(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047460
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】紡績糸、その製造方法及びそれを含む布帛
(51)【国際特許分類】
D02G 3/38 20060101AFI20240329BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20240329BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20240329BHJP
D03D 15/217 20210101ALI20240329BHJP
D03D 15/225 20210101ALI20240329BHJP
D03D 15/44 20210101ALI20240329BHJP
【FI】
D02G3/38
D02G3/04
D04B1/14
D03D15/217
D03D15/225
D03D15/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153092
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】水橋 秀章
【テーマコード(参考)】
4L002
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA02
4L002AA05
4L002AB01
4L002AB04
4L002AC00
4L002AC07
4L002BA01
4L002EA00
4L002EA03
4L002EA07
4L002FA01
4L036MA04
4L036MA09
4L036MA35
4L036MA39
4L036PA31
4L036PA41
4L036RA15
4L036RA25
4L036UA01
4L036UA09
4L036UA25
4L048AA08
4L048AA13
4L048AA33
4L048AA34
4L048AA54
4L048AB01
4L048AB11
4L048AB12
4L048AC15
4L048CA00
4L048CA07
4L048CA12
4L048DA01
(57)【要約】
【課題】ソフトな風合いを有しつつ、ハリとコシ及び吸水速乾性が良好である布帛が得られる紡績糸、その製造方法及びそれを含む布帛を提供する。
【解決手段】本発明は、天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を80質量%以上含む紡績糸であって、無撚状態の無撚繊維群と、無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成され、天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満、及び再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含み、紡績糸の断面において、再生セルロース系繊維の内層混用率が外層混用率より高い紡績糸に関する。前記紡績糸は、渦流空気精紡において、天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満、再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含むスライバーをドラフトゾーンに供給しドラフトし、ノズル圧が0.40~0.60MPaの条件で紡出し、巻き取ることで作製することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を80質量%以上含む紡績糸であって、
前記紡績糸は、無撚状態の無撚繊維群と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成され、
前記紡績糸は、天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満、及び再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含み、
前記紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率が、外層における再生セルロース系繊維の混用率より高い、紡績糸。
【請求項2】
前記天然セルロース系繊維の単繊維繊度T1と前記再生セルロース系繊維の単繊維繊度T2の単繊維繊度差(T1-T2)が、0.01~2.5dtexである、請求項1に記載の紡績糸。
【請求項3】
前記紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率が、外層における再生セルロース系繊維の混用率より3~70%高い、請求項1又は2に記載の紡績糸。
【請求項4】
前記天然セルロース系繊維が、綿である、請求項1~3のいずれかに記載の紡績糸。
【請求項5】
前記再生セルロース系繊維が、ビスコースレーヨン繊維である、請求項1~4のいずれかに記載の紡績糸。
【請求項6】
天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を80質量%以上含む紡績糸の製造方法であって、
渦流空気精紡において、
前記天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満、及び前記再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含むスライバーを準備する工程、
前記スライバーをドラフトゾーンに供給しドラフトする工程、及び、
ノズル圧が0.40~0.60MPaの条件で紡出し、巻き取る工程を含む、紡績糸の製造方法。
【請求項7】
紡出速度が250~450m/minである、請求項6に記載の紡績糸の製造方法。
【請求項8】
スピンドル径は1.0~1.3mmである、請求項6又は7に記載の紡績糸の製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の紡績糸を含む、布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を含む紡績糸、その製造方法及びそれを含む布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境配慮型素材のニーズが高まっていることから、衣料用素材に生分解性を有するセルロース系繊維が広く用いられている。例えば、特許文献1には、竹を原料とした再生セルロース系繊維100%を空気精紡機にて紡績した衣料用紡績糸が記載されている。また、特許文献2には、綿ファイバーと再生セルロースからなる強撚エアジェット紡績糸が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-339650号公報
【特許文献2】特表2019-510893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の再生セルロース系繊維100%の紡績糸を用いた布帛の場合、ハリとコシが劣る問題がある。また、特許文献2に記載の強撚エアジェット紡績糸を用いた布帛の場合、風合いが硬くなる傾向がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、ソフトな風合いを有しつつ、ハリとコシ及び吸水速乾性が良好である布帛が得られる紡績糸、その製造方法及びそれを含む布帛を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を80質量%以上含む紡績糸であって、前記紡績糸は、無撚状態の無撚繊維群と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成され、前記紡績糸は、天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満、及び再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含み、前記紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率が、外層における再生セルロース系繊維の混用率より高い紡績糸に関する。
【0007】
本発明は、また、天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を80質量%以上含む紡績糸の製造方法であって、渦流空気精紡において、天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満、及び再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含むスライバーを準備する工程、前記スライバーをドラフトゾーンに供給しドラフトする工程、及び、ノズル圧が0.40~0.60MPaの条件で紡出し、巻き取る工程を含む紡績糸の製造方法に関する。
【0008】
本発明は、また、前記紡績糸を含む布帛に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ソフトな風合いを有しつつ、ハリとコシ及び吸水速乾性が良好である布帛が得られる紡績糸、及びソフトな風合いを有しつつ、ハリとコシ及び吸水速乾性が良好である布帛を提供することができる。また、本発明によれば、ソフトな風合いを有しつつ、ハリとコシ及び吸水速乾性が良好である布帛が得られる紡績糸を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた紡績糸の側面写真(倍率100倍)である。
【
図2】
図2は、同紡績糸の断面写真(倍率370倍)である。
【
図3】
図3は、一例の紡績糸の側面写真(倍率100倍)における、無撚繊維、巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維の説明図である。
【
図4】
図4は、紡績糸(実施例2)の繊維断面(倍率370倍)における内層と外層の説明図である。
【
図5】
図5は、紡績糸の直径の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明者は、セルロース系繊維を80質量%以上含む紡績糸を用いた布帛のハリとコシ及び吸水速乾性を向上させることについて鋭意検討した。その結果、紡績糸に天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を所定の割合で含ませるとともに、該紡績糸を無撚状態の無撚繊維群と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成された構造にし、該紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率を、外層における再生セルロース系繊維の混用率より高くすることで、該紡績糸を用いた布帛がソフトな風合いを有しつつ、ハリとコシ及び吸水速乾性が良好になることを見出した。
【0012】
具体的には、紡績糸に天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を所定の割合で含ませるとともに、該紡績糸を無撚状態の無撚繊維群と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成された構造にしたことで、該紡績糸を用いた布帛のソフトな風合いを維持しつつ、ハリとコシを高めることができる。また、紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率を、外層における再生セルロース系繊維の混用率より高くすることで、すなわち、再生セルロース系繊維を糸の内側に多く分布させることで、少量の発汗であれば、再生セルロース系繊維が濡れにくいため、紡績糸を用いた布帛の吸水速乾性が向上する。
【0013】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「A~B」という数値範囲は、A及びBという両端値を含む範囲となる。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0014】
前記紡績糸(以下において、単に糸とも記す。)は、無撚状態の無撚繊維群(以下、無撚繊維とも記す。)と、前記無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群(以下、巻き付き繊維とも記す。)で構成されている。ここで、無撚状態とは、ボルテックス(Vortex、登録商標)糸等の空気精紡にて得られる紡績糸において、糸の内部(中心)の繊維が糸軸に対して平行な状態を意味する。また、糸の側面を観察した際、糸側面を完全に横断し、かつ糸側面に完全に密着しているものを巻き付き繊維とみなす。繊維の一部が糸側面に接しておらず、糸断面の中心方向に対して巻き付き力を発揮できないものは、巻き付き繊維として取り扱わない。無撚繊維及び巻き付き繊維のどれにも該当しない繊維のうち、両端が糸側面に接しているものを浮遊繊維、どちらか一方の端が糸側面から離れているものを毛羽繊維とする。巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維のどれにも該当しない全ての繊維を無撚繊維とみなす。
図3に、一例の紡績糸における無撚繊維、巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維を示している。紡績糸をこのような構造にすることで、繊維の収束が高まり、該紡績糸を用いた布帛のハリとコシ及び吸水速乾性が改善する。
【0015】
前記紡績糸の気孔率は、65%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは55%以下であり、特に好ましくは50%以下である。これにより、繊維が密に充填され、巻き付き繊維による無撚繊維への固定が高まり、該紡績糸を含む布帛の抗ピリング性が良好になる。前記気孔率の下限は特に限定されないが、柔らかい風合いの観点から、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。紡績糸の気孔率は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0016】
前記紡績糸は、天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を80質量%以上含む。これにより、紡績糸及びそれを用いた布帛が生分解性を有し、環境に優しい。生分解性を高める観点から、前記紡績糸は、天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維を85質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましく、実質的に天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維からなることが特に好ましい。
【0017】
前記紡績糸は、天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満含む。天然セルロース系繊維を15質量%以上含むことで、ハリとコシを高めることができる。天然セルロース系繊維を85質量%未満含むことで、ソフトな風合いが得られる。前記紡績糸は、天然セルロース系繊維を20~80質量%含むことが好ましく、より好ましくは25~75質量%含み、さらに好ましくは、30~70質量%含む。
【0018】
天然セルロース系繊維は、特に限定されず、例えば、綿(コットン)、麻、パルプ等が挙げられる。ハリとコシの観点から、綿が好ましい。
【0019】
前記紡績糸は、再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含む。再生セルロース系繊維を15質量%超含むことで、ソフトな風合いを付与することができる。再生セルロース系繊維を85質量%以下含むことで、ハリとコシ及び吸水速乾性が向上する。前記紡績糸は、再生セルロース系繊維を20~80質量%含むことが好ましく、より好ましくは25~75質量%含み、さらに好ましくは30~70質量%含む。
【0020】
再生セルロース系繊維は、特に限定されず、例えば、ビスコースレーヨン(単にレーヨンとも称される。)、キュプラ、溶剤紡糸セルロース系繊維等が挙げられる。風合いの観点から、ビスコースレーヨンが好ましい。また、ビスコースレーヨンとしては、機能剤を含む機能性ビスコースレーヨンを用いることができる。これにより、紡績糸及びそれを用いた布帛に各種機能性を付与することができる。洗濯耐久性の観点から、繊維内部に機能剤を含む機能性ビスコースレーヨンを用いることが好ましい。このような機能性ビスコースレーヨンとしては、例えば、ダイワボウレーヨン社製の各種機能剤練り込みタイプのレーヨンを適宜用いることができる。
【0021】
前記紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率が、外層における再生セルロース系繊維の混用率より高い。これにより、汗等の水分と接する表面の再生セルロース系繊維の割合が少なくなり、吸水速乾性が改善する。前記紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率が、外層における再生セルロース系繊維の混用率より3~70%高いことが好ましく、5~50%高いことがより好ましく、7~30%高いことがさらに好ましい。本明細書において、紡績糸の断面における内層及び外層は、下記のように定義するものである。エポキシで紡績糸を包埋しミクロトームで面出しを施し、その後走査電子顕微鏡で糸断面の画像を取得する。個々の繊維の断面の重心を通過する線と断面の外周の交点がなす線分のうち、最も長い線分の長さを長軸とし、個々の繊維の重心を中心として半径が個々の繊維の長軸の長さである円を作図した場合、任意の繊維断面がなす領域が前記円のなす領域に含まれる繊維を一つの紡績糸の構成繊維と規定する。次に、その糸の全ての構成繊維を内側に含んで外接し周囲の長さが最小の円または楕円を作図し、その円または楕円をその紡績糸の外周とする。次に外周をなす円または楕円と同じ中心を有し、直径または長辺が半分の円または楕円を描き、その円または楕円をその紡績糸断面における内周とする。このとき外周と内周が楕円となる場合は、それぞれの長辺と短辺が重なるように作図する。外周と内周に挟まれる領域を、その紡績糸の外層領域とする。内周がなす領域をその紡績糸の内層領域とする。紡績糸の断面における再生セルロース系繊維の内層混用率及び外層混用率は、実施例に記載のとおりに測定する。
【0022】
前記天然セルロース系繊維の単繊維繊度T1と前記再生セルロース系繊維の単繊維繊度T2の単繊維繊度差(T1-T2)は、0.01~2.5dtexであることが好ましく、より好ましくは0.05~2.0dtexであり、さらに好ましくは0.1~1.5dtexである。これにより、前記紡績糸の断面において、内層における再生セルロース系繊維の混用率が、外層における再生セルロース系繊維の混用率より高い構造になりやすい。
【0023】
前記天然セルロース系繊維は、特に限定されないが、例えば、衣料に好適に用いる観点から、単繊維繊度が0.4~5dtexであることが好ましく、0.5~3.5dtexであることがより好ましく、0.6~2.5dtexであることがさらに好ましい。綿の場合、単繊維繊度は2.8~5.5マイクロネア(1.1~2.2dtex)であることが好ましく、3.5~4.9マイクロネア(1.3~1.9dtex)であることがより好ましい。
【0024】
前記天然セルロース系繊維は、特に限定されないが、紡績工程の生産性の観点から、繊維長が22~55mmであることが好ましく、28~55mmであることがより好ましく、32~54mmであることがさらに好ましい。綿の場合、繊維長は22~45mmであることが好ましく、24~33mmであることがより好ましい。
【0025】
前記再生セルロース系繊維は、特に限定されないが、例えば、衣料に好適に用いる観点から、単繊維繊度が0.4~5dtexであることが好ましく、0.5~3.5dtexであることがより好ましく、0.6~2.5dtexであることがさらに好ましい。
【0026】
前記再生セルロース系繊維は、特に限定されないが、紡績工程の生産性の観点から、繊維長が24~55mmであることが好ましく、28~55mmであることがより好ましく、32~54mmであることがさらに好ましい。
【0027】
前記紡績糸は、天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維に加えて他の繊維を含んでもよい。他の繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維、アセテート繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ウレタン系繊維、天然セルロース系繊維以外の天然繊維、及び動物繊維等が挙げられる。他の繊維としては、生分解性を有する原料からなる繊維であってよく、練り込みや後加工等によって生分解性が付与された繊維であってもよい。前記紡績糸は、用途及び目的等に応じて、適宜他の繊維を20質量%以下含んでもよく、10質量%以下含んでもよく、5質量%以下含んでもよい。
【0028】
前記紡績糸において、他の繊維は、特に限定されないが、例えば、衣料に好適に用いる観点から、単繊維繊度が0.4~5dtexであることが好ましく、0.5~3.5dtexであることがより好ましく、0.6~2.5dtexであることがさらに好ましい。
【0029】
前記紡績糸において、他の繊維は、特に限定されないが、例えば、紡績工程の生産性の観点から、繊維長が24~55mmであることが好ましく、28~55mmであることがより好ましく、32~54mmであることがさらに好ましい。
【0030】
前記紡績糸の番手は、特に限定されないが、英式綿番手で5~70の範囲であってもよく、好ましくは10~60であり、より好ましくは15~50である。
【0031】
前記紡績糸は、特に限定されないが、例えば、抗ピリング性をより高める観点から、長さ1mm以上の毛羽数が600本/10m以下であることが好ましく、300本/10m以下であることがより好ましく、150本/10m以下であることがさらに好ましい。また、長さ3mm以上の毛羽数が40本/10m以下であることが好ましく、30本/10m以下であることがより好ましく、20本/10m以下であることがさらに好ましい。また、長さ5mm以上の毛羽数が10本/10m以下であることが好ましく、5本/10m以下であることがより好ましく、3本/10m以下であることがさらに好ましい。紡績糸の毛羽数は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0032】
前記紡績糸の紡績方法は、空気精紡であればよく、特に限定されないが、布帛のハリとコシ、及び吸水速乾性を高める観点から、渦流空気精紡法にて作製することが好ましい。予め、渦流空気精紡において、記天然セルロース系繊維を15質量%以上85質量%未満、前記再生セルロース系繊維を15質量%超85質量%以下含むスライバーを準備し、前記スライバーをドラフトゾーンに供給してドラフトし、その後、ノズル圧が0.40~0.60MPaの条件で紡出して巻き取ることで紡績糸を得ることができる。前記渦流空気精紡は、特に限定されないが、例えば、村田機械株式会社製のボルテックス精紡機(VORTEX精紡機)を用いることができる。
【0033】
前記渦流空気精紡において、ノズル圧が0.40MPa以上であると、ハリとコシのある風合いの布帛が得られる紡績糸となる。ノズル圧が0.60MPa以下であると、風合いが硬くなり過ぎずソフトな風合いの布帛が得られる紡績糸となる。ノズル圧は0.42~0.55MPaであることが好ましく、0.45~0.53MPaであることがより好ましい。
【0034】
前記渦流空気精紡において、特に限定されないが、例えば、生産性を高め、風合いと抗ピリング性を両立する観点から、紡出速度が250~450m/minであることが好ましく、260~430m/minであることがより好ましく、280~410m/minであることがさらに好ましい。
【0035】
前記渦流空気精紡に用いる紡績機において、風合いと抗ピリング性を両立する観点から、スピンドル径(スピンドルの孔の口径)は1.0~1.3mmであることが好ましく、1.1~1.3mmであることがより好ましい。
【0036】
本発明において、布帛は、上述した紡績糸を含む。布帛は、編物であってもよく、織物であってもよい。前記布帛は、生分解性を高める観点から、前記紡績糸を50質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、85質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことがさらにより好ましく、100質量%からなることが特に好ましい。前記布帛は、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記紡績糸に加えて、他の糸、例えば他の紡績糸及び/又はフィラメント糸を含んでもよい。なお、前記布帛は、単層構造であってもよく、二層以上の層を含んでもよい。
【0037】
編物の場合、単面編みの天竺編みでもよく、単面編みの変形編みである鹿の子編み、メッシュ編み、裏毛編みであってもよく、両面編でのスムース編み、ダンボール編み、ワッフル編みでもよい。両面編みの場合、前記紡績糸は表面層及び/又は裏面層に用いることができる。
【0038】
織物の場合、平織、綾織、朱子織等の一重織でもよく、二重織でもよい。
【0039】
前記布帛は、精練漂白を行ってもよい。また、必要に応じて、精練漂白後に染色加工や仕上げ加工してもよい。前記布帛は、染色加工や仕上げ加工時に、吸水処理、SR(Soil release)処理、抗菌処理、帯電防止処理等を同時に施してもよい。
【0040】
前記布帛は、吸水速乾性及び柔軟性を高める観点から、吸水柔軟処理が施されていることが好ましい。吸水柔軟処理は、例えば吸水シリコーン系柔軟剤等の吸水性を有する柔軟剤を用いて行うことができる。
【0041】
前記布帛は、吸水速乾性が高い観点から、蒸散性(II)試験(ボーケン規格BQE A 028準拠)における蒸散率が試験開始20分後で25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、前記布帛は、特に限定されないが、保湿性等の観点から、蒸散性(II)試験(ボーケン規格BQE A 028準拠)における蒸散率が試験開始20分後で70%以下であることが好ましい。蒸散性(II)試験は、吸水性と速乾性の両方を複合的に評価する試験であり、蒸散率は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0042】
前記布帛は、速乾性が高い観点から、拡散性残留水分率試験において試験開始から拡散性残留水分率が10%以下に至るまでの時間が、75分以下であることが好ましく、70分以下であることがより好ましく、65分以下であることがさらに好ましい。拡散性残留水分率試験は、吸水した布帛の乾燥性を評価する試験であり、拡散性残留水分率は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0043】
前記布帛は、ハリとコシに優れる観点から、所定の天竺における曲げ剛性が0.020gf・cm3/cm以上であることが好ましく、0.025gf・cm3/cm以上であることがより好ましく、0.035gf・cm3/cm以上であることがさらに好ましい。また、前記布帛は、着用感の観点から、曲げ剛性が0.080gf・cm3/cm以下であることが好ましく、0.070gf・cm3/cm以下であることがより好ましい。本明細書において、曲げ剛性は、実施例に記載のとおりに測定することができる。ここで、「所定の天竺編地」とは、カバーファクタが1.30以上1.70以下になるように作製した編地を意味する。本明細書において、カバーファクタは、JIS L 1096 8.8:2010に準じて測定する。
【0044】
前記布帛は、放熱性を高める観点から、カトーテック株式会社製のサーモラボ2を用いてドライコンタクト法で測定した保温率が、20.0%以下であることが好ましく、15.0%以下であることがより好ましい。
【0045】
前記布帛は編物の場合、例えば、蒸れ感を低減する観点から、通気抵抗が0.200kPa・s/m以下であることが好ましく、0.180kPa・s/m以下であることがより好ましい。また、前記布帛は、透け感の観点から、通気抵抗が0.005kPa・s/m以上であることが好ましい。通気抵抗の具体的な測定方法は実施例に記載のとおりである。
【0046】
前記布帛は編物の場合、抗ピリング性の観点から、JIS L 1076:2012 A法に基づき、ICI形試験機を使用して測定したピリングが3.5級以上であることが好ましく、4級以上であることがより好ましく、4.5級以上であることがさらに好ましい。
【0047】
前記布帛は、編物の場合、例えば、保温性の観点から、厚みが0.50mm以上であることが好ましく、0.60mm以上であることがより好ましい。また、前記布帛は、特に限定されないが、例えば、着用感の観点から、厚みが4.0mm以下であることが好ましい。
【0048】
前記布帛は、編物の場合、軽量性等の着用性の観点から、例えば、目付が450g/m2以下であることが好ましく、400g/m2以下であることがより好ましく、300g/m2以下であることがさらに好ましく、200g/m2以下であることが特に好ましい。また、前記布帛は、特に限定されないが、透け感の観点から、目付が50g/m2以上であることが好ましい。
【0049】
前記布帛は、衣料や資材等に用いることができる。衣料としては、例えばスポーツ衣料類、ホームウェア類、肌着類、アウターウェア類等が挙げられる。スポーツ衣料類であれば、アウトドアシャツ、トレーニングウェア、スウェットシャツ・パンツ、ポロシャツ等が挙げられる。肌着類であれば、Tシャツ、ブリーフ、トランクス、キャミソール、ショーツ等が挙げられる。資材としては、例えば裏地類、靴材類、サポーター類、靴下類、カーペット類、寝具類等が挙げられる。
【実施例0050】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法は下記のとおりである。
【0052】
(1)公定水分率 JIS L 0105:2020 繊維製品の物理試験方法通則 4.1 公定水分率 表1-繊維の公定水分率を参照した。
(2)繊維の単繊維繊度
JIS L 1015:2010に準じて測定した。
(3)繊維の比重
「繊維の密度」、清造 剛、繊維工学、1968年21巻7号、P458-P463を参照した。
(4)気孔率
糸の側面画像において、糸側面を完全に横断し、かつ糸側面に完全に密着しているものを巻き付き繊維とみなした。繊維の一部が糸側面に接しておらず、糸断面の中心方向に対して巻き付き力を発揮できないものは、巻き付き繊維として取り扱わない。糸の中心の無撚繊維及び巻き付き繊維のどれにも該当しない繊維のうち、両端が糸側面に接しているものを浮遊繊維、どちらか一方の端が糸側面から離れているものを毛羽繊維とした。巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維のどれにも該当しない全ての繊維を無撚繊維とみなした。
また、糸断面の中心方向に対して、隣接する繊維に対して接しており、かつ糸断面において最も外側に位置する繊維を最外端繊維とした。最外端繊維は巻き付き繊維であることもあり、無撚繊維であることもある。繊維のどちらか一方の端又は一部が、糸の断面方向に対して隣接する繊維から離れている場合は最外端繊維から除外した。
図3に、一例の紡績糸における無撚繊維、巻き付き繊維、浮遊繊維、毛羽繊維を示した。
(I)糸の側面観察からの紡績糸直径の算出
糸の側面は、KEYENCE製電子顕微鏡VE-9800により(倍率40倍から100倍にて)張力のない状態の糸の側面を撮影した。例えば
図5に示されているように、糸の任意の箇所の糸の最外端繊維に対して糸の長手方向へ接線Ltをひき、接線Ltに対する垂線Lsを糸の中心軸(長手方向)に対して垂直に下ろした。垂線Ltと糸を構成する最外端繊維の交点をCとした。さらに、垂線Ltと糸の中心軸を挟み交点Cの反対側の最外端繊維の交点をDとした。CD間の距離を測定して糸の直径とした。1つのサンプルに対して異なる箇所の画像5枚を撮影した。各画像について5箇所の糸直径を求め、その画像の代表値とした。さらに画像5枚の平均値を求め、その糸サンプルの代表値とした。
(II)紡績糸の見掛け密度の算出
単位長さあたりの重さを正量番手(JIS L 1095:2010 9.4.1 正量テックス及び番手)から算出した。(I)で測定した紡績糸直径を用いて、糸の断面を円に近似させることで算出した体積で、単位長さあたりの重さを除算することで糸の見掛け密度を定義した。見掛け密度が小さいほど糸の単位長さあたりの嵩が大きい。
(III)気孔率の算出方法
任意の糸を構成する繊維素材と同じ比重で、かつその糸と同じ重さになる円柱の体積Vmを算出した。さらに(I)で測定した糸直径を用いて、その糸の断面を円に近似させて糸の体積Vyを算出した。VmをVyで除算し100倍すると糸の中に繊維が占める体積の割合が得られた。これを100から減算することで糸内の空気の占める割合である気孔率が導出された。ただし算出にはJIS L 1096:2010 8.11 見掛け比重及び気孔容積率に記載される繊維比重を用いた。
(5)糸の内層混用率及び外層混用率
糸の断面は、断面形状を保持するためにエポキシで包埋した後にミクロトーム(Leica EM UC6)を用いてガラスナイフで面出しを施し、走査電子顕微鏡(KEYENCE製電子顕微鏡VE-9800)にて、倍率370倍で撮影し、糸断面の画像を取得した。個々の繊維の断面の重心を通過する線と断面の外周の交点がなす線分のうち、最も長い線分の長さを長軸とし、個々の繊維の重心を中心として半径が個々の繊維の長軸の長さである円を作図した場合、任意の繊維断面がなす領域が前記円のなす領域に含まれる繊維を一つの紡績糸の構成繊維と規定する。次に、
図4に示すように、その糸の全ての構成繊維を内側に含んで外接し周囲の長さが最小の円または楕円を作図し、その円または楕円をその糸の外周とした。次に外周をなす円または楕円と同じ中心を有し、直径または長辺が半分の円または楕円を描き、その円または楕円をその糸断面における内周とした。このとき外周と内周が楕円となる場合は、それぞれの長辺と短辺が重なるように作図した。外周と内周に挟まれる領域を、その糸の外層領域とした。内周がなす領域をその糸の内層領域とした。外層領域と内層領域に含まれる繊維の本数と繊維繊度から、外層領域と内層領域の混用率を求め、それぞれ外層混用率と内層混用率とした。境界線上に存在する繊維は、その重心が存在する領域に存在するとみなし混用率を算出した。1つのサンプルに対して異なる箇所の糸断面の画像3枚を撮影し、さらに画像3枚の混用率の平均値を求め、その糸サンプルの代表値とした。
(6)毛羽数
JIS L 1095:2010 9.22.2 B法に準じて測定した。毛羽試験機としてF-INDEX TESTER(敷島紡績株式会社)を用い、試験条件は、糸速30m/分、試験長10m、N=30とした。
(7)英式綿番手
JIS L 1095:2010 9.4.1の一般紡績糸の正量テックス・番手測定の綿番手測定方法に準じて測定した。
(8)目付
JIS L 1096:2010に準じて測定した。
(9)カバーファクタ
JIS L 1096 8.8:2010に準じて測定した。
(10)曲げ剛性
カトーテック株式会社製のKES-FB2-A純曲げ試験機を用いて曲げ剛性を測定した。具体的には布帛のコース方向を最大曲率±2.5cm
-1、曲げ速度0.5cm
-1で曲げ変形させた際の曲げ剛性を測定した。測定環境は20℃、65%RHとした。
測定した。
(11)吸水速乾性
一般財団法人ボーケン品質評価機構の蒸散性(II)試験(ボーケン規格BQE A 028)に準じて、20分後の蒸散率を求めた。ボーケン一般製品基準は30%以上である。蒸散率は、具体的には以下の方法で測定・算出した。
(a)直径約9cmの試験片とシャーレの質量(W)を測定した。
(b)シャーレに水0.1mLを滴下し、その上に試験片を載せ、合計質量(W0)を測定した。
(c)標準状態(20℃,65%RH)下に放置して所定時間ごとの合計質量(Wt)を測定し、20分後の蒸散率(%)を算出した。
蒸散率(%)={(W0-Wt)/(W0-W)}×100
(12)拡散性残留水分率
一般財団法人ボーケン品質評価機構の拡散性残留水分率試験に準じて、残留水分率が10%に至るまでに要する時間を基準値として求めた。セルロース100%布帛の一般的な品質基準は75分以下の時間で残留水分率が10%に至ることである。残留水分率と基準値は、具体的には以下の方法で測定・算出した。
(а)10cm四方の試験片(質量:W1)へ水0.6mlを滴下し合計質量(W01)を測定した。
(b)20℃65%RHの環境中に試験片を吊り下げた状態で放置し、所定の時間ごとの質量(Wt1)を測定し、残留水分率を算出した。
残留水分率(%)={(W01-Wt1)/(W01-W1)}×100
(c)残留水分率が10%を下回るまでに要した乾燥時間を基準値とした。
(13)q-max
カトーテック株式会社製のKES-F7(サーモラボ)を用いてq-maxを測定した。測定環境は20℃、65%RHとした。測定方法はメーカーが定める規定の手法に従った。q-maxの数値が大きいほど接触涼感性が高いと判定している。
(14)保温率
カトーテック株式会社製のサーモラボ2を用いてドライコンタクト法で保温率を測定し、保温性を評価した。具体的には、一定の空気流れ(30cm/s)において、環境温度+10℃に設定した熱板から試験片(20×20cm)を介して放射された熱量(消費電力)を測定し保温率を求めた。保温率の数字が大きいほど保温性が高いと判定している。
(15)通気抵抗
カトーテック株式会社製のKES-F8通気性試験機を用いて測定した。プランジャー/シリンダーのピストン運動によって定流量空気を試料に送り、大気中へ試料を通して放出、吸引する機構で、放出・吸引時の圧力から通気抵抗を算出した。測定条件はSENS:M、SPEED:0.2とした。
(16)抗ピリング性
JIS L 1076:2012 A法に基づき、ICI形試験機を使用してピリング試験を行い、ピリングの発生の程度を確認した。
(17)分光透過率
紫外・可視・近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-3600/MPC-3100」)を用いて分光透過率を測定した。波長280~400nmの範囲の平均分光透過率(以下、紫外線透過率とも記す。)、及び波長780~1000nmの範囲の平均分光透過率(以下、近赤外線透過率とも記す。)を算出した。紫外線透過率が低い程紫外線カット効果が高く、近赤外線透過率が低い程遮熱効果が高い。
【0053】
(実施例1)
(糸の製造)
遮熱レーヨン繊維(ダイワボウレーヨン株式会社製、品名「レイシールド」、単繊維繊度1.10dtex、繊維長38mm、公定水分率11.0%)50質量部と、綿繊維(アップランド綿、単繊維繊度1.63dtex、平均繊維長27.0mm、公定水分率8.5%)50質量部を混綿して得られたスライバーを、VORTEX精紡機(村田機械株式会社製、型番「VORTEX 861」)のドラフトゾーンに供給してドラフトした後、ノズル圧0.50MPa、紡出速度300m/分の条件で紡出し、巻き取ることで、英式綿番手20sの紡績糸(MVS糸)を作製した。スピンドル径は1.1mmであった。
(布帛の製造)
上記で得られた紡績糸を用いて、30インチ24ゲージ丸編機を用いて天竺組織の編物(カバーファクタ1.56)を編成した。得られた編地を過酸化水素(27.5%)4g/L、ソーダ灰3g/L、及び精練剤1.5g/Lを用いて95℃40分条件で精練漂白を行い、その後、吸水シリコーン系柔軟剤(Suzhou Chengda Biotechnology社製、KSCC)を用いてPad-dry法にて仕上げ加工を行い、布帛を作製した。
【0054】
(実施例2)
(糸の製造)
遮熱レーヨン繊維(ダイワボウレーヨン株式会社製、品名「レイシールド」、単繊維繊度1.10dtex、繊維長38mm、公定水分率11.0%)30質量部と、綿繊維(アップランド綿、単繊維繊度1.63dtex、平均繊維長27.0mm、公定水分率8.5%)70質量部を混綿して得られたスライバーを用いた以外は、実施例1と同様にして、英式綿番手20sの紡績糸(MVS糸)を作製した。
(布帛の製造)
上記で得られた紡績糸を用いた以外は、実施例1と同様の方法で天竺組織の編物(カバーファクタ1.59)を編成し、布帛を作製した。
【0055】
(比較例1)
(糸の製造) 遮熱レーヨン繊維(ダイワボウレーヨン株式会社製、品名「レイシールド」、単繊維繊度1.10dtex、繊維長38mm、公定水分率11.0%)50質量部と、綿繊維(アップランド綿、単繊維繊度1.63dtex、平均繊維長27.0mm、公定水分率8.5%)50質量部を混打綿工程、カード工程、練条工程、粗紡工程に順次投入し、120ゲレン/12ydの粗糸を得た。次に、得られた粗糸を2本用い、コンパクトスピニングシステムを導入したリング精紡機にて、31倍のドラフトを付与し、空気で粗糸の進行方向に吸引して繊維を収束させた後に、撚り係数3.7で撚糸し、英式綿番手26sの紡績糸(リング糸)を作製した。
(布帛の製造)
上記で得られた紡績糸を用いて、34インチ24ゲージ丸編機を用いて天竺組織の編物(カバーファクタ1.47)を編成した。得られた編地を過酸化水素(27.5%)4g/L、ソーダ灰3g/L、精練剤1.5g/L、及びUV加工剤(ハンツマン社製、UV-SUN CEL LIQ)1.0g/Lを用いて95℃40分条件で精練漂白及びUV加工を行い、その後、吸水シリコーン系柔軟剤(Suzhou Chengda Biotechnology社製、KSCC)を用いてPad-dry法にて仕上げ加工を行い、布帛を作製した。
【0056】
(比較例2)
(糸の製造)
綿繊維(アップランド綿、単繊維繊度1.63dtex、平均繊維長27.0mm、公定水分率8.5%)100質量部を混打綿工程、カード工程、練条工程、粗紡工程に順次投入し、120ゲレン/12ydの粗糸を得た。次に、得られた粗糸を2本用い、リング精紡機にて31倍のドラフトを付与し、撚り係数3.7で撚糸し、英式綿番手26sの紡績糸(リング糸)を作製した。
(布帛の製造)
上記で得られた紡績糸を用いて、34インチ24ゲージ丸編機を用いて天竺組織の編物(カバーファクタ1.52)を編成した。得られた編地を過酸化水素(27.5%)6g/L、苛性ソーダ1g/L、及び精練剤1.5g/Lを用いて98℃40分条件で精練漂白を行い、その後、吸水シリコーン系柔軟剤(Suzhou Chengda Biotechnology社製、KSCC)を用いてPad-dry法にて仕上げ加工を行い、布帛を作製した。
【0057】
(比較例3)
(糸の製造) 綿繊維(アップランド綿、単繊維繊度1.63dtex、平均繊維長27.0mm、公定水分率8.5%)100質量部を混打綿工程、カード工程、練条工程、粗紡工程に順次投入し、90ゲレン/12ydの粗糸を得た。次に、得られた粗糸を2本用い、コンパクトスピニングシステムを導入したリング精紡機にて、36倍のドラフトを付与し、空気で粗糸の進行方向に吸引して繊維を収束させた後に、撚り係数3.7で撚糸し、英式綿番手40sの紡績糸(リング糸)を作製した。
(布帛の製造)
上記で得られた紡績糸を引き揃えて、34インチ24ゲージ丸編機を用いて天竺組織の編物(カバーファクタ1.44)を編成した。得られた編地を過酸化水素(27.5%)6g/L、苛性ソーダ1g/L、精練剤1.5g/Lを用いて98℃40分条件で精練漂白を行い、その後、カチオン系柔軟剤を用いてPad-dry法にて仕上げ加工を行い、布帛を作製した。
【0058】
実施例及び比較例において、紡績糸における内層混用率及び外層混用率、毛羽数、気孔率を上述したとおりに測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例及び比較例において、布帛の目付、透過率、保温率、q-max、吸水速乾性、速乾性、通気抵抗、曲げ剛性及び抗ピリング性を上述したとおりに測定評価し、その結果を下記表1に示した。下記表1には、紡績糸の紡糸条件、布帛の目付、コース度目、及びウェール度目も併せて示した。
【0059】
【0060】
図1に実施例1で得られた紡績糸の側面写真(倍率100倍)を示し、
図2に同紡績糸の断面写真(倍率370倍)を示した。
図1~
図2から分かるように、実施例の過流空気精紡による紡績糸は、内部の無撚状態の無撚繊維群と、該無撚繊維群の周囲に巻き付いている巻き付き繊維群で構成されている。
【0061】
上記表1の結果から分かるように、実施例の遮熱レーヨン繊維及び綿からなるMVS糸を用いた布帛は、綿100%のリング糸を用いた比較例3の布帛と同等の曲げ剛性を有し、ハリとコシが良好であった。また、実施例の遮熱レーヨン繊維及び綿からなる紡績糸(MVS糸)を用いた布帛は、蒸散性(II)試験(ボーケン規格BQE A 028準拠)における蒸散率が試験開始20分後で30%以上であり、吸水速乾性が良好であった。また、実施例の遮熱レーヨン繊維及び綿からなる紡績糸(MVS糸)を用いた布帛は、ソフトな風合いを有していた。
また、実施例の遮熱レーヨン繊維及び綿からなるMVS糸を用いた布帛は、綿100%のリング糸を用いた比較例3の布帛に比べて、近赤外線透過率が低く、遮熱効果に優れていた。また、実施例の遮熱レーヨン繊維及び綿からなるMVS糸を用いた布帛は、綿100%のリング糸を用いた比較例2の布帛に比べて、紫外線透過率が低く、紫外線カット効果に優れていた。