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特開2024-47454肌の分析方法及び肌の相関モデルの作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047454
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】肌の分析方法及び肌の相関モデルの作成方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240329BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/107 800
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153072
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】倉田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】黒住 元紀
(72)【発明者】
【氏名】福島 遥香
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴矢
(72)【発明者】
【氏名】楊 一幸
(72)【発明者】
【氏名】永沼 理央
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB03
4C038VC05
4C117XB01
4C117XB17
4C117XD05
4C117XE43
4C117XK02
4C117XK09
(57)【要約】
【課題】
被験者個人の動きによる影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる方法を提供することを、第1の課題とする。
被験者の皮膚表面の動きが目視できないタイミングにおける、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルの作成方法を提供することを、第2の課題とする。
【解決手段】
被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内における、皮膚表面の光学的特徴の変化量に基づき、肌を分析することを含む、肌の分析方法。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内における、皮膚表面の光学的特徴の変化量に基づき、肌を分析することを含む、肌の分析方法。
【請求項2】
前記皮膚表面は、前記被験者の顔の皮膚表面であって、前記変形は表情創出である、請求項1に記載の肌の分析方法。
【請求項3】
前記皮膚表面の光学的特徴の変化量は、前記被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内に取得した、前記皮膚表面を撮影した画像から取得される量である、請求項1に記載の肌の分析方法。
【請求項4】
前記変化量は、前記皮膚表面の変形からの回復開始直後に取得された皮膚表面の光学的特徴量と、前記皮膚表面の変形からの回復開始から一定時間経過後に取得された1又は2以上の皮膚表面の光学的特徴量から求められる量である、請求項1に記載の肌の分析方法。
【請求項5】
前記皮膚表面の光学的特徴量の変化量を、あらかじめ用意した、前記変化量と肌状態の評価値の相関モデルに入力し、前記被験者の肌状態の評価値を出力することを含む、請求項1に記載の肌の分析方法。
【請求項6】
前記皮膚表面の光学的特徴の変化量が、前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量である、請求項1に記載の肌の分析方法。
【請求項7】
前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量が、当該回復時間内におけるシワスコアの減衰係数である、請求項5に記載の肌の分析方法。
【請求項8】
前記シワスコアは、シワの深さ、シワの幅、シワの面積、シワの長さ、シワの数、又はシワの数密度の少なくとも1つに基づいて算出される請求項7に記載の肌の分析方法。
【請求項9】
前記皮膚表面の変形からの回復時間が、皮膚表面の変形からの回復開始直後から5分以内に設定される、請求項1に記載の肌の分析方法。
【請求項10】
前記被験者の表情シワの定着リスク、前記被験者の肌の物性、前記被験者の見た目年齢、前記被験者の肌年齢、及び前記被験者の肌の内部構造から選ばれる1以上の項目について分析する、請求項1~9の何れか一項に記載の肌の分析方法。
【請求項11】
前記被験者の肌の物性が、前記被験者の肌の弾力性及び/又は粘弾性である、請求項10に記載の肌の分析方法。
【請求項12】
前記被験者の肌の内部構造が、前記被験者の真皮のタンパク質密度である、請求項10に記載の肌の分析方法。
【請求項13】
被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内における、皮膚表面の光学的特徴の変化量と、前記被験者の属性と、に基づいて、前記変化量と前記属性の相関モデルを作成することを含む、相関モデルの作成方法。
【請求項14】
前記皮膚表面は、前記被験者の顔の皮膚表面であって、前記変形は表情創出である、請求項13に記載の相関モデルの作成方法。
【請求項15】
前記皮膚表面の光学的特徴の変化量は、前記被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内に取得した前記皮膚表面を撮影した画像から取得される量である、請求項13に記載の相関モデルの作成方法。
【請求項16】
前記変化量は、前記皮膚表面の変形からの回復開始直後に取得された皮膚表面の光学的特徴量と、前記皮膚表面の変形からの回復開始から一定時間経過後に取得された1又は2以上の皮膚表面の光学的特徴量から求められる量である、請求項13に記載の相関モデルの作成方法。
【請求項17】
前記皮膚表面の光学的特徴の変化量が、前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量である、請求項13に記載の相関モデルの作成方法。
【請求項18】
前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量が、当該回復時間内におけるシワスコアの減衰係数である、請求項17に記載の相関モデルの作成方法。
【請求項19】
前記皮膚表面の変形からの回復時間内が、皮膚表面の変形からの回復開始直後から5分以内に設定される、請求項13に記載の肌状態推定モデル作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の分析方法に関する。また、肌の分析に使用される、肌の相関モデルの作成方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シワに着目して被験者の肌を分析する方法が、種々開発されてきた。
例えば特許文献1には、動画像に含まれる被験者の顔の表情の変化に基づき、被験者の顔の解析領域に予め配列された複数の追跡点の変化量を追跡し、当該変化量から前記解析領域における肌の圧縮率を取得する追跡ステップと、追跡ステップにより得られる圧縮率に基づいて被験者の肌状態を解析する肌状態解析ステップとを有することを特徴とする画像解析方法が記載されている。
【0003】
また特許文献2には、皮膚表面の所定位置が所定長、所定時間が変位するように皮膚を動かすシワのくせづけの前後で顔画像を撮り、シワが形成又は強調された状態(以下、シワの形成状態という)を複数段階に評価したシワのスコアインデックスに基づき、シワのくせづけ前の顔画像とシワのくせづけ後の顔画像のそれぞれについてシワの形成状態のスコア値を得、シワのくせづけ後の顔画像のシワの形成状態のスコア値と、シワのくせづけ前の顔画像のシワの形成状態のスコア値との差を皮膚の折り目ジワの評価値とする折り目ジワの評価方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-193197号公報
【特許文献2】特開2022-045280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、特許文献2に開示されている通り、従来開発されてきた、シワに着目した肌の分析方法は、被験者の肌(顔表面)にシワが存在している最中を解析したり、被験者の肌にシワが存在する時点と、シワが存在しなくなった時点とを比較したりすることにより、被験者の肌を分析する方法であった。
【0006】
ここで、例えば被験者の肌にシワを表出させるには、被験者顔を動かしてもらう必要があるが、動きの大きさや動かせる範囲、動きの癖等により、顔の動きには個人差がある。
そうすると、従来の肌の分析方法では、被験者の肌を必ずしも正確には分析できないおそれがあった。
【0007】
上記状況に鑑み、本発明は、被験者個人の動きの癖の影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる方法を提供することを、第1の課題とする。
【0008】
本発明者らは、上記第1の課題を解決するために、被験者の表情創出後の無表情のタイミングに着目した。なぜならば、表情創出には個人の癖があるが、無表情の状態では、そのような個人の癖はないからである。
しかし、表情創出後、被験者が無表情になった後に着目した研究は従来存在しなかったため、被験者が無表情になった後における、被験者の属性と被験者の肌の状態との関係性が不明であった。
そこで本発明は、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルの作成方法を提供することを、第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の課題を解決する本発明は、被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内における、皮膚表面の光学的特徴の変化量に基づき、肌を分析することを含む、肌の分析方法である。
本発明によれば、被験者個人の動きによる影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面は、前記被験者の顔の皮膚表面であって、前記変形は表情創出である。
本発明によれば、被験者個人の顔の動きの癖の影響を抑制して、被験者の顔の肌を分析することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の光学的特徴の変化量は、前記被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内に取得した、前記皮膚表面を撮影した画像から取得される量である。
本発明によれば、被験者個人の動きの癖の影響を抑制して、非接触で被験者の肌を分析することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記変化量は、前記皮膚表面の変形からの回復開始直後に取得された皮膚表面の光学的特徴量と、前記皮膚表面の変形からの回復開始から一定時間経過後に取得された1又は2以上の皮膚表面の光学的特徴量から求められる量である。
本発明によれば、皮膚表面の変形時に観察される一時的な表面状態が、皮膚表面の非変形時でも観察される定着した表面状態に進行するリスクを評価することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の光学的特徴量の変化量を、あらかじめ用意した、前記変化量と肌状態の評価値の相関モデルに入力し、前記被験者の肌状態の評価値を出力することを含む。
本発明によれば、被験者個人の動きによる影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の光学的特徴の変化量が、前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量である。
本発明によれば、被験者個人の動きの癖の影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量が、当該回復時間内におけるシワスコアの減衰係数である。
本発明のより好ましい形態では、前記シワスコアは、シワの深さ、シワの幅、シワの面積、シワの長さ、シワの数、又はシワの数密度の少なくとも1つに基づいて算出される。
本発明によれば、被験者個人の動きの癖の影響を抑制して、被験者のシワに関する分析をすることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の変形からの回復時間が、皮膚表面の変形からの回復開始直後から5分以内に設定される。
本発明によれば、被験者個人の動きの癖及び、無意識的な身体の動きの影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記被験者の表情シワの定着リスク、前記被験者の肌の物性、前記被験者の見た目年齢、前記被験者の肌年齢、及び前記被験者の肌の内部構造から選ばれる1以上の項目について分析する。
本発明のより好ましい形態では、前記被験者の肌の物性が、前記被験者の肌の弾力性及び/又は粘弾性である。
また本発明の別のより好ましい形態では、前記被験者の肌の内部構造が、前記被験者の真皮のタンパク質密度である。
本発明によれば、被験者個人の動きの癖の影響を抑制して、被験者の顔の肌を分析することができる。
【0018】
上記第2の課題を解決する本発明は、被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内における、皮膚表面の光学的特徴の変化量と、前記被験者の属性と、に基づいて、前記変化量と前記属性の相関モデルを作成することを含む、相関モデルの作成方法である。
本発明によれば、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルを作成することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面は、前記被験者の顔の皮膚表面であって、前記変形は表情創出である。
本発明によれば、被験者の表情創出後の被験者が無表情になった後における、当該被験者の属性と、当該被験者の顔の肌の状態との関係を表す相関モデルを作成することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の光学的特徴の変化量は、前記被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内に取得した前記皮膚表面を撮影した画像から取得される量である。
本発明によれば、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルを、非接触で作成することができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記変化量は、前記皮膚表面の変形からの回復開始直後に取得された皮膚表面の光学的特徴量と、前記皮膚表面の変形からの回復開始から一定時間経過後に取得された1又は2以上の皮膚表面の光学的特徴量から求められる量である。
本発明によれば、皮膚表面の変形時に観察される一時的な表面状態が、皮膚表面の非変形時でも観察される定着した表面状態に進行するリスクの評価に利用可能な相関モデルを作成することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の光学的特徴の変化量が、前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量である。
本発明によれば、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルを作成することができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の変形からの回復時間内における皮膚の動きに関する量が、当該回復時間内におけるシワスコアの減衰係数である。
本発明によれば、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルを作成することができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚表面の変形からの回復時間内が、皮膚表面の変形からの回復開始直後から5分以内に設定される。
本発明によれば、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルを、無意識的な身体の動きの影響を抑制して作成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被験者個人の動きによる影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる。
また本発明によれば、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る肌分析方法の流れを表すフローチャートである。
図2】本発明に係る相関モデルの作成方法を表すフローチャートである。
図3】実施例おいて、被験者の顔の動画像を取得する際に流れを表すフローチャートである。
図4】実施例において、シワスコアの減衰係数と、被験者の実年齢又は被験者の皮膚粘弾性との関係を分析する際の流れを表すフローチャートである。
図5】シワスコアの減衰係数と被験者の年齢との関係を表すグラフである。
図6】シワスコアの減衰係数と被験者の皮膚粘弾性との関係を表すグラフである。
図7】真皮タンパク質密度指数と皮膚粘弾性との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.肌の分析方法
図1を参照して、本発明に係る肌の分析方法を説明する。
本発明に係る肌の分析方法は、皮膚表面が変形している状態(以下、変形状態ともいう)にするステップS1と、皮膚表面が変形を元に戻した状態(以下、回復状態ともいう)にするステップS2と、当該変形からの回復時間における光学的特徴の変化量を算出するステップS3と、肌を分析するステップS4を含む(図1)。
本発明によれば、被験者個人の動きの癖の影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる。
以下、各ステップについて説明する。
【0028】
まずステップS1で、被験者の分析対象部位の皮膚表面を変形状態にする。
分析対象部位は特に限定されず、顔でも身体の一部でもよい。分析対象部位が顔である場合、全顔を分析対象としてもよく、目元、口元、額などの顔の特定部位を分析対象としてもよい。分析対象が身体の一部である場合、分析対象としては被験者の手(好ましくは手の甲)や首等を例示することができる。
【0029】
また、皮膚表面は、被験者の外部から何らかの手段により外部から力を加えることによりを変形させてもよく、被験者自身の筋力によりを変形させてもよい。
被験者の外部から力を加えて皮膚表面を変形させる場合、例えば被験者の解析対象部位に外力を加えてシワが形成され、及び/又はしみの形状が変化するようにする(例えば、弱くつねる)等の方法を採用することができる。
被験者自身の筋力により皮膚表面を変形させる場合、例えば被験者にある特定の表情(笑顔や怒った顔等)を作らせる、目を閉じさせる/見開かせる、手を握らせる/開かせる、口を開かせる/すぼめさせる等の方法を採用することができる。
好ましくは、皮膚表面は、被験者の顔の皮膚表面である。また好ましくは、皮膚表面の変形は、被験者にある特定の表情を作らせる(以下、表情創出ともいう)ことにより生じる変形である。
また、より正確な肌の分析を行う観点では、上記被験者自身の筋力による変形は、被験者の主観として最大の力で行わせることが好ましい。具体的には例えば、被験者に笑顔を作らせる場合、被験者の主観として最大の笑顔を作らせる。また例えば、被験者に目を閉じさせる/見開かせる場合、被験者の主観として最大限強く目を閉じさせ、又は被験者の主観として最大限に目を見開かせる。
【0030】
好ましくは、変形状態を一定時間以上保持する。
変形状態を一定時間以上保持することにより、皮膚表面を回復状態にした後における、皮膚表面の変形による肌への影響をより正確に分析することができる。
変形状態の保持時間は、例えば0.5秒以上とすることができ、1秒以上とすることが好ましい。変形状態の保持時間の上限は特に制限されないが、例えば、5秒以下とすることができる、4秒以下とすることが好ましい。
【0031】
次に、ステップS2で、被験者の解析対象部位の皮膚表面を回復状態にする。
ステップS2で、被験者の外部から力を加えて皮膚表面を変形させていた場合、当該外部からの力を除くことで、皮膚表面を回復状態にすることができる。
またステップS2で、被験者自身の筋力により皮膚表面を変形させていた場合には、被験者の筋肉を弛緩させた状態にすることで、皮膚表面を回復状態にすることができる。例えば被験者にある特定の表情を作らせていた場合や、目を閉じさせたり開かせていたりした場合には、無表情の状態にする。
【0032】
本発明の好ましい形態では、上記ステップS1とステップS2を1回ずつ行うことを1セットとして、2セット以上行う。
換言すれば、被験者の皮膚表面の変形状態と回復状態を交互に複数回ずつ取らせることが好ましい。
また、変形状態と回復状態の保持時間は、後述するステップS3の直前の回復状態を除いて、同じ長さであることがより好ましい。
本発明によれば、被験者個人の動きの癖による影響を抑制して、当該被験者の肌を分析することができる。
【0033】
次に、ステップS3で、被験者の皮膚表面の変形からの回復時間内における、皮膚表面の光学的特徴の変化量を算出する。
皮膚表面は、変形状態から回復状態にした直後に変形前の状態に戻るのではなく、徐々に変形前の状態に戻るように動く。そこで本発明において「皮膚表面の変形からの回復時間」とは、回復状態にした直後(回復を開始した直後)から、皮膚表面の状態が変形前の状態に戻るまでの時間をいう。
また本発明において「光学的特徴」とは、光学的に検出可能な特徴量皮膚表面の変形から回復状態にしたときに、自然に変形状態が変形前の状態に戻る特徴である。
光学的特徴は、被験者の解析対象部位を直接観察して取得してもよく、被験者の解析対象部位を撮影した画像から取得してもよい。
被験者の解析対象部位を撮影した画像から直接的に取得される光学的特徴としては、画像中の解析対象部位の明度、輝度、色、模様等を例示することができるが、これらに限定されない。また、画像から直接的に取得される光学的特徴に基づいて、被験者の解析対象部位におけるシワ、しみ、顔の赤み/黄み、若しくは、肌内部の毛細血管の数又は密度などの位置、角度、形状、深さ、面積、数、又は密度を抽出し、若しくはこれらに基づいて被験者の光学的特徴の状態を表す値(スコア)を算出し、これを光学的特徴として採用してもよい。
以下、被験者の解析対象部位を撮影した画像から直接的に取得される光学的特徴に基づいて取得される光学的特徴を、被験者の解析態様部位を撮影した画像から間接的に取得される光学的特徴に基づいて取得される光学的特徴ともいう。また、被験者の解析対象部位を撮影した画像から直接的に取得される光学的特徴と、被験者の解析対象部位を撮影した画像から間接的に取得される光学的特徴をあわせて、単に、被験者の解析対象部位を撮影した画像から取得される光学的特徴という。
【0034】
被験者の解析対象部位を直接観察して取得される光学的特徴としては、例えばシワ、しみ、又は顔の赤み/黄みなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なおこの場合、光学的特徴は、被験者の解析対象部位を目視で観察して取得されてもよく、解析対象部位のレプリカを作成し、当該レプリカから光学的特徴を取得する等の方法で観察して取得されてもよい。また、被験者の解析対象部位を直接観察して取得される光学的特徴に基づいて、被験者の光学的特徴の状態を表す値(スコア)を算出し、これを光学的特徴として採用してもよい。
【0035】
被験者の皮膚表面を変形させることにより、光学的特徴の状態が変化する。その後皮膚表面を回復状態にすると、回復時間内に、光学的特徴は皮膚表面を変形状態にする前の状態に戻ろうとする。
これを利用し、皮膚表面を変形状態から回復状態にした後、回復時間内における光学的特徴の変化量を算出することにより、個人の動きの癖の影響を抑制して、皮膚表面の動きを観察することができる。これにより、個人の動きの癖の影響を抑制して、肌を分析することができる。
【0036】
光学的特徴の変化量は、回復時間内の解析対象部位における光学的特徴の変化量である。
光学的特徴の変化量は、着目した光学的特徴に合わせた量を算出すればよい。
光学的特徴が、被験者の解析対象部位を撮影した画像から直接的に取得される光学的特徴である場合、光学的特徴の変化量としては例えば、明度の高低の変化量、輝度の高低の変化量、色の濃淡の変化量、模様の形状や密度の変化量等を挙げることができる。また例えば、明度、輝度、色、模様の変化に周期性がある場合、当該周期の幅を光学的特徴の変化量として算出してもよい。
さらにまた例えば、光学的特徴が、被験者の解析対象部位を撮影した画像から間接的に取得される光学的特徴である場合、若しくは被験者の解析対象部位を直接観察して取得される光学的特徴である場合、光学的特徴の変化量は、当該間接的に取得される光学的特徴の位置の変化量、動き(動きの幅や動きの速さ等)の変化量、形状の変化量、密度の変化量、面積の変化量又は光学的特徴の状態を表す値の変化量等を例示することができる。
【0037】
分析の簡便さ及び被験者への負担の軽減の観点から、光学的特徴の変化量は、被験者の解析対象部位を撮影した画像から取得される光学的特徴の変化量であることが好ましい。画像は、任意のタイミングで撮影された写真データでもよく、回復時間内の被験者の解析対象を撮影した動画像から切り出されたデータでもよい。
画像の取得方法は、光学的特徴の変化量を算出することができれば特に制限されず、光学カメラ(カラー、モノクロ、セピア等)、赤外線カメラ、紫外線カメラ、レーザースペックルカメラ等の血流カメラ等の各種カメラにより撮影されてもよく、3Dモデルの射影画像のような画像を用いてもよい。取得された画像は、ノイズ除去や、複数の画像間での、解析対象部位の画像内における位置の統一、光学的特徴の強調など、必要な前処理を施した後に、光学的特徴の変化量を取得することが好ましい。
【0038】
被験者の解析対象部位を撮影した画像からのノイズの除去及び、複数の画像間での、解析対象部位の画像内における位置の統一は、特徴点マッチング法やオプティカルフロー法等の公知の補正方法を採用してもよく、分析対象部位中の母斑等の消失しない特徴を追跡するようにしてもよく、これらの方法を組み合わせてもよい。
画像における光学的特徴の強調は、公知のフィルタを用いた二値化、平滑化、エッジの強調(鮮鋭化)等を例示することができる。これらのフィルタを適用することにより、光学的特徴を強調した、光学的特徴強調画像を取得することができる。
【0039】
また光学的特徴強調画像は、機械学習を用いて取得することもできる。
学習モデルは特に制限されず、ランダムフォレスト、多層パーセプトロン、k近傍法、畳み込みニューラルネットワーク等、公知のものを適宜採用することができる。
【0040】
本発明の好ましい形態では、光学的特徴の変化量は、回復開始直後に取得された変化量と、回復開始から一定時間経過後に取得された1又は2以上の光学的特徴量から求められることが好ましい。
本形態とすることにより、皮膚表面の変形による一時的な表面の変形状態が、非変形時でも観察される定着した表面の変形状態に進行するリスクの評価をすることができる。
【0041】
本発明の好ましい形態では、光学的特徴の変化量は、シワスコアの減衰係数である。
ここで本発明において「シワスコア」とは、シワの深さ、シワの幅、シワの面積、シワの長さ、シワの数、又はシワの数密度の少なくとも1つに基づいて算出される特徴である。すなわちシワスコアは、上記した「被験者の解析対象部位を撮影した画像から間接的に取得される光学的特徴」又は「被験者の解析対象部位を直接観察して取得される光学的特徴に基づいて、被験者の光学的特徴の状態を表す値(スコア)」である光学的特徴である。
シワの深さ、シワの幅、シワの面積、シワの長さ、シワの数及びシワの数密度は、被験者の顔を直接観察して取得されてもよく、被験者の顔画像から取得されてもよいが、好ましくは、回復時間内における被験者の顔画像から取得される。これらの顔画像からの取得方法は、適宜公知の方法を利用することができる。
シワスコアの算出方法は、被験者のシワの程度を反映していれば特に制限されないが、例えば、シワの深さ等の観点に必要に応じて重みづけをし、あらかじめ用意しておいた推定式に基づいてシワスコアを算出する方法を採用することができる。またシワスコアの減衰係数は、公知の減衰係数の算出方法によって算出することができる。
【0042】
分析対象とする回復時間の長さは特に制限されず、回復時間全体を分析対象としてもよいが、好ましくは5分以内、より好ましくは4分以内、さらにより好ましくは3分以内、さらにより好ましくは2分以内、さらにより好ましくは1分以内に設定される。
分析対象とする回復時間の長さの上限を上記数値範囲内に設定することにより、個人の動きの癖の影響のほか、無意識の身体の動きの影響も抑えて、被験者の肌を分析することができる。
【0043】
再度に、ステップS4で、上記ステップS3で算出した変化量に基づいて、被験者の肌を分析する。
分析方法は特に制限されないが、あらかじめ用意した、光学的特徴の変化量と肌状態の評価値の相関モデルに入力し、被験者の肌状態の評価値を出力することが好ましい。相関モデルを利用することにより、より簡便に被験者の肌を分析することができる。
【0044】
肌を分析する観点は特に制限されないが、被験者の肌の物性、被験者の見た目年齢、被験者の肌年齢、及び被験者の肌の内部構造から選ばれる1以上の項目について分析することが好ましい。
本発明において「被験者の見た目年齢」とは、被験者の見た目が何歳に見えるかという指標であり、具体的な年齢(35歳、40歳等)でもよく、年代(30歳代、40歳代等)でもよい。
また本発明において「被験者の肌年齢」とは、被験者の肌の状態が、何歳に相当するかという指標であり、こちらも、具体的な年齢でもよく、年代でもよい。
【0045】
肌の物性は、好ましくは、上記光学的特徴量との間に相関関係がある肌の物性であり、より好ましくは、上記光学的特徴量との間に相関関係があり、かつ被験者の見た目年齢若しくは肌年齢に影響する物性である。
さらにより好ましくは、肌の物性は、被験者の肌の弾力性及び/又は粘弾性であることが好ましい。
また肌の内部構造は、好ましくは、上記光学的特徴量との間に相関関係がある肌の内部構造であり、より好ましくは、上記光学的特徴量との間に相関関係があり、かつ被験者の見た目年齢若しくは肌年齢に影響する肌の内部構造である。肌の内部構造としては例えば、真皮のタンパク質構造、毛細血管の数及び/又は単位面積当たりの数密度、タイトジャンクションの構造等を例示することができる。
【0046】
2.相関モデルの作成方法
図2を参照して、本発明に係る相関モデルの作成方法を説明する。
本発明に係る相関モデルの作成方法は、被験者の皮膚表面が変形している状態(すなわち、変形状態)にするステップS1と、皮膚表面が変形を元に戻した状態(すなわち、回復状態)にするステップS2と、当該変形からの回復時間における光学的特徴の変化量を算出するステップS3と、当該被験者の属性と、ステップS3で算出された光学的特徴の変化量とから、相関モデルを作成するステップS5を含む(図2)。
以下、各ステップについて、上記「1.」で述べた事項と重複する事項については適宜省略しつつ説明する。
【0047】
皮膚表面が変形している状態にするステップS1、皮膚表面が変形していない状態にするステップS2、及び、当該変形からの回復時間における光学的特徴の変化量を算出するステップS3は、上記「1.」で説明した事項を適用することができる。好ましい形態も同様である。
【0048】
最後にステップS5で、被験者の属性と、ステップS3で算出した光学的特徴の変化量とから、相関モデルを作成する。
相関モデルの作成方法は特に限定されないが、一般的に入手可能な計算ソフト等を用いることができる。また、機械学習を利用してもよい。機械学習により相関モデルの作成を行う場合、学習モデルは特に制限されない。
【0049】
被験者の属性は特に制限されないが、被験者の性別、被験者の実年齢、被験者の見た目年齢、被験者の肌年齢、被験者の肌の物性、被験者の肌の内部構造、被験者の嗜好、被験者の生活スタイル等を例示することができる。好ましくは、被験者の属性は、被験者の年齢又は肌に関する属性であり、より好ましくは、被験者の属性は、被験者の実年齢、被験者の見た目年齢、被験者の肌年齢、被験者の肌の物性、又は被験者の肌の内部構造から選ばれる1以上の項目である。
なお被験者の肌年齢は、公知の方法で推定することができる。また被験者の肌の物性及び被験者の肌の内部構造は、上記「1.」で述べた事項を適用することができる。
【実施例0050】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、これに限定されない。
【0051】
本実施例においては、被験者の光学的特徴と、被験者の皮膚の粘弾性又は被験者の実年齢との相関を試験した。
被験者は35歳~60歳の健康な女性49人とした。分析対象部位は被験者の左目じりとし、光学的特徴はシワスコアの減衰係数とした。
【0052】
図3図4を参照して、本実施例に係る分析方法を説明する。
<測定方法>(図3
(1)後述する分析方法における、複数の画像間での、解析対象部位の画像内における位置補正のための目印として、被験者の額中央と耳たぶにシールを貼付した。また、被験者の額左目側にカラーチャートを貼付した(ステップS6)。
(2)被験者を着席させ、被験者の顔の正面から左に60°ずれた位置から撮影できるように、撮影機器及び照明を調整した(被験者の顔の左斜め前から撮影;ステップS6)。調整が完了した後、録画を開始した。
(3)被験者に軽く目を閉じさせ、口を閉じたまま、できるだけ大きな笑顔を作らせた(変形状態)後、無表情になる(回復状態)ことを1セットとし、7セット繰り返した。笑顔の保持時間と無表情の時間は、7セット目の無表情(回復状態)の時間を除いて、何れも1.3秒とした(ステップS7)。
(4)7セット目の回復状態を取った後、被験者を1分30秒間静止させた(ステップS8)。すなわち、本実施例において、分析対象である回復時間は、回復開始直後から1分30秒に設定されている。
(5)1分30秒の経過後、録画を停止し、動画像を取得した。
被験者は(1)~(5)の工程の完了後、3分間安静にし、録画した状態で再度(3)~(4)を行い、同一被験者に対して合計2回の測定をした。
【0053】
<分析方法>(図4参照)
(1)上記<測定方法>の(5)で得られた動画像から、回復開始直後の顔画像と、回復時間(1分30秒)内の顔画像を2730枚取得した(合計2731枚の顔画像を取得。ステップS9)。
(2)回復開始直後の顔画像に公知のフィルタを適用し、分析対象部位におけるシワを強調した画像(すなわち、光学的特徴強調画像。以下、単にシワ強調画像ともいう)を取得した。
回復時間内に取得した残りの2730枚の顔画像それぞれについても、同様にシワ強調画像を取得した(ステップS10)。
(3)上記(2)で得た2731枚のシワ強調画像のそれぞれにおいて、シワ部の1画素ごとの輝度値とシワ1本ずつの太さを算出し、あらかじめ用意したシワスコア算出式に基づいて、当該被験者の分析対象部位におけるシワスコアを算出した(ステップS11)。シワスコアは、画像から算出した輝度に基づいて求めたシワの深さと、シワの太さから算出した。
(4)上記(3)で算出したシワスコアに基づいて、公知の方法により、分析対象である回復時間内におけるシワスコアの減衰係数を算出した(ステップS12)。
(5)シワスコアの減衰係数と被験者の実年齢との関係及び、シワスコアの減衰係数と被験者の皮膚粘弾性との関係をそれぞれプロットし、それぞれの関係を分析した(ステップS13)。
【0054】
被験者の皮膚粘弾性は、別途、皮膚の粘弾性測定装置であるCUTOMETER(キュートメーター)(商品名)(Courage & Khazaka社製)により測定した。
シワスコアの減衰係数は、皮膚表面の変形により一時的にシワが表出した後、回復時間内における皮膚表面が変形前の状態に戻る速さを反映した指標である。具体的には、シワスコアの減衰係数が大きいほど、皮膚表面が変形前の状態に戻る速さが早い(すなわち、一時的なシワが消えやすい)ことを示し、シワスコアの減衰係数が小さいほど、皮膚表面が変形前の状態に戻る速さが遅い(すなわち、一時的なシワが消えにくい)ことを示す。
シワスコアの減衰係数と被験者の実年齢との関係を表すグラフを図5に、シワスコアの減衰係数と被験者の皮膚粘弾性(一例として、キュートメーターで測定されるパラメーターUe)との関係を表すグラフを図6にそれぞれ示す。
【0055】
図5に示す通り、シワスコアの減衰係数と年齢との間には相関関係があることが明らかになった。具体的には、被験者の年齢が上昇するにつれて、シワスコアの減衰係数が減少することが明らかになった。
すなわち、本試験例から、被験者の年齢が上昇するにつれて、皮膚表面が変形前の状態に戻る速さが遅い(すなわち、一時的なシワが消えにくい)ことが明らかになった。
よって上記結果により、皮膚表面におけるシワスコアの減衰係数を分析することにより、被験者の見た目年齢及び/又は肌年齢について分析することができることが示唆された。
【0056】
表情創出(すなわち、皮膚表面の変形)により一時的に表出するシワ(表情シワ)は、若年では表情をなくす(すなわち、回復状態にする)とともに消えるが、加齢とともに消えにくくなり、最終的には無表情のときにも表出するシワ(定着シワ)となることが知られている。
図5に示される結果と合わせて考えると、皮膚表面におけるシワスコアの減衰係数を分析することにより、表情シワの定着リスク(定着リスクの有無及び/又は定着リスクの高低)について分析することができることが示唆された。
【0057】
図6に示す通り、シワスコアの減衰係数と、被験者の皮膚の粘弾性との間には相関関係があることが明らかになった。具体的には、皮膚粘弾性が高い被験者ほど、シワスコアの減衰係数が大きい(すなわち、一時的なシワが消えやすい)ことが明らかになった。
本試験例により、皮膚表面におけるシワスコアの減衰係数を算出することにより、シワスコアの減衰係数との間に相関関係がある被験者の肌の物性を分析することができることが明らかになった。
【0058】
また本試験例により、皮膚表面の変形からの回復時間内における、皮膚表面の光学的特徴の変化量と、前記被験者の属性と、に基づいて、前記変化量と前記属性の相関モデルを作成することができることが明らかになった。
【0059】
ここで、本発明者らは、真皮タンパク質密度指数と皮膚粘弾性との関係を分析した。
真皮タンパク質密度指数は、皮膚ブロックのマッソントリクローム染色像の青色で染まった領域の輝度値の閾値処理からタンパク質密度を測定し、乳頭下層と網状層のタンパク質密度の比率から別途算出した。また、同じ皮膚ブロックについて、上記と同様にして粘弾性を測定した。
図7に、真皮タンパク質密度指数と皮膚ブロックの皮膚粘弾性との関係を示す。
皮膚粘弾性は、被験者の肌のハリに影響する物性であり、肌のハリは被験者の見た目年齢又は肌年齢に影響する物性であるから、皮膚粘弾性は、被験者の見た目年齢又は肌年齢に影響する物性である。
【0060】
図7に示す通り、皮膚粘弾性が高いほど、真皮タンパク質密度指数が高い(すなわち、真皮におけるタンパク質密度が高い)ことが明らかになった。
図6に示す結果と合わせると、被験者の皮膚表面におけるシワスコアの減衰係数を算出することにより、真皮タンパク質密度指数を推定することができることが示唆された。また、被験者の皮膚表面における光学的特徴の変化量に基づいて、皮膚粘弾性との間に相関関係がある被験者の肌の内部構造を推定することができることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、被験者個人の動きの癖の影響を抑制して、被験者の肌を分析することができる。
また本発明によれば、被験者の皮膚を変形させ、変形を元に戻した後における、当該被験者の属性と、当該被験者の肌の状態との関係を表す相関モデルを作成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7