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特開2024-47433情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047433
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20240329BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153046
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】星久保 寿弥
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】薬剤の投与計画を含む治療計画と連携した患者への薬剤の投与技術を改善する。
【解決手段】情報処理装置は、制御部と、表示用機器と通信可能に構成される通信部とを備える。制御部は、患者の識別情報を取得し、識別情報に基づいて、患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得し、患者の前記治療計画情報に従う薬剤の実際の投与情報を取得し、治療計画情報及び薬剤の実際の投与情報に基づき、患者への薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成し、該投薬進捗情報を表示用機器に表示させるために通信部を介して送信する処理を実行するように構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、
表示用機器と通信可能に構成される通信部と
を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、患者の識別情報を取得し、前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得し、前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得し、前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成し、該投薬進捗情報を前記表示用機器に表示させるために前記通信部を介して送信する処理を実行するように構成される、情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記治療計画情報に含まれる前記薬剤を使用したときに該薬剤の投与の進捗とともに発生し得る副作用の情報である副作用情報を取得し、前記副作用情報を前記表示用機器に送信するように構成される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記薬剤の投与量が、該薬剤による副作用を発生させる可能性が高いとして設定された所定量を超えると予測される場合、前記副作用情報を前記表示用機器に送信する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記通信部を介して前記患者の生体情報を取得可能に構成され、前記薬剤の投与中において、前記副作用情報及び前記生体情報に基づいて、前記副作用の発生の可能性を判断するように構成される、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記投薬進捗情報として、前記患者に順次投与されるべき薬剤の情報を送信するように構成される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記薬剤の前記時系列の投与計画と、前記薬剤の前記実際の投与情報との間に不整合が生じる場合、前記表示用機器に対して警告又はガイダンスを送信するように構成される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、複数の患者について前記投薬進捗情報を生成し、前記投薬進捗情報に基づいて、前記患者を表示する優先度を判断し、前記表示用機器の出力部に前記複数の患者の情報を配列して表示させるため、前記表示用機器に前記複数の患者それぞれの前記優先度を送信するように構成される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置の制御部が実行する方法であって、
患者の識別情報を取得することと、
前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得することと、
前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得することと、
前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成することと、
該投薬進捗情報を表示用機器に表示させるために通信部を介して送信することと
を含む情報処理方法。
【請求項9】
情報処理装置に、
患者の識別情報を取得することと、
前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得することと、
前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得することと、
前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成することと、
該投薬進捗情報を表示用機器に表示させるために通信部を介して送信することと
を含む処理を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
情報処理装置と表示用機器とを備える情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、制御部と前記表示用機器と通信可能に構成される通信部とを備え、前記制御部は、患者の識別情報を取得し、前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得し、前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得し、前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成し、該投薬進捗情報を前記表示用機器に表示させるために前記通信部を介して送信する処理を実行するように構成され、
前記表示用機器は、前記投薬進捗情報に基づく表示をする出力部を備える
情報処理システム。
【請求項11】
前記表示用機器は、複数の前記患者の前記投薬進捗情報を取得し、前記投薬進捗情報に基づいて、前記患者を表示する優先度を判断し、前記優先度に基づいて前記複数の患者の情報を配列して表示する、請求項10に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療スタッフが実行する診療プロセスを全体的に把握するシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、一度にできるだけ多くの診療プロセスの進捗状況を把握するため、患者毎の複数の診療プロセスの進捗状況を表すアイコンをマトリクス状に配置し、進捗状態に応じてアイコンの表示形態を変化させることが提案されている。また、特許文献2には、患者毎に設定されたクリニカルパス上に、患者が受ける一連の関連医療行為情報を関連付けて表示する、クリニカルパス表示システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-130983号公報
【特許文献2】特開2006-113795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、薬物療法においては、治療効果と安全性とを高める目的で、薬剤の投与量、投与経路、投与順序、投与期間、休薬期間、及び、併用薬などが、厳密に規定される必要がある。特に、抗がん剤治療では、薬剤の投与量の僅かな違いで重篤な副作用を発生させることがある。このため、各医療機関では、抗がん剤、輸液、支持療法薬等を組み合わせ、抗がん剤の投与量、投与スケジュール及び治療期間等を記載した治療計画書(レジメン)を作成し、これを厳守して治療を行っている。
【0005】
しかし、従来技術では、作成された治療計画書等の治療計画情報と、実際の薬剤を投与する段階との間で必ずしもシステム的な連携がなされていなかった。したがって、従来技術は、治療計画情報と連携して、薬剤を投与するうえで改善の余地があった。
【0006】
したがって、これらの点に着目してなされた本開示の目的は、薬剤の投与計画を含む治療計画情報と連携した患者への薬剤の投与技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様としての情報処理装置は、(1)制御部と、表示用機器と通信可能に構成される通信部とを備える情報処理装置であって、前記制御部は、患者の識別情報を取得し、前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得し、前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得し、前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成し、該投薬進捗情報を前記表示用機器に表示させるために前記通信部を介して送信する処理を実行するように構成される。
【0008】
本開示の一実施形態として、(2)上記(1)の情報処理装置において、前記制御部は、前記治療計画情報に含まれる前記薬剤を使用したときに該薬剤の投与の進捗とともに発生し得る副作用の情報である副作用情報を取得し、前記副作用情報を前記表示用機器に送信するように構成されることが好ましい。
【0009】
本開示の一実施形態として、(3)上記(2)の情報処理装置において、前記制御部は、前記薬剤の投与量が、該薬剤による副作用を発生させる可能性が高いとして設定された所定量を超えると予測される場合、前記副作用情報を前記表示用機器に送信することが好ましい。
【0010】
本開示の一実施形態として、(4)上記(2)または(3)の情報処理装置において、前記制御部は、前記通信部を介して前記患者の生体情報を取得可能に構成され、前記薬剤の投与中において、前記副作用情報及び前記生体情報に基づいて、前記副作用の発生の可能性を判断するように構成されることが好ましい。
【0011】
本開示の一実施形態として、(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の情報処理装置において、前記制御部は、前記投薬進捗情報として、前記患者に順次投与されるべき薬剤の情報を送信するように構成されることが好ましい。
【0012】
本開示の一実施形態として、(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の情報処理装置において、前記制御部は、前記薬剤の前記時系列の投与計画と、前記薬剤の前記実際の投与情報との間に不整合が生じる場合、前記表示用機器に対して警告又はガイダンスを送信するように構成されることが好ましい。
【0013】
本開示の一実施形態として、(7)上記(1)に記載の情報処理装置において、前記制御部は、複数の患者について前記投薬進捗情報を生成し、前記投薬進捗情報に基づいて、前記患者を表示する優先度を判断し、前記表示用機器の出力部に前記複数の患者の情報を配列して表示させるため、前記表示用機器に前記複数の患者それぞれの前記優先度を送信するように構成されることが好ましい。
【0014】
本開示の一態様としての情報処理方法は、(8)情報処理装置の制御部が実行する方法であって、患者の識別情報を取得することと、前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得することと、前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得することと、前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成することと、該投薬進捗情報を表示用機器に表示させるために通信部を介して送信することとを含む。
【0015】
本開示の一態様としてのプログラムは、(9)情報処理装置に、患者の識別情報を取得することと、前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得することと、前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得することと、前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成することと、該投薬進捗情報を表示用機器に表示させるために通信部を介して送信することとを含む処理を実行させる。
【0016】
本開示の一態様としての情報処理システムは、(10)情報処理装置と表示用機器とを備える情報処理システムであって、前記情報処理装置は、制御部と前記表示用機器と通信可能に構成される通信部とを備え、前記制御部は、患者の識別情報を取得し、前記識別情報に基づいて、前記患者への薬剤の時系列の投与計画を含む治療計画情報を取得し、前記患者の前記治療計画情報に従う前記薬剤の実際の投与情報を取得し、前記治療計画情報及び前記薬剤の前記実際の投与情報に基づき、前記患者への前記薬剤の投与の進捗状況を示す投薬進捗情報を生成し、該投薬進捗情報を前記表示用機器に表示させるために前記通信部を介して送信する処理を実行するように構成され、前記表示用機器は、前記投薬進捗情報に基づく表示をする出力部を備える。
【0017】
本開示の一実施形態として、(11)上記(10)の情報処理システムにおいて、前記表示用機器は、複数の前記患者の前記投薬進捗情報を取得し、前記投薬進捗情報に基づいて、前記患者を表示する優先度を判断し、前記優先度に基づいて前記複数の患者の情報を配列して表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本開示の情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システムによれば、薬剤の投与計画を含む治療計画と連携した患者への薬剤の投与技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態に係る情報処理システムの概略構成図である。
図2】治療計画情報(レジメン)の一例を示す図である。
図3図1の情報処理装置の概略構成図である。
図4図1の情報端末及び表示装置の概略構成図である。
図5】情報処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6】情報処理装置が実行する副作用情報の取得、記憶及び表示処理の一例を示すフローチャートである。
図7】表示装置による情報表示の一例を示す図である。
図8】情報処理装置が実行する薬剤投与の進捗管理処理の一例を示すフローチャートである。
図9】情報端末による情報表示の一例を示す図である。
図10】情報端末による情報表示の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(情報処理システムの構成)
図1を参照して、本開示の一実施形態に係る情報処理システム1の概略構成について説明する。情報処理システム1は、医療機関内の情報システムである。情報処理システム1は、情報処理装置10、1台以上のサーバ20、表示装置30、及び、情報端末40を含んで構成される。情報処理装置10、1台以上のサーバ20、表示装置30、及び、情報端末40は、医療機関内の通信ネットワーク70を介して互いに通信可能に構成される。さらに、情報処理システム1は、通信ネットワーク70に接続された投薬装置50及び生体情報監視装置60を含んでよい。
【0022】
情報処理装置10は、医療機関内の治療計画情報に基づいて、薬剤投与の支援、投薬の進捗管理及び記録を行うコンピュータである。コンピュータは、UNIX(登録商標)系OS(Operating System)を採用するサーバ専用機、及び、PC(Personal Computer)サーバ等を含む。以下に説明する情報処理装置10の機能は、複数のコンピュータに分散されていてもよい。情報処理装置10は、医療機関内部又は外部に配置されてよい。情報処理装置10が医療機関の外部に配置される場合、情報処理装置10は、医療機関内の通信ネットワーク70と、インターネットのような通信網又は専用の通信回線を介し接続されてよい。
【0023】
治療計画情報は、医療機関で治療を行う各患者について策定された治療計画の情報である。治療計画情報は、患者への薬剤の時系列の投与計画を含む。がん患者の場合、治療計画情報は、レジメン(治療計画書)に記載される。レジメンは、抗がん剤、輸液、支持療法約等を組み合わせた計画書であって、抗がん剤の投与量、投与スケジュール、治療期間等が記載される。抗がん剤は投与量の僅かな違いであっても副作用を発生するため、その投与には厳密な管理が必要とされる。また、副作用を回避するための支持療法が併用されるなどのため、抗がん剤の投与は複雑化している。
【0024】
治療計画情報の一例を、図2を参照して説明する。例えば、抗がん剤治療の場合には、数週間から数か月に渡り投薬治療が行われる。図2の例では、この期間は8週間である。この期間中、最初の1日目に薬剤の投与を行う。投与を行う薬剤、投与の順序、用量、投与方法、投与時間等は、厳密に定められる。図2の例では、1日目に薬剤A、薬剤B及び薬剤Cがこの順序で順次投与される。各薬剤について、表中に用量、投与方法及び投与時間(又は投与速度)が記載されている。また、図2の例では、1日目に続く2日目~14日目までは薬剤の投与を行わない休薬期間となっている。そして、この14日間(2週間)を1クール(1サイクル)として、4クール(4サイクル)の投薬治療が行われる計画となっている。
【0025】
サーバ20は、医療機関内及び/又はクラウド上に配置される各種の医療用システムのサーバとして機能するコンピュータである。サーバ20は、医療機関の全部門に共通のシステムのサーバであってよく、部門ごとのシステムのサーバであってよい。サーバ20は、電子カルテシステム、オーダリングシステム、及び、薬剤情報の管理システム等の種々の医療システムのサーバを含んでよい。医療機関内の各種の情報はサーバ20によって管理される。サーバ20によって管理される情報は、治療計画情報を含んでよい。治療計画情報は、例えば、電子カルテシステムにより管理されてよい。
【0026】
サーバ20によって管理される情報は、各患者の薬剤投与実績情報を含んでよい。薬剤投与実績情報は、薬剤を投与する特定の日よりも前に治療計画情報に基づいて実際に投与された薬剤の情報、及び、患者への薬剤投与時の副作用の発生等の記録を含む。薬剤投与実績情報は、患者の治療計画情報に従う薬剤の実際の投与情報に含まれる。薬剤の実際の投与情報は、治療の日の当日に実際に投与される薬剤及び投与中の薬剤の情報も含む。患者の体調等の変化により、治療計画情報に含まれる投与計画どおりに患者に対して薬剤を投与できないことがある。したがって、治療計画情報中の薬剤の投与計画と薬剤投与実績情報とには、ずれが生じることがある。治療計画情報は、薬剤投与実績情報に基づいて修正が加えられてよい。薬剤投与実績情報は、治療計画情報と同一のシステム(例えば、電子カルテシステム)及び同一のサーバ20上で管理されてよい。
【0027】
サーバ20によって管理される情報には、さらに、薬剤によって生じ得る副作用の情報である副作用情報を含んでよい。副作用情報には、副作用に関する種々の情報を含みうる。副作用情報は、薬剤の添付文書に記載されている副作用の情報を含む。さらに、副作用情報は、医療機関の内外において過去に蓄積された副作用の発生データに基づく副作用発生パターンのデータを含んでよい。例えば、副作用情報は、薬剤を最初に投与した場合に発生し易いアレルギーの情報を含みうる。また、副作用情報には、薬剤の投与量の累積値がその量を超えると当該薬剤による副作用を発生させる可能性が高い薬剤の量、及び、副作用の内容の情報を含んでよい。一例として、抗がん剤のオキサリプラチンでは、総投与量が所定量を超えると四肢末梢における知覚障害が生じるほか、投与開始数時間後から四肢、喉頭、口唇などにしびれ、ピリピリ感などが生じる急性末梢神経障害が出現することが知られている。さらに、副作用情報は、副作用が発生した場合、又は、副作用が発生する前に発生する生体情報(バイタルデータ)の変化などの情報を含んでよい。また、副作用情報は、特定の副作用を発生し易い患者の特徴の情報、例えば、年齢、性別、体型、及び、持病等の情報を含んでよい。
【0028】
情報処理装置10は、サーバ20が管理する各情報を、通信ネットワーク70を介して取得することができる。
【0029】
表示装置30は、医療機関内に配置され、各種情報を表示する表示装置である。表示装置30は、例えば、ナースステーションに配置され、看護師に対して情報提供及び通知を行う大型ディスプレイを含む。情報端末40は、医療従事者が所持する携帯型情報端末及び/又は医療従事者の机上に配置されるPC等を含む。情報端末40は、電子カルテシステムの端末と兼用することができる。情報端末40は、さらに、患者が治療を受けるベッド等に備えられた情報端末を含んでよい。表示装置30及び情報端末40は、表示用機器である。表示装置30及び情報端末40は、情報処理装置10から薬剤投与の進捗状況を管理する投薬進捗情報(以下、適宜「投薬進捗情報」とする)を取得可能に構成される。本開示において、薬剤投与の進捗状況とは、各患者に対する薬剤投与の進み具合を意味し、例えば、複数の薬剤を投与する場合は、現在の薬剤が全体の何番目であるかの情報、及び、薬剤投与の開始からの時間又は終了までの時間の情報等を含む。表示装置30及び情報端末40は、装置の種類及び装置の利用者に応じたアプリケーションを搭載し、利用者ごとに予め定められた範囲での情報を表示する。表示装置30及び情報端末40は、それぞれ複数台あってよい。また、情報処理システム1は、表示装置30および情報端末40の何れかのみを含んでもよい。
【0030】
投薬装置50は、患者に対して薬剤の投与を行う装置である。投薬装置50は、薬剤の投与の開始及び終了の情報を、情報処理装置10及び/又はサーバ20に送信するように構成されてよい。投薬装置50は、投与する薬剤の識別情報、投与量、投与速度等の少なくとも何れかを含む投与情報を設定可能であり、これら投与情報を各種ログ情報と共に自動記録し、情報処理装置10及び/又はサーバ20に送信可能に構成されてよい。投薬装置50には、薬液注入用のポンプが含まれる。
【0031】
生体情報監視装置60は、患者の生体情報を測定し、情報処理装置10及び/又はサーバ20に送信可能に構成される装置である。生体情報は、脈拍、血圧、血糖値及び体温等を含む。生体情報は、薬剤の投与に伴に副作用が発生したとき、又は、副作用の発生の前に変動しうる。したがって、生体情報は、副作用の発生及び発生の予兆を把握するために使用できる。
【0032】
(情報処理装置の構成)
情報処理装置10は、図3に示すように、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを備える。
【0033】
制御部11は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(central processing unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。制御部11は、情報処理装置10の各部を制御しながら、情報処理装置10の動作に関わる処理を実行する。制御部11は、バスを介して情報処理装置10を構成する各部と接続されている。以下において、制御部11が実行する処理を、情報処理装置10が実行するものとして説明することがある。また、情報処理装置10が実行する処理は、制御部11が実行する処理として言い換えることができる。
【0034】
記憶部12は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等を含む。記憶部12は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部12には、情報処理装置10の動作に用いられるプログラム及びデータと、情報処理装置10の動作によって得られたデータとが記憶される。記憶部12に記憶される情報は、通信部13を介して通信ネットワーク70から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0035】
通信部13は、通信ネットワーク70に接続する少なくとも1つの外部通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、有線通信又は無線通信のいずれのインタフェースであってよい。
【0036】
なお、本実施形態の情報処理装置10は、さらに、入力部及び出力部を備えてもよい。すなわち、通信部13を介して情報の受信(入力)及び送信(出力)を行うことに加えて、情報処理装置10は、入力部及び出力部により、情報の入出力を行ってもよい。
【0037】
情報処理装置10の機能は、本開示の方法に係るプログラムを、制御部11に相当するプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、情報処理装置10の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、情報処理装置10の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを情報処理装置10として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って情報処理装置10の動作を実行することにより情報処理装置10として機能する。
【0038】
本実施形態においてプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読取り可能な記録媒体は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体を含み、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。
【0039】
各サーバ20は、情報処理装置10と同様に構成されてよい。
【0040】
(表示装置及び情報端末の構成)
図4に示すように表示装置30及び情報端末40は、それぞれ、制御部31、41と、記憶部32、42と、通信部33、43と、入力部34、44と、出力部35、45とを備える。表示装置30及び情報端末40は、構成において類似するので同一の図4を用いて以下に纏めて説明する。
【0041】
制御部31、41は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。制御部31、41は、それぞれ表示装置30及び情報端末40の各部を制御しながら、表示装置30及び情報端末40の動作に関わる処理を実行する。以下において、制御部31、41のそれぞれが実行する処理を、それぞれ、表示装置30及び情報端末40が実行するものとして説明することがある。表示装置30及び情報端末40が実行する処理は、それぞれ、制御部31、41が実行する処理として言い換えることができる。
【0042】
記憶部32、42は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。記憶部32、42には、それぞれ、表示装置30及び情報端末40の動作に用いられるプログラム及びデータと、表示装置30及び情報端末40の動作によって得られたデータとが記憶される。記憶部32、42に記憶される情報は、例えばそれぞれ通信部33、43を介して通信ネットワーク70から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0043】
通信部33、43は、通信ネットワーク70に接続する少なくとも1つの外部通信用インタフェースを含む。通信部33、43は、それぞれ、表示装置30及び情報端末40の動作に用いられるデータを受信し、また、表示装置30及び情報端末40の動作によって得られるデータを、外部へ送信する。
【0044】
入力部34、44は、少なくとも1つの入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、キーボード等の物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。また入力用インタフェースは、例えば、音声入力を受け付けるマイクロフォン、画像入力を受け付けるカメラ等であってもよい。入力部34、44は、それぞれ、表示装置30及び情報端末40の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部34、44は、それぞれ、表示装置30及び情報端末40に備えられる代わりに、外部の入力機器として表示装置30及び情報端末40に接続されてもよい。
【0045】
出力部35、45は、少なくとも1つの出力用インタフェースを含む。出力部35、45は、情報を画像で出力する表示部36、46(ディスプレイ)を含む。表示部36、46は、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。出力部35、45は、情報を音声で出力するスピーカ等を含んでよい。出力部35、45は、それぞれ、通信ネットワーク70を介して受信したデータ、或いは表示装置30及び情報端末40の動作によって得られるデータ等を出力する。
【0046】
(情報処理装置による情報処理)
以下に、図5を参照して、情報処理装置10の制御部11が実行する処理(A)の手順を説明する。情報処理装置10は、多数の患者を対象として図5のフローチャートの処理を実行してよい。
【0047】
まず、情報処理装置10の制御部11は、薬剤の投与を予定している患者の識別情報を取得する(ステップS101)。識別情報は、患者を一意に識別できる情報である。患者の識別情報としては、例えば、患者に割り当てられた診察券番号が使用される。以下の図面及び説明において、患者の識別情報を患者IDと表記する場合がある。情報処理装置10は、管理対象の患者の識別情報をサーバ20から取得してよい。例えば、制御部11は、電子カルテシステムからその日投薬治療を予定している複数の患者の識別情報を取得してよい。
【0048】
次に、情報処理装置10の制御部11は、各患者の識別情報に基づいて、治療計画情報を管理するサーバ20から当該患者の治療計画情報を取得する(ステップS102)。制御部11は、取得した治療計画情報を記憶部12に記憶する。他の実施形態において、情報処理装置10は、サーバ20と連携して、全ての患者の最新の治療計画情報を記憶部12に記憶及び管理するように構成されてもよい。その場合、制御部11は、記憶部12から患者の治療計画情報を取得することができる。
【0049】
ステップS102の後、制御部11は、治療計画情報から当日の治療で投与する薬剤の種類、投与量、投与順序、投与時間等の計画値の情報を含む投薬進捗情報を生成する。投薬進捗情報は、当日の薬剤の投与の進捗を管理するために使用される。投薬進捗情報は、投与する薬剤の種類、投与量、投与順序、及び、投与時間の計画値に加え、実際に薬剤の投与を開始した開始時刻、薬剤の投与を終了した終了時刻、実際の薬剤の投与量等のデータを含む。薬剤の投与を開始する前の初期状態では、開始時刻、終了時刻、及び、投与量は入力されていなくてよい。制御部11は、生成した投薬進捗情報を記憶部12に記憶する。制御部11は、投薬進捗情報の少なくとも一部を表示装置30及び/又は情報端末40で表示するために通信部13を介して送信する(ステップS103)。表示装置30及び/又は情報端末40への投薬進捗情報の送信処理は、情報処理装置10から自発的に行なわれてよく、表示装置30及び/又は情報端末40からの情報の送信要求に応答して行ってもよい。
【0050】
ステップS103の後又はステップS103と並行して、制御部11は、副作用情報を管理するサーバ20から患者に投与する薬剤に関する副作用情報を取得する。制御部11は、取得した副作用情報を記憶部12に記憶し、及び、表示装置30及び/又は情報端末40に表示させるため、通信部13を介して送信する(ステップS104)。ステップS104の副作用情報の取得・記憶・表示処理(B)について、図6のフローチャートを用いてさらに説明する。
【0051】
まず、制御部11は、患者に投与する薬剤に関する副作用情報をサーバ20から取得する(ステップS201)。
【0052】
次に、制御部11は、患者に対して過去に行った投薬治療の情報を管理するサーバ20から、患者の識別情報に基づいて過去の薬剤の投与量の情報を含む薬剤投与実績情報を取得する(ステップS202)。当該患者について、薬剤の投与により過去に副作用が発生している場合、薬剤投与実績情報はその情報を含んでよい。
【0053】
制御部11は、ステップS201で取得した副作用情報と、ステップS202で取得した薬剤投与実績情報とに基づいて、今回の薬剤の投与により患者に発生しうる副作用があるか否かを判定する(ステップS203)。
【0054】
例えば、今回の薬剤の投与が初回であり、当該薬剤を初回に投与した場合に副作用が発生し易いという副作用情報がある場合、制御部11は、患者に発生しうる副作用があると判断する。また、前述のように特定の薬剤においては、累積の薬剤投与量が所定量を超える場合に、副作用が発生し易いことが知られている。そこで、制御部11は、今回の薬剤の投与により累積の薬剤投与量が、副作用を発生させる可能性が高いとして設定された所定量を超える場合に、患者に発生しうる副作用があると判断する。
【0055】
制御部11は、ステップS203で患者に発生しうる副作用があると判断した場合(ステップS203:Yes)、副作用情報を投薬進捗情報と関連付けて記憶部12に記憶する。また、制御部11は、患者に発生しうる副作用情報を投薬進捗情報と共に、又は、投薬進捗情報の一部として、通信部13を介して表示装置30及び/又は情報端末40に送信し、表示部36、46に表示させる(ステップS204)。さらに、特定の副作用の発生が予想される場合であって、副作用の発生の監視のために生体情報を監視することが有効と判断される場合、情報処理装置10は、患者に対して生体情報監視装置60を装着すべきことを、投薬進捗情報に含めて表示装置30及び/又は情報端末40に送信してよい。ステップS204の後、制御部11の処理は、図5のフローチャート(A)に戻る(ステップS104 )。
【0056】
ステップS103及びステップS104で、投薬進捗情報は、多様な形態で表示部36、46上に表示される。制御部11は、表示部36、46に複数の患者の情報を配列して表示させるため、複数の患者に係る投薬進捗情報を送信する。図7は、一例として、ナースステーション等に配置される表示装置30の表示部36に表示される治療室のベッドコントロール情報を簡略化して示す。ベッドコントロール情報は、薬剤を投与する治療室のベッドの空き状況、及び、患者へのベッドの割り当て状況を管理する情報である。情報処理装置10から送信される投薬進捗情報は、ベッドコントロール情報と連携して表示されてよい。例えば、図7では治療室Aのベッド番号1のベッドが、患者ID(患者の識別情報)0012345の患者の9時からの薬剤投与のために予約されていることを示す。医療従事者は、表示部36上で患者の予約を示す部分を操作すること(例えば、指で触れること)などにより、情報処理装置10から取得した投薬進捗情報に基づき、その患者への薬剤の投与に関する詳細な情報を表示させることができる。
【0057】
また、副作用の発生が予想される患者は、表示部36の表示画面上での表示の色を変える、枠線を点滅させる、及び/又は、特定のアイコンを表示する等によって、医療従事者が認識し易いように表示してよい(図7では星型のアイコンを表示している)。その場合、詳細を表示する画面上で副作用情報が表示されてよい。情報処理装置10から取得した投薬進捗情報に生体情報監視装置60を装着すべきことを示す情報が含まれる場合、表示装置30は、詳細を表示する画面上で副作用情報とともに生体情報監視装置60の装着を促す表示をしてよい。以上のような表示を行うことにより、表示装置30を見た医療従事者は、副作用の発生する可能性を予め把握し、迅速に対応することが容易となる。また、医療従事者は、副作用を発生させるリスクが高い患者のベッドを、ナースステーションの近くに変更することや、当該患者の薬剤の投与の終了後同じベッドで次の患者の治療を開始するまでの時間間隔を長くとること等が可能になる。これにより薬剤の投与による副作用が発生した場合のリスクを適切に管理することができる。
【0058】
次に、情報処理装置10は、薬剤が投与される患者への薬剤投与を支援するとともに薬剤投与の進捗を管理する(ステップS105)。以下に、情報処理装置10の制御部11による薬剤投与の進捗管理処理(C)の一例を、図8を参照して説明する。
【0059】
まず、制御部11は、薬剤の投与を担当する医療従事者の情報端末40に対して、薬剤投与の指示を表示させる(ステップS301)。薬剤投与の指示は、例えば、図9に示すように、治療計画情報に含まれていた薬剤を投与する患者の識別情報、患者に対して今回投与する薬剤の名称、投与量、投与方法、投与時間等の情報を含んでよい。また、制御部11が情報端末に対して副作用情報を送信することにより、情報端末40には副作用情報が表示され、医療従事者は発生する可能性のある副作用を確認することができる。
【0060】
医療従事者は、情報端末40を用いて、患者に薬剤を投与するとき予め定められた規則に基づく入力を行う。このため、情報端末40は、三点認証システムの端末として機能してよい。三点認証システムは、医療過誤の防止のため、患者、看護師、医薬品を関連付けて認証するシステムである。三点認証システムは、患者、看護師及び医薬品の全てが、確認されたとき薬剤の投与を許可する。情報端末40の制御部41は、三点認証システムと連携して、認証が行われたこと、及び、投与が開始される薬剤の情報等を取得し、通信部43を介して情報処理装置10に送信してよい。情報処理装置10の制御部11は、情報端末40から取得した情報に基づいて、治療計画情報に定められた手順に従って、薬剤の投与が行われているか否かを判断してよい(ステップS302)。治療計画情報に定められた手順には、薬剤投与の順序、用量、投与方法及び投与時間等の情報を含む。
【0061】
制御部11は、治療計画情報に定められた手順と、実際に投与される薬剤の情報との間に不整合がある場合(ステップS302:No)、情報端末40に警告及び/又はガイダンス情報を送信してよい(ステップS303)。例えば、治療計画情報と異なる順序で薬剤が投与されようとしている場合、制御部11は、医療従事者の情報端末40の表示部46に表示させるために警告及び/又はガイダンス情報を送信する。ここで、警告情報は、薬剤の投与の方法に誤りがあることを指摘する情報を意味する。また、ガイダンス情報は、正しい薬剤の投与方法を報知する情報を含む。
【0062】
情報処理装置10は、医療従事者による情報端末40への入力、三点認証システム及び/又は投薬装置50からの信号に基づいて、薬剤の投与が開始されたことを認識することができる。薬剤の投与が開始されたことを情報処理装置10に通知する情報は、薬剤の実際の投与情報に含まれる。薬剤が投与されている間、情報処理装置10の制御部11は、患者への薬剤投与の進捗状況を管理する。制御部11は、薬剤の投与を開始した時刻を記憶部12の投薬進捗情報中に記憶し、薬剤投与開始後から経過した時間と治療計画情報に含まれている薬剤の投与時間とを対比して、薬剤の投与の進捗を把握することができる。
【0063】
患者の体に生体情報監視装置60が装着されている場合、制御部11は通信部13を介して生体情報監視装置60から生体情報を定期的に取得して、生体情報が正常か否かを確認してよい(ステップS304)。ステップS304で生体情報に異常があると判断した場合(ステップS304:No)、制御部11は、異常を記憶部12に記憶するとともに、通信部13を介して表示装置30及び/又は医療従事者の情報端末40に対して異常を通知する(ステップS305)。制御部11は、患者への薬剤の投与に関する副作用情報と照合し、副作用の発生と関連する可能性がある生体情報の異常が発生していると判断する場合、表示装置30及び/又は情報端末40に対して副作用情報と共に異常の発生を通知する。また、制御部11は、生体情報が正常値の範囲内であっても、副作用に関連すると判断される生体情報の変動が生じた場合、記憶部12に記憶するとともに、表示装置30及び/又は情報端末40に通知をしてよい。異常の通知を受けた表示装置30及び/又は情報端末40の制御部31、41は、異常の内容を表示部36、46に表示させる。これにより、医療従事者は、薬剤投与中に発生する副作用等に対して迅速且つ正確に対応することができる。
【0064】
薬剤の投与中、情報処理装置10は、薬剤投与の進捗状況を表示する表示装置30及び/又は情報端末40に対して、投薬進捗情報を送信する。情報処理装置10は、例えば、表示装置30及び/又は情報端末40に搭載されるアプリケーションから、薬剤投与の進捗状況の問合せがあったとき(ステップS306:Yes)、記憶部12に記憶されている最新の投薬進捗情報の一部又は全部を表示装置30及び/又は情報端末40に対して送信してよい(ステップS307)。表示装置30及び/又は情報端末40の制御部31、41は、利用者による入力部34、44の操作により、患者の薬剤投与の進捗状況を表示するとき、投薬進捗情報の問合せを、情報処理装置10に送信するように構成されてよい。
【0065】
また、別の実施形態として、情報処理装置10の制御部11は、患者の投薬進捗情報に変化があったとき、登録された表示装置30及び/又は情報端末40に対して、自発的に更新された部分の投薬進捗情報を送信するように構成されてよい。あるいは、制御部11は、所定の間隔で定期的に、投薬進捗情報を表示装置30及び/又は情報端末40に送信するように構成されてもよい。表示装置30及び/又は情報端末40では、情報処理装置10から受信する投薬進捗情報に基づいて、記憶部32、42に各患者の投薬進捗情報を最新の状態で記憶し、必要な情報を表示部36、46に表示するように構成されてよい。表示装置30及び/又は情報端末40は、投薬進捗情報を種々の加工をして表示してよい。
【0066】
制御部11は、投薬進捗情報に基づいて表示装置30及び/又は情報端末40が患者の情報を表示するときの優先度を判断することができる。制御部11は、投薬進捗情報に加え、患者に関する副作用情報、並びに、患者の脈拍、血圧、血糖値及び体温の少なくとも何れかを含む生体情報を考慮してよい。制御部11は、表示装置30及び/又は情報端末40に対して複数の患者それぞれの優先度を、投薬進捗情報と共に送信してよい。このような優先度は、表示装置30及び/又は情報端末40側で決定することも可能である。表示装置30及び/又は情報端末40は、優先度に従って、複数の患者の情報を、リスト形式等で配列して表示してよい。
【0067】
情報処理装置10の制御部11は、投与中の薬剤の投与が完了しない限り(ステップS308:No)、ステップS304からステップS307の処理を繰り返す。なお、ステップS304及びS305の組と、ステップS306及びS307の組の処理の順序は図8に記載のものに限られない。これらの処理は、逆の順序で行われても、並行して行われてもよい。ステップS306及びステップS307は、表示装置30及び/又は情報端末40からの進捗情報の問合せがあったときに割り込み処理として実行されてよい。
【0068】
投与中であった薬剤の投与が完了すると、投薬装置50は、直接的に、又は他の装置を経由して間接的に、情報処理装置10に対して薬剤の投与の完了を通知する。これにより、情報処理装置10の制御部11は、薬剤の投与の完了を知ることができる。また、別の方法として、薬剤の投与の終了時刻に医療従事者が患者のベッドに行き、薬剤の投与が完了していることを確認して、入力部44を操作して情報端末40に薬剤投与が完了したことを入力してよい。この場合、情報端末40の制御部41が通信部42を介して、情報処理装置10に対して薬剤の投与の完了を通知する。薬剤の投与の完了の通知は、薬剤の実際の投与情報に含まれる。
【0069】
情報処理装置10の制御部11は、投与中の薬剤の投与が完了すると(ステップS308:Yes)、投薬進捗情報を更新する(ステップS309)。例えば、患者に対して投与すべき薬剤が3種類あり、最初の薬剤の投与が完了した場合、制御部11はその情報を投薬進捗情報に登録する。更新された投薬進捗情報は、情報処理装置10の記憶部12に記憶される。また、更新された投薬進捗情報は、表示装置30及び/又は情報端末40の表示部36、46に表示される情報を更新するため、表示装置30及び/又は情報端末40に送信されてよい。
【0070】
ステップS306の後、治療計画情報から取得した投薬進捗情報に次に投与する薬剤の情報が含まれる場合(ステップS310)、情報処理装置10の制御部11の制御は、ステップS301に戻り、担当の医療従事者に対して次の薬剤の投与を促す。このように、制御部11は、順次投与されるべき薬剤の情報を送信する。制御部11は、投薬進捗情報に基づいて患者に対しその日に予定された全ての薬剤の投与が終了すると(ステップS310:No)、図5のステップS106に戻り、当該患者の投薬進捗情報を更新するとともに薬剤投与の終了を記憶部12に記憶する。さらに、制御部11は、治療計画情報を管理するサーバ20、並びに、患者の薬剤の投与の進捗状況を表示している表示装置30及び/又は情報端末40に対して、薬剤の投与の終了を通知する。制御部11は、サーバ20に記憶されている薬剤投与実績情報を、患者の当日の薬剤投与の結果に基づいて更新してよい。
【0071】
表示装置30及び/又は情報端末40は、当該装置の使用者に応じて、表示部36、46に種々の態様で情報を表示することができる。例えば、医療従事者の情報端末40では、情報処理装置10から取得した複数の患者の投薬進捗情報を、所定の評価項目に従って決定された前述の優先度に応じてリスト形式で表示することができる。所定の評価項目は、例えば、現在投与中の薬剤の投与完了までの残り時間等の情報を含んでよい。優先度を決定するとき、患者の副作用情報及び/又は生体情報が考慮されてもよい。
【0072】
例えば、薬剤師の所持する情報端末40には、図10に示すように、次の薬剤の投与開始時刻が近い順に、次の薬剤の投与開始時刻を含む情報が表示されてよい。次の薬剤の投与開始時刻は、現在の薬剤の投与開始時刻と投与時間から計算されてよい。図10の例では、薬剤投与の進捗状況が、表示部46上に見やすい形式で表示される。例えば、患者ごとにその日に投与する薬剤の名称が、投与する順序で並べて表示される。そして、投与が終了した薬剤、投与中の薬剤及びこれから投与する薬剤が、色分け及び輝度などの点で異なる態様で表示される。投与が終了した薬剤は、目立たない態様で表示され、投与中の薬剤は強調された態様で表示されてよい。さらに、画面上には副作用情報が表示されてよい。このような表示をすることにより、薬剤師は準備しなければならない薬剤を容易に把握することができる。
【0073】
情報端末40は、患者のベッドに備えられて、薬剤の投与を受ける患者が見ることができる端末であってもよい。この場合、情報端末40は、当該患者についての投与する残りの薬剤の数、薬剤投与の終了迄の残り時間等を表示してよい。また、情報端末40は、患者が薬剤投与中に気分が悪くなったときなどに、患者の操作による入力を受けるように構成されてよい。この場合、患者が入力した情報は、異常又は副作用の発生を示す情報として情報処理装置10に送信されてよい。
【0074】
以上説明したように、本開示によれば、治療計画情報を患者に薬剤を投与する際の医療従事者に対する情報の提供、及び、支援に有効に活用することができる。それによって、医療従事者の作業負担を軽減することが可能になる。さらに、治療計画情報が、投薬量や投薬順序の確認に利用されるので、医療事故の防止および医療安全性の確保に寄与する。
【0075】
本開示に係る実施形態について、諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または変更を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部または各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部またはステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態について装置を中心に説明してきたが、本開示に係る実施形態は装置の各構成部が実行するステップを含む方法としても実現し得るものである。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、またはプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0076】
10 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
20 サーバ
30 表示装置(表示用機器)
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
34 入力部
35 出力部
36 表示部
40 情報端末(表示用機器)
41 制御部
42 記憶部
43 通信部
44 入力部
45 出力部
46 表示部
50 投薬装置
60 生体情報監視装置
70 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10