(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047410
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】加工装置、および加工方法
(51)【国際特許分類】
B23C 3/28 20060101AFI20240329BHJP
B23B 5/36 20060101ALI20240329BHJP
B23B 5/48 20060101ALI20240329BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20240329BHJP
B23C 3/32 20060101ALI20240329BHJP
B23D 45/12 20060101ALI20240329BHJP
B23D 45/14 20060101ALI20240329BHJP
B26D 3/06 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B23C3/28
B23B5/36
B23B5/48
B24B19/02
B23C3/32
B23D45/12 A
B23D45/14 A
B26D3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153014
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】509257950
【氏名又は名称】テクノアート 有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 周一
【テーマコード(参考)】
3C022
3C040
3C045
3C049
【Fターム(参考)】
3C022EE05
3C022EE07
3C022EE15
3C022EE17
3C040AA01
3C040BB03
3C040HH02
3C045BA01
3C045CA07
3C045DA03
3C045DA08
3C049AA03
3C049AA12
3C049AB04
3C049CA03
3C049CA04
3C049CB01
(57)【要約】
【課題】 加工面に不陸がある場合でも、不陸に対応して加工面に所望の加工を安価に施すことができる加工装置および加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 形成する溝Mに対して直行する方向を軸にして被加工物であるチューブ管10を回転装置110が回転させ、回転させた加工工具122で被加工物であるチューブ管10の外周面を回転工具120が加工し、被加工物であるチューブ管10の外周面の形状に合わせて追従機構が回転工具120を追従させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の外周面の周方向に延在する所定の深さの溝を形成する加工装置において、
形成する溝に対して直行する方向を軸にして前記被加工物を回転させる回転装置と、
回転させた加工工具で前記被加工物の外周面を加工する回転工具と、
前記被加工物の外周面の形状に前記回転工具を追従させる追従機構と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記追従機構は、
前記被加工物の外周面に接するように設けられるベース部と、
前記ベース部の一方側を中心にして前記ベース部の他方側を回動可能に支持する回動支持軸部と、
前記加工工具による加工位置を一定に保ちながら前記ベース部と前記回転工具とを連結する連結部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記回動支持軸部は、
ヒンジであること、
を特徴とする請求項2記載の加工装置。
【請求項4】
前記ベース部は、
前記加工工具を加工方向に所定量だけ露出させる切り欠き部、
を備えることを特徴とする請求項2記載の加工装置。
【請求項5】
前記ベース部の下面と前記被加工物との間には、
前記加工工具の露出量を低減させるための調整部材、
を備えることを特徴とする請求項2記載の加工装置。
【請求項6】
前記回転工具は、
前記加工工具である円盤状の鋸刃を回転させる切断機であること、
を特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項7】
前記回転工具は、
前記加工工具である円盤状の砥石を回転させる研削機であること、
を特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項8】
前記回転装置が回転させる軸方向に前記回転工具を平行に移動させる工具移動装置、
を備えることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項9】
前記工具移動装置は、
前記回転装置が回転させる軸方向に対して前記回転工具により溝を形成する角度を任意に変更させる加工角度変更部、
を備えることを特徴とする請求項8記載の加工装置。
【請求項10】
被加工物の外周面の周方向に延在する所定の深さの溝を形成する加工方法において、
形成する溝に対して直行する方向を軸にして前記被加工物を回転装置が回転させる工程と、
回転させた加工工具で前記被加工物の外周面を回転工具が加工する工程と、
前記被加工物の外周面の形状に前記回転工具を追従機構が追従させる工程と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置、および加工方法に関し、特に被加工物の外周面の周方向に延在する所定の深さの溝を形成する加工装置、および加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレキャストコンクリート造の柱梁接合部などのコンクリート部材には、鉄筋やアンカーボルトが挿通された後にグラウト材を充填するための貫通孔が形成されている。
【0003】
このプレキャストコンクリート造の柱梁接合部に形成される貫通孔は、プレキャストコンクリート造の柱や壁などを製作する際にコンクリート内にシース管を埋設する、いわゆるシース管を埋殺して貫通孔を形成されていることが多い。
【0004】
ところがシース管を埋殺して貫通孔を形成するとコストがかかるため、コンクリート部材の孔を確実かつ低コストで簡便に形成することができる孔形成用型および孔形成方法が開発されている(たとえば特許文献1)。
【0005】
特許文献1で開示された孔形成用型および孔形成方法では、弾性材料で形成された外周面に凹凸を有する管状の管部材と、管部材内に出し入れ可能な剛性材料で形成された棒状の芯部材とを備えている。
【0006】
管部材は、内部に芯部材が挿入されると径方向内側から外側へ伸長して外形が貫通孔に相当する形状となり、内部から芯部材が抜き出されると径方向外側から内側へ収縮して復元する。さらに、管部材の内周面には、軸方向に延在する複数の凹部が互いに周方向に間隔をあけて形成されている。
【0007】
これにより、管部材は、芯部材が挿入された状態で型枠内に設置され、型枠内にコンクリートが打設されて硬化した後に内部から芯部材が抜き出されると径方向外側から内側へ収縮して復元し、孔の内周面から離間するため、コンクリート部材から容易に撤去することができる。このため、コンクリート部材から管部材が取り除かれることで、コンクリート部材には所望の形状の孔が形成される。
【0008】
さらに、管部材の内周面は、軸方向に延在する複数の凹部が互いに周方向に間隔をあけて形成されていることにより、凹凸面に形成され、芯部材の外周面と管部材の内周面との接触を少なくすることができる。このため、芯部材を管部材から抜き出すときの芯部材と管部材との間の摩擦を少なくすることができて、芯部材を管部材から容易に抜き出すことができる。
【0009】
また、管部材の外径は、芯部材の内径と同じか、芯部材の内径よりも小さく形成することで、管部材から芯部材を抜き出すことを容易にした孔形成用型も開発されている(たとえば特許文献2)。
【0010】
具体的に特許文献2で開示された孔形成用型では、芯部材の外径を管部材の内径より小さくする場合に、管部材と芯部材との間が0.1~1.0mmの大きさであることが好ましいとされている。
【0011】
このように管部材と芯部材との間に隙間を形成することによってコンクリート打設の際に弾性体チューブの圧縮が少なくなり、引き抜くときに弾性体チューブが容易に伸長し、コンクリートから簡単に剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012-35523号公報
【特許文献2】特開2016-172365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、形成する貫通孔が長尺になると、貫通孔を形成するための孔形成用型も長尺なものが要求されることになるが、長尺な孔形成用型は生産コストが著しく増加してしまう問題があった。
【0014】
プレキャストコンクリート造の柱梁接合部は、互いに挿入される鉄筋やアンカーボルトなどの長さは1300~1500mm程度である。このため貫通孔の長さ、すなわち孔形成用型の長さも1300~1500mmの長さがあれば必要であるが、たとえば金型を使用した真空成形によって孔形成用型を形成する場合、孔形成用型は300mm~500mm程度の長さでしか形成することができない。
【0015】
具体的に金型を使用した真空成形の場合、使用する金型を長くすれば長尺の孔形成用型が形成できる訳ではない。金型を使用した真空成形は、一般に金型が大きくなればなるほど生産物の形状を保つことが難しい。
【0016】
長尺の孔形成用型を安定して生産するためには、加熱のバランスや冷却の時間など経験しなければ分からない多くのノウハウが必要となり、成形の難易度が上がるため著しく生産コストが増加してしまう。
【0017】
そこで、生産コストを抑制する方法として、金型を使用した真空成形ではなく、たとえば長尺の孔形成用型に必要な長さのチューブ管を押出成形で形成し、形成されたチューブ管の外周面に溝を形成することが考えられる。
【0018】
図8は、押出成形で形成されたチューブ管を加工する工程を示す断面図である。
図8(A)に示すように、チューブ管10は、たとえばゴムのように膨張及び収縮が可能な材質で押出成形によって形成された外周面に溝が形成される前の長尺な管部材である。
【0019】
チューブ管10の内周面は凹凸形状に形成されており、
図8では内面軸方向に多数の縦溝11が形成されている。この縦溝11によってチューブ管10内周面は、貫通孔の形成時に挿入される芯部材の外周面に密着することがない。このため管部材から容易に芯部材を抜き出すことができる。
【0020】
このチューブ管10の外周面に、チューブ管10の周方向に環状に延在し、チューブ管10の軸方向に陥没する複数の凹部が、互いに軸方向に間隔をあけて形成することで、長尺な孔形成用型を形成することができる。
【0021】
チューブ管10は、ゴムのように膨張及び収縮が可能な材質で形成されているため、中空状態で外周面に凹部を形成しようとすると、チューブ管10が容易に変形してしまうので加工が困難になる。このため、チューブ管10の外周面に凹部を形成する場合には、チューブ管10の内径よりも大きな芯部材をチューブ管10の内部に差し込んだ状態で加工する必要がある。
【0022】
図8(B)は、チューブ管10の内部に芯部材20を差し込んだ状態を示す断面図である。
図8(B)に示すように、チューブ管10の外周面に凹部を形成する場合には、チューブ管10の内径よりも大きな芯部材をチューブ管10の内部に差し込んだ状態で加工する必要がある。
【0023】
このとき、チューブ管10の内周面には、多数の縦溝11が形成されているため、チューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20は、縦溝11と縦溝11との間に形成された縦筋12と接触する。
【0024】
芯部材はチューブ管10の内径よりも大きいため、芯部材と縦筋12とが接触することで、チューブ管10の外周面のうち、内周面に縦筋12が存在する部分が径方向内側から外側へ伸長する。このためチューブ管10の外周面は不陸が生じることになる。
【0025】
図8(C)は、内部に芯部材を挿し込んだチューブ管10の外周面に溝を形成した状態を示す断面図である。
図8(C)に示すように、
図8(B)の状態のチューブ管10の外周面を切削することで凹部を形成しようとすると、チューブ管10の外周面には不陸が生じているため、外周面のうち径方向外側に突出した部分である斜線部分が多く切削される。
【0026】
図8(D)は、チューブ管10の内部から芯部材20を取り除いた状態を示す断面図である。
図8(D)に示すように、チューブ管10の内部から芯部材20を取り除くと、芯部材と縦筋12とが接触することで、径方向内側から外側へ伸長していた部分が径方向外側から内側へ収縮して元の形状へ復元する。
このため、
図8(D)の斜線部のように、縦筋12付近ではチューブ管10の外周面が深く切削され、縦溝11付近ではチューブ管10の外周面が浅く切削された状態になる。
【0027】
このようにチューブ管10の外周面に形成される溝は均一な深さではないため、形成された孔形成用型の審美性が悪い問題が生じる。また形成された孔形成用型は審美性が悪いだけでなく、溝の浅い場所では、型枠内に打設されたコンクリートとの接合があまいため、形成されるべき貫通孔から孔形成用型が剥離してしまうおそれがある。
形成されるべき貫通孔から孔形成用型が剥離してしまった状態で打設されたコンクリートが硬化してしまうと、貫通孔を正常に形成することができない。
【0028】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、加工面に不陸がある場合でも、不陸に対応して加工面に所望の加工を安価に施すことができる加工装置および加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明では上記問題を解決するために、被加工物の外周面の周方向に延在する所定の深さの溝を形成する加工装置において、形成する溝に対して直行する方向を軸にして前記被加工物を回転させる回転装置と、回転させた加工工具で前記被加工物の外周面を加工する回転工具と、前記被加工物の外周面の形状に前記回転工具を追従させる追従機構とを備えることを特徴とする加工装置が提供される。
【0030】
これにより、形成する溝に対して直行する方向を軸にして被加工物を回転装置が回転させ、回転させた加工工具で被加工物の外周面を回転工具が加工し、被加工物の外周面の形状に回転工具を追従機構が追従させる。
【0031】
また、本発明では、被加工物の外周面の周方向に延在する所定の深さの溝を形成する加工方法において、形成する溝に対して直行する方向を軸にして前記被加工物を回転装置が回転させる工程と、回転させた加工工具で前記被加工物の外周面を回転工具が加工する工程と、前記被加工物の外周面の形状に前記回転工具を追従機構が追従させる工程とを備えることを特徴とする加工装置が提供される。
【0032】
これにより、形成する溝に対して直行する方向を軸にして被加工物を回転装置が回転させ、回転させた加工工具で被加工物の外周面を回転工具が加工し、被加工物の外周面の形状に回転工具を追従機構が追従させる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の加工装置、および加工方法によれば、形成する溝に対して直行する方向を軸にして被加工物を回転装置が回転させ、回転させた加工工具で被加工物の外周面を回転工具が加工し、被加工物の外周面の形状に回転工具を追従機構が追従させるので、加工面に不陸がある場合でも、不陸に対応して加工面に所望の加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1の実施の形態に係る加工装置全体を示す斜視図である。
【
図2】チューブ管および内部に芯部材が差し込まれた状態のチューブ管を示す軸方向の断面図である。
【
図4】回転工具をチューブ管から離脱した状態と、回転工具をチューブ管に接触させた状態とを示す側面図である。
【
図5】回転工具がチューブ管を加工している状態を示す側面図である。
【
図6】本実施の形態の加工装置によって加工されたチューブ管である孔形成用型の詳細を示す正面図、軸方向断面図、および径方向断面図である。
【
図7】第2の形態に係る加工装置を示す上面図、および加工装置によって加工され
【
図8】押出成形で形成されたチューブ管を加工する工程を示す断面図である。たチューブ管の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る加工装置全体を示す斜視図である。
第1の実施の形態に係る加工装置100は、加工装置100に取り付けられる不陸がある被加工物の加工面に、所望の加工を施すものである。
【0036】
なお、第1の実施の形態の加工装置100、および加工装置100による加工方法では、プレキャストコンクリート造の柱梁接合部に設けられる貫通孔を形成するための孔形成用型を、たとえば押出成形で形成された内周面の軸方向に複数の凹部が互いに周方向に間隔をあけて形成されたチューブ管10の外周面に、複数の凹部である1~2mm程度の環状の溝Mを軸方向に間隔をあけて形成する加工を施す例で以下を説明する。なお、加工装置100が加工するものはチューブ管10に限られるものなく、様々な形状の被加工物に加工を施すことができる。
【0037】
図1に示すように、加工装置100は、内部に芯部材20が差し込まれたチューブ管10を回転させるための回転装置110、回転工具120、および工具移動装置130を備えている。
【0038】
前述のように、チューブ管10の内周面は凹凸形状に形成されており、内面軸方向に多数の縦凹溝が形成されている。
チューブ管10は、ゴムのように膨張及び収縮が可能な材質で形成されているため、中空状態で外周面に凹部を形成しようとすると、チューブ管10が容易に変形してしまい加工が困難である。
【0039】
このため、チューブ管10の外周面に凹部を形成する場合には、チューブ管10の内径よりも大きな芯部材20をチューブ管10の内部に差し込んだ状態で加工することが好ましいが、チューブ管10の内径と同じか、それよりも小さい芯部材20をチューブ管10の内部に差し込んだ状態で加工することもできる。
【0040】
回転装置110は、内部に芯部材20が差し込まれたチューブ管10を芯部材20の軸回りに回転させるための装置であって、回転機構111、軸保持部112、および軸受け部113を備えている。
【0041】
回転機構111は、たとえばサーボモータなどの駆動によりチューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20を軸回りに回転させるためのものである。回転機構111の回転数や回転速度などは、ここでは図示しない制御部によって制御される。また、回転機構111の駆動により回転する回転軸には、芯部材20を保持するための軸保持部112が設けられる。
【0042】
軸保持部112は、軸回りに回転させるチューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20の一方側の端部が取り付けられ、取り付けられた芯部材20の一方側の端部を、回転機構111により回転する回転軸と同軸になるように保持するためのものである。
【0043】
軸受け部113は、軸回りに回転させるチューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20の他方側の端部が取り付けられ、チューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20が水平になるように支持するためのものである。軸受け部113は、芯部材20の長さによって軸方向に全体を移動させることができる。
【0044】
回転工具120は、チューブ管10の外周面に凹部である環状の溝Mを形成加工するためのものであって、回転機構111が回転させる回転軸に平行な軸回りに回転させる回転駆動部121を備えている。
【0045】
回転駆動部121が回転させる回転軸には、回転駆動部121が回転させる回転軸を中心とした円盤状のカッターや円盤状の砥石である加工工具122が取り付けられる。これにより、加工工具122の径方向外側と、回転装置110によって回転するチューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20とが垂直に交わる。
【0046】
なお本実施の形態では、回転工具120に取り付けられる加工工具122の一例を、円盤状のカッターや円盤状の砥石として挙げたが、この他の切削機や切断機、研削機などの工具を採用することもできる。
【0047】
たとえば回転機構111が回転させる回転軸に対して、回転駆動部121が回転させる回転軸を直行するように設け、その回転軸の先端に切削ビットを取り付けることで、チューブ管10の外周面に凹部である環状の溝Mを形成加工させてもよい。
【0048】
回転駆動部121には、被加工物を加工する際に、被加工物の外周面に接触することで外周面の形状や不陸に回転工具120を追従させる追従機構として板状のベース部123が設けられている。
【0049】
ベース部123には、被加工物を加工する加工方向に加工工具122を所定量だけ露出するような切り欠き123Aが形成されており、切り欠き123Aから露出した加工工具122による加工位置を一定に保つように回転駆動部121に連結部を介して連結されている。
【0050】
これにより、切り欠き123Aから加工側に露出する加工工具122の量によって、形成される溝Mの深さが調節され、被加工物の外周面の形状や不陸に回転工具120が追従することができる。
【0051】
つまりチューブ管10と加工中に接するベース部123から、加工側に加工工具122が露出する量を調整することで、加工する溝Mの深さを調整することができ、その調整された深さの溝Mを被加工物の外周面の形状や不陸に追従して形成することができる。
【0052】
または、ベース部123と被加工物の外周面との間に、所望の厚さの板材を介することで、ベース部123から加工側に加工工具122が露出する量を小さくすることができる。このように、ベース部123と被加工物の外周面との間に、加工する溝Mの深さを調整する調整板材を調整部材として介在させることで加工する溝Mの深さを調整することもできる。
【0053】
なお、ベース部123は、ベース部123と回転する被加工物の外周面とによる摩擦抵抗を低減させるために、被加工物の外周面と接触するベース部123の一部に摩擦低減手段としてベアリングなどの軸受部材を設けることができる。また摩擦抵抗を低減させるために潤滑剤を介してベース部123と回転する被加工物の外周面とを接触させることもできる。
【0054】
ベース部123の一端側には、ベース部123の一端側を中心にして、ベース部123の他端側を回動可能に支持する回動支持軸部124が設けられており、工具移動装置130に固定される軸受部125に連結される。
【0055】
軸受部125には、回動支持軸部124を回転機構111の駆動により回転する回転軸に平行になるように支持し、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持する機構に構成されている。
【0056】
回動支持軸部124を中心にして、ベース部123の他端側を上昇させることで、ベース部123に連設された回転工具120が上昇し、チューブ管10の外周面と加工工具122とが離脱する方向に移動する。
【0057】
また、回動支持軸部124を中心にして、ベース部123の他端側を下降させることで、ベース部123に連設された回転工具120が下降し、チューブ管10の外周面と加工工具122とが接触する方向に移動する。
【0058】
工具移動装置130は、回転工具120を回転機構111が回転させる回転軸方向に並行移動させるためのものであって、回転工具120を回転機構111が回転させる回転軸に平行に設けられたガイド部131と、ガイド部131に沿って移動する移動体132を備えている。
【0059】
また工具移動装置130は、ガイド部131に沿って移動体132を移動させるための送り機構を備えることもでき、任意の移動量で移動体132をガイド部131に沿って移動させることができる。
【0060】
本実施の形態の加工装置100による加工方法では、まずチューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20を回転装置110の軸保持部112および軸受け部113に取り付ける。
【0061】
次に、工具移動装置130の動作により、溝Mを形成するべきチューブ管10の任意の位置に合わせて回転工具120を移動する。このとき、回動支持軸部124を中心にしたベース部123の他端側を上昇させておくことで、回転工具120によってチューブ管10を傷つけることがない。
【0062】
次に、回転装置110による回転機構111を駆動させることで、チューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20を回転させる。芯部材20を回転させる回転数や回転速度は、回転工具120に取り付ける加工工具122の種類や、加工する加工量、または被加工物の材質によって任意に選択することができるが、本実施の形態では15~100rpm程度が好ましい。
【0063】
次に、回転工具120による回転駆動部121を駆動させることで、加工工具122を回転させる。このとき、回動支持軸部124を中心にしたベース部123の他端側を上昇させておく。
【0064】
加工工具122を回転させる回転数や回転速度は、回転工具120に取り付ける加工工具122の種類や、加工する加工量、または被加工物の材質によって任意に選択することができるが、本実施の形態では6000~8000rpm程度が好ましい。
【0065】
次に、回動支持軸部124を中心にしたベース部123の他端側を下降させることで、ベース部123に連設された回転工具120が下降し、チューブ管10の外周面と加工工具122とが接触し、チューブ管10の加工が開始される。
【0066】
やがてチューブ管10の加工が進み、ベース部123がチューブ管10の外周面に接することになる。ベース部123は回転駆動部121および加工工具122が連結されているため、回転駆動部121および加工工具122の荷重により、被加工物方向への力がかかり、常にベース部123とチューブ管10の外周面とが接した状態になる。
【0067】
このときベース部123の一方側は、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持されているため、ベース部123とチューブ管10との接触面がチューブ管10の外周面の不陸に合わせて移動する。
【0068】
これにより、ベース部123から露出した加工工具122もベース部123の動きに合わせて移動する。このため、チューブ管10の外周面から加工工具122によって加工される深さは一定になる。
【0069】
回転工具120による加工により、チューブ管10の外周面に所定の深さの環状の溝Mが形成されると、次に回動支持軸部124を中心にしたベース部123の他端側を上昇させてチューブ管10の外周面と加工工具122とが離脱させる。
【0070】
次に、工具移動装置130の動作により、溝Mを形成するべきチューブ管10の任意の位置に合わせて回転工具120を、回転工具120の回転軸方向に並行移動させて、次の加工をくりかえす。
【0071】
以上のように、本実施の形態の加工装置100によって、チューブ管10の外周面に不陸がある場合でも、チューブ管10の周方向に形成した環状の溝Mを、チューブ管10の軸方向に間隔をあけて形成することができ、形成された溝Mの深さは、チューブ管10の外周面から一定の深さで形成した孔形成用型を製造することができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、チューブ管10の外周面に接するベース部123を、外周面の不陸に対応して移動させるため、回動支持軸部124および軸受部125により、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持する機構を選択したが、ベース部123を外周面の不陸に対応して移動できれば他の形態を選択することもできる。
【0073】
またベース部123とチューブ管10の外周面とを安定させて接することができるように、ベース部123の下方に被加工物を位置させ加工方向を鉛直下方向にすることで、ベース部123をチューブ管10の外周面に押し付ける力として回転駆動部121および加工工具122の自重を利用したが、加工方向を水平方向にした場合においては、ベース部123をバネやエアーシリンダー等の弾性力によって被加工物の加工面に押し付ける構造を選択することもできる。
【0074】
図2は、チューブ管および内部に芯部材が差し込まれた状態のチューブ管を示す軸方向の断面図である。
図2(A)は、チューブ管10の詳細を示す軸方向の断面図である。
【0075】
図2(A)に示すように、チューブ管10は、たとえばゴムのように膨張及び収縮が可能な材質で押出成形によって形成された外周面に溝Mが形成される前の状態の管部材である。
【0076】
チューブ管10の内周面は凹凸形状に形成されており、
図2(A)のように内面軸方向に多数の縦溝11が形成されている。また、チューブ管10の内周面には、多数の縦溝11が形成されることで、縦溝11と縦溝11との間には縦筋12が形成されている。
【0077】
チューブ管10は、ゴムのように膨張及び収縮が可能な材質で形成されているため、中空状態で外周面に凹部を形成しようとすると、チューブ管10が容易に変形してしまい加工が困難である。このため、チューブ管10の外周面に凹部を形成する場合には、チューブ管10の内周面との間に隙間が生じないように、チューブ管10の内径よりも大きな芯部材20をチューブ管10の内部に差し込んだ状態で加工する必要がある。
【0078】
図2(B)は、内部に芯部材20が差し込まれた状態のチューブ管10を示す軸方向の断面図である。
図2(B)に示すように、チューブ管10の内部には、チューブ管10の内径よりも大きな芯部材20が差し込まれる。
【0079】
芯部材はチューブ管10の内径よりも大きいため、芯部材と縦筋12とが接触することで、チューブ管10の外周面のうち、内周面に縦筋12が存在する部分が径方向内側から外側へ伸長する。このためチューブ管10の外周面は不陸が生じることになる。
【0080】
図3は、回転工具の詳細を示す側面図である。
図3(A)は、回転工具120の詳細を示す側面図である
図3に示すように、回転駆動部121には、被加工物の外周面に接触することで安定した深さの加工を可能とするために板状のベース部123が設けられている。
【0081】
ベース部123には、加工工具122の一部が加工側に露出するように切り欠き123Aが形成されており、切り欠き123Aによって、ベース部123の下面から加工側に露出する加工工具122の露出量Lによって、切削加工によって形成される溝Mの深さが調節される。
【0082】
ベース部123の下面から加工側に露出する加工工具122の露出量Lを調節する場合には、ベース部123の下面に所望の厚さの板材を介することで、加工工具122の露出量Lは小さくなる。これにより、切削加工によって形成される溝Mの深さが調節される。
【0083】
ベース部123の一端側には棒状の回動支持軸部124が設けられており、工具移動装置130に固定される軸受部125に連結される。
軸受部125には、回動支持軸部124を回転機構111の駆動により回転する回転軸に平行になるように支持し、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持する機構に構成されている。
【0084】
図3(B)は、ベース部123の他端側を上昇させた状態を示す側面図である。
図3(B)に示すように、回動支持軸部124を中心にして、ベース部123の他端側を上昇させることで、ベース部123に連設された回転工具120が上昇し、チューブ管10の外周面と加工工具122とが離脱する方向に移動する。
【0085】
図3(C)は、ベース部123の他端側を下降させた状態を示す側面図である。
図3(C)に示すように、回動支持軸部124を中心にして、ベース部123の他端側を下降させることで、ベース部123に連設された回転工具120が下降し、チューブ管10の外周面と加工工具122とが接触する方向に移動する。
【0086】
図4は、回転工具をチューブ管から離脱した状態と、回転工具をチューブ管に接触させた状態とを示す側面図である。
図4(A)は、回転工具120をチューブ管10から離脱した状態を示す側面図である。
【0087】
図4(A)に示すように、軸受部125には、回動支持軸部124を回転機構111の駆動により回転する回転軸に平行になるように支持し、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持する機構に構成されている。
【0088】
回動支持軸部124を中心にして、ベース部123の他端側を上昇させることで、ベース部123に連設された回転工具120が上昇し、チューブ管10の外周面と加工工具122とが離脱する方向に移動する。
【0089】
図4(B)は、回転工具120をチューブ管10に接触させた状態を示す側面図である。
図4(B)に示すように、回動支持軸部124を中心にして、ベース部123の他端側を下降させることで、ベース部123に連設された回転工具120が下降し、チューブ管10の外周面と加工工具122とが接触する方向に移動する。
【0090】
図5は、回転工具がチューブ管を加工している状態を示す側面図である。
図5(A)は、チューブ管10の外周面の不陸の凸部にベース部123が接触した状態で加工している状態を示す側面図である。
【0091】
ベース部123の一方側は、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持されているため、ベース部123の他端側がチューブ管10の外周面の不陸である凸部に合わせてベース部123の他端側が移動する。
【0092】
図5(B)は、回転装置110によってチューブ管10の内部に差し込まれた芯部材20が回転し、チューブ管10の外周面の不陸の凹部にベース部123が接触した状態で加工している状態を示す側面図である。
【0093】
ベース部123の一方側は、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持されているため、ベース部123の他端側がチューブ管10の外周面の不陸面に合わせてベース部123の他端側が移動し、やがてベース部123の他端側がチューブ管10の外周面の不陸である凹部に合わせてベース部123の他端側が移動する。
【0094】
図5(C)は、チューブ管10の外周面の不陸の凸部にベース部123が接触した状態で加工している状態を示す側面図である。
ベース部123の一方側は、回動支持軸部124を中心にベース部123をヒンジ状に回動自在に支持されているため、ベース部123の他端側がチューブ管10の外周面の不陸面に合わせてベース部123の他端側が移動し、やがてチューブ管10の外周面の不陸である凸部に合わせてベース部123の他端側が移動する。
【0095】
以上のように、ベース部123は、チューブ管10の外周面の不陸面に合わせて接触した状態を保ちながら、そのチューブ管10の外周面の不陸面に合わせてベース部123の他端側が移動する。これによりチューブ管10の外周面の不陸面から一定の深さの溝Mを形成することができる。
【0096】
図6は、本実施の形態の加工装置によって加工されたチューブ管である孔形成用型の詳細を示す正面図、軸方向断面図、および径方向断面図である。
図6に示すように、チューブ管10の外周面に溝Mを加工して形成するために内部に差し込まれていた芯部材20を加工後に抜き取ることで孔形成用型が完成する。
【0097】
環状の外周面を備えていたチューブ管10の内部に芯部材20を挿し込むことで不陸が生じていた外周面は、芯部材20を抜き取ることで外周面が環状に復元する。
このとき、不陸状の外周面に沿って一定の深さで形成されていた溝Mも、芯部材20を抜き取ることで、外周面の復元にともなって環状に復元する。これにより、外周面に形成される溝Mの深さが一定に形成された孔形成用型を形成することができる。
【0098】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の加工装置は、芯部材の軸回りに回転させる回転装置の回転軸に対して、加工工具の加工方向を任意の角度に変更する加工角度変更部を備えること以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0099】
図7は、第2の形態に係る加工装置を示す上面図、および加工装置によって加工されたチューブ管の正面図である。
図7(A)は、第2の形態に係る加工装置100を示す上面図である。
図7(A)に示すように、加工装置100は、回転装置110、回転工具120、および工具移動装置130を備えている。
【0100】
工具移動装置130は、回転工具120を回転機構111が回転させる回転軸方向に並行移動させるためのものであって、回転工具120を回転機構111が回転させる回転軸に平行に設けられたガイド部131と、ガイド部131に沿って移動する移動体132と、加工角度変更部133を備えている。
【0101】
加工角度変更部133は、加工工具122がチューブ管10に溝を形成する加工方向を任意の角度に変更するためのものであって、移動体132と回転工具120との間に介在されている。
【0102】
加工角度変更部133は、移動体132から垂直方向を軸として、その軸まわりに回転工具を任意の角度に回転させることができる。これにより、加工工具122がチューブ管10に溝を形成する加工方向を任意の角度に変更することができる。
【0103】
第2の形態に係る加工装置100では、加工工具122がチューブ管10に溝を形成する加工を行いながら、工具移動装置130により回転工具120を加工方向に移動することで、
図7(B)のように、チューブ管10に螺旋状の溝Mを形成することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 チューブ管
11 縦溝
12 縦筋
20 芯部材
100 加工装置
110 回転装置
111 回転機構
112 軸保持部
113 軸受け部
120 回転工具
121 回転駆動部
122 加工工具
123 ベース部
123A 切り欠き
124 回動支持軸部
125 軸受部
130 工具移動装置
131 ガイド部
132 移動体
133 加工角度変更部
L 露出量
M 溝