(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047395
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20240329BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152993
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(72)【発明者】
【氏名】小黒 直輝
(72)【発明者】
【氏名】奥本 琢也
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AD12
4F202AG08
4F202AG23
4F202AG25
4F202AR13
4F202CA30
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK12
4F202CK13
(57)【要約】
【課題】ライニング成型における金型の取り外しを効率良く行うこと。
【解決手段】実施形態の金型は、上部から溶融した成形材料が充填される金型であって、成型材料を収容する管と、管の内部に配置される中子と、管の上部に配置され、中子と当接する複数の凸部を備えるフランジキャップと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から溶融した成型材料が充填される金型であって、
前記成型材料を収容する管と、
前記管の内部に配置される中子と、
前記管の上部に配置され、前記中子と当接する複数の凸部を備えるフランジキャップと、
を有することを特徴とする金型。
【請求項2】
前記フランジキャップは、前記複数の凸部によって生じる凹部であって、前記成型材料が通過する凹部を備えることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記フランジキャップは、輪の内側に沿って設けられた複数の凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記フランジキャップは、側面が前記管の側面と平行な柱体である複数の凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項5】
前記フランジキャップは、前記管側の面の面積が、前記管と反対側の面の面積以下の錐台である複数の凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に関する。
【背景技術】
【0002】
測定管への樹脂によるライニング成型においては、金型に融解した樹脂が圧入され、樹脂の成型終了後に金型の部品の一部が測定管から取り外される。また、金型には、測定管の上部(樹脂が圧入される側)に取り付けられるフランジキャップと呼ばれる部品が含まれる。フランジキャップは、測定管の蓋として機能するとともに、融解した樹脂の湯道を形成する。
【0003】
従来、金型の部品の1つであって、フランジキャップの測定管側にはめ込まれるゲートリングと呼ばれる部品が知られている(例えば、特許文献3を参照)。ゲートリングは、測定管の内部に設けられた中子の位置決めを行う。また、ゲートリングには、湯道を形成する複数の穴が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-276284号公報
【特許文献2】特開2002-86496号公報
【特許文献3】特開2003-117954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術には、ライニング成型における金型の取り外しが効率良く行えない場合があるという問題がある。
【0006】
例えば、樹脂の成型後にゲートリングを取り外す場合、硬化(固体化)した樹脂を切断する必要がある。成型後に硬化した樹脂を切断する作業には、作業者の習熟が必要であること、多くの工数がかかること、作業者がけがをする危険があること、といった問題がある。
【0007】
本願はこのような課題を解決するためのものであり、ライニング成型における金型の取り外しを効率良く行えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係る金型は、上部から溶融した成型材料が充填される金型であって、成型材料を収容する管と、管の内部に配置される中子と、管の上部に配置され、中子と当接する複数の凸部を備えるフランジキャップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上述した金型によれば、ライニング成型における金型の取り外しを効率良く行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ライニング成型の工程を説明する図である。
【
図4】
図4は、実施形態のフランジキャップの底面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のフランジキャップの斜視図である。
【
図6】
図6は、樹脂が成型された状態の金型の断面図である。
【
図7】
図7は、フランジキャップを取り外す方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、ライニング成型が行われた測定管の外観図である。
【
図9】
図9は、ライニング成型が行われた測定管の断面図である。
【
図14】
図14は、ライニング成型が行われた従来の金型の断面図である。
【
図15】
図15は、ライニング成型が行われた従来の金型の外観である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0012】
まず、
図1を用いてライニング成型の工程を説明する。
図1は、ライニング成型の工程を説明する図である。
【0013】
ライニング成型では、測定管に樹脂が固定される。その際、樹脂は、測定管の内側に溶接された補強管を巻き込む。
【0014】
図1のステップS11に示すように、ライニング成型においては、ポット10及び金型20が用いられる。樹脂は、PP(ポリプロピレン)及びPFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)等である。
【0015】
ポット10には樹脂ペレットが入れられ、当該樹脂ペレットを融解させるため加熱炉で加熱される。その結果、ステップS11ではポット10には融解した樹脂が入っている。
【0016】
金型20は、上金型21、測定管22及び下金型23を有する。ライニング成型においては、測定管と中子との隙間に樹脂が成型される。
【0017】
ステップS12では、加熱された金型20が成型機の水槽30に置かれる。そして、金型20の上部にはポット10が配置される。
【0018】
次に、ステップS13では、ポット10から金型20に融解した樹脂が圧入される。このように、金型20は、上部から溶融した樹脂が充填される。さらに、ステップS14では、水槽30に水が入れられ、樹脂を硬化させるために金型20が冷却される。
【0019】
その後、金型20を取り外すことにより、ライニング成型の工程が完了する。なお、樹脂が成型された測定管がライニング成型の成果物であるが、本実施形態では、測定管が金型20の部品の1つであるものとして説明する。
【0020】
図2及び
図3を用いて、本実施形態の金型の構成を説明する。
図2及び
図3は、実施形態の金型の断面図である。
【0021】
前述の通り、金型20は、上金型21、測定管22及び下金型23を含む。
図2に示すように、上金型21は、T管211、フランジキャップ212、及びスプルブッシュ214を有する。また、下金型23に含まれる中子231及びダクトパイプ232は、測定管22の内部に位置する。なお、
図3は、
図2から中子231及びダクトパイプ232を省略した図である。
【0022】
T管211は、湯道を冷えにくくするための部品である。なお、湯道は、ポット10から圧入された融解した樹脂が通過する部分である。湯道は、ライニング工程において樹脂で満たされることになる。
【0023】
フランジキャップ212は、測定管22の上部に配置される。フランジキャップ212は、測定管22の蓋として機能するとともに、湯道を形成する。さらに、フランジキャップ212は、従来のゲートリングと同様に、中子231の位置決めを行う。フランジキャップ212については、後に詳しく説明する。
【0024】
スプルブッシュ214は、ポット10と金型20との間の湯道を形成する。
【0025】
測定管22は、例えば電磁流量計の部品である。この場合、ライニング成型された樹脂は、電磁流量計の部品として使用される測定管22の内部を通る液体に対し、測定管22を保護する膜として機能する。
【0026】
中子231は、測定管22の内部に配置され、筒形状を形成する部品である。例えば、測定管22の内面と中子231との間には円筒形の空間が生じる。測定管22は、当該円筒形の空間に融解した樹脂を収容する。また、中子231の先端部分は、湯道を中から冷えにくくしつつ湯道を形成する。ダクトパイプ232は、金型20を冷却する冷却水の回路を形成する部品である。
【0027】
なお、下金型23には、ダクトアタッチ、フランジプレート、ベースプレートといった部品が含まれる。ダクトパイプは、金型20を冷却する冷却水回路を形成する。ダクトアタッチは、金型の冷却水回路と成型機の冷却水回路とをつなぎ合わせる。フランジプレートは、ベースプレートに中子を取り付け、また湯道を形成する。ベースプレートは、金型20の底板であり、ベースとして機能する。
【0028】
図4及び
図5を用いて、フランジキャップについて説明する。
図4は、フランジキャップ212を下側(下金型23側)から見た底面図である。また、
図5は、フランジキャップ212を斜め下側から見た斜視図である。
【0029】
図4及び
図5に示すように、フランジキャップ212は、中子231と当接する複数の凸部2121を備える。また、凸部2121は、凹部を生じさせる。融解した樹脂は、複数の凸部2121によって生じる凹部を通過する。このように、凹部が湯道として機能する。
【0030】
また、フランジキャップ212は、中子231の位置決めとして機能し、さらに湯道を形成する。
【0031】
図4及び
図5に示すように、複数の凸部2121は、輪の内側に沿って設けられる。これにより、複数の凸部2121は中子231と偏りなく接し、位置決めを安定させる。
【0032】
図6は、樹脂が成型された状態の金型の断面図である。
図6は、
図1のステップS14の後の状態を示している。樹脂40は、冷却により硬化している。
【0033】
図7に示すように、フランジキャップ212を含む上金型21は、上側に引き抜かれると測定管22及び樹脂40から取り外される。
図7は、フランジキャップを取り外す方法を説明する図である。
【0034】
このように、本実施形態では、硬化した樹脂を切断することなく、容易に金型を取り外すことが可能になる。その結果、ライニング成型における金型の取り外しを効率良く行える。
【0035】
また、
図7のように、複数の凸部2121は、側面が測定管22の側面と平行な柱体であってもよい。さらに、複数の凸部は、測定管22側の面(上面)の面積が、測定管22と反対側の面(底面)の面積以下の錐台であってもよい。
【0036】
なお、凸部2121の上面と底面が等しく、凸部2121の側面が測定管22の側面と平行(上面及び底面と垂直)である場合、凸部2121は錐台でもあり柱体でもある。
【0037】
凸部2121がこのような円柱又は錐台であれば、上金型21を引き抜く際に、凸部2121によって生じた凹部の樹脂がフランジキャップ212に引っかかることがない。
【0038】
図4及び
図5に示すように、フランジキャップ212に設けられた凸部2121は、環状のギヤのような形状である。一方、
図7に示すように、凸部2121によって生じた凹部によって、環状のギヤの山谷が反転した同サイズのギヤのような形状の樹脂が成型される。
【0039】
図8は、ライニング成型が行われた測定管の外観図である。
図9は、ライニング成型が行われた測定管を示す断面図である。
【0040】
図8及び
図9に示すように、上金型21及び下金型23が取り外された後、樹脂40が成型された測定管22が得られる。その際、樹脂40の、フランジキャップ212によって成型された湯道に充填された部分(測定管22の上部)は、金型を取り出すための切断が必要ないため残っている。
【0041】
ここで、比較のため、従来の金型について説明する。
図10及び
図11は、従来の金型の断面図である。
【0042】
図10及び
図11に示すように、従来の金型は、上金型21a、測定管22a及び下金型を含む。上金型21aは、T管211a、フランジキャップ212a、ゲートリング213a及びスプルブッシュ214aを有する。また、下金型23aは中子231a及びダクトパイプ232aを有する。なお、
図11は、
図10から中子231a及びダクトパイプ232aを省略した図である。
【0043】
図10及び
図11のフランジキャップ212a、ゲートリング213a以外の部品については、実施形態の同名の部品と同様の構造及び機能を有する。
【0044】
図12及び
図13に示すように、ゲートリング213aは、フランジキャップ212aの下部にはめ込まれる。
図12は、従来のフランジキャップの底面図である。
図13は、従来のフランジキャップの斜視図である。
【0045】
図14に示すように、ライニング成型の工程において、フランジキャップ212aとゲートリング213aの上側との間の空間に充填された樹脂40aの上側部分と、ゲートリング213a下側の空間に充填された樹脂40aの下側部分とが、ゲートリング213aの穴に充填された樹脂40aの柱状の部分により結合される。
図14は、ライニング成型が行われた従来の金型の断面図である。
【0046】
その結果、
図15に示すように、当該穴に充填された樹脂を切断することなくゲートリング213aを取り外すことができなくなる。
図15は、ライニング成型が行われた従来の金型の外観である。
【0047】
このように、従来の技術では、ライニング成型において金型を取り外す際に、樹脂を切断する工程が必要であった。一方、これまで説明してきたように、本実施形態では、金型を取り外す際に樹脂を切断する必要がない。
【0048】
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、実施形態の構成や詳細は、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で実施することができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 ポット
20 金型
21、21a 上金型
22、22a 測定管
23 下金型
30 水槽
40、40a 樹脂
211、211a T管
212、212a フランジキャップ
213a ゲートリング
214、214a スプルブッシュ
231、231a 中子
232、232a ダクトパイプ
2121 凸部