IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図1
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図2
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図3
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図4
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図5
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図6
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図7
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図8
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図9
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図10
  • 特開-密閉型圧縮機及びその使用方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047411
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】密閉型圧縮機及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20240329BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20240329BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20240329BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F04B39/12 J
F04C29/12 C
F04C29/04 J
F04C18/356 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153015
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 達也
(72)【発明者】
【氏名】上田 健史
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 浩志
(72)【発明者】
【氏名】多田 直人
(72)【発明者】
【氏名】秋本 諒
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄大
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003CD01
3H003CD06
3H003CE02
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB14
3H129CC02
3H129CC07
3H129CC09
3H129CC26
(57)【要約】
【課題】仕切り部材とアキュムレータ容器との接合部での接合不良の有無に関わらず、仕切り部材によって仕切られた断熱空間からアキュムレータ容器内へと空気が流入するのを防ぐ。
【解決手段】密閉型圧縮機は、冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦型筒状の圧縮機本体容器と、吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、圧縮機本体容器の内部に配置されてアキュムレータ容器から吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して吐出管から吐出する圧縮部と、圧縮機本体容器の内部に配置されて圧縮部を駆動するモータと、を備える。アキュムレータ容器は、圧縮機本体容器の下部に接合される。アキュムレータ容器の内部には、内部を断熱部とアキュムレータ部とに仕切る仕切り部材が接合される。断熱部は、仕切り部材と圧縮機本体容器との間に形成されるとともに、冷媒が内部に充填される断熱空間を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦型筒状の圧縮機本体容器と、前記吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記アキュムレータ容器から前記吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して前記吐出管から吐出する圧縮部と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記圧縮部を駆動するモータと、を備える密閉型圧縮機であって、
前記アキュムレータ容器は、前記圧縮機本体容器の下部に接合され、
前記アキュムレータ容器の内部には、当該内部を断熱部とアキュムレータ部とに仕切る仕切り部材が接合され、
前記断熱部は、前記仕切り部材と前記圧縮機本体容器との間に形成されるとともに、冷媒が内部に充填される断熱空間を有する、密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記アキュムレータ容器には、前記断熱空間に冷媒を充填するための充填穴が、前記断熱空間と前記アキュムレータ容器の外部とを繋ぐように設けられる、
請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記仕切り部材には、前記断熱空間と前記アキュムレータ部とを連通させる連通穴が設けられる、
請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記アキュムレータ容器は、冷媒を前記アキュムレータ部に吸入するアキュムレータ吸入管を有し、
前記連通穴の開口面積は、前記アキュムレータ吸入管の流路断面積よりも小さい、
請求項3に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
前記アキュムレータ容器は、冷媒を前記アキュムレータ部に吸入するアキュムレータ吸入管を有し、
前記アキュムレータ吸入管は、前記充填穴と前記アキュムレータ吸入管とを接続して前記断熱空間に冷媒を送る分岐管を有する、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項6】
前記アキュムレータ容器には、前記断熱空間から冷媒を排出する排出穴が設けられ、
前記排出穴には排出管が接続され、当該排出管を通して、前記密閉型圧縮機が接続された冷媒回路の配管に冷媒を戻す、
請求項5に記載の密閉型圧縮機。
【請求項7】
前記アキュムレータ容器は、一端側に開口が形成されたカップ状のアキュムレータシェルを有し、前記アキュムレータシェルの前記開口側が前記圧縮機本体容器に接合される、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項8】
冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦型筒状の圧縮機本体容器と、前記吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記アキュムレータ容器から前記吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して前記吐出管から吐出する圧縮部と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記圧縮部を駆動するモータと、を備え、前記圧縮機本体容器の下部に接合された前記アキュムレータ容器の内部に、当該内部を断熱部とアキュムレータ部とに仕切る仕切り部材が接合され、前記断熱部が前記仕切り部材と前記圧縮機本体容器との間に形成された密閉型圧縮機を用いて、
前記断熱部の内部における断熱空間と前記アキュムレータ容器の外部とを繋ぐように設けられた充填穴から、前記断熱空間に冷媒を充填し、
前記充填穴を封止する、密閉型圧縮機の使用方法。
【請求項9】
冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦型筒状の圧縮機本体容器と、前記吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記アキュムレータ容器から前記吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して前記吐出管から吐出する圧縮部と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記圧縮部を駆動するモータと、を備え、前記圧縮機本体容器の下部に接合された前記アキュムレータ容器の内部に、当該内部を断熱部とアキュムレータ部とに仕切る仕切り部材が接合され、前記断熱部が前記仕切り部材と前記圧縮機本体容器との間に形成された密閉型圧縮機を用いて、
前記アキュムレータ部に冷媒を供給し、
前記アキュムレータ部から、前記断熱部の内部における断熱空間と前記アキュムレータ部とを連通させるように前記仕切り部材に設けられた連通穴を通して、前記断熱空間に冷媒を充填する、密閉型圧縮機の使用方法。
【請求項10】
冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦型筒状の圧縮機本体容器と、前記吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記アキュムレータ容器から前記吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して前記吐出管から吐出する圧縮部と、前記圧縮機本体容器の内部に配置されて前記圧縮部を駆動するモータと、を備え、前記圧縮機本体容器の下部に接合された前記アキュムレータ容器の内部に、当該内部を断熱部とアキュムレータ部とに仕切る仕切り部材が接合され、冷媒を前記アキュムレータ部に吸入するアキュムレータ吸入管が前記アキュムレータ容器に設けられ、前記断熱部が前記仕切り部材と前記圧縮機本体容器との間に形成された密閉型圧縮機を用いて、
前記アキュムレータ吸入管に冷媒を供給し、
前記断熱部の内部における断熱空間と前記アキュムレータ容器の外部とを繋ぐように設けられた充填穴と、前記アキュムレータ吸入管とを接続する分岐管を通して、前記充填穴から前記断熱空間に冷媒を充填する、密閉型圧縮機の使用方法。
【請求項11】
前記断熱空間に充填された冷媒を、前記アキュムレータ容器の排出穴に接続された排出管を通して、前記密閉型圧縮機が接続された冷媒回路の配管へ戻す、
請求項10に記載の密閉型圧縮機の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型圧縮機及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型圧縮機としては、縦型円筒状の圧縮機本体容器の内部に圧縮部と圧縮部を駆動するモータを収容し、圧縮機本体容器の下方に、冷媒を気体冷媒と液体冷媒とに分離して気体冷媒を圧縮部に供給するアキュムレータ容器が設けられたものが知られている(以下、アキュムレータ一体型圧縮機とも称する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-202682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなアキュムレータ一体型圧縮機では、アキュムレータ容器の内部を断熱部とアキュムレータ部とに仕切る仕切り部材がアキュムレータ容器内に接合され、圧縮機本体容器のボトムシェルと仕切り部材との間に断熱空間を形成することで、圧縮機本体容器内の熱がアキュムレータ容器のアキュムレータ部に伝わることを抑える構造が考えられている。しかし、この構造は、仕切り部材の外周部とアキュムレータ容器の内周面との接合部に接合不良が生じるおそれがある。接合部に接合不良が生じた場合には、接合部を通してアキュムレータ部と断熱空間とが連通してしまい、断熱空間内の空気が接合部からアキュムレータ部へ流入するおそれがある。断熱空間内の空気がアキュムレータ部へ流入した場合、アキュムレータ部の内部の冷媒の温度が上昇する他、圧縮部に供給される冷媒の温度の上昇による圧縮効率の低下、アキュムレータ部の内部に溜まった潤滑油の劣化、その空気中に残留する水分による圧縮部の損傷などが生じる可能性がある。
【0005】
一般に、密閉型圧縮機の密閉性が保たれているかを検査するために、圧縮機本体容器の内部に検査気体(窒素等)を封入した上で、密閉された圧縮機本体容器の接合部からの検査気体の漏れの有無を確認することが行われている。しかし、アキュムレータ容器の内部に仕切り部材が配置されて、アキュムレータ容器と仕切り部材とを接合(例えば溶接)した構造の場合、アキュムレータ容器と仕切り部材との接合部に接合不良があったとしても、アキュムレータ容器と圧縮機本体容器との接合部に接合不良が無ければ、検査気体がアキュムレータ容器の外部に漏れることがない。そのため、アキュムレータ容器内に封入した検査気体の漏れを確認するだけでは、アキュムレータ容器の内部の仕切り部材とアキュムレータ容器との接合部での接合不良を見落とすおそれがあり、その場合、断熱空間からアキュムレータ容器内に空気が流入する可能性がある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、仕切り部材とアキュムレータ容器との接合部での接合不良の有無に関わらず、仕切り部材で仕切られた断熱空間からアキュムレータ容器内へと空気が流入するのを防ぐことができる密閉型圧縮機及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様は、冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦型筒状の圧縮機本体容器と、吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、圧縮機本体容器の内部に配置されてアキュムレータ容器から吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して吐出管から吐出する圧縮部と、圧縮機本体容器の内部に配置されて圧縮部を駆動するモータと、を備える密閉型圧縮機であって、アキュムレータ容器は、圧縮機本体容器の下部に接合され、アキュムレータ容器の内部には、この内部を断熱部とアキュムレータ部とに仕切る仕切り部材が接合され、断熱部は、仕切り部材と圧縮機本体容器との間に形成されるとともに、冷媒が内部に充填される断熱空間を有する。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様によれば、仕切り部材とアキュムレータ容器との接合部での接合不良の有無に関わらず、仕切り部材で仕切られた断熱空間からアキュムレータ容器内へと空気が流入するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例1のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。
図3図3は、実施例1の要部を示す縦断面図である。
図4図4は、実施例1と比較例のロータリ圧縮機の各部の温度を説明するための図である。
図5図5は、実施例1と比較例の吐出温度を比較して示す図である。
図6図6は、実施例1と比較例の体積効率を比較して示す図である。
図7図7は、実施例1と比較例の1次COPを比較して示す図である。
図8図8は、実施例1と比較例のAPFを比較して示す図である。
図9図9は、実施例2の要部を示す縦断面図である。
図10図10は、実施例3の要部を示す縦断面図である。
図11図11は、実施例4の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する密閉型圧縮機及びその使用方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する密閉型圧縮機及びその使用方法が限定されるものではない。
【実施例0011】
(ロータリ圧縮機の構成)
本実施例では、密閉型圧縮機の一例として、ロータリ圧縮機について説明する。図1は、実施例1のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。図2は、実施例1のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、圧縮機本体容器10の内部に、吸入管としての圧縮部吸入管102から冷媒を吸入して圧縮した冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出する圧縮部12と、圧縮部12を駆動するモータ11と、が収容され、圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出し、さらに吐出管107を通して冷媒回路に吐出する内部高圧型の密閉型圧縮機である。
【0013】
圧縮機本体容器10は、縦型円筒状のメインシェル10aと、カップ状のトップシェル10bと、カップ状のボトムシェル10cと、を有し、メインシェル10aの上端部にトップシェル10bの開口側10gが第1の溶接部Vで溶接によって固定されており、メインシェル10aの下端部にボトムシェル10cの開口側10dが第2の溶接部Wで溶接によって固定されることにより構成されている。
【0014】
冷媒回路の低圧冷媒を圧縮部12に吸入するための圧縮部吸入管102がメインシェル10aを貫通して設けられている。詳しくは、メインシェル10aにガイド管101がろう付けされて固定され、圧縮部吸入管102はガイド管101の内側を通ってガイド管101にろう付けされて固定されている。
【0015】
圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部から冷媒回路に吐出するための吐出管107がトップシェル10bを貫通して設けられている。吐出管107はトップシェル10bに直接ろう付けされて固定されている。
【0016】
圧縮機本体容器10の下方には、冷媒回路から吸入される低圧冷媒の気液を分離して気体冷媒だけを圧縮部12に吸入させるためのアキュムレータ容器25が設けられている。詳しくは、圧縮機本体容器10におけるメインシェル10aとボトムシェル10cの第2の溶接部Wよりも下方の位置で、アキュムレータシェル26の開口側26aをボトムシェル10cの反開口側10eに第3の溶接部Xで溶接によって固定してアキュムレータシェル26の内部が密閉されることによりアキュムレータ容器25が形成されている。
【0017】
アキュムレータシェル26には、冷媒回路から冷媒をアキュムレータ容器25の内部(後述するアキュムレータ部36の内部空間36a)に吸入するアキュムレータ吸入管27と、アキュムレータ容器25の内部から気体冷媒を送る気液分離管31と、がそれぞれアキュムレータシェル26を貫通してアキュムレータシェル26にろう付けされて固定されている。
【0018】
気液分離管31はアキュムレータ容器25の外部で連絡管104を介して圧縮部吸入管102に接続されている。
【0019】
アキュムレータシェル26の下部には、ロータリ圧縮機1全体を支持するベース部材310が溶接によって固定されている。
【0020】
圧縮部12は、シリンダ121と、上端板160Tと、下端板160Sと、回転軸15を有し、上端板160T、シリンダ121、下端板160Sは順に積層され複数のボルト175により固定されている。上端板160Tには主軸受部161Tが設けられている。下端板160Sには副軸受部161Sが設けられている。回転軸15には主軸部153と偏心部152と副軸部151と、が設けられている。回転軸15の主軸部153が上端板160Tの主軸受部161Tに篏合し、回転軸15の副軸部151が下端板160Sの副軸受部161Sに篏合することにより、回転軸15は回転自在に支持される。
【0021】
モータ11は、外側に配置されたステータ111と、内側に配置されたロータ112と、を有している。ステータ111は、メインシェル10aの内周面に焼嵌め固定されている。ロータ112は、回転軸15に焼嵌め固定されている。
【0022】
圧縮機本体容器10の内部には、圧縮部12の摺動部材の潤滑および圧縮室内の高圧部と低圧部とのシールのために、圧縮部12がほぼ浸漬する量の潤滑油18が封入されている。
【0023】
次に、図2によって圧縮部12を詳しく説明する。
シリンダ121には内部に円筒状の中空部130が設けられ、中空部130にはピストン125が配置されている。ピストン125は回転軸15の偏心部152に篏合している。シリンダ121には中空部130から外向きに設けられた溝部が設けられ、溝部にはベーン127が配置されている。シリンダ121には外周から溝部に通じるスプリング穴124が設けられ、スプリング穴124にはスプリング126が配置されている。ベーン127の一端がスプリング126によってピストン125に押し当てられることにより、シリンダ121の中空部130においてピストン125の外側の空間が吸入室133と吐出室131に区画される。シリンダ121には、外周から吸入室133に連通する吸入穴135が設けられている。吸入穴135には圧縮部吸入管102が接続される。上端板160Tには、上端板160Tを貫通して吐出室131に連通する吐出穴190が設けられている。上端板160Tには、吐出穴190を開閉する吐出弁200と、吐出弁200の反りを規制する吐出弁押さえ201と、がリベット202によって固定されている。上端板160Tの上側には、吐出穴190を覆う上端板カバー170が配置され、上端板160Tと上端板カバー170とで閉塞される上端板カバー室180を形成する。上端板カバー170は、上端板160Tとシリンダ121とを固定する複数のボルト175によって上端板160Tに固定される。上端板カバー170には、上端板カバー室180と圧縮機本体容器10の内部を連通する上端板カバー吐出穴172が設けられている。
【0024】
以下に、回転軸15の回転による吸入冷媒の流れを説明する。
回転軸15の回転によって、回転軸15の偏心部152に嵌合されたピストン125が公転運動することにより、吸入室133が容積を拡大しながら冷媒を吸入する。冷媒の吸入経路として、冷媒回路の低圧冷媒は、アキュムレータ吸入管27を通してアキュムレータ容器25の内部に吸入され、アキュムレータ容器25に吸入された冷媒に液が混ざっていた場合にはアキュムレータ容器25内の下部に滞留し、気体冷媒だけがアキュムレータ容器25の内部の上方に開口した気液分離管31に吸入される。気液分離管31に吸入された気体冷媒は、連絡管104と圧縮部吸入管102とを通って吸入室133に吸入される。冷媒回路から吸入される冷媒のうち液冷媒の量が多い場合は、アキュムレータ容器25の内部において液冷媒の液面が気液分離管31の開口端31bよりも上昇して多量の液冷媒が気液分離管31に流れ込む可能性がある。気液分離管31を通して圧縮部12に多量の液冷媒が流れ込むと圧縮部12を損傷させる原因となる。気液分離管31に多量の液冷媒が流れ込むことを防止するため、気液分離管31には液冷媒を少量ずつ気液分離管31に吸入させるための液戻し穴34が設けられている。
【0025】
次に、回転軸15の回転による吐出冷媒の流れを説明する。
回転軸15の回転によって、回転軸15の偏心部152に嵌合されたピストン125が公転運動することにより、吐出室131が容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が吐出弁200の外側の上端板カバー室180の圧力よりも高くなると、吐出弁200が開いて吐出室131から上端板カバー室180へ冷媒を吐出する。上端板カバー室180に吐出された冷媒は、上端板カバー170に設けられた上端板カバー吐出穴172から圧縮機本体容器10内に吐出される。
【0026】
圧縮機本体容器10内に吐出された冷媒は、ステータ111外周に設けられた上下を連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間115(図1参照)を通ってモータ11の上方に導かれ、トップシェル10bに設けられた吐出管107から冷媒回路に吐出される。
【0027】
次に、潤滑油18の流れを説明する。
圧縮機本体容器10内の下部に封入されている潤滑油18は、回転軸の遠心力により回転軸の内部(図示せず)を通って圧縮部12に供給される。圧縮部12に供給された潤滑油18は、冷媒に巻き込まれ霧状となって冷媒とともに圧縮機本体容器10の内部に排出される。霧状となって圧縮機本体容器10の内部に排出された潤滑油18はモータ11の回転力によって遠心力で冷媒と分離され、油滴となって再び圧縮機本体容器10内の下部に戻る。しかしながら一部の潤滑油18は分離されずに冷媒とともに冷媒回路に排出される。冷媒回路に排出された潤滑油18は冷媒回路を循環してアキュムレータ容器25に戻り、アキュムレータ容器25の内部で分離されアキュムレータ容器25内の下部に滞留する。アキュムレータ容器25内の下部に滞留した潤滑油18は液冷媒とともに液戻し穴34を通って少量ずつ気液分離管31に流入し、吸入冷媒とともに吸入室133に吸入される。
【0028】
(ロータリ圧縮機の特徴的な構成)
次に、実施例1のロータリ圧縮機1の特徴について説明する。実施例1における特徴には、図1に示すように、アキュムレータ容器25の内部に、冷媒が充填される断熱部35が設けられている点が含まれる。
【0029】
(断熱部の構造)
図3は、実施例のロータリ圧縮機1を示す斜視図である。図1及び図3に示すように、アキュムレータ容器25のアキュムレータシェル26の内部には、この内部を断熱部35とアキュムレータ部36とに仕切る仕切り部材28が接合されている。断熱部35は、仕切り部材28と圧縮機本体容器10のボトムシェル10cとの間に形成されるとともに、冷媒が内部に充填される断熱空間35aを有する。断熱部35によって、圧縮機本体容器10からアキュムレータ容器25への熱伝達が遮られる。これにより、圧縮機本体容器10の内部で発生した熱によってアキュムレータ容器25内の冷媒が加熱されることが抑えられる。
【0030】
アキュムレータ容器25は、上述したようにアキュムレータシェル26の上端部である開口側26aが圧縮機本体容器10のボトムシェル10cに接合された第3の溶接部Xを有する。仕切り部材28の周壁28aは、仕切り部材28の外周縁をアキュムレータシェル26の上方に向かうように湾曲して形成されている。仕切り部材28の湾曲された周壁28aの外周面は、アキュムレータシェル26の内周面に第4の溶接部Yによって接合されている。また、アキュムレータシェル26の各第3の溶接部X、第4の溶接部Yは、アキュムレータシェル26の周方向にわたって形成されている。
【0031】
したがって、アキュムレータシェル26において、圧縮部12へ供給する冷媒が導入されるアキュムレータ部36は、仕切り部材28によって密閉されている。また、断熱部35の断熱空間35aは、アキュムレータシェル26の開口側26aと、圧縮機本体容器10のボトムシェル10cと、仕切り部材28とによって形成されている。よって、断熱部35の断熱空間35aは、圧縮機本体容器10の上下方向から見たときにボトムシェル10cの径方向に沿う平面上にボトムシェル10cを投影した投影領域の全域に重なって形成されている。このため、断熱空間35aによって、圧縮機本体容器10内の熱がアキュムレータ部36へ伝わることがボトムシェル10cの全域にわって遮られる。このように圧縮機本体容器10内からアキュムレータ部36の内部空間36aへの伝熱が断熱部35によって抑制されることで、アキュムレータ容器25(アキュムレータ部36)内の冷媒の温度が上昇することを抑制できる。
【0032】
なお、図示しないが、仕切り部材28の周壁28aは、アキュムレータシェル26の下方に向かうように湾曲してもよい。この構造によれば、断熱空間35aを小さくし、上下方向に対してアキュムレータ容器25の小型化を図る場合に有効である。
【0033】
アキュムレータ容器25には、断熱部35の断熱空間35aとアキュムレータシェル26の外側とを繋げる充填穴37が、アキュムレータシェル26の周壁26bを貫通して設けられている。また、アキュムレータ吸入管27は、断熱空間35aに冷媒を送る分岐管38を有する。分岐管38は、一端が充填穴37と接続されており、他端がアキュムレータ吸入管27と接続されている。アキュムレータシェル26の外部には、分岐管38が充填穴37にろう付けされて接合された第5の溶接部Qが形成されている。
【0034】
断熱部35には、アキュムレータ吸入管27を流れる冷媒が、分岐管38を通って送られて充填穴37から断熱空間35a内に充填される。これにより、断熱空間35a内が冷媒で満たされるので、仕切り部材28とアキュムレータ容器25との接合部である第4の溶接部Yに接合不良があったとしても、断熱空間35aからアキュムレータ部36の内部空間36aへは冷媒が流入するだけで空気が流入することはない。したがって、第4の溶接部Yの接合不良の有無に関わらず、仕切り部材28で仕切られた断熱空間35aからアキュムレータ容器25内へと空気が流入するのを防ぐことができる。このように断熱部35は、断熱空間35aと、断熱空間35aに充填される冷媒とによって構成されている。
【0035】
本実施例1は、第4の溶接部Yに接合不良が生じたときの問題として、断熱空間35a内の空気がアキュムレータ部36の内部空間36aへ流入することで、アキュムレータ部36の内部空間36aの冷媒の温度が上昇し、圧縮部12に供給される冷媒の温度上昇に伴って圧縮部12の圧縮効率が低下することを、断熱空間35a内を冷媒で満たしておくことによって防ぐことができる。また、第4の溶接部Yに接合不良が生じたときに最悪の場合、アキュムレータ部36の内部空間36aに冷媒と共に吸入された潤滑油18が、断熱空間35a内からアキュムレータ部36に流入した空気と共に圧縮部12へ送られたときに、空気と混合された潤滑油18が圧縮部12で燃焼して圧縮部12が損傷する、いわゆるディーゼル爆発が起こり得る懸念を解消できる。
【0036】
(実施例1と比較例との比較)
断熱部35の断熱空間35aに冷媒が充填された実施例1と、断熱部35が設けられていない比較例とを比較した結果について説明する。ここで比較例の構造は、実施例1における仕切り部材28、充填穴37、分岐管38を有しておらず、断熱部35以外の他の構造は、実施例1と同様である。また、暖房定格運転を行ったときの実施例1と比較例を比較する。図4図7において実施例1を実線で示し、比較例を破線で示す。
【0037】
図4は、実施例1と比較例のロータリ圧縮機1の各部の温度を説明するための図であり、ロータリ圧縮機1を暖房定格出力(9.0kW)で運転したときの測定温度である。図4において縦軸が温度[℃]を示す、横軸がロータリ圧縮機1の温度測定位置を示す。図4において実施例1を実線(T3)で示し、比較例を破線(T3’)で示す。
【0038】
図3及び図4に示すように、実施例1のロータリ圧縮機1において、圧縮機本体容器10内の温度T1(ボトムシェル10c内に溜められた潤滑油18の温度T1)が70.4[℃]であり、断熱部35内の温度T2(断熱空間35aの冷媒の温度T2)が38.8℃であり、アキュムレータ部36内の温度T3(内部空間36aに吸入された冷媒の温度T3)が9.0℃である。すなわち、各部の温度は、T1>T2>T3の関係となっている。また、図4に示されるように、実施例1におけるアキュムレータ部36内の温度T3は、比較例(断熱部なし)のアキュムレータ部36内の温度T3’と比べ、温度が3℃程度低い。このように、実施例1における圧縮機本体容器10内とアキュムレータ部36内との温度差(T1-T3)が、比較例における圧縮機本体容器10内とアキュムレータ部36内との温度差(T1’-T3’)よりも大きい。したがって、実施例1のロータリ圧縮機1は、比較例のロータリ圧縮機に比べて、圧縮機本体容器10内の熱がアキュムレータ部36の内部空間36aの冷媒に伝わることが断熱部35によって抑えられており、その結果、アキュムレータ部36内の冷媒が低温に保たれている。なお、実施例1のロータリ圧縮機1において、断熱空間35aの内部に冷媒が充填された場合と、断熱空間35aの内部に空気が充填された場合とでは、断熱部35としての断熱効果には殆ど差がないことが分かっている。
【0039】
図5は、実施例1と比較例の吐出温度を比較して示す図である。図5において縦軸が、圧縮部12から吐出された冷媒の吐出温度[℃]を示し、横軸が圧縮部12の回転軸15の1秒間当たりの回転数[rps]を示す。図5に示すように、実施例1は、比較例よりも冷媒の吐出温度が1.5[℃]程度低い。
【0040】
図6は、実施例1と比較例の体積効率を比較して示す図である。図6において、縦軸が体積効率[%]を示し、横軸が圧縮部12の回転軸15の1秒間当たりの回転数[rps]を示す。図6に示すように、実施例1は、比較例よりも体積効率が1[%]程度大きくなり、ロータリ圧縮機1の性能を高められる。
【0041】
図7は、実施例1と比較例の1次エネルギー消費効率(成績係数):1次COP(Coefficient Of Performance)を比較して示す図である。図7において、縦軸が、3種類の暖房定格出力(8.0kW、9.0kW、10.0kW)のそれぞれにおける、1次COPの変化率[%](=「実施例1の1次COP[-]」/「比較例の1次COP[-]」)を示す。図7に示すように、いずれの暖房定格出力においても、1次COPの変化率が100[%]を上回っていることから、実施例1は、比較例よりも1次COPが高くなり、ロータリ圧縮機1の性能を高められる。例えば、暖房定格出力が8.0kWのときは、実施例1は比較例を基準としたときに1次COPが約0.6[%]高められ、暖房定格出力が9.0kWのときは、実施例1は比較例を基準としたときに1次COPが0.9[%]高められ、暖房定格出力が10.0kWのときは、実施例1は比較例を基準としたときに1次COPが約1.5[%]高められる。
【0042】
図8は、実施例1のロータリ圧縮機1と比較例のロータリ圧縮機のそれぞれを、暖房定格出力(9.0kW)で運転したときの、通年エネルギー消費効率:APF(Annual Performance Factor)を比較して示す図である。図8において縦軸は、APFの変化率(=「実施例1のAPF[-]」/「比較例の1次COP[-]」)を示す。APFの変化率が100[%]を上回っていることから、実施例1は、比較例よりもAPFが高くなり、ロータリ圧縮機1の性能を高められる。例えば、実施例1は比較例を基準としたときに、APFが約0.8[%]高められる。
【0043】
(実施例1のロータリ圧縮機の使用方法)
以上のように構成された実施例1のロータリ圧縮機1は、冷媒回路の配管と接続されて、ロータリ圧縮機1の利用を開始するときに断熱部35の断熱空間35aに冷媒が充填される。実施例1のロータリ圧縮機1、およびロータリ圧縮機1が搭載される冷凍サイクル装置(例えば空気調和機)は、ロータリ圧縮機1の利用を開始する直前に、ロータリ圧縮機1のアキュムレータ部36に接続された冷媒回路を構成する各配管の内部が真空引きによって真空にされ、その後、アキュムレータ部36の内部および冷媒回路を構成する各配管の内部に冷媒が充填される。実施例1のロータリ圧縮機1の使用方法は、分岐管38を備えたアキュムレータ吸入管27に冷媒を供給することで、アキュムレータ吸入管27の分岐管38を通して、充填穴37から断熱部35の断熱空間35aに冷媒を充填する。これにより、断熱部35の断熱空間35aに冷媒が充填されたロータリ圧縮機1を使用できる。
【0044】
(実施例1の効果)
上述したように実施例1のロータリ圧縮機1は、圧縮機本体容器10の下部に接合されたアキュムレータ容器25の内部に、この内部を断熱部35とアキュムレータ部36とに仕切る仕切り部材28が接合されている。断熱部35は、仕切り部材28と圧縮機本体容器10のボトムシェル10cとの間に形成されるとともに、冷媒が内部に充填される断熱空間35aを有する。これにより、仕切り部材28の周壁28aとアキュムレータ容器25のアキュムレータシェル26の内周面との接合部(第4の溶接部Y)の接合不良の有無に関わらず、仕切り部材28で仕切られた断熱空間35aからアキュムレータ容器25内へと空気が流入するのを防ぐことができる。このため、本実施例1は、第4の溶接部Yに接合不良が生じた場合に、断熱空間35a内の空気がアキュムレータ部36の内部空間36aへ流入することで、アキュムレータ部36の内部空間36aの冷媒の温度が上昇し、圧縮部12に供給される冷媒の温度上昇に伴って圧縮部12の圧縮効率が低下することを、断熱空間35a内を冷媒で満たしておくことによって防ぐことができる。
【0045】
また、実施例1のロータリ圧縮機1のアキュムレータ吸入管27は、アキュムレータ吸入管27と充填穴37とを接続する分岐管38を有する。これにより、ロータリ圧縮機1を設置して使用を開始するときにアキュムレータ吸入管27からアキュムレータ部36へ冷媒を送りながら、分岐管38を通して断熱部35に冷媒を容易に充填することができる。これにより、例えば、断熱部35への冷媒の充填を、アキュムレータ部36に接続された冷媒回路の配管への冷媒の充填と同時に行うことができ、断熱部35への充填作業を容易化できる。
【0046】
以下、他の実施例について図面を参照して説明する。他の実施例において、実施例1と同一の構成部材には、実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例0047】
図9は、実施例2の要部を示す縦断面図である。実施例2は、実施例1の構造に、断熱部35から冷媒を排出する構造が加えられている。
【0048】
図9に示すように、実施例2のロータリ圧縮機2のアキュムレータ容器25には、断熱部35の断熱空間35aから冷媒を排出する排出穴39が、断熱部35に対向する位置に、アキュムレータシェル26を貫通して設けられている。また、アキュムレータ容器25の排出穴39には、排出管40の一端が接続されている。排出管40の他端は、実施例2のロータリ圧縮機2を備える不図示の冷凍サイクル装置の冷媒回路における、減圧手段(膨張弁等)よりも冷媒の流れ方向の上流側の配管と接続されている。アキュムレータシェル26の外部には、排出管40が排出穴39にろう付けされて接合された第6の溶接部Rが形成されている。
【0049】
実施例2では、断熱部35が排出穴39及び排出管40によって冷媒回路の配管と接続されることにより、アキュムレータ吸入管27からアキュムレータ部36に吸入される冷媒の一部を、分岐管38を通して充填穴37から断熱空間35aに充填し、断熱空間35aの冷媒を排出穴39から排出し、排出管40を通して冷媒回路の配管へ戻すことが可能になる。
【0050】
このように実施例2では、アキュムレータ吸入管27を流れる冷媒が、分岐管38、充填穴37から断熱部35の断熱空間35aに流入し、断熱空間35aの冷媒が排出穴39、排出管40から流出することにより、断熱空間35aの冷媒が冷媒回路を循環するように流れる。このため、圧縮機本体容器10から断熱部35に伝わる熱によって断熱部35の断熱空間35a内の冷媒の温度が上昇した場合であっても、排出穴39、排出管40を通して、断熱空間35a内の冷媒が、新たな冷媒と交換される。その結果、アキュムレータ吸入管27からの低温の冷媒が断熱空間35aに常に流入し、断熱部35の断熱空間35aに充填された冷媒の温度が一定に保たれるので、圧縮機本体容器10からアキュムレータ部36への伝熱を更に抑制できるとともに、断熱部35による断熱性の低下を抑えられる。
【0051】
(実施例2のロータリ圧縮機の使用方法)
以上のように構成された実施例2のロータリ圧縮機2は、冷媒回路の配管と接続されて、ロータリ圧縮機2の利用を開始するときに断熱部35の断熱空間35aに冷媒が充填される。ロータリ圧縮機2の使用方法は、アキュムレータ吸入管27に冷媒を供給し、アキュムレータ吸入管27の分岐管38を通して、充填穴37から断熱部35の断熱空間35aに冷媒を充填する。続いて、ロータリ圧縮機1の使用方法は、断熱部35の断熱空間35aの冷媒を排出穴39から排出し、排出管40を通して冷媒を冷媒回路の配管へ戻す。これにより、アキュムレータ吸入管27と断熱部35の断熱空間35aと冷媒回路の配管とを冷媒が循環しながら、断熱空間35aに冷媒が充填されるロータリ圧縮機1を使用できる。
【0052】
(実施例2の効果)
実施例2のロータリ圧縮機2においても、実施例1と同様に、仕切り部材28の周壁28aとアキュムレータ容器25のアキュムレータシェル26の内周面との接合部(第4の溶接部Y)の接合不良の有無に関わらず、仕切り部材28で仕切られた断熱空間35aからアキュムレータ容器25内へと空気が流入するのを防ぐことができる。加えて、実施例2のロータリ圧縮機2は、アキュムレータ容器25に断熱部35の断熱空間35aから冷媒を排出する排出穴39が設けられており、アキュムレータ吸入管27が、排出穴39と接続された排出管40を有する。これにより、アキュムレータ吸入管27からアキュムレータ部36に吸入される冷媒の一部を、分岐管38を通して充填穴37から断熱空間35aに充填し、断熱空間35aの冷媒を排出穴39から排出し、排出管40を通して冷媒回路の配管へ戻すように冷媒を循環させることが可能になる。このため、圧縮機本体容器10内の熱によって断熱部35の断熱空間35a内の冷媒が上昇した場合であっても、排出穴39、排出管40を通して断熱空間35aの冷媒を交換することができる。その結果、断熱部35の断熱空間35aに充填された冷媒の温度が一定に保たれるので、圧縮機本体容器10内の熱がアキュムレータ部36へ伝わることを更に抑制できるとともに、断熱部35による断熱性の低下を抑えられる。
【実施例0053】
図10は、実施例3の要部を示す縦断面図である。実施例3は、アキュムレータ吸入管27から断熱部35に冷媒が送られない点が、実施例1、2と異なる。
【0054】
図10に示すように、実施例3のロータリ圧縮機3のアキュムレータ容器25には、断熱部35の断熱空間35aに冷媒を充填するための充填穴43が、断熱部35に対向する位置に、アキュムレータ容器25の内部と外部とを繋ぐように、アキュムレータシェル26を貫通して設けられている。充填穴43は、断熱空間35a内に冷媒が充填された後、封止手段によって(例えば、金属等で塞ぐことによって)封止される。
【0055】
なお、図示しないが、充填穴43に接続される充填管が設けられてもよい。この場合、例えば、充填管を通して充填穴43から断熱部35に冷媒が充填された後に、充填管を封止することによって、断熱空間35aへ冷媒が供給されないようにしてもよい。例えば、充填管がピンチで潰された上で、融かされた金属等が固まることによって封止される。
【0056】
(実施例3のロータリ圧縮機の使用方法)
以上のように構成された実施例3のロータリ圧縮機3は、冷媒回路の配管と接続されて、ロータリ圧縮機3の利用を開始するときに断熱部35の断熱空間35aに冷媒が充填される。ロータリ圧縮機3の使用方法は、アキュムレータ容器25の充填穴43から、断熱部35の断熱空間35aに冷媒を充填し、続いて、充填穴43を溶融した金属等で封止する。
【0057】
なお、実施例3のロータリ圧縮機3は、ロータリ圧縮機3の使用を開始するときに断熱部35に冷媒が充填されるものに限定されず、ロータリ圧縮機3の製造工程においてに、断熱部35に充填穴から冷媒が充填された後、充填穴が封止されることで、断熱部35に冷媒が充填された状態で出荷されてもよい。したがって、実施例3のロータリ圧縮機3には、冷媒が充填されていない冷媒充填用の断熱部35を備えるものと、既に冷媒が充填された断熱部35を備えるものとが含まれる。
【0058】
(実施例3の効果)
実施例3のロータリ圧縮機3においても、実施例1、2と同様に、仕切り部材28の周壁28aとアキュムレータ容器25のアキュムレータシェル26の内周面との接合部(第4の溶接部Y)の接合不良の有無に関わらず、仕切り部材28で仕切られた断熱空間35aからアキュムレータ容器25内へと空気が流入するのを、断熱空間35a内を冷媒で満たしておくことによって防ぐことができる。加えて、実施例3のロータリ圧縮機3のアキュムレータ容器25には、断熱部35の断熱空間35aに冷媒を充填するための充填穴37が、断熱空間35aとアキュムレータ容器25の外部とを繋ぐように設けられている。これにより、ロータリ圧縮機3を設置して使用を開始するときや、ロータリ圧縮機3の製造工程で、充填穴37を通して断熱空間35aに冷媒を容易に充填することができる。
【実施例0059】
図11は、実施例4の要部を示す縦断面図である。実施例4は、アキュムレータ部36から断熱部35に冷媒を充填する点が実施例1~3と異なる。
【0060】
図11に示すように、実施例4のロータリ圧縮機4の仕切り部材28には、断熱部35の断熱空間35aとアキュムレータ部36の内部空間36aとを連通させる連通穴44が設けられている。このため、アキュムレータ吸入管27からアキュムレータ部36に吸入された冷媒を、連通穴44を通して断熱部35の断熱空間35aに充填することができる。
【0061】
連通穴44の開口面積S1は、アキュムレータ吸入管27の流路断面積S2よりも小さい。これにより、アキュムレータ部36の内部空間36aと断熱部35の断熱空間35aとの間で冷媒が行き来する(循環する)ことが抑制される。このため、圧縮機本体容器10内の熱で温度が上昇した断熱空間35aの冷媒がアキュムレータ部36に戻り、アキュムレータ部36から圧縮部12へ送られる冷媒の温度が上昇することが抑えられ、圧縮部12の圧縮効率の低下を防げる。
【0062】
なお、図示しないが、連通穴44の形状は限定されず、スリット状に形成されてもよく、仕切り部材28の周壁28aの一部が切り欠いた切欠き部が連通穴44として用いられてもよい。また、仕切り部材28には、複数の連通穴44が設けられてもよい。この場合においても、複数の連通穴44の開口面積を合計した総開口面積は、アキュムレータ吸入管27の流路断面面積よりも小さい。
【0063】
(実施例4のロータリ圧縮機の使用方法)
以上のように構成された実施例4のロータリ圧縮機4は、冷媒回路の配管と接続されて、ロータリ圧縮機4の利用を開始するときに断熱部35の断熱空間35aに冷媒が充填される。ロータリ圧縮機4の使用方法は、アキュムレータ吸入管27からアキュムレータ部36に冷媒を供給し、アキュムレータ部36の内部空間36aから、仕切り部材28の連通穴44を通して、断熱部35の断熱空間35aに冷媒を充填する。
【0064】
(実施例4の効果)
実施例4のロータリ圧縮機4においても、実施例1~3と同様に、仕切り部材28の周壁28aとアキュムレータ容器25のアキュムレータシェル26の内周面との接合部(第4の溶接部Y)の接合不良の有無に関わらず、仕切り部材28で仕切られた断熱空間35aからアキュムレータ容器25内へと空気が流入するのを防ぐことができる。加えて、実施例4のロータリ圧縮機4のアキュムレータ容器25の仕切り部材28には、断熱部35の断熱空間35aとアキュムレータ部36の内部空間36aとを連通させる連通穴44が設けられている。これにより、ロータリ圧縮機4を設置して使用を開始するときにアキュムレータ吸入管27からアキュムレータ部36へ冷媒を送ることで、アキュムレータ部36から連通穴44を通して断熱部35の断熱空間35aに冷媒を容易に充填することができる。
【0065】
また、実施例4のロータリ圧縮機4の仕切り部材28の連通穴44の開口面積S1は、アキュムレータ吸入管27の流路断面積S2よりも小さい。これにより、アキュムレータ部36の内部空間36aと断熱部35の断熱空間35aとの間で冷媒が行き来することを抑制できる。このため、圧縮機本体容器10内の熱で温度が上昇した断熱空間35aの冷媒がアキュムレータ部36に戻り、アキュムレータ部36から圧縮部12へ送られる冷媒の温度が上昇することが抑えられ、圧縮部12の圧縮効率の低下を防げる。
【符号の説明】
【0066】
1 ロータリ圧縮機(密閉型圧縮機)
10 圧縮機本体容器
10c ボトムシェル
11 モータ
12 圧縮部
25 アキュムレータ容器
26 アキュムレータシェル
26a 開口側
26b 周壁
27 アキュムレータ吸入管
28 仕切り部材
28a 周壁
35 断熱部
35a 断熱空間
36 アキュムレータ部
37 充填穴
38 分岐管
39 排出穴
40 排出管
43 充填穴
44 連通穴
102 圧縮部吸入管(吸入管)
104 連絡管
107 吐出管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11