aは、コンピュータ制御プログラム50を実行して、問診データ受信手段54によって受信した問診データと、その記憶手段に記憶された分析済パラメータに基づいて、当該顧客の美容判定等の判定を行う。サーバ10aの記憶手段は、その実行により、美容判定等の判定結果を端末10bに向けて送信するための判定結果送信手段(サブプログラム)55を記憶している。端末10bの記憶手段は、その実行により、サーバ10aの判定結果送信手段55により送信された顧客の美容判定等の判定結果を受信するための判定結果受信手段(サブプログラム)53と、受信された当該美容判定等の判定結果を出力装置40bに出力するための判定結果出力手段(サブプログラム)91bを記憶している。
【0114】
本実施形態においては、サーバ10aは、コンピュータ制御プログラム50の実行により、問診データ受信手段54が受信する顧客の問診データをサーバ10aの記憶手段30に保存し、保存された問診データの件数などが所定の基準を満たしたときに、それらの問診データの全部又は一部を基礎データに追加して、更新された基礎データを記憶手段30に保存し、当該基礎データに基づいて因子分析等の分析を行って、分析済パラメータを更新し、更新された分析済パラメータ33を、記憶手段30に保存するように構成してもよい。
【0115】
<7-3.端末で美容判定等の判定を行うシステム>
図14Bは、本発明の更に別の一実施形態における、美容判定システムの構成を示す構成図である。一般に因子分析には高負荷の計算が必要となるが、モデルの分析済パラメータ33が既知であれば、因子得点の計算や肌タイプの判別の演算そのものは一般に軽負荷であって、モバイル端末等の端末でも瞬時に行うことができる。そこで、因子得点の計算や肌タイプの判別等の演算を端末10bで行う構成が、本実施形態である。
【0116】
本実施形態の美容判定システムにおいては原則として、問診データの入力と、美容判定等の判定結果の出力に加えて、美容判定等の判定に必要な、因子得点の計算や肌タイプの判別等の演算は端末10bが行う。本実施形態における端末10bは、前記基本構成11b(基本構成A)と、入力装置20bと、出力装置40bを備える。端末10bは更に、その実行により、入力装置20bを用いて顧客の問診データを入力して、その記憶手段30に記憶するための問診データ入力手段(サブプログラム)51と、問診データ入力手段51により入力されて記憶手段30に記憶された問診データをネットワーク12を介してサーバ10aに向けて送信するための問診データ送信手段(サブプログラム)52を、記憶手段30に記憶している。サーバ10aは、前記基本構成11aを備える。サーバ10
aは、その実行により、問診データ送信手段52により送信された顧客の問診データを受信するための問診データ受信手段(サブプログラム)54を、サーバ10aの記憶手段に記憶している。サーバ10aは、基礎データを因子分析法等の方法で分析することにより得られ、その記憶手段に記憶された分析済パラメータ33を、その実行により、ネットワーク12を介して端末10bに向けて送信するための分析済パラメータ送信手段(サブプログラム)57を、その記憶手段に記憶している。端末10bは、その実行により、分析済パラメータ送信手段57により送信された分析済パラメータ33を受信して記憶手段30に記憶するための分析済パラメータ受信手段(サブプログラム)56を、記憶手段30に記憶している。端末10bは、コンピュータ制御プログラム50を実行して、入力された顧客の問診データと、分析済パラメータ受信手段56により受信された分析済パラメータ33に基づいて、当該顧客の美容判定等の判定を行う。端末10bの記憶手段は、当該顧客の美容判定等の判定結果を出力装置40bに出力するための判定結果出力手段(サブプログラム)91bを記憶している。
【0117】
本実施形態においても、サーバ10aは、コンピュータ制御プログラム50の実行により、問診データ受信手段54が受信する顧客の問診データをサーバ10aの記憶手段に保存し、保存された問診データの件数などが所定の基準を満たしたときに、それらの問診データの全部又は一部を基礎データに追加して、更新された基礎データを当該記憶手段に保存し、当該基礎データに基づいて因子分析等の分析を行って、分析済パラメータを更新し、更新された分析済パラメータ33を、当該記憶手段に保存するように構成してもよい。
【0118】
本発明は上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、ビッグデータを用いた因子分析の手法を用いて、脂性や乾燥に係る肌タイプと、敏感肌自覚との関係を明らかにすることにより、問診データに基づいて、顧客の肌タイプを客観的かつ的確に判定可能な、美容判定システム及び官能評価システムを提供することができる。本発明によれば、美容室、化粧品販売店、クリニック、ドラッグストア、エステチックサロン等のオンライン店舗若しくはリアル店舗における化粧品や美容サービスの推奨、美容商品の官能評価等を従来より的確に行うことができる。本発明は幅広い産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0120】
10 コンピュータ 10a サーバ
10b 端末 11 基本構成A
12 ネットワーク 20 入力装置
30 記憶手段 31 内部記憶手段
32 外部記憶手段(記憶媒体) 33 分析済パラメータ
40 出力装置 50 コンピュータ制御プログラム51 問診データ入力手段 52 問診データ送信手段
53 判定結果受信手段 54 問診データ受信手段
55 判定結果送信手段 56 分析済パラメータ受信手段
57 分析済パラメータ送信手段 60 美容判定プログラム
61 肌タイプ判定手段 70 食生活分析プログラム
71 食生活判定手段 80 体調分析プログラム
81 体調判定手段 90 結果出力プログラム
91 判定結果出力手段
図1
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