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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047441
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】自動運転装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240329BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240329BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240329BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W30/09
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153056
(22)【出願日】2022-09-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA33
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD09
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB20Z
3D241DC25Z
3D241DC30Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC37Z
3D241DC39Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】運転行動を決定する処理を簡潔にする。
【解決手段】自動運転装置1は、複数の走行軌道のうちの走行軌道に対応するコストが最小になる走行軌道を走行する走行モードを決定する基本走行モード決定部122と、走行軌道に応じた車速ポテンシャル及び車線ポテンシャルを生成する基本走行ポテンシャル生成部123と、周辺の障害物の障害物ポテンシャルを生成する障害物ポテンシャル生成部124と、進行方向の前方の停止位置に対する停止位置ポテンシャルを出力するかを示すポテンシャルモードを、停止位置ポテンシャルを出力する出力モードに決定する出力モード決定部125と、ポテンシャルモードが出力モードになったら停止位置ポテンシャルを生成する交通ポテンシャル生成部126と、上記4つのポテンシャルを含み、自車両Vの運転行動をパラメータとするコストを最小化する値を求めて運転行動を決定する運転行動決定部128と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポテンシャル場に基づいて自車両の運転行動を決定する自動運転装置であって、
前記自車両の基本走行モードを、前記自車両の複数の走行モードの各々に応じた走行軌道のうちの前記走行軌道に対応する軌道コスト関数が最小になる走行軌道を走行する走行モードに決定する基本走行モード決定部と、
前記基本走行モード決定部が決定した走行モードの走行軌道に応じて、前記自車両の車速の推奨度合いを示す車速ポテンシャル及び前記自車両の走行位置の推奨度合いを示す車線ポテンシャルを生成する基本走行ポテンシャル生成部と、
前記自車両の周辺の障害物に応じて障害物ポテンシャルを生成する障害物ポテンシャル生成部と、
前記自車両の進行方向の前方に前記自車両が停止すべき位置が特定されると、前記停止すべき位置に対する前記自車両の停止位置の推奨度合いを示す停止位置ポテンシャルを出力するか否かを示すポテンシャルモードを、前記停止位置ポテンシャルを出力する出力モードに決定する出力モード決定部と、
前記ポテンシャルモードが前記出力モードになったら、前記停止位置ポテンシャルを生成する交通ポテンシャル生成部と、
前記車速ポテンシャル、前記車線ポテンシャル、前記障害物ポテンシャル及び前記停止位置ポテンシャルを含み、前記自車両の運転行動をパラメータとする行動コスト関数を最小化する値を求めて、前記運転行動を決定する運転行動決定部と、
を備える自動運転装置。
【請求項2】
前記複数の走行モードは、車線維持モード、車線変更モード及び障害物回避モードであり、
前記基本走行モード決定部は、前記障害物ポテンシャルを含み、かつ前記車線維持モード、前記車線変更モード及び前記障害物回避モードの各々の走行軌道に応じた前記軌道コスト関数が最小になる走行軌道を走行する走行モードを基本走行モードに決定する、
請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項3】
前記基本走行モード決定部は、前記自車両の走行車線の進行方向前方に静止する静止障害物が検出され、かつ前記自車両の向きが前記自車両の走行軌道の経路点の接線方向を基準とする所定の判定角度範囲内であると判定され、かつ前記車線変更モード又は前記障害物回避モードの走行軌道の終点における前記自車両の向きが当該終点の接線方向を基準とする前記判定角度範囲内であると判定され、かつ前記車線変更モード又は前記障害物回避モードの走行軌道が前記軌道コスト関数の関数値が最小である場合に、前記基本走行モードを前記車線維持モードから前記車線変更モード及び前記障害物回避モードのうちの関数値が最小である方に遷移させる、
請求項2に記載の自動運転装置。
【請求項4】
前記交通ポテンシャル生成部は、前記障害物ポテンシャルの最大値よりも最大値が小さい前記停止位置ポテンシャルを生成する、
請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項5】
前記出力モード決定部は、前記ポテンシャルモードを前記出力モードに決定した後前記自車両が停止したら、前記ポテンシャルモードを、前記停止位置ポテンシャルを出力しない不出力モードに決定し、
前記交通ポテンシャル生成部は、前記ポテンシャルモードが前記出力モードから前記不出力モードになったら、生成した前記停止位置ポテンシャルを消去する、
請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項6】
前記出力モード決定部は、前記自車両が停止した後、前記自車両が前記停止すべき位置を超えて進行可能か否かを判定するための進行可能条件を満たしたら、前記ポテンシャルモードを前記不出力モードに決定する、
請求項5に記載の自動運転装置。
【請求項7】
前記出力モード決定部は、前記自車両の走行車線の進行方向前方に前記停止すべき位置である停止線が特定されると、前記ポテンシャルモードを前記出力モードに決定し、
前記交通ポテンシャル生成部は、特定された前記停止線の位置に前記停止位置ポテンシャルを生成する、
請求項1から6いずれか一項に記載の自動運転装置。
【請求項8】
前記出力モード決定部は、前記自車両の走行車線の進行方向前方に前記停止すべき位置である横断歩道が特定されると、前記ポテンシャルモードを前記出力モードに決定し、
前記交通ポテンシャル生成部は、
前記横断歩道の直前に停止線が特定されたら、特定された前記停止線の位置に前記停止位置ポテンシャルを出力し、
前記横断歩道の直前に停止線が特定されなければ、前記横断歩道と前記自車両との間であり、かつ前記横断歩道から所定の停止距離だけ離れた位置に前記停止位置ポテンシャルを生成する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の自動運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の運転行動を決定する自動運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の周辺の交通環境に応じて自車両を制御する技術が知られている。特許文献1には、自車両の走行車線を跨ぐ状態の他車両が存在すると判定した場合に、自車両と他車両の車幅方向の距離が閾値を超えているか否かにより、ブレーキの作動を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-154794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術のように、自車両の周辺の状況を判定して自車両を制御する場合、交通環境が複雑になるほど運転行動を決定するために必要な判定が増大するので、運転行動を決定する処理が複雑になっていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、運転行動を決定する処理を簡潔にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、ポテンシャル場に基づいて自車両の運転行動を決定する自動運転装置であって、前記自車両の基本走行モードを、前記自車両の複数の走行モードの各々に応じた走行軌道のうちの前記走行軌道に対応する軌道コスト関数が最小になる走行軌道を走行する走行モードに決定する基本走行モード決定部と、前記基本走行モード決定部が決定した走行モードの走行軌道に応じて、前記自車両の車速の推奨度合いを示す車速ポテンシャル及び前記自車両の走行位置の推奨度合いを示す車線ポテンシャルを生成する基本走行ポテンシャル生成部と、前記自車両の周辺の障害物に応じて障害物ポテンシャルを生成する障害物ポテンシャル生成部と、前記自車両の進行方向の前方に前記自車両が停止すべき位置が特定されると、前記停止すべき位置に対する前記自車両の停止位置の推奨度合いを示す停止位置ポテンシャルを出力するか否かを示すポテンシャルモードを、前記停止位置ポテンシャルを出力する出力モードに決定する出力モード決定部と、前記ポテンシャルモードが前記出力モードになったら、前記停止位置ポテンシャルを生成する交通ポテンシャル生成部と、前記車速ポテンシャル、前記車線ポテンシャル、前記障害物ポテンシャル及び前記停止位置ポテンシャルを含み、前記自車両の運転行動をパラメータとする行動コスト関数を最小化する値を求めて、前記運転行動を決定する運転行動決定部と、を備える自動運転装置を提供する。
【0007】
前記複数の走行モードは、車線維持モード、車線変更モード及び障害物回避モードであり、前記基本走行モード決定部は、前記障害物ポテンシャルを含み、かつ前記車線維持モード、前記車線変更モード及び前記障害物回避モードの各々の走行軌道に応じた前記軌道コスト関数が最小になる走行軌道を走行する走行モードを基本走行モードに決定してもよい。
【0008】
前記基本走行モード決定部は、前記自車両の走行車線の進行方向前方に静止する静止障害物が検出され、かつ前記自車両の向きが前記自車両の走行軌道の経路点の接線方向を基準とする所定の判定角度範囲内であると判定され、かつ前記車線変更モード又は前記障害物回避モードの走行軌道の終点における前記自車両の向きが当該終点の接線方向を基準とする前記判定角度範囲内であると判定され、かつ前記車線変更モード又は前記障害物回避モードの走行軌道が前記軌道コスト関数の関数値が最小である場合に、前記基本走行モードを前記車線維持モードから前記車線変更モード及び前記障害物回避モードのうちの関数値が最小である方に遷移させてもよい。
【0009】
前記交通ポテンシャル生成部は、前記障害物ポテンシャルの最大値よりも最大値が小さい前記停止位置ポテンシャルを生成してもよい。
【0010】
前記出力モード決定部は、前記ポテンシャルモードを前記出力モードに決定した後前記自車両が停止したら、前記ポテンシャルモードを、前記停止位置ポテンシャルを出力しない不出力モードに決定し、前記交通ポテンシャル生成部は、前記ポテンシャルモードが前記出力モードから前記不出力モードになったら、生成した前記停止位置ポテンシャルを消去してもよい。
【0011】
前記出力モード決定部は、前記自車両が停止した後、前記自車両が前記停止すべき位置を超えて進行可能か否かを判定するための進行可能条件を満たしたら、前記ポテンシャルモードを前記不出力モードに決定してもよい。
【0012】
前記出力モード決定部は、前記自車両の走行車線の進行方向前方に前記停止すべき位置である停止線が特定されると、前記ポテンシャルモードを前記出力モードに決定し、前記交通ポテンシャル生成部は、特定された前記停止線の位置に前記停止位置ポテンシャルを生成してもよい。
【0013】
前記出力モード決定部は、前記自車両の走行車線の進行方向前方に前記停止すべき位置である横断歩道が特定されると、前記ポテンシャルモードを前記出力モードに決定し、前記交通ポテンシャル生成部は、前記横断歩道の直前に停止線が特定されたら、特定された前記停止線の位置に前記停止位置ポテンシャルを出力し、前記横断歩道の直前に停止線が特定されなければ、前記横断歩道と前記自車両との間であり、かつ前記横断歩道から所定の停止距離だけ離れた位置に前記停止位置ポテンシャルを生成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転行動を決定する処理を簡潔にできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る自動運転装置が実行する処理の概要を説明するための図である。
図2】自動運転装置の構成を説明するための図である。
図3】基本走行ステートマシンの模式図である。
図4】停止位置ステートマシンの模式図である。
図5】停止線に対応する停止位置ポテンシャルを説明するための図である。
図6】横断歩道と自車両の間の位置に停止位置ポテンシャルを生成する処理を説明するための図である。
図7】自動運転装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[自動運転装置が実行する処理の概要]
図1は、実施の形態に係る自動運転装置が実行する処理の概要を説明するための図である。自動運転装置は、自車両に搭載されており、自車両の運転行動をポテンシャル場に基づいて決定する。
【0017】
自動運転装置は、自車両の走行モードを決定するための基本走行ステートマシンSM1に基づいて自車両の走行モードを決定する。基本走行ステートマシンSM1の詳細は後述する。自動運転装置は、決定された走行モードに対応する基本走行ポテンシャル場PF1を生成する。基本走行ポテンシャル場PF1は、走行モードに対応する走行軌道を自車両が走行するように生成される。走行軌道には、例えば、現時点から所定の予測時間後までの各時刻における自車両の目標速度、目標位置及び目標位置に到達する目標時刻を示す情報が含まれている。
【0018】
自動運転装置は、基本走行ポテンシャル場PF1に基づき、車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneを生成する。車速ポテンシャルUvelは、自車両の車速の推奨度合いを示すポテンシャルである。具体的には、車速ポテンシャルUvelは、自車両の目標速度と現時刻の速度との差に比例する引力又は斥力ポテンシャルである。車線ポテンシャルUlaneは、自車両の走行位置の推奨度合いを示すポテンシャルである。具体的には、車線ポテンシャルUlaneは、自車両の目標位置を基準とするポテンシャルであり、自車両の目標位置と現時刻の位置との差に比例する引力ポテンシャルである。
【0019】
自動運転装置は、自車両の周辺に存在する移動障害物と静止障害物を検出し、移動障害物に対応する移動障害物ポテンシャル場PF2及び静止障害物に対応する占有グリッドマップPF3を生成する。移動障害物ポテンシャル場PF2は、移動障害物と自車両が接触する接触リスクを示す斥力ポテンシャルである。占有グリッドマップPF3は、静止障害物と自車両が接触する接触リスクを示す斥力ポテンシャルである。占有グリッドマップPF3は、自車両が進入すべきでない領域に進入する際の違反リスクを示す斥力ポテンシャルであってもよい。自動運転装置は、自車両の周辺に存在する複数の障害物の各々に対して移動障害物ポテンシャル場PF2又は占有グリッドマップPF3を生成する。自動運転装置は、移動障害物ポテンシャル場PF2及び占有グリッドマップPF3を統合して障害物ポテンシャルUobjを生成する。
【0020】
自動運転装置は、自車両Vが走行中の道路の交通ルールに基づく自車両が停止すべき停止位置を特定すると、停止位置ステートマシンSM2に基づいて、停止位置への対応モードを、停止位置ポテンシャルを出力する出力モードに決定する。停止位置ステートマシンSM2は、自車両Vが走行中の道路の交通ルールに基づく自車両が停止すべき停止位置に対する自車両Vの対応モードを決定するためのステートマシンである。停止位置ステートマシンSM2の詳細は後述する。
【0021】
自動運転装置は、停止位置ステートマシンSM2の対応モードが出力モードになったら、停止位置に対する停止位置ポテンシャル場PF4を生成する。停止位置ポテンシャル場PF4は、停止位置の手前で自車両が停止するように生成される。自動運転装置は、停止位置ポテンシャル場PF4に対応する停止位置ポテンシャルUstop生成する。停止位置ポテンシャルUstopは、停止位置に対する自車両Vの停止位置の推奨度合いを示すポテンシャルである。言い換えると、停止位置ポテンシャルUstopは、自車両が交通ルールに違反するリスクを示す斥力ポテンシャルである。
【0022】
自動運転装置は、車速ポテンシャルUvel、車線ポテンシャルUlane、障害物ポテンシャルUobj及び停止位置ポテンシャルUstopを含み、自車両Vの運転行動をパラメータとする行動コスト関数を最小化する値を求めて自車両Vの運転行動を決定する。運転行動は、加速度及びヨーレートである。言い換えると、自動運転装置は、自車両Vの走行軌道、周辺の障害物及び交通ルールの各々に応じて個別に生成された複数のポテンシャルを含む行動コスト関数を最小化する値を決定するという処理だけで、自車両の加速度及びヨーレートを決定する。これにより、自動運転装置は、複雑な交通環境に応じた多数の判定を実行することなく自車両の運転行動を決定できる。その結果、本実施の形態に係る自動運転装置は、複雑な交通環境に応じた多数の判定を実行する場合よりも、運転行動を決定する処理を簡潔にできる。
【0023】
[自動運転装置1の構成]
図2は、自動運転装置1の構成を説明するための図である。自動運転装置1は、自動運転車両である自車両Vに搭載されている。自車両Vは、自動運転装置1の他に、センサ群2及びECU(Electronic Control Unit)3を搭載している。
【0024】
センサ群2は、自車両Vの状態及び周辺環境を検出するセンサである。センサ群2は、例えば自車両Vの状態として車速を検出する車速センサ及び加速度を検出する加速度センサを含み、自車両Vの車速及び加速度を検出する。センサ群2は、車両の位置を検出するためのGPS(Global Positioning System)受信機を含み、自車両Vの位置を検出する。また、センサ群2は、自車両Vの状態として、ヨーレートを検出するセンサを含み、ヨーレートを検出する。
【0025】
センサ群2は、周辺環境を検出するセンサとして、カメラ、レーダ、LIDAR等の外部センサを有する。センサ群2は、外部センサの出力値を自動運転装置1に出力する。
【0026】
ECU3は、自車両Vを制御するECUである。ECU3は、自動運転装置1が決定した運転行動に従い、自車両Vの加速度及びヨーレートを制御する。例えば、ECU3は、自動運転装置1が決定した加速度になるように自車両Vの駆動輪に接続されたエンジンのスロットル開度又はモータに供給する電力量を制御する。また、ECU3は、自動運転装置1が決定したヨーレートになるように、自車両Vの操舵輪の角度を制御する。
【0027】
自動運転装置1は、記憶部11及び制御部12を備える。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。記憶部11は、自車両Vが走行する道路を含む地図を記憶していてもよい。例えば、記憶部11は、信号機の位置、停止線の位置及び横断歩道の位置を含む地図を記憶する。
【0028】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、障害物検出部121、基本走行モード決定部122、基本走行ポテンシャル生成部123、障害物ポテンシャル生成部124、出力モード決定部125、交通ポテンシャル生成部126、コスト関数生成部127及び運転行動決定部128としての機能を実現する。
【0029】
障害物検出部121は、センサ群2の出力値に基づいて自車両Vの周囲の障害物を検出する。例えば、障害物検出部121は、移動障害物(例えば、他車両、自転車、歩行者等)及び静止障害物(塀、ガードレール、標識、看板等)を検出する。また、障害物検出部121は、センサ群2の出力値に基づいて自車両Vが走行する車線の位置や幅等を検出する。
【0030】
基本走行モード決定部122は、基本走行ステートマシンSM1に基づいて複数の走行モードから一の走行モードを選択することにより自車両Vの基本走行モードを決定する。図3は、基本走行ステートマシンSM1の模式図である。図3に示すとおり、複数の走行モードは、車線維持モードSM11、右車線変更モードSM15、左車線変更モードSM14、障害物右回避モードSM12及び障害物左回避モードSM13である。
【0031】
基本走行モード決定部122は、自車両Vが走行中の走行車線を走行し続けるように、基本走行モードを車線維持モードSM11に決定している。基本走行モード決定部122は、基本走行モードを車線維持モードSM11に決定している間、自車両Vが走行中の走行車線の幅方向における中心位置を走行する走行経路を生成する。具体的には、基本走行モード決定部122は、自車両Vが走行する道路の制限速度、他の交通参加者(他車両、自転車、歩行者等)に基づき、自車両Vの目標速度、目標位置を決定する。
【0032】
基本走行モード決定部122は、自車両Vの走行車線の進行方向前方に静止障害物が検出されたら、静止障害物を回避する走行軌道として、自車両Vの複数の走行モードの各々に応じた走行軌道を生成する。走行軌道は、障害物を右に回避する障害物右回避モードに対応する軌道、障害物を左に回避する障害物左回避モードに対応する軌道、右車線に車線変更して障害物を回避する右車線変更モードに対応する軌道、左車線に車線変更して障害物を回避する左車線変更モードに対応する軌道である。また、基本走行モード決定部122は、現在の走行車線を維持する車線維持モードに対応する走行軌道を生成する。
【0033】
基本走行モード決定部122は、各走行モードに対応する走行軌道を走行するときの軌道コスト関数を生成する。軌道コスト関数は、各走行モードをパラメータとするコスト関数である。走行軌道に応じた軌道コスト関数C(I)は、下記式(1)で示される。
(I)=-w s/(VtgtΔT)+w (R max/Rth)…(1)
【0034】
式(1)の第1項のw sは、走行軌道において現時点から軌道コスト予想時間ΔTまでに自車両Vが走行すると予想される道のりの長さを示す。また、第1項は、走行距離の道のりの長さw sを、目標速度Vtgtと軌道コスト予想時間ΔTとの積で算出された理想的な道のりの長さで除することで正規化されている。第1項は、負のコストである利得であり、予想される道のりの長さが理想的な道のりの長さに近いほど絶対値が小さくなる。
【0035】
式(1)の第2項は、走行軌道を走行するリスクを正規化した値である。最大衝突リスクR maxは、走行軌道の複数の経路点の各々の衝突リスクのうちの最大値である。各経路点の衝突リスクは、障害物ポテンシャルUobjにより定まる。閾値Rthは、例えば、平均的な運転者が車両を運転する際の衝突リスクよりも低い値である。第2項は、正のコストである罰則であり、最大衝突リスクR maxが閾値Rthよりも小さいほど絶対値が小さくなる。
【0036】
基本走行モード決定部122は、各走行モードに対応する軌道コスト関数の関数値を算出する。基本走行モード決定部122は、複数の走行軌道のうちの走行軌道に対応する軌道コスト関数の関数値が最小になる走行軌道を走行する走行モードを、基本走行モードに決定する。一例を挙げると、基本走行モード決定部122は、複数の関数値のうちの最小の関数値に対応する走行モードが障害物右回避モードであれば、基本走行モードを障害物右回避モードに決定する。
【0037】
基本走行モード決定部122は、自車両Vの走行車線の進行方向前方に静止障害物が検出されたときに自車両Vが走行車線に対して安定走行状態であれば、関数値が最小である走行モードを基本走行モードに決定する。基本走行モード決定部122は、自車両Vの向きが所定の第1判定角度範囲内であれば、自車両Vが安定走行状態であると判定する。第1判定角度範囲は、自車両Vが走行中の走行軌道の経路点の接線方向を基準とする角度の範囲である。第1判定角度範囲は、例えば鋭角であり、接線方向の一の経路点から次の経路点を向く向きを中心とするマイナス15度からプラス15度である。基本走行モード決定部122は、自車両Vの向きが第1判定角度範囲外であれば自車両Vが不安定走行状態であると判定する。
【0038】
基本走行モード決定部122は、走行軌道を走行する際に自車両Vが安定走行状態になると判定された複数の走行軌道のうちの関数値が最小である走行モードを、基本走行モードに決定してもよい。基本走行モード決定部122は、各走行モードに対応する走行軌道の終点における自車両Vの向きが第2判定角度範囲内であれば、当該走行軌道を走行する際に自車両Vが安定走行状態になると判定する。第2判定角度範囲は、各走行モードに対応する走行軌道の終点の接線方向を基準とする角度の範囲である。第2判定角度範囲は、例えば鋭角であり、終点の直前の経路点から終点を向く向きを中心とするマイナス15度からプラス15度である。基本走行モード決定部122は、走行モードに対応する走行軌道の終点における自車両Vの向きが、第2判定角度範囲外であれば、当該走行軌道を走行する際に自車両Vが安定走行状態にならないと判定する。
【0039】
基本走行モード決定部122は、自車両Vが安定走行状態であり、かつ走行軌道を走行する際に自車両Vが安定走行状態になると判定され、かつ走行モードに軌道コスト関数の関数値が最小である状態が判定継続時間以上継続したら、当該走行モードを基本走行モードに決定する。判定継続時間は、判定結果が安定するのにかかると想定される時間であり、具体的な値は例えば1秒であるが、これに限定するものではない。
【0040】
基本走行モード決定部122は、自車両Vの車速が大きいほど判定継続時間を短くしてもよい。これにより、基本走行モード決定部122は、自車両Vの前方に存在する静止障害物に至るまでの時間が短くなる場合に、より短い時間で基本走行モードを決定できる。
【0041】
基本走行ポテンシャル生成部123は、基本走行モード決定部122が決定した走行モードの走行軌道に応じて車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneを生成する。具体的には、基本走行ポテンシャル生成部123は、走行モードの走行軌道を走行するように設定された基本走行ポテンシャル場PF1を生成し、生成した基本走行ポテンシャル場PF1に応じて車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneを生成する。車速ポテンシャルUvelは、自車両Vの目標速度と現時刻の速度との差に比例する引力又は斥力ポテンシャルである。車線ポテンシャルUlaneは、自車両Vの目標位置を基準とするポテンシャルであり、自車両Vの目標位置と現時刻の位置との差に比例する引力ポテンシャルである。
【0042】
障害物ポテンシャル生成部124は、障害物検出部121が検出した自車両Vの周辺の移動障害物に応じて移動障害物ポテンシャル場PF2を生成する。移動障害物ポテンシャル場PF2は、移動障害物の速度及び向きに応じて所定時間毎に更新される時系列ポテンシャルである。また、障害物ポテンシャル生成部124は、静止障害物に応じて占有グリッドマップPF3を生成する。具体的には、障害物ポテンシャル生成部124は、自車両Vが進入可能な領域と進入不可能な領域を区別するための占有グリッドマップPF3を生成する。障害物ポテンシャル生成部124は、自車両Vの周辺の複数の障害物毎に移動障害物ポテンシャル場PF2又は占有グリッドマップPF3を生成する。障害物ポテンシャル生成部124は、移動障害物ポテンシャル場PF2及び占有グリッドマップPF3を統合した障害物ポテンシャルUobjを生成する。
【0043】
出力モード決定部125は、停止位置ステートマシンSM2に基づいて、自車両Vの進行方向の前方の自車両Vが停止すべき停止位置への対応モードを決定する。出力モード決定部125は、対応モードを決定するため、センサ群2の出力値に基づいて停止位置を特定する。停止位置は、自車両Vの走行車線の進行方向前方の停止線、横断歩道の手前及び交差点の手前であるが、これに限定するものではない。具体的には、出力モード決定部125は、センサ群2に含まれているカメラが撮像した撮像画像を解析することにより、自車両Vの進行方向前方の停止線及び横断歩道を特定する。
【0044】
また、出力モード決定部125は、記憶部11に記憶された地図を参照して、自車両Vの走行経路上の停止線及び横断歩道を特定してもよい。この場合、出力モード決定部125は、記憶部11に記憶された地図から、自車両Vの位置から基準距離よりも長い検出距離以内の走行経路の停止線及び横断歩道の位置を取得することにより、自車両Vの走行経路上の停止線及び横断歩道を特定する。基準距離は例えば50メートルであるが、これに限定するものではない。出力モード決定部125は、自車両Vの速度が大きいほど特定距離を基準距離よりも大きくする。
【0045】
図4は、停止位置ステートマシンSM2の模式図である。出力モード決定部125は、停止位置が特定されていなければ、停止位置ステートマシンSM2の状態を、停止位置が特定されていないことを示す未特定モードSM21に決定する。出力モード決定部125は、自車両Vの進行方向の前方に、自車両Vが停止すべき停止位置が特定されたら、停止位置ステートマシンSM2の状態を、未特定モードSM21から停止位置が特定されたことを示す特定モードSM22に遷移させる。
【0046】
出力モード決定部125は、未特定モードSM21から特定モードSM22に遷移させたら、停止位置に対して実行するタスクの実行状態を示すタスクモードSM23を、タスクが未完了であることを示す未完了モードSM231に決定する。また、出力モード決定部125は、停止位置ポテンシャルUstopを出力するか否かを示すポテンシャルモードSM24を、停止位置ポテンシャルUstopを出力する出力モードSM241に決定する。
【0047】
交通ポテンシャル生成部126は、ポテンシャルモードSM24が出力モードSM241になったら、停止位置ポテンシャルUstopを生成する。交通ポテンシャル生成部126は、停止位置として停止線が特定されていれば、当該停止線に対応する停止位置ポテンシャルを出力する。図5は、停止線に対応する停止位置ポテンシャルUstopを説明するための図である。交通ポテンシャル生成部126は、自車両Vの前方にある停止線4が特定されてポテンシャルモードSM24が出力モードSM241になったら、停止線4の位置に停止位置ポテンシャルUstopを生成する。
【0048】
交通ポテンシャル生成部126は、停止位置として横断歩道が特定されていれば、当該横断歩道に対応する位置に停止位置ポテンシャルUstopを生成する。例えば、交通ポテンシャル生成部126は、横断歩道の直前に停止線が特定されていれば、当該停止線の位置に停止位置ポテンシャルを出力する。一方、交通ポテンシャル生成部126は、横断歩道の直前に停止線が特定されていなければ、横断歩道5と自車両Vの間の位置に停止位置ポテンシャルを出力する。
【0049】
図6は、横断歩道5と自車両Vの間の位置に停止位置ポテンシャルUstopを生成する処理を説明するための図である。交通ポテンシャル生成部126は、自車両Vと横断歩道5の間であり、横断歩道5から停止距離Rだけ離れた位置6に停止位置ポテンシャルUstopを出力する。交通ポテンシャル生成部126は、横断歩道5の周辺に自転車や歩行者等の移動障害物が検出されていれば停止距離Rを基準距離よりも長くし、移動障害物が検出されていなければ停止距離Rを基準距離よりも短くする。基準距離の具体的な値は、例えば1メートルであるが、これに限定するものではない。
【0050】
交通ポテンシャル生成部126は、障害物ポテンシャルUobjよりも小さい停止位置ポテンシャルUstopを生成する。具体的には、交通ポテンシャル生成部126は、障害物ポテンシャルUobjの最大値よりも最大値が小さい停止位置ポテンシャルUstopを生成する。これにより、障害物に接触するリスクよりも交通ルールに違反するリスクが小さくなるので、自動運転装置1は、停止位置で停車することを優先して、歩行者や他車両等の移動障害物に接触してしまうことを抑制できる。
【0051】
出力モード決定部125は、ポテンシャルモードSM24を出力モードSM241に決定して、交通ポテンシャル生成部126が停止位置ポテンシャルUstopを生成した後、自車両Vが停止したか否かを判定する。出力モード決定部125は、自車両Vの車速が0である状態で所定の停止時間が経過したら自車両Vが停車したと判定する。停止時間は適宜定めればよく、具体的な値は1秒であるが、これに限定するものではない。出力モード決定部125は、自車両Vの車速が0である状態が停止時間以上継続していなければ、自車両Vが停止していないと判定し、自車両Vが停車するまでタスクモードSM23を未完了モードSM231に決定し続ける。出力モード決定部125は、自車両Vが停車したら、タスクモードSM23を自車両Vが停車したことを示す停車モードSM232に決定する。
【0052】
出力モード決定部125は、タスクモードSM23を停車モードSM232に決定したら、自車両Vが停止位置を超えて進行可能か否かを判定するための進行可能条件を満たしたか否かを判定する。例えば、出力モード決定部125は、停止位置を介して自車両Vの反対側に移動障害物が検出されていれば進行可能条件を満たしていないと判定し、移動障害物が検出されていなければ進行可能条件を満たしたと判定する。
【0053】
出力モード決定部125は、停止位置である横断歩道に対応する信号機が存在する場合、当該信号機の状態に応じて進行可能条件を満たしたか否かを判定してもよい。出力モード決定部125は、信号機の状態が進行不可を示す状態であれば、停止位置を介して自車両Vの反対側に移動障害物が検出されていなくても進行可能条件を満たしていないと判定する。出力モード決定部125は、信号機の状態が進行可を示す状態であり、かつ停止位置を介して自車両Vの反対側に移動障害物が検出されていなければ進行可能条件を満たしたと判定する。
【0054】
出力モード決定部125は、進行可能条件を満たしたら、タスクモードSM23を、自車両Vが停止位置を超えて進行可能であることを示すクリアモードSM233に決定する。出力モード決定部125は、タスクモードSM23をクリアモードSM233に決定したら、ポテンシャルモードSM24を、停止位置ポテンシャルUstopを出力しない不出力モードSM242に決定する。
【0055】
交通ポテンシャル生成部126は、ポテンシャルモードSM24が不出力モードSM242になったら、生成した停止位置ポテンシャルUstopを消去する。これにより、自車両Vが停止位置を超えて進行可能になったら、自車両Vが停止位置を超えて進行できるようになる。
【0056】
出力モード決定部125は、交通ポテンシャル生成部126が停止位置ポテンシャルUstopを消去して自車両Vが停止位置を超えて進行したことにより、当該停止位置が特定されなくなったら、対応モードを特定モードSM22から未特定モードSM21に遷移させる。出力モード決定部125は、停止位置が新たに特定されるまで、対応モードを未特定モードSM21に決定し続ける。
【0057】
以上のとおり、基本走行ポテンシャル生成部123は、基本走行モード決定部122が決定した走行モードに応じた車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneを生成する。障害物ポテンシャル生成部124は、障害物検出部121が検出した障害物に応じた障害物ポテンシャルUobjを生成する。交通ポテンシャル生成部126は、出力モード決定部125が決定した対応モードに応じて停止位置ポテンシャルUstopを生成したり、消去したりする。つまり、車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneと、障害物ポテンシャルUobjと、停止位置ポテンシャルUstopとは、他のポテンシャルと独立に生成されている。
【0058】
コスト関数生成部127は、独立に生成された複数のポテンシャルを含み、自車両Vの運転行動をパラメータとする行動コスト関数を生成する。具体的には、コスト関数生成部127は、所定の予測時間内の車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneの累積値と、障害物ポテンシャルUobjに基づく障害物リスクと、停止位置ポテンシャルUstopに基づく違反リスクとを含む行動コスト関数を生成する。障害物リスクは、予測時間内の複数の時点の各々の障害物ポテンシャルUobjに基づくリスクのうちの最大値である。違反リスクは、予測時間内の停止位置ポテンシャルUstopに基づくリスクのうちの最大値である。
【0059】
運転行動決定部128は、行動コスト関数を最小化する値を求めて、運転行動を決定する。具体的には、運転行動決定部128は、行動コスト関数を最小化する加速度及びヨ―レートを求めることにより、自車両Vの運転行動である加速度及びヨ―レートを決定する。このように、運転行動決定部128は、自車両Vの走行軌道、周辺の障害物及び停止位置の各々に応じて独立に生成された複数のポテンシャルを用いて運転行動を決定する。そのため、運転行動決定部128、複雑な交通環境における膨大な数の判定を実行する必要がない。つまり、運転行動決定部128は、複雑な交通環境に応じた多数の判定を実行しなくても、ポテンシャルに基づく行動コスト関数を最小化する値を決定するという処理だけで運転行動を決定できるので、運転行動を決定する処理を簡潔にできる。
【0060】
また、障害物ポテンシャルUobjが移動障害物の速度及び向きに応じて所定時間毎に更新されるので、運転行動決定部128が運転行動を決定する際には、自車両Vと移動障害物が将来接触するリスクを抑え、安全な距離を保つような運転行動を決定することができる。
【0061】
[自動運転装置1が実行する処理]
図7は、自動運転装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、自車両Vが走行している間及び一時停止している間、繰り返し実行される。
【0062】
基本走行モード決定部122は、基本走行モードを決定する(ステップS11)。具体的には、基本走行モード決定部122は、各走行モードンに遷移させるための複数の条件を満たした走行モードを基本走行モードに決定する(図3を参照)。基本走行ポテンシャル生成部123は、基本走行モード決定部122が決定した走行モードの走行軌道を走行するように設定された車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneを生成する(ステップS12)。
【0063】
障害物検出部121は、センサ群2の出力値に基づいて自車両Vの周囲の障害物を検出する(ステップS21)。例えば、障害物検出部121は、移動障害物及び静止障害物を検出する。障害物ポテンシャル生成部124は、障害物検出部121が検出した移動障害物に対応する移動障害物ポテンシャル場PF2と、静止障害物に対応する占有グリッドマップPF3を生成する。そして、障害物ポテンシャル生成部124は、移動障害物ポテンシャル場PF2及び占有グリッドマップPF3を合成した障害物ポテンシャルUobjを生成する(ステップS22)。
【0064】
出力モード決定部125は、自車両Vの進行方向の前方の停止位置に対する対応モードを決定する(ステップS31)。例えば、出力モード決定部125は、自車両Vの進行方向の前方に停止位置が特定されたら、出力モード決定部125は、ポテンシャルモードSM24を出力モードSM241に決定する(図4を参照)。交通ポテンシャル生成部126は、ポテンシャルモードSM24が出力モードSM241になったら、特定された停止位置に対応する停止位置ポテンシャルUstopを生成する(ステップS32)。ステップS11からステップS32までの処理は、並列に実行される。
【0065】
コスト関数生成部127は、車速ポテンシャルUvel、車線ポテンシャルUlane、障害物ポテンシャルUobj及び停止位置ポテンシャルUstopを含み、自車両Vの運転行動をパラメータとする行動コスト関数を生成する(ステップS4)。具体的には、コスト関数生成部127は、加速度及びヨ―レートをパラメータとする行動コスト関数を生成する。運転行動決定部128は、行動コスト関数を最小化する加速度及びヨ―レートを求めて、運転行動として加速度及びヨ―レートを決定する(ステップS5)。
【0066】
(変形例)
上記の実施の形態においては、出力モード決定部125が、自車両Vが停止したか否かを判定し、進行可能条件を満たしたか否かを判定した。これに限らず、自動運転装置1は、自車両Vの状態を判定する状態判定部を有し、状態判定部が、自車両Vが停止したか否かを判定したり、進行可能条件を満たしたか否かを判定したりしてもよい。この場合、出力モード決定部125は、状態判定部の判定結果を用いて各モードの状態を決定する。このように、状態判定部が自車両Vの状態を判定することにより、状態判定部の判定結果を、出力モード決定部125だけでなく他の機能構成部が用いることができたり、自車両Vの状態の判定結果の整合性を取りやすくなったりするので、自動運転装置1の設計が簡潔になる。
【0067】
[自動運転装置1の効果]
以上説明したとおり、自動運転装置1は、自車両の基本走行モードを、自車両の複数の走行モードの各々に応じた走行軌道のうちの走行軌道に対応する軌道コスト関数が最小になる走行軌道を走行する走行モードに決定し、決定した走行モードに対応する車速ポテンシャルUvel及び車線ポテンシャルUlaneを生成する。また、自動運転装置1は、自車両Vの進行方向前方に停止位置が特定されたら、停止位置に対する停止位置ポテンシャルUstopを出力する出力モードに決定し、停止位置に対する停止位置ポテンシャルUstopを生成する。そして、自動運転装置1は、車速ポテンシャルUvel、車線ポテンシャルUlane、辺の障害物に応じた障害物ポテンシャルUobj及び停止位置ポテンシャルUstopを含み、自車両Vの運転行動をパラメータとする行動コスト関数を最小化する値を求めることにより、自車両Vの運転行動を決定する。
【0068】
このように、自動運転装置1は、自車両Vの走行軌道や交通ルール、周辺の障害物に応じて生成されたポテンシャルを用いて運転行動を決定するので、複雑な交通環境における膨大な数の判定を実行する必要がない。つまり、自動運転装置1は、複雑な交通環境に応じた多数の判定を実行しなくても、4つのポテンシャルに基づく行動コスト関数を最小化する値を決定するという処理だけで運転行動を決定できるので、運転行動を決定する処理を簡潔にできる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0070】
V 自車両
1 自動運転装置
11 記憶部
12 制御部
121 障害物検出部
122 基本走行モード決定部
123 基本走行ポテンシャル生成部
124 障害物ポテンシャル生成部
125 出力モード決定部
126 交通ポテンシャル生成部
127 コスト関数生成部
128 運転行動決定部
2 センサ群
3 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7