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  • 特開-除菌室 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047501
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】除菌室
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240329BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20240329BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20240329BHJP
   F24F 8/167 20210101ALI20240329BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20240329BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20240329BHJP
【FI】
F24F7/06 C
A61L9/00 C
A61L9/16 F
A61L9/20
F24F8/167
F24F8/22
F24F8/108 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153162
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】522380516
【氏名又は名称】松村 美帆
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 美帆
【テーマコード(参考)】
3L058
4C180
【Fターム(参考)】
3L058BA01
3L058BB09
3L058BC07
3L058BD03
3L058BF04
3L058BF06
3L058BF07
3L058BG03
4C180AA07
4C180AA16
4C180CC03
4C180CC12
4C180DD03
4C180DD09
4C180EA14Y
4C180EA26Y
4C180EA27Y
4C180EA28Y
4C180HH15
4C180HH17
4C180KK04
4C180LL04
4C180LL11
4C180MM10
(57)【要約】
【課題】 入室者の衣服や身体に付着した細菌やウィルスを短時間で除去することができ、更に稼働時間内に除去されたウィルスの大部分を不活性化して入室者の安全性を確保できる除菌室を提供すること。
【解決手段】 閉鎖空間とした室内で送風を行って入室者に付着した細菌やウィルスを除去する除菌室において、前記室内に送風口および排気口を設けると共に、前記送風口と排気口をダクトを介して連結して環流ファンにより室内の空気が循環可能に構成し、更に前記排気口の下流側に、光触媒および紫外線光源を含む細菌・ウィルスの不活性化手段を設けると共に、細菌・ウィルスの捕獲手段としてフィルタ部を設けた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖空間とした室内で送風を行って入室者に付着した細菌やウィルスを除去する除菌室であって、
前記室内に送風口および排気口が設けられると共に、前記送風口と排気口がダクトを介して連結されて環流ファンにより室内の空気が循環可能に構成されており、
更に前記排気口の下流側に、光触媒および紫外線光源を含む細菌・ウィルスの不活性化手段が設けられると共に、細菌・ウィルスの捕獲手段としてフィルタ部が設けられている、除菌室。
【請求項2】
前記送風口が少なくとも室内の天井部に設けられると共に、前記排気口が室内の床部近傍の側壁部或いは床部に設けられている、請求項1記載の除菌室。
【請求項3】
前記環流ファンおよび細菌・ウィルスの不活性化手段が連動して起動し、かつ、起動から300秒以内で自動的に停止する、請求項1記載の除菌室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の入り口で衣服や身体に付着した細菌やウィルス等を除去するための除菌室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服や身体に付着した花粉や細菌、ウィルス等を除去する手段としてエアシャワー装置が広く知られている(例えば、特許文献1~4参照)。このエアシャワー装置は、ブース内に入室した者に対し上方や側方から大風量の送風を行い、入室者の衣服や身体に付着した細菌やウィルス等を風の勢いによって吹き飛ばして除去するものである。
【0003】
しかしながら、上記従来のエアシャワー装置は、排気口に細菌やウィルス等を捕獲するためのフィルタを設けたものは存在するものの、ブース内の空気を循環させて使用する場合、捕獲しきれなかったウィルス(コロナウィルス等)や、送風停止後に排気口からブース内に舞い戻ったウィルスが入室者に再付着するリスクがある。
【0004】
また空気中のコロナウィルス等を化学的または電気的に不活性化する手段は存在するものの、空気中に含まれるウィルスの大部分を不活性化するまでに時間がかかるため、上記エアシャワー装置のような稼働時間が短い除菌室に付設したとしても稼働時間内にウィルスの大部分を不活性化して入室者の安全性を確保することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3124928号公報
【特許文献2】特許第6684733号公報
【特許文献3】特開2011-21792号公報
【特許文献4】特開2014-181858号公報
【特許文献5】特開2021-126135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約すると入室者の衣服や身体に付着した細菌やウィルスを短時間で除去することができ、更に稼働時間内に除去されたウィルスの大部分を不活性化して入室者の安全性を確保できる除菌室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、閉鎖空間とした室内で送風を行って入室者に付着した細菌やウィルスを除去する除菌室において、前記室内に送風口および排気口を設けると共に、前記送風口と排気口をダクトを介して連結して環流ファンにより室内の空気が循環可能に構成し、更に前記排気口の下流側に、光触媒および紫外線光源を含む細菌・ウィルスの不活性化手段を設けると共に、細菌・ウィルスの捕獲手段としてフィルタ部を設ける構成を採用した。
【0008】
また上記送風口が少なくとも室内の天井部に設けると共に、前記排気口が室内の床部近傍の側壁部或いは床部に設けることで、室内の上側から下側に向けて空気が一方向に流れるため、乱流による細菌やウィルスの再付着や二次感染を防止できる。
【0009】
また本発明では、上記環流ファンおよび細菌・ウィルスの不活性化手段を連動して起動させ、かつ、起動から300秒以内で自動的に停止させることで、短時間で除菌およびウィルスの不活性化を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、除菌室の送風口と排気口をダクトで連結して環流ファンにより室内の空気が循環可能に構成すると共に、排気口の下流側に、光触媒および紫外線光源を含む細菌・ウィルスの不活性化手段、並びに細菌・ウィルスの捕獲手段としてフィルタ部を設ける構成を採用したことにより、室内の空気を外部に漏らさずにウィルスを不活性化させながら細菌やウィルスの除去を効率的に行うことができる。
【0011】
更に本発明では、細菌・ウィルスの不活性化手段によって短時間で細菌・ウィルスの不活性化および捕獲が可能となるため、活性状態の細菌やウィルスがブース内に舞い上がって、或いは循環する空気内に活性状態の細菌やウィルスが紛れ込んで入室者の衣服や身体に再付着する問題や、口や鼻から細菌やウィルスを吸い込んで入室者が2次感染を起こすような問題を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態の除菌室を示す全体斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態のウィルスの不活性化手段を示す概略図である。
図3】本発明の第一実施形態のウィルスの不活性化手段を示す概略図である。
図4】本発明の第一実施形態の除菌室の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態を図1図4に基づいて説明する。なお図中、符号Eで指示するものは、除菌室であり、符号1で指示するものは、除菌室のブース本体である。符号2で指示するものは、ダクトであり、符号3で指示するものは、環流ファンである。符号4で指示するものは、ウィルスの不活性化手段であり、符号5で指示するものは、フィルタ部である。
【0014】
「除菌室の構成」
[1]除菌室の基本構成について
本実施形態では、図1に示すように天井部11、側壁部12および床部13から除菌室Eのブース本体1を直方体型に構成し、ブース内に閉鎖空間を形成できるようにしている。またブース本体1の側壁部12の対向する二面に出入口を設けてドアの開閉によって使用者の入退室が行えるようにしている。更にブース本体1の室内には送風口11aと排気口12aを設けてこれらをダクト2で連結し、ダクト2の中間部に付設した環流ファン3によって使用時に室内の空気を循環できるように構成している。
【0015】
上記ブース本体1の排気口12aの下流側には、図2及び図3に示すように光触媒および紫外線光源を含む細菌・ウィルスの不活性化手段4を設けると共に、更にその下流側に細菌・ウィルスの捕獲手段としてフィルタ部5を設けている。これによりブース本体1に使用者が入室した状態で環流ファン3を稼働した際、図4に示すように入室者Hの衣服や身体に付着した細菌やウィルスを送風で吹き飛ばして除去すると共に、除去した細菌・ウィルスを含む空気を排気口12aから吸入して細菌・ウィルスの不活性化手段3に送り込むことで細菌・ウィルスを不活性化させつつこれらをフィルタ部5で捕獲することができる。もちろんこの際、細菌やウィルスだけでなく入室者Hに付着した花粉や塵埃の除去も行える。
【0016】
[2]ブース本体について
次に上記除菌室Eの各構成要素について説明する。ブース本体1に関しては、本実施形態では、図1及び図4に示すように使用者が1人入室できる程度の大きさとしているが、使用者が複数人入れる程度の大きさとすることもでき、またブース本体1を直方体型以外の多面体型や半楕円型に構成することもできる。また本実施形態では、ブース本体1を運搬して設置可能な可搬型の形態としているが、住居等の一部として構成することもでき、またブース本体1を分解・組立可能に構成することもできる。
【0017】
更に本実施形態では、上記ブース本体1の天井部11だけでなく側壁部12にも送風口12bを設けて、上方及び側方からの送風によって入室者の細菌やウィルスを多面的に除去できるようにしている。これらの送風口11a・12bに関しては、特に配置は限定されないが、使用時に上方から下方への気流を形成して細菌やウィルスの舞い上がりを防止するためにブース本体1の上側に配置するのが好ましい。また側壁部12に設ける送風口12bの向きに関しても、上方から下方への気流を乱さないように真横から斜め下方向に向けるのが好ましい。
【0018】
上記ブース本体1の排気口12aに関しては、ブース内における細菌やウィルスの舞い上がりを防止するためにブース本体1の下側に設けるのが好ましい。本実施形態では、ブース本体1の側壁部12の床部13近傍に排気口12aを形成しているが、床部13に直接排気口を形成することもできる。また排気口12bの個数に関しても、本実施形態では1つであるが、細菌やウィルスの舞い上がりを防止するために側壁部12や床部13に複数設けることもできる。
【0019】
[3]ダクト及び環流ファンについて
上記ダクト2については、本実施形態ではアルミダクトを使用しているが、排気口12aと送風口11aを繋ぐ管状のものであれば形状や材質は特に限定されない。またダクト2を分岐管として数が異なる排気口12aと送風口11a(例えば、一つの排気口12aと複数の送風口11a、或いは複数の排気口12aと一つの送風口12a)を繋ぐこともできる。環流ファン3に関しても、所定の風量で送風を行える送風ファンから選択して使用することができ、シロッコファン(ブロアファン)や軸流ファン、遠心ファン等を使用できる。
【0020】
また本実施形態では、上記ブース本体1に人感センサ(図示せず)を付設してこの人感センサが反応したときに上記環流ファン3と細菌・ウィルスの不活性化手段4が連動して自動的に起動するようにしている。更に上記環流ファン3と細菌・ウィルスの不活性化手段4は、人感センサによる起動から一定時間(※300秒以内が好ましいが、本実施形態では任意に設定可能)が経過した後に自動的に停止するように設定している。この際使用する人感センサとしては、赤外線センサや超音波センサ、温度センサ、タッチセンサ、音感センサ等から適宜選択できる。
【0021】
また本実施形態では、上記環流ファン3及び細菌・ウィルスの不活性化手段4を、使用者が入室していないときでも省エネモード(小出力)で稼働できるようにしており、タイマー設定で運転時間や曜日設定も行えるようにしている。これにより不使用時においても除菌室Eのブース本体1の内部を浄化することができるため、次に入室した使用者がブース内で二次感染を起こす問題を防止できる。
【0022】
[4]細菌・ウィルスの不活性化手段について
上記細菌・ウィルスの不活性化手段4に関しては、本実施形態では図2及び図3に示すように流路41内に筒状メッシュ44を配置して、内壁と筒状メッシュ44の間に光触媒42で被覆された粒子を充填すると共に、流路41の中心に紫外線光源43を配置して構成している。これにより光触媒42と紫外線の光化学反応によって流路41内を通過する空気に含まれる細菌やウィルスを短時間で不活性化させることができる。
【0023】
なお上記光触媒を被覆する粒子としては、本実施形態では活性炭を使用しているが、その他にもシリカやゼオライト、モレキュラシーブ、活性アルミナ、ガラスビーズ、これらの混合物を使用することもできる。また紫外線光源43としては、細菌やウィルスに対して殺菌効果が高いピーク波長254nmの紫外線殺菌灯を使用しているが、波長254nmの光成分が多い紫外線ランプであればよい。
【0024】
また上記紫外線光源43は、上記人感センサが反応した際に環流ファン3と連動して起動・停止するようにし、また不使用時には省エネモードで稼働するようにしている。本実施形態では、光触媒42で被覆された粒子を流路41内に充填する方法を採用しているが、それ以外の構造を採用することもでき、例えば、流路41の内壁に光触媒42の被膜を形成する構造や、筒状メッシュや三次元メッシュ構造体に光触媒42の被膜を形成して流路41内に挿入する構造を採用することもできる。また流路41の断面積を大きくして紫外線光源43を複数分散して配置することもできる。
【0025】
[5]フィルタ部について
上記フィルタ部5については、本実施形態では空気清浄機等に使用される高性能のHEPAフィルタを使用しているが、他のエアフィルタを採用することもでき、例えばより高性能なULPAフィルタを採用することもできる。なお本明細書中におけるHEPAフィルタとは、定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。また本明細書中におけるULPAフィルタとは、定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。
【符号の説明】
【0026】
1 ブース本体
11 天井部
11a 送風口
12 側壁部
12a 排気口
12b 送風口
13 床部
14 出入口
2 ダクト
3 環流ファン
4 細菌・ウィルスの不活性化手段
41 流路
42 光触媒
43 紫外線光源
44 筒状メッシュ
5 フィルタ部
E 除菌室
H 入室者
図1
図2
図3
図4