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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047508
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】甘草臭の低減方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240329BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240329BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240329BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20240329BHJP
【FI】
A23L27/00 101B
C12N1/00 P
A23L5/00 J
A23L5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022165053
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
4B065
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LE03
4B035LG04
4B035LG06
4B035LG37
4B035LG50
4B035LG51
4B035LK03
4B035LP01
4B035LP41
4B035LP56
4B047LB03
4B047LB06
4B047LB09
4B047LG06
4B047LG33
4B047LG56
4B047LG57
4B047LP01
4B047LP05
4B047LP18
4B065AA72X
4B065BB26
4B065BC01
4B065BD08
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】 本発明は、煩雑な工程無しに、甘草臭を低減する方法、甘草臭が低減した甘草抽出物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 発明者は、甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下での酵母菌体反応により、甘草臭を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下で酵母菌体と反応させることにより、甘草臭を低減させることを特徴とする、甘草臭の低減方法。
【請求項2】
菌体との反応時間が24時間未満である、請求項1記載の甘草臭の低減方法。
【請求項3】
甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下で酵母菌体と反応させることにより、甘草臭を低減させた菌体反応液を加熱処理し、甘草臭が抑えられた甘草抽出物を得ることを特徴とする、甘草抽出物の製造方法。
【請求項4】
菌体との反応時間が24時間未満である、請求項3記載の甘草抽出物の製造方法。
【請求項5】
加熱処理した菌体反応液をpH5.0以下に調整後、固液分離して液部を回収することを特徴とする、請求項3又は4記載の甘草抽出物の製造方法。
【請求項6】
加熱処理した菌体反応液を、β-グルコシダーゼ活性を有する酵素で酵素処理することを特徴とする、請求項3又は4記載の発酵甘草抽出物の製造方法。
【請求項7】
甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下で酵母菌体と反応させてなる、甘草臭が抑えられた甘草抽出物。
【請求項8】
グリチルリチンを実質的に含まない、請求項7記載の甘草抽出物。
【請求項9】
リクイリチンよりリクイリチゲニンを多く含む、請求項7又は8記載の甘草抽出物。
【請求項10】
請求項7又は8記載の甘草抽出物を含む飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘草臭を低減する方法、甘草臭を低減した甘草抽出物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
甘草は、マメ科Glycyrrhiza属の多年草で、その根及びストロン(茎の一型)が生薬や甘味料として利用されている他、フラボノイド成分が抗酸化剤として有用であることが知られている。一方で、甘草には甘草臭と呼ばれる特有の臭気があるため、飲食品等として利用する際に支障をきたすことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、甘草抽出物を溶媒油に溶かして分子蒸留することで臭気成分を含まない、抗酸化性・抗菌性物質を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-223291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、煩雑な工程無しに、甘草臭を低減する方法、甘草臭が低減した甘草抽出物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下での酵母菌体反応により、甘草臭を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]の態様に関する。
[1]甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下で酵母菌体と反応させることにより、甘草臭を低減させることを特徴とする、甘草臭の低減方法。
[2]菌体との反応時間が24時間未満である、[1]記載の甘草臭の低減方法。
[3]甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下で酵母菌体と反応させることにより、甘草臭を低減させた菌体反応液を加熱処理し、甘草臭が抑えられた甘草抽出物を得ることを特徴とする、甘草抽出物の製造方法。
[4]菌体との反応時間が24時間未満である、[3]記載の甘草抽出物の製造方法。
[5]加熱処理した菌体反応液をpH5.0以下に調整後、固液分離して液部を回収することを特徴とする、[3]又は[4]記載の甘草抽出物の製造方法。
[6]加熱処理した菌体反応液を、β-グルコシダーゼ活性を有する酵素で酵素処理することを特徴とする、[3]又は[4]記載の甘草抽出物の製造方法。
[7]甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下で酵母菌体と反応させてなる、甘草臭が抑えられた甘草抽出物。
[8]グリチルリチンを実質的に含まない、[7]記載の甘草抽出物。
[9]リクイリチンよりリクイリチゲニンを多く含む、[7]又は[8]記載の甘草抽出物。
[10][7]又は[8]記載の甘草抽出物を含む飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、酵母菌体と反応させることにより、簡便に甘草抽出物の甘草臭を低減させることができ、甘草臭が抑えられた甘草抽出物を提供できる。また、甘草臭が抑えられた甘草抽出物を提供することで、甘草抽出物の幅広い利用が可能になり、該甘草抽出物を添加することで、付加価値の高い飲食品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つを水存在下で酵母菌体と反応させることで、甘草臭を低減させることができ、甘草臭が抑えられた甘草抽出物を得ることができる。好気条件下で菌体反応を行うのが好ましく、菌体反応後に、加熱処理を行うのが好ましく、さらに、加熱処理後にpHを5.0以下に調整後、固液分離して液部を回収することで、該甘草抽出物中のグリチルリチンを低減するのが好ましく、また、β-グルコシダーゼ活性を有する酵素を添加して酵素処理することで、リクイリチンよりリクイリチゲニンを多く含む甘草抽出物とするのが好ましい。
【0010】
本発明に記載の甘草の品種としては、Glycyrrhiza uralensisG.glabraG.inflata等が挙げられ、これらの根や根茎等を用いることができる。酵素処理に用いる甘草は、甘草原料の粗砕物、粉末等若しくは抽出残渣を使用でき、又は甘草原料から水、有機溶媒若しくはそれらの混合物を用いて抽出した甘草抽出物でもよく、甘草及び甘草抽出物の混合物でもよく、前記各種の乾燥品を用いてもよい。
【0011】
本発明に記載の酵母は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤヌス(S.bayanus)、サッカロマイセス・パストリアヌス(S.pastorianus)等のサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロマイセス属、キャンディダ・ウチリス(Candida utilis)等のキャンディダ属、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)等のクルイベロマイセス属等に属する菌が例示でき、単独で使用してもよく、2以上の菌を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明に記載の菌体反応は、甘草抽出物の甘草臭を低減できれば特に限定されないが、甘草又は甘草抽出物の少なくとも一つと酵母菌体とを水存在下で混合して反応させることで実施でき、市販の酵母菌体を用いてもよく、酵母を公知の方法で培養した培養物を混合して反応させてもよい。本発明の甘草抽出物が得られれば特に限定されないが、反応開始時に、甘草1gに対して酵母を1×10~1×1010cfu含むのが好ましく、5×10~5×10cfu含むのがより好ましく、1×10~1×10cfu含むのがさらに好ましい。
【0013】
反応条件は、振とう等による撹拌、通気等の好気条件が好ましく、反応時の水分含量は、50~98重量%が好ましく、60~95重量%がより好ましい。反応温度は10~50℃が好ましく、20~45℃がより好ましい。また、反応時間は、甘草臭が低減できれば特に限定されないが、24時間未満が好ましく、5分間~20時間がより好ましく、10分間~16時間がさらに好ましく、20分間~12時間が特に好ましく、30分間~6時間が最も好ましく、短時間で反応させることにより、甘草臭を低減しつつ、コストも抑えることができる。
【0014】
本発明では、菌体反応後の菌体反応液を加熱処理して殺菌等を行うのが好ましく、加熱温度は50~150℃が例示でき、60~140℃が好ましく、70~130℃がより好ましく、80~125℃がさらに好ましく、加熱時間は、例えば1分間~6時間が例示でき、2分間~5時間が好ましく、5分間~3時間がより好ましく、常圧条件下、加圧条件下、減圧条件下の何れでもよいが、加圧条件下が好ましい。
【0015】
本発明では、甘草抽出物の甘草臭を抑えることに加え、該甘草抽出物中のグリチルリチンを低減するのが好ましく、加熱処理後にpHを好ましくは5.0以下、より好ましくはpH4.5以下、さらに好ましくはpH3.0~4.0に調整後、固液分離して溶液を回収すればよい。該pHの調整は、クエン酸、乳酸、酢酸等の有機酸又は塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸を用いて行うことができる。固液分離は、クロスフローろ過、珪藻土ろ過、フィルターろ過、遠心分離等により、液部を回収できる。
【0016】
本発明では、また、甘草抽出物中のリクイリチゲニンをリクイリチンより多く含ませるのが好ましく、加熱処理した菌体反応液にβ-グルコシダーゼ活性を有する酵素を添加して酵素処理するのが好ましく、菌体反応後であればpH5.0に調整後固液分離して得られた溶液を酵素処理してもよく、該酵素処理により、配糖体であるリクイリチンをアグリコンであるリクイリチゲニンに変換し、抗酸化剤等として有用なフラボノイドの体内への吸収性を高めることができる。酵素処理に用いる酵素は、β-グルコシダーゼ活性を有する酵素であれば特に限定されず、ペニシリウム属、アスペルギルス属、シュードモナス属、リゾムコル属、クリプトコッカス属、ミクロバクテリウム属等の微生物由来の酵素やアーモンド等の植物由来の酵素が例示できる。酵素製剤としては、アロマーゼ(登録商標)(天野エンザイム株式会社製)、スミチーム(登録商標)BGA(新日本化学工業株式会社製)等が使用できる。さらに、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ナリンギナーゼ、ヘスペリジナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の他の酵素を併用してもよい。
【0017】
酵素処理は水存在下で実施すればよく、酵素処理時の水分は、本発明の酵素処理物が得られれば特に限定されないが、40~99重量%が好ましく、50~98重量%がより好ましい。また、酵素添加量は、酵素反応が行える条件であれば特に限定されないが、例えば酵素製剤として、甘草原料由来固形分を100重量部とした場合に、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは0.2~20重量部である。また、処理条件は酵素の最適pH及び温度、並びにpH及び温度安定性を考慮して適宜設定できるが、例えば、pH2~8、10~70℃での処理が例示でき、pH3~7、20~60℃が好ましい。処理時間は処理条件に応じて適宜調整できるが、例えば、5分間~30時間が例示でき、10分間~24時間が好ましい。
【0018】
上記に記載の方法により本発明の甘草抽出物を製造することができる。甘草抽出物は、減圧濃縮、膜濃縮、ドラムドライ、エアードライ、噴霧乾燥、真空乾燥若しくは凍結乾燥、又はそれらの組み合わせ等により、濃縮品や乾燥品としてもよい。
【0019】
本発明の甘草抽出物は、甘草臭が抑えられた甘草抽出物であれば特に限定されないが、酵母菌体反応を実施しない甘草抽出物に比べ、甘草臭が弱く、甘草臭がほとんど感じられないのが好ましい。甘草臭を抑えることで、甘草抽出物を利用する場合に最終飲食品への甘草臭の影響を抑えることができ、甘草抽出物を幅広く利用できる。
【0020】
また、本発明の甘草抽出物は、甘草臭が抑えられた甘草抽出物であることに加え、さらにグリチルリチンを実質的に含まない甘草抽出物であるのが好ましく、グリチルリチンを実質的に含まないとは、試料中のグリチルリチンの測定において、HPLCで逆相カラムC18を用い、UV検出器で254nmの吸収スペクトルを測定した場合に、検出限界以下であることを意味し、詳細には、実施例に記載のHPLC条件でグリチルリチンを測定した場合に、検出限界以下であることを意味する。グリチルリチンを実質的に含まないことで、甘草抽出物中のグリチルリチン含有量を抑えることができるため、強過ぎる甘味を抑えることができ、甘味料以外の用途で甘草抽出物を利用する場合に問題となっていた甘味を抑えることで、甘草抽出物を幅広く利用できる。
【0021】
また、本発明の甘草抽出物は、リクイリチゲニンを含むのが好ましく、固形分1gあたりのリクイリチゲニン含有量は0.5μg以上が好ましく、1.0μg以上がより好ましく、1.5μg以上がさらに好ましく、3.0μg以上が特に好ましく、5.0μg以上が最も好ましい。また、好ましくは甘草原料1gあたり0.2mg以上、より好ましくは0.3mg以上、さらに好ましくは0.5mg以上、特に好ましくは1mg以上のリクイリチゲニンを得るのが好ましい。
【0022】
さらに本発明の甘草抽出物は、リクイリチンよりリクイリチゲニンを多く含むのが好ましく、甘草抽出物中のリクイリチゲニン含有量がリクイリチン含有量より多ければ特に限定されないが、リクイリチゲニン含有量がリクイリチン含有量の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましく、リクイリチゲニンを含みかつリクイリチンを実質的に含まないのが特に好ましい。リクイリチンを実質的に含まないとは、試料中のリクイリチンの測定において、HPLCで逆相カラムC18を用い、UV検出器で254nmの吸収スペクトルを測定した場合に、検出限界以下であることを意味し、詳細には、実施例に記載のHPLC条件でリクイリチンを測定した場合に、検出限界以下であることを意味する。
【0023】
本発明の甘草抽出物は、各飲食品に添加して使用することができる。甘草抽出物の添加量は特に限定されないが、各種飲食品中の甘草抽出物含有量が、0.001~50重量%であるのが好ましく、0.005~20重量%がより好ましく、0.01~10重量%がさらに好ましく、各飲食品中にリクイリチゲニンとして0.1~200mg含むのが好ましく、0.2~100mg含むのがより好ましい。
【実施例0024】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【実施例0025】
甘草末(福田龍株式会社製)4gに、酵母(カネカインスタントドライイーストグリーン、カネカ食品株式会社製)0.2g及び水道水36gを加えて、37℃で1時間振盪しながら菌体と反応させた後、加熱処理(90℃、10分間)した。次いで、加熱処理した菌体反応液を、クエン酸を用いてpHを3.5に調整した後(実施例1-1)又はpH無調整で(実施例1-2)、遠心分離(2000×G、10分間)して上清を回収することで実施品1-1の甘草抽出物26.5g及び実施品1-2の甘草抽出物26gを得た。
【0026】
[比較例1]
甘草末(福田龍株式会社製)4gに、水道水36gを加えて、37℃で1時間振盪した後、加熱処理(90℃、10分間)した。次いで、pH無調整で(比較例1-1)又はクエン酸を用いてpHを3.5に調整した後(比較例1-2)、遠心分離(2000×G、10分間)して上清を回収することで比較品1-1の甘草抽出物27g及び比較品1-2の甘草抽出物27gを得た。
【0027】
[評価試験]
実施品1-1、実施品1-2、比較品1-1及び比較品1-2について、常法に従ってpH及び固形分を測定し、HPLCを用いて以下の条件でリクイリチン、リクイリチゲニン及びグリチルリチンの含有量を測定し、結果を表1に示した。また、各抽出物を水道水で10倍に希釈したものについて風味を評価し、結果を表1に示した。風味の評価は、甘草臭をほとんど感じないものを○、強く感じるものを×、甘味をほとんど感じないものを○、強く感じるものを×とした。
<HPLC測定条件>
検出器:UV検出器(254nm)
カラム:Inertsil ODS-EP(内径4.6mm、長さ250mm、ジーエルサイエンス株式会社製)
移動相A:15容量%アセトニトリル水溶液(0.1容量%リン酸含有)
移動相B:80容量%アセトニトリル水溶液(0.1容量%リン酸含有)
グラジエント:移動相Aから移動相Bへのグラジエント(50分間)
流速:0.8ml/分
カラム温度:40℃
標品:リクイリチン(局方生薬試験用、富士フィルム和光純薬株式会社製)、リクイリチゲニン(局方生薬試験用、富士フィルム和光純薬株式会社製)及びグリチルリチン(局方生薬試験用、富士フィルム和光純薬株式会社製)をそれぞれ50容量%アセトニトリル水溶液で適宜希釈し、それぞれの検量線を作成した。
【0028】
【表1】
【0029】
酵母による菌体反応を行って得られた実施品1-1及び1-2の甘草抽出物は、何れも甘草臭がほとんど感じられず、菌体反応を行っていない比較品1-1及び1-2の甘草抽出物の甘草臭が強いのに対し、甘草臭が抑えられていることが分かった。また、加熱処理した菌体反応液を酸性に調整し、遠心上清を回収することで、甘味がほとんど感じられない甘草抽出物が得られ、該甘草抽出物は、上記測定条件でグリチルリチンが不検出だった。
【実施例0030】
甘草末(福田龍株式会社製)4gに、酵母(サフ・インスタントイースト金、ルサッフル社製)0.4g及び水道水36gを加えて、30℃で3時間振盪しながら菌体と反応させた後、90℃、10分間(実施例2-1及び2-3)又は121℃、10分間(実施例2-2及び2-4)加熱処理した。次いで、加熱処理した菌体反応液を、クエン酸を用いてpHを3.5に調整した後(実施例2-1及び2-2)又はpH無調整で(実施例2-3及び2-4)、遠心分離(2000×G、10分間)して各上清を回収した。各上清にβ-グルコシダーゼ製剤であるスミチーム(登録商標)BGA(新日本化学工業株式会社製)を0.02g添加して60℃で1時間酵素処理を行うことで、実施品2-1の甘草抽出物24g、実施品2-2の甘草抽出物24.5g、実施品2-3の甘草抽出物24g及び実施品2-4の甘草抽出物24.5gを得た。実施品2-1~2-4について、上記と同様に評価試験を行い、結果を表2に示した。
【0031】
【表2】
【0032】
最終的にβ-グルコシダーゼ製剤で酵素処理を行って得られた実施品2-1~2-4は、何れも、リクイリチンが上記測定条件で不検出で、リクイリチゲニンが315~412ppm検出された。また、加熱処理後に酸性に調整し、遠心上清を回収することで、甘味がほとんど感じられない甘草抽出物が得られ、該甘草抽出物は、上記測定条件でグリチルリチンが不検出だった。さらに、菌体反応後の加熱処理は、常圧に比べ加圧加熱の方が若干、酵素処理後のリクイリチゲニン含有量が多かったが、何れの加熱条件でも良いことが分かった。