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特開2024-47385薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047385
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/764 20220101AFI20240329BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240329BHJP
   G06V 10/98 20220101ALI20240329BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G06V10/764
G06T7/00 350B
G06V10/98
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152972
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】羽田 真司
【テーマコード(参考)】
4C047
5L096
【Fターム(参考)】
4C047KK30
4C047KK31
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA18
5L096CA02
5L096CA22
5L096DA02
5L096EA39
5L096FA26
5L096GA30
5L096GA51
5L096HA11
5L096JA22
(57)【要約】
【課題】薬剤が撮影された画像から薬剤の種類を識別する学習済みモデルを用い、人間が見ても納得感のある薬剤種類の候補を提示することができる薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】1つ以上のプロセッサは、識別対象薬剤が撮影された画像から識別対象薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルを用いて画像から複数の薬剤種類のそれぞれに対して識別対象薬剤の種類である確からしさを示す第1のスコアを算出し、画像から識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別し、第1の学習済みモデルが識別し得る複数種類の薬剤のそれぞれについての1つ以上の外見上の属性に関する情報を含む薬剤マスタから識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類の情報を得て、第1のスコア値と、属性に対して設定された値とを用いて第2のスコアを算出し、第2のスコア値を基に識別対象薬剤の種類の候補を提示する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のプロセッサと、
1つ以上の記憶装置と、を備え、
前記1つ以上の前記記憶装置は、
識別対象薬剤が撮影された画像から前記識別対象薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルと、
複数種類の薬剤のそれぞれについての1つ以上の外見上の属性に関する情報を含む薬剤マスタと、を記憶し、
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記画像から前記第1の学習済みモデルを用いて識別し得る複数の薬剤種類のそれぞれに対して前記識別対象薬剤の種類である確からしさを示す第1のスコア値を算出し、
前記画像から前記識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別し、
前記薬剤マスタから前記識別対象薬剤の前記属性に適合する薬剤種類の情報を得て、前記第1のスコア値と、前記属性に対して設定された値とを用いて第2のスコア値を算出し、
前記第2のスコア値を基に前記識別対象薬剤の種類の候補を提示する、
薬剤識別装置。
【請求項2】
前記1つ以上の前記記憶装置は、
前記画像から前記識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別するように学習された第2の学習済みモデルを記憶し、
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記第2の学習済みモデルを用いて、前記識別対象薬剤が1つ以上の前記外見上の属性に対応するカテゴリに該当するか否かを識別する、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項3】
前記属性に対して設定された値は、前記属性の重要度に応じた値である、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項4】
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記重要度の設定を変更する指示を受け付け、
前記受け付けた前記指示に基づき前記属性の前記重要度に応じた値を設定する、
請求項3に記載の薬剤識別装置。
【請求項5】
前記重要度に応じた値は、ユーザ毎に設定可能である、
請求項4に記載の薬剤識別装置。
【請求項6】
前記重要度に応じた値は、ユーザが望むタイミングで設定可能である、
請求項4又は5に記載の薬剤識別装置。
【請求項7】
入力装置を備え、
前記1つ以上の前記プロセッサは、前記入力装置から前記重要度の設定に関する指示の入力を受け付ける、
請求項3に記載の薬剤識別装置。
【請求項8】
前記薬剤マスタは、薬剤の形状に関する属性及び色に関する属性を含む複数の前記外見上の属性に関する情報を含み、
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記第2のスコア値の算出において前記形状に関する属性を重視するか、前記色に関する属性を重視するかを指定する指示を受け付け、
前記受け付けた前記指示に基づき、前記形状に関する属性及び前記色に関する属性の少なくとも一方の重要度を変化させる、
請求項3に記載の薬剤識別装置。
【請求項9】
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記識別対象薬剤の前記属性に適合する薬剤種類に対する前記第1のスコア値に、前記属性の重要度に応じた値を加算することにより、前記第2のスコア値を算出する、
請求項3に記載の薬剤識別装置。
【請求項10】
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記識別対象薬剤の前記属性に適合する薬剤種類に対する前記第1のスコア値を、前記属性に対して設定された値を用いて修正することにより前記第2のスコア値を算出する、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項11】
前記薬剤マスタは、薬剤の形状及び色の少なくとも一方に関する属性を含む複数の前記外見上の属性に関する情報を含み、
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記識別対象薬剤が前記複数の前記外見上の属性に適合するか否かを識別する、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項12】
前記1つ以上の前記プロセッサは、
前記第2のスコア値の大きさの順番に複数の前記候補が並んだ薬剤候補リストを提示する、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項13】
前記識別対象薬剤の種類の前記候補を表示するディスプレイを備える、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項14】
前記識別対象薬剤を撮影するカメラを備える、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項15】
1つ以上のプロセッサが、
識別対象薬剤が撮影された画像から前記識別対象薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルを用いて前記画像から複数の薬剤種類のそれぞれに対して前記識別対象薬剤の種類である確からしさを示す第1のスコア値を算出することと、
前記画像から前記識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別することと、
前記第1の学習済みモデルが識別し得る複数種類の薬剤のそれぞれについての1つ以上の外見上の属性に関する情報を含む薬剤マスタから前記識別対象薬剤の前記属性に適合する薬剤種類の情報を取得することと、
前記識別対象薬剤の前記属性に適合する薬剤種類の情報に基づき、前記第1のスコア値と、前記属性に対して定められた値とを用いて第2のスコア値を算出することと、
前記第2のスコア値を基に前記識別対象薬剤の種類の候補を提示することと、
を実行する薬剤識別方法。
【請求項16】
コンピュータに、
識別対象薬剤が撮影された画像から前記識別対象薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルを用いて前記画像から複数の薬剤種類のそれぞれに対して前記識別対象薬剤の種類である確からしさを示す第1のスコア値を算出する機能と、
前記画像から前記識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別する機能と、
前記第1の学習済みモデルが識別し得る複数種類の薬剤のそれぞれについての1つ以上の外見上の属性に関する情報を含む薬剤マスタから前記識別対象薬剤の前記属性に適合する薬剤種類の情報を取得する機能と、
前記識別対象薬剤の前記属性に適合する薬剤種類の情報に基づき、前記第1のスコア値と、前記属性に対して定められた値とを用いて第2のスコア値を算出する機能と、
前記第2のスコア値を基に前記識別対象薬剤の種類の候補を提示する機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムに係り、特に薬剤が撮影された画像から薬剤の種類を識別する画像認識技術及び機械学習技術に関する。
【背景技術】
【0002】
調剤監査あるいは持参薬の鑑別などの業務を効率化する技術の1つとして、薬剤が撮影された画像から薬剤の種類を識別する人工知能(Artificial Intelligence:AI)の開発が進められている。特許文献1には、服用1回分の1以上の錠剤が分包され、該錠剤が分割錠である場合を含む分包紙の反射光画像および透過光画像を撮像する撮像工程と、前記反射光画像および前記透過光画像に基づき、前記反射光画像中の前記錠剤に対応する領域である錠剤領域を切り出す切り出し工程と、前記切り出し工程において切り出された前記錠剤領域それぞれの寸法および色を前記錠剤の形状および色に関するモデル情報と照合することによって、前記錠剤をそれぞれ一意に識別する識別値を出力する第1識別工程と、前記第1識別工程において、切り出された前記錠剤領域に対し、特徴量のほぼ一致する基準データが複数存在してしまう場合又は特徴量がいずれの基準データにも一致しない場合であって、誤検知された前記識別値が出力された場合に、特徴量の類似する複数の前記錠剤である類似錠剤の画像を含む学習用データに基づく機械学習により生成された学習モデルを用いて、前記第1識別工程において誤検知された前記錠剤についての前記識別値を出力する第2識別工程とを含むことを特徴とする錠剤検知方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、薬剤に形成されたマークを抽出するように構築された学習済みモデルに、種類不明の対象薬剤を撮像した撮像画像を入力して得られる出力値に基づき、当該撮像画像に写るマークを抽出した抽出マーク画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部が生成した抽出マーク画像と、薬剤の種類毎に予め登録された登録マーク画像との照合結果に基づき、前記対象薬剤の種類を判別する判別部と、を備える、種類判別装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6742859号
【特許文献2】国際公開第2022/092130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬剤が撮影された画像の入力を受けて薬剤の種類を識別する機械学習モデル(AIモデル)である薬剤識別モデルは、薬剤の画像とその薬剤についての正解の薬剤種類とのデータ組を含む複数の学習(訓練)用のデータを用いて、深層学習などの機械学習を適用して生成される。このような薬剤識別モデルは、学習用のデータから特徴量を自動的に学習し、入力された画像に対して高精度な薬剤種類識別が可能である。
【0006】
例えば、N種類の薬剤種類を識別するように学習された薬剤識別モデルは、識別対象薬剤が撮影された画像を入力とし、学習された全N種類の薬剤種類のそれぞれに対して、識別対象薬剤の種類である確からしさ(確信度)を示すスコア値を算出する。そして、薬剤識別モデルから出力された各薬剤種類に対するスコア値の大きさの順に、つまり確からしさの高い順に、上位の薬剤種類が識別対象薬剤の種類の候補として提示される。1つの識別対象薬剤に対して、薬剤識別モデルが出力した薬剤種類毎のスコア値から上位の複数の候補が推定結果として提示され、最終的にユーザによって正しい薬剤の種類が判断され、識別対象薬剤の種類を確定させる操作が行われる。
【0007】
しかし、一般に、薬剤識別モデルが学習した特徴量は、人間の感覚と一致するものではない。このため、薬剤識別モデルが出力するスコア値を基に提示される上位候補は、必ずしも人間の類似感覚と一致しない。例えば、薬剤識別モデルによる識別結果として提示されるスコア上位の複数の候補の中には、人間の目で見れば、識別対象薬剤とは明らかに相違すると判断されるような外見的特徴が非類似の(外見上の属性が全く異なる)薬剤の候補が含まれる場合がある。そのため、薬剤識別装置から提示される薬剤種類の候補に対してユーザが違和感を覚え、薬剤識別装置の識別性能に対する信頼性に疑念を抱かれる可能性がある。
【0008】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたもので、薬剤が撮影された画像から薬剤の種類を識別する学習済みの機械学習モデルを用いつつ、人間が見ても納得感のある薬剤種類の候補を提示することができる薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様に係る薬剤識別装置は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上の記憶装置と、を備え、1つ以上の記憶装置は、識別対象薬剤が撮影された画像から識別対象薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルと、複数種類の薬剤のそれぞれについての1つ以上の外見上の属性に関する情報を含む薬剤マスタと、を記憶し、1つ以上のプロセッサは、画像から第1の学習済みモデルを用いて識別し得る複数の薬剤種類のそれぞれに対して識別対象薬剤の種類である確からしさを示す第1のスコアを算出し、画像から識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別し、薬剤マスタから識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類の情報を得て、第1のスコア値と、属性に対して設定された値とを用いて第2のスコアを算出し、第2のスコア値を基に識別対象薬剤の種類の候補を提示する。
【0010】
第1態様に係る薬剤識別装置によれば、第1の学習済みモデルによって算出された各薬剤種類の第1のスコア値から、さらに識別対象薬剤の外見上の属性を加味した第2のスコアが算出され、この第2のスコア値を基に識別対象薬剤の種類の候補が提示される。薬剤の外見上の属性は、人間が視覚によって認知可能な属性である。人間は視覚的な認知によって複数の薬剤同士が類似しているか、類似していないかという印象を持つ。第1の学習済みモデルによって算出される第1のスコア値は、必ずしも人間の類似感覚と一致しないが、第2のスコア値は、識別対象薬剤の外見上の属性が考慮されて算出されるため、人間の類似感覚に近いものとなり得る。
【0011】
第1態様によれば、識別対象薬剤について第1の学習済みモデルを用いた高精度な識別を可能にしつつ、識別対象薬剤について人間が見て納得感が得られる薬剤種類の候補を提示することが可能になる。「識別」という用語は、判別、判定、推定、推論、及び予測などの概念を含む。
【0012】
識別対象薬剤が撮影された画像から識別対象薬剤の外見上の属性を識別する処理は、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて実行されてもよいし、パターンマッチングなど機械学習以外の方法による画像処理技術を適用して実行されてもよい。
【0013】
第2態様に係る薬剤識別装置は、第1態様に係る薬剤識別装置において、1つ以上の記憶装置は、画像から識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別するように学習された第2の学習済みモデルを記憶し、1つ以上のプロセッサは、第2の学習済みモデルを用いて、識別対象薬剤が1つ以上の外見上の属性に対応するカテゴリに該当するか否かを識別する構成であってもよい。
【0014】
第3態様に係る薬剤識別装置は、第1態様又は第2態様に係る薬剤識別装置において、属性に対して設定された値は、属性の重要度に応じた値であってもよい。例えば、重要度が高いほど大きな値に設定される。
【0015】
第4態様に係る薬剤識別装置は、第3態様に係る薬剤識別装置において、1つ以上のプロセッサは、重要度の設定を変更する指示を受け付け、受け付けた指示に基づき属性の重要度に応じた値を設定する構成であってもよい。
【0016】
第5態様に係る薬剤識別装置は、第4態様に係る薬剤識別装置において、重要度に応じた値は、ユーザ毎に設定可能であってもよい。
【0017】
第6態様に係る薬剤識別装置は、第4態様又は第5態様に係る薬剤識別装置において、重要度に応じた値は、ユーザが望むタイミングで設定可能であってもよい。
【0018】
第7態様に係る薬剤識別装置は、第3態様から第6態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、入力装置を備え、1つ以上のプロセッサは、入力装置から重要度の設定に関する指示の入力を受け付ける構成であってもよい。
【0019】
第8態様に係る薬剤識別装置は、第3態様から第7態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、薬剤マスタは、薬剤の形状に関する属性及び色に関する属性を含む複数の外見上の属性に関する情報を含み、1つ以上のプロセッサは、第2のスコアの算出において形状に関する属性を重視するか、色に関する属性を重視するかを指定する指示を受け付け、受け付けた指示に基づき、形状に関する属性及び色に関する属性の少なくとも一方の重要度を変化させる構成であってもよい。
【0020】
第9態様に係る薬剤識別装置は、第3態様から第8態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、1つ以上のプロセッサは、識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類に対する第1のスコア値に、属性の重要度に応じた値を加算することにより、第2のスコアを算出する構成であってもよい。
【0021】
第10態様に係る薬剤識別装置は、第1態様から第9態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、1つ以上のプロセッサは、識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類に対する第1のスコア値を、属性に対して設定された値を用いて修正することにより第2のスコアを算出する構成であってもよい。
【0022】
第11態様に係る薬剤識別装置は、第1態様から第10態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、薬剤マスタは、薬剤の形状及び色の少なくとも一方に関する属性を含む複数の外見上の属性に関する情報を含み、1つ以上のプロセッサは、識別対象薬剤が複数の外見上の属性に適合するか否かを識別する構成であってもよい。
【0023】
第12態様に係る薬剤識別装置は、第1態様から第11態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、1つ以上のプロセッサは、第2のスコア値の大きさの順番に複数の候補が並んだ薬剤候補リストを提示する構成であってもよい。
【0024】
第13態様に係る薬剤識別装置は、第1態様から第12態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、識別対象薬剤の種類の候補を表示するディスプレイを備える構成であってもよい。
【0025】
第14態様に係る薬剤識別装置は、第1態様から第13態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置において、識別対象薬剤を撮影するカメラを備える構成であってもよい。
【0026】
本開示の第15態様に係る薬剤識別方法は、1つ以上のプロセッサが、識別対象薬剤が撮影された画像から識別対象薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルを用いて画像から複数の薬剤種類のそれぞれに対して識別対象薬剤の種類である確からしさを示す第1のスコアを算出することと、画像から識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別することと、第1の学習済みモデルが識別し得る複数種類の薬剤のそれぞれについての1つ以上の外見上の属性に関する情報を含む薬剤マスタから識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類の情報を取得することと、識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類の情報に基づき、第1のスコア値と、属性に対して定められた値とを用いて第2のスコアを算出することと、第2のスコア値を基に識別対象薬剤の種類の候補を提示することと、を実行する。
【0027】
第15態様に係る薬剤識別方法において、第2態様から第14態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置と同様の具体的態様を含む構成とすることができる。
【0028】
本開示の第16態様に係るプログラムは、コンピュータに、識別対象薬剤が撮影された画像から識別対象薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルを用いて画像から複数の薬剤種類のそれぞれに対して識別対象薬剤の種類である確からしさを示す第1のスコアを算出する機能と、画像から識別対象薬剤の1つ以上の外見上の属性を識別する機能と、第1の学習済みモデルが識別し得る複数種類の薬剤のそれぞれについての1つ以上の外見上の属性に関する情報を含む薬剤マスタから識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類の情報を取得する機能と、識別対象薬剤の属性に適合する薬剤種類の情報に基づき、第1のスコア値と、属性に対して定められた値とを用いて第2のスコアを算出する機能と、第2のスコア値を基に識別対象薬剤の種類の候補を提示する機能と、を実現させる。
【0029】
第16態様に係るプログラムにおいて、第2態様から第14態様のいずれか一態様に係る薬剤識別装置と同様の具体的態様を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、薬剤が撮影された画像から薬剤の種類を識別するように学習された第1の学習済みモデルを用いて高精度な薬剤種類識別を行い、人間が見ても納得感のある候補を提示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、スマートフォンの正面斜視図である。
図2図2は、スマートフォンの背面斜視図である。
図3図3は、スマートフォンの電気的構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る薬剤識別装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、薬剤マスタに含まれる情報と重要度の設定の例を示す図表である。
図6図6は、実施形態に係る薬剤識別装置により実行される処理の例を示す説明図である。
図7図7は、実施形態に係る薬剤識別装置が実行する薬剤識別方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0033】
〔実施形態に係る薬剤識別装置の概要〕
本開示の実施形態に係る薬剤識別装置は、薬剤が撮影された画像から薬剤の種類を識別するように学習(訓練)された学習済みの機械学習モデルである薬剤識別モデルと、薬剤を撮影した画像からその薬剤について人間が認知可能な複数の外見上の属性を識別するように学習された学習済みの機械学習モデルである属性分類モデルと、複数種類の薬剤のそれぞれについての複数の外見上の属性に関する情報を記録した薬剤マスタとを用い、識別対象薬剤の画像を薬剤識別モデルに入力することによって薬剤識別モデルから出力される複数の薬剤種類のそれぞれについてのスコア値に対して、属性分類モデルの出力を用いて薬剤マスタを参照することにより、識別対象薬剤の外見上の属性を加味してスコア値の修正を行い、修正後のスコア値を基に人間の類似感覚に近い候補を提示することを可能とする。なお、薬剤識別モデル及び属性分類モデルのそれぞれは実体的にはプログラムである。
【0034】
薬剤識別装置は、一例として携帯端末装置に搭載される。携帯端末装置は、スマートフォン、携帯電話機、PHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型コンピュータ端末、ノート型パーソナルコンピュータ端末、ウエアブル端末、及び携帯型ゲーム機のうちの少なくとも1つを含む。以下では、スマートフォンのハードウェアとソフトウェアとによって実現される薬剤識別装置を例に挙げ、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0035】
〔スマートフォンの外観〕
図1は、実施形態に係る薬剤識別装置として機能するスマートフォン10の正面斜視図である。図1に示すように、スマートフォン10は、平板状の筐体12を有する。スマートフォン10は、筐体12の正面にタッチパネルディスプレイ14、スピーカ16、マイクロフォン18、及びインカメラ20を備えている。
【0036】
タッチパネルディスプレイ14は、画像等を表示するディスプレイ部、及びディスプレイ部の前面に配置され、タッチ入力を受け付けるタッチパネル部を備える。ディスプレイ部は、例えばカラーLCD(Liquid Crystal Display)パネル又はカラー有機EL(organic electro-luminescence)パネルである。
【0037】
タッチパネル部は、例えば光透過性を有する基板本体の上に面状に設けられ、光透過性を有する位置検出用電極、及び位置検出用電極上に設けられた絶縁層を有する静電容量式タッチパネルである。タッチパネル部は、ユーザのタッチ操作に対応した2次元の位置座標情報を生成して出力する。タッチ操作は、タップ操作、ダブルタップ操作、フリック操作、スワイプ操作、ドラッグ操作、ピンチイン操作、及びピンチアウト操作を含む。
【0038】
スピーカ16は、通話時及び動画再生時に音声を出力する音声出力部である。マイクロフォン18は、通話時及び動画撮影時に音声が入力される音声入力部である。インカメラ20は、動画及び静止画を撮影する撮像装置である。
【0039】
図2は、スマートフォン10の背面斜視図である。図2に示すように、スマートフォン10は、筐体12の背面にアウトカメラ22、及びライト24を備えている。アウトカメラ22は、動画及び静止画を撮影する撮像装置である。ライト24は、アウトカメラ22で撮影を行う際に照明光を照射する光源であり、例えばLED(Light Emitting Diode)により構成される。
【0040】
さらに、図1及び図2に示すように、スマートフォン10は、筐体12の正面及び側面に、それぞれスイッチ26を備えている。スイッチ26は、ユーザからの指示を受け付ける入力部材である。スイッチ26は、指等で押下されるとオンとなり、指を離すとバネ等の復元力によってオフ状態となる押しボタン式のスイッチである。
【0041】
なお、筐体12の構成はこれに限定されず、折り畳み構造又はスライド機構を有する構成を採用してもよい。
【0042】
〔スマートフォンの電気的構成〕
スマートフォン10の主たる機能として、基地局装置と移動体通信網とを介した移動無線通信を行う無線通信機能を備える。
【0043】
図3は、スマートフォン10の電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、スマートフォン10は、前述のタッチパネルディスプレイ14、スピーカ16、マイクロフォン18、インカメラ20、アウトカメラ22、ライト24、及びスイッチ26の他、CPU(Central Processing Unit)28、無線通信部30、通話部32、メモリ34、外部入出力部40、GPS受信部42、及び電源部44を有する。
【0044】
CPU28は、メモリ34に記憶された命令を実行するプロセッサの一例である。CPU28は、メモリ34が記憶する制御プログラム及び制御データに従って動作し、スマートフォン10の各部を統括して制御する。CPU28は、無線通信部30を通じて音声通信及びデータ通信を行うために、通信系の各部を制御する移動通信制御機能と、アプリケーション処理機能を備える。
【0045】
また、CPU28は、動画、静止画、及び文字等をタッチパネルディスプレイ14に表示する画像処理機能を備える。この画像処理機能により、静止画、動画、及び文字等の情報が視覚的にユーザに伝達される。また、CPU28は、タッチパネルディスプレイ14のタッチパネル部からユーザのタッチ操作に対応した2次元の位置座標情報を取得する。さらに、CPU28は、スイッチ26からの入力信号を取得する。
【0046】
インカメラ20及びアウトカメラ22は、それぞれ不図示の撮影レンズ、絞り、撮像素子、AFE(Analog Front End)、A/D(Analog to Digital)変換器、及びレンズ駆動部等を有する。インカメラ20及びアウトカメラ22は、CPU28の指示に従って、動画及び静止画を撮影する。
【0047】
CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画を、MPEG(Moving Picture Experts Group)及びJPEG(Joint Photographic Experts Group)等の圧縮した画像データに変換してもよい。
【0048】
CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画をメモリ34に記憶させる。また、CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画を無線通信部30又は外部入出力部40を通じてスマートフォン10の外部に出力してもよい。
【0049】
さらに、CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画をタッチパネルディスプレイ14に表示する。CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画をアプリケーションソフトウェア内で利用してもよい。
【0050】
なお、CPU28は、アウトカメラ22による撮影の際に、ライト24を点灯させることで被写体に撮影補助光を照射してもよい。ライト24は、ユーザによるタッチパネルディスプレイ14のタッチ操作、又はスイッチ26の操作によって点灯及び消灯が制御されてもよい。
【0051】
無線通信部30は、CPU28の指示に従って、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の規格の移動通信網に対応した基地局装置に対し無線通信を行う。スマートフォン10は、この無線通信を使用して、音声データ及び画像データ等の各種ファイルデータ、電子メールデータ等の送受信、Web(World Wide Webの略称)データ及びストリーミングデータ等の受信を行う。
【0052】
通話部32は、スピーカ16及びマイクロフォン18が接続される。通話部32は、無線通信部30により受信された音声データを復号してスピーカ16から出力する。通話部32は、マイクロフォン18を通じて入力されたユーザの音声をCPU28が処理可能な音声データに変換してCPU28に出力する。
【0053】
メモリ34は、CPU28に実行させるための命令を記憶する。メモリ34は、スマートフォン10に内蔵される内部記憶部36、及びスマートフォン10に着脱自在な外部記憶部38により構成される。内部記憶部36及び外部記憶部38は、公知の格納媒体を用いて実現される。
【0054】
メモリ34は、CPU28の制御プログラム、制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称及び電話番号等が対応付けられたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータ、及びダウンロードしたコンテンツデータ等を記憶する。また、メモリ34は、ストリーミングデータ等を一時的に記憶してもよい。
【0055】
外部入出力部40は、スマートフォン10に連結される外部機器とのインターフェースの役割を果たす。スマートフォン10は、外部入出力部40を介して通信等により直接的又は間接的に他の外部機器に接続される。外部入出力部40は、外部機器から受信したデータをスマートフォン10の内部の各構成要素に伝達し、かつスマートフォン10の内部のデータを外部機器に送信する。
【0056】
通信等の手段は、例えばユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394、インターネット、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identification)、及び赤外線通信である。また、外部機器は、例えばヘッドセット、外部充電器、データポート、オーディオ機器、ビデオ機器、スマートフォン、PDA、パーソナルコンピュータ、及びイヤホンである。
【0057】
GPS受信部42は、GPS衛星ST1,ST2,…,STnからの測位情報に基づいて、スマートフォン10の位置を検出する。
【0058】
電源部44は、不図示の電源回路を介してスマートフォン10の各部に電力を供給する電力供給源である。電源部44は、リチウムイオン二次電池を含む。電源部44は、外部のAC電源からDC電圧を生成するAC/DC変換部を含んでもよい。
【0059】
このように構成されたスマートフォン10は、タッチパネルディスプレイ14等を用いたユーザからの指示入力により撮影モードに設定され、インカメラ20及びアウトカメラ22によって動画及び静止画を撮影することができる。
【0060】
スマートフォン10が撮影モードに設定されると、撮影スタンバイ状態となり、インカメラ20又はアウトカメラ22によって動画が撮影され、撮影された動画がライブビュー画像としてタッチパネルディスプレイ14に表示される。
【0061】
ユーザは、タッチパネルディスプレイ14に表示されるライブビュー画像を視認して、構図を決定したり、撮影したい被写体を確認したり、撮影条件を設定したりすることができる。
【0062】
スマートフォン10は、撮影スタンバイ状態においてタッチパネルディスプレイ14等を用いたユーザからの指示入力により撮影が指示されると、AF(Autofocus)及びAE(Auto Exposure)制御を行い、動画及び静止画の撮影及び記憶を行う。
【0063】
メモリ34は本開示における「記憶装置」の一例である。タッチパネルディスプレイ14は、本開示における「入力装置」及び「ディスプレイ」の一例である。インカメラ20及びアウトカメラ22のそれぞれは本開示における「カメラ」の一例である。
【0064】
〔薬剤識別装置の機能構成〕
図4は、スマートフォン10によって実現される薬剤識別装置100の機能構成を示すブロック図である。薬剤識別装置100の各機能は、CPU28がメモリ34に記憶されたプログラムを実行することで具現化される。図4に示すように、薬剤識別装置100は、画像取得部102、薬剤識別モデル104、属性分類モデル106、薬剤マスタ108、適合薬剤抽出部110、重要度設定部112、スコア修正部114、候補提示部116、及び薬剤確定部118を備える。
【0065】
画像取得部102は、識別対象薬剤が撮影された静止画である撮影画像を取得する。撮影画像は、例えばインカメラ20又はアウトカメラ22によって撮影された画像であってよい。撮影画像は、無線通信部30、外部記憶部38、又は外部入出力部40を介して他の装置から取得した画像であってもよい。撮影画像は、複数の識別対象薬剤が含まれていてよい。複数の識別対象薬剤は、同じ薬種の識別対象薬剤に限定されず、それぞれ異なる薬種の識別対象薬剤であってもよい。撮影画像は、分包袋に収納された状態の識別対象薬剤が撮影された画像であってもよい。分包袋は、全部又は一部が透明又は半透明であればよい。
【0066】
本実施形態では識別対象の1つの薬剤のみが写る画像IMを処理する態様を例に説明するが、異種の薬剤が混在している状態で複数の薬剤を一度にまとめて(1画像として)撮影した画像を処理する場合には、複数の薬剤を含む撮影画像から個々の薬剤領域を検出して、薬剤毎に薬剤領域を切り出した画像(薬剤毎の切り出し画像)をそれぞれ処理すればよい。
【0067】
撮影画像は、識別対象薬剤及びマーカが撮影された画像であってもよい。この場合、マーカは、撮影距離及び撮影視点の標準化を行う際の基準として機能する。マーカは、同一形状の複数のマーカから構成され各マーカの代表点が標準化の基準点となる方式、又は単一のマーカから構成されそのマーカに含まれる複数の特徴点が標準化の基準点となる方式が考えられる。同一形状の複数のマーカから構成される方式の場合、個々のマーカは、例えば、ArUcoマーカ、円形マーカ、又は四角形マーカなどであってよい。複数のマーカは、例えば、薬剤載置範囲の矩形領域の四隅に配置される。撮影画像は、識別対象薬剤及び基準となるグレーの色が撮影された画像であってもよい。一方、単一のマーカから構成される方式の場合、マーカは四角形やコの字の形状(矩形のうちの一辺が欠落した形状、いわゆるU-shaped)であってもよい。単一のマーカは、薬剤載置範囲の矩形領域を囲うように配置される。この場合、四角形やコの字の四隅の各点が標準化の基準点となる。
【0068】
撮影画像は、標準となる撮影距離及び撮影視点で撮影された画像であってもよい。撮影距離とは、識別対象薬剤及び撮影レンズの間の距離と撮影レンズの焦点距離とから表すことができる。また、撮影視点とは、マーカ印刷面と撮影レンズの光軸とが成す角度から表すことができる。
【0069】
画像取得部102は、不図示の画像補正部を含む。画像補正部は、撮影画像にマーカが含まれる場合に、マーカに基づいて撮影画像の撮影距離及び撮影視点の標準化を行って標準化画像を取得する。標準化画像は、撮影画像について標準化処理が施された後、四隅のマーカを頂点とする矩形の内側の領域が切り出された画像であってよい。例えば、画像補正部は、マーカによって座標を特定した四角形の4つの頂点が撮影距離及び撮影視点の標準化後に行く先の座標を指定する。画像補正部は、これら4つの頂点が、それぞれ指定した座標の位置に変換されるような透視変換行列を求める。このような透視変換行列は、4点あれば一意に定まる。例えば、OpenCV(Open Source Computer Vision Library)のgetPerspectiveTransform関数によって、4点の対応関係があれば変換行列を求めることができる。
【0070】
画像補正部は、求めた透視変換行列を用いて、元の撮影画像の全体を透視変換し、変換後の画像を取得する。このような透視変換は、OpenCVのwarpPerspective関数を用いることで実行することができる。この変換後の画像が、撮影距離及び撮影視点が標準化された標準化画像であってよい。
【0071】
また、画像補正部は、撮影画像に基準となるグレーの色の領域が含まれる場合に、基準となるグレーの色に基づいて撮影画像の色調補正を行ってもよい。
【0072】
薬剤識別モデル104は、入力された画像IMから薬剤の種類を識別する、いわゆる物体認識のタスクを行うように機械学習によって訓練された学習済みのAIモデルである。薬剤識別モデル104が識別する薬剤の種類は、例えば、YJコード(個別医薬品コード)あるいは薬剤名称などの識別情報によって特定し得る薬剤種類である。本実施形態における薬剤識別は、識別対象薬剤がどのYJコードの医薬品であるかを決定する行為として定義し得る。これは薬剤識別の定義の一例であって、例えば識別符号はYJコード以外の種類を用いて定義してもよい。
【0073】
薬剤識別モデル104は、識別対象薬剤を撮影して得られる画像IMの入力を受けて、画像IM内の識別対象薬剤の種類を識別し、学習済みのN種類の薬剤種類(クラス)に分類する多クラス分類器として機能する。すなわち、薬剤識別モデル104は、画像IMが入力されると、学習済みの全N種類の薬剤iに対して、識別対象薬剤がその薬剤iである確からしさ(確信度)を示すスコア値を算出する。「薬剤i」という表記における「i」は学習したN種類の薬剤を区別するインデックスである。薬剤識別モデル104は、識別対象薬剤が薬剤iであるかどうかを判定する指標となるスコア値を薬剤iごとに算出する。
【0074】
薬剤識別モデル104は、例えば、ニューラルネットワークを用いて構成される。画像認識に好適な機械学習モデルとして、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(Convolution Neural Network:CNN)を用いることができる。薬剤識別モデル104に入力される画像IMは、撮影画像から切り出された識別対象薬剤の領域画像であってよい。なお、薬剤識別モデル104には、画像IMに加えて、画像IMから抽出された刻印情報などが入力されてもよい。
【0075】
薬剤識別モデル104は、識別対象薬剤を片面側から(一方向から)撮影した片面の画像の入力を受けて、その識別対象薬剤の種類及びその識別対象薬剤の表裏(表側であるか、裏側であるか)まで識別できるように学習されたモデルであってもよい。薬剤識別モデル104は本開示における「第1の学習済みモデル」の一例である。
【0076】
属性分類モデル106は、画像IMの入力を受けて、画像IM内の識別対象薬剤の外見上の属性を識別し、人間が視覚によって外見から認識可能な複数の属性のそれぞれに対応するカテゴリjに属するか否かを判別できるように機械学習によって訓練された学習済みのAIモデルである。「カテゴリj」という表記における「j」は、人間が外見から認識可能な複数の属性のそれぞれに対応する複数のカテゴリを区別するインデックスである。属性分類モデル106は本開示における「第2の学習済みモデル」の一例である。
【0077】
属性分類モデル106に学習させるカテゴリの例として、例えば、円形、三角形、四角形、五角形、非透明カプセル、透明カプセル、2色カプセル、単色カプセル、赤色、青色、黄色、白色などがあり得る。
【0078】
属性分類モデル106は、入力された画像IMから画像IM内の識別対象薬剤の外見上の属性を示すカテゴリ情報を出力する。属性分類モデル106の出力は、各カテゴリjに属するか否かを確定的に判別したスコア値であってもよいし、各カテゴリjに属する確からしさ(確信度)を示すスコア値であってよい。すなわち、属性分類モデル106が出力するスコア値は「0」又は「1」の離散値であってもよいし、連続値であってもよい。また、連続値のスコア値に対して閾値を設定して二値化することによって確定的に判別したスコア値として用いてもよい。
【0079】
なお、属性分類モデル106は、識別対象薬剤を複数のカテゴリ(クラス)に分類する多クラス分類器として機能するが、薬剤識別モデル104と比べて、分類の細かさ(粒度)が異なる。薬剤識別モデル104によって識別される薬剤種類の数は、例えば、数千から数万のオーダーであるのに対し、属性分類モデル106によって識別されるカテゴリの数は、例えば、数十のオーダーであり、分類の粒度が大きく異なる。1つの薬剤は、複数のカテゴリに属していてもよい。
【0080】
薬剤マスタ108は、N種類の薬剤iのそれぞれについて、カテゴリjに属するか否かの情報を含むマスタデータのデータベースである(図5参照)。薬剤マスタ108は、薬剤識別モデル104によって識別可能な全N種類の薬剤iについての複数の外見上の属性を示す情報を含む。なお、薬剤マスタ108は、スマートフォン10のメモリ34に限らず、図示せぬグラウドサーバなど、スマートフォン10と通信可能に接続されるネットワーク上の外部装置に保存されていてもよい。
【0081】
適合薬剤抽出部110は、属性分類モデル106が出力するカテゴリ情報を基に、薬剤マスタ108を参照して、識別対象薬剤と同じカテゴリに属する薬剤種類の情報を薬剤マスタ108から取得する。
【0082】
重要度設定部112は、各カテゴリjに対して重要度を設定する。重要度に応じた値は、予め定められた固定の値であってもよいが、ユーザ毎に、又はユーザが望むタイミングで、重要度の設定をカスタマイズできる構成であることが好ましい。例えば、ユーザインターフェースを介して、ユーザに重要度の設定を変更する指示の入力を受け付け、GUI(Graphical User Interface)ボタン又はアプリの設定画面から「色重視」、「形状重視」等の選択肢をユーザに選択させて、ユーザ毎に、又は、薬剤種類を確定させる際の判断毎に、重要度の設定を変更してもよい。「色重視」が選択されると、「色」に関するカテゴリの重要度を相対的に高くする値に設定され、「形状重視」が選択されると、「形状」に関するカテゴリの重要度を相対的に高くする値に設定される。
【0083】
また、CPU28は、重要度に関する設定情報をユーザ情報と関連付けてメモリ34に記憶させることができ、記憶させたユーザ毎の設定情報をユーザ情報に基づいて読み出して、ユーザ毎の設定を再現することが可能である。CPU28は、画像IMの取得前、画像IMの取得後、あるいは、候補提示部116が提示する候補の表示中など、時期を問わず、重要度に関する設定の変更の指示を受け付けるGUIを提供し、ユーザから指示されたタイミングで随時に設定の変更を行うことが好ましい。
【0084】
スコア修正部114は、薬剤識別モデル104から出力された各薬剤iに対するスコア値siに対して、属性分類モデル106の出力を用いて薬剤マスタ108から識別対象薬剤と同じ外見上の属性を持つ薬剤種類のスコア値を修正する。スコア修正部114は、重要度設定部により設定されたカテゴリ別の重要度に応じて、例えば、次式(1)又は次式(2)のように、スコア値siを修正し、修正後のスコア値sciを算出する。
【0085】
【数1】
【0086】
【数2】
【0087】
jは、カテゴリjに対する重み係数である。kjは、カテゴリjに属するという情報の重要度に相当する。
【0088】
jは、カテゴリjに属する薬剤種類の数である。Njの値が小さいほど、そのカテゴリjは希少度の高い属性であることを示しており、Njの値が大きいほど、そのカテゴリjがありふれた属性であることを示している。
【0089】
αは、カテゴリに属する薬剤の希少度をスコアに反映する度合いを表す定数である。αを考慮する理由は、希少度の高いカテゴリに属するという情報は、薬剤種類の特定により一層役立つという考えに立脚するものである。なお、α=0の場合、希少度を修正スコアには反映させないことに相当する。
【0090】
δijは、薬剤マスタ108上で薬剤iがカテゴリjに属しており、かつ識別対象薬剤の画像IMを属性分類モデル106に入力した際にカテゴリjに属すると判定された場合に「1」、そうでない場合に「0」となる値(離散値)である。
【0091】
ijは、薬剤マスタ108上で薬剤iがカテゴリjに属しており、かつ識別対象薬剤の画像IMを属性分類モデル106に入力した際に属性分類モデル106から出力される、その識別対象薬剤がカテゴリjに属するか否かに関するスコア値ないし確信度(連続値)である。
【0092】
属性分類モデル106が算出する各カテゴリjの確からしさ(確信度)を示す連続値のcijに対して閾値を設けて2値化したものがδijとなり得る。
【0093】
薬剤識別モデル104が出力するスコア値siは本開示における「第1のスコア値」の一例である。カテゴリjの重要度を示すkjは本開示における「属性に対して設定された値」の一例である。kjを用いて式(1)又は式(2)により修正された修正後のスコア値sciは本開示における「第2のスコア値」の一例である。
【0094】
候補提示部116は、スコア修正部114によって修正された修正後のスコア値sciの大小によって最終的な薬剤の候補を提示する。候補提示部116は、例えば、修正後のスコア値sciの大きい順に上位の複数の候補をタッチパネルディスプレイ14に表示させる。なお、候補の表示中に、ユーザから重要度の設定を変更する指示が入力された場合、スコア修正部114は、変更された設定に基づきスコア値sciを再計算し、候補提示部116は、再計算されたスコア値sciに基づく上位候補を提示する。このように、重要度の設定の変更に連動して、提示される薬剤候補リストが更新される。
【0095】
薬剤確定部118は、ユーザからの識別対象薬剤の種類を確定させる指示を受け付け、受け付けた指示に従い、識別した薬剤の種類を確定させる処理を行う。
【0096】
〔薬剤識別装置100の動作の説明〕
図5は、薬剤マスタ108に登録されている情報の例を概略的に示す図表である。薬剤マスタ108には、複数種類の薬剤iについての外見上の属性である色(図5では白と黄色を例示)及び形状(図5では円と楕円を例示)に関する情報が記録されている。図5では、薬剤1~薬剤4の4種類の薬剤のレコードを示すが、薬剤マスタ108には薬剤識別モデル104が識別可能な全薬剤種類の薬剤の情報が記録されている。図5に示す「白」、「黄色」、「円形」、及び「楕円」の各カテゴリは、人間が薬剤の外見から視覚的に認識できる外見上の属性の例である。
【0097】
各カテゴリに対応する列の各セルに示す「1」又は「0」の情報は、それぞれのカテゴリに該当するか否かを表しており、該当する場合は「1」、該当しない場合は「0」の値となっている。それぞれのカテゴリには、重要度(k1,k2,k3,k4)が設定されている。図5の例では、k1=0.4、k2=0.4、k3=0.03、k4=0.03と設定されており、外見上の複数の属性のうち「色」に関する属性の重要度が高く設定されていることがわかる。ここでは、薬剤識別モデル104が出力するスコア値siを修正する際の単純な場合の例として、式(1)のα=0のケースを説明する。
【0098】
なお、図5においては、各薬剤に付されている刻印文字と、各薬剤の画像とを示しているが、薬剤マスタ108において刻印文字の情報は含まれていなくてよい。
【0099】
図5に示す例を用いて本実施形態に係る薬剤識別装置100の動作を具体的に説明する。図6に示すように、「AA11」という刻印を持つ識別対象薬剤の画像IMを薬剤識別モデル104に入力すると、薬剤識別モデル104から、刻印「AA11」の薬剤1についてスコア値0.5、刻印「AA12」の薬剤2についてスコア値0.4、刻印「AA222」の薬剤4についてスコア値0.3、刻印「BB98」の薬剤3についてスコア値0.01というスコア値が得られたとする。このようなスコア値が出力される薬剤識別モデル104は、薬剤マスタ108には含まれていない「刻印文字」の外見の類似度を重視したものと推察される。
【0100】
仮に、このようなスコア値から上位候補を提示した場合、刻印文字「AA12」の薬剤2が上位から2番目の候補として提示されることになるが、人間の感覚では薬剤2(AA12)は、黄色、かつ楕円形の錠剤であり、識別対象薬剤(白かつ円形の錠剤)とは明白に異なるように見える。
【0101】
本実施形態に係る薬剤識別装置100では、薬剤識別モデル104が出力するスコア値が次のように修正される。すなわち、「AA11」という刻印を持つ識別対象薬剤の撮影画像IMaを属性分類モデル106に入力すると、属性分類モデル106から、この識別対象薬剤が「白色」及び「円形」という2つのカテゴリに属するという結果が得られる。
【0102】
適合薬剤抽出部110は、属性分類モデル106の出力に基づき、薬剤マスタ108に登録されている全薬剤種類の中から「白色」及び「円形」の少なくとも1つのカテゴリに属する薬剤を抽出する。スコア修正部114は、適合薬剤抽出部110によって抽出された薬剤について、白色の重要度k1=0.4、円形の重要度k3=0.03をスコア値siに加算する。
【0103】
図6に示す例の場合、薬剤1(刻印文字:AA11)、薬剤3(刻印文字:BB98)、及び薬剤4(刻印文字:AA22)の各薬剤は「白色」及び「円形」のカテゴリに属しているため、これら該当する各薬剤のスコア値siに「0.4+0.03」が加算され、それぞれのスコア値が修正される。こうして、属性分類モデル106が識別した「白色」及び「円形」に該当する薬剤のスコアがかさ上げされる。その一方、薬剤2(刻印文字:AA12)は、「白色」及び「円形」のいずれのカテゴリにも属していないため、薬剤2のスコア値は修正されず、元のスコア値(0.40)がそのまま維持される。
【0104】
よって、修正後のスコア値は、薬剤1(刻印文字:AA11)が「0.93」、薬剤2(刻印文字:AA12)が「0.40」(修正なし)、薬剤3(刻印文字:BB98)が「0.44」、薬剤4(刻印文字:AA22)が「0.73」となる。修正後のスコア値を大きい順に並べ替えると、薬剤1(0.93)、薬剤4(0.73)、薬剤3(0.44)、薬剤2(0.40)の順番となり、識別対象薬剤とは色が異なる薬剤2を低順位化することができる。これにより、予め設定していた「色を重視して判定する」というポリシーを反映させることができた。
【0105】
タッチパネルディスプレイ14には、修正されたスコア値sciの大きさの順番に上位の複数の候補が並んだ薬剤候補リストが表示される。図6に例示したように、修正後のスコア値sciに基づいて提示される上位候補の並び順は、人間の認識感覚(類似感覚)に近いものとなり、ユーザの納得感が得られ易いものと期待される。
【0106】
なお、図6で説明した重要度等の数値は説明のための一例にすぎない。重要度のパラメータの設定によって、算出される修正スコア値は変化する。修正スコア値が人間の類似感覚に近いものとなるように、各属性に対する重要度のパラメータが適切な値に設定される。例えば、重要度のパラメータの適切な値や範囲は、試行錯誤によって決定されてもよいし、パラメータの増減による自動最適化探索を行うことによって決定されてもよい。
【0107】
〔薬剤識別方法の例〕
図7は、実施形態に係る薬剤識別装置100によって実行される薬剤識別方法の例を示すフローチャートである。図7に示すステップを含む薬剤識別方法は、CPU28がメモリ34からプログラムを読み出して実行することにより実現される。なお、薬剤識別方法を実行させるプログラムは、無線通信部30、又は外部入出力部40を介して提供されてもよい。
【0108】
ステップS1において、CPU28は、識別対象薬剤が撮影された画像を取得する。例えば、CPU28は、アウトカメラ22によって撮影された画像を取得する。取得された画像には、複数の識別対象薬剤が含まれていてもよい。CPU28は、取得された画像にマーカが含まれる場合に、マーカに基づいて撮影画像の撮影距離及び撮影視点の標準化を行い、標準化画像を生成してもよい。また、CPU28は、取得された画像に対して色調補正などの補正処理を行ってもよい。
【0109】
ステップS2において、CPU28は、取得された画像から薬剤の領域を検出する。薬剤領域を検出する処理は、例えば、画像内から薬剤の領域を抽出するように学習された学習済みモデルを用いて実行される。CPU28は、画像内から検出された薬剤のそれぞれの領域を切り出して、薬剤毎の領域画像(以下、薬剤画像という。)を取得し得る。図4及び図6で説明した画像IMは、薬剤単位で切り出された薬剤画像であってよい。
【0110】
ステップS3において、CPU28は、薬剤画像から識別対象薬剤の刻印及び/又は印字を抽出し、刻印印字抽出画像を生成する。刻印印字抽出画像は、識別対象薬剤の刻印部分又は印字部分の輝度が刻印部分又は印字部分とは異なる部分の輝度よりも相対的に高い画像である。なお、「刻印印字抽出画像」という用語は、刻印に限らず錠剤又はカプセルに付された印字を抽出した画像も含む。刻印印字抽出画像は文字記号抽出画像と言い換えてもよい。「刻印印字」という用語は、錠剤又はカプセル薬剤についての「刻印」、「印字」、「印字記号」、「識別記号」又は「文字記号」などの概念を含む。
【0111】
ステップS4において、CPU28は、薬剤識別モデル104を用いて薬剤画像から識別対象薬剤の種類を識別する。薬剤識別モデル104に薬剤画像を入力することにより、薬剤識別モデル104から識別可能な全薬剤種類に対するスコア値siが出力される。なお、薬剤識別モデル104は、薬剤画像と刻印印字抽出画像との組み合わせを入力とし、全薬剤種類に対するスコア値siを出力してもよい。
【0112】
また、CPU28は、ステップS3及びステップS4の処理と並行して、ステップS5において、属性分類モデル106を用いて薬剤画像から識別対象薬剤の外見上の属性を識別する。属性分類モデル106に薬剤画像を入力することにより、属性分類モデル106から識別対象薬剤が該当するカテゴリの情報が出力される。
【0113】
ステップS6において、CPU28は、属性分類モデル106から出力された識別対象薬剤のカテゴリと同じカテゴリに属する薬剤を薬剤マスタ108に問い合わせ、薬剤マスタ108から識別対象薬剤のカテゴリと同じカテゴリに属する薬剤を取得する。
【0114】
そして、ステップS7において、CPU28は、識別対象薬剤と同じカテゴリに属する薬剤に対して、カテゴリ毎に設定された重要度に応じてスコア値siを修正する。CPU28は、上述した式(1)又は式(2)を用いて全薬剤種類に対する修正スコア値sciを算出する。
【0115】
ステップS8において、CPU28は、この修正スコア値sciの大きい順に上位候補を取得し、降順に並ぶ薬剤候補リストを生成する。
【0116】
ステップS9において、CPU28は、ステップS8で得られた上位候補を識別対象薬剤の種類の候補として出力する。CPU28は、修正スコア値の大きさに基づく上位候補をタッチパネルディスプレイ14に選択可能に表示させる。ユーザは、タッチパネルディスプレイ14に表示される複数の候補の中から正しい薬剤種類を選択して識別対象薬剤の種類を確定させる指示を入力することができる。
【0117】
また、CPU28は、タッチパネルディスプレイ14等のユーザインターフェースから、薬剤種類の候補の表示を修正する指示、又は、刻印印字によるテキスト検索等の他の処理に移行する指示など各種の指示の入力を受け付けてもよい。ユーザは、提示される薬剤種類の候補を確認し、タッチパネルディスプレイ14のユーザインターフェースから薬剤種類を確定させる指示を入力したり、候補の表示の修正又はテキスト検索への移行などの指示を入力したりすることができる。
【0118】
ステップS10において、CPU28は、タッチパネルディスプレイ14又は音声入力によって識別対象薬剤の種類を確定させる指示の入力を受け付け、受け付けた指示に従い識別対象薬剤の種類を確定させる処理を行う。
【0119】
ステップS1にて取得された画像内に含まれる全ての識別対象薬剤についてステップS3~ステップS10の処理が行われたら、CPU28は、図7のフローチャートを終了する。
【0120】
本実施形態に係る薬剤識別装置100によれば、薬剤識別モデル104の算出したスコア値siを基調としつつ、属性分類モデル106の出力に基づいて外見上の属性を加味してスコア値siの修正を行い、修正されたスコア値sciを基に候補を提示するため、人間が見ても納得感のある候補を提示できる。
【0121】
〔各処理部のハードウェア構成について〕
図4で説明した画像取得部102、適合薬剤抽出部110、重要度設定部112、スコア修正部114、候補提示部116、及び薬剤確定部118などの各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
【0122】
各種のプロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0123】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。例えば、1つの処理部は、複数のFPGA、或いは、CPUとFPGAの組み合わせ、又は、CPUとGPUの組み合わせなどによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第一に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第二に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0124】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0125】
<薬剤識別装置100の機能を実現させるプログラムについて>
薬剤識別装置100の処理機能はスマートフォン10に限らず、タブレット型コンピュータ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、あるいはサーバなど、様々な形態の情報処理装置を用いて実現することができる。薬剤識別装置100の処理機能は複数台のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実現してもよい。
【0126】
上記の実施形態で説明した薬剤識別装置100の処理機能の一部又は全部をコンピュータに実現させるプログラムを光ディスク、磁気ディスク、若しくは、半導体メモリその他の有体物たる非一時的な情報記憶媒体であるコンピュータ可読媒体に記録し、この情報記憶媒体を通じてプログラムを提供することが可能である。またこのような有体物たる非一時的な情報記憶媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの電気通信回線を利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。
【0127】
また、薬剤識別装置100の処理機能の一部又は全部をアプリケーションサーバとして提供し、電気通信回線を通じて処理機能を提供するサービスを行うことも可能である。
【0128】
<実施形態の効果>
実施形態に係る薬剤識別装置100によれば、次のような効果が得られる。
【0129】
[1]機械学習ベースの薬剤識別モデル104が出力する薬剤候補のスコア値siに対して、事後的に人間の類似感覚に合致する修正を行うことで、人間が納得し得る候補順で候補を提示できる。
【0130】
[2]ユーザ毎又は薬剤種類の判断毎に、重視したい外見上の特性(特徴)をカスタマイズできる。
【0131】
[3]薬剤識別モデル104の学習後に、薬剤識別モデル104とは独立に、重視したい外見上の属性を考慮する仕組み(属性分類モデル106、薬剤マスタ108及びスコア修正部114)を追加でき、提示する候補をコントロールできる。薬剤識別モデル104を学習させるには高いコストを要するが、属性分類モデル106は、比較的に低コストで生成することができる。本実施形態によれば、高コストの薬剤識別モデル104を作り直すことなく、追加的な構成(属性分類モデル106、薬剤マスタ108及びスコア修正部114)を組み合わせることで、人間の類似感覚に近い候補の提示を実現できる。
【0132】
[4]例えば、薬剤の形状に関して「五角形」又は「三角形」などのように特殊な(稀な)属性に対して重要度を高く設定しておくことにより、そのような特殊な属性が属性分類モデル106によって識別された場合に、その同じ属性を持つ薬剤種類に限定して候補を提示するようにスコア値を修正することも可能である。
【0133】
[5]薬剤識別モデル104及び属性分類モデル106で学習していない薬剤であっても、ある外見上の属性が既知であり、かつ、その属性分類モデル106で学習済みの場合、その薬剤を薬剤マスタ108に登録さえすれば、その薬剤を候補化できる可能性がある。
【0134】
〔変形例1〕
画像から識別対象薬剤の外見上の属性を識別する手段は、属性分類モデル106のようなAIモデルに限らない。入力された画像から1つ以上の外見上の属性を捉えて、その属性に応じた分類ができればよく、テンプレートマッチングの手法による画像認識器など、AI以外の様々な画像処理技術を適用できる。
【0135】
〔変形例2〕
属性分類モデル106が出力するカテゴリ情報の代わりに、又は、これに加えて、画像から識別対象薬剤の外見上の属性に対応した連続値のような数値(例えば、識別対象薬剤の大きさを示す数値)を算出し、この連続値に応じてスコア値siを修正してもよい。
【0136】
〔変形例3〕
上述の実施形態では、識別対象薬剤の外見上の属性に適合する薬剤種類のスコア値siに対して、該当する属性の重要度に応じた値を加算してスコア値siを修正する例を説明したが、スコア修正の演算においては「加算」による修正に限らず、乗算を含む様々な演算式を適用できる。修正後のスコア値が修正前のスコア値siよりも増加する修正に限らず、例えば、重要度を示すkjについて負の値を定義することにより、修正後のスコア値が修正前のスコア値siよりも減少する修正もあり得る。
【0137】
識別対象薬剤の外見上の属性に適合する薬剤種類のスコア値siに対して修正を行う代わりに、識別対象薬剤の外見上の属性に適合しない(非適合の)薬剤種類のスコア値siを減少させる修正を行うことにより、非適合の薬剤種類を低順位化させてもよい。属性分類モデル106が出力するカテゴリ情報を用いて薬剤マスタ108に問い合わせを行うことで、薬剤マスタ108から識別対象薬剤の外見上の属性に適合する薬剤種類の情報を抽出でき、かつ、非適合の薬剤種類の情報を抽出することもできる。
【0138】
〔変形例4〕
上記の実施形態では薬剤の鑑別を行う場合の例を説明したが、薬剤監査を行う場合についても本開示の技術を適用できる。
【0139】
〔その他〕
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態及び変形例に記載の範囲には限定されない。実施形態及び変形例における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、実施形態及び変形例間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0140】
10 スマートフォン
12 筐体
14 タッチパネルディスプレイ
16 スピーカ
18 マイクロフォン
20 インカメラ
22 アウトカメラ
24 ライト
26 スイッチ
30 無線通信部
32 通話部
34 メモリ
36 内部記憶部
38 外部記憶部
40 外部入出力部
42 GPS受信部
44 電源部
100 薬剤識別装置
102 画像取得部
104 薬剤識別モデル
106 属性分類モデル
108 薬剤マスタ
110 適合薬剤抽出部
112 重要度設定部
114 スコア修正部
116 候補提示部
118 薬剤確定部
IM 画像
ST1、ST2、STn GPS衛星
S1~S10 薬剤識別方法のステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7