(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004751
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 15/00 20060101AFI20240110BHJP
A46B 7/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A46B15/00 K
A46B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104554
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶貴
(72)【発明者】
【氏名】野田 玲央奈
(72)【発明者】
【氏名】糸瀬 邦之
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳彬
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA01
3B202AB02
3B202BA02
3B202BC08
3B202BE10
3B202EA01
3B202GA01
(57)【要約】
【課題】毛束の配置の自由度を確保しつつ、低電力で歯肉を効率良く加熱することができる歯ブラシを提供する。
【解決手段】歯ブラシは、ヘッド部10と、複数の毛束11と、発熱体と、を備えている。毛束11は、ヘッド部10の前面から突出する。発熱体は、膜状ヒータ13によって構成されている。膜状ヒータ13、ヘッド部10の外表面のうちの、毛束11の突出領域A1から離間した位置に少なくとも配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部と、
前記ヘッド部の前面から突出する毛束と、
前記ヘッド部に配置された電熱式の発熱体と、を備え、
前記発熱体は、膜状ヒータによって構成されるとともに、前記ヘッド部の外表面のうちの、前記毛束の突出領域から離間した位置に少なくとも配置されている、歯ブラシ。
【請求項2】
前記膜状ヒータは、一方向に長い帯状とされるとともに、前記ヘッド部の外周縁部に沿って配置されている、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ヘッド部の外周縁部には、前記ヘッド部の外周側面から前記突出領域および、または背面の中央領域に向かって傾斜する傾斜面が設けられ、
前記膜状ヒータは、前記傾斜面に沿って配置されている、請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記外表面の外側に向かって凸に湾曲した湾曲面である、請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記膜状ヒータは、前記ヘッド部の外周の最外郭の全長の25%以上の範囲にわたって配置されている、請求項2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記膜状ヒータは、ヒータ本体の少なくとも外側に臨む面が樹脂材料から成る被覆部によって覆われている、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記ヘッド部の前記外周縁部には、内側側面の少なくとも一部が前記傾斜面に連続し前記膜状ヒータの幅方向の一端側を受容する嵌合溝が設けられている、請求項3または4に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記ヘッド部は、
前記毛束を支持する毛束支持ブロックと、
前記毛束支持ブロックが脱着可能に取り付けられるベースブロックと、を備え、
前記膜状ヒータは、前記ベースブロックに配置されている、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
前記ヘッド部のうちの、前記毛束の突出する突出領域と前記膜状ヒータの間には、当該突出領域の熱伝導率よりも熱伝導率の小さい熱遮断部が配置されている、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシによる口腔内の清掃時に歯肉に温熱刺激を付与する機能を備えた歯ブラシが案出されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の歯ブラシは、毛束(ブラシ)が突出する樹脂製のヘッド部の内部に金属線から成る発熱部が配置されている。発熱部は、電源から電力が供給されることにより、ヘッド部の温度を約40℃乃至50℃に保つように発熱する。
【0004】
特許文献2に記載の歯ブラシは、ヘッド部の前面のうちの、毛束(ブラシ)の付根部の近傍領域に近赤外線LEDが配置されている。近赤外線LEDは、電源から電力が供給されることにより、毛束の付根部の近傍部分から口腔内の歯肉に近赤外線を照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/068215号
【特許文献2】特開2001-299454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の歯ブラシは、金属線から成る発熱部が樹脂製のヘッド部の内側に配置されているため、口腔内の歯肉に充分な熱量を伝達するためには、発熱部に大きな電力を供給しなければならない。現在、低電力化の観点からは、発熱部での消費電力の低減が望まれている。
【0007】
また、特許文献2に記載の歯ブラシは、近赤外線LEDがヘッド部の前面のうちの毛束の付根部の近傍領域に配置されているため、口腔内の清掃に望ましい毛束の配置が近赤外線LEDによって制限され易い。口腔内の清掃力を高める観点からは、毛束の配置の自由度を高めることが望まれている。
【0008】
そこで本発明は、毛束の配置の自由度を確保しつつ、低電力で歯肉を効率良く加熱することができる歯ブラシを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の歯ブラシは、ヘッド部と、前記ヘッド部の前面から突出する毛束と、前記ヘッド部に配置された電熱式の発熱体と、を備え、前記発熱体は、膜状ヒータによって構成されるとともに、前記ヘッド部の外表面のうちの、前記毛束の突出領域から離間した位置に少なくとも配置されている。
【0010】
本構成の歯ブラシは、発熱体が膜状ヒータによって構成されているため、発熱体である膜状ヒータをヘッド部の外表面の形状に柔軟に追従させて配置することができる。このため、ヘッド部が口腔内に挿入されて歯肉に近接、若しくは、当接するときに、膜状ヒータによって歯肉を効率良く加熱することができる。
また、本構成の歯ブラシは、発熱体である膜状ヒータがヘッド部の外表面のうちの、毛束の突出領域から離間した位置に少なくとも配置されているため、発熱体が口腔内の清掃に望ましい毛束の配置を制限する不都合が生じにくい。
【0011】
前記膜状ヒータは、一方向に長い帯状とされるとともに、前記ヘッド部の外周縁部に沿って配置されるようにしても良い。
【0012】
この場合、発熱体である膜状ヒータが一方向に長い帯状であるため、膜状ヒータをヘッド部の外周縁部の形状に柔軟に追従させることができる。このため、膜状ヒータがヘッド部の外表面から乖離することがなくなり、歯ブラシの製品品質と耐久性が向上する。
また、本構成を採用した場合には、ヘッド部の外周縁部に沿って膜状ヒータを充分に長くに配置することができるため、歯ブラシの使用時に、膜状ヒータ(発熱体)による充分な温熱効果を実感することができる。
【0013】
前記ヘッド部の外周縁部には、前記ヘッド部の外周側面から前記突出領域および、または背面の中央領域に向かって傾斜する傾斜面が設けられ、前記膜状ヒータは、前記傾斜面に沿って配置されるようにしても良い。
【0014】
この場合、膜状ヒータがヘッド部の外周縁部の傾斜面に沿って配置されるため、歯ブラシの使用時に、毛束の先端を歯に押し当てた状態で膜状ヒータを口腔内の歯肉に充分に近接させることができる。このため、膜状ヒータの過剰な加熱を抑制した状態で歯肉に充分な熱量を付与することができる。したがって、本構成を採用した場合には、膜状ヒータの消費電力の低減をより図りつつ、歯肉を好適な温度に加熱することができる。
また、本構成では、ヘッド部の毛束の突出領域の外側および、または背面の中央領域の外側に配置される傾斜面に膜状ヒータが配置されるため、膜状ヒータが毛束の望ましい配置に影響を与えにくい。このため、本構成を採用した場合には、毛束をより好適な位置に配置して清掃能力を高め、使用者による清掃実感を担保することができる。
【0015】
前記傾斜面は、前記外表面の外側に向かって凸に湾曲した湾曲面であっても良い。
【0016】
この場合、膜状ヒータがヘッド部の外周縁部の湾曲面に沿って配置されることになるため、歯ブラシの使用時に、膜状ヒータが口腔内の歯肉により近接し易くなるとともに、膜状ヒータが発する熱を歯肉のより広い角度範囲に伝達し易くなる。
【0017】
前記膜状ヒータは、前記ヘッド部の外周の最外郭の全長の25%以上の範囲にわたって配置されることが望ましい。
【0018】
この場合、ヘッド部を歯肉に近接させたときに、歯肉の広い範囲を膜状ヒータによって加熱して温熱効果をより実感することができる。
【0019】
前記膜状ヒータは、ヒータ本体の少なくとも外側に臨む面が樹脂材料から成る被覆部によって覆われることが望ましい。
【0020】
この場合、ヘッド部が口腔内に挿入されたときに、膜状ヒータが被覆部を通して歯肉や頬肉に接触することになるため、口腔内での接触感が良好になるとともに、ヒータ本体の防水性が高まり、かつ安全性も高まる。
また、被覆部が樹脂材料から成ることから、製造時に、被覆部を通して膜状ヒータをヘッド部に容易に溶着することが可能になる。
【0021】
前記ヘッド部の前記外周縁部には、内側側面の少なくとも一部が前記傾斜面に連続し前記膜状ヒータの幅方向の一端側を受容する嵌合溝が設けられるようにしても良い。
【0022】
この場合、膜状ヒータの幅方向の一端側が嵌合溝に保持されるため、歯ブラシの製造時に、膜状ヒータを嵌合溝に嵌合することにより、膜状ヒータをヘッド部に対して容易に固着することができる。また、嵌合溝に膜状ヒータを嵌合することにより、ヘッド部を口腔内に挿入したときに、口腔内の頬肉と膜状ヒータとの乖離幅を一定幅以上に拡げ、安全性をより高めることができる。
【0023】
前記ヘッド部は、前記毛束を支持する毛束支持ブロックと、前記毛束支持ブロックが脱着可能に取り付けられるベースブロックと、を備え、前記膜状ヒータは、前記ベースブロックに配置されるようにしても良い。
【0024】
この場合、歯ブラシの繰り返し使用によって毛束が傷んだときには、毛束支持ブロックのみを交換することが可能になる。このため、膜状ヒータのあるベースブロックをそのまま使用し続けることができ、経済性を高めることができる。
また、歯ブラシの製造時には、毛束支持ブロックをベースブロックと分離した状態で毛束支持ブロックに毛束を植毛する作業を行うことができる。このため、本構成を採用した場合には、毛束の打ち込み作業に伴う膜状ヒータの損傷の心配がないため、毛束の配置の自由度をより高めることができる。
【0025】
前記ヘッド部のうちの、前記毛束の突出する突出領域と前記膜状ヒータの間には、当該突出領域の熱伝導率よりも熱伝導率の小さい熱遮断部が配置されるようにしても良い。
【0026】
この場合、膜状ヒータから突出領域への熱伝導が熱遮熱部によって遮断されるようになり、ヘッド部の毛束やその支持部が膜状ヒータの熱によって損傷するのを未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の歯ブラシによれば、毛束の配置の自由度を確保しつつ、低電力で歯肉を効率良く加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、第1実施形態の歯ブラシの全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の歯ブラシの
図1のII-II線に沿う断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の歯ブラシの製造工程を示す
図2と同様の断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の歯ブラシの
図1のIV部の拡大図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の歯ブラシの変形例を示す
図2と同様の断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の歯ブラシのブラシ体を示す正面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の歯ブラシの
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の膜状ヒータの分解斜視図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の歯ブラシの製造工程を示す金型と膜状ヒータの断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の歯ブラシの変形例を示す
図7と同様の断面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態の歯ブラシのブラシ体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態やその変形例においては、同一部分に共通符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の歯ブラシ1の全体構成を示す正面図であり、
図2は、歯ブラシ1の
図1のII-II線に沿う断面図である。
歯ブラシ1は、使用者が把持するハンドル部2と、ハンドル部2に脱着可能に取り付けられるブラシ体3と、を備えている。本実施形態の歯ブラシ1は、電動歯ブラシであり、ハンドル部2の内部に振動発生用の駆動部と電源が内蔵されている。ハンドル部2は、略円筒状に形成され、外周面の一部に電源スイッチ4が配置されている。ハンドル部2の軸方向の一端部には、図示しない駆動軸が突設されている。ブラシ体3は、駆動軸に脱着可能に取り付けられるとともに、駆動軸を通して振動発生用の駆動部から振動を伝達される。また、ハンドル部2とブラシ体3の脱着部には、ハンドル部2内の図示しない給電線とブラシ体3の内部の配線5を接続するための図示しないコネクタ部が設けられている。
なお、本実施形態の説明では、歯ブラシの形態の一例として電動歯ブラシを例示しているが、本発明に係る歯ブラシは、電動歯ブラシに限定されない。歯ブラシは、ブラシ体に対する振動付与機能を持たないものであっても良い。この場合、ブラシ体は、電源や駆動部を持たない柄に一体に形成される。歯ブラシの形態が電動歯ブラシに限定されないことについては、以下で説明する各実施形態や変形例においても同様である。
【0031】
ブラシ体3は、長手方向の一端側に、ハンドル部2の駆動軸に脱着可能に取り付けられる截頭円錐状の連結基部6が配置され、長手方向の他端側に、正面視が略楕円状のヘッド部10が配置されている。連結基部6とヘッド部10は、ヘッド部10よりも正面視での幅が狭いネック部7によって連結されている。ブラシ体3の連結基部6からヘッド部10にかけては、ポリプロピレン(PP)やポリアセタール(POM)、ABS樹脂等の樹脂材料によって一体に形成されている。なお、ブラシ体3の連結基部6からヘッド部10にかけては、後述する被覆部15との溶着の観点やコストの観点からは、ポリプロピレン(PP)によって形成することが望ましい。
以下の説明において、ヘッド部10に関しては、
図1の紙面の表側に向く面を「前面」と呼び、前面と逆側の面を「背面」と呼ぶものとする。また、ヘッド部10に関し、ネック部7に連結される側を「基部側」と呼び、基部側と逆側を「先端側」と呼ぶものとする。これらの呼称は、後述する他の実施形態や変形例においても同様とする。
【0032】
ヘッド部10の前面には、複数の毛束11(ブラシ)が突出する突出領域A1が設けられている。突出領域A1は、平面視が略楕円状のヘッド部10の外周縁部10eの内側に位置されている。突出領域A1には、
図2に示すように、複数の植毛穴12が形成されている。毛束11は、各植毛穴12に挿入され、固着されている。ヘッド部10の外周縁部10eには、ヘッド部10の外周側面10sから、ヘッド部10の前面の毛束11の突出領域A1に向かって傾斜する傾斜面10iが設けられている。本実施形態では傾斜面10iは、
図2に示すように、ヘッド部10の外表面の外側に向かって凸に湾曲した湾曲面によって構成されている。
なお、本実施形態では、ヘッド部10の外周側面10sから、ヘッド部10の前面の毛束11の突出領域A1に向かって傾斜する傾斜面10iが設けられているが、ヘッド部10の外周側面10sから、ヘッド部10の背面の中央領域に向かって傾斜する傾斜面を設けるようにしても良い。この場合、ヘッド部10の外周側面10sからヘッド部10の背面の中央領域に向かって傾斜する傾斜面のみを設けても、ヘッド部10の外周側面10sから突出領域A1に向かって傾斜する傾斜面10iと、ヘッド部10の外周側面10sからヘッド部10の背面の中央領域に向かって傾斜する傾斜面を両方設けるようにしても良い。これらの傾斜面には、後述する膜状ヒータ13のヒータ本体14が配置される。
【0033】
ヘッド部10の外周縁部10eには、当該外周縁部10eの輪郭形状に沿うように、電熱式の発熱体である膜状ヒータ13が取り付けられている。膜状ヒータ13は、例えば、アルミ箔フィルムによってヒータ回路が形成されたヒータ本体14と、ヒータ本体14の少なくとも外側に臨む側の面を覆う被覆部15と、を備えている。ヒータ本体14のヒータ回路は、例えば、アルミエッチング等によって形成されている。また、被覆部15は、例えば、絶縁性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料(熱可塑性の樹脂材料)によって形成されている。被覆部15は、ヒータ本体14の外側を覆う部分の厚みが1mm以下とされている。
【0034】
膜状ヒータ13のヒータ本体14は、0.5mm以下、望ましくは、0.2mm以下の薄膜状に形成される。ヒータ本体14は、略一定幅を持ち一方向に長く延びる帯状に形成されている。本実施形態では、膜状ヒータ13は、略楕円状のヘッド部10の基部側(ネック部7側)の一部を除く外周のほぼ全域に亘って連続して配置されている。ただし、膜状ヒータ13は、ヘッド部10の外周の一部にのみ配置するようにしても良い。この場合、膜状ヒータ13の長手方向の長さは、少なくとも10mm以上であることが望ましい。
ここで、ヘッド部10がネック部7に向かって窄まり、最小幅となる部分をヘッド部10の基端と呼ぶものとすると、膜状ヒータ13は、ヘッド部10の基端を起点してヘッド部10の外周の最外郭の全長の25%以上の範囲にわたって配置されることがより望ましい。また、ヘッド部10の前記基端を起点としたヘッド部10の背面の最外殻内側の面積を100とするとき、膜状ヒータ13は、ヘッド部10背面の最外郭内側の面積の10%以上の面積であることが望ましい。この場合、口腔内を多角的に(広範囲にわたって)加熱でき、歯肉に対する充分な温熱効果を得ることができる。さらに、この場合、口腔内の頬も加熱できるため、頬内にある筋肉への温熱効果とリラックス効果も得ることができる。
【0035】
図3は、歯ブラシ1(ブラシ体3)の製造工程の一部を示す
図2と同様の歯ブラシ1(ブラシ体3)の断面図である。
本実施形態の歯ブラシ1は、
図3に示すように、ヘッド部10が射出成形によって形成された後に、ヘッド部10の外周縁部10eに、膜状ヒータ13のヒータ本体14が取り付けられる。歯ブラシ1は、その後にヒータ本体14の外側が被覆部15によって覆われ、その状態で被覆部15がヘッド部10に溶着される。突出領域A1の植毛穴12には、毛束11が植毛される。
【0036】
図2,
図3に示すように、ヘッド部10の外周縁部10eには、ヘッド部10の内側寄りの内面(内側側面)が傾斜面10iに連続するように嵌合溝16が形成されている。ここで、ヘッド部10の外周側面10sの上部には、内側方向(突出領域A1の方向)に延びる棚状の段差面10dが形成されている。嵌合溝16は、段差面10dの内側の端縁からヘッド部10の背面側に向かって窪んでいる。嵌合溝16の外側の壁は、外周側面10sの一部によって形成された所定厚みの係止片17によって構成されている。嵌合溝16は、ヘッド部10の外周縁部10eに沿って略楕円状に延びている。
【0037】
ヘッド部10の外周縁部10eに沿って略楕円状に延びる嵌合溝16には、
図3に示すように、ヒータ本体14の幅方向外側の端部が嵌合される。ヒータ本体14は、こうして嵌合溝16に嵌合されると、幅方向外側の端部が係止片17によって保持され、幅方向の内側領域がヘッド部10の湾曲した傾斜面10iに近接するようになる。
【0038】
膜状ヒータ13の樹脂製の被覆部15は、この状態でヒータ本体14の外側面に被着されるとともに、幅方向の内側縁部と外側縁部がヘッド部10の外周縁部10eに熱溶着等によって固定される。本実施形態では、被覆部15の幅方向の外側縁部はヘッド部10の外周側面10sにも被着(溶着)されている。こうして、樹脂製の被覆部15がヘッド部10の外周縁部10eに溶着されると、膜状ヒータ13のヒータ本体14は、ヘッド部10の略楕円状の輪郭に沿って密着するとともに、幅方向において、外周縁部10eの湾曲した傾斜面10iにも密着することになる。
【0039】
図4は、
図1のIV部の拡大図である。
上述のようにして製造されたブラシ体3は、
図4に示すように、ヘッド部10の正面視において、膜状ヒータ13のヒータ本体14と、毛束11の突出領域A1(最も外側の植毛穴12)との離間幅wが0.3mm以上とされている。これにより、ヒータ本体14が発熱したときに、毛束11の付根部が熱によるダメージを受けにくくなる。
【0040】
図5は、本実施形態の変形例を示す
図2と同様の断面図である。
本変形例のヘッド部10Aは、膜状ヒータ13の被覆部15を構成する樹脂材料がヘッド部10の外周側面10sだけでなく、ヘッド部10の背面にも被着されている。このように構成することにより、被覆部15の剥離をより抑制することができる。
【0041】
また、被覆部15を構成する樹脂材料は、必ずしも肉厚が一定である必要はない。例えば、ヘッド部10の外周縁部10eの曲率の小さい部位の肉厚を他の部位よりも肉厚にして耐久性を高めるようにしても良い。また、ヒータ本体14の剥離を抑制する観点から、ヘッド部10の外周縁部10eの外側領域の肉厚を内側領域の肉厚よりも厚くしても良い。
【0042】
さらに、ヒータ本体14は、ヘッド部10の外周縁部10eの曲率等に応じてヒータ回路の蛇行部の密度を部分的に変えるようにしても良い。ヒータ回路の蛇行部の密度を高めることにより、加熱し難い部分の熱量を増大させることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態の歯ブラシ1は、発熱体が膜状ヒータ13によって構成されているため、発熱体である膜状ヒータ13をヘッド部10の外表面の形状に柔軟に追従させて配置することができる。このため、ヘッド部10を口腔内に挿入して使用するときには、膜状ヒータ13が口腔内の歯肉に近接、若しくは、当接して歯肉を効率良く加熱することができる。
さらに、本実施形態の歯ブラシ1は、発熱体である膜状ヒータ13がヘッド部10の外表面のうちの、毛束11の突出領域A1から離間した位置に少なくとも配置されているため、膜状ヒータ13が口腔内の清掃に望ましい毛束11の配置を大きく制限しにくくなる。
したがって、本実施形態の歯ブラシ1を採用した場合には、毛束11の配置の自由度を確保しつつ、低電力で歯肉を効率良く加熱することができる。
なお、本実施形態では、膜状ヒータ13がヘッド部10の外表面のうちの突出領域A1から所定距離以上離間した部位にのみ配置されているが、膜状ヒータ13の一部は突出領域A1に一部跨っていても良い。
【0044】
また、本実施形態の歯ブラシ1は、膜状ヒータ13が一方向に長い帯状に形成され、ヘッド部10の外周縁部10eに沿って配置されている。このため、膜状ヒータ13をヘッド部10の外周縁部10eの形状に柔軟に追従させることができる。特に、本実施形態では、膜状ヒータ13のヒータ本体14の厚みが0.5mm以下と薄く、かつ、膜状ヒータ13の長さが10mm以上に長く設定されているため、膜状ヒータ13をヘッド部10の外周縁部10eの形状により柔軟に追従させることができる。
したがって、本構成の歯ブラシ1を採用した場合には、膜状ヒータ13がヘッド部10の外表面から乖離することがなくなり、歯ブラシ1の製品品質と耐久性が向上する。さらに、ヘッド部10の外周縁部10eに沿って膜状ヒータ13を充分に長くに配置することができるため、歯ブラシ1の使用時に、膜状ヒータ13による充分な温熱効果を実感することができる。
【0045】
また、本実施形態の歯ブラシ1は、ヘッド部10の外周縁部10eに、ヘッド部10の外周側面10sから毛束11の突出領域A1および、または背面の中央領域に向かって傾斜する傾斜面10iが設けられ、膜状ヒータ13が傾斜面10iに沿って配置されている。このため、歯ブラシ1の使用時に、毛束11の先端を歯に押し当てた状態で膜状ヒータ13を口腔内の歯肉に充分に近接させることができる。したがって、本構成を採用した場合には、膜状ヒータ13の過剰な加熱を抑制した状態で歯肉に充分な熱量を付与することができるため、膜状ヒータ13の消費電力のさらなる低減を図りつつ、歯肉を好適な温度に加熱することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の歯ブラシ1は、ヘッド部10の毛束11の突出領域A1の外側および、またはヘッド部10の背面の中央領域の外側に配置される傾斜面10iに膜状ヒータ13が配置されるため、膜状ヒータ13が毛束11の望ましい配置に影響を与えにくい。したがって、毛束11をより好適な位置に配置して清掃能力を高め、使用者による清掃実感を担保することができる。
【0047】
また、本実施形態の歯ブラシ1は、ヘッド部10の外周縁部10eの傾斜面10iが、ヘッド部10の外表面の外側に向かって凸に湾曲した湾曲形状とされている。このため、膜状ヒータ13のヒータ本体14がヘッド部10の外周縁部10eの湾曲面に沿った湾曲形状となる。したがって、本構成を採用した場合には、歯ブラシ1の使用時に、膜状ヒータ13が口腔内の歯肉により近接し易くなるとともに、膜状ヒータが発する熱を歯肉のより広い角度範囲に伝達し易くなる。
なお、ヘッド部10の外周縁部10eの傾斜面10iは、必ずしも湾曲形状である必要はなく、外周側面10sから突出領域A1や背面の中央領域に向かって直線状に傾斜する形状であっても良い。
【0048】
また、本実施形態の歯ブラシ1は、ヘッド部10の外周縁部10eの湾曲した輪郭部に沿って膜状ヒータ13が配置されている。このため、ヘッド部10を口腔内に挿入してヘッド部10を動かす向きを変えたときに、膜状ヒータ13を効率良く歯肉に近接させることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の歯ブラシ1は、膜状ヒータ13が、ヘッド部10の外周の最外郭の全長の25%以上の範囲にわたって配置されている。このため、ヘッド部10を歯肉に近接させたときに、歯肉の広い範囲を膜状ヒータ13によって加熱して温熱効果をより実感することができる。
【0050】
また、本実施形態の歯ブラシ1は、膜状ヒータ13のヒータ本体14の少なくとも外側に臨む面が樹脂材料から成る被覆部15によって覆われている。このため、ヘッド部10が口腔内に挿入されたときに、膜状ヒータ13が被覆部15を通して歯肉や頬肉に接触することになり、口腔内での接触感が良好になるとともに、ヒータ本体14の防水性が高まり、かつ安全性も高まる。
さらに、本実施形態の歯ブラシ1は、被覆部15が樹脂材料(熱可塑性の樹脂材料)から成ることから、製造時に、被覆部15を通して膜状ヒータ13をヘッド部10に容易に溶着することができる。
【0051】
また、本実施形態の歯ブラシ1は、ヘッド部10の外周縁部10eに、内側側面が傾斜面10iに連続し膜状ヒータ13の幅方向の外側の端部を受容する嵌合溝16が設けられている。このため、歯ブラシ1の製造時に、膜状ヒータ13の幅方向の外側の端部を嵌合溝16に嵌合して保持させことができ、膜状ヒータ13をヘッド部10に対して容易に固着することができる。
さらに、本実施形態の歯ブラシ1は、嵌合溝16に膜状ヒータ13の幅方向の外側の端部が嵌合されるため、ヘッド部10を口腔内に挿入したときに、口腔内の頬肉と膜状ヒータ13との乖離幅を一定幅以上に拡げ、安全性をより高めることができる。
なお、本実施形態では、嵌合溝16の内側側面の全域が傾斜面10iに連続しているが、嵌合溝16は、内側側面の一部のみが傾斜面10iに連続する形状であっても良い。
【0052】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のブラシ体103(歯ブラシ101)を示す正面図であり、
図7は、ブラシ体103(歯ブラシ101)の
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
本実施形態の歯ブラシ101のブラシ体103は、連結基部6とヘッド部110がネック部7によって連結されている。ヘッド部110は、正面視形状が略楕円状に形成されている。ヘッド部110は、連結基部6やネック部7とともに、ポリプロピレン(PP)やポリアセタール(POM)、ABS樹脂等の樹脂材料によって一体に形成されている。
【0053】
ヘッド部110の前面には、複数の毛束11(ブラシ)が突出する突出領域A1が設けられている。ヘッド部10の外周縁部10eには、ヘッド部10の外周側面10sから、ヘッド部10の前面の突出領域A1に向かって傾斜する傾斜面10iが設けられている。傾斜面10iは、ヘッド部10の外表面の外側に向かって凸に湾曲している。ヘッド部110の外周縁部10eの外周側面10sと傾斜面10iには、電熱式の発熱体である膜状ヒータ113が取り付けられている。
なお、本実施形態の場合も、傾斜面10iは、ヘッド部10の外周側面10sからヘッド部10の背面の中央領域に向かって傾斜する傾斜面であっても良い。この場合も、傾斜面には膜状ヒータ113が取り付けられる。
【0054】
図8は、膜状ヒータ113の分解斜視図である。
膜状ヒータ113は、
図8に示すように、アルミ箔フィルムによってヒータ回路が形成されたヒータ本体14と、ヒータ本体14の表裏、および、外周縁部を覆う被覆部115と、を備えている。なお、ヒータ本体14は、
図8に示すように蛇行した形状であっても良く、蛇行しない帯状形状であっても良い。被覆部115は、ヒータ本体14の内側面側を覆うインナシート115iと、ヒータ本体14の外側面側を覆うアウタシート115oと、から構成されている。インナシート115iとアウタシート115oは、絶縁性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料(樹脂材料)によって形成されている。インナシート115iとアウタシート115oは、これらの間にヒータ本体14を挟み込んだ状態で相互に溶着される。インナシート115iとアウタシート115oの厚みは、1mm以下とされている。
【0055】
ヒータ本体14は、略一定幅を持ち一方向に長く延びる帯状に形成されている。ヒータ本体14は、0.5mm以下、望ましくは、0.2mm以下の薄膜状に形成される。ヘッド部10の前記基端を起点としたヘッド部10の背面の最外殻内側の面積を100とするとき、膜状ヒータ13は、ヘッド部10背面の最外郭内側の面積の10%以上の面積であることが望ましい。
【0056】
図9は、歯ブラシ101(ブラシ体103)の製造工程の一部を示す断面図である。
図9に示す金型30の断面は、歯ブラシ101の
図7に示す断面に対応している。
本実施形態の歯ブラシ101は、ヘッド部110が
図9に示すような金型30を用いて射出成形される。金型30には、ヘッド部110を造形するためのキャビティ31が形成されている。キャビティ31のうちの、ヘッド部110の外周縁部10eの外周側面10sから傾斜面10iにわたる部位に対応する位置には、断面が略円弧状の凹溝32が形成されている。凹溝32は、ヘッド部110の外周側面10sと傾斜面10iに対向する側が開口している。また、凹溝32のヘッド部110の前面側(
図9中の上側)の端部は、断面略L字状の薄肉の鉤状片33によって構成されている。
【0057】
金型30の鉤状片33は、ヘッド部110の外周縁部10eに沿って延在している。凹溝32には、上述した膜状ヒータ113が取り付けられる。膜状ヒータ113は、凹溝32の湾曲形状に沿うように変形させた状態において、幅方向の内側端が鉤状片33によって係止される。
【0058】
金型30のキャビティ31内には、凹溝32に膜状ヒータ113を取り付けた状態において、溶融した高温の基材樹脂が充填される。このとき、基材樹脂の熱により膜状ヒータ113の被覆部115が溶融し、膜状ヒータ113がヘッド部110の傾斜面10iと外周側面10sとに溶着されることになる。こうして造形された歯ブラシ101(ブラシ体103)は、金型30から取り出される。
【0059】
上述のようにして形成された歯ブラシ101の前面側には、ヘッド部110の突出領域A1と膜状ヒータ113の間に鉤状片33の厚み分の隙間29ができる。この隙間29は、突出領域A1の毛束11に膜状ヒータ113の高熱が伝達されるのを遮断する空気層を形成する。本実施形態では、隙間29部分の空気層が、ヘッド部の110の突出領域A1の熱伝導率よりも熱伝導率の小さい熱遮断部を構成する。
ただし、熱遮断部は、突出領域A1の熱伝導率よりも熱伝導率の小さい別部材によって構成することも可能である。
【0060】
図10は、本実施形態の変形例を示す
図7と同様の断面図である。
本変形例のヘッド部110Aは、
図7に示す実施形態に比較して膜状ヒータ113Aの幅(
図10中の上下方向の幅)が狭く設定されている。膜状ヒータ113Aは、ヘッド部110Aの傾斜面10iに被着されているが、ヘッド部110Aの外周側面10sには被着されていない。
【0061】
以上のように、本実施形態の歯ブラシ101は、第1実施形態とほぼ同様の基本構成を備えているため、上述した第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
本実施形態の歯ブラシ101は、上述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0062】
本実施形態の歯ブラシ101は、ヘッド部110のうちの、毛束11の突出する突出領域A1と膜状ヒータ113の間に、熱遮断部を構成する隙間29が設けられている。このため、膜状ヒータ113から突出領域A1への熱伝導が隙間29の空気層によって遮断されるようになる。したがって、本構成を採用した場合には、ヘッド部110の毛束11やその支持部が膜状ヒータ113の熱によって損傷するのを未然に防ぐことができる。
【0063】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態の歯ブラシ201(ブラシ体203)を示す正面図である。また、
図12は、
図11のXII-XII線に沿う断面図であり、
図13は、
図11のXIII-XIII線に沿う断面図である。
本実施形態の歯ブラシ201は、ヘッド部210が、毛束11を支持する毛束支持ブロック210aと、毛束支持ブロック210aが脱着可能に取り付けられるベースブロック210bと、を備えている。毛束支持ブロック210aとベースブロック210bは、ポリプロピレン(PP)やポリアセタール(POM)、ABS樹脂等の樹脂材料によって形成されている。ベースブロック210bはヘッド部210の外周縁部10eと背部を構成している。ベースブロック210bには、前面側に向かって開口する略楕円状の凹部39が形成されている。毛束支持ブロック210aは、略楕円状の正面視形状に形成され、その前面側が複数の毛束11が突出する突出領域A1とされている。毛束支持ブロック210aは、ベースブロック210bの凹部39に脱着可能に取り付けられている。
【0064】
ベースブロック210bの外周縁部10eには、ヒータ本体14と被覆部15とからなる膜状ヒータ13が取り付けられている。膜状ヒータ13の構成は、第1実施形態と同様の構成であっても第2実施形態と同様の構成であっても良い。
【0065】
また、ベースブロック210bの凹部39の内周面の一部には複数の係止突起37(
図13参照)が突設されている。これに対し、毛束支持ブロック210aの外周面の係止突起37と対応する位置には、係止突起37が嵌合される係合穴35(窪み部)が形成されている。毛束支持ブロック210aは、係合穴35にベースブロック210b側の係止突起37が嵌合されることにより、ベースブロック210bに対して脱着可能に係止される。
なお、係止突起37は毛束支持ブロック210aの外周面に形成し、係合穴35はベースブロック210bの凹部39に形成するようにしても良い。
【0066】
図14は、本実施形態の変形例を示す
図13と同様の断面図である。
本変形例のヘッド部210Aは、毛束支持ブロック210aの底部の先端側に係止爪40が突設され、毛束支持ブロック210aの基部側に弾性変形可能なばね係止片44が延設されている。これに対し、ベースブロック210bの凹部39の底部の先端側には、係止爪40が挿入される爪受容部41が形成されている。
【0067】
毛束支持ブロック210aは、先端側の係止爪40をベースブロック210b側の爪受容部41に差し込み、その状態でばね係止片44を押し縮めつつ、ばね係止片44の端末部44eをベースブロック210b側の凹部39の端縁39eに係止させる。これにより、毛束支持ブロック210aはベースブロック210bに対して固定される。また、毛束支持ブロック210aをベースブロック210bから取り外す場合には、ばね係止片44の端末部44eを凹部39の端縁39eから離間させることによってばね係止片44側の係合を解除し、係止爪40を爪受容部41から引き抜く。
なお、ここで説明した毛束支持ブロック210aとベースブロック210bの脱着手段は一例であり、この脱着手段に限定されるものではない。
【0068】
以上のように、本実施形態の歯ブラシ201は、第1実施形態とほぼ同様の基本構成を備えているため、上述した第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
本実施形態の歯ブラシ201は、上述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0069】
本実施形態の歯ブラシ201は、ヘッド部210が、毛束11を支持する毛束支持ブロック210aと、毛束支持ブロック210aが脱着可能に取り付けられるベースブロック210bと、を備え、膜状ヒータ13がベースブロック210b側に設置されている。このため、歯ブラシ201の繰り返し使用によって毛束11が傷んだときには、毛束支持ブロック210aのみを交換することができる。したがって、本実施形態の歯ブラシ201を採用した場合には、膜状ヒータ13のあるベースブロック210bをそのまま使用し続けることができ、経済性を高めることができる。
【0070】
さらに、歯ブラシ201の製造時には、毛束支持ブロック210aをベースブロック210bと分離した状態で毛束支持ブロック210aに毛束11を植毛する作業を行うことができる。したがって、本実施形態の歯ブラシ201を採用した場合には、毛束11の打ち込み作業時に膜状ヒータ13がダメージを受けることがないため、毛束11の配置の自由度をより高めることができる。
【0071】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、膜状ヒータは、略楕円状のヘッド部の基部側(ネック部側)の一部を除く領域に略C字状に配置されているが、膜状ヒータは、ヘッド部の前面のうちの、突出領域よりも基端側を跨ぐように環状に配置するようにしても良い。
また、膜状ヒータは、ヘッド部の外表面のうちの、ヘッド部の側面や背面側のみに配置するようにしても良い。
また、上記の実施形態では、膜状ヒータはヘッド部の外周縁部にのみ配置されているが、膜状ヒータはその一部がネック部に跨るように配置するようにしても良い。
さらに、膜状ヒータの形状も一方向に長い帯状に限定されない。膜状ヒータは、当該膜状ヒータを配置する部位に応じて帯状以外の形状に形成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
1,101,201…歯ブラシ
10,10A,110,110A,210,210A…ヘッド部
10e…外周縁部
10i…傾斜面
10s…外周側面
11…毛束
13,113,113ち…膜状ヒータ
14…ヒータ本体
15,115…被覆部
16…嵌合溝
29…隙間(熱遮断部)
210a…毛束支持ブロック
210b…ベースブロック
A1…突出領域