(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047496
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】学習装置、情報処理装置、基板処理装置、基板処理システム、学習方法および処理条件決定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240329BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240329BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/02 Z
H01L21/304 643A
G06N20/00
H01L21/304 648H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153152
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 真裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 義徳
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD13
5F043DD23
5F043DD27
5F043EE07
5F043EE08
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB44
5F157CD27
5F157CD32
5F157CD33
5F157CE07
5F157CE82
5F157CF02
5F157CF44
5F157CF52
(57)【要約】
【課題】 基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させる。
【解決手段】 学習装置は、基板処理装置を時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で駆動して基板に形成された膜の処理を行った後に、膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する実験データ取得部261と、変動条件と処理条件のうち変動条件以外の他の条件とを、基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する変換部と、処理状態データと処理条件に対応する第一処理量とを含む学習用データを機械学習して第二処理量を推測する学習モデルを生成する予測器生成部265と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜が形成された基板に処理液を供給するノズルを移動させ前記基板に処理液を供給する基板処理装置を時間の経過に伴って前記基板に対して変動する前記ノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で駆動して前記基板に形成された前記膜の処理を行った後に、前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する実験データ取得部と、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する変換部と、
前記処理状態データと前記処理条件に対応する前記第一処理量とを含む学習用データを機械学習して前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備えた学習装置。
【請求項2】
前記処理の状態は、前記基板の温度であり、
前記変換部は、前記変動条件、処理液の温度、前記ノズルから吐出される処理液の流量および前記基板の回転速度に基づいて、前記複数の分割領域それぞれにおける前記処理の状態として基板の温度を決定する、請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記処理の状態は、前記ノズルから処理液が供給されることにより前記基板に形成される液膜の厚さであり、
前記変換部は、前記変動条件と、前記ノズルから吐出される処理液の流量および前記基板の回転速度に基づいて、前記複数の分割領域それぞれにおける前記処理の状態として前記基板に形成される液膜の厚さを決定する、請求項1または2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記モデル生成部は、前記変動条件に代えて前記処理状態データを含む学習用データを機械学習する、請求項2に記載の学習装置。
【請求項5】
前記複数の分割領域それぞれの前記基板の径方向の長さは、前記ノズルの内径以上である、請求項1に記載の学習装置。
【請求項6】
基板処理装置を管理する情報処理装置であって、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された前記基板に処理液を供給することにより、前記基板に形成された前記膜の処理をし、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する変換部と、
前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、
前記学習モデルは、前記基板処理装置が前記基板に形成された前記膜の処理をした処理条件に含まれる前記変動条件を、前記変換部と同じ変換をした処理状態データと前記基板処理装置により前記膜の処理をされた前記基板に形成された前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、
前記処理条件決定部は、前記変換部により仮の変動条件が変換された処理状態データを前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される前記第二処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、情報処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理装置を備えた基板処理装置。
【請求項8】
基板を処理する基板処理装置を管理する基板処理システムであって、
学習装置と情報処理装置とを備え、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された基板に処理液を供給することにより、前記基板に形成された前記膜の処理をし、
前記学習装置は、前記基板処理装置を前記処理条件で駆動して前記基板に形成された前記膜の処理を行った後に、前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する実験データ取得部と、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する第1変換部と、
前記第1変換部により前記変動条件が変換された処理状態データと前記処理条件に対応する前記第一処理量とを含む学習用データを機械学習して、前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備え、
前記情報処理装置は、前記第1変換部と同じ第2変換部と、
前記学習装置により生成された前記学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、
前記処理条件決定部は、前記第2変換部により仮の変動条件が変換された変換結果を前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される前記第二処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、基板処理システム。
【請求項9】
膜が形成された基板に処理液を供給するノズルを移動させ前記基板に前記処理液を供給する基板処理装置を時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で駆動して前記基板に形成された前記膜の処理を行った後に、前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する処理と、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する処理と、
前記処理状態データと前記処理条件に対応する前記第一処理量とを含む学習用データを機械学習して前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成する処理と、をコンピューターに実行させる学習方法。
【請求項10】
基板処理装置を管理するコンピューターで実行される処理条件決定方法であって、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された前記基板に処理液を供給することにより、前記基板に形成された前記膜の処理をし、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する処理と、
前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理と、を含み、
前記学習モデルは、前記基板処理装置が前記基板に形成された前記膜の処理をした処理条件に含まれる前記変動条件を、前記変換する処理と同じ変換をした処理状態データと前記基板処理装置により前記膜の処理をされた前記基板に形成された前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、
前記処理条件を決定する処理は、前記変換する処理により仮の変動条件が変換された処理状態データを前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される前記第二処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、処理条件決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、情報処理装置、基板処理装置、基板処理システム、学習方法および処理条件決定方法に関し、基板処理装置による処理条件に従った処理をシミュレートする学習モデルを生成する学習装置、その学習モデルを用いて処理条件を決定する情報処理装置、その情報処理装置を備えた基板処理装置、その学習装置と情報処理装置とを備えた基板処理システム、学習装置で実行される学習方法および情報処理装置で実行される処理条件決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、洗浄プロセスがある。洗浄プロセスでは、基板に薬液を塗布するエッチング処理によって、基板に形成されている膜の膜厚調整が行なわれる。この膜厚調整においては、基板の面が均一となるようにエッチング処理すること、あるいは、基板の面をエッチング処理によって平坦にすることが重要である。エッチング液をノズルから基板の一部に吐出する場合、ノズルを基板に対して径方向に移動させる必要がある。しかし、エッチング処理は、膜が処理される処理量がノズルを移動させる動作の違いによって変化する複雑なプロセスである。また、エッチング処理により膜が処理される処理量は、基板を処理した後に判明する。このため、ノズルを移動させる動作を設定する作業は、技術者による試行錯誤が必要である。ノズルの最適な動作を決定するまでに、多大なコスト及び時間を要する。
【0003】
特開2021-108367号公報には、「入力」を処理量(エッチング量)とし、「出力」をスキャン速度情報とする学習用データで機械学習させた学習済モデルを用いて、目標とする処理量からスキャン速度情報を決定する装置が記載されている。この技術によれば、目標とする処理量から1つのスキャン速度情報が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、ノズルを移動させる動作をより複雑にすることが望まれる。ノズルを移動させる動作は、時間の経過に伴って変化する位置を示す時系列データである。ノズルを移動させる動作を複雑にすると、サンプリング間隔が短くなるので、時系列データの次元数が多くなる。一般に、学習用データの次元数が多くなると、機械学習に必要なデータ数が指数関数的に増加してしまう。このため、学習用データの次元数が多くなることにより、機械学習によって得られる学習モデルを最適化するのが困難となる。また、エッチング処理は、複雑なプロセスなので、目標とする処理量に適したノズルの動作は1つとは限らず、複数存在する場合がある。
【0006】
本発明の目的の1つは、基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置、学習方法および基板処理システムを提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置、基板処理装置、基板処理システムおよび処理条件決定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従う学習装置は、膜が形成された基板に処理液を供給するノズルを移動させ基板に処理液を供給する基板処理装置を時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で駆動して基板に形成された膜の処理を行った後に、膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する実験データ取得部と、変動条件と処理条件のうち変動条件以外の他の条件とを、基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する変換部と、処理状態データと処理条件に対応する第一処理量とを含む学習用データを機械学習して基板処理装置により膜の処理をされる前の基板に形成された膜について膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備える。
【0009】
本発明の他の局面に従う情報処理装置は、基板処理装置を管理する情報処理装置であって、基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された基板に処理液を供給することにより、基板に形成された膜の処理をし、変動条件と処理条件のうち変動条件以外の他の条件とを、基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する変換部と、基板処理装置により膜の処理をされる前の基板に形成された膜について膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを用いて、基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、学習モデルは、基板処理装置が基板に形成された膜の処理をした処理条件に含まれる変動条件を、変換部と同じ変換をした処理状態データと基板処理装置により膜の処理をされた基板に形成された膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、処理条件決定部は、変換部により仮の変動条件が変換された処理状態データを学習モデルに与えて学習モデルにより推測される第二処理量が許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する。
【0010】
本発明のさらに他の局面に従う基板処理システムは、基板を処理する基板処理装置を管理する基板処理システムであって、学習装置と情報処理装置とを備え、基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された基板に処理液を供給することにより、基板に形成された膜の処理をし、学習装置は、基板処理装置を処理条件で駆動して基板に形成された膜の処理を行った後に、膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する実験データ取得部と、変動条件と処理条件のうち変動条件以外の他の条件とを、基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する第1変換部と、第1変換部により変動条件が変換された処理状態データと処理条件に対応する第一処理量とを含む学習用データを機械学習して、基板処理装置により膜の処理をされる前の基板に形成された膜について膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備え、情報処理装置は、第1変換部と同じ第2変換部と、学習装置により生成された学習モデルを用いて、基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、処理条件決定部は、第2変換部により仮の変動条件が変換された変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される第二処理量が許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する。
【0011】
本発明のさらに他の局面に従う学習方法は、膜が形成された基板に処理液を供給するノズルを移動させ基板に処理液を供給する基板処理装置を時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で駆動して基板に形成された膜の処理を行った後に、膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する処理と、変動条件と処理条件のうち変動条件以外の他の条件とを、基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する処理と、処理状態データと処理条件に対応する第一処理量とを含む学習用データを機械学習して基板処理装置により膜の処理をされる前の基板に形成された膜について膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成する処理と、をコンピューターに実行させる。
【0012】
本発明のさらに他の局面に従う処理条件決定方法は、基板処理装置を管理するコンピューターで実行される処理条件決定方法であって、基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された基板に処理液を供給することにより、基板に形成された膜の処理をし、変動条件と処理条件のうち変動条件以外の他の条件とを、基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する処理と、基板処理装置により膜の処理をされる前の基板に形成された膜について膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを用いて、基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理と、を含み、学習モデルは、基板処理装置が基板に形成された膜の処理をした処理条件に含まれる変動条件を、変換する処理と同じ変換をした処理状態データと基板処理装置により膜の処理をされた基板に形成された膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、処理条件を決定する処理は、変換する処理により仮の変動条件が変換された処理状態データを学習モデルに与えて学習モデルにより推測される第二処理量が許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する。
【発明の効果】
【0013】
基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置、学習方法および基板処理システムを提供することができる。
【0014】
また、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置、基板処理装置、基板処理システムおよび処理条件決定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。
【
図4】本発明の本実施の形態の1つにおける基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。
【
図5】ノズルの基板に対する相対位置の変化を説明するための図である。
【
図6】ノズルの動作パターンの一例を示す図である。
【
図9】分割領域において予測される時間の経過に伴って変化する基板温度変化の一例を示す図である。
【
図11】予測器生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図13】処理状態データ生成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】分割領域において予測される時間の経過に伴って変化する基板上のエッチング液の膜厚変化の一例を示す図である。
【
図15】追加学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板(半導体ウェハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0017】
1.基板処理システムの全体構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。
図1の基板処理システム1は、情報処理装置100、学習装置200および基板処理装置300を含む。学習装置200は、例えばサーバであり、情報処理装置100は、例えばパーソナルコンピューターである。
【0018】
学習装置200および情報処理装置100は、基板処理装置300を管理するために用いられる。なお、学習装置200および情報処理装置100が管理する基板処理装置300は、1台に限定されるものではなく、基板処理装置300の複数を管理してもよい。
【0019】
本実施の形態に係る基板処理システム1において、情報処理装置100、学習装置200および基板処理装置300は、互いに有線または無線の通信線または通信回線網により接続される。情報処理装置100、学習装置200および基板処理装置300は、それぞれがネットワークに接続され、互いにデータの送受信が可能である。ネットワークは、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)が用いられる。また、ネットワークは、インターネットであってもよい。また、情報処理装置100と基板処理装置300とは、専用の通信回線網で接続されてもよい。ネットワークの接続形態は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0020】
なお、学習装置200は、基板処理装置300および情報処理装置100と、必ずしも通信線または通信回線網で接続される必要はない。この場合、基板処理装置300で生成されたデータが記録媒体を介して学習装置200に渡されてもよい。また、学習装置200で生成されたデータが記録媒体を介して情報処理装置100に渡されてもよい。
【0021】
基板処理装置300には、図示しない表示装置、音声出力装置および操作部が設けられる。基板処理装置300は、基板処理装置300の予め定められた処理条件(処理レシピ)に従って運転される。
【0022】
2.基板処理装置の概要
基板処理装置300は、制御装置10と、複数の基板処理ユニットWUを備える。制御装置10は、複数の基板処理ユニットWUを制御する。複数の基板処理ユニットWUは、膜が形成された基板Wに一定の流量の処理液を供給することにより基板を処理する。本実施の形態において、処理対象の基板Wは、直径300mmを有するが、本発明は、これに限定されるものではない。処理液はエッチング液を含み、基板処理ユニットWUはエッチング処理を実行する。エッチング液は、薬液である。エッチング液は、例えば、フッ硝酸(フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸とエチレングリコールとの混合液)、又は、燐酸(H3PO4)である。
【0023】
基板処理ユニットWUは、スピンチャックSCと、スピンモータSMと、ノズル311と、ノズル移動機構301と、を備える。スピンチャックSCは、基板Wを水平に保持する。基板Wは、スピンモータSMの第1回転軸AX1と基板Wの中心とが一致するようにスピンチャックSCに保持される。スピンモータSMは、第1回転軸AX1を有する。第1回転軸AX1は、上下方向に延びる。スピンチャックSCは、スピンモータSMの第1回転軸AX1の上端部に取り付けられる。スピンモータSMが回転すると、スピンチャックSCが第1回転軸AX1を中心として回転する。スピンモータSMは、ステッピングモータである。スピンチャックSCに保持された基板Wは、第1回転軸AX1を中心として回転する。このため、基板Wの回転速度は、ステッピングモータの回転速度と同じである。なお、スピンモータの回転速度を示す回転速度信号を生成するエンコーダを設ける場合、エンコーダにより生成される回転速度信号から基板Wの回転速度が取得されてもよい。この場合、スピンモータSMは、ステッピングモータ以外のモータを用いることができる。
【0024】
ノズル311は、基板Wにエッチング液を供給する。ノズル311は、図示しないエッチング液供給部からエッチング液が供給され、回転中の基板Wに向けてエッチング液を吐出する。
【0025】
ノズル移動機構301は、略水平方向にノズル311を移動させる。具体的には、ノズル移動機構301は、第2回転軸AX2を有するノズルモータ303と、ノズルアーム305と、を有する。ノズルモータ303は、第2回転軸AX2が略鉛直方向に沿うように配置される。ノズルアーム305は、直線状に延びる長手形状を有する。ノズルアーム305の一端は、ノズルアーム305の長手方向が第2回転軸AX2とは異なる方向となるように、第2回転軸AX2の上端に取り付けられる。ノズルアーム305の他端に、ノズル311がその吐出口が下方を向くように取り付けられる。
【0026】
ノズルモータ303が動作すると、ノズルアーム305は第2回転軸AX2を中心として水平面内で回転する。これにより、ノズルアーム305の他端に取り付けられたノズル311は、第2回転軸AX2を中心として水平方向に移動する(旋回する)。ノズル311は、水平方向に移動しながら基板Wに向けてエッチング液を吐出する。ノズルモータ303は、例えば、ステッピングモータである。
【0027】
制御装置10は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリを含み、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、基板処理装置300の全体を制御する。制御装置10は、スピンモータSMおよびノズルモータ303を制御する。
【0028】
学習装置200は、基板処理装置300から実験データが入力され、実験データを用いて学習モデルを機械学習し、学習済の学習モデルを、情報処理装置100に出力する。
【0029】
情報処理装置100は、学習済の学習モデルを用いて、基板処理装置300がこれから処理する予定の基板に対して、基板を処理するための処理条件を決定する。情報処理装置100は、決定された処理条件を基板処理装置300に出力する。
【0030】
図2は、情報処理装置の構成の一例を示す図である。
図2を参照して、情報処理装置100は、CPU101、RAM(ランダムアクセスメモリ)102、ROM(リードオンリメモリ)103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F(インターフェイス)107により構成される。CPU101、RAM102、ROM103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F107はバス108に接続される。
【0031】
RAM102は、CPU101の作業領域として用いられる。ROM103にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置104は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、プログラムを記憶する。プログラムは、ROM103または他の外部記憶装置に記憶されてもよい。
【0032】
記憶装置104には、CD-ROM109が着脱可能である。CPU101が実行するプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM109に限られず、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU101がネットワークに接続されたコンピューターからプログラムをダウンロードして記憶装置104に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピューターがプログラムを記憶装置104に書込みするようにして、記憶装置104に記憶されたプログラムをRAM102にロードしてCPU101で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU101により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0033】
操作部105は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。使用者は、操作部105を操作することにより、情報処理装置100に所定の指示を与えることができる。表示装置106は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、使用者による指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入出力I/F107は、ネットワークに接続される。
【0034】
図3は、学習装置の構成の一例を示す図である。
図3を参照して、学習装置200は、CPU201、RAM202、ROM203、記憶装置204、操作部205、表示装置206および入出力I/F207により構成される。CPU201、RAM202、ROM203、記憶装置204、操作部205、表示装置206および入出力I/F207はバス208に接続される。
【0035】
RAM202は、CPU201の作業領域として用いられる。ROM203にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置204は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、プログラムを記憶する。プログラムは、ROM203または他の外部記憶装置に記憶されてもよい。記憶装置204には、CD-ROM209が着脱可能である。
【0036】
操作部205は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。入出力I/F207は、ネットワークに接続される。
【0037】
3.基板処理システムの機能構成
図4は、本発明の本実施の形態の1つにおける基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。
図4を参照して、基板処理装置300が備える制御装置10は、基板処理ユニットWUを制御して、処理条件に従って基板Wを処理する。処理条件は、予め定められた処理時間の間に基板Wを処理する条件である。処理時間は、基板に対する処理に対して定められる時間である。本実施の形態において、処理時間は、基板Wにノズル311がエッチング液を吐出している間の時間である。
【0038】
処理条件は、本実施の形態においては、エッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量、基板Wの回転速度、ノズル311と基板Wとの相対位置を含む。処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む。本実施の形態において、変動条件は、ノズル311と基板Wとの相対位置である。相対位置は、ノズルモータ303の回転角度で示される。処理条件は、時間の経過に伴って変動しない固定条件を含む。本実施の形態において、固定条件は、エッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量、基板Wの回転速度である。
【0039】
学習装置200は、学習用データを学習モデルに学習させて、処理条件からエッチングプロファイルを推測する推論モデルを生成する。以下、学習装置200が生成する推論モデルを予測器という。
【0040】
学習装置200は、実験データ取得部261と、第1変換部263と、予測器生成部265と、予測器送信部267と、を含む。学習装置200が備える機能は、学習装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された学習プログラムを実行することにより、CPU201により実現される。
【0041】
実験データ取得部261は、基板処理装置300から実験データを取得する。実験データは、基板処理装置300が実際に基板Wを処理する場合に用いられる処理条件と、基板Wに形成された膜の処理前後の膜厚特性とを含む。膜厚特性は、基板Wに形成される膜の基板Wの径方向に異なる複数の位置それぞれにおける膜厚で示される。
【0042】
変動条件は、時間の経過に伴って変化するノズル311の基板Wに対する相対位置を含む。基板Wは、第1回転軸AX1を中心に回転し、ノズル311は、第2回転軸AX2を中心に回転する。このため、ノズル311と基板Wとの相対位置の変化は、ノズル311の位置の変化で示される。ノズル311の位置は、ノズルモータ303の回転角度により定まる。また、ノズルモータ303の回転する角度の範囲は、所定範囲に制限される。さらに、処理時間は、予め定めた期間である。本実施の形態において、処理時間は60秒である。
【0043】
図5は、ノズルの基板に対する相対位置の変化を説明するための図である。
図5を参照して、スピンチャックSCに保持された基板Wに対するノズル311の相対位置の変化が示される。ノズル311は、スピンチャックSCに保持された基板Wの上方の領域を移動する。ノズル311は第2回転軸AX2を中心に回転するので、ノズル311が移動する軌跡は円弧である。ノズル311が移動する軌跡はスピンチャックSCに保持された基板Wの中心を示す基板中心OPを通る。このため、ノズル311は、基板Wの径方向において基板中心OPから周縁部に渡って移動する。ここでは、ノズル311が移動する軌跡は、その一端が基板Wの周縁部より内側の動作端部EP1で示され、その他端が基板Wの周縁部より内側の動作端部EP2で示される。ノズル311が動作端部EP1から基板中心OPに移動する走査が矢印a1で示され、ノズル311が基板中心OPから動作端部EP2に移動する走査が矢印a2で示され、ノズル311が動作端部EP2から基板中心OPに移動する走査が矢印a3で示され、ノズル311が基板中心OPから動作端部EP1に移動する走査が矢印a4で示される。
【0044】
図6は、ノズルの動作パターンの一例を示す図である。
図6において、縦軸に基板Wに対するノズル311の相対位置が示され、横軸に経過時間(秒)が示される。本実施の形態においては、ノズル311を基板Wに対して移動させるノズル動作を開始してから終了するまでの走査期間は、処理時間に等しい。上述したように処理時間が60秒に設定されているので、ノズルの動作パターンは、0~60秒の期間の相対位置が示される。ノズルの相対位置は、基板中心OPをゼロとし、基板中心OPから動作端部EP1までの範囲は負の値で示され、基板中心OPから動作端部EP2までの範囲は正の値で示される。基板Wは、直径300mmを有するので、基板中心OPから動作端部EP1,EP2までの距離は、±150mm以下に設定される。ここでは、基板中心OPから動作端部EP1までの距離は-147mmに設定され、基板中心OPから動作端部EP2までの距離は+147mmに設定される。ノズル311が基板中心OPに位置する場合におけるノズル311の相対位置が0で示され、ノズル311が動作端部EP1に位置する場合におけるノズル311の相対位置が-147mmで示され、ノズル311が動作端部EP2に位置する場合におけるノズル311の相対位置が147mmで示される。
【0045】
図6に示すノズルの動作パターンは、動作端部EP1と動作端部EP2との間を5往復する走査として示される。ノズルの動作パターンにおいて、第1回目の往復走査に対して、
図5に示した矢印a1~a4で示される走査に対応する相対位置の部分に同じ符号が付されて示される。
【0046】
図7は、膜厚特性の一例を示す図である。
図7を参照して、横軸に基板の半径方向の位置を示し、縦軸に膜厚を示す。横軸の原点が基板の中心を示す。基板処理装置300により処理される前の基板Wに形成された膜の膜厚が実線で示される。基板処理装置300により処理条件に従ってエッチング液を塗布する処理が実行されることにより、基板Wに形成される膜の膜厚が調整される。基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された膜の膜厚が点線で示される。
【0047】
基板処理装置300により処理される前の基板Wに形成された膜の膜厚と基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された膜の膜厚との差が処理量(エッチング量)である。処理量は、基板処理装置300によりエッチング液を塗布する処理により減少した膜の厚さを示す。処理量の径方向の分布を、エッチングプロファイルという。エッチングプロファイルは、基板Wの径方向における複数の位置それぞれにおける処理量を含む。
【0048】
また、基板処理装置300により形成される膜厚は、基板Wの全面において均一であることが望まれる。このため、基板処理装置300により実行される処理に対して、目標となる目標膜厚が定められる。目標膜厚は、一点鎖線で示される。乖離特性は、基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された膜の膜厚と目標膜厚との差分である。乖離特性は、基板Wの径方向における複数の位置それぞれにおける差分を含む。
【0049】
図4に戻って、第1変換部263は、実験データ取得部261から入力された実験データの処理条件に含まれる変動条件と基板Wの回転速度とエッチング液の温度とエッチング液の流量とを、基板の処理の状態を示す処理状態データに変換する。ここでは、変動条件は、処理時間の間に時間の経過に伴って変動するノズルの基板Wに対する相対位置である。第1変換部263は、処理状態データを予測器生成部265に出力する。
【0050】
ここで、処理状態データについて説明する。一般的に、基板Wの膜の除去量は、基板Wに対する処理の状態に応じて変化する。例えば、基板Wの温度の大きさに応じて基板Wの膜の除去量が変化する。基板Wの温度が高い場合、基板Wの膜の除去量が大きくなる。一方、基板Wの温度が低い場合、基板Wの膜の除去量が小さくなる。基板Wの温度は、基板Wに供給されるエッチング液の温度によって変化する。基板Wのうちエッチング液が供給される部分の温度がエッチング液の温度と同じかそれに近い温度になり、基板Wのうちエッチング液が供給されない部分の温度はエッチング液の温度よりも低くなる。
【0051】
処理状態データは、基板Wの上面を基板中心OPを中心とする同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す。処理状態は、基板の温度である。第1変換部263は、変動条件、基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量を用いて、複数の分割領域毎の基板Wの温度を示す圧縮データを生成する。
【0052】
図8は、分割領域を説明するための図である。
図8を参照して、基板Wの上面を、基板中心OPを中心とする複数の同心円で分割した15の分割領域b1~b15が示される。分割領域b15は円であり、分割領域b1~b14は円環である。複数の分割領域b1~b14それぞれの基板Wの径方向の長さは同じである。分割領域b1~b14それぞれの基板の径方向の長さは、外周の半径と内周の半径との差である。分割領域b15の半径は、複数の分割領域b1~b14それぞれの基板Wの径方向の長さと同じである。ここでは、分割領域b15の半径は10mmであり、分割領域b1~b14それぞれの外周と内周の半径の差は10mmである。分割領域b1~b15それぞれの基板の径方向の長さは、ノズル311の内径以上であることが好ましい。
【0053】
ノズル311は、第2回転軸AX2を中心にノズルアーム305を介して回転するので、回転中心が基板中心OPと異なる。ノズル311が移動する移動範囲は、動作端部EP1から基板中心OPを通って動作端部EP2まで移動する間に描く軌跡であり、円弧である。
【0054】
ノズル311が移動する移動範囲は、ノズル311が基板を処理する処理期間(走査期間)にノズル311が移動する軌跡である。移動範囲は、分割領域b1~b15によって29個の移動区間d1~d29に分割される。移動区間d1~d29は、ノズル311が動作端部EP1と動作端部EP2との間を移動する間の軌跡のうち分割領域b1~b15それぞれを横切る区間である。例えば、移動区間d1~d14は、ノズル311が動作端部EP1と基板中心OPとの間を移動する間に分割領域b1~b14を横切る軌跡である。移動区間d15は、ノズル311が動作端部EP1と動作端部EP2との間を移動する間に分割領域b15を横切る軌跡である。また、移動区間d16~d29は、ノズル311が基板中心OPと動作端部EP2との間を移動する間の軌跡のうち分割領域b1~b14それぞれを横切る区間である。このように、ノズル311が移動する移動範囲は、ノズル311が複数の分割領域b1~b15をそれぞれ横切る複数の移動区間d1~d29に分割される。なお、分割領域b1~b15の数は、15個に限定されるものではなく、任意の値に設定することができる。この場合は、移動範囲を分割する数、換言すれば、移動区間の数が異なる。
【0055】
ここで、
図6を参照して、ノズル311の動作パターンのうち分割領域b15に相当する部分が示されている。分割領域b15は、ノズル311の相対位置において、-10mm~+10mmの範囲である。
図6においては、ノズル311が分割領域b1を横切る期間(以下、滞在期間)がT1~T10として示されている。
図9は、分割領域において予測される時間の経過に伴って変化する基板温度変化の一例を示す図である。
図9においては、分割領域b15に対する時間の経過に伴って変化する基板Wの温度が示される。
図9のグラフでは、縦軸には、基板Wの温度が示され、横軸に時間(秒)が示される。ここで、基板Wに供給されるエッチング液の温度がTLであるものとする。
図9の吹き出し図には、時間の経過に伴って変化する基板温度の一部の拡大図が示される。吹き出しに示すグラフにおいては、横軸のスケールが拡大されている。基板Wの処理においては、基板Wが回転した状態でノズル311からエッチング液が供給される。ノズル311が基板Wにエッチング液の供給を開始する時点t0において、ノズル311が動作端部EP1に位置するので、ノズル311は分割領域b15に存在しない。このため、分割領域b15にエッチング液は供給されない。この段階においては、分割領域b15における基板Wの温度は所定の温度Twになる。所定の温度は、環境の温度に依存する温度である。分割領域b15の温度は、一定の温度Twで推移する。
【0056】
ノズル311が分割領域b15に近接する時刻t1以降については、ノズル311から供給されるエッチング液の温度に起因して、基板Wの分割領域b15における温度が上昇する。時刻t1以降の基板Wの分割領域b15における温度の変化は、式(1)で表すことができる。式(1)の係数α1については、式(2)で示される。
【0057】
【0058】
式(1)においては、tは時間を示し、TWは環境温度に依存する所定の温度である。式(2)において、Cu1~Cu4は、定数である。TLは、ノズル311から供給されるエッチング液の温度である。Dは、ノズル311から供給されるエッチング液の流量である。Rは、基板Wの回転速度である。このように、基板Wの分割領域b15における温度の変化は、基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量等を考慮した経過時間tの関数で表わされる。
【0059】
次に、ノズル311が分割領域b15に滞在する時刻t2において、基板Wの分割領域b15における温度は、エッチング液の温度TLに保持される。ノズル311が分割領域b15に滞在する滞在期間T1が経過する時刻t3以降については、ノズル311が分割領域b15から離間する。ノズル311が分割領域b15から離間することにより、分割領域b15にノズル311からエッチング液が供給されなくなるので、分割領域b15における基板Wの温度が下降する。時刻t3以降における基板Wの分割領域b15における温度の変化は式(3)で表すことができる。式(3)の係数β1については、次式(4)で示される。
【0060】
【0061】
式(3)において、TLは、ノズル311から供給されるエッチング液の温度である。TWは環境温度に依存する所定の温度である。式(4)において、Cd1は、定数である。Dは、ノズル311から供給されるエッチング液の流量である。Rは、基板Wの回転速度である。このように、基板Wの分割領域b15における温度の変化は、基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量を考慮した関数で表わされる。
【0062】
時刻t3および時刻t4は、
図6に示したノズル311の動作パターンから決定される。時刻t2は、時刻t1における温度に基づいて式(1)を用いて決定される。
【0063】
図4に戻って、第1変換部263は、基板Wの複数の分割領域b1~b15それぞれについて、基板Wにエッチング液が供給される処理期間における基板Wの温度の変化を予測する。第1変換部263は、基板Wの複数の分割領域b1~b15それぞれについて、処理期間において変化する温度を処理期間で平均した値を示す平均値AV1を、基板Wのその分割領域における温度に決定する。第1変換部263は、基板Wの複数の分割領域b1~b15それぞれにおいて決定された温度を処理状態データに決定する。ここでは、基板Wの上面を15個の分割領域b1~b15に分割しているので、処理状態データの数は15である。分割領域b1~b15それぞれの基板の径方向の長さが大きいほど、処理状態データの数が小さくなる。分割領域b1~b15それぞれの基板の径方向の長さは、ノズル311の内径以上なので、処理状態データの数の最大値は、ノズル311の内径により定まる。
【0064】
図4に戻って予測器生成部265は、第1変換部263から変動条件を変換した処理状態データが入力され、実験データ取得部261から実験データが入力される。予測器生成部265は、ニューラルネットワークに教師あり学習させることにより予測器を生成する。なお、ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークであってもよい。
【0065】
具体的には、学習用データは、入力データと正解データとを含む。入力データは、第1変換部263により変動条件が変換された処理状態データと、実験データに含まれる処理条件の変動条件以外の固定条件と、を含む。正解データは、エッチングプロファイルを含む。エッチングプロファイルは、実験データに含まれる処理前の膜の膜厚特性と、実験データに含まれる処理後の膜の膜厚特性との差である。この正解データに含まれるエッチングプロファイルは、第一処理量の一例である。予測器生成部265は、入力データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークの出力が正解データと等しくなるようにニューラルネットワークのパラメータを決定する。予測器生成部265は、学習済のニューラルネットワークに設定されたパラメータを組み込んだニューラルネットワークを予測器として生成する。予測器は、学習済のニューラルネットワークに設定されたパラメータを組み込んだ推論プログラムである。予測器生成部265は、予測器を情報処理装置100に送信する。
【0066】
図10は、予測器を説明する図である。
図10を参照して、予測器は、入力層、中間層および出力層を含み、各層に〇で示される複数のノードが含まれる。なお、図では、中間層を1つ示しているが、中間層の数はこれより多くてもよい。また、入力層に5つのノード、中間層に4つ、出力層に3つのノードが示されるが、ノードの数は、これに限定されるものではない。上位のノードの出力は下位のノードの入力に接続される。パラメータは、上位のノードの出力に対して重み付けする係数を含む。また、中間層の数は、1以上であり、その数は限定されない。
【0067】
予測器に、変動条件を変換した処理状態データと固定条件とを入力すると、エッチングプロファイルが出力される。この予測器により出力されるエッチングプロファイルは、第二処理量の一例である。エッチングプロファイルは、基板Wの径方向の複数の位置P[n](nは1以上の整数)それぞれにおける処理前後の膜厚の差E[n]で示される。なお、図では、予測器の出力ノードの数を3つ示しているが、実際には、出力ノードの数はn個である。
【0068】
予測器生成部265が予測器に機械学習させる処理状態データが、基板W上の位置と関連付けられた基板Wの温度を含む。基板Wの温度は、基板Wに対する処理に寄与するので、予測精度の高い予測器を生成することが可能になる。
【0069】
図4に戻って、情報処理装置100は、処理条件決定部151と、予測器受信部155と、第2変換部157と、予測部159と、評価部161と、処理条件送信部163と、を含む。情報処理装置100が備える機能は、情報処理装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された処理条件決定プログラムを実行することにより、CPU101により実現される。
【0070】
予測器受信部155は、学習装置200から送信される予測器を受信し、受信された予測器を予測部159に出力する。
【0071】
処理条件決定部151は、基板処理装置300により処理の対象となる基板Wに対する処理条件を決定する。処理条件決定部151は、処理条件を第2変換部157に出力し、処理条件に含まれる固定条件を予測部159に出力する。処理条件決定部151は、実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定を用いて、予め準備された複数の変動条件のうちから1つを選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む処理条件を予測部159に推測させるための処理条件として決定する。予め準備された複数の変動条件は、学習装置200が圧縮器を生成するために生成した複数の変動条件を用いるのが好ましい。
【0072】
第2変換部157は、上述した学習装置200の第1変換部263と同様の機能を有する。第2変換部157は、処理条件決定部151から入力される処理条件に含まれる変動条件と固定条件のうち基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量とから処理状態データを生成する。第2変換部157は、生成された処理状態データを予測部159に出力する。
【0073】
予測部159は、予測器を用いて処理状態データと固定条件とからエッチングプロファイルを推測する。具体的には、予測部159は、第2変換部157から入力される処理状態データと処理条件決定部151から入力される固定条件とを予測器に入力し、予測器が出力するエッチングプロファイルを評価部161に出力する。
【0074】
評価部161は、予測部159から入力されるエッチングプロファイルを評価し、評価結果を処理条件決定部151に出力する。詳細には、評価部161は、基板処理装置300が処理対象とする予定の基板Wの処理前の膜厚特性を取得する。評価部161は、予測部159から入力されるエッチングプロファイルと、基板Wの処理前の膜厚特性とからエッチング処理後に予測される膜厚特性を算出し、目標とする膜厚特性と比較する。比較の結果が評価基準を満たしていれば、処理条件決定部151により決定された処理条件を処理条件送信部163に出力する。例えば、評価部161は、乖離特性を算出し、乖離特性が評価基準を満たしているか否かが判断される。乖離特性は、エッチング処理後の基板Wの膜厚特性と目標の膜厚特性との差分である。評価基準は、任意に定めることができる。例えば、評価基準は、乖離特性において差分の最大値が閾値以下であるとしてもよいし、差分の平均が閾値以下であるとしてもよい。
【0075】
処理条件送信部163は、処理条件決定部151により決定された処理条件を、基板処理装置300に送信する。基板処理装置300は、処理条件に従って基板Wを処理する。
【0076】
評価部161は、評価結果が評価基準を満たしていない場合は、評価結果を処理条件決定部151に出力する。評価結果は、エッチング処理後に予測される膜厚特性またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分を含む。
【0077】
処理条件決定部151は、評価部161から評価結果が入力されることに応じて、予測部159に推測させるための新たな処理条件を決定する。処理条件決定部151は、実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定を用いて、予め準備された複数の変動条件のうちから1つを選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む処理条件を予測部159に推測させるための新たな処理条件として決定する。
【0078】
処理条件決定部151は、ベイズ推定を用いて処理条件を探索してもよい。評価部161により複数の評価結果が出力される場合、処理条件と評価結果との組が複数となる。複数の組それぞれにおけるエッチングプロファイルの傾向から膜の膜厚が均一となる処理条件またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分が最小化する処理条件を探索する。
【0079】
具体的には、処理条件決定部151は、目的関数を最小化するように処理条件を探索する。目的関数は、膜の膜厚の均一性を示す関数または膜の膜厚特性と目標膜厚特性との一致性を示す関数である。例えば、目的関数は、エッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分をパラメータで示した関数である。ここでのパラメータは、対応する変動条件に基づいて第2変換部157により生成された処理状態データである。対応する変動条件は、予測部159がエッチングプロファイルを推測するために用いた処理状態データを生成する元になった変動条件である。処理条件決定部151は、複数の変動条件のうちから探索により決定されたパラメータである処理状態データに対応する変動条件を選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む新たな処理条件を決定する。
【0080】
図11は、予測器生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。予測器生成処理は、学習装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された予測器生成プログラムを実行することにより、CPU201により実行される処理である。予測器生成プログラムは、学習プログラムの一部である。
【0081】
図11を参照して、学習装置200が備えるCPU201は、実験データを取得する。CPU201は、入出力I/F107を制御して、基板処理装置300から実験データを取得する(ステップS01)。実験データは、CD-ROM209等の記録媒体に記録された実験データを記憶装置104で読み取ることにより取得されてもよい。ここで取得される実験データは、複数である。実験データは、処理条件と、基板Wに形成された膜の処理前後の膜厚特性とを含む。膜厚特性は、基板Wに形成される膜の基板Wの径方向における異なる複数の位置それぞれの膜厚で示される。
【0082】
次のステップS02においては、処理対象とするべき実験データが選択され、処理はステップS03に進む。ステップS03においては、処理状態データが生成され、処理はステップS04に進む。処理状態データ生成処理の詳細は後述するが、実験データに含まれる変動条件と、固定条件のうち基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量とに基づいて処理状態データを生成する処理である。
【0083】
ステップS04においては、処理状態データと、実験データに含まれる固定条件と、エッチングプロファイルと、が学習用データに設定される。エッチングプロファイルは、実験データに含まれる処理前の膜の膜厚特性と、実験データに含まれる処理後の膜の膜厚特性との差分である。学習用データは、入力データと正解データとを含む。ステップS03において変換された処理状態データと、実験データに含まれる固定条件とが入力データに設定される。エッチングプロファイルが正解データに設定される。
【0084】
次のステップS05においては、CPU201は、予測器を機械学習させ、処理をステップS06に進める。入力データをニューラルネットワークである予測器に入力し、予測器の出力が正解データと等しくなるようにパラメータを決定する。これにより、予測器のパラメータが調整される。予測器は、学習用データを用いた機械学習により決定されたパラメータを有するニューラルネットワークである。なお、ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークであってもよい。
【0085】
ステップS06においては、調整が完了したか否かが判断される。予測器の評価に用いる学習用データが予め準備されており、評価用の学習用データで予測器の性能が評価される。評価結果が予め定められた評価基準を満たす場合に調整完了と判断される。評価結果が評価基準を満たさなければ(ステップS06でNO)、処理はステップS02に戻るが、評価結果が評価基準を満たすならば(ステップS06でYES)、処理はステップS07に進む。
【0086】
処理がステップS02に戻る場合、ステップS02において、ステップS01において取得された実験データのうちから処理対象に選択されていない実験データが選択される。ステップS02~ステップS06のループにおいて、CPU201は、複数の学習用データを用いて予測器を機械学習させる。これにより、ニューラルネットワークである予測器のパラメータが適正な値に調整される。ステップS08においては、予測器が送信され、処理は終了する。CPU201は、入出力I/F107を制御し、予測器を情報処理装置100に送信する。
【0087】
図12は、処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。処理条件決定処理は、情報処理装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された処理条件決定プログラムを実行することにより、CPU101により実行される処理である。
【0088】
図12を参照して、情報処理装置100が備えるCPU101は、予め準備された複数の変動条件のうちから1つを選択し(ステップS11)、処理をステップS12に進める。複数の変動条件は、学習装置200が圧縮器を生成するために生成した複数の変動条件である。実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定等を用いて、予め準備された複数の変動条件のうちから1つが選択される。
【0089】
ステップS12においては、処理状態データ生成処理が実行され、処理はステップS13に進む。
【0090】
ステップS13においては、予測器を用いて、処理状態データと固定条件とからエッチングプロファイルが推測され、処理はステップS14に進む。予測器に、ステップS12で生成された処理状態データと固定条件とを入力し、予測器が出力するエッチングプロファイルが取得される。ステップS14においては、処理後の膜厚特性が目標膜厚特性と比較される。基板処理装置300が処理の対象とする基板Wの処理前の膜厚特性と、ステップS13において推測されたエッチングプロファイルとから基板Wを処理した後の膜厚特性が算出される。そして、処理後の膜厚特性が目標膜厚特性と比較される。ここでは、基板Wを処理した後の膜厚特性と目標膜厚特性との差分が算出される。
【0091】
ステップS15においては、比較結果が評価基準を満たすか否かが判断される。比較結果が評価基準を満たすならば(ステップS15でYES)、処理はステップS16に進むが、そうでなければ処理はステップS11に戻る。例えば、差分の最大値が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断する。また、差分の平均が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断する。
【0092】
ステップS16においては、基板処理装置300を駆動するための処理条件の候補に、ステップS11において直前に選択された変動条件を含む処理条件が設定され、処理はステップS17に進む。ステップS17においては、探索の終了指示が受け付けられたか否かが判断される。情報処理装置100を操作するユーザーにより終了指示が受け付けられたならば処理はステップS18に進むが、そうでなければ処理はステップS11に戻る。なお、ユーザーにより入力される終了指示に変えて、予め定められた数の処理条件が候補に設定されたか否かが判断されてもよい。
【0093】
ステップS18においては、候補に設定された1以上の処理条件のうちから1つが決定され、処理はステップS19に進む。候補に設定された1以上の処理条件のうちから情報処理装置100を操作するユーザーにより1つが選択されてもよい。したがって、ユーザーの選択の範囲が広がる。また、複数の処理条件に含まれる変動条件のうちからノズル動作が最も簡略な変動条件が自動的に選択されてもよい。ノズル動作が最も簡略な変動条件は、例えば、変速点の数が最少の変動条件とすることができる。これにより、基板Wを処理する複雑なノズル動作に対する処理結果に対して複数の変動条件を提示することができる。複数の変動条件のうちからノズルの制御が容易な変動条件を選択すれば、基板処理装置300の制御が容易になる。
【0094】
ステップS19においては、ステップS18において決定された変動条件を含む処理条件が基板処理装置300に送信され、処理は終了する。CPU101は、入出力I/F107を制御して、処理条件を基板処理装置300に送信する。基板処理装置300は、情報処理装置100から処理条件を受信する場合、その処理条件に従って基板Wを処理する。
【0095】
図13は、処理状態データ生成処理の一例を示すフローチャートである。処理状態データ生成処理は、
図10のステップS03または
図11のステップS12で実行される処理である。ステップS21においては、時系列データが取得される。時系列データは、時間の経過に伴って変動するノズルの基板Wに対する相対位置である。ステップS22においては、基板Wの上面において、複数の分割領域を設定するための分割数K(Kは2以上の整数)が取得される。本実施の形態において、分割数Kは、予め設定されている。なお、分割数Kは、操作部等を通して使用者により入力されてもよい。なお、
図8の例では、分割数Kは、15である。
【0096】
ステップS23においては、変数nが1に設定される。ステップS24においては、分割領域b(n)における基板Wの温度変化の平均を示す平均値AV1が算出される。分割領域b(n)は、分割領域b1~b15のうちn番目の分割領域を示す。分割領域b(n)における平均値AV1が算出されると、ステップS25において、変数nに1が加算される。このとき、ステップS26において、変数nが分割数Kより大きいか否かが判定される。変数nが分割数K以下である場合、処理はステップS24に戻る。変数nが分割数Kより大きい場合、ステップS27において、算出された分割領域b(1)~b(K)それぞれにおけるノズル311の基板Wの温度が処理状態データに決定される。ステップS24~ステップS26が繰り返されることにより、次の分割領域b(1)~b(K)それぞれにおける基板Wの温度が算出される。
【0097】
4.具体例
本実施の形態においては、変動条件は、ノズル動作の処理時間が60秒、サンプリング間隔0.01秒でサンプリングした時系列データである。変動条件は、6001個の値で構成される。このため、変動条件は、複雑なノズル動作を表現することが可能である。その反面、変動条件の次元数が多いため、変動条件の時系列データを機械学習させた場合、オーバフィッティングが発生することがある。
【0098】
本実施の形態における予測器生成部265は、処理状態データを機械学習して予測器を生成するので、変動条件と固定条件間の既知の関係性を明示的に学習モデルに盛り込むことができる。
【0099】
本実施の形態における第1変換部263は、変動条件と固定条件のうち基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量とを処理状態データに変換する。処理状態データは、ノズル311の移動範囲を分割数15で分割した複数の分割領域b1~b15それぞれにおける基板Wの温度変化の平均値であり、15個の値で構成される。複雑なノズル動作を示す6001個の値からなる変動条件に代えて、処理状態データを用いて予測する場合であっても、予測器により予測されるエッチングプロファイルとして所望の結果が得られることを発明者は実験によって発見した。
【0100】
このため、予測器に入力するデータの数を少なくできるので、予測器の構成を簡略化することができ、ニューラルネットワークを容易に学習させることができる。また、ニューラルネットワークのパラメータを適切な値に調整することができ、予測器の精度を向上させることができる。
【0101】
また、次元数が6001の変動条件を、次元数が15の処理状態データに変換するので、複数の変動条件のうちに、処理状態データが等しくなる複数の変動条件が存在する場合がある。この場合、処理状態データが同じ複数の変動条件それぞれから予測器により予測されるエッチングプロファイルは同じとなる。本実施の形態においては、処理条件決定部151が処理条件を探索する際に、エッチングプロファイルが異なるものに対応する処理条件が探索されるので、複数の異なるエッチングプロファイルに対応する処理条件が選択される。このため、処理条件決定部151は、複数の処理条件のうちから目標となるエッチングプロファイルが予測される処理条件を効率的に探索することができる。
【0102】
なお、サンプリング間隔を0.01秒とする例を説明したが、サンプリング間隔はこれに限定されない。これより長いサンプリング間隔としてもよいし、これより短いサンプリング間隔としてもよい。例えば、サンプリング間隔は0.1秒としてもよいし、0.005秒としてもよい。
【0103】
5.他の実施の形態
(1)上述した実施の形態では、複数の分割領域それぞれに対する温度の変化の平均値AV1が処理状態データとして変換されるが、本発明はこれに限定されない。基板Wにエッチング液供給されることにより、基板W上に形成されるエッチング液による膜の厚さに応じて基板Wの膜の除去量が変化する。例えば、エッチング液による膜の厚さが大きい場合、基板Wの膜の除去量が大きくなる。一方、エッチング液による膜の厚さが小さい場合、基板Wの膜の除去量が小さくなる。このため、処理状態データとして、複数の分割領域それぞれに対するエッチング液の膜の厚さを用いてもよい。
【0104】
図14は、分割領域において予測される時間の経過に伴って変化する基板上のエッチング液の膜厚変化の一例を示す図である。
図14においては、分割領域b15に対する時間の経過に伴って変化する基板W上のエッチング液の膜厚変化が示される。
図14のグラフでは、縦軸には、基板W上のエッチング液の膜厚が示され、横軸に時間(秒)が示される。ここで、基板Wが回転されない状態で基板Wにエッチング液が供給されることにより、基板W上に形成されるべきエッチング液の膜厚がFTであるものとする。
図14の吹き出し図には、時間の経過に伴って変化する基板温度の一部の拡大図が示される。吹き出しに示すグラフにおいては、横軸のスケールが拡大されている。
【0105】
基板Wの処理においては、基板Wが回転した状態でノズル311からエッチング液が供給される。ノズル311が基板Wにエッチング液の供給を開始する時点t0において、ノズル311が動作端部EP1に位置するので、ノズル311は分割領域b15に存在しない。このため、分割領域b15にエッチング液は供給されない。この段階においては、分割領域b15における基板W上のエッチング液の膜厚は、ゼロである。
【0106】
ノズル311が分割領域b15に近接する時刻t1以降、ノズル311から供給されるエッチング液に起因して、基板Wの分割領域b15におけるエッチング液の膜厚が上昇する。時刻t1以降における基板Wの分割領域b15におけるエッチング液の膜厚の変化は、式(5)で表すことができる。式(5)の係数α2については、次式(6)で示される。
【0107】
【0108】
式(6)において、CU1~CU3は、基板Wの分割領域b15の液膜の増加に係る定数である。式(6)のDは、ノズル311から供給されるエッチング液の流量である。式(6)のRは、基板Wの回転速度である。このように、分割領域b15におけるエッチング液の膜厚の変化(上昇)は、基板Wの回転速度およびエッチング液の流量を考慮した経過時間tの関数で表すことができる。
【0109】
次に、ノズル311が分割領域b15に滞在する時刻t2において、基板Wの分割領域b15におけるエッチング液の液膜は、膜厚FTに保持される。滞在期間T1が経過する時刻t3以降については、ノズル311が分割領域b15から離間する。ノズル311が分割領域b15から離間することにより、分割領域b15にノズル311からエッチング液が供給されなくなる。また、回転する基板Wの遠心力により、分割領域b15における基板W上のエッチング液の膜厚が下降する。時刻t3以降における基板Wの分割領域b15における基板W上のエッチング液の膜厚の変化は式(7)で表すことができる。式(7)の係数β2については、式(8)で示される。
【0110】
【0111】
式(7)のFilmmaxは、エッチング液の液膜の最大厚さを示す。本例では、Filmmaxは、膜厚FTある。式(8)において、CD1は、基板Wの分割領域b15のエッチング液の膜厚の下降に係る定数である。式(8)のDは、ノズル311から供給されるエッチング液の流量である。式(8)のRは、基板Wの回転速度である。このように、分割領域b15におけるエッチング液の膜厚の変化(下降)は、基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量等を考慮した経過時間tの関数で表すことができる。
【0112】
図4の第1変換部263は、基板Wの複数の分割領域b1~b15それぞれについて、基板Wにエッチング液が供給される処理期間における基板W上のエッチング液の膜厚の変化を予測する。第1変換部263は、基板Wの複数の分割領域b1~b15それぞれについて、処理期間において変化する基板W上のエッチング液の膜厚を処理期間で平均した値を示す平均値AV2を、基板Wのその分割領域におけるエッチング液の膜厚に決定する。第1変換部263は、基板Wの複数の分割領域b1~b15それぞれにおいて決定されたエッチング液の膜厚を処理状態データに決定する。
【0113】
また、第1変換部263は、複数の分割領域b1~b15それぞれの温度変化の平均値AV1およびエッチング液の膜厚変化の平均値AV2を処理状態データとして決定してもよい。この場合、次元数が6001の変動条件を、次元数が30の処理状態データに変換することが可能になる。
【0114】
また、予測器生成部265が予測器に機械学習させる処理状態データが、基板W上の位置と関連付けられたエッチング液の膜厚を含む。エッチング液の膜厚は、基板Wに対する処理に寄与するので、予測精度の高い学習モデルを生成することが可能になる。
【0115】
(2)上述した実施の形態においては、学習装置200は、学習用データに基づいて、予測器を生成する。学習装置200は、予測器を追加学習するようにしてもよい。学習装置200は、予測器が生成された後に、基板処理装置300により処理された基板Wの処理前後それぞれにおける膜の膜厚特性および処理条件を取得する。そして、学習装置200は、処理前後それぞれにおける膜の膜厚特性および処理条件から学習用データを生成し、予測器を機械学習させることにより、予測器を追加学習する。追加学習によって、予測器を構成するニューラルネットワークの構成は変更されないが、パラメータが調整される。
【0116】
基板処理装置300が実際に基板Wを処理した結果、得られる情報を用いて、予測器を機械学習させるので、予測器の精度を向上させることができる。また、予測器を生成するために用いられる学習用データの数をできるだけ少なくできる。
【0117】
図15は、追加学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。追加学習処理は、学習装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された追加学習プログラムを実行することにより、CPU201により実行される処理である。追加学習プログラムは、学習プログラムの一部である。
【0118】
図15を参照して、学習装置200が備えるCPU201は、生産時データを取得し(ステップS31)、処理をステップS32に進める。生産時データは、予測器が生成された後に、基板処理装置300が基板Wを処理する際の処理条件、処理前後それぞれの膜の膜厚特性を含む。CPU201は、入出力I/F107を制御して、基板処理装置300から生産時データを取得する。生産時データは、CD-ROM209等の記録媒体に記録された実験データを記憶装置104で読み取ることにより取得されてもよい。
【0119】
ステップS32においては、
図13に示した処理状態データ生成処理が実行され、処理はステップS33に進む。ステップS33においては、処理状態データと、生産時データの処理条件に含まれる固定条件と、エッチングプロファイルと、が学習用データに設定される。エッチングプロファイルは、生産時データに含まれる処理前の膜の膜厚特性と、生産時データに含まれる処理後の膜の膜厚特性との差分である。第1変換部263による処理状態データと処理条件に含まれる固定条件とが入力データに設定される。エッチングプロファイルが正解データに設定される。
【0120】
次のステップS34においては、CPU201は、予測器を追加学習し、処理をステップS35に進める。入力データをニューラルネットワークである予測器に入力し、予測器の出力が正解データと等しくなるようにパラメータを決定する。これにより、予測器のパラメータがさらに調整される。
【0121】
ステップS35においては、調整が完了したか否かが判断される。評価用の学習用データで予測器の性能が評価される。評価結果が予め定められた追加学習用評価基準を満たす場合に調整完了と判断される。追加学習用評価基準は、予測器が生成される場合に用いられた評価基準よりも高い基準である。評価結果が追加学習用評価基準を満たさなければ(ステップS35でNO)、処理はステップS31に戻るが、評価結果が追加学習用評価基準を満たすならば(ステップS35でYES)、処理は終了する。
【0122】
(3)学習装置200は、情報処理装置100により決定された処理条件およびその処理条件から予測器により推測されるエッチングプロファイルを含む蒸留用データを用いて、新たな学習モデルを機械学習させた蒸留モデルを生成してもよい。これにより、新たな学習モデルを学習させるためのデータを準備するのが容易になる。
【0123】
(4)本実施の形態において、予測器を生成するために用いる学習用データにおいて、入力データが、処理状態データと固定条件と、を含む。本発明は、これに限定されない。入力データは変動条件と固定条件のうち基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量とを変換した処理状態データのみを含み、固定条件を含まなくてもよい。
【0124】
(5)本実施の形態において、変動条件の一例としてノズル311と基板Wとの相対位置を示したが、本発明は、これに限定されない。エッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量および基板Wの回転速度の少なくとも1つが、時間の経過に伴って変動する場合は、それらを変動条件としてもよい。また、変動条件は、1種類に限らず、複数を含み合わせてもよい。
【0125】
(6)情報処理装置100および学習装置200を、基板処理装置300と別体とする場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。基板処理装置300に情報処理装置100が組み込まれていてもよい。さらに、基板処理装置300に、情報処理装置100および学習装置200が組み込まれていてもよい。また、情報処理装置100と学習装置200とは別体の装置としたが、それらは一体の装置として構成されてもよい。
【0126】
6.実施の形態における効果
本実施の形態における学習装置200は、基板処理装置300を変動条件を含む処理条件で駆動して基板に形成された膜の処理を行った後に、膜の処理の前後の膜厚の差を示す処理量を取得し、第1変換部263により変動条件と固定条件のうち基板Wの回転速度、エッチング液の温度およびエッチング液の流量とが変換された処理状態データを入力データとして含み、かつ、処理条件に対応するエッチングプロファイルを正解データとして含む学習用データをニューラルネットワークに機械学習させて、エッチングプロファイルを推測する学習モデルである予測器を生成する。学習用データとして、時間の経過に伴って変動する変動条件の次元数が低減するように変換された処理状態データを入力データとして含むので、学習用データの次元数を少なくすることができる。このため、基板Wを処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置を生成することができる。また、予測器生成部265が予測器に機械学習させる処理状態データが、基板W上の位置と関連付けられた基板Wの温度を含む。基板Wの温度は、基板Wに対する処理に寄与するので、予測精度の高い学習モデルを生成することが可能になる。
【0127】
また、学習装置200は、基板処理装置300のノズル311の移動範囲を分割した複数の移動区間それぞれの温度変化の平均を示す平均値AV1を処理状態データとして変換するので、変動条件から処理状態データへの変換を容易に行うことが可能になる。
【0128】
また、処理条件は、変動条件と、時間の経過に伴って変動しない固定条件と、を含む。このため、固定条件が異なる処理に対応でき、固定条件が異なる複数の学習モデルを生成する必要がない。
【0129】
また、学習装置200は、予測器を生成した後に、基板処理装置300が処理条件に従って基板Wに形成された膜の処理を行った後に、膜の処理の前後の膜厚の差を示す処理量を取得し、第1変換部263により仮の変動条件が変換された処理状態データと取得された処理量とを含む追加学習用データを用いて学習モデルを学習させる。このため、学習モデルが追加学習されるので、学習モデルの性能を向上させることができる。
【0130】
また、学習装置200は、第1変換部263により仮の変動条件が変換された処理状態データを学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に変換結果と学習モデルにより推測された処理量とを含む蒸留用データを用いて新たな学習モデルを生成させる。このため、新たな学習モデルを学習させるためのデータを準備するのが容易になる。
【0131】
また、基板処理装置300は、基板Wにエッチング液を供給するノズル311と、ノズルと基板Wとの相対位置を変化させるノズル移動機構301と、を備え、変動条件は、ノズル移動機構301により変化するノズル311と基板Wとの相対位置である。ノズル311と基板Wとの相対位置を変化させて、ノズル311から基板Wのエッチング液を供給することにより処理される膜の処理量を推測する学習モデルが生成される。このため、エッチング処理における処理量を推測する学習モデルを生成することができる。
【0132】
また、情報処理装置100は、学習装置200により生成された圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を学習装置200により生成された学習モデルに与えて学習モデルにより推測されるエッチングプロファイルが許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置300を駆動するための処理条件に決定する。このため、処理条件からエッチングプロファイルが推測されるので、複雑に動作するノズルの動作がエッチング処理の処理結果に与える影響を、実験等をして求める必要がない。また、許容条件を満たす処理量に対して複数の仮の変動条件を決定するので、許容条件を満たす複数のエッチングプロファイルにそれぞれ対応する複数の変動条件を決定することができる。したがって、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の変動条件を提示することができる。複数の変動条件のうちからノズルを動作させる制御が容易な処理条件を選択すれば、基板処理装置300の制御が容易になる。
【0133】
また、情報処理装置100は、許容条件を満たす処理量に対して複数の処理条件を決定するので、許容条件を満たす複数のエッチングプロファイルにそれぞれ対応する複数の処理条件を決定することができる。そして、固定条件は、エッチング液の温度を含む。したがって、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数のエッチング液の温度を提示することができる。また、複数のエッチング液の温度のうちから、エッチング処理への適用が容易なエッチング液の温度を選択できる。そして、適用が容易なエッチング液の温度を選択できるので、エッチング処理に用いるエッチング液の温調が容易になる。また、固定条件は、基板Wの回転速度およびエッチング液の流量を含む。したがって、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して、エッチング液の温度と同様に、基板Wの回転速度およびエッチング液の流量それぞれについて複数の候補を提示することができ、それらの選択が容易となる。
【0134】
7.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
基板Wが基板の一例であり、エッチング液が処理液の一例であり、基板処理装置300が基板処理装置の一例であり、実験データ取得部261が実験データ取得部の一例であり、第1変換部263が変換部および第1変換部の一例であり、予測器が学習モデルの一例であり、予測器生成部265がモデル生成部の一例である。また、情報処理装置100が情報処理装置の一例であり、第2変換部157が第2変換部の一例であり、ノズル311が基板に処理液を供給するノズルの一例であり、ノズル移動機構301が移動部の一例であり、予測部159,評価部161および処理条件決定部151が処理条件決定部の一例である。
【0135】
8.実施の形態の総括
(第1項) 膜が形成された基板に処理液を供給するノズルを移動させ前記基板に処理液を供給する基板処理装置を時間の経過に伴って前記基板に対して変動する前記ノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で駆動して前記基板に形成された前記膜の処理を行った後に、前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する実験データ取得部と、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する変換部と、
前記処理状態データと前記処理条件に対応する前記第一処理量とを含む学習用データを機械学習して前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備えた学習装置。
【0136】
第1項に記載の学習装置によれば、学習用データが時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件と変動条件以外の他の条件とから変換された処理状態データと処理量とを含む。このため、学習用データの次元数を少なくすることができる。また、処理条件に含まれる複数のパラメータ間の既知の関係性を明示的に学習モデルに盛り込むことができる。その結果、基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置を提供することができる。
【0137】
(第2項) 前記処理の状態は、前記基板の温度であり、
前記変換部は、前記変動条件、処理液の温度、前記ノズルから吐出される処理液の流量および前記基板の回転速度に基づいて、前記複数の分割領域それぞれにおける前記処理の状態として基板の温度を決定する、第1項に記載の学習装置。
【0138】
第2項に記載の学習装置によれば、処理状態データが、基板上の位置と関連付けられた基板の温度を含む。基板の温度は、基板に対する処理に寄与するので、予測精度の高い学習モデルを生成することが可能になる。
【0139】
(第3項) 前記処理の状態は、前記ノズルから処理液が供給されることにより前記基板に形成される液膜の厚さであり、
前記変換部は、前記変動条件と、前記ノズルから吐出される処理液の流量および前記基板の回転速度に基づいて、前記複数の分割領域それぞれにおける前記処理の状態として前記基板に形成される液膜の厚さを決定する、第1項または第2項に記載の学習装置。
【0140】
第3項に記載の学習装置によれば、処理状態データが、基板上の位置と関連付けられた処理液の液膜を含む。処理液の液膜の厚さは、基板に対する処理に寄与するので、精度の高い学習モデルを生成することが可能になる。
【0141】
(第4項) 前記モデル生成部は、前記変動条件に代えて前記処理状態データを含む学習用データを機械学習する、第2項または第3項に記載の学習装置。
【0142】
第4項に記載の学習装置によれば、モデル生成部が機械学習する次元数を低減することができるので、モデル生成部における過学習を抑制することが可能になる。
【0143】
(第5項) 前記複数の分割領域それぞれの前記基板の径方向の長さは、前記ノズルの内径以上である、第1項に記載の学習装置。
【0144】
第5項に記載の学習装置によれば、分割領域の基板の径方向の長さがノズルの内径以上に設定されるので、処理状態データのデータ数を低減することが可能になる。
【0145】
(第6項) 基板処理装置を管理する情報処理装置であって、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された前記基板に処理液を供給することにより、前記基板に形成された前記膜の処理をし、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する変換部と、
前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、
前記学習モデルは、前記基板処理装置が前記基板に形成された前記膜の処理をした処理条件に含まれる前記変動条件を、前記変換部と同じ変換をした処理状態データと前記基板処理装置により前記膜の処理をされた前記基板に形成された前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、
前記処理条件決定部は、前記変換部により仮の変動条件が変換された処理状態データを前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される前記第二処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、情報処理装置。
【0146】
第6項に記載の情報処理装置によれば、時間の経過に伴って変動する仮の変動条件を変換した処理状態データを学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に、仮の変動条件を含む処理条件が基板処理装置を駆動するための処理条件に決定される。このため、許容条件を満たす処理量に対して複数の仮の変動条件を決定することができる。その結果、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【0147】
(第7項) 第6項に記載の情報処理装置を備えた基板処理装置。
【0148】
第7項に記載の基板処理装置によれば、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な基板処理装置を提供することができる。
【0149】
(第8項) 基板を処理する基板処理装置を管理する基板処理システムであって、
学習装置と情報処理装置とを備え、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された基板に処理液を供給することにより、前記基板に形成された前記膜の処理をし、
前記学習装置は、前記基板処理装置を前記処理条件で駆動して前記基板に形成された前記膜の処理を行った後に、前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する実験データ取得部と、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する第1変換部と、
前記第1変換部により前記変動条件が変換された処理状態データと前記処理条件に対応する前記第一処理量とを含む学習用データを機械学習して、前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備え、
前記情報処理装置は、前記第1変換部と同じ第2変換部と、
前記学習装置により生成された前記学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、
前記処理条件決定部は、前記第2変換部により仮の変動条件が変換された変換結果を前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される前記第二処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、基板処理システム。
【0150】
第8項に記載の基板処理システムにおいては、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な基板処理システムを提供することができる。
【0151】
(第9項) 膜が形成された基板に処理液を供給するノズルを移動させ前記基板に前記処理液を供給する基板処理装置を時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で駆動して前記基板に形成された前記膜の処理を行った後に、前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量を取得する処理と、 前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する処理と、
前記処理状態データと前記処理条件に対応する前記第一処理量とを含む学習用データを機械学習して前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを生成する処理と、をコンピューターに実行させる学習方法。
【0152】
第9項に記載の学習方法によれば、学習用データが時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件と変動条件以外の他の条件とから変換された処理状態データと処理量とを含む。このため、学習用データの次元数を少なくすることができる。また、処理条件に含まれる複数のパラメータ間の既知の関係性を明示的に学習モデルに盛り込むことができる。その結果、基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習方法を提供することができる。
【0153】
(第10項) 基板処理装置を管理するコンピューターで実行される処理条件決定方法であって、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って基板に対して変動するノズルの相対位置を示す変動条件を含む処理条件で、膜が形成された前記基板に処理液を供給することにより、前記基板に形成された前記膜の処理をし、
前記変動条件と前記処理条件のうち前記変動条件以外の他の条件とを、前記基板の上面を同心円で分割した複数の分割領域それぞれにおける処理の状態を示す処理状態データに変換する処理と、
前記基板処理装置により前記膜の処理をされる前の前記基板に形成された前記膜について前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第二処理量を推測する学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理と、を含み、
前記学習モデルは、前記基板処理装置が前記基板に形成された前記膜の処理をした処理条件に含まれる前記変動条件を、前記変換する処理と同じ変換をした処理状態データと前記基板処理装置により前記膜の処理をされた前記基板に形成された前記膜の処理の前後の膜厚の差を示す第一処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、
前記処理条件を決定する処理は、前記変換する処理により仮の変動条件が変換された処理状態データを前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される前記第二処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、処理条件決定方法。
【0154】
第10項に記載の処理条件決定方法によれば、時間の経過に伴って変動する仮の変動条件を変換した処理状態データを学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に、仮の変動条件を含む処理条件が基板処理装置を駆動するための処理条件に決定される。このため、許容条件を満たす処理量に対して複数の仮の変動条件を決定することができる。その結果、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な処理条件決定方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0155】
1…基板処理システム,10…制御装置,100…情報処理装置,151…処理条件決定部,155…予測器受信部,157…第2変換部,159…予測部,161…評価部,163…処理条件送信部,200…学習装置,261…実験データ取得部,263…第1変換部,265…予測器生成部,267…予測器送信部,300…基板処理装置,301…ノズル移動機構,303…ノズルモータ,305…ノズルアーム,311…ノズル,AV1…平均値,AX1…第1回転軸,AX2…第2回転軸,EP1…動作端部,EP2…動作端部,FT…膜厚,OP…基板中心,SC…スピンチャック,SM…スピンモータ,W…基板,WU…基板処理ユニット,b1~b15…分割領域,d1~d29…移動区間