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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047492
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20240329BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153145
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 克成
(72)【発明者】
【氏名】竹井 啓起
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EC04
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】より簡単な構成で異音の発生を防ぐことができる乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シート10は、挿通孔30が形成された左右一対のサイドフレーム24と、左右一対のサイドフレーム24の挿通孔30に左右のフック部58が各々挿通されて左右一対のサイドフレーム24に支持されたシートスプリング40と、シート表皮に覆われ、左右一対のサイドフレーム24を含むシートバックフレーム16に取り付けられるシートバックパッドと、シートスプリング40におけるスプリング支持部材44に設けられ、シートバックパッドと干渉してシートスプリング40をシート後方側へ押し下げる干渉部60と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔が形成された左右一対のサイドフレームと、
該左右一対のサイドフレームの前記挿通孔に左右のフック部が各々挿通されて前記左右一対のサイドフレームに支持されたシートスプリングと、
シート表皮に覆われ、前記左右一対のサイドフレームを含むシートバックフレームに取り付けられるシートバックパッドと、
前記シートスプリングにおけるスプリング支持部材に設けられ、前記シートバックパッドと干渉して前記シートスプリングをシート後方側へ押し下げる干渉部と、
を備えた乗物用シート。
【請求項2】
前記干渉部は、前記スプリング支持部材に設けられた凸部により構成されている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記シートスプリングは、
前記スプリング支持部材の一部を構成し、シート上下方向に延在して、シート幅方向の両側部に各々配置される左右一対のサイドワイヤと、
該左右一対のサイドワイヤ間に架設され、シート上下方向に所定間隔で配設された複数のメインワイヤと、
シート幅方向の両側部に各々配置され、一端が前記サイドワイヤに接続され、他端に前記フック部が設けられて前記サイドフレームに接続される固定用フックワイヤと、を有し、
前記干渉部が、前記左右一対のサイドワイヤに各々形成されている請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記固定用フックワイヤは、シート幅方向の両側部において各々、シート上下方向に複数設けられており、
前記干渉部は、シート下方側の2つの前記固定用フックワイヤの間に設けられている請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記干渉部は、前記サイドワイヤと一体的に形成されている請求項3に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示されるように、従来の乗物用シート100では、骨格を形成するシートフレーム120とシートスプリング140との組付け時に、サイドフレーム124に設けられた挿通孔130に、シートスプリング140の略U形状のフック部158が引っ掛けられている。しかしながら、従来の乗物用シート100においては、挿通孔130にフック部158を挿通させた際に、挿通孔130の内径と、フック部158の外径との間に隙間が生じるため、異径差によるガタが生じてしまう。そのため、例えば乗員がシートに着座した際に、乗員がシートバックにもたれ掛かると、フック部158が動くことにより異音(メタル同士の軋み音)が発生する場合がある。下記特許文献1には、挿通孔130に樹脂製ブッシュを嵌着して、フック部158と挿通孔130の縁部とが直接摺接するのを防止することにより異音の発生を防止した乗物用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-132447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1においては異音の発生を防止するために、樹脂製ブッシュを使用しており、樹脂製ブッシュは複雑な構造を要するため、生産性の点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、より簡単な構成で異音の発生を防ぐことができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の乗物用シートは、挿通孔が形成された左右一対のサイドフレームと、該左右一対のサイドフレームの前記挿通孔に左右のフック部が各々挿通されて前記左右一対のサイドフレームに支持されたシートスプリングと、シート表皮に覆われ、前記左右一対のサイドフレームを含むシートバックフレームに取り付けられるシートバックパッドと、前記シートスプリングにおけるスプリング支持部材に設けられ、前記シートバックパッドと干渉して前記シートスプリングをシート後方側へ押し下げる干渉部と、を備える。
【0007】
本発明の第1の態様の乗物用シートによれば、左右一対のサイドフレームには挿通孔が形成されており、この挿通孔には、シートスプリングの左右のフック部が各々挿通されている。これにより、シートスプリングが左右一対のサイドフレームに支持されている。このシートスプリングのスプリング支持部材には、シートバックパッドと干渉してシートスプリングをシート後方側へ押し下げる干渉部が設けられている。そのため、シートバックフレームにシートバックパッドが取り付けられると、干渉部がシートバックパッドと干渉してシートスプリングがシート後方側へ押し下げられるので、フック部もシート後方側へ押し下げられる。これにより、フック部は常にシート後方側へ押し下げられてテンションが掛かった状態となるため、挿通孔とフック部との間に生じるガタが抑制されて、異音の発生を防ぐことができる。
【0008】
また、干渉部は、複雑な構造でなくてもシートバックパッドと干渉可能な構成であれば良いため、比較的簡単な構成とすることができる。これらにより、本発明の第1の態様の乗物用シートは、より簡単な構成で異音の発生を防ぐことができる。
【0009】
本発明の第2の態様の乗物用シートは、第1の態様において、前記干渉部が、前記スプリング支持部材に設けられた凸部により構成されている。
【0010】
本発明の第2の態様の乗物用シートによれば、干渉部がスプリング支持部材に設けられた凸部により構成されているので、この凸部にシートバックパッドを当接させることにより、スプリング支持部材を含むシートスプリングを押し下げることができる。
【0011】
本発明の第3の態様の乗物用シートは、第2の態様において、前記シートスプリングが、前記スプリング支持部材の一部を構成し、シート上下方向に延在して、シート幅方向の両側部に各々配置される左右一対のサイドワイヤと、該左右一対のサイドワイヤ間に架設され、シート上下方向に所定間隔で配設された複数のメインワイヤと、シート幅方向の両側部に各々配置され、一端が前記サイドワイヤに接続され、他端に前記フック部が設けられて前記サイドフレームに接続される固定用フックワイヤと、を有し、前記干渉部が、前記左右一対のサイドワイヤに各々形成されている。
【0012】
本発明の第3の態様の乗物用シートによれは、干渉部が、シート幅方向の両端部に各々配置される左右一対のサイドワイヤの各々に形成されているので、シート幅方向の両端部において干渉部をシートバックパッドに当接させることができる。そのため、シート幅方向の両側部に各々配置された固定用フックワイヤのフック部を、略同じテンションで押し下げることができる。
【0013】
本発明の第4の態様の乗物用シートは、第3の態様において、前記固定用フックワイヤは、シート幅方向の両側部において各々、シート上下方向に複数設けられており、前記干渉部は、シート下方側の2つの前記固定用フックワイヤの間に設けられている。
【0014】
本発明の第4の態様の乗物用シートによれば、干渉部が、シート下方側の2つの固定用フックワイヤの間に設けられているので、乗員が着座した際に、乗員の腰部により押圧される可能性が高い箇所に干渉部が設けられていることになる。そのため、干渉部は、乗員の腰部からの押圧力とシートバックパッドからの押圧力を受けることにより、より強いテンションによりシートスプリングを押し下げることができる。
【0015】
本発明の第5の態様の乗物用シートは、第3の態様において、前記干渉部が、前記サイドワイヤと一体的に形成されている。
【0016】
本発明の第5の態様の乗物用シートによれば、干渉部がサイドワイヤと一体的に形成されているので、干渉部に要する部品点数を減らすことができる。これにより、コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の乗物用シートによれば、異音の発生を防ぐことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る乗物用シートの一部を示す背面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る干渉部を含む主要部を示す斜視図である。
図3】シートスプリングを示す斜視図である。
図4図1のA-A線における断面の一部を示す断面図である。
図5】従来の乗物用シートの図2に対応する主要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図4を用いて、本発明の実施形態に係る乗物用シートとしての車両用シート10について説明する。なお、図1図4に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LH、及び矢印Wは、それぞれ車両用シート10の前方向、上方向、左方向、及び幅方向(左右方向)を示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合は、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト(図示省略)と、を備えている。図2に示されるように、シートバック14は、シートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム16を備えている。このシートバックフレーム16は、シートクッション12の後側に設けられている。
【0021】
図2に示されるように、シートバックフレーム16の下端部は、シートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム(図示省略)の後端部に対して、周知のリクライニング機構Rを介して回動可能に連結されている。このシートバックフレーム16は、シートクッションフレームと共にシートフレーム20を構成している。なお、このシートバックフレーム16には、図示しないシート表皮によって覆われたシートバックパッド22(図1参照)が取り付けられる構成になっている。
【0022】
シートバックフレーム16は、左右一対のサイドフレーム24を備えている。これらの左右のサイドフレーム24は、板金によって形成されており、シート幅方向に互いに対向するように配置されている。なお、図2においては、右側のサイドフレーム24のみが図示されているが、左側にも同様の構成のサイドフレーム24が設けられている。これらの左右のサイドフレーム24の下端部は、板金製のロアパネル26によってシート幅方向に連結されている。また、左右のサイドフレーム24の上端部は、金属パイプによって形成されたアッパフレーム(図示省略)によってシート幅方向に連結されており、板金製のアッパパネル(図示省略)によってシート幅方向に連結されている。
【0023】
図2に示されるように、左右のサイドフレーム24には、前端がシート内側に略直角に折り曲げられた前端部24Aが形成されている。この前端部24Aにはサイドフレーム24のシート上下方向に沿って、複数の円形状の挿通孔30が形成されている。本実施形態においては、一例として、左右のサイドフレーム24の各々において、最も下方に位置する挿通孔30を第1挿通孔32とし、第1挿通孔32の上側に隣接する挿通孔30を第2挿通孔34とする。
【0024】
また、左右のサイドフレーム24には、第2挿通孔34よりも上方側に第3挿通孔36が形成されている。第3挿通孔36は、第1長孔36Aと第2長孔36Bとにより構成されている。第2長孔36Bは第1長孔36Aよりも長い孔で構成されており、第2長孔36Bは第1長孔36Aの上方に位置する。なお、第1長孔36A及び第2長孔36Bは、その長軸方向がサイドフレーム24の長手方向に沿うように配置されている。これらの第1~第3挿通孔32、34、36は、それぞれ後述するシートスプリング40のフック部58の位置に対応している。
【0025】
シートスプリング40は、スプリングマットやフラットマットとも称されるものであり、左右のサイドフレーム24の間に配置されている。図3に示されるように、シートスプリング40は、シートバック14の上下方向に延在するスプリング支持部材42を備えている。スプリング支持部材42は、左右一対のサイドワイヤ44と、センタワイヤ46とを備えている。
【0026】
左右のサイドワイヤ44は、シートバック14の上下方向を長手とし、シートバック14の左右両側部に配置されている。センタワイヤ46は、シートバック14の上下方向を長手とし、左右一対のサイドワイヤ44の間において、左右方向の略中央に配置される。センタワイヤ46はサイドワイヤ44よりも短く形成されており、センタワイヤ46の上端がサイドワイヤ44の上端よりも下方に位置するように配置されている。
【0027】
これらのサイドワイヤ44及びセンタワイヤ46、すなわちスプリング支持部材42の間には、複数のメインワイヤ48が架設されている。複数のメインワイヤ48は、シート幅方向を長手とし、シートバック14の上下方向に並んで配置されており、一端部が一方のサイドワイヤ44に固定され、他端部が他方のサイドワイヤ44に固定されている。センタワイヤ46には、左右方向に貫通する貫通孔46Aが設けられており、メインワイヤ48はこの貫通孔46Aに挿通される。なお、本実施形態においては、一例として、最も上方に位置するメインワイヤ48は、センタワイヤ46を介さずに、左右のサイドワイヤ44に架設されている。
【0028】
図3に示されるように、メインワイヤ48は、シート上下方向に凹凸を有するように折り曲げられており、本実施形態においては、一例として、1つの凹部48Aと2つの凸部48Bとを有している。凹部48Aと凸部48Bは各々台形状に形成されており、具体的には、サイドワイヤ44とセンタワイヤ46との間の略中央に凸部48Bの中央が位置するように折り曲げられており、凹部48Aの中央がセンタワイヤ46を挿通するように折り曲げられている。
【0029】
左右のサイドワイヤ44の上端部には、シート内方側へ向けて略L字状に曲げられた上端フック部44Aが形成されている。左右の上端フック部44Aは、アッパパネル(図示省略)に設けられた左右の挿通孔(図示省略)に挿通されている。これにより、左右のサイドワイヤ44の上端部がアッパパネルに連結されている。
【0030】
また、左右のサイドワイヤ44の上下方向中間部には、左右のサイドフレーム24に設けられた第1挿通孔32、第2挿通孔34、及び第3挿通孔36(図2参照)に対応する位置に、各々固定用フックワイヤ50が取り付けられている。本実施形態においては、第1挿通孔32に対応する固定用フックワイヤ50を第1固定用フックワイヤ52、第2挿通孔34に対応する固定用フックワイヤ50を第2固定用フックワイヤ54、及び第3挿通孔36に対応する固定用フックワイヤ50を第3固定用フックワイヤ56とする。
【0031】
固定用フックワイヤ50は、ワイヤが曲げ加工されて形成されたものであり、シートスプリング40の一部を構成している。本実施形態においては、一例として、固定用フックワイヤ50はメインワイヤ48と一体的に形成されている。すなわち、メインワイヤ48と固定用フックワイヤ50とは、1本のワイヤにより構成されており、左右のサイドワイヤ44に一周巻き付けられることにより各サイドワイヤ44に連結されている。本実施形態においては、一例として、最も下方のメインワイヤ48のシート幅方向の両側部に第1固定用フックワイヤ52が、下から3番目のメインワイヤ48のシート幅方向の両側部に第2固定用フックワイヤ54が設けられている。また、最も上方のメインワイヤ48のシート幅方向の両側部に第3固定用フックワイヤ56が設けられている。
【0032】
各固定用フックワイヤ50の端部には、U字状に曲げられたフック部58が設けられている。各フック部58は、左右のサイドフレーム24に形成された挿通孔30に各々挿通して、引っ掛けられている。具体的には、第1固定用フックワイヤ52及び第2固定用フックワイヤ54のフック部58が、各々第1挿通孔32及び第2挿通孔34に引っ掛けられている。また、図2に示されるように、第3固定用フックワイヤ56のフック部58は、先端が第2長孔36Bから入り第1長孔36Aから出るようにして第3挿通孔36に引っ掛けられている。これにより、左右のサイドワイヤ44が3つの固定用フックワイヤ50、すなわち第1固定用フックワイヤ52、第2固定用フックワイヤ54、及び第3固定用フックワイヤ56を介して左右のサイドフレーム24に連結されている。
【0033】
なお、固定用フックワイヤ50が設けられていないメインワイヤ48においては、両端部が各々左右のサイドワイヤ44に一周巻き付けられることにより各サイドワイヤ44に連結されている。
【0034】
本実施形態において特徴的なのは、図3に示されるように、左右一対のサイドワイヤ44に、シートバックパッド22(図1参照)と干渉してシートスプリング40をシート後方側へ押し下げる干渉部60が設けられていることである。干渉部60は、シート前方に突出する凸部により構成されている。本実施形態においては一例として、干渉部60は、サイドワイヤ44と一体的に形成されており、具体的には、サイドワイヤ44をシート前方側に湾曲するように折り曲げることにより形成されている。
【0035】
また、干渉部60は、本実施形態においては一例として、第1固定用フックワイヤ52と第2固定用フックワイヤ54との間に設けられており、さらに具体的には、第1固定用フックワイヤ52と、第1固定用フックワイヤ52が設けられたメインワイヤ48の上方に隣接するメインワイヤ48との間に設けられている。
【0036】
図4に示されるように、サイドワイヤ44の直径をD1、サイドワイヤ44のシート後端から干渉部60のシート前端までの距離をD2とすると、干渉部60は、一例として、サイドワイヤ44直径D1が3.6mmのときに上記距離D2が13.6mmとなる程度の凸部により構成されている。
【0037】
(作用及び効果)
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
上記構成の車両用シート10では、左右一対のサイドフレーム24には挿通孔30が形成されており、この挿通孔30には、シートスプリング40の左右のフック部58が各々挿通されている。これにより、シートスプリング40が左右一対のサイドフレーム24に支持されている。しかも、このシートスプリング40のスプリング支持部材42のサイドワイヤ44には、シートバックパッド22と干渉してシートスプリング40をシート後方側へ押し下げる干渉部60が設けられている。
【0039】
そのため、図4に示されるように、シートバックフレーム16にシートバックパッド22が取り付けられると、干渉部60がシートバックパッド22と干渉して図中の矢印F方向に押し下げられるので、シートスプリング40も矢印F方向に押し下げられる。そして、このようにシートスプリング40が押し下げられると、フック部58も矢印F方向に押し下げられる。これにより、フック部58は常にシート後方に押し下げられてテンションが掛かった状態となるため、挿通孔30とフック部58との間に生じるガタが抑制されて、異音(メタル同士の軋み音)の発生を防ぐことができる。
【0040】
また、干渉部60は、複雑な構造でなくてもシートバックパッド22と干渉可能な構成であれば良いため、比較的簡単な構成とすることができる。上記構成の車両用シート10は、サイドワイヤ44を折り曲げることにより干渉部60が構成されているので、樹脂製ブッシュの構成と比較して、より簡単な構成で異音の発生を防ぐことができる。
【0041】
また、上記構成の車両用シート10では、干渉部60がサイドワイヤ44に設けられた凸部により構成されているので、この凸部にシートバックパッド22を当接させることにより、サイドワイヤ44を含むシートスプリング40を押し下げることができる。
【0042】
また、上記構成の車両用シート10では、干渉部60が、シート幅方向の両端部に各々配置される左右一対のサイドワイヤ44の各々に形成されているので、シート幅方向の両端部において干渉部60をシートバックパッド22に当接させることができる。そのため、シート幅方向の両側部に各々配置された固定用フックワイヤ50のフック部58を、略同じテンションで押し下げることができる。
【0043】
また、上記構成の車両用シート10では、干渉部60が、シート下方側の2つの固定用フックワイヤ、すなわち第1固定用フックワイヤ52と第2固定用フックワイヤ54との間に設けられているので、乗員が着座した際に、乗員の腰部により押圧される可能性が高い箇所に干渉部60が設けられていることになる。そのため、干渉部60は、乗員の腰部からの押圧力とシートバックパッド22からの押圧力を受けることにより、より強いテンションによりシートスプリング40を押し下げることができる。
【0044】
また、上記構成の車両用シート10では、干渉部60は、第1固定用フックワイヤ52と、第1固定用フックワイヤ52と第2固定用フックワイヤ54との間に位置するメインワイヤ48との間に設けられているので、乗員が着座した際に、乗員の腰部により押圧される可能性がより高い箇所に干渉部60が設けられていることになる。そのため、干渉部60は、乗員の腰部からの押圧力とシートバックパッド22からの押圧力を受けることにより、より強いテンションによりシートスプリング40を押し下げることができる。
【0045】
また、上記構成の車両用シート10では、干渉部60がサイドワイヤ44と一体的に形成されているので、干渉部60に要する部品点数を減らすことができる。これにより、コストを抑制することができる。
【0046】
(実施形態の補足説明)
上記実施形態では、干渉部60はサイドワイヤ44に形成されているが、本発明はこれに限らず、スプリング支持部材42であるセンタワイヤ46に形成された構成にしてもよいし、サイドワイヤ44とセンタワイヤ46の両方に形成された構成にしてもよい。
【0047】
上記実施形態では、シートスプリング40は、スプリング支持部材42として、センタワイヤ46が設けられた構成としたが、本発明はこれに限られず、本発明はセンタワイヤ46がない構成にも適用することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、干渉部60はサイドワイヤ44と一体的に形成されているが、本発明はこれに限らず、サイドワイヤ44と別体で形成された構成にしてもよい。この場合、干渉部60は、ワイヤにより構成されていてもよいし、ワイヤ以外の部材により構成されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、干渉部60は凸部により構成されているが、本発明はこれに限られない。例えば、干渉部60がスプリング支持部材42(サイドワイヤ44又はセンタワイヤ)と別体で形成されている場合には、例えばバネ等の弾性部材により構成されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、干渉部60は、第1固定用フックワイヤ52と、第1固定用フックワイヤ52が設けられたメインワイヤ48の上方に隣接するメインワイヤ48との間に設けられているが、本発明はこれに限られない。干渉部60は、第2固定用フックワイヤ54と、第1固定用フックワイヤ52が設けられたメインワイヤ48の上方に隣接するメインワイヤ48との間に設けられていてもよいし、第2固定用フックワイヤ56と第3固定用フックワイヤ56との間に設けられていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、固定用フックワイヤ50は、メインワイヤ48と一体的に形成されているが、本発明はこれに限られず、別体に形成されていてもよい。この場合、固定用フックワイヤ50のサイドワイヤ44側の端部は、サイドワイヤ44に一周巻き付けられることにより各サイドワイヤ44に連結することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、固定用フックワイヤ50は、最も下方のメインワイヤ48、下から3番目のメインワイヤ48、及び最も上方のメインワイヤ48に設けられているが、本発明はこれに限られず、何れのメインワイヤ48に設けられていてもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、車両用シート10に対して本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明は、航空機用のシートや船舶用のシート等、乗物用のシートに対して適用することができる。
【0054】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【0055】
<付記>
(第1の態様)
挿通孔が形成された左右一対のサイドフレームと、
該左右一対のサイドフレームの前記挿通孔に左右のフック部が各々挿通されて前記左右一対のサイドフレームに支持されたシートスプリングと、
シート表皮に覆われ、前記左右一対のサイドフレームを含むシートバックフレームに取り付けられるシートバックパッドと、
前記シートスプリングにおけるスプリング支持部材に設けられ、前記シートバックパッドと干渉して前記シートスプリングをシート後方側へ押し下げる干渉部と、
を備えた乗物用シート。
(第2の態様)
前記干渉部は、前記スプリング支持部材に設けられた凸部により構成されている第1の態様に記載の乗物用シート。
(第3の態様)
前記シートスプリングは、
前記スプリング支持部材の一部を構成し、シート上下方向に延在して、シート幅方向の両側部に各々配置される左右一対のサイドワイヤと、
該左右一対のサイドワイヤ間に架設され、シート上下方向に所定間隔で配設された複数のメインワイヤと、
シート幅方向の両側部に各々配置され、一端が前記サイドワイヤに接続され、他端に前記フック部が設けられて前記サイドフレームに接続される固定用フックワイヤと、を有し、
前記干渉部が、前記左右一対のサイドワイヤに各々形成されている第1の態様又は第2の態様に記載の乗物用シート。
(第4の態様)
前記固定用フックワイヤは、シート幅方向の両側部において各々、シート上下方向に複数設けられており、
前記干渉部は、シート下方側の2つの前記固定用フックワイヤの間に設けられている第3の態様に記載の乗物用シート。
(第5の態様)
前記干渉部は、前記サイドワイヤと一体的に形成されている第3の態様又は第4の態様に記載の乗物用シート。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用シート(乗物用シート)
16 シートバックフレーム
22 シートバックパッド
24 サイドフレーム
30 挿通孔
32 第1挿通孔(挿通孔)
34 第2挿通孔(挿通孔)
36 第3挿通孔(挿通孔)
40 シートスプリング
42 スプリング支持部材
44 サイドワイヤ(スプリング支持部材)
48 メインワイヤ
50 固定用フックワイヤ
52 第1固定用フックワイヤ(固定用フックワイヤ)
54 第2固定用フックワイヤ(固定用フックワイヤ)
56 第3固定用フックワイヤ(固定用フックワイヤ)
58 フック部
60 干渉部
図1
図2
図3
図4
図5