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特開2024-47486医療機関における商品の発注処理を行うための装置、方法及びそのためのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047486
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】医療機関における商品の発注処理を行うための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240329BHJP
   G06Q 30/0601 20230101ALI20240329BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q30/06 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153134
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】516302270
【氏名又は名称】株式会社カケハシ
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山本 惇一
(72)【発明者】
【氏名】保坂 桂佑
(72)【発明者】
【氏名】吉川 瑠璃子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佳宏
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049BB54
5L049BB63
(57)【要約】
【課題】医療機関における商品の発注処理の効率化を図る。
【解決手段】まず、装置100は、基準日等の基準時点を設定する(S201)。次いで、装置100は、当該基準時点までの予測需要データを取得する(S202)。装置100は、当該予測需要データに基づいて、基準時点における予測在庫量を算出する(S203)。次に、装置100は、当該基準日における予測在庫在庫量が第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定する(S204)。予測在庫量が第1の在庫量以下又は未満である場合、装置100は、第1の在庫量と予測在庫量との差以上となるように、その商品の発注数量を決定する(S205)。各商品には、最小注文単位があるため、発注数量は最小注文単位の倍数となる。そして、装置100は、決定された発注数量の発注提案を医療機関端末110に送信する(S206)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関における商品の発注処理を行うための方法であって、
基準時点を設定するステップと、
前記基準時点までの第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の前記医療機関における需要数量の第1の予測値を取得するステップと、
前記基準時点までの前記商品ごとの日単位又は日時単位の入庫数量の第2の予測値を取得するステップと、
前記第1の予測値及び前記第2の予測値に基づいて、前記基準時点の前記商品ごとの予測在庫量を算出するステップと、
商品ごとに、前記予測在庫量が前記医療機関において商品ごとに定められた第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定するステップと、
判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記予測在庫量との差以上の発注数量の発注を提案するステップと
を含み、
前記第1の在庫量は、予め特定された1又は複数の特定患者による需要数量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量である。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の在庫量は、前記1又は複数の特定患者による需要量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の1日当たりの最大需要数量又はそれに応じた数量である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記予測在庫量の前記算出は、前記基準時点から予め特定した第1の特定期間内に来訪が予測される特定患者による需要数量又はそれに応じた数量の減算を含む。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記第1の特定期間は、7日以上10日以下である。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、
前記発注数量は、前記第1のコードとは異なる第2のコードにより表される注文単位に含まれる数量の倍数である。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、
前記発注数量は、前記第1の在庫量を超える基準在庫量と前記予測在庫量との差以上の数量である。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の方法であって、
商品ごとに、前記第1のコードにより表される当日の算出時点又は営業時間終了時刻後の当日推定在庫量が前記医療機関における前記第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定するステップと、
判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記当日推定在庫量との差以上の当日発注数量の当日配送の発注を提案するステップと
を含む。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記算出時点の前記当日推定在庫量は、前記算出時点の在庫量から、当日から、予め特定した第2の特定期間内に来訪が予測される1又は複数の特定患者による需要数量を減算した数量である。
【請求項9】
コンピュータに、医療機関における商品の発注処理を行うための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
基準時点を設定するステップと、
前記基準時点までの第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の前記医療機関における需要数量の第1の予測値を取得するステップと、
前記基準時点までの前記商品ごとの日単位又は日時単位の入庫数量の第2の予測値を取得するステップと、
前記第1の予測値及び前記第2の予測値に基づいて、前記基準時点の営業終了後の前記商品ごとの予測在庫量を算出するステップと、
商品ごとに、前記予測在庫量が、前記医療機関において商品ごとに定められた第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定するステップと、
判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記予測在庫量との差以上の発注数量の発注を提案するステップと
を含み、
前記第1の在庫量は、予め特定された1又は複数の特定患者による需要数量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量である。
【請求項10】
医療機関における商品の発注処理を行うための装置であって、
基準時点を設定し、
前記基準時点までの第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の前記医療機関における需要数量の第1の予測値を取得し、
前記基準時点までの前記商品ごとの日単位又は日時単位の入庫数量の第2の予測値を取得し、
前記第1の予測値及び前記第2の予測値に基づいて、前記基準時点の営業終了後の前記商品ごとの予測在庫量を算出して、商品ごとに、前記予測在庫量が、前記医療機関において商品ごとに定められた第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定し、
判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記予測在庫量との差以上の発注数量の発注を提案し、
前記第1の在庫量は、予め特定された1又は複数の特定患者による需要数量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関における商品の発注処理を行うための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬局等の医療機関は、卸売業者等の販売業者から薬剤を仕入れ、来局する患者に対して、当該患者に処方された1又は複数の医薬品を必要に応じて調製し、交付する。医療機関は、患者の求めに応じて薬剤を交付する必要があることから、種類及び量ともに、十分な在庫を確保するよう努める。
【0003】
薬剤には、各商品を識別するためのコードが付与されており、薬効成分が同一であっても、たとえば、製造業者が異なれば、別商品として異なるコードが設定されるものもある。実際の流通においては、一定の単位で各商品の販売がなされ、最小注文単位である販売包装単位、販売包装単位の商品を複数梱包した元梱包装単位等がある。これらの包装単位を識別するためのコードも付与されており、GS1と呼ばれるコード体系が国際的に用いられている。たとえば、「ロキソニン錠60mg」を10錠包装したPTP包装シート10枚という販売包装単位にはGS1体系に従ったコードとして「14987081105400」が設定されている。医療機関は、こうしたコードを指定して、必要な種類及び量の商品を仕入れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現状において、医療機関はどの種類の商品についてどの程度の発注をいつ行えばよいかを適切に管理できておらず、過去の経験に基づいて発注処理を行っているため、在庫が不足して急遽配達を依頼したり、逆に過剰の在庫を抱えてしまったりする非効率が発生している。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療機関における商品の発注処理の効率化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、医療機関における商品の発注処理を行うための方法であって、基準時点を設定するステップと、前記基準時点までの第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の前記医療機関における需要数量の第1の予測値を取得するステップと、前記基準時点までの前記商品ごとの日単位又は日時単位の入庫数量の第2の予測値を取得するステップと、前記第1の予測値及び前記第2の予測値に基づいて、前記基準時点の前記商品ごとの予測在庫量を算出するステップと、商品ごとに、前記予測在庫量が前記医療機関において商品ごとに定められた第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定するステップと、判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記予測在庫量との差以上の発注数量の発注を提案するステップとを含み、前記第1の在庫量は、予め特定された1又は複数の特定患者による需要数量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量である。
【0007】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記第1の在庫量は、前記1又は複数の特定患者による需要量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の1日当たりの最大需要数量又はそれに応じた数量である。
【0008】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記予測在庫量の前記算出は、前記基準時点から予め特定した第1の特定期間内に来訪が予測される特定患者による需要数量又はそれに応じた数量の減算を含む。
【0009】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様の方法であって、前記第1の特定期間は、7日以上10日以下である。
【0010】
また、本発明の第5の態様は、第3の態様の方法であって、前記発注数量は、前記第1のコードとは異なる第2のコードにより表される注文単位に含まれる数量の倍数である。
【0011】
また、本発明の第6の態様は、第5の態様の方法であって、前記発注数量は、前記第1の在庫量を超える基準在庫量と前記予測在庫量との差以上の数量である。
【0012】
また、本発明の第7の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、商品ごとに、前記第1のコードにより表される当日の算出時点又は営業時間終了時刻後の当日推定在庫量が前記医療機関における前記第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定するステップと、判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記当日推定在庫量との差以上の当日発注数量の当日配送の発注を提案するステップとを含む。
【0013】
また、本発明の第8の態様は、第7の態様の方法であって、前記算出時点の前記当日推定在庫量は、前記算出時点の在庫量から、当日から、予め特定した第2の特定期間内に来訪が予測される1又は複数の特定患者による需要数量を減算した数量である。
【0014】
また、本発明の第9の態様は、コンピュータに、医療機関における商品の発注処理を行うための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、基準時点を設定するステップと、前記基準時点までの第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の前記医療機関における需要数量の第1の予測値を取得するステップと、前記基準時点までの前記商品ごとの日単位又は日時単位の入庫数量の第2の予測値を取得するステップと、前記第1の予測値及び前記第2の予測値に基づいて、前記基準時点の営業終了後の前記商品ごとの予測在庫量を算出するステップと、商品ごとに、前記予測在庫量が、前記医療機関において商品ごとに定められた第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定するステップと、判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記予測在庫量との差以上の発注数量の発注を提案するステップとを含み、前記第1の在庫量は、予め特定された1又は複数の特定患者による需要数量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量である。
【0015】
また、本発明の第10の態様は、医療機関における商品の発注処理を行うための装置であって、基準時点を設定し、前記基準時点までの第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の前記医療機関における需要数量の第1の予測値を取得し、前記基準時点までの前記商品ごとの日単位又は日時単位の入庫数量の第2の予測値を取得し、前記第1の予測値及び前記第2の予測値に基づいて、前記基準時点の営業終了後の前記商品ごとの予測在庫量を算出して、商品ごとに、前記予測在庫量が、前記医療機関において商品ごとに定められた第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定し、判定結果が肯定的である場合、前記第1の在庫量と前記予測在庫量との差以上の発注数量の発注を提案し、前記第1の在庫量は、予め特定された1又は複数の特定患者による需要数量を除いて算出される、前記医療機関における所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、基準日における商品ごとの予測在庫量を医療機関の商品ごとに定められた第1の在庫量と比較して、予測在庫量が第1の在庫量以下又は未満となる場合に適切な発注提案を行うことによって、当該基準日において、各商品について、在庫が不足してしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる商品発注のための装置を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態にかかる商品発注の方法の流れを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態にかかる商品発注に伴う在庫量の変化を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態にかかる特定患者について説明するための図である。
図5】本発明の第2の実施形態にかかる商品発注に伴う在庫量の変化を説明するための図である。
図6】本発明の第2の実施形態にかかる商品発注の方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態にかかる商品発注のための装置を示す。装置100は、予測需要データに基づいて、発注提案を医療機関が用いる医療機関端末110に送信し、医療機関端末110から発注要求を受信した後に、必要に応じて発注データを販売業者端末(図示せず)に送信する。予測需要データは、第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の需要数量の予測値を含み、発注データは、第1のコードに対応する第2のコードにより識別される包装単位ごとの日単位又は日時単位の注文数の値を含む。
【0020】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理又は各動作を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102の少なくとも1つのプロセッサにおいて当該プログラムに含まれる命令を実行することができる。図1では、装置100からアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体としてデータベース104を示している。データベース104は、装置100を構成する構成要素としてもよく、また、そこに記憶されるデータを記憶部103に記憶してもよい。
【0021】
データベース104には、第1のコードと当該第1のコードにより表される商品の在庫量との対応づけである在庫データが記憶されている。発注された商品が入庫することで当該商品の在庫量は増加し、患者に処方された商品が販売されて出庫することで当該商品の在庫量は減少する。たとえば、翌日の営業時間後の在庫量は、当日の算出時点の在庫量に当日の算出時点から翌日の営業終了までの予測入庫量を加え、当日の算出時点から翌日の営業終了までの予測出庫量を引いた量となる。より一般には、翌日の基準時点における予測在庫量は、当日の算出時点の在庫量に当日の算出時点から翌日の基準時点までの予測入庫量を加え、当日の算出時点から翌日の基準時点までの予測出庫量を引いた量となる。さらに一般的には、基準時点における予測在庫量は、算出時点の在庫量に算出時点から基準時点までの予測入庫量を加え、算出時点から基準時点までの予測出庫量を引いた量となり、ここで基準時点は数日後の日時としてもよく、また当日の算出時点後の日時としてもよい。また、商品が発注された場合に計算上、その時点で仮に入庫されたものとして、算出時点の在庫量に加算してもよい。また、本明細書おいて、「入庫」とは商品が受け取られて在庫に加わることを意味し、「出庫」とは商品が販売されて在庫から取り除かれることを意味する。
【0022】
本実施形態にかかる装置100は、基準時点における商品の予測在庫量が第1の在庫量以下又は未満とならないように当該商品の発注を提案し、効率的に在庫不足を抑制可能とする。以下、詳述する。本明細書において、「基準在庫量」とは、医療機関において商品ごとに定められた基準となる在庫量を意味し、「第1の在庫量」とは、医療機関において商品ごとに定められた、必要に応じて基準在庫量未満の在庫量を意味し、「第2の在庫量」とは、医療機関において商品ごとに定められた基準在庫量超の在庫量を意味する。第2の在庫量は、一例として、医療機関において商品全体で確保可能な最大の在庫量に基づいて定まる当該商品の最大在庫量としてもよい。
【0023】
まず、装置100は、基準日等の基準時点を設定する(S201)。基準時点は、例として、翌日の営業終了時刻後の時点を設定することが挙げられる。次いで、装置100は、当該基準時点までの予測需要データを取得する(S202)。予測需要データは、発注処理を行う医療機関における過去の出庫履歴データ、発注履歴データ、処方箋データ等、さまざまなデータを単独で又は組み合わせて用いて生成することが考えられる。また、当該医療機関以外の医療機関におけるデータを用いることも考えられる。また、予測需要データは、コンピュータネットワークを介して装置100が受信することのほか、装置100において生成することが挙げられる。
【0024】
予測需要データは、たとえば、第1のコードにより表される商品ごとの日単位又は日時単位の需要数量の予測値であり、ここで、第1のコードは在庫管理の上で各商品を識別するためのコードである。具体的には、YJコードを用いたり、独自の管理コードを用いたりしてもよい。例として、需要数量の予測値は、期待値により表したり、区間推定又は区間推定による信頼区間の下限値により表したりしてもよい。
【0025】
装置100は、当該予測需要データに基づいて、基準時点における予測在庫量を算出する(S203)。商品を発注する場合、たとえば、発注先に応じてその納品日又は納品日時が定まるため、発注済みの各商品の納品日又は納品日時をデータベース104において発注データと関連づけておくことで、装置100は、入庫前の発注データ及びそれに関連づけられた納品日又は納品日時にアクセスすることによって、算出時点から当該基準時点までの間に入庫される予定の各商品の数量を予測可能である。予測需要データに基づいて当該基準時点までの予測出庫量が予測可能であるから、装置100は、当該基準時点における予測在庫量を算出することができる。納品日又は納品日時は、必要に応じて発注データの一部としてもよい。また、基準時点が営業時間後又は営業時間前であれば、納品の時刻までは必要なく納品日が分かればよく、また、需要数量についても出庫の日時までは必要なく日単位で出庫量が分かればよい。また、算出時点における在庫量は、その時点の実際の在庫量又はそれに対応する量とすることができ、厳密にその時点の在庫量であることまでは必要としない。計算の便宜上、商品が発注された場合に、その時点で仮に入庫されたものとして算出時点の在庫量に加算してもよい。ここで、需要数量の予測値として、区間推定による信頼区間の上限値を用いる場合、予測在庫量はその信頼区間の下限値となる。以下では、簡単のため、基準時点を当該基準時点を含む基準日の営業終了時刻後とし、基準日と呼ぶが、営業時間内の時点を基準時点としても、本発明は適用可能であることを付言する。
【0026】
次に、装置100は、当該基準日における予測在庫量が第1の在庫量以下又は未満であるか否かを判定する(S204)。第1の在庫量は、各商品について、たとえば、それを下回らないことが望ましい数量として定めてデータベース104に記憶しておけばよい。当該基準日は、当日でも、数日後でもこの判定を行うことは可能であるものの、以下の説明では、簡単のため、数日後の営業終了時刻以後の時点とする。また、発注先に応じて、また商品に応じて、発注してから納品までの期間が異なり得るが、当日の所定時刻までに発注を終えれば、翌日の営業終了時刻までに納品がなされるものとし、予測在庫量の算出時点を当該所定時刻以前とする。
【0027】
商品ごとに定められる第1の在庫量は、一例として、装置100による提案を受ける医療機関における当該商品の所定期間内の一日当たりの最大需要数量又はそれに応じた数量とすることが挙げられる。具体的には、一日当たりの最大需要数量に1を超える係数を乗じた量としてもよい。当該係数は、商品の単価に応じて定めてもよい。より一般的には、第1の在庫量は、装置100による提案を受ける医療機関における当該商品の所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量とすることが挙げられる。所定期間は、算出時点から過去3月又は4月、算出時点が属する季節における過去の期間等としてもよい。第1の在庫量は、医療機関端末110の表示画面においてなされた、在庫量を減らす又は増やすことの選択その他の入力を装置100が受信し、当該入力に応じて変更してもよい。
【0028】
当該医療機関において、他の患者よりも特に処方量の多い患者がいる場合、かかる患者を予め特定された「特定患者」とし、第1の在庫量は、特定患者による需要数量を除いて算出される、当該所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量とすることが好ましい。特定患者は、装置100が医療機関端末110からその指定を受信して登録しても、装置100が患者ごとの過去の処方量を用いて所定のアルゴリズムに基づいて特定して登録してもよい。特定患者について、装置100は、次回の予測来訪日を予測し、記憶してもよく、医療機関端末110から受信した予定来訪日を記憶してもよい。
【0029】
予測在庫量が第1の在庫量以下又は未満である場合、装置100は、第1の在庫量と予測在庫量との差以上となるように、その商品の発注数量を決定する(S205)。各商品には、最小注文単位があるため、発注数量は最小注文単位の倍数となる。そして、装置100は、決定された発注数量の発注提案を医療機関端末110に送信する(S206)。発注提案は、基準日までに入庫となるよう、基準日よりも納品所要日数以上又は納品所要時間以上前の発注期限となる日付又は日時を含むことが好ましい。たとえば、ある商品について、算出日が9月1日で、基準日である9月3日に予測在庫量が第1の在庫量以下又は未満であると判定された場合、当該商品の納品所要日数が1日であれば、9月2日を発注期限とした提案を医療機関端末110に送信すればよい。
【0030】
装置100は、医療機関端末110から当該発注提案に応じた発注要求を受信した後に、当該発注提案に対応する発注データを生成し、販売業者端末に送信することができる。発注データの生成は、発注提案の送信と同時又はその前に行ってもよい。装置100は、当該発注提案とは異なる内容の発注要求を受信し、必要に応じて、受信した内容に応じた発注データを販売業者端末に送信可能としてもよい。例示として、発注提案は医療機関端末110の表示画面において発注条件を変更可能なHTML形式のデータとして送信し、発注提案が含む決定された発注数量とは異なる数量の発注要求を受信することが考えられる。また、装置100において発注数量の決定を行わずに、発注提案が発注数量の指定を含まないことも考えられる。また、納品期限についても同様に可変としたり、含まないこととしたりすることが考えられる。
【0031】
予測在庫量が第1の在庫量超又は以上である場合、装置100は、基準日のインクリメント等によって、基準日を再設定してもよい。再設定がなされた場合には、同様の処理が繰り返される。また、予測在庫量が第1の在庫量超又は以上である場合においても、所定の条件を充足するときには、発注数量の決定及び発注提案の送信に進んでもよいことがある。
【0032】
図3は、本実施形態にかかる発注処理による在庫量の変動を模式的に示す。横軸は日付であり、縦軸は営業終了時刻後の在庫量である。ここで、予測 在庫量は区間推定をしており、実線が期待値、実線上方の点線が信頼区間の上限、実線下方の点線が信頼区間の下限を表している。医療機関の営業日が経過するにつれて、予測在庫量は減少していき、基準日において基準在庫量未満の水準に定められた第1の在庫量を下限が下回ると判定される場合には、納品所要日数が1日であると仮定して、その一営業日前が必須発注日となる。必須発注日に発注がなされることで、発注した数量の商品が翌日の基準日に入庫されて、図示するように信頼区間の下限が最小在庫量を下回ることを回避できる。
【0033】
発注数量は、第1のコードとは異なる、GS1コード等の第2のコードにより表される注文単位に含まれる数量の倍数となり、発注した数量が入庫されることで基準在庫量又は第1の在庫量以上又は超となることが好ましい。図示の例では、予測在庫量の期待値が基準在庫量を超える数量が発注されている。
【0034】
また、予測在庫量の予測値が対象とする医療機関の第2の在庫量以下又は未満となるように発注数量を決定することが好ましい。図示の例では、期待値を予測値とすれば、基準在庫量を超えて、第2の在庫量未満となっているが、信頼区間の上限を予測値とすれば、第2の在庫量を上回っており、在庫量が第2の在庫量を超えてしまうリスクを回避する可能性を高めるためには、当該上限が第2の在庫量以下又は未満となるようにすることが好ましい。
【0035】
上述のとおり、発注数量は、第2のコードにより表される注文単位に含まれる数量の倍数であることから、発注した数量が入庫されても第2の在庫量以下又は未満になるまで、追加の発注をすることは好ましくない。図3において、発注可能日は、翌日の予測在庫量に最小注文単位の数量を加算しても第2の在庫量以下又は未満となる最初の日を表している。
【0036】
ある商品について、第1の在庫量が、特定患者による需要数量を除いて算出される所定期間内の需要数量に基づいて定まる数量である場合、特定患者による需要数量は予測在庫量の算出において考慮されていないことになる。この場合、過剰の在庫量を抑えることができるものの、特定患者が来訪して急遽在庫不足となるおそれが高まる。そこで、予測在庫量の算出において、基準日から、予め特定した特定期間(以下「第1の特定期間」とも呼ぶ。)内に来訪が予測される1又は複数の特定患者による需要数量又はそれに応じた数量を減算することが好ましい。当該需要数量に応じた数量は、たとえば、需要数量に係数を乗じた数量等が挙げられる。特定期間としては、7日、10日等の7日以上の期間が考えられる。発明者らは、薬局において、処方された薬がなくなる1週間程度前に来局する患者が一定数存在することを過去の出庫履歴データ等から見出し、したがって、7日又はそれより若干長い期間内に来訪が予測される特定患者による需要数量については、前もって入庫しておくことが在庫不足抑制に有効である。第1の特定期間は、過剰在庫に繋がるため、14日を超えないことが好ましく、10日を超えないことがさらに好ましい。たとえば、図4に示すように、算出日が7月27日で基準日が8月15日であって、特定患者の来局が8月25日に予測される場合、特定期間が10日であるとき、当該特定患者による需要量を含めて8月15日の予測在庫量を算出することになる。
【0037】
以上説明したように、基準日における商品ごとの予測在庫量を医療機関の商品ごとに定められた基準在庫量未満の第1の在庫量と比較して、予測在庫量が第1の在庫量以下又は未満となる場合に発注提案を行うことによって、基準日において、各商品について、在庫が不足してしまう可能性を低減することができる。比較及びそのための算出は、当該医療機関で販売するすべての商品について行わずとも、その一部について行えば、本発明の効果が得られることを念のため付言する。
【0038】
(第2の実施形態)
図5に、本実施形態にかかる発注処理による在庫量の変動を説明するための図を示す。横軸は日付であり、縦軸は営業終了時刻後の在庫量である。2月1日からある商品の在庫量は減少していき、2月5日に発注がなされ、2月6日に基準在庫量に達する数量が入庫されている。その後、減少と増加を繰り返し、2月16日には第1の在庫量を下回っている。これは、第1の実施形態にかかる発注処理を行っていれば起きないと想定されているものの、16日の需要数量が予想を大きく上回ってしまった場合等に生じ得る。このような場合には、医療機関は、16日の営業時間中に急遽配達を依頼を行う必要がある。
【0039】
そのために、第2の実施形態では、当日の在庫量の時間単位、分単位又は秒単位の変化等の実績値を取得し(S601)、それに基づいて推定される営業終了時刻後の推定在庫量(S602)が第1の在庫量以下又は未満となるか否かを判定し(S603)、判定結果が肯定的な場合、装置100は、発注数量を決定し(S604)、医療機関端末110に当日配送の納品条件による発注提案を送信する(S605)。入庫数量及び発注数量については、第1の実施形態で記述したいずれかの方式により決定可能である。
【0040】
代替的に、当日の営業終了時刻後の推定在庫量ではなく、算出時点の在庫量が第1の在庫量以下又は未満となるか否かを判定するようにしてもよい。営業時間中に所定の間隔で又は所定の時刻に判定を繰り返し、算出時点の在庫量が第1の在庫量以下又は未満となると判定された場合に発注提案が医療機関端末110に送信されるようにしてもよい。計算の便宜上、商品が発注された場合に、その時点で仮に入庫されたものとして算出時点の在庫量に加算してもよい。また、算出時点の在庫量から、当日から、予め特定した特定期間(以下「第2の特定期間」とも呼ぶ。)内に来訪が予測される1又は複数の特定患者による需要数量を減算した数量を算出時点の推定在庫量として判定に用いてもよい。第2の特定期間としては、第1の特定期間と同様に、7日、10日等の7日以上であって10日又は14日以下の期間が考えられる。
【0041】
発注提案により提案される発注数量は、第1のコードとは異なる、GS1コード等の第2のコードにより表される注文単位に含まれる数量の倍数となり、発注した数量が入庫されることで基準在庫量又は第1の在庫量以上又は超となることが好ましい。特定患者による需要数量を上記判定に用いる在庫量において減算しない場合、当該発注数量には、第2の特定期間内に来訪が予測される1又は複数の特定患者による需要数量を加算してもよい。
【0042】
装置100は、第1の実施形態と同様に、当該発注提案とは異なる内容の発注要求を受信し、必要に応じて、受信した内容に応じた発注データを販売業者端末に送信可能としてもよい。例示として、発注提案は医療機関端末110の表示画面において発注条件を変更可能なHTML形式のデータとして送信し、発注提案が含む決定された発注数量とは異なる数量の発注要求を受信することが考えられる。また、装置100において発注数量の決定を行わずに、発注提案が発注数量の指定を含まないことも考えられる。また、納品期限についても同様に可変としたり、含まないこととしたりすることが考えられる。
【0043】
上述の説明では、本実施形態にかかる当日配送の提案は、第1の実施形態にかかる提案を利用しても、さらに当日の在庫量が不足するか、不足することが推定される場合に利用されるものとして記述したが、本実施形態にかかる当日配送の提案のみを医療機関が利用してもよい。特に特定患者による需要数量を加算した発注数量の提案を医療機関に行うことで、急遽在庫不足となる可能性をさらに低減することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0045】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0046】
また、図2及び6において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法がS201又はS601によって必ず開始され、S205又はS605によって必ず終了することを意味するものではない。
【符号の説明】
【0047】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース
110 医療機関端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6