(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047414
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/14 20060101AFI20240329BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20240329BHJP
G03G 5/047 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G03G5/14 101
G03G5/05 104B
G03G5/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153018
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山田 祐基
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真宏
(72)【発明者】
【氏名】草野 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】川崎 晃弘
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA14
2H068AA28
2H068AA32
2H068AA37
2H068AA48
2H068BA04
2H068BB07
2H068BB31
2H068FA12
2H068FA27
(57)【要約】
【課題】帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体の提供。
【解決手段】導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた下引層であって、体積抵抗率が5.0×10
7[Ωm]以上5.0×10
9[Ωm]以下であり、膜厚が20μm以上40μm以下である下引層と、前記下引層上に設けられた電荷発生層と、前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層であって、体積抵抗率が1.0×10
13[Ωm]以上5.0×10
14[Ωm]以下であり、膜厚が20μm以上40μm以下である電荷輸送層と、を有する電子写真感光体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた下引層であって、体積抵抗率が5.0×107[Ωm]以上5.0×109[Ωm]以下であり、膜厚が20μm以上40μm以下である下引層と、
前記下引層上に設けられた電荷発生層と、
前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層であって、体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]以上5.0×1014[Ωm]以下であり、膜厚が15μm以上40μm以下である電荷輸送層と
を有する電子写真感光体。
【請求項2】
前記下引層の体積抵抗率が、1.0×108[Ωm]以上1.0×109[Ωm]以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記下引層の膜厚が、30μm以上34μm以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記電荷輸送層の体積抵抗率が、2.0×1013[Ωm]以上1.0×1014[Ωm]以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記電荷輸送層の膜厚が、17μm以上27μm以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記下引層と前記電荷輸送層との体積抵抗率の比(前記下引層の体積抵抗率/前記電荷輸送層の体積抵抗率)が、8.0×10-7以上2.5×10-5以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記体積抵抗率の比(前記下引層の体積抵抗率/前記電荷輸送層の体積抵抗率)が、1.5×10-6以上1.0×10-5以下である請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記下引層と前記電荷輸送層との膜厚の比(前記下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が、0.7以上2.4以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記膜厚の比(前記下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が、1.0以上1.7以下である請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記電荷輸送層は、フッ素含有樹脂粒子を含み、
前記フッ素含有樹脂粒子に含むパーフルオロオクタン酸の含有量が、フッ素含有樹脂粒子に対して0ppb以上25ppb以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記パーフルオロオクタン酸の含有量が、前記フッ素含有樹脂粒子に対して0ppb以上20ppb以下である請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
直流電圧のみを印加して、前記電子写真感光体の表面を帯電する接触方式の帯電装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
直流電圧のみを印加して、前記電子写真感光体の表面を帯電する接触方式の帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置においては、帯電、露光、現像、転写のプロセスを通じて電子写真感光体の表面上に形成したトナー像を被記録媒体に転写させる。
【0003】
特許文献1には、「導電性支持体上に下引き層、電荷発生層およびポリカーボネート樹脂を含有する電荷輸送層がこの順に積層された有機電子写真感光体において、前記電荷輸送層の膜厚が35μm以上43μm以下であり、電荷輸送層以上の層の厚み方向の静電容量が81~100pF/cm2であることを特徴とする有機電子写真感光体。」が開示されている。
【0004】
特許文献2には、「導電性支持体上に、少なくとも、下引き層及び感光層を順次積層してなる電子写真感光体であって、前記下引き層が金属酸化物粒子を含有し、23±2℃において、強度5×104(V/cm)の電界を与えたときの体積抵抗率ρが1×107(Ω・cm)以上、2×108(Ω・cm)未満の範囲内であり、前記下引き層の層厚が10~40μmの範囲内であり、かつ、前記感光層の層厚が30~50μmの範囲内であることを特徴とする電子写真感光体。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-015861号公報
【特許文献2】特開2020-115195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられ、電荷輸送層と、を有する電子写真感光体において、下引層の体積抵抗率が5.0×107[Ωm]未満若しくは5.0×109[Ωm]超え、下引層の膜厚が20μm未満若しくは40μm超え、電荷輸送層の体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]未満若しくは5.0×1014[Ωm]超え、又は電荷輸送層の膜厚が15μm未満若しくは40μm超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
<1>
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた下引層であって、体積抵抗率が5.0×107[Ωm]以上5.0×109[Ωm]以下であり、膜厚が20μm以上40μm以下である下引層と、
前記下引層上に設けられた電荷発生層と、
前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層であって、体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]以上5.0×1014[Ωm]以下であり、膜厚が15μm以上40μm以下である電荷輸送層と
を有する電子写真感光体。
<2>
前記下引層の体積抵抗率が、1.0×108[Ωm]以上1.0×109[Ωm]以下である<1>に記載の電子写真感光体。
<3>
前記下引層の膜厚が、30μm以上34μm以下である<1>又は<2>に記載の電子写真感光体。
<4>
前記電荷輸送層の体積抵抗率が、2.0×1013[Ωm]以上1.0×1014[Ωm]以下である<1>~<3>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<5>
前記電荷輸送層の膜厚が、17μm以上27μm以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<6>
前記下引層と前記電荷輸送層との体積抵抗率の比(前記下引層の体積抵抗率/前記電荷輸送層の体積抵抗率)が、8.0×10-7以上2.5×10-5以下である<1>~<5>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<7>
前記体積抵抗率の比(前記下引層の体積抵抗率/前記電荷輸送層の体積抵抗率)が、1.5×10-6以上1.0×10-5以下である<6>に記載の電子写真感光体。
<8>
前記下引層と前記電荷輸送層との膜厚の比(前記下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が、0.7以上2.4以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<9>
前記膜厚の比(前記下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が、1.0以上1.7以下である<8>に記載の電子写真感光体。
<10>
前記電荷輸送層は、フッ素含有樹脂粒子を含み、
前記フッ素含有樹脂粒子に含むパーフルオロオクタン酸の含有量が、フッ素含有樹脂粒子に対して0ppb以上25ppb以下である<1>~<9>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<11>
前記パーフルオロオクタン酸の含有量が、前記フッ素含有樹脂粒子に対して0ppb以上20ppb以下である<10>に記載の電子写真感光体。
<12>
<1>~<11>のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
直流電圧のみを印加して、前記電子写真感光体の表面を帯電する接触方式の帯電装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<13>
<1>~<11>のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
直流電圧のみを印加して、前記電子写真感光体の表面を帯電する接触方式の帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
<1>に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられ、電荷輸送層と、を有する電子写真感光体において、下引層の体積抵抗率が5.0×107[Ωm]未満若しくは5.0×109[Ωm]超え、下引層の膜厚が20μm未満若しくは40μm超え、電荷輸送層の体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]未満若しくは5.0×1014[Ωm]超え、又は電荷輸送層の膜厚が15μm未満若しくは40μm超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0009】
<2>に係る発明によれば、下引層の体積抵抗率が1.0×108[Ωm]未満又は1.0×109[Ωm]超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0010】
<3>に係る発明によれば、下引層の膜厚が30μm未満又は34μm超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0011】
<4>に係る発明によれば、電荷輸送層の体積抵抗率が2.0×1013[Ωm]未満又は1.0×1014[Ωm]超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
<5>に係る発明によれば、電荷輸送層の膜厚が17μm未満又は27μm超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0012】
<6>に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との体積抵抗率の比(下引層の体積抵抗率/電荷輸送層の体積抵抗率)が8.0×10-7未満又は2.5×10-5超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
<7>に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との体積抵抗率の比(下引層の体積抵抗率/電荷輸送層の体積抵抗率)が1.5×10-6未満又は1.0×10-5超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0013】
<8>に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との膜厚の比(下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が0.7未満又は2.4超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
<9>に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との膜厚の比(下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が1.0未満又は1.7超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0014】
<10>に係る発明によれば、フッ素含有樹脂粒子に含むパーフルオロオクタン酸の含有量が、フッ素含有樹脂粒子に対して25ppb超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
<11>に係る発明によれば、パーフルオロオクタン酸の含有量が、前記フッ素含有樹脂粒子に対して20ppb超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0015】
<12>、又は<13>に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられ、フッ素含有樹脂粒子を含む電荷輸送層と、を有する電子写真感光体において、下引層の体積抵抗率が5.0×107[Ωm]未満若しくは5.0×109[Ωm]超え、下引層の膜厚が20μm未満若しくは40μm超え、電荷輸送層の体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]未満若しくは5.0×1014[Ωm]超え、又は電荷輸送層の膜厚が15μm未満若しくは40μm超えである電子写真感光体を備える場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】他の本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0019】
本明細書中、「電子写真感光体」を「感光体」とも称する。
【0020】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る感光体は、
導電性基体と、
導電性基体上に設けられた下引層であって、体積抵抗率が5.0×107[Ωm]以上5.0×109[Ωm]以下であり、膜厚が20μm以上40μm以下である下引層と、
下引層上に設けられた電荷発生層と、
電荷発生層上に設けられた電荷輸送層であって、1.0×1013[Ωm]以上5.0×1014[Ωm]以下であり、膜厚が15μm以上40μm以下である電荷輸送層と
を有する。
【0021】
本実施形態に係る感光体は、上記構成より、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる。その理由は、次の通り推測される。
【0022】
従来、感光体を帯電させるために、帯電装置の帯電方式は、直流電圧及び交流電圧を併用する、接触帯電方式を用いることが多い。しかし、交流電圧を用いる場合、感光体の通電電荷量が増加することで、感光体の寿命を縮めてしまう。直流電圧のみを印加して、感光体を帯電させることで、感光体の寿命は延びる一方で、帯電時の感光体の帯電ムラ(つまり電位にムラ)が生じ易くなる。
【0023】
直流電圧のみを印加して、感光体を帯電させるときに生じる、感光体の帯電ムラを抑制するには、下引層の厚膜化が有効であり、感光体の寿命と共に感光体の帯電ムラが改善される。
しかし、帯電維持性が低下する。帯電維持性の低下は、次の通り考えられる。下引層を厚膜化すると、電荷発生層から生じる電子が基材に達する前に電荷発生層から生じるホールが感光体表面の電荷を打ち消すことになり、下引層中に残存する電子が増加する。これにより露光時の電位変動が増加し、帯電維持性が低くなる。
【0024】
それに対して、本実施形態に係る感光体では、下引層の厚膜化により、帯電ムラを抑制する。一方で、下引層の体積抵抗率と共に、電荷輸送層の体積抵抗率及び膜厚を上記範囲とする。それにより、電荷発生層から生じる電子が基材に達するときと、電荷発生層から生じるホールが感光体表面の電荷を打ち消すときと、が同時又は近くなり、下引層中に残存する電子が低減される。その結果、露光時の電位変動の増加を抑え、帯電維持性の低下を抑制する。
【0025】
以上から、本実施形態に係る感光体は、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れると推測される
【0026】
[電子写真感光体]
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照して説明する。
図2に示す電子写真感光体7Aは、例えば、導電性基体4上に、下引層1と電荷発生層2と電荷輸送層3とが、この順序で積層された構造を有する感光体7Aが挙げられる。電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。そして、電荷輸送層3が最表面層を構成する。
【0027】
以下、電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0028】
(下引層及び電荷輸送層の体積抵抗率)
下引層の体積抵抗率は、5.0×107[Ωm]以上5.0×109[Ωm]以下であるが、帯電ムラの抑制及び帯電維持性向上の観点から、8.0×107[Ωm]以上8.0×109[Ωm]以下が好ましく、1.0×108[Ωm]以上1.0×109[Ωm]以下がより好ましい。
【0029】
下引層の体積抵抗率は、例えば、電荷輸送材の分散状態を変化させることで調整する。
【0030】
電荷輸送層の体積抵抗率は、1.0×1013[Ωm]以上5.0×1014[Ωm]以下であるが、帯電ムラの抑制及び帯電維持性向上の観点から、1.0×1013[Ωm]以上3.0×1014[Ωm]以下が好ましく、2.0×1013[Ωm]以上1.0×1014[Ωm]以下がより好ましい。
【0031】
電荷輸送層の体積抵抗率は、例えば、電荷輸送層に含ませるフッ素含有樹脂粒子を事前洗浄し、不純物(パーフルオロオクタン酸等)の除去度合(つまり洗浄度合)で調整する。なお、フッ素含有樹脂粒子に含む不純物の低減により、電荷輸送層の体積抵抗率は上昇する。
また、電荷輸送層の体積抵抗率は、例えば、乾燥条件を変化させることで電荷輸送層に含まれる溶剤の量を調整することで調整する。
【0032】
下引層と電荷輸送層との体積抵抗率の比(下引層の体積抵抗率/電荷輸送層の体積抵抗率)は、帯電ムラの抑制及び帯電維持性向上の観点から、8.0×10―7以上2.5×10―5以下が好ましく、1.0×10―7以上2.0×10―5以下がより好ましく、1.5×10―6以上1.0×10―5以下がさらに好ましい。
【0033】
下引層及び電荷輸送層の体積抵抗率の測定方法は、次の通りである。
まず、感光体の軸方向中央部を切り出し、試料を得る。次に、電荷輸送層上に、真空蒸着法、スパッタ法等により金電極を装着する。得られた試料を、抵抗測定用の下引き層/電荷発生層/電荷輸送層の積層試料とする。
次に、下引き層/電荷発生層/電荷輸送層積層試料における、導電性基体と金電極との間に、直流電圧で0V~1000Vまでを50Vステップで印加し、印加後10秒の電流値Iを測定する。そして横軸に電流値、縦軸に電圧をとった時のプロットの傾きから抵抗ΩFDを求める。
【0034】
次に、電荷輸送層試料における下引層の上に設けられている、電荷発生層及び電荷輸送層を、溶媒(アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等)を用いて、金電極ごと除去する。次に、露出された下引層上に、真空蒸着法、スパッタ法等により金電極を装着する。得られた試料を、体積抵抗率測定用の下引層試料とする。
【0035】
次に、下引層試料における、導電性基体と金電極との間に、直流電圧で0V~50Vまでを10Vステップで印加し、印加後10秒の電流値Iを測定する。そして横軸に電流値、縦軸に電圧をとった時のプロットの傾きから下引層の抵抗ΩUCLを求める。
また下引き層の体積抵抗率ρUCLを以下式から求める。なお、下記式中、Sは電極の面積、tUCLは下引層の膜厚を示す。
式:ρUCL=ΩUCL×S/t
【0036】
次に、下記式により、電荷輸送層の体積抵抗率ΩCTLを求める。なお、下記式中Sは電極の面積、tCTLは電荷輸送層の膜厚を示す。
式:ρUCL=ΩCTL×S/tCTL=(ΩFD-ΩUCL)×S/tCTL
【0037】
(下引層及び電荷輸送層の膜厚)
下引層の膜厚は、20μm以上40μm以下であるが、帯電ムラの抑制の観点から、30μm以上38μm以下が好ましく、30μm以上34μm以下がより好ましい。
【0038】
電荷輸送層の膜厚は、15μm以上40μm以下であるが、帯電ムラの抑制及び帯電維持性向上の観点から、17μm以上32μm以下が好ましく、17μm以上27μm以下がより好ましい。
【0039】
下引層と電荷輸送層との膜厚の比(下引層の膜厚/電荷輸送層の膜厚)は、帯電ムラの抑制及び帯電維持性向上の観点から、0.7以上2.4以下が好ましく、1.0以上2.0以下がより好ましく、1.0以上1.7以下がさらに好ましい。
【0040】
下引層と電荷輸送層との膜厚の測定方法は、次の通りである。
まず、感光体の軸方向中央部を切り出し、試料を得る。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)により、試料の断面の観察画像を得る。次に、観察画像において、下引層、及び電荷輸送層の膜厚をそれぞれ10点測定し、平均値を求める。
【0041】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0042】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0043】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0044】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0045】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0046】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0047】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0048】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0049】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0050】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0051】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0052】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0053】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0054】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0055】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0058】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0059】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0060】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0061】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0062】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0063】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0064】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0065】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0066】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0067】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0068】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0069】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0070】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0072】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0073】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0074】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0075】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0076】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0077】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0078】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0079】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0080】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0081】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0082】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0083】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0084】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0085】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0086】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン;クロロガリウムフタロシアニン;ジクロロスズフタロシアニン;チタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0087】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;ビスアゾ顔料等が好ましい。
【0088】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0089】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0090】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0091】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0092】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0093】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0094】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0095】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0096】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0097】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0098】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、電荷輸送材料として、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0099】
電荷輸送層は、結着樹脂及び電荷輸送材料に加え、フッ素含有樹脂粒子を含有することが好ましい。電荷輸送層にフッ素含有樹脂粒子を含むと、電荷輸送層の耐摩耗性が向上する。
なお、電荷輸送層は、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0100】
-結着樹脂-
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
ここで、結着樹脂の含有量は、例えば、感光層(電荷輸送層)の全固形分に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、50質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
【0101】
-電荷輸送材料-
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0103】
【0104】
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C6H4-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C6H4-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0105】
【0106】
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0107】
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C6H4-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0108】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8-176293号公報、特開平8-208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0109】
-フッ素含有樹脂粒子-
フッ素含有樹脂粒子としては、フルオロオレフィンのホモポリマーの粒子、2種以上の共重合体であって、フルオロオレフィンの1種又は2種以上と非フッ素系のモノマー(つまり、フッ素原子を有さないモノマー)との共重合体の粒子が挙げられる。
【0110】
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのパーハロオレフィン、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの非パーフルオロオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、VdF、TFE、CTFE、HFPなどが好ましい。
【0111】
一方、非フッ素系のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのハイドロカーボン系オレフィン;シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルエーテル(POEAE)、エチルアリルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル;ビニルトリメトキシシラン(VSi)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(商品名、シェル社製のビニルエステル)などのビニルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、ルキルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ビニルエステル、反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0112】
これらの中でも、フッ素含有樹脂粒子としては、フッ素化率の高い粒子が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などの粒子がより好ましく、PTFE、FEP、PFAの粒子が特に好ましい。
【0113】
フッ素含有樹脂粒子は、重合型のフッ素含有樹脂粒子がよい。重合型のフッ素含有樹脂粒子は、上述のように、懸濁重合法、乳化重合法等により、重合と共に粒状化し、かつ放射線照射されていないフッ素含有樹脂粒子である。
ここで、懸濁重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を懸濁した後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
また、乳化重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を、界面活性剤(つまり乳化剤)により乳化させた後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
特に、フッ素含有樹脂粒子は、製造工程において放射線照射を行われないで得られた粒子であることがよい。
ただし、フッ素樹脂粒子は、酸素が存在しない又は酸素濃度が低減された条件で放射線照射が行われた放射線照射型のフッ素樹脂粒子も適用してもよい。
【0114】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、特に制限はないが、0.2μm以上4.5μm以下が好ましく、0.2μm以上4μm以下がより好ましい。平均粒径0.2μm以上4.5μm以下のフッ素含有樹脂粒子(特に、PTFE粒子等のフッ素含有樹脂粒子)は、PFOAを多く含む傾向がある。そのため、平均粒径0.2μm以上4.5μm以下のフッ素含有樹脂粒子は、特に、帯電性が低い傾向がある。しかし、PFOAの量を上記範囲に抑えることで、平均粒径0.2μm以上4.5μm以下のフッ素含有樹脂粒子でも、帯電性が高まる。
【0115】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、次の方法により測定される値である。
SEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、フッ素含有樹脂粒子(一次粒子が凝集した二次粒子)の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値をフッ素含有樹脂粒子の平均粒径とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
【0116】
フッ素含有樹脂粒子の比表面積(BET比表面積)は、分散安定性の観点から、5m2/g以上15m2/g以下であることが好ましく、7m2/g以上13m2/g以下であることがより好ましい。
なお、比表面積は、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
【0117】
フッ素含有樹脂粒子の見掛密度は、分散安定性の観点から、0.2g/ml以上0.5g/ml以下であることが好ましく、0.3g/ml以上0.45g/ml以下であることがより好ましい。
なお、見掛密度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される値である。
【0118】
フッ素含有樹脂粒子の溶融温度は、300℃以上340℃以下であることが好ましく、325℃以上335℃以下であることがより好ましい。
なお、溶融温度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される融点である。
【0119】
フッ素含有樹脂粒子に含むパーフルオロオクタン酸(以下「PFOA」とも称する)の含有量は、フッ素含有樹脂粒子に対して0ppb以上25ppb以下が好ましく、0ppb以上20ppb以下が好ましく、0ppb以上15ppb以下がより好ましい。なお、「ppb」は質量基準である。
【0120】
フッ素含有樹脂粒子に含むPFOA含有量を低減すると、電荷輸送層の体積抵抗率が上昇し、電荷輸送層の体積抵抗率を上記範囲に調整し易くなる。その結果、帯電維持性が向上する。
【0121】
ここで、フッ素含有樹脂粒子(特に、ポリテトラフルオロエチレン粒子、変性ポリテトラフルオロエチレン粒子、パーフルオロアルキルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体粒子等のフッ素含有樹脂粒子)は、その製造過程で、PFOAが使用されたり、副生成物として生成したりするため、フッ素含有樹脂粒子には、PFOAが含まれることが多い。
そして、PFOAは、帯電性低下の原因となるカルボキシル基を有している。そのため、フッ素含有樹脂粒子は、PFOAを含まない、又は含んでも微量であることが好ましい。
【0122】
PFOAの量を低減する方法としては、純水、アルカリ水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル等)、その他の一般的な有機溶剤(トルエン、テトラヒドロフラン等)などにより、フッ素含有樹脂粒子を十分洗浄する方法が挙げられる。洗浄は室温で行っても良いが、加熱下で行うことにより効率的に低減することができる。
【0123】
PFOAの量は、次の方法により測定される値である。
-試料の前処理-
フッ素含有樹脂粒子を含む電荷輸送層(つまり最表面層)を溶剤(例えばテトラヒドロフラン)に浸漬し、フッ素含有樹脂粒子および溶剤に不溶な物質以外を溶剤(例えばテトラヒドロフラン)に溶解させた後、純水中に滴下し析出物をろ別する。その際に得られたPFOAを含む溶液を捕集する。さらにろ別により得られた不溶物を溶剤に溶解させた後、純水中に滴下し析出物をろ別する。その際に得られたPFOAを含む溶液を捕集する作業を5回繰り返し、すべての作業で捕集した水溶液を、前処理済みの水溶液とする。
【0124】
-測定-
上記操作で得た前処理済みの水溶液を「環境水・底質・生物中のペルフルオロオクタンスルホンのペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS) ぺルフルオロオクタン ぺルフルオロオクタン酸(PFOA)の分析 岩手県環境保険研究センター」に示される方法に準じて試料液の調整、測定を行う。
【0125】
フッ素含有樹脂粒子は、フッ素原子を持つ分散剤(以下、「フッ素含有分散剤」とも称する)が表面に付着していてもよい。
【0126】
フッ素含有分散剤としては、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体(以下「フッ化アルキル基含有重合体」とも称する)が挙げられる。
【0127】
フッ素含有分散剤として具体的には、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとフッ素原子を有さないモノマーとのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を意味する。
【0128】
フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アククリレートが挙げられる。
【0129】
フッ素原子を有さないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アククリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルo-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0130】
その他、フッ素含有分散剤として具体的には、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーも挙げられる。更に、フッ素含有分散剤として具体的には、フッ素系界面活性剤も挙げられる。
【0131】
これらの中でも、フッ素含有分散剤としては、下記一般式(FA)で示される構造単位を有するフッ化アルキル基含有重合体が好ましく、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体がより好ましい。
【0132】
以下、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体について説明する。
【0133】
【0134】
一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。
XF1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-S-、-O-、-NH-、又は単結合を表す。
YF1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-(CfxH2fx-1(OH))-又は単結合を表す。
QF1は、-O-、又は-NH-を表す。
fl、fm及びfnは、各々独立に、1以上の整数を表す。
fp、fq、fr及びfsは、各々独立に、0または1以上の整数を表す。
ftは、1以上7以下の整数を表す。
fxは1以上の整数を表す。
【0135】
一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0136】
一般式(FA)及び(FB)中、XF1及びYF1を表すアルキレン鎖(未置換アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖)としては、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖が好ましい。
YF1を表す-(CfxH2fx-1(OH))-中のfxは、1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fp、fq、fr及びfsは、それぞれ独立に0または1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fnは、例えば、1以上60以下が好ましい。
【0137】
ここで、フッ素含有分散剤において、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位との比、つまり、fl:fmは、1:9から9:1までの範囲が好ましく、3:7から7:3までの範囲がより好ましい。
【0138】
フッ素含有分散剤は、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位とに加え、一般式(FC)で示される構造単位を更に有していてもよい。一般式(FC)で示される構造単位の含有比は、一般式(FA)及び(FB)で示される構造単位の合計、即ちfl+fmとの比(fl+fm:fz)で、10:0から7:3までの範囲が好ましく、9:1から7:3までの範囲がより好ましい。
【0139】
【0140】
一般式(FC)中、RF5、及びRF6は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。fzは、1以上の整数を表す。
【0141】
一般式(FC)中、RF5、及びRF6を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0142】
フッ素含有分散剤の市販品としては、例えば、GF300、GF400(東亞合成社製)、サーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、フタージェントシリーズ(ネオス社製)、PFシリーズ(北村化学社製)、メガファックシリーズ(DIC製)、FCシリーズ(3M製)等が挙げられる。
【0143】
フッ素含有分散剤の重量平均分子量Mwは、フッ素含有樹脂粒子の分散性向上の観点から、2万以上20万以下が好ましく、5万以上20万以下がより好ましい。
【0144】
フッ素含有分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値である。GPCによる分子量測定は、例えば、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR-M+TSKgel GMHHR-M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行い、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0145】
フッ素含有分散剤の含有量は、例えば、フッ素含有樹脂粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上7質量%以下がより好ましい。
なお、フッ素含有分散剤は、1種を単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0146】
ここで、フッ素含有樹脂粒子に、フッ素含有分散剤を付着させる方法としては、
1)フッ素含有樹脂粒子とフッ素含有分散剤とを分散媒に配合して、フッ素含有樹脂粒子の分散液を調製した後、分散液から分散媒を除去する方法。
2)乾式粉体混合機を用いてフッ素含有樹脂粒子とフッ素含分散剤を混合しフッ素含有樹脂粒子にフッ素含分散剤を付着させる方法
3)フッ素含有樹脂粒子を攪拌しながら溶剤に溶かしたフッ素含有分散剤を滴下した後溶剤を除去する方法
等が挙げられる。
【0147】
-添加剤、形成方法及び膜厚-
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0148】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0149】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0150】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0151】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0152】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体の表面を帯電する接触方式の帯電装置と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0153】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着装置を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0154】
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0155】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0156】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体及び帯電装置を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体及び帯電装置を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、静電潜像形成装置、現像装置、転写装置からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0157】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0158】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成装置の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写装置の一例に相当する。
【0159】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電装置の一例)、現像装置11(現像装置の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング装置の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0160】
なお、
図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0161】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0162】
-帯電装置-
帯電装置8は、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体7の表面を帯電する接触方式の帯電装置である。
具体的には、例えば、帯電装置8は、電子写真感光体7の表面を帯電する帯電部材を備える。
帯電部材としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。
帯電装置8において、印加する直流電圧は、要求される電子写真感光体7の帯電電位に応じて、例えば、正又は負の50V以上2000V以下とする。
【0163】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0164】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0165】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0166】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0167】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0168】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0169】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例0170】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0171】
<フッ素含有樹脂粒子の製造>
(フッ素含有樹脂粒子(1)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
オートクレーブに、脱イオン水3リットルおよびパーフルオロオクタン酸アンモニウム3.0g、さらに乳化安定剤としてパラフィンワックス(日本石油(株)製)110gを仕込み、窒素で3回、TFE(テトラフルオロエチレン)で2回系内を置換して酸素を取り除いた後、TFEで内圧を1.0MPaにして、250rpmで撹拌しながら、内温を70℃に保った。つぎに、連鎖移動剤として常圧で150cc分のエタンおよび重合開始剤である300mgの過硫酸アンモニウムを溶かした20mlの水溶液を系内に仕込み反応を開始した。反応中は、系内の温度を70℃に保ち、オートクレーブの内圧は常に1.0±0.05MPaに保つように連続的にTFEを供給した。開始剤を添加してから反応で消費されたTFEが1000gに達した時点で、TFEの供給と撹拌を停止し、反応を終了した。その後遠心分離により粒子を分離し、更にメタノール400質量部を採取し超音波を照射しながら攪拌機250rpmにて10分洗浄し、上澄みをろ過した。本操作を3回繰り返した後、ろ過物を減圧下60度、17時間乾燥させた。
以上の工程を経て、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
【0172】
(フッ素含有樹脂粒子(2)の製造)
市販のホモポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(ASTM D 4895(2 004)に準拠して測定した標準比重2.175)100質量部、添加剤としてエタノー ル2.8質量部をバリアナイロン製の袋に採取に採取した。その後、室温、空気中にてコ バルト-60γ線を160kGy照射し、低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を得 た。得られた粉末を粉砕し、フッ素含有樹脂粒子(2)を得た。
【0173】
(フッ素含有樹脂粒子(3)の製造)
得られたフッ素含有樹脂粒子(2)100 質量部とメタノール500質量部とを混合し、そこに超音波を照射しながら攪拌機300 rpmにて10分洗浄し、上澄みをデカンテーションで除去した。本操作を4回繰り返し た後、残渣ろ過物を送風乾燥機で70℃、24時間乾燥させて、フッ素含有樹脂粒子(3)を製造した。
【0174】
(フッ素含有樹脂粒子(4)の製造)
得られたフッ素含有樹脂粒子(2)100 質量部とメタノール500質量部とを混合し、そこに超音波を照射しながら攪拌機300 rpmにて30分洗浄し、上澄みをデカンテーションで除去した。本操作を4回繰り返した後、残渣ろ過物を送風乾燥機で70℃、24時間乾燥させて、フッ素含有樹脂粒子(4)を製造した。
【0175】
<感光体の製造>
(感光体(1))
次の通り感光体を作製した。
酸化亜鉛:(平均粒径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBE503:信越化学工業社製)1.4部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5部とブチラール樹脂 (エスレックBM-1、積水化学工業社製)15部とメチルエチルケトン85部とを混合し混合液を得た。この混合液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社):30部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、円筒状アルミニウム基材上に塗布し、170℃、30分の乾燥硬化を行い膜厚32μmの下引層を得た。
【0176】
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部を、ポリビニルブチラール(エスレックBM-5、積水化学工業社製)1部及び酢酸n-ブチル80部と混合し、これをガラスビーズと共にペイントシェーカーで1時間分散処理することにより電荷発生層用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引層が形成された導電性基体上に浸漬塗布し、130℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0177】
電荷輸送材料として下記式(CTM1)で表されるベンジジン化合物45部、結着樹脂として下記式(PCZ1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量:40,000)55部をトルエン350部、テトラヒドロフラン150部に溶解させ、フッ素含有樹脂粒子(1)11.2部、及び酸化防止剤(Add1)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である式(HP-2)で表される化合物(アデカスタブAO-20、Adeka社製)3部加え、高圧ホモジナイザーで5回処理して、電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、130℃、45分の加熱を行い膜厚24μmの電荷輸送層を形成した。
【0178】
【0179】
【0180】
以上の工程を経て、感光体(1)を作製した。
【0181】
(感光体(2))
下引き層の分散工程において、分散時間を1時間に変更し、下引層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(2)を作製した。
【0182】
(感光体(3))
下引き層の分散工程において、分散時間を1.5時間に変更し、下引層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(3)を作製した。
【0183】
(感光体(4))
下引き層の分散工程において、分散時間を3時間に変更し、下引層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(4)を作製した。
【0184】
(感光体(5))
下引き層の分散工程において、分散時間を4時間に変更し、下引層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(5)を作製した。
【0185】
(感光体(13))
電荷輸送層の作製工程において、乾燥温度を145℃に変更し、電荷輸送層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(13)を作製した。
【0186】
(感光体(6)~(12)、(14)~(29))
表1に従って、下引層の膜厚、電荷輸送層の膜厚、フッ素含有樹脂粒子の種類や電荷輸送層乾燥条件によって電荷輸送層の体積抵抗率を変更した以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(6)~(12)、(14)~(29)を作製した。
【0187】
(感光体(C1))
下引き層の分散工程において、分散時間を30分に変更し、下引層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(C1)を作製した。
【0188】
(感光体(C2))
下引き層の分散工程において、分散時間を5時間に変更し、下引層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(C2)を作製した。
【0189】
(感光体(C6))
電荷輸送層の作製工程において、乾燥温度を160℃に変更し、電荷輸送層の体積抵抗率を表1に示す値とした以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(C6)を作製した。
【0190】
(感光体(C3)~(C5)、(C7)~(C8))
表1に従って、下引層の膜厚、電荷輸送層の膜厚、フッ素含有樹脂粒子の種類や電荷輸送層乾燥条件によって電荷輸送層の体積抵抗率を変更した以外は、感光体(1)と同様にして、感光体(C3)~(C5)、(C7)~(C8)を作製した。
【0191】
<評価>
各例で得られた感光体について、次の評価を行った。
【0192】
(帯電ムラ)
帯電性について、次の通り評価した。
各例で得られた感光体を、接触帯電式の帯電装置として、複写機DocuCentre-IV C2260:富士フイルムビジネスイノベーション社製 のドラムカートリッジに装着し、初期及び20,000枚印刷後の50%、30%、0% ハーフトーン印刷による画質評価を行い、以下の評価基準により評価した。評価基準は次の通りである。
A:濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が未発生。
B:軽微な濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が部分的に発生。
C:軽微な濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が発生。
D:濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が部分的に発生。
E:濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が発生。
【0193】
(帯電維持性(サイクル安定性))
上記帯電性評価において、20,000枚印刷後に連続して100,000枚まで印刷し、20,000枚時点での画質と比較することで帯電維持性の評価とした。評価基準は次の通りである。
A:濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が増加していない。
B:軽微な濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が部分的に増加。
C:軽微な濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が増加。
D:濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が部分的に増加。
E:濃度ムラ、白点、色点、スジ等の画像欠陥が増加。
【0194】
【0195】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる。
【0196】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた下引層であって、体積抵抗率が5.0×107[Ωm]以上5.0×109[Ωm]以下であり、膜厚が20μm以上40μm以下である下引層と、
前記下引層上に設けられた電荷発生層と、
前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層であって、体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]以上5.0×1014[Ωm]以下であり、膜厚が15μm以上40μm以下である電荷輸送層と
を有する電子写真感光体。
(((2)))
前記下引層の体積抵抗率が、1.0×108[Ωm]以上1.0×109[Ωm]以下である(((1)))に記載の電子写真感光体。
(((3)))
前記下引層の膜厚が、30μm以上34μm以下である(((1)))又は(((2)))に記載の電子写真感光体。
(((4)))
前記電荷輸送層の体積抵抗率が、2.0×1013[Ωm]以上1.0×1014[Ωm]以下である(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((5)))
前記電荷輸送層の膜厚が、17μm以上27μm以下である(((1)))~(((4)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((6)))
前記下引層と前記電荷輸送層との体積抵抗率の比(前記下引層の体積抵抗率/前記電荷輸送層の体積抵抗率)が、8.0×10-7以上2.5×10-5以下である(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((7)))
前記体積抵抗率の比(前記下引層の体積抵抗率/前記電荷輸送層の体積抵抗率)が、1.5×10-6以上1.0×10-5以下である(((6)))に記載の電子写真感光体。
(((8)))
前記下引層と前記電荷輸送層との膜厚の比(前記下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が、0.7以上2.4以下である(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((9)))
前記膜厚の比(前記下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が、1.0以上1.7以下である(((8)))に記載の電子写真感光体。
(((10)))
前記電荷輸送層は、フッ素含有樹脂粒子を含み、
前記フッ素含有樹脂粒子に含むパーフルオロオクタン酸の含有量が、フッ素含有樹脂粒子に対して0ppb以上25ppb以下である(((1)))~(((9)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((11)))
前記パーフルオロオクタン酸の含有量が、前記フッ素含有樹脂粒子に対して0ppb以上20ppb以下である(((10)))に記載の電子写真感光体。
(((12)))
(((1)))~(((11)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
直流電圧のみを印加して、前記電子写真感光体の表面を帯電する接触方式の帯電装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
(((13)))
(((1)))~(((11)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
直流電圧のみを印加して、前記電子写真感光体の表面を帯電する接触方式の帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【0197】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられ、電荷輸送層と、を有する電子写真感光体において、下引層の体積抵抗率が5.0×107[Ωm]未満若しくは5.0×109[Ωm]超え、下引層の膜厚が20μm未満若しくは40μm超え、電荷輸送層の体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]未満若しくは5.0×1014[Ωm]超え、又は電荷輸送層の膜厚が15μm未満若しくは40μm超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0198】
(((2)))に係る発明によれば、下引層の体積抵抗率が1.0×108[Ωm]未満又は1.0×109[Ωm]超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0199】
(((3)))に係る発明によれば、下引層の膜厚が30μm未満又は34μm超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0200】
(((4)))に係る発明によれば、電荷輸送層の体積抵抗率が2.0×1013[Ωm]未満又は1.0×1014[Ωm]超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、電荷輸送層の膜厚が17μm未満又は27μm超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0201】
(((6)))に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との体積抵抗率の比(下引層の体積抵抗率/電荷輸送層の体積抵抗率)が8.0×10-7未満又は2.5×10-5超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との体積抵抗率の比(下引層の体積抵抗率/電荷輸送層の体積抵抗率)が1.5×10-6未満又は1.0×10-5超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0202】
(((8)))に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との膜厚の比(下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が0.7未満又は2.4超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
(((9)))に係る発明によれば、下引層と電荷輸送層との膜厚の比(下引層の膜厚/前記電荷輸送層の膜厚)が1.0未満又は1.7超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0203】
(((10)))に係る発明によれば、フッ素含有樹脂粒子に含むパーフルオロオクタン酸の含有量が、フッ素含有樹脂粒子に対して25ppb超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
(((11)))に係る発明によれば、パーフルオロオクタン酸の含有量が、前記フッ素含有樹脂粒子に対して20ppb超えである場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体が提供される。
【0204】
(((12)))、又は(((13)))に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられ、フッ素含有樹脂粒子を含む電荷輸送層と、を有する電子写真感光体において、下引層の体積抵抗率が5.0×107[Ωm]未満若しくは5.0×109[Ωm]超え、下引層の膜厚が20μm未満若しくは40μm超え、電荷輸送層の体積抵抗率が1.0×1013[Ωm]未満若しくは5.0×1014[Ωm]超え、又は電荷輸送層の膜厚が15μm未満若しくは40μm超えである電子写真感光体を備える場合に比べ、直流電圧のみを印加して、電子写真感光体を帯電させる接触方式の帯電装置を適用したときでも、帯電ムラを抑制し、かつ帯電維持性に優れる電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、10 電子写真感光体、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑剤、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材(平ブラシ状)、300 プロセスカートリッジ