(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047490
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/08 20060101AFI20240329BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240329BHJP
B23K 101/42 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
B23K1/08 320Z
H05K3/34 506D
B23K101:42
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153141
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】596162131
【氏名又は名称】有限会社森永技研
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】永野 光春
【テーマコード(参考)】
4E080
5E319
【Fターム(参考)】
4E080AB03
4E080AB05
4E080CA04
4E080CA11
5E319AC01
5E319CC24
5E319GG03
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】長時間継続使用できる卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法を提供する。
【解決手段】半田槽1の上方に突出する噴流ノズル2の吐出口から噴流する溶融半田に、保持枠45が支えるマスク治具51に設けた半田付け用の透孔が浸かる下端位置と、噴流する該溶融半田から前記マスク治具51が上方へ離れた上端位置との間で、該保持枠45を昇降させる昇降機構4を備える卓上半田付け装置において、吐出筒部23で前記吐出口を形成する前記噴流ノズルを、該吐出筒部23の一部が上縁を含んで切り欠かれて低所230のある低壁部分232に置き換えた切欠き噴流ノズル2Aとし、且つ前記保持枠45又は前記マスク治具51に基部61が固定されて、前記下端位置で、該基部51から延在する立板部62が前記低所230を塞ぐシャッター6を具備し、前記上端位置で、前記立板部62が前記低壁部分232よりも上方に離れて、前記吐出筒部23内を上昇する溶融半田が前記低所230から流出するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田槽の上方に突出する噴流ノズルの吐出口から噴流する溶融半田に、保持枠が支えるマスク治具に設けた半田付け用の透孔が浸かる下端位置と、噴流する該溶融半田から前記マスク治具が上方へ離れた上端位置との間で、該保持枠を昇降させる昇降機構を備える卓上半田付け装置において、
吐出筒部で前記吐出口を形成する前記噴流ノズルを、該吐出筒部の一部が上縁を含んで切り欠かれて低所のある低壁部分に置き換えた切欠き噴流ノズルとし、
且つ、前記保持枠又は前記マスク治具に基部が固定されて、前記下端位置で、該基部から延在する立板部が前記低所を塞ぐシャッターを具備し、
前記上端位置で、前記立板部が前記低壁部分よりも上方に離れて、前記吐出筒部内を上昇する溶融半田が前記低所から流出するようにしたことを特徴とする卓上半田付け装置。
【請求項2】
前記吐出口が平面視矩形にして、その矩形の長辺側に、前記吐出筒部の上縁が高い高壁部分と該高壁部分の対向壁部分に前記低壁部分とを設けた請求項1記載の卓上半田付け装置。
【請求項3】
前記高壁部分と前記低壁部分とを連結する前記矩形の短辺側に、上縁高さが該高壁部分と該低壁部分の中間になる中位壁部分が設けられた請求項2記載の卓上半田付け装置
【請求項4】
前記切欠き噴流ノズルの吐出筒部が複数設けられ、且つ各吐出筒部の前記低所に対応する箇所に、前記保持枠又は前記マスク治具に前記基部が固定されて、前記下端位置で、該基部から延在する前記立板部が該低所を塞ぐシャッターがそれぞれ配設される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の卓上半田付け装置。
【請求項5】
前記保持枠に基部が固定された前記シャッターに係る前記立板部の板面が、側面視でその下端からなだらかに屈曲して外方に張り出す屈曲部分を下端部位に有して上方に延在し、前記上端位置から前記下端位置への下降で、該屈曲部分が該立板部を前記低壁部分の外側に案内ガイドして、該低壁部分を該立板部が摺動し、前記低所を塞ぐようにして前記低壁部分に当接する請求項4記載の卓上半田付け装置。
【請求項6】
半田槽の上方に突出する噴流ノズルの吐出口から噴流する溶融半田に、保持枠が支えるマスク治具に設けた半田付け用の透孔が浸かる下端位置と、噴流する該溶融半田から前記マスク治具が上方へ離れた上端位置との間で、該保持枠を昇降させる昇降機構を備える卓上半田付け装置において、吐出筒部で前記吐出口を形成する前記噴流ノズルを、該吐出筒部の一部が上縁を含んで切り欠かれて低所のある低壁部分に置き換えた切欠き噴流ノズルとし、且つ、前記保持枠又は前記マスク治具に基部が固定されて、前記下端位置で、該基部から延在する立板部が前記低所を塞ぐシャッターを具備し、前記上端位置で、前記立板部が前記低壁部分よりも上方に離れて、前記吐出筒部内を上昇する溶融半田が前記低所から流出するようにした卓上半田付け装置を用いて、
前記切欠き噴流ノズル内を前記吐出口に向かって上昇する半田液面周りの溶融半田が、前記低所から流出した後、前記シャッターが下端位置に達して前記低所を塞ぎ、該低所からの溶融半田の流出を止めて、溶融半田の液面が前記吐出口に向けて上昇するようにし、その後、該溶融半田が前記透孔に到達して被半田付け部品を半田付けすることを特徴とする卓上半田付け装置を用いた半田付け方法。
【請求項7】
前記溶融半田が前記透孔に到達して被半田付け部品を半田付けした後、前記低壁部分の上縁から前記シャッターを前記上端位置側へ離し、該上縁と前記吐出筒部内の半田液面間に在る溶融半田が該上縁を越えて該吐出筒部外へ流れ出るようにしてから、前記吐出筒部内の該溶融半田を下降させる請求項5記載の卓上半田付け装置を用いた半田付け法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型の卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、プリント基板への電子部品等の半田付けとして、プリヒートが可能な半田付け装置を提案してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5496968号公報
【特許文献2】特開2021-22627号公報
【0004】
特許文献1、2の卓上半田付け装置は、プリヒートができるのにとどまらず、プリヒートを含めても、これまでと殆ど変らない時間で半田付けができる卓上装置であり、生産性向上、さらに装置の低コスト化に効果を上げてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2の卓上半田付け装置は、小型にして主に試作品の開発や小ロット生産向け好適な卓上装置として製品化してきた経緯があり、該装置を大量生産用として長時間に使い続けると、不具合が生じた。噴流ノズルの溶融半田液面M1にドロスDや残留フラックス等が浮かんで(
図9のイ参照)、半田付けの仕上がりにバラツキが発生した。長時間に亘って半田付けを継続する場合は、数時間ピッチで溶融半田上面に浮かぶドロス等を清掃除去する対策を講じているが、作業者の負担が伴う。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、作業者による噴流ノズルの溶融半田液面に浮かぶドロス等の除去負担なしに、半田付けの品質を良好に保って、長時間継続使用できる卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第一態様は、半田槽の上方に突出する噴流ノズルの吐出口から噴流する溶融半田に、保持枠が支えるマスク治具に設けた半田付け用の透孔が浸かる下端位置と、噴流する該溶融半田から前記マスク治具が上方へ離れた上端位置との間で、該保持枠を昇降させる昇降機構を備える卓上半田付け装置において、吐出筒部で前記吐出口を形成する前記噴流ノズルを、該吐出筒部の一部が上縁を含んで切り欠かれて低所のある低壁部分に置き換えた切欠き噴流ノズルとし、且つ、前記保持枠又は前記マスク治具に基部が固定されて、前記下端位置で、該基部から延在する立板部が前記低所を塞ぐシャッターを具備し、前記上端位置で、前記立板部が前記低壁部分よりも上方に離れて、前記吐出筒部内を上昇する溶融半田が前記低所から流出するようにしたことを特徴とする卓上半田付け装置にある。
本発明の第二態様は、第一態様で、吐出口が平面視矩形にして、その矩形の長辺側に、前記吐出筒部の上縁が高い高壁部分と該高壁部分の対向壁部分に前記低壁部分とを設けたことを特徴とする。本発明の第三態様は、第二態様で、高壁部分と低壁部分とを連結する前記矩形の短辺側に、上縁高さが該高壁部分と該低壁部分の中間になる中位壁部分が設けられたことを特徴とする。本発明の第四態様は、第一態様~第三態様で、切欠き噴流ノズルの吐出筒部が複数設けられ、且つ各吐出筒部の前記低所に対応する箇所に、前記保持枠又は前記マスク治具に前記基部が固定されて、前記下端位置で、該基部から延在する前記立板部が該低所を塞ぐシャッターがそれぞれ配設されることを特徴とする。本発明の第五態様は、第四態様で、保持枠に基部が固定された前記シャッターに係る前記立板部の板面が、側面視でその下端からなだらかに屈曲して外方に張り出す屈曲部分を下端部位に有して上方に延在し、前記上端位置から前記下端位置への下降で、該屈曲部分が該立板部を前記低壁部分の外側に案内ガイドして、該低壁部分を該立板部が摺動し、前記低所を塞ぐようにして前記低壁部分に当接することを特徴とする。
本発明の第六態様は、半田槽の上方に突出する噴流ノズルの吐出口から噴流する溶融半田に、保持枠が支えるマスク治具に設けた半田付け用の透孔が浸かる下端位置と、噴流する該溶融半田から前記マスク治具が上方へ離れた上端位置との間で、該保持枠を昇降させる昇降機構を備える卓上半田付け装置において、吐出筒部で前記吐出口を形成する前記噴流ノズルを、該吐出筒部の一部が上縁を含んで切り欠かれて低所のある低壁部分に置き換えた切欠き噴流ノズルとし、且つ、前記保持枠又は前記マスク治具に基部が固定されて、前記下端位置で、該基部から延在する立板部が前記低所を塞ぐシャッターを具備し、前記上端位置で、前記立板部が前記低壁部分よりも上方に離れて、前記吐出筒部内を上昇する溶融半田が前記低所から流出するようにした卓上半田付け装置を用いて、前記切欠き噴流ノズル内を前記吐出口に向かって上昇する半田液面周りの溶融半田が、前記低所から流出した後、前記シャッターが下端位置に達して前記低所を塞ぎ、該低所からの溶融半田の流出を止めて、溶融半田の液面が前記吐出口に向けて上昇するようにし、その後、該溶融半田が前記透孔に到達して被半田付け部品を半田付けすることを特徴とする卓上半田付け装置を用いた半田付け方法にある。本発明の第七態様は、第六態様で、溶融半田が前記透孔に到達して被半田付け部品を半田付けした後、前記低壁部分の上縁から前記シャッターを前記上端位置側へ離し、該上縁と前記吐出筒部内の半田液面間に在る溶融半田が該上縁を越えて該吐出筒部外へ流れ出るようにしてから、前記吐出筒部内の該溶融半田を下降させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法は、卓上装置にあって、噴流ノズルの吐出口に浮かぶドロス等の不純物を作業者が除去しなくても、半田付けの品質を良好に保って長時間にわたる半田付けの連続使用ができ、品質維持、歩留り向上に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の卓上半田付け装置の一形態で、その概略側面断面図である。
【
図4】
図3のマスク治具を取り除いた後の拡大平面図である。
【
図5】
図2の保持枠が下端位置にある断面図である。
【
図7】
図2のマスク治具の右端部周りの拡大図である。
【
図8】
図1の切欠き噴流ノズル周りの拡大図である。
【
図9】(イ)~(ハ)は噴流ノズル内を溶融半田が、時間経過で上昇する様子を示す説明断面図である。
【
図10】(ニ)は噴流ノズル内の溶融半田がコイルの半田付けする巻線に達した様子の説明断面図、(ホ)は巻線と端子との半田付けを終えた説明断面図である。
【
図11】コイルに代わる別態様図で、溶融半田にスルーホールが浸かった基板周りの説明断面図である。
【
図13】
図6に代わる他態様の切欠き噴流ノズルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法について詳述する。
図1~
図12は本発明の卓上半田付け装置(以下、単に「半田付け装置」ともいう。)の一形態で、
図1はその側面断面図、
図2は
図1のII-II線断面図、
図3は
図1のマスク治具周りの平面図、
図4は
図3のマスク治具を除いた
図3の平面図、
図5は
図2の保持枠が下端位置にある断面図、
図6は切欠き噴流ノズルの斜視図、
図7は
図2のマスク治具周りの拡大図、
図8は
図1の切欠き噴流ノズル周りの拡大図、
図9は噴流ノズル内を溶融半田が上昇する断面図、
図10は溶融半田がコイルの半田付けする断面図、
図11、
図12はコイルに代わる別態様図、
図13は
図6に代わる他態様の切欠き噴流ノズルの斜視図を示す。尚、図面を判り易くするため、発明要部を強調図示し、また断面表示のハッチングを一部省略すると共に、本発明に直接関係しない構成部分や部材等は省略する。
図2の半田槽の縦筒部と有底筒部は断面表示する。
【0011】
(1)卓上半田付け装置
卓上半田付け装置Pは、半田槽1と切欠き噴流ノズル2AとヒータHTとポンプ31と昇降機構4とシャッター6とを具備する(
図1)。
溶融半田Mをポンプ31で循環させる半田槽1が設けられ、該半田槽1の上方に突出する切欠き噴流ノズル2Aの吐出口22から噴流する溶融半田Mに、保持枠45が支えるマスク治具51に設けられた半田付け用の透孔510が浸かる下端位置と、噴流する溶融半田Mからマスク治具51が上方へ離れた上端位置との間で、保持枠45を昇降させる昇降機構4を備える卓上半田付け装置Pである。昇降機構4によって、マスク治具51に形成した半田付け用の透孔510が浸かる
図5の下端位置と、噴流する溶融半田の液面M1から離れた
図2の上端位置と、の間で保持枠45を昇降させる。上端位置で透孔510上に被半田付け部品たるワークの半田付け対象箇所が配されるようにして、マスク治具51に載せた半田付け対象箇所を下端位置へ下降させて半田付けし、半田付けの終了後に元の上端位置へと上昇させる。
本発明の半田付け装置Pは、起動スイッチS2の前に作業者が通常立って作業する
図1の側面断面図で、紙面左方を前方,前側、紙面右方を後方,後側、紙面上方を上方、紙面手前方向を右方、紙面奥方を左方、紙面左右横方向の線を含む紙面垂直面方向を水平方向という。
【0012】
ケーシング9は、
図1,
図2に示すような平面視矩形の箱形容器である。水平配設される底板90は、前立板91寄りに半田槽1が配され、該半田槽1と後立板92との間に図示しない仕切り壁で分割されたスペースを確保し、該スペースにポンプ31の駆動用モータ32が配される。前立板91,後立板92,両側立板93,94で底板90の周縁を囲って半田槽1,モータ32等を収容する。後立板92は高くし、その上縁で屈曲させて前方に上板95を延設し、さらに該上板95はその先で下降傾斜してモータ32を被う。該上板95からポンプ31の上方をカバーするポンプカバーが設けられる。一方、前立板91は上方部が後方傾斜して傾板部分となり、該傾板部分の上縁から水平鍔が後方に張り出す。前立板91の該水平鍔とポンプカバーの間を上面開口部とし、該開口部に半田槽1の噴流ノズル2が配される。
【0013】
半田槽1はケーシング9内にヒータHTで加熱した溶融半田Mを収容する容器である(
図1)。溶融半田Mを貯める槽本体を備え、さらに槽本体内の溶融半田Mをポンプ31で循環させ、この循環する溶融半田Mを吐出口22から噴流させるよう、横長筒部15と縦筒部16とを備える。槽本体は板状の底部10,前壁部11,後壁部12,両側壁部13からなる上面開口の方形箱容器とする。
横長筒部15は、
図1,
図2のごとく四角筒の有蓋有底筒部であり、その蓋部と底部に前壁部11,後壁部12の上縁から吊り下げた吊板部19の下端部が固着して、半田槽1内に横置きされる。前方にあたる蓋部寄り横長筒部15の上面に円形の吐出側口15bを設け、後方にあたる底部寄り横長筒部15の下面に吸込み側口15aを設ける。該吸込み側口15aの上方に在る横長筒部15の上面にはポンプ31用孔が形成される。
縦筒部16は四角筒の下部から横断面が一回り小さな横断面円形の有底筒体17が延在する。有底筒体17を吐出側口15bから横長筒部15内へ
図2のように挿着させて、縦筒部16が横長筒部15上に立設する。有底筒体17の筒側面には横長筒部15内と縦筒部16内とを導通させる導孔17aが設けられる。
【0014】
切欠き噴流ノズル2Aは、吐出口22を形成する吐出筒部23の上縁高さが同じになっていた従来の噴流ノズル2に係る該吐出筒部23の一部が、上縁23aを含んで切り欠かれて低所230を形成した平板状低壁部分232に置き換えられた低所230有り噴流ノズル2である(
図1,
図6)。
【0015】
本実施形態は、有蓋筒状の基端部21と、その上蓋部分に設けた開孔を取り囲んで
図2ごとく上方へ向け扇状に広げて延在し、さらに横幅を一定に保って垂直上方に延ばした吐出筒部23と、が一体化した噴流ノズル2である。基端部21を方形筒部にする一方、吐出筒部23は先端の吐出口22に向けて装置左右方向に口を大きく広げて、吐出口22を横長矩形とする(
図4)。吐出口22が左右方向に長くなり、マスク治具51にワーク(ここではモータコイル55、以下単に「コイル」という)を一度に複数セットできる。
図2の正面視で、前記縦筒部16に嵌着する角形基端部21の開口幅よりも吐出筒部23の上方側吐出口22に係る開口幅の方がラッパ状に広がるが、吐出口22周りは平面視矩形の短筒部分になっている。一方、
図4の平面視で見ると、基端部21の上板部分211でその前後方向中央域だけから吐出筒部23が上方に突出する。噴流ノズル2が前記縦筒部16の上端部分に下方側接続部となる基端部21を嵌めて取付けられ、吐出筒部23は、縦筒部16、横長筒部15に導通し、半田槽1の上方に吐出口22が突出するように設けられる。
【0016】
さらに、この噴流ノズル2の吐出口22を形成する吐出筒部23で、平面視矩形の長辺にあたる高壁部分231の上縁231aの高さが同じになっていた従来形噴流ノズル2に対し、前方側に位置した従来の高壁部分231を、その上縁を含んで切り欠いて低所230のある平板状低壁部分232に置き換えた切欠き噴流ノズルにする(
図6)。矩形吐出口22の長辺側に、吐出筒部23の上縁が高い高壁部分231と該高壁部分231の対向壁部分に低壁部分232とを設ける。従来形噴流ノズルから、吐出口22周りの吐出筒部23に係る前方側壁部分がその上縁を含めて下方に向かう壁部分を部分的に除去してなる低所230の在る低壁部分232に変更した切欠き噴流ノズルにしている。
詳しくは、後方側の高壁部分231に比べて、
図6のように前方側の低壁部分232を段差状に一段低くする。半田付けを行う際、溶融半田Mが噴流ノズルを上昇し、吐出口22に達した半田液面M1をそのまま半田付けに使用させるのではなく、吐出口22で噴流させる溶融半田Mが吐出筒部23内を上昇するのを利用して、一段低くした低壁部分232の低所230から、まずは半田液面M1に浮かぶドロスD等を含めた溶融半田Mを
図6の白抜き矢印のごとく吐出筒部23外へ流出させる。その後、綺麗な状態になった液面の溶融半田Mを半田付けに用いる。流出し、
図9(ロ)のように流し落された溶融半田M2,ドロスD等はオーバーフロー受皿18で受けて半田槽1に戻る。
尚、低壁部分232の左右両側は、高壁部分231の高さのままで僅かの横幅を確保した側壁代2321を残す。吐出口22周りの強度補強に加え、保持枠45の下端位置で、該側壁代2321とシャッター6が面接触することで、低所230を確実に塞ぐようにするためである(詳細後述)。
【0017】
また、吐出口22が平面視矩形の吐出筒部23で、その矩形の長辺側を高壁部分231と低壁部分232にするのに加え、ここでは、該高壁部分231と該低壁部分232とを連結する矩形の短辺側に、上縁高さが該高壁部分231と該低壁部分232の中間になる中位壁部分233を設けている(
図6)。中位壁部分233も、後方側の高壁部分231に比べて段差状に一段低くするが、その上縁233aは低所230をつくる低壁部分上縁232aよりは高く設定される。高壁部分上縁231aから中位壁部分上縁233aへと一段低くなる具体的な落差幅は、高壁部分上縁231aから低壁部分上縁232aへと一段低くなる落差幅が5mm~20mmあるのに比べると、0.5mm~2mmと小さい。
ちなみに、高壁部分231に比べて段差状に一段低くした中位壁部分233を設けるのは、吐出口22から噴流する溶融半田Mは透孔510を通って半田付けに用いる溶融半田量を超えるポンプ供給量にして半田不足にならないようにしているので、余分な溶融半田Mが中位壁部分上縁233aを越えて
図6の黒矢印のごとく吐出筒部23外へ流出可能にする趣旨である。
【0018】
ヒータHTは半田槽1内の溶融半田Mを加温して溶融維持する熱源で、ここでは、
図2のごとく半田槽1内の底部10寄り紙面垂直方向に二本配設する。
ポンプ31は半田槽1内の溶融半田Mを循環させるもので、本実施形態は、半田槽1内の後壁部12寄りにポンプ31を設置し、該ポンプ31を駆動するモータ32を半田槽1外で、ケーシング9内の後立板92寄りに設置する。モータ32に固着したプーリ34とポンプ31に固着したプーリ33とにベルト35で巻回し、モータ32の回転で、横長筒部15内に配されたポンプ31のインペラ31aを回転させ、切欠き噴流ノズルの吐出口22から溶融半田Mを噴流させる。
【0019】
こうして、前記ポンプ用孔15cにポンプ31の支軸を挿通させ、支軸先端部に取着したインペラ31aを横長筒部15内に配して、ポンプ31の作動により、吸込み側口15aから吸込んだ溶融半田Mを、
図1の黒矢印のごとく横長筒部15内,縦筒部16内を経て切欠き噴流ノズル2Aの吐出筒部23内を上昇し、吐出口22から溶融半田Mを噴流させる。
しかるに、これまでは上昇してきた半田液面M1を含む溶融半田Mでそのまま半田付けが行われてきたが、吐出筒部23内を上昇する溶融半田Mは、吐出口22で噴流状態にさせても、その液面M1に浮んだドロスD等の不純物がとどまる場合がある。
そこで、本発明は液面M1に浮んだドロスD等の不純物及び該液面を含む一部の溶融半田Mを、低壁部分232の低所230から流し落し、綺麗になった液面M1の溶融半田Mをワークの半田付け用とする。保持枠45の下端位置下で半田付けを行う。そして、半田付けする間の必要量を超える溶融半田Mは中位壁部分233を越えて吐出筒部23外へ流し落すしくみとする。
【0020】
昇降機構4は、アクチュエータたるシリンダ41と保持枠45とを備える。ケーシング9内の両側壁部13,14近くにエアシリンダで構成したシリンダ41がそれぞれ設けられる。両シリンダ41が起立し、シリンダ本体から上方へ向けて伸びるロッド42の先端に、水平配設される保持枠45を固定し、該保持枠45を昇降させる昇降機構4とする(
図2,
図5)。ケーシング9がつくる前記上面開口部上で、該上面開口部よりも外形が若干小さめの保持枠45が上下動する(
図1,
図2)。
ポンプ31が作動中で、昇降機構4のロッド42が退動すると、保持枠45及び詳細後述するシャッター6が下端位置に達して止まり、吐出口22から噴流する溶融半田Mにマスク治具51に設けた半田付け用の透孔510が浸かる。そして、透孔510では、吐出口22から溶融半田Mが噴流する状況になれば、半田液面M1の上昇によって透孔510の上孔口にセットしたワークに係るコイル55の端子552と巻線551とが半田付けされる。一方、ロッド42が進出すると、吐出口22で噴流する溶融半田Mからマスク治具51が上方へ離れ、保持枠45,マスク治具51が上端位置に達して止まる。
【0021】
シャッター6は、マスク治具51又は保持枠45に基部61が固定されて、該基部61から上方へ延在する平らな板面を有する立板部62が、前記下端位置にて、該板面側で低所230を塞ぐように低壁部分232の外面にあてがって当接し、低所230からの溶融半田Mの流出を止める遮蔽部材である。保持枠45が下端位置に達したところで、保持枠45に基部61を固定一体化するシャッター6も下端位置に達しており、吐出口22に達した溶融半田Mが低所230から流れ出ていたのをシャッター6が止める。ここで、「溶融半田Mが低所230から流れ出ていたものを止める」は、完全に止めることを要せず、流れ出ていた量を減らして、溶融半田の液面M1を吐出口22へと上昇させることができれば止めるとみなす。
一方、半田付けを完了させれば、保持枠45と共にシャッター6が低壁部分232の上縁232aよりも上方の初期状態の上端位置に離れて、次の半田付けに向けて、低所230から吐出筒部23外へ溶融半田Mが流出するのを許容する。
【0022】
本実施形態のシャッター6は、側面視L字状部材で、保持枠45の枠開口450を跨いで、下面側保持枠45に水平部の基部61が止具69で固着される(
図4)。マスク治具51の下面51b側には、
図5のように低壁部分232に対応した領域に低所230の高さに合わせた深さの窪み515が設けられている。基部61から側面視L字状に上方へ延びる略方形の立板部62に係る低板部分62Lの先端水平縁が、保持枠45に取付けたマスク治具51の下面51bに当接又は近接し、且つ該窪み515の領域では、立板部62の高さを一段高くした高板部分62Hが窪み515の底面に当接又は近接するようにしている(
図7)。
さらに、保持枠45に基部61が固定されたシャッター6に係る立板部62の板面が、側面視でその板面下端からなだらかに屈曲して外方に張り出す屈曲部分621を下端部位に有して上方に延在する(
図8)。前記上端位置から前記下端位置へのシャッター6の下降時に、該屈曲部分621が立板部62を低壁部分232の外側へと案内ガイドすることによって、低壁部分232及び側壁代2321を立板部62が円滑に摺動し、低所230を塞ぐようにして低壁部分232に当接できる。
尚、シャッター6を機能させるため、保持枠45にスペーサ7を介在させてマスク治具51を取付けているが(
図2,
図3)、これに代え、スペーサ7を一体化させた保持枠45にしてもよいし、スペーサ7を一体化させたマスク治具51にしてもよい。また、基部61を保持枠45に取付けて、該基部61から先端が上方に向かう立板部62を有するシャッター6としたが、マスク治具51の下面51bに基部61を取付けて、先端が下方に向かう立板部62を有するシャッター6とすることもできる。斯かる場合、この下方に向かう平らな立板部62の先端部位は、対面する低壁部分232に対し、側面視J字状として低壁部分232の外方へ曲げる屈曲部分を設けるとより好ましい。
【0023】
また、本半田付け装置Pは、ポンプ31による液面上昇中の溶融半田Mが吐出口22から噴流するが、その半田液面M1に浮かぶドロスD等を含む溶融半田Mを予め吐出筒部23外へ流し落してから、次のステップになる昇降機構4の保持枠45が下端位置に達して、低所230をシャッター6で塞ぐ。その後、溶融半田Mの液面M1が低壁部分上縁232aよりも上昇し、マスク治具51の透孔510に到達して半田付けの所要時間浸かった後、次のステップのシャッター6が上動し、次いで、ポンプ31を停止させるコントローラたる制御手段を備えている。
詳しくは、起動スイッチオンによってポンプ31及び昇降機構4が起動し、ポンプ31による液面上昇中の溶融半田Mが吐出口22へ向かうが、半田液面M1に浮かぶドロスD等を含むか含まないかにかかわらず、吐出筒部23内を液面上昇する溶融半田Mの最初の部分を低所230から流し落した後に、保持枠45が下端位置に到達する。そして、流し落した後の溶融半田の液面M1がシャッター6で塞がれた吐出筒部23内を上昇し、マスク治具51の透孔510を浸して、ドロスD等が取り除かれた綺麗な半田液面M1を含む溶融半田Mで半田付けを所要時間行う。その後、半田付けが完了して保持枠45が上昇するにあたって、半田付けで新らたに生じたドロスD等の不純物が半田液面M1に浮かぶ場合がある。そこで、シャッター6が低壁部分上縁232aから先に離れて上昇し、シャッター6が開いた低所230からこのドロスD等が流出する若干の時間をとった後にポンプ31を停止させ、切欠き噴流ノズル2A内を半田液面M1が下降する。予め定めたこれらの手順にしたがって制御の各工程を逐次進めていくシーケンス制御を採用している。
【0024】
かくのごとく、本発明は、上記構成の切欠き噴流ノズル2Aとシャッター6を付加する半田付け装置Pにして、半田付けする箇所の溶融半田MはドロスD等の不純物を効率良く除去して半田付けの連続運転が可能な所望の半田付け装置Pになっている。
さらに、本発明は、
図13のような基端部21から吐出筒部23が複数(ここでは二個)立設した他態様の切欠き噴流ノズル2Aにすることも可能である。斯かる場合、半田槽1の上方に突出する切欠き噴流ノズル2Aの吐出筒部23が複数設けられ、且つ各吐出筒部23の低所230に対応する箇所に、保持枠45又はマスク治具51に基部61が固定されて、下端位置で、該基部61から延在する立板部62が低所230を塞ぐシャッター6がそれぞれ配設される。そして、上端位置では、各立板部62が各低壁部分232よりも上方に離れており、吐出筒部23内を上昇する溶融半田Mが、それぞれの低所230から流出するのを許容する。本実施形態の
図8に示した一個の切欠き噴流ノズルのものに比べ、半田付けの生産性を大幅に上げることができる。
【0025】
(2)卓上半田付け装置を用いた半田付け方法
次に、前記半田付け装置Pを用いた半田付けの一方法及びその作用について述べる。
半田付け装置Pは、既述のごとく槽内にヒータHTで加熱した溶融半田Mを収容する半田槽1が設けられ、且つ溶融半田Mをポンプ31で循環させ、吐出口22の低壁部分232を越えたところで、溶融半田Mを吐出筒部23外へ流し落す低所230を備えた切欠き噴流ノズル2Aが半田槽1の上方に突出する。且つ、低壁部分232の低所230を塞ぐシャッター6を備えて、シャッター6で低所230を塞いで吐出口22から溶融半田Mを噴流させ、この噴流する溶融半田Mに、保持枠45で支えるマスク治具51の透孔510が浸かってワークの半田付けが行われる下端位置と、噴流する溶融半田Mからマスク治具51,シャッター6が離れた上端位置との間で、保持枠45を昇降させる昇降機構4を具備する装置である。
【0026】
本半田付け方法は、予め電源スイッチS1をオンにし、ヒータHTによって半田槽1に溶融半田Mが貯留された
図2の初期状態とする。
前処理として、
図1のワークたるコイル55のマスク治具51へのセットと、ワークの半田付け対象箇所にフラックス塗布をする。
図9(ハ)のごとく被半田付け部品になるコイル55の端子552に巻線551を巻いた半田付け対象箇所がマスク治具51の透孔510にセットされる。尚、本発明は透孔510周りのマスク治具51は凹所512になっていて、該凹所512も透孔510に含むものとみなす。半田付け対象になる巻線551は被覆銅線である。
具体的には、被半田付け物がセットされたマスク治具51を、図示しないフラックス塗布装置(特許第5421955号)の上面開口上に置いて、フラックス塗布する。該塗布装置を用いて、半田付け対象箇所にフラックス塗布を行う。続いて、フラックス塗布完了のコイル55を載せたマスク治具51を、ロボットで保持枠45にセットして
図2の状態にする。
【0027】
その後、作業者が起動スイッチS2を押し、制御手段,昇降機構4等によって経時的動作を加えて、コイル55の端子552と該端子552に巻いている巻線551との半田付けを行う。その動作工程と作用を以下に説明する。
まず、起動スイッチS2を入れ、ポンプ31及び昇降機構4を起動させる。ポンプ31の起動によって、
図2の状態から
図1の白抜き矢印のごとく溶融半田Mが切欠き噴流ノズル2A内を上昇する。溶融半田Mが上昇する噴流アップ方式になるので、マスク治具51と溶融半田の液面M1間に在る空気をうまく追い出す。吐出口22にやってきた溶融半田の液面M1には、
図9(イ)のようにドロスD等の不純物が浮かんでいる場合がある。この半田液面M1を半田付け箇所へ導くと半田付け不良になる確率が高い。そこで、切欠き噴流ノズル2A内を吐出口22に向かって上昇する半田液面M1周りの溶融半田Mを、低所230から流出させる。しかる後、シャッター6が下端位置に達して低所230を塞ぐ。低所230からの溶融半田Mの流出を止めて、再び溶融半田の液面M1が吐出口22に向けて上昇するように設定する。その後、該溶融半田Mが透孔510に到達して被半田付け部品を半田付けする。
本発明は
図9(イ)の黒矢印で示した吐出筒部23内を上昇する溶融半田Mが低壁部分上縁232aにさしかかった際、ドロスD等とこれを浮かべる溶融半田Mとを、
図9(ロ)のように低所230から吐出筒部23外へ流し落す時間をとって、半田液面M1をドロスD等のない正常な状態に変える。
【0028】
半田液面M1を正常状態に変えた後、ロッド42の退動によって保持枠45,マスク治具51が下降し、その後、保持枠45に固定されたシャッター6が低所230を遮蔽して、低所230からの溶融半田Mの流出を止める。シャッター6が、低所230の両側に在る低壁部分232に係る側壁代2321に面接触で当接して低所230を塞ぐ。面接触によってシャッター6と側壁代2321の間を通過する摩擦抵抗が大になり、溶融半田Mの漏れ出しが抑えられる。低所230からの溶融半田Mの流出が止まることによって、
図9(ハ)のごとく低壁部分232よりも高い所にまで溶融半田Mの上昇が可能になり、低壁部分232を越える高さに溶融半田の液面M1が上昇し、さらに透孔510に入り込んで半田液面M1が透孔510の孔上口に近づく。
ここで、前記マスク治具51が下降し、その後のシャッター6による低所230の遮蔽、該遮蔽後の溶融半田Mの上昇、及び半田液面M1が透孔510の孔上口に近づく間に、プリヒートが行なわれる。フラックスを活性化させ、またワークが温められて、半田付けの熱衝撃を和らげて半田付け工程を向上させる。
【0029】
続いて、半田液面M1が透孔510の孔上口に達した溶融半田Mは、その熱で、透孔510の孔上口にセットした巻線551に被覆されたエナメルを焼いてから、巻線551とコイル55の端子552とを半田付けする(
図10のニ)。半田付けが完了すると、先にロッド42が伸長し、
図10(ハ)の白抜き矢印のごとくマスク治具51及びシャッター6が上昇して上端位置へ向かう。少し遅れてポンプ31が停止して、同図の黒矢印のように半田液面M1が下降していく。低所230を遮蔽していたシャッター6が先に上昇することによって、半田付けを行った際に出た半田液面M1に浮かぶドロスDやフラックス等は低壁部分上縁232aよりも上方にあった溶融半田Mと一緒に、低所230から切欠き噴流ノズル外へ流し落される。
溶融半田Mが透孔510に到達して、被半田付け部品の半田付けが行われる。半田付け後は、低壁部分232の上縁232aからシャッター6を上端位置側へ離し、該上縁232aと吐出筒部23内の半田液面M1間に在る溶融半田Mが該上縁232aを越えて吐出筒部23外へ流れ出るようにしてから、吐出筒部23内の溶融半田Mを下降させる。
図10(ホ)の符号Fは半田付けを終えた硬化半田を示す。
ロッド42の伸長により保持枠45,マスク治具51,シャッター6が上端位置に達したところで、昇降機構4の信号を切って一連の半田付け工程は終了し、半田付けを終えたコイル55がロボットで取り出される。また、前記ポンプ31の停止によって、溶融半田の液面M1は
図2の初期状態に戻る。
【0030】
そして、連続運転の場合は、上記一連の半田付け工程が繰り返されていく。一連の半田付け工程が繰り返されても、半田付け対象箇所に半田付けする直前の段階で、
図9(ロ)のように半田液面M1に浮かぶドロスD等の不純物が低所230から流出し、綺麗な半田液面M1を保って半田付けが行われ、さらに半田付けが終わった後も、半田付けで生まれたドロスDやフラックス汚れ等を低所230から切欠き噴流ノズル2A外へと追い出して、溶融半田Mが下降し、次の半田付けに備える。
後続の半田付けに対し、切欠き噴流ノズル2A内の溶融半田の液面M1が、綺麗な状態に継続維持されるので、半田付けの良好な品質を保って連続運転が可能な所望の半田付け方法となる。
【0031】
尚、
図9,
図10は模式図であり、端子552にコイル55を巻いている半田付け対象箇所を、透孔510よりも高い位置に図示したが、実際は透孔510の孔上口に半田付け対象箇所が接する状態にセットしている。
また、
図11,
図12は
図9,
図10に代わる他態様図で、基板52に実装された電子部品53をワークとしている。マスク治具51に設けられている透孔510が浸かる下端位置で、電子部品53のリード531を挿入したスルーホール520も一緒に浸かって、半田付けが行われる。ポンプ31が停止して半田液面M1が下降すると、電子部品53の基板下面52b側に覗くリード531に所望の半田付けが行われた
図12の実装基板製品に仕上がっている。リード531と半田が馴染んで、良好なフィレットFが形成される。符号54は収容ケースを示す。
【0032】
(3)効果
このように構成した卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法は、小型の卓上形タイプでありながら、半田付けの品質を良好に保って長時間にわたる半田付けの連続使用ができる。
半田付けは、継続することにより半田の酸化物であるドロスDが発生し、溜まっていくが、たとえドロスDやフラックス、さらにエナメル残留物等の不純物が半田液面M1に浮かぶようなことがあっても、新たな半田付けするにあたっては、半田付けに用いる溶融半田の液面M1を綺麗な状態をつくってから半田付けするので、半田付け不良が起こらない。
【0033】
本半田付け装置Pは、切欠き噴流ノズル2Aとシャッター6と昇降機構4を備えて、上端位置にて、立板部62が低壁部分232の上縁よりも上方に離れている場合、低壁部分232を越えて流出する溶融半田Mを許容する。したがって、半田付けする際、切欠き噴流ノズル2A内を上昇してきた溶融半田の液面M1にドロスD等の不純物が浮かんでいても、該不純物はこれを浮かべる液面M1周りの溶融半田Mと共に、低所230から切欠き噴流ノズル2A外へ排出される。低壁部分232を吐出筒部23の前方側に設けているので、作業者はドロスD等が順調に排出されているのを簡単に視認できる。その後、昇降機構4の働きにより保持枠45が下端位置に移動し、低所230をシャッター6で塞ぐ。低所230が塞がれることによって、排出後の綺麗になった溶融半田の液面M1が低壁部分上縁232aを越えて上昇し、透孔510を通って、マスク治具51にセットしたワークの半田付け対象箇所を、ドロスD等のない溶融半田Mで良好な半田付けできる。
切欠き噴流ノズル2Aの吐出筒部23内には、不純物を含む溶融半田Mが排出された後の正常な溶融半田Mが準備されて、これがそのまま半田付けに用いられるので、半田付け不良にならない。
【0034】
しかも、半田付けの工程は、一回の半田付けが終了する毎に
図9(イ)から
図10(ホ)の工程が繰り返されるので、新たな半田付けに対して吐出口22へと上昇してきた新たな溶融半田Mの液面部分は、
図9(ロ)のように液面M1にドロスD等が浮かんでいるかどうかに限らず、低所230から吐出筒部23外へ流出させて取り除くので、半田付けに用いる
図10の溶融半田Mは常に正常なものとなり、半田付けを長時間に亘って連続運転しても、品質確保された半田付け製品を造り続けることができる。
【0035】
加えて、半田付けを終了し、低所230を塞いでいたシャッター6を上昇させるにあたり、半田付けを終えた半田液面M1が低壁部分上縁232aよりも高い場所に在る間に、シャッター6が低壁部分上縁232aから離れる制御手段を採用している。そのため、低所230から半田付けして発生したドロスDやフラックス等の浮遊不純物をいち早く排出できる。
【0036】
さらに、半田付けに使用される綺麗な半田液面M1を有する溶融半田Mにする、第一の半田液面M1が吐出筒部23を上昇する過程での低所230から切欠き噴流ノズル2A外へのドロスD等を含む溶融半田Mの排出、第二の半田液面M1が半田付けを終了した後、吐出筒部23内を下降する過程での低所230からドロスD等を含む溶融半田Mの吐出筒部23外への排出が、昇降機構4と制御手段だけでなし得るので、極めて優れものの発明になっている。第一の排出が、ポンプ31で溶融半田Mを上昇させる力をうまく利用しており、第二の排出が位置エネルギを利用するものであり、ドロスD等の不純物除去に新たな動力源を要しない。
作業者等の人の手を介さずして、半田付け装置P自身が、溶融半田Mの吐出口22へ向かって半田付けを行う第一の動作過程で、また半田付けが終わって溶融半田Mが
図2の初期状態へと吐出筒部23内を下降する第二の動作過程で、吐出筒部23内の半田液面M1を綺麗な状態に戻すことができ、極めて有益である。品質安定した半田付け製品を長時間に亘って造り続けることができ、生産性向上に貢献する。これまで、吐出口22に浮かぶドロスD等の除去を作業者が時間毎に実施してきたのが、例えば一日の作業終了時に半田槽1に流れ落ちたドロスD等の不純物を除去するだけで足りる。生産性向上のみならず、作業負担軽減にも大いに貢献する。
【0037】
さらにいえば、半田槽1の上方に突出する切欠き噴流ノズル2Aの吐出筒部23が複数設けられ、且つ各吐出筒部23の低部に対応する箇所に、シャッター6がそれぞれ設けられると、吐出筒部23が複数に増える分だけ吐出口22も複数に増えるので、一つの吐出筒部23が半田付けする被半田付け部品数の複数倍の被半田付け部品に半田付けでき、生産性を大幅アップできる。前述のごとく、半田付けするのに用いる吐出口22の半田液面M1上のドロスDを、半田付け装置P自身が人の手を借りることなく自律的に取り除くことができ、省力化につながる。これにとどまらず、本卓上半田付け装置Pはコンパクトであるため、複数台並べれば、設置スペースをさほどとらずに大量生産の自動化も可能になる。
【0038】
さらに付加すれば、吐出口22が平面視矩形にして、高壁部分231と低壁部分232とを連結する矩形の短辺側に、上縁高さが高壁部分231と低壁部分232の中間になる中位壁部分233が設けられると、半田付け時に、半田付けに要する量を超える溶融半田Mを中位壁部分上縁233aから吐出筒部23外へ排出できる。中位壁部分233が噴流する溶融半田Mの逃げ場をつくる。半田付けの量が足らないと半田付け不良ができるが、半田付けの必要量だけを供給するのは難しい。中位壁部分233を設けることによって、ポンプ31による透孔510への溶融半田Mの供給量に幅をもたせることができるので、半田付け装置Pの運転がし易く、半田付け製品を安定生産できる。
【0039】
また、立板部62の板面が、側面視でその下端から屈曲して外方に張り出す屈曲部分621を下端部位に有して上方に延在し、上端位置から下端位置への下降で、該屈曲部分621が立板部62を低壁部分232の外側に案内ガイドして、低壁部分232を該立板部62が摺動し、低所230を塞ぐようにして低壁部分232に当接すると、昇降機構4の昇降が繰り返し行われても、上端位置から下端位置への下降の際に立板部62が低壁部分上縁232aにぶつかって故障する事態にならない。屈曲部分621の案内ガイドによって低所230を立板部62で確実に塞ぐことができる。
このように本卓上半田付け装置及びこれを用いた半田付け方法は、上述した数々の優れた効果を発揮し、多大な効を奏する。
【0040】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。半田槽1,切欠き噴流ノズル2A,吐出筒部23,ポンプ31,昇降機構4,マスク治具51,シャッター6等の形状,大きさ,個数,材料,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0041】
1 半田槽
2A 切欠き噴流ノズル
22 吐出口
23 吐出筒部
230 低所
231 高壁部分
232 低壁部分
4 昇降機構
45 保持枠
51 マスク治具
510 透孔
53 電子部品(ワーク,被半田付け部品)
55 コイル(ワーク,被半田付け部品)
6 シャッター
61 基部
62 立板部
M 溶融半田
M1 半田液面(液面)
P 卓上半田付け装置(半田付け装置)