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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004745
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】プリント基板構造体および車載機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240110BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H05K1/02 Q
H05K1/02 F
H05K1/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104540
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】村松 秀一
【テーマコード(参考)】
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E336AA04
5E336AA16
5E336BB02
5E336BC01
5E336CC01
5E336CC52
5E336CC53
5E336EE01
5E336GG03
5E338AA02
5E338BB05
5E338BB13
5E338BB25
5E338BB75
5E338CC08
5E338EE02
(57)【要約】
【課題】電位差を有する二以上の端子を生じる電子部品からの放熱性を向上させる。
【解決手段】プリント基板2の表面に電子部品3を配置する。プリント基板2は、裏面に形成された第一裏面側導体層22aと、裏面に形成され、第一裏面側導体層に対して電位差を有する第二裏面側導体層22bと、電子部品3の第一端子3aと第一裏面側導体層22aを電気的に接続する第一貫通部23aと、第二端子3bと第二裏面側導体層22bを電気的に接続する第二貫通部23bとを有する。第一裏面側導体層22aに第一パターン部29aを設けると共に、第二裏面側導体層22bに第二パターン部29bを設け、各パターン部29a、29bをレジスト部25で覆う。第一パターン部29aおよび第二パターン部29bのそれぞれに、レジスト部25に被覆されていない未レジスト部27a、27bを設け、各未レジスト部27a、27bを放熱シート41と接触させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンが形成されたプリント基板と、前記プリント基板の表面に配置され、第一端子および第二端子を備えた電子部品と、前記プリント基板の裏面に配置された放熱部材とを備えたプリント基板構造体であって、
前記プリント基板が、裏面に形成された第一裏面側導体層と、裏面に形成され、前記第一裏面側導体層に対して電位差を有する第二裏面側導体層と、前記プリント基板を貫通して前記第一端子と前記第一裏面側導体層を接続する第一貫通部と、前記プリント基板を貫通して前記第二端子と前記第二裏面側導体層を接続する第二貫通部とを備え、
前記第一裏面側導体層が、前記第一貫通部に接続された第一接続部と、前記第一接続部に接続され、前記回路パターンの一部を構成する第一パターン部とを備え、
前記第二裏面側導体層が、前記第二貫通部に接続された第二接続部と、前記第二接続部に接続され、前記回路パターンの他の一部を構成する第二パターン部とを備え、
前記プリント基板が、前記第一パターン部および前記第二パターン部を被覆する絶縁性のレジスト部をさらに備え、
前記第一パターン部および第二パターン部のそれぞれに、前記レジスト部に被覆されていない未レジスト部を設け、前記各未レジスト部を前記放熱部材と接触させたことを特徴とするプリント基板構造体。
【請求項2】
想定される導電性異物の最大サイズに、最小沿面距離の2倍の値を加算した値を規定距離として、前記各未レジスト部を、前記規定距離以上離して配置した請求項1に記載のプリント基板構造体。
【請求項3】
前記各未レジスト部を、3.8mm以上離して配置した請求項1に記載のプリント基板構造体。
【請求項4】
前記第一パターン部の未レジスト部の面積を、前記第一接続部の面積よりも大きくし、前記第二パターン部の未レジスト部の面積を、前記第二接続部の面積よりも大きくした請求項1に記載プリント基板構造体。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のプリント基板構造体を備えた車載機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板構造体および車載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装したプリント基板では、電子部品の電力消費に伴って発熱が生じる。発熱量が大きくなった場合の電子部品の機能や特性の低下を防止するため、プリント基板にヒートシンク等の放熱部材が装着される場合がある。以下では、放熱部材を装着したプリント基板を「プリント基板構造体」と呼ぶ。
【0003】
プリント基板構造体の一例としての半導体装置が、下記の特許文献1に開示されている。この半導体装置は、プリント基板と、その上の電子部品と、その下の放熱器とを備える。プリント基板は絶縁層と導体層とを含む。複数の導体層のそれぞれは、電子部品と電気的に接続された複数の第1の導体層と、複数の第1の導体層と互いに間隔をあけ、電気的に絶縁されて配置される複数の第2の導体層とを有する。複数の第1の導体層のそれぞれと接続され、プリント基板の一方の主表面から他方の主表面まで延びる第1の貫通部と、複数の第2の導体層のそれぞれと接続され、プリント基板の一方の主表面から他方の主表面まで延びる第2の貫通部とを更に備える。第1の導体層と第2の導体層とは少なくとも一部において平面的に重なっているか、または一方の主表面に沿う方向に関して互いに間隔をあけて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/208802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の半導体装置では、複数の導電層を積層することが必要となるため、両面基板等のように内部の導体層が存在しない場合は適用が困難となる。この場合、回路構成によっては半導体素子からの放熱が不十分となる場合がある。
【0006】
また、特許文献1に記載された発明は、半導体素子からの放熱を意図したものであるが、発熱部品は半導体素子には限られず、電解コンデンサ、抵抗、インダクタ等の電子部品でも発熱量が多くなる場合がある。特に電源回路に使用する電解コンデンサ、インダクタ、抵抗等では、近年の高出力化の要請に伴って発熱量も増大する傾向にあるため、放熱性を高めることが急務となる。これらの電子部品は、電位差のある少なくとも二つの端子を有するものであるが、特許文献1の放熱構造では、電位差を有する二つの端子からの放熱を如何に行うのか、という点に対する配慮を欠いている。
【0007】
例えば自動車に装備される車載機器では、設置スペースの制約によるコンパクト化の要請から、放熱性を確保することが難しくなっている。そのため、特に車載機器用のプリント基板構造体では、放熱性のさらなる向上が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、電位差を生じる二以上の端子を有する電子部品からの放熱性を向上させるプリント基板構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、回路パターンが形成されたプリント基板と、前記プリント基板の表面に配置され、第一端子および第二端子を備えた電子部品と、前記プリント基板の裏面に配置された放熱部材とを備えたプリント基板構造体であって、前記プリント基板が、裏面に形成された第一裏面側導体層と、裏面に形成され、前記第一裏面側導体層に対して電位差を有する第二裏面側導体層と、前記プリント基板を貫通して前記第一端子と前記第一裏面側導体層を接続する第一貫通部と、前記プリント基板を貫通して前記第二端子と前記第二裏面側導体層を接続する第二貫通部とを備え、前記第一裏面側導体層が、前記第一貫通部に接続された第一接続部と、前記第一接続部に接続され、前記回路パターンの一部を構成する第一パターン部とを備え、前記第二裏面側導体層が、前記第二貫通部に接続された第二接続部と、前記第二接続部に接続され、前記回路パターンの他の一部を構成する第二パターン部とを備え、前記プリント基板が、前記第一パターン部および前記第二パターン部を被覆する絶縁性のレジスト部をさらに備え、前記第一パターン部および第二パターン部のそれぞれに、前記レジスト部に被覆されていない未レジスト部を設け、前記各未レジスト部を前記放熱部材と接触させることにより、特徴づけられる。
【0010】
以上に述べたプリント基板構造体であれば、電子部品で発生した熱は、第一端子→第一貫通部、および第二端子→第二貫通部を経て、第一裏面側導体層および第二裏面側導体層に伝導する。この熱は、第一裏面側導体層の第一接続部を介して第一パターン部に伝導し、第二裏面側導体層の第二接続部を介して第二パターン部に伝導する。そして、第一パターン部および第二パターン部の各未レジスト部に接触する放熱部材に伝導して大気に放出される。端子から未レジスト部に至るまでは、熱は良好な熱伝導性を有する導体を通過するため、この経路中の熱抵抗は小さい。また、第一パターン部および第二パターン部と放熱部材は、未レジスト部にて熱伝導性の低いレジスト部を介することなく直接接触しているため、第一パターン部と放熱部材の間、および第二パターン部と放熱部材の間の各熱抵抗を最小限に抑えることができる。
【0011】
従って、電子部品で発生した熱を、端子から、プリント基板を介して放熱部材にスムーズに伝導させて、放熱部材から大気中に放出することができる。これにより電位差を生じる二以上の端子を有し、端子からの放熱が主体となる電子部品の放熱性を高めることができ、電子部品の予期しない温度上昇を防止することが可能となる。
【0012】
その一方で、未レジスト部の距離が近すぎると、二つの未レジスト部の間に介在した導電性の異物により、第一パターン部と第二パターン部が短絡するおそれがある。この短絡を防止するため、二つの未レジスト部の離間距離は極力大きくするのが好ましい。
【0013】
具体的には、想定される導電性異物の最大サイズに、最小沿面距離の2倍の値を加算した値を規定距離として、前記各未レジスト部を、規定距離以上離して配置するのが好ましい。
【0014】
これにより、未レジスト部での短絡を防止しつつ、電子部品の放熱性を高めることが可能となる。
【0015】
また、前記各未レジスト部を、3.8mm以上離して配置するのが好ましい。
【0016】
これにより、未レジスト部での短絡を防止しつつ、電子部品の放熱性を高めることが可能となる。
【0017】
前記第一パターン部の未レジスト部の面積を、前記第一接続部の面積よりも大きくし、前記第二パターン部の未レジスト部の面積を、前記第二接続部の面積よりも大きくするのが好ましい。
【0018】
これにより第一パターン部と放熱部材の間、および第二パターン部と放熱部材の間で十分な熱伝導面積を確保できるため、放熱効果が高まる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、電位差を生じる二以上の端子を有する電子部品の放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】表面側から見たプリント基板構造体の平面図である。
図2図1中のII-II線で矢視した断面図である。
図3】放熱部材を取り外した状態のプリント基板構造体を裏面側から見た拡大底面図である。
図4図3中のIV-IV線で矢視した概略断面図である。
図5】プリント基板構造体の側面図である。
図6】最小沿面距離を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図1図6に基づいて説明する。
【0022】
図1は表面側から見たプリント基板構造体1の平面図であり、図2図1中のII-II線で矢視した断面図である。図1および図2に示すように、本実施形態のプリント基板構造体1は、プリント基板2と、プリント基板2の表面に配置された、放熱対象である電子部品3と、プリント基板2の裏面に配置された放熱部材4とを主要な構成要素とする。
【0023】
図2に示すように、プリント基板2は、絶縁性材料からなるベース部材20と、表面に形成された表面側導体層21a、21bと、裏面に形成された裏面側導体層22a、22bとを有する。表面側導体層21a、21bおよび裏面側導体層22a、22bは、何れも銅箔(銅合金箔も含む)等の導体箔で形成されている。本実施形態では、二つの表面側導体層21a、21bは、電子部品3の端子3a、3bをはんだ付けするためのパッドとして形成される。
【0024】
一方の裏面側導体層22a(第一裏面側導体層)には、後述する第一貫通部23aに接続された第一接続部28aと、第一接続部28aに接続され、電子回路を形成する回路パターンの一部を構成する第一パターン部29aとが設けられる(図3参照)。他方の裏面側導体層22b(第二裏面側導体層)には、後述する第二貫通部23bに接続された第二接続部28bと、第二接続部28bに接続され、電子回路を形成する回路パターンの他の一部を構成する第二パターン部29bとが設けられる(同じく図3参照)。第一接続部28aは、一方の表面側導体層21aの直下に位置する部位であり、第一貫通部23aに直接接続されている。第二接続部28bは、他方の表面側導体層21bの直下に位置する部位であり、第二貫通部23aに直接接続されている。なお、「接続される」は電気的に接続された状態にあることを意味する(以下、同じ)。
【0025】
なお、表面側導体層21a、21bを回路パターンの一部として構成してもよい。また、プリント基板2は、表面側導体層21a、21bと裏面側導体層22a、22bだけでなく、表面および裏面から離れた中間部にも導体層を設けた多層基板であってもよい。本実施形態において、プリント基板2は、ベース部材20を剛体で形成したリジッドタイプであるが、プリント基板2として、ベース部材20を可撓性材料で形成したフレキシブルタイプを使用することもできる。
【0026】
放熱対象の電子部品3として、二つ以上の端子3a、3bを有し、かつ二つの端子3a、3b間に電位差を生じる電子部品、例えば電解コンデンサが使用される。電解コンデンサ3は、電源-GND間に配置される。内部から引き出された二つの端子3a、3bのうちの一方(正極)である第一端子3aが電源側に接続され、他方(陰極)である第二端子3bがGND側に接続される。
【0027】
電解コンデンサ3は、電力を給電する際の入出力電流Iの二乗と内部抵抗Rconの積(I2×Rcon)の値に相当する熱を発生する。コンデンサ内部で発生した熱を外部に放出する経路として、コンデンサ本体の表面から周辺空気に熱伝導させて放熱する経路と、端子3a、3bからプリント基板2に熱伝導させて放熱部材4から放熱する経路の二種類が存在する。前者と後者とでは、コンデンサ本体の表面に放熱部材を取り付けていない限り、通常は後者の経路の方が前者の経路よりも放熱量が多くなる。従って、端子3a、3bは、電解コンデンサ3で生じた熱を外部に伝導させる際の主経路となる。
【0028】
端子3a、3bはアルミニウムあるいは銅(アルミニウム合金や銅合金を含む)等を用いて同一材料で同形状に形成される。両端子3a、3bのコンデンサ本体との接続点の構造に多少の相違はあるが、両端子3a、3bは概ね同等の熱導電性を備えている。
【0029】
このように本実施形態における電子部品3は、電位差を有する二つの端子3a、3bを備えた電子部品3であって、端子3a、3bが主要な放熱経路となる電子部品3を対象とする。以上の条件に適合する他の電子部品として、抵抗、インダクタ等を挙げることができる。これらの電子部品3は、第一端子3aを第一表面側導体層21aにはんだ付けし、第二端子3bを第二表面側導体層21bにはんだ付けすることで、プリント基板2に実装される。電子部品3の端子3a、3bは、3つ以上あっても構わない。なお、プリント基板2には、以上に例示した電解コンデンサ、抵抗、インダクタの他に、半導体素子等の他の電子部品を実装することができる。
【0030】
図2に示すように、プリント基板2には、表面側導体層21a、21bと裏面側導体層22a、22bとを接続する複数の貫通部23a、23bがプリント基板2を貫通して設けられる。貫通部23a、23bは、プリント基板2を貫通する孔24(貫通ビア)の内周を被覆する銅等の導体で形成することができる。電子部品3の端子3a、3bは、孔24に挿入して貫通部23a、23bにはんだ付けしても良い。
【0031】
貫通部23a、23bは、電子部品3の各端子3a、3bの近傍にそれぞれ配置される。電子部品3の第一端子3aをはんだ付けした第一表面側導体層21aに第一貫通部23aの一端が接続され、第二端子3bをはんだ付けした第二表面側導体層21bに第二貫通部23bの一端が接続される。本実施形態では、第一貫通部23aおよび第二貫通部23bをそれぞれ3カ所に設けているが、第一貫通部23aと第二貫通部23bの数は任意であり、両貫通部23a、23bの数をそれぞれ一つとしても良いし、それぞれ2つあるいは4つ以上とすることもできる。
【0032】
第一貫通部23aの他端は第一裏面側導体層22aの第一接続部28aに接続され、第二貫通部23bの他端は第二裏面側導体層22bの第二接続部28bに接続されている。この電子回路において、第一裏面側導体層22aと第二裏面側導体層22bの間には電位差が存在する。なお、第一パターン部29aを含む第一裏面側導体層22aは電子部品3の第一端子3aと同電位となり、第二パターン部29bを含む第二裏面側導体層22bは第二端子3bと同電位となる。
【0033】
プリント基板2の表面は、各種電子部品(放熱対象の電子部品3には限られない)に対向する領域と、第一表面側導体層21aと、第二表面側導体層21bとを除いて、絶縁膜となるレジスト部25で被覆される。プリント基板2の裏面も絶縁性のレジスト部25で被覆され、第一パターン部29aおよび第二パターン部29bがレジスト部25で覆われている。なお、第一接続部28aおよび第二接続部28bはレジスト部25で覆われておらず、第一接続部28aおよび第二接続部28bは露出している。すなわち、プリント基板2の裏面のレジスト部25は、第一接続部28aおよび第二接続部28bを除く領域に形成される。第一裏面側導体層22aと第二裏面側導体層22bのうち、貫通部23a、23bの周辺領域で、かつレジスト部25で覆われていない領域が接続部28a、28bとなる。
【0034】
図2に示すように、放熱部材4として、本実施形態では絶縁性の放熱シート41とヒートシンク42(放熱フィン)が使用される。放熱シート41はプリント基板2の裏面に接触させて配置される。放熱シート41は、プリント基板2の裏面の凹凸に倣って変形可能な程度の柔軟性を有し、かつ熱伝導性に優れた材料で形成される。ヒートシンク42は放熱シート41と接触させてプリント基板2に取り付けられている。
【0035】
図3は裏面側から見たプリント基板構造体1(放熱部材4は取り外している)の拡大平面図であり、図4図3中のIV-IV線で矢視した断面図である。図3および図4に示すように、プリント基板構造体1において、第一パターン部29aおよび第二パターン部29bには、それぞれレジスト部25で被覆されておらず、各パターン部29a、29bが露出した未レジスト部27a、27bが形成される。未レジスト部27a、27bは、放熱部材4としての放熱シート41と接触させる(図2参照)。未レジスト部27a、27bは、各パターン部29a、29bのそれぞれ一箇所に設ける他、それぞれの複数箇所に設けることもできる。なお、図3および図4において、散点模様はレジスト部25の表面を表す。
【0036】
一方の未レジスト部27aの面積は、レジスト部25に覆われていない第一接続部28aの面積よりも大きくし、他方の未レジスト部27bの面積は、レジスト部25に覆われていない第二接続部28bの面積よりも大きくする。これにより十分な熱伝導面積を確保して放熱部材4への熱伝導効率を高めることができる。
【0037】
また、放熱性を高める観点から、一方の未レジスト部27a、27bを第一接続部28aに対して近付けて配置し、他方の未レジスト部27bを第二接続部28bに近づけて配置するのが好ましい。
【0038】
以上に述べたプリント基板構造体1であれば、電子部品3で発生した熱は、第一端子3a→第一表面側導体層21a→第一貫通部23a→第一接続部28a→第一パターン部29aからなる第一経路と、第二端子3b→第二表面側導体層21b→第二貫通部23b→第二接続部28b→第一パターン部29bからなる第二経路とを経て未レジスト部27a、27bに伝導される。そして、この熱は、未レジスト部27a、27bに接触する放熱シート41に伝導し、さらにヒートシンク42に伝導して大気中に放出される。端子3a、3bから未レジスト部27a、27bに至るまでの経路では、熱は良好な熱伝導性を有する導体を通過するため、各経路中の熱抵抗は小さい。
【0039】
また、各パターン部29a、29bと放熱シート41は、未レジスト部27a、27bにて熱伝導性の低いレジスト部25を介することなく直接接触している。そのため、各パターン部29a、29bと放熱シート41の間の熱抵抗を最小限に抑えることができる。放熱シート41は、未レジスト部27a、27bだけでなく、第一接続部28aおよび第二接続部28bの何れか一方または双方と接触させてもよい。また、放熱シート41を、第一接続部28aおよび第二接続部28bの何れか一方または双方に対して非接触としてもよい。なお、放熱シート41を未レジスト部27a、27bと接触させることなく、第一接続部28aおよび第二接続部28bのみと接触させた場合、熱伝導面積が不十分となるため、十分な放熱効果は期待できない。
【0040】
以上に述べたプリント基板構造体1であれば、図5に示すように、電子部品3で発生した熱を、端子3a、3bから、プリント基板2を介して放熱シート41にスムーズに伝導させて、ヒートシンク42から放熱することができる。これにより電位差を生じる二以上の端子を有し、端子3a、3bからの放熱が主体となる電子部品3の放熱性を高めることができ、電子部品3の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0041】
その一方で、未レジスト部27a、27bの離間距離X(図3参照)が近すぎると、製造過程で未レジスト部27a、27bの間に予期せずに介在した導電性の異物により、第一パターン部29aと第二パターン部29bが短絡するおそれがある。
【0042】
具体的には、この離間距離Xは、以下の式から求められる規定距離以上に設定するのが好ましい。
規定距離=想定される導電性異物の最大サイズ+最小沿面距離×2
【0043】
本実施形態においては、導電性異物として、はんだ付け工程で生じるはんだボールが想定される。はんだボールの最大サイズは概ねφ1mm程度である。最小沿面距離はIEC規格(IEC62368-1)に規定された表(図6参照)から求めることができる。最小沿面距離は、電圧、汚染度、材料グループに依存するため、これらを製造工程や用途に合わせて選択する必要がある。本実施形態では、汚染度を2、材料グループをIIIaとする。また、本実施形態のプリント基板構造体1は、自動車の車載機器(例えば電動オイルポンプ)への使用を想定しているので、電圧は12Vとなるが、ロードダンプ電圧を考慮し、動作電圧は100Vを想定する。
【0044】
以上の条件の下では、図6より最小沿面距離は、1.4mmとなるので、規定距離は、1mm+1.4mm×2=3.8mmとなる。従って、未レジスト部27a、27bの離間距離Xは,3.8mm以上とするのが好ましい。これにより、未レジスト部27a、27bでの短絡を防止しつつ、電子部品3の放熱性を高めることが可能となる。
【0045】
以上に述べたプリント基板構造体1の用途は特に限定されないが、例えば電源回路に用いることができる。放熱対象の電子部品3としては、電源回路における電源平滑コンデンサ、LCフィルタのインダクタやコンデンサ、昇圧回路もしくは降圧回路のインダクタ、電流検出抵抗等を適用することができる。
【0046】
本発明に係るプリント基板構造体は、コンパクト化の要請がある機器に広く用いることができる。例えば自動車の車載機器では、恒常的にコンパクト化の要請があるが、コンパクト化するほど、放熱性が低下する問題がある。このような車載機器に、以上に説明したプリント基板構造体を用いることで、車載機器のコンパクト化の要請に応えつつ、十分な放熱性を確保することが可能となる。この種の車載機器の例として、既に述べた電動オイルポンプの他、車両制御ユニット(VCU)、インバータ、DC-DCコンバータ、電動アクチュエータ等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 プリント基板構造体
2 プリント基板
3 電子部品
3a 第一端子
3b 第二端子
4 放熱部材
21a 第一表面側導体層
21b 第二表面側導体層
22a 第一裏面側導体層
22b 第二裏面側導体層
23a 第一貫通部
23b 第二貫通部
25 レジスト部
27a 未レジスト部
27b 未レジスト部
28a 第一接続部
28b 第二接続部
29a 第一パターン部
29b 第二パターン部
41 放熱シート
42 ヒートシンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6