(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047523
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】双眼ルーペ及び双眼ルーペの作成方法
(51)【国際特許分類】
G02B 23/18 20060101AFI20240329BHJP
G02B 25/00 20060101ALI20240329BHJP
G02C 7/08 20060101ALI20240329BHJP
G02C 9/00 20060101ALI20240329BHJP
A61B 90/20 20160101ALI20240329BHJP
【FI】
G02B23/18
G02B25/00
G02C7/08
G02C9/00
A61B90/20
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043796
(22)【出願日】2023-03-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022152236
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515182129
【氏名又は名称】米澤 きく子
(71)【出願人】
【識別番号】515182130
【氏名又は名称】株式会社メディソレーユ
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】米澤 きく子
【テーマコード(参考)】
2H039
2H087
【Fターム(参考)】
2H039AA04
2H039AB15
2H039AB41
2H039AB46
2H039AB52
2H087KA16
2H087KA23
2H087LA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所望の焦点調整部と倍率を有するルーペ本体の差替え可能な双眼ルーペであった、施術者の視界をより広くし明るくクリアな画質の双眼ルーペの作成方法を提供する。
【解決手段】光学系を内蔵する左右一対のルーペ本体3と、この一対のルーペ本体3を観察対象に向けた視野方向に支持するキャリアレンズ4を保持する眼鏡フレーム10と、キャリアレンズ4に取り付けられ、一対のルーペ本体3の接眼側端を挿入状態で着脱可能に受け入れる筒状のルーペホルダ9と、を備え、ルーペホルダ9及び一対のルーペ本体3の少なくとも接眼側部材は、プラスチック素材に磁性体粉末を混ぜて成形されたプラスチックマグネット素材を精密欧高圧縮成形又は多ゲート射出成型等の作成方法により、薄型でありながら高磁束密度性能に形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手元の観察対象を拡大する光学レンズ系を内蔵する左右一対のルーペ本体と、
前記一対のルーペ本体を前記観察対象に向けた視野方向に支持する左右のキャリアレンズと、
前記キャリアレンズを保持する眼鏡フレームと、前記一対のルーペ本体を左右夫々の前記キャリアレンズに着脱可能に取り付ける筒形状の一対のルーペホルダと、から構成され、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの筒状内面に接する接触部は、所定のプラスチック素材と所定の磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成され、
前記一対のルーペ本体の夫々は、前記一対のルーペホルダにおける前記ルーペ本体の接触部との磁気吸引力により前記ルーペホルダの筒内面において吸引された状態で密接に係止される、ことを特徴とする双眼ルーペ。
【請求項2】
前記ルーペ本体は、さらに、突起部を有するリングを介して前記ルーペホルダに装着され、前記ルーペホルダは、前記突起部に係合する鈎型溝の係合部を有することにより、前記ルーペ本体が前記ルーペホルダから離脱しないように形成された、ことを特徴とする請求項1に記載の双眼ルーペ。
【請求項3】
前記ルーペ本体は、焦点距離が異なる単倍率又は所定範囲で焦点距離を連続的に変更可能なズーム機構を備える複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の双眼ルーペ。
【請求項4】
前記ルーペ本体の前記接眼端側面には、予め複数準備された遠近の視力調整用レンズ及び乱視補正用レンズの一つが選択されて着脱可能に嵌め込まれる、ことを特徴とする請求項3に記載の双眼ルーペ。
【請求項5】
請求項1に記載の双眼ルーペの作成方法であって、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱硬化性樹脂素材を不活性ガス中で均一に混合し、
b)前記混合した原材料を圧縮成型機でプレス成型し、
c)前記プレス成型された成形品を、固着炉内で熱を加えて硬化させ、
d)前記硬化された成形品を、バレル洗浄し、表面処理した上で防錆処理し、
e)前記成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする双眼ルーペの作成方法。
【請求項6】
請求項1に記載の双眼ルーペの作成方法であって、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、当該融解した原料を射出成型機で所望の形状型に射出成型し、
e)前記射出成型された成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする双眼ルーペの作成方法。
【請求項7】
前記行程d)において、前記射出成型機は、1又は複数のピンポイント射出ゲートから前記溶融された原料を前記形状型に射出する、ことを特徴とする請求項6の双眼ルーペの作成方法。
【請求項8】
前記行程d)において、前記射出成型機は、1又は複数のサイド射出ゲートを用いて前記溶融された原料を前記形状型に射出する、ことを特徴とする請求項6の双眼ルーペの作成方法。
【請求項9】
前記行程d)において、前記射出成型機は、ディスク射出ゲートを用いて前記溶融された原料を前記形状型に射出する、ことを特徴とする請求項6の双眼ルーペの作成方法。
【請求項10】
前記一対のルーペ本体の夫々は、前記ルーペホルダに対して所定の回転方向に装着されるべく、少なくとも前記ルーペホルダ及び前記ルーペ本体の夫々は、前記磁性体粉末の結晶分子配列が所定の方向に配向された異方性着磁素材により形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の双眼ルーペ。
【請求項11】
請求項10に記載の双眼ルーペの作成方法であって、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、
e)前記溶融された原料を射出成型機で所望の形状型に磁場内で射出成型した上で、必要に応じて脱磁し、
f)前記射出成型された成形品に対して、前記磁性体粉末の結晶分子配列が前記所定の方向に配向するように外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする双眼ルーペの作成方法。
【請求項12】
前記プラスチックマグネット部材は、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項5乃至11の何れかの項に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項13】
前記プラスチックマグネット部材は、フェライト酸化鉄を含むサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項12に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項14】
前記プラスチックマグネット部材は、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項5乃至11の何れかの項に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項15】
前記ルーペホルダを、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定する行程f)を有する請求項5に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項16】
前記ルーペホルダを、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定する行程g)を有する請求項6に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項17】
前記ルーペ本体は、焦点距離が異なる単倍率又は所定範囲で焦点距離を連続的に変更可能なズーム機構を備える複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられる、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項18】
前記ルーペ本体の前記接眼端側面には、予め複数準備された遠視の視力調整用レンズ及び乱視補正用レンズの一つが選択されて着脱可能に嵌め込まれる、ことを特徴とする請求項17に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項19】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズは、レンズの周囲を囲むリムにより保持され、当該リムはフェライト磁性体により形成されている、ことを特徴とする請求項18に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項20】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、
e)前記溶融された原料を射出成型機で所望の形状型に磁場内で射出成型した上で、必要に応じて脱磁し、
f)前記射出成型された成形品に対して、前記磁性体粉末の結晶分子配列が前記所定の方向に配向するように外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする請求項19に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項21】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項19に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項22】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、フェライト酸化鉄を含むサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項19に記載の双眼ルーペの作成方法。
【請求項23】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項17に記載の双眼ルーペの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術や精密加工の際に、高い精度の手元操作の際に使用され、視認対象を拡大して観察すると共に、使用者の視力矯正が可能な双眼ルーペ及びその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
双眼ルーペは、手元の細かな局所的な観察対象を拡大して視認する手段として、従来から、医療分野、精密工作や宝石加工等の各分野において広く使用されている。これらの分野では、細かな手元作業の操作に高い精度が求められており、双眼ルーペは、優れた解像度、広い視野、焦点距離等に加えて、明るくクリアな高画質の画像を施術者に提供することが重要である。
【0003】
特に、医療分野において使用される双眼ルーペは、人の健康や命に関わることから、施術者の視力に合わせて双眼ルーペの適正な視力矯正と乱視矯正等の機能が求められている。
【0004】
しかしながら、従来の双眼ルーペにおいては、医療施術者の手作業に高い精度が要求されるにも拘わらず、施術者の遠視又は近視の視力矯正やレンズの焦点距離の調整については、施術の種類又は施術中の変化する状況に適応して施術者の視力に施術中に合せることができないため、視野や視覚の精度にムラが生じるという問題点があった。
【0005】
さらに、人間の視力は、体調や疲労の程度によって刻々変化し、同じ使用者が使用した場合であっても、同日の午前と午後とで視力等が変化してしまうことがあり、従来の双眼ルーペは、施術者の刻々変動する視力に適合させることができず、不適正な視力の状態の双眼ルーペを適宜選択して使用して施術作業を行うことが多かった。
【0006】
そのため、従来から焦点距離が異なる複数種類の焦点調整部を予め準備しておき、その中の一つを選択して、その接眼部に着脱自在に装着可能にした双眼ルーペが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
図18は、特許文献1に記載されている類の双眼ルーペであって、ルーペ本体がキャリアレンズに固定的に装着される第1の従来技術の例を示す。
【0008】
図18において、ルーペ本体3は、観察対象の像を所定の倍率、例えば2倍又は3倍等の倍率で調整された拡大光学系を内蔵し、接眼側端に位置している接眼筒と、これより徐々に外径を大きくしていく傾斜部を経て大径部を設けた対物レンズが配置される筒と、で構成されている。
【0009】
ここで、さらに、ルーペ本体3内に、接眼側端に位置している接眼側レンズ群と、対物側レンズ群との相互間隔を可変可能にしたズーム機構を備えることにより、焦点距離を連続的に可変することが可能になる。
【0010】
そして、接眼筒の後端には、磁石に吸着する磁性体のリング6が装着されている。また、ルーペ本体3の接眼端側には、円形の焦点調整レンズ11が嵌め込まれるように磁性体のレンズ保持部12は焦点調整レンズ11の周囲を縁取る。この焦点調整レンズ11は、双眼ルーペの使用者が左右のルーペ本体3で対象を拡大して観察する際の視力を矯正するために、必要に応じてルーペ本体3に合せて用いられる遠距離又は近距離を補正するのみならず、乱視等を補正するレンズとすることもできる。
【0011】
そのために、焦点調整レンズ11の内側には焦点調整の高さを調整するための焦点調整リング(図示せず)を備えるようにしても良い。また、双眼ルーペの使用者が普段は視力の矯正を必要としていなくても、施術者の処置中の視力(近視又は遠視)の変動に際し焦点調整レンズ11を用いることで視力の調整が確保される。
【0012】
このように、
図18に示したルーペ本体がキャリアレンズに固定的に装着される従来技術の例では、焦点調整レンズ11についてはルーペ本体3の接眼部端側に対して着脱可能に構成されてはいるものの、ルーペ本体3は、キャリアレンズレンズ4に固定的に取り付けられていることから、倍率を変更する場合、メガネフレームを含む双眼ループそのものを別の双眼ルーペへの装着替えが必要であった。
【0013】
一方、双眼ルーペにおいては、施術する部位に応じて必要な倍率が異なるため、数種類の双眼ルーペを用意しておき、その都度、最適な倍率の双眼ルーペを選択して装着するタイプの双眼ルーペも知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0014】
図19は、例えば特許文献2に記載されている類の双眼ルーペであって、予め用意されている数種類の双眼ルーペ本体の中からその都度使用するルーペ本体を選択し、キャリアレンズに着脱可能に装着するタイプの第2の従来技術の例を示す。
【0015】
図19において、キャリアレンズ4にルーペ本体3を着脱可能に受け入れるためのルーペホルダ9が取り付けられた構成になっている。
図19に示すように、眼鏡フレーム10に嵌め込まれたキャリアレンズ4にルーペホルダ9が取り付けられ、予め用意された複数種類のルーペ本体の中から選択された一のルーペ本体3が、ルーペホルダ9に着脱可能に取り付けられるように構成されている。
【0016】
そして、
図19に示した例においては、ルーペ本体3は、キャリアレンズ4に固定されたルーペホルダ9に、リング6、そのルーペ本体側面の周縁に複数の凹部が施されたマグネットリング5を介して着脱可能に取り付けられる。そして、この例では、制作の容易性等の事情から、マグネットリング5は、磁性によって一つに結合する二個の半円リング5で構成され、リング6を介してルーペホルダ9に係合している。
【0017】
一方、ルーペ本体3の接眼側の周縁には、マグネットリング5に施されている凹部に係合する凸状の磁性体突起7が設けられ、ルーペ本体3はマグネットリング5に引き付けられることにより、双方が係合するように形成されている。
【0018】
しかし、この第2の従来例では、ルーペ本体3の接眼端側の円周側に、比較的に幅広の平面リング側を有するマグネットリング5や磁気リング6が接続されるために、双眼ループの接眼端側に取り付けられる視覚調整用のレンズ径が小径とならざるを得ず、その結果、双眼ルーペの視界(視野)が狭くなると共に、レンズ径が小さくなることから双眼ルーペの光学系を明るくすることを妨げていたのである。特に、
図19に示すように、装着離脱が容易なルーペ本体3をルーペホルダに磁力の吸引力によって確実に係止するようにするためには、マグネットリング5と磁気リング6の体積(口径×厚み)を大きくせざるを得なかったのである。
【0019】
このように、この第2の従来例においては、上述したように、焦点距離が異なる複数種類の焦点調整部を予め準備しておきその中の一つを選択して着脱自在に装着可能にし、また、倍率が調整可能な複数の双眼ルーペを用意してその中から適宜最適なものを選択する従来の双眼ルーペにおいては、双眼ルーペ本体とこれを支持するルーペホルダの取付部(接眼部)の構造が複雑になり着脱機構の部品が多いことから、その分接眼レンズのガラス径が小さくなり、その結果、施術者の視界(視野の広さ)を狭くしていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特許第5032332号公報
【特許文献2】特開2019-144297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、観察対象を拡大して視認する光学系を内蔵するルーペ本体と焦点調整部と所望の倍率に容易に差し替えることができる双眼ルーペにおいて、施術者の視界を広くすると共に、明るく且つクリアな高画質の双眼ルーペを提供するものであって、さらには、当該双眼ルーペの具体的な作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するべく、手元の観察対象を拡大する光学レンズ系を内蔵する左右一対のルーペ本体と、前記一対のルーペ本体を前記観察対象に向けた視野方向に支持する左右のキャリアレンズと、前記キャリアレンズを保持する眼鏡フレームと、前記一対のルーペ本体を左右夫々の前記キャリアレンズに着脱可能に取り付ける筒形状の一対のルーペホルダと、から構成され、前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部は、所定のプラスチック素材と所定の磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成され、前記一対のルーペ本体の夫々は、前記一対のルーペホルダにおける前記ルーペ本体の接触部との磁気吸引力により前記ルーペホルダの筒状内面において吸引された状態で密接に係止される、ことを特徴とする双眼ルーペを提供するものである。
【0023】
このように、本発明に係る双眼ループにおいては、前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を、プラスチック素材と磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成するので、ルーペ本体は、ルーペホルダの筒状内面に磁気吸引力により密接に係止されるので、ルーペ本体がルーペホルダから落下することなく、後述するように、施術者が複数のルーペ本体の中から、任意の一つを選択して容易に装着交換することを可能にしたのである。
【0024】
ここで、前記ルーペ本体は、さらに、突起部を有する突起付きリングを介して前記ルーペホルダに装着され、前記ルーペホルダは、前記突起部に係合する鈎型溝の係合部を有することにより、前記ルーペ本体が前記ルーペホルダから離脱しないように形成される。
【0025】
そして、前記ルーペ本体は、焦点距離が異なる単倍率又は所定範囲で焦点距離を連続的に変更可能なズーム機構を備える複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられ、また、その必要に応じて、前記ルーペ本体の前記接眼端側面には、予め複数準備された遠近の視力調整用レンズ及び乱視補正用レンズの一つが選択されて着脱可能に嵌め込まれる、ようにしている。
【0026】
また、後述するように、前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズは、レンズの周囲を囲むリムにより保持され、当該リムはフェライト磁性体により形成され、上述した前記ルーペ本体の射出成型方法と同様の方法に作成され着磁される。
【0027】
ズーム機構を備えたルーペ本体は、レンズの枚数が増え、そのズーム機構部品が必要なことからルーペ本体の筒部の径も大きくなることから、上述したプラスチック素材と磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成することにより、ルーペ本体の筒部をより薄く形成することが可能となる。
【0028】
そして、本双眼ルーペを構成する前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、その第1の作成方法として、以下の行程a)乃至e)を有する各行程により作成される。すなわち、
a)磁性体粉末と熱硬化性樹脂素材を不活性ガス中で均一に混合する。
b)前記混合した原材料を圧縮成型機でプレス成型する。
c)前記プレス成型された成形品を、固着炉内で熱を加えて硬化させる。
d)前記硬化された成形品を、バレル洗浄し、表面処理した上で防錆処理する。
e)前記成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されるのである。
【0029】
さらに、本双眼ルーペを構成する前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、その第2の作成方法として、以下の行程a)乃至e)を有する各工程に作成される。すなわち、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬する。
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化する。
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理する。
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、当該融解した原料を射出成型機で所望の形状型に射出成型する。
e)前記射出成型された成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成する。
【0030】
ここで、前記第2の作成方法における行程d)の「射出成型」の行程(その1)において、前記射出成型機は、1又は複数のピンポイント射出ゲートから前記溶融された原料を前記形状型に射出する。
【0031】
また、前記第2の作成方法における行程d)の「射出成型」の行程(その2)において、前記射出成型機は、1又は複数のサイド射出ゲートを用いて前記溶融された原料を前記形状型に射出する。
【0032】
さらには、前記第2の作成方法における行程d)の「射出成型」の行程(その3)において、前記射出成型機は、ディスク射出ゲートを用いて前記溶融された原料を前記形状型に射出する、ことも可能である。
【0033】
ところで、本発明に係る双眼ルーペは、施術者の乱視の程度等に対応して、ルーペホルダにおけるルーペ本体の装着角度を所定の角度に合わせる必要性がある。
【0034】
このため、前記一対のルーペ本体の夫々は、前記ルーペホルダに対して所定の回転方向に装着されるべく、少なくとも前記ルーペホルダ及び前記ルーペ本体の夫々は、前記磁性体粉末の結晶分子配列が所定の方向に配向された異方性着磁素材により形成するようにしている。
【0035】
このような、乱視対応の本双眼ルーペの作成方法においては、前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、その第3の作成方法として、以下の行程a)乃至f)を有する各行程により作成される。すなわち、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、
e)前記溶融された原料を射出成型機で所望の形状型に磁場内で射出成型した上で、必要に応じて脱磁し、
f)前記射出成型された成形品に対して、前記磁性体粉末の結晶分子配列が前記所定の方向に配向するように外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されるのである。
【0036】
ところで、前記プラスチックマグネット部材は、その部材構成の第1の例として、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである。
【0037】
そして、前記プラスチックマグネット部材は、その部材構成の第2の例として、フェライト酸化鉄を含むサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである。
【0038】
さらには、その第3の部材構成として、前記プラスチックマグネット部材は、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである。
【0039】
ところで、本双眼ルーペの作成方法は、前記ルーペホルダを、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定する行程、さらに、前記ルーペホルダを、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定する行程を有する。
【0040】
そして、本発明に係る双眼ルーペにおいて、焦点調整レンズがルーペ本体との接眼部端側に対して着脱可能に構成され、施術する部位に応じて最適倍率のルーペ本体をルーペホルダに着脱可能にするために、本発明においては、焦点距離が異なる単倍率又は所定範囲で焦点距離を連続的に変更可能なズーム機構を備える複数種類のルーペ本体が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられる。
【0041】
また、その必要に応じて、前記ルーペ本体の前記接眼端側面には、予め複数準備された遠近の視力調整用レンズ及び乱視補正用レンズの一つが選択されて着脱可能に嵌め込まれて使用される。
【0042】
ここで、前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズは、レンズの周囲を囲むリムにより保持され、当該リムはフェライト磁性体により形成され、上述した前記ルーペ本体の射出成型方法と同様の方法に作成され着磁される。
【0043】
さらに、本発明においては、ルーペホルダに選択的に取り付けられるズーム機構を備えるルーペ本体において、前記ルーペホルダの筒状の内面に接する接触部のみならず、ズーム機構部を内蔵する筒体をも上述した前記ルーペ本体の射出成型方法と同様の方法に作成され着磁される。これによって、ルーペ本体の筒体を薄くすると共に、ズーム動作の操作性を向上させたのである。
【0044】
そして、前記リムは、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末又はサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものを用いる。
【発明の効果】
【0045】
これにより、本発明は、観察対象を拡大して視認する光学系を内蔵するルーペ本体と焦点調整部と所望の倍率に容易に差し替えることができる双眼ルーペにおいて、従来技術の双眼ルーペと比較して、施術者の視界をより広くすると共に、より明るくクリアな画質を備えた双眼ルーペの作成方法を具体的に提供したのである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図2】本双眼ルーペを構成するルーペ本体の一つをキャリアレンズ側のルーペホルダに装着する際の説明図を示し、(a)は、ルーペ本体を直接ルーペホルダに装着する場合の説明図を示し、(b)は、ルーペ本体を突起付きリングを介してルーペホルダに装着する場合の説明図を示す。
【
図3】
図2(a)及び(b)の夫々の構成に対応し、本双眼ルーペを構成するルーペ本体の一つをキャリアレンズ側のルーペホルダに装着した際の説明図を示し、(a)は、ルーペ本体を直接ルーペホルダに装着した場合の説明図を示し、(b)は、ルーペ本体を突起付きリングを介してルーペホルダに装着した場合の説明図を示し、(c)は、ルーペホルダにおいて、施術者が、キャリアレンズを通して手元を確認する場合に、施術者の視界を確保するための窓(切欠き)を設けた例を示す。
【
図4】本双眼ルーペと、本双眼ルーペのキャリアレンズに装着可能な複数の倍率及び/又は視力調整距離のルーペ本体の例を示す。
【
図5】本双眼ルーペにおけるルーペ本体3の一例を示し、 (a)は、ルーペ本体3の側面図を、 (b)は、ルーペ本体3の対物レンズ3d側から見た正面図を、 (c)は、断面図を、それぞれ示す。
【
図6】施術者が本双眼ルーペを着用して作業をする状態の説明図を示す。
【
図7】キャリアレンズにルーペを取り付ける際の下方装着角度の説明図を示す。
【
図8】ルーペ本体をキャリアレンズに取り付ける際の内側装着角度p,qについての説明図を示す。
【
図9】本双眼ルーペ(筒状のルーペホルダとルーペ本体)の第1の作成方法であるプレス成型方法の行程手順を示す。
【
図10】本双眼ルーペ(筒状のルーペホルダとルーペ本体)の第2の作成方法である射出成型方法の行程手順を示す。
【
図11】
図10に示した本双眼ルーペの筒状のルーペホルダ等の第2の作成方法である射出成型方法の一つである複数(4本)のピンポイント射出ゲートを用いて溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例を示す。
【
図12】
図10に示した本双眼ルーペの筒状のルーペホルダ等の第2の作成方法である他の射出成型方法であるサイド射出ゲートを用いて溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例を示す。
【
図13】
図10に示した本双眼ルーペの筒状のルーペホルダ等の第2の作成方法である他の射出成型方法である、(a)ガイドサイド射出ゲートを用いて溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例と、(b)ガイドピン射出ゲートから溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例と、を示す。
【
図14】
図10に示した本双眼ルーペの筒状のルーペホルダ等の第2の作成方法である他の射出成型方法であるディスク射出ゲートを用いて溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例であって、(a)はその斜視図を示し、(b)はその横方向からの透視図を示す。
【
図15】本双眼ルーペ(筒状のルーペホルダとルーペ本体)の第3の作成方法である射出成型方法において、射出成型された成形品の磁性体粉末の磁気配向が異方性を生じさせる作成行程を示す。
【
図16】本発明の双眼ルーペのルーペホルダとルーペ本体の作成に使用するプラスチックマグネット部材の第1の例として、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末をプラスチック素材に混合又は混錬された製品例の(a)磁気特性及び(b)物理的機械的特性を示す。
【
図17】本発明の双眼ルーペのルーペホルダとルーペ本体の作成に使用するプラスチックマグネット部材の第2の例として、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末をプラスチック素材に混合又は混錬された製品例の(a)磁気特性及び(b)物理的機械的特性を示す。
【
図18】従来技術の説明図であって、ルーペ本体がキャリアレンズに固定的に装着される第1の従来技術の例を示す。
【
図19】従来技術の説明図であって、ルーペ本体がキャリアレンズ側のルーペホルダへ着脱可能に装着される第2の従来技術の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明に係る双眼ルーペの実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0048】
図1は、本発明の一実施形態に係る双眼ルーペ100の全体構成を示している。双眼ルーペ100は、眼鏡フレーム10と、作業対象の像を拡大するための左右両眼に対応するルーペ本体3と、ルーペ本体3を保持するルーペホルダ9と、ルーペホルダ9を眼鏡フレーム10に取り付けるためのルーペホルダであるキャリアレンズ4と、で構成されている。
【0049】
ここで、
図4に示すように、ルーペ本体3は、光学系による倍率(例えば、3倍、4倍、5倍)及び/又は視力調整距離が異なる複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて、ルーペホルダ9に着脱可能に装着される。尚、後述するが、視力調整機能は、ルーペ本体3の接眼側端に、予め複数準備された視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズの一つが着脱可能に嵌め込まれるようにするようにしても良い。これによって、予め用意するルーペ本体3の種類(本数)を少なくすることができる。
【0050】
図1及び
図4において、眼鏡フレーム10は、通常の眼鏡と略同じ構造を有するもので、キャリアレンズ4が嵌め込まれるリム10aと、観察者の耳に掛けられるテンプル10bとリム10aを繋ぐブリッジ10c、鼻あて部10dと、を有する。眼鏡フレーム10を構成する素材には、錆び難く可撓性を有するチタン等の金属や合成樹脂等が使用される。そして、テンプル10bには、着用者の顔の両側を保護する遮蔽部材10eや、双眼ルーペを着用した状態で保持するためのストラップ(図示せず)を、必要に応じて取り付けることができる。
【0051】
キャリアレンズ4は、ルーペ本体3をその両端で保持するルーペホルダ9を支持する開口が穿設されており、ルーペホルダ9はこの開口に嵌め込まれて、キャリアレンズ4の面に対して所定の角度を維持した状態で固定される。キャリアレンズ4を構成する素材は、必ずしも透明である必要はないが、観察者の手元方向の視野を広げるためには透明であることが好ましく、さらに視力の矯正を必要とする場合には矯正レンズを使用することがあるが、視力の矯正が不要の場合は単なる透明ガラスであっても良い。この場合のレンズの材質は、ガラス又はプラスチックである。したがって、キャリアレンズ4は、ルーペ本体を支持するルーペホルダの機能と共に、必要に応じて、視力の矯正機能をも備えている。
【0052】
ところで、
図4に示した、ルーペ本体3の内、符号31で示したルーペ本体は、施術者が、施術中にレンズの倍率や視力調整を選択可能なルーペ本体3を示す。施術者は、施術中の必要に応じて、例えば、3倍(3X)、4倍(4X)又は5倍(5X)等の単焦点のルーペ本体3を選択してルーペホルダ9に装着する。また、ルーペ本体3がズーム機構を有する場合は、その対物レンズ側の筒を回転又は前後にスライドさせることにより、その倍率を、例えば3乃至5倍(3-5X)に設定する。
【0053】
尚、ルーペホルダ9をキャリアレンズ4の面に対して所定の角度を維持した状態で固定する詳細については後述する。
【0054】
図2は、
図1で示した本発明に係る双眼ルーペ100において、ルーペ本体3が、キャリアレンズ4の面に対して所定の角度を維持した状態で固定されているルーペホルダ9に装着される前の状態を示す。
【0055】
図2(a)は、ルーペ本体3が、ルーペホルダ9に直接装着される場合、そして、
図2(b)は、ルーペ本体3が、ルーペホルダ9に直接装着される場合、突起付きリング12を挟んでルーペホルダ9に装着される場合を示す。
【0056】
図2(a)に示すように、ルーペホルダ9は、キャリアレンズ4に所定の角度で固定されており、このルーペホルダ9にルーペ本体3が挿入される。ルーペ本体3は、複数の光学レンズが収納された筒体に、円筒状のルーペホルダ9の内面に密接状態に接する接触面3bと、ルーペホルダ9の円筒先端面に行き当たって当接する当接面3aと、ルーペ本体3の接眼端側面3cが形成されている。
【0057】
図2(b)は、ルーペ本体3が、ルーペ本体に密着する突起付きリング12を挟んでルーペホルダ9に装着される場合を示す。この場合、ルーペホルダ9には、突起付きリング12に設けられた突起部12aに係合する鈎型溝の係合部9b(
図3を参照)を有し、これによって、ルーペ本体3が例えば、施術者の指や施術室の照明器具等がルーペ本体3に触れた場合に、ルーペ本体3がルーペホルダ9から容易に離脱しないようにすることができる。
【0058】
尚、
図2(b)に示す例では突起付きリング12に設けられる突起部12aは一つの場合の例を示しているが、突起部12aを複数(例えば、二つ又は三つ)設けることにより、ルーペ本体3のルーペホルダ9からの離脱防止をより強化するようにすることの可能である。
【0059】
また、
図2(a)に示す例では、
図2(b)に示す例とは異なって、ルーペ本体3は、突起付きリング12を介さずに直接ルーペホルダ9に着脱可能に装着されるようにしているが、突起部12aを有さないリング(図示せず)を介して、ルーペホルダ9に着脱可能に装着するようにしても良い。
【0060】
図3(a)は、
図2(a)に示すルーペ本体3が、直接ルーペホルダ9に挿入された状態を示し、
図3(b)は、
図2(b)に示すルーペ本体3が、突起付きリング12を挟んでルーペホルダ9に挿入された状態を示す。
図3(b)に示すように、突起付きリング12の突起部12aは、ルーペホルダ9側に設けられた鈎型溝の係合部9bに係合することにより、ルーペ本体3がルーペホルダ9から容易に離脱しないことになる。ところで、上述した突起付きリング12は、必ずしも突起部9bを有さないリング12としても良い。
【0061】
そして、このようなリング12は、後述するようなプラスティックマグネットで形成しても、若しくは、所定の方向に着磁された磁性体金属リングで形成しても良い。
【0062】
ここで、ルーペホルダ9と、ルーペ本体3の接眼端側における円筒状のルーペホルダ9の内接触面3b、ルーペホルダ9の円筒先端面に行き当たって当接する当接面3a及びルーペ本体3の接眼端側面3cは、プラスチック素材に磁性体粉末を混ぜて成形されたプラスチックマグネット若しくは磁性体金属リングにより形成されている。これによって、ルーペ本体3はルーペホルダ9から離脱することがない。
【0063】
ここで、ルーペホルダ9の円筒先端面に行き当たって当接する当接面3aとルーペ本体3の接眼端側面3c間には、その間の摺動性を高めるために、潤滑材(グリース潤滑油又は油潤滑油)を薄く塗布すると良い。プラスチック素材に混ぜ合わせる磁性体粉末の粒径が大きい場合は、スムーズな摺動が妨げられるからである。同様に、上記リング12aをプラスチックマグネットで形成した場合は、上記当接面3a若しくはルーペ本体3の接眼端側面3c間に潤滑材を塗布しても良い。
【0064】
ところで、ルーペホルダ9においては、
図3(c)に示すように、施術者が、ルーペ本体3を通してではなく、キャリアレンズ4を通して手元を観る際に、ルーペホルダ9の厚みがキャリアレンズ4の視野を妨げないようにするために、例えば、視野方向の左右2か所及び/又は視野方向の下側に、視界を確保するための窓(切欠き)を設けるようにしても良い。
【0065】
また、ルーペ本体3が、突起部を有する突起付きリング12を介してルーペホルダ9に装着するようにすれば、この突起付きリング12もプラスチック素材に磁性体粉末を混ぜて成形されたプラスチックマグネットにより形成されていることにより、ルーペ本体3はルーペホルダ9により強い磁気力により装着の維持が図れる。
【0066】
ここで、少なくともルーペホルダ9及びルーペ本体3におけるルーペホルダ9との接触部3a、3b、3cの全て若しくはその一部を、磁性体粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成し、ルーペ本体3は、ルーペホルダ9に対して所定の回転方向に装着されるようにすると良い。
【0067】
さらに、この場合、突起付きリング12についても、磁性体粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成することにより、前記ルーペホルダにおける前記ルーペ本体の保持力をより強くするが可能である。上述したように、上記したプラスチックマグネット素材により形成される突起付きリング12の突起部12aは、一箇所のみでなく、2箇所又は3箇所とすることも可能である。
【0068】
ここで、プラスチックマグネットとは、プラスチックに磁性体粉末を混ぜて成形するものであって、金型焼結成形、プレス成型、射出成型、押出成形等によって所望の形状の磁性プラスチック部材を作ることが可能である。また、ゴム素材を少量加えることにより弾性を有する部材を作ることも可能となる。
【0069】
磁性の強さは、混合する磁性素材によって種々の数値の磁性材を作ることができる。例えば、ネオジウムボンド素材(Nd-Fe-B)は、ネオジウム、鉄、ボロンを含有し、これに樹脂で複合結合させて作るプラスチックマグネットであり、薄い形状のプレス加工や、複雑な形状の加工も可能であり、通常は、等方性であるが、径方向にも高さ方向にも、多極にも着磁できる。
【0070】
このように、プラスチックマグネットは、磁界の方向、磁力の強さを所望に合わせて着磁可能なことから、本発明の双眼ルーペ100におけるルーペホルダ9と、ルーペ本体3におけるルーペホルダ9との接触部3a、3b、3cの全て若しくはその一部を、所望の磁性(N極、S極)と磁力の強さに着磁することできるのである。
【0071】
このことから、本発明の双眼ルーペ100におけるルーペホルダ9とルーペ本体3の何れか一方を、例えば、上述したネオジウムボンド素材のプラスチックマグネットとし、他方を一般的なフェライト素材又はフェライト系プラスチックマグネット素材とすることも可能である。
【0072】
プラスチックマグネットの異方性着磁とは、磁力の特性や方向を変える技術の一つであって、異方性の磁化容易軸をそろえる方法としては、アキシャル異方性、ラジアル異方性、反発ラジアル異方性、極異方性等があり、成形時に射出成型機や金型内のマグネットの磁界により磁界を所望の方向、例えば縦軸方向や横軸方向に配向させて制作される。
【0073】
図5は、ルーペ本体3の例を示す。
図5(a)は、ルーペ本体3の側面図、
図5(b)は、ルーペ本体3の対物レンズ3d側から見た正面図、
図5(c)は、断面図を示す。
【0074】
図5(c)に示すように、ルーペ本体3は、円筒状体の中に、対物レンズ3dから接眼レンズ3e間の光軸線に沿って、複数枚の光学レンズ、複数の機構部品により構成されている。
【0075】
ところで、本発明に係る双眼ルーペを構成するルーペ本体3は、その焦点距離が固定されている単焦点レンズのルーペだけでなく、1本で連続的に焦点距離を変えることにより、観察対象の部位を連続的に拡大視することが可能なズーム機構を有するルーペ本体を含む。近年は、レンズのF値(明るさ)や画質精度においても単焦点レンズに匹敵するズーム機構を有するレンズが利用可能となり、医療用双眼ルーペにおいても、このようなズーム機構を備えた本体ルーペ3が利用できる。発明に係る双眼ルーペにおいても、ズーム機構を備えたルーペ本体3をルーペホルダ9に装着することにより、一本のルーペ本体3で、小さな観察部位を拡大視でき、さらには施術部位の全体を引いて観ることが可能となる。
【0076】
ここで、ズーム機構は、例えば、
図5(c)に示すルーペ本体3を構成するレンズ群の内、接眼側のレンズ又はレンズ群(例えば、
図5(a)に示す符号3b部の内部に配置のレンズ)と、対物側のレンズ又はレンズ群(
図5(a)に示す符号3部の内側に配置のレンズ)との相互間隔を変えることにより、焦点距離を連続的に変更するものであり、両レンズ群の相互間隔を変えるために、ズームリング(図示せず)を回転させて焦点距離を変える回転式タイプや、ズームリングを前後させて焦点距離を変える直進式タイプがあり、本ルーペ本体3としては、何れのタイプでも利用可能である。
【0077】
その一例としては、
図4に示したルーペ本体3の対物レンズ側の筒を回転させることにより、その焦点距離(倍率)を変更する。ズーム機構の詳細については、当業者にとって公知であることから、その詳細な説明と各部の動きについては省略する。
【0078】
ところで、ルーペ本体3の接眼側端には、予め複数準備された視力調整用レンズ3f又は乱視補正用レンズを着脱可能に嵌め込むようにしても良い。この場合、視力調整用レンズ3f又は乱視補正用レンズは、レンズの周囲を囲むフェライト磁性体の薄いリムに支持されるようにすると良い。
【0079】
次に、
図6、
図7及び
図8に基づいて、ルーペホルダ9のキャリアレンズ4の面への取り付けについて説明する。
【0080】
ルーペホルダ9は、キャリアレンズ4に穿設した開口に嵌め込み、ルーペ本体3が観察対象方向の焦点に向くように、キャリアレンズ4の面に対して、所定の角度で固定される。具体的には、ルーペホルダ9のキャリアレンズ4の面への取り付けは、ルーペホルダ9にルーペ本体3を装着したときのルーペ本体3のキャリアレンズ4の平面を基準にしての下方装着角度r及び内側装着角度p,qと、双眼ルーペの使用者の瞳孔間距離PDにより決定される。
【0081】
双眼ルーペ100は、
図6に示すような前傾姿勢を執って作業を行うときに、その手元の作業操作箇所Wの観察対象を拡大して観察するのに使用される。このとき、使用者は、左右のルーペ本体3を通して両眼の視線を手先の位置にある観察対象に集中させている。ここで、
図7を用いてこの場合の下方装着角度について説明すると、下方装着角度rは、キャリアレンズ4にルーペホルダ9を介してルーペ本体3を取り付けるときに、キャリアレンズ4の面からの垂直線に対する下向きの取り付け角度であり、作業操作箇所Wからキャリアレンズ4までの距離Mとキャリアレンズ4の中心を通る鉛直線に直交する水平方向距離Nとで決まる角度βと、着用者が手術を行うときのキャリアレンズ4の前傾角度αとで求めることができる。
【0082】
内側装着角度p,qは、
図8に示すように、ルーペホルダ9に装着した左右のルーペ本体3の先端を作業操作箇所Wに向けたときの視線が、眼鏡フレーム1の中心Oと作業操作箇所Wとを結ぶ線Lと作業操作箇所Wで交わるときの角度である。そして、中心Oは、使用者の鼻の中心線と左右の瞳孔を結ぶ線との交点であり、この中心Oから左右両眼の瞳孔中心までのそれぞれ距離PD1,PD2と、中心Oから作業操作箇所Wまでの線L上での距離とによって、左右のルーペ本体3の内側装着角度p,qをそれぞれ求めることができる。
【0083】
ルーペ本体3の下方装着角度r及び内側装着角度p,qが決まると、左右のキャリアレンズ4において両眼の瞳孔に対応する位置にルーペホルダ9を挿入する開口を設けて、ルーペホルダ9が下方装着角度r及び内側装着角度p、左のルーペホルダ9が下方装着角度r及び内側装着角度qでキャリアレンズ4の面から突出するよう接着剤等で固定させて取り付けられる。そして、双眼ルーペ100は、ルーペホルダ9の第1及び第2取付部のそれぞれにルーペ本体3と、必要に応じて焦点調整部(
図9及び
図10の符号11に相当)が取り付けられて使用される。
【0084】
以上、詳しく説明したように、本発明に係る双眼ルーペ100は、光学系を内蔵する左右一対のルーペ本体3と、この一対のルーペ本体3を観察対象に向けた視野方向に支持するキャリアレンズ4を保持する眼鏡フレーム10と、キャリアレンズ4に取り付けられ、一対のルーペ本体3の接眼側端を挿入状態で着脱可能に受け入れる筒状のルーペホルダ9と、を備え、ルーペホルダ9及び一対のルーペ本体3の接眼側部材は、プラスチック素材に磁性体粉末を混ぜて成形されたプラスチックマグネットにより形成された、ことを特徴とする。
【0085】
ところで、プラスチックマグネット素材は、ゴムマグネット素材よりも強力な磁束密度を奏する製品を得るばかりでなく、極めて薄い成形製品を得ることかできる。ゴムマット素材は、柔らかく柔軟性があるものの、複雑な精密加工を要する製品を作成するのは困難である。
【0086】
また、プラスチックマグネット素材は、焼結マグネット素材と比して残量磁束密度の性能において遜色無い製品を得るばかりでなく、極めて薄い成形製品を得ることかできる。さらには、極めて薄い成形製品を機械的/物理的に強度な製品を得ることができるのである。他方、焼結マグネット製法により素材を用いて薄い製品を作成した場合、脆く割れやすく、製作コストも高い。
【0087】
このことから、本発明においては、筒状のルーペホルダ9の筒状内面に挿入されるルーペ本体3側の接触部3a、3b、3cの全て若しくはその一部又は複数部所を、プラスチック素材と磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成する。
【0088】
これにより、一対のルーペ本体3の夫々は、一対のルーペホルダ9におけるルーペ本体6の接触部との磁気吸引力により前記ルーペホルダの筒内面において吸引された状態で密接に係止されるのである。さらに、ルーペホルダ9においても、ルーペ本体3側の接触部3a、3b、3cを受け入れる箇所の全て若しくはその一部をプラスチック素材と磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成する。
【0089】
このように、筒状のルーペホルダ9の筒状内面に挿入されるルーペ本体3側の接触部3a、3b、3cの全て若しくはその一部又は複数部所、および、ルーペ本体3側の接触部3a、3b、3cを受け入れる箇所をプラスチック素材と磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成するが、当該ルーペホルダ9及び/又はルーペ本体3のプラスチックマグネット部材により形成された箇所の一部を、後述する異方性のプラスチックマグネットとするように着磁する。これにより、ルーペホルダ9とルーペ本体3間において、磁気の反発を受けることなく、逆に磁気の吸引力と反発力を巧みに利用して、ルーペ本体3が、ルーペホルダ9の筒内に容易に挿入されるようにすることも可能である。
【0090】
このような異方性の磁性配向は、アキシャル(縦方向)配向、ラジアル(放射方向)配向、反発ラジアル配向、極異方配向等があり、本発明に係る双眼ルーペにおいては、主に、アキシャル配向を用いるがこれに限定されるものではない。アキシャル配向による異方性配向は、縦軸方向に配向磁界を拡げ、縦方向に磁化容易軸を揃え配向させるものであり、これによって、両端面にN/Sの磁石ができ、片面側又は/及び両面側に吸着力が強い着磁をさせることができるのである。
【0091】
次に、本発明に係る双眼ルーペの作成方法である、プレス成型方法、射出成型方法等について詳しく記載する。
【0092】
プレス成型方法や射出成型方法に使用されるプラスチックマグネット部材は、一種のプラスチックボンド磁石である。このプラスチックボンド磁石は、希土類系やフェライトの磁石粉末をバインダー(結合材)として用いるプラスチックと混ぜて固形化した樹脂結合型磁石を意味する。必要に応じて、添加剤として、潤滑剤や酸化防止材剤を加える。一般的に、プラスチックボンド磁石は樹脂を含んでいるため、燃焼マグネットと比較して、磁力を意味する磁束密度は多少劣るものの、成形上がり製品の寸法精度が高く後加工の必要がないばかりか、機械強度が強く、本双眼ルーペが必要とする薄肉品や複雑な形状の製品をより低コストで製作することが可能である。
【0093】
そして、磁力を意味する磁束密度の性能については、後述するサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末又はネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末を用いることにより、本双眼ルーペを構成するルーペ本体3は、ルーペホルダ9におけるルーペ本体3の接触部との磁気吸引力によりルーペホルダ9の筒内面において吸引された状態で密接に係止されることを可能にしたのである。
【0094】
本発明に係る双眼ルーペの作成にプラスチックマグネットを使用する箇所は、少なくとも筒状のルーペホルダ9とルーペ本体3におけるルーペホルダ9の筒状内面に接する接触部3a、3b、3cであるが、ルーペホルダ9の筒部全体とルーペ本体3の全体又は大部分を、以下詳しく説明する作成方法に基づいて作成しても良い。
【0095】
図9は、本双眼ルーペ(筒状のルーペホルダ9とルーペ本体3)の第1の作成方法であるプレス成型方法の行程手順を示す。
【0096】
この第1の作成方法であるプレス成型方法においては、先ず、筒状のルーペホルダ9とルーペ本体3の原材料となる後述するサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末又はネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末に熱硬化性樹脂に必要に応じて添加剤を配合した原材料を準備する。
そして、上記原材料を用いて以下のa)乃至e)の行程により作成する。
a)磁性体粉末と熱硬化性樹脂素材を不活性ガス中で均一に混合し。
b)前記混合した原材料を圧縮成型機でプレス成型し。
c)前記プレス成型された成形品を、固着炉内で熱を加えて硬化させ、
d)前記硬化された成形品を、バレル洗浄し、表面処理した上で防錆処理し、
e)前記成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、各工程。
これにより、本双眼ルーペにおいては、筒状のルーペホルダ9とルーペ本体3における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を、プラスチック素材に強力な磁性特性と機械特性を有する磁性体粉末を混合したプラスチックマグネット部材により形成するので、ルーペ本体3は、ルーペホルダ9の筒状内面に磁気吸引力により密接に係止されるので、ルーペ本体がルーペホルダから落下することなく、且つ着脱可能に装着できるのである。
【0097】
図10は、本双眼ルーペ(筒状のルーペホルダとルーペ本体)の第2の作成方法である射出成型方法の行程手順を示す。
【0098】
この第2の作成方法である射出成型方法においても、筒状のルーペホルダ9とルーペ本体3の原材料となる後述するサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末又はネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末に熱硬化性樹脂に必要に応じて添加剤を配合した原材料を準備し、以下のa)乃至e)の行程により作成する。すなわち、
a)原材料である上記磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、当該融解した原料を射出成型機で所望の形状型に射出成型し、
e)前記射出成型された成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、各行程とからなる。
【0099】
次に、上述した射出成型方法における、溶融されたプラスチックマグネットの形状型への射出方法ついて説明する。
【0100】
図11は、乾燥処理されたペレット化された融解された原料を複数(
図11の例では4本)のピンポイント射出ゲートを用いて形状型へ射出するようにしている。このように複数のピンポイント射出ゲートを用いて形状型へ射出することにより、比較的高い粘性のプラスチックマグネット原料であっても、薄い円筒状の形成型内の隅々に侵入するので、極めて薄い円筒形状のプラスチックマグネットを成形することができる。このピンポイント射出ゲート(溶融したプラスチックマグネットの射出口)の本数は、2乃至4本程度とする。
【0101】
図12は、本双眼ルーペの筒状のルーペホルダ等の射出成型方法であるサイド射出ゲートを用いて溶融した原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例を示す。このサイド射出ゲートは、例えば、円弧状平面の円弧中央部から、溶融した原料(プラスチック・マグネット)を射出するのに適している。
【0102】
図13は、本双眼ルーペの筒状のルーペホルダ等の射出成型方法であるガイド射出ゲートを用いて溶融した例を示し、(a)ガイドサイド射出ゲートを用いて溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例と、(b)ガイドピン射出ゲートから溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例と、を示す。
【0103】
このガイドサイド射出ゲートを用いた射出方法とガイドピン射出ゲートを用いた射出方法は、例えば、
図13(a)又は(b)に示した円筒形状の一部に切欠き等を有する場合(
図2(b)、
図3(b)及び(c)を参照)に、当該切欠き部の円周反対側から融解したプラスチックマグネットを成形型内に射出する場合に適している。
【0104】
図14は、本双眼ルーペの筒状のルーペホルダ等の射出成型方法であるディスク射出ゲートを用いて溶融された原料(プラスチック・マグネット)の形状型への射出例であって、(a)はその斜視図を示し、(b)はその横方向からの透視図を示す。このディスク射出ゲートを用いた射出方法は、円形平面状の製品(例えば、視力調整用レンズや乱視補正用レンズ)を作成するための成形型に融解したプラスチックマグネットを射出する場合に適している。
【0105】
上記した異方性着磁されたプラスチックマグネットは、原材料の分子が一定方向に配列しているため、着磁方向は、一方向に限定される強い磁石が整列して配置された状態のプラスチックマグネットを得ることができる。
【0106】
ここで、異方性の配向は、アキシャル(縦方向)配向、ラジアル(放射方向)配向、反発ラジアル配向、極異方配向等があるが、本発明に係る双眼ルーペにおいては、主に、アキシャル配向を用いるがこれに限定されるものではない。アキシャル配向による異方性配向は、縦軸方向に配向磁界を拡げ、縦方向に磁化容易軸を揃え配向させるものである。これにより、両端面にN/Sの磁石ができ、片面側又は/及び両面側に吸着力が強い着磁をさせることができる。
【0107】
図15は、本双眼ルーペ(筒状のルーペホルダ9、ルーペ本体3、視力調整用レンズのレンズ枠、乱視補正用レンズのレンズ枠)の上記した射出成型方法において、射出成型された成形品の磁性体粉末の磁気配向が異方性を生じさせる作成行程を示す。
【0108】
この射出成型方法においても、筒状のルーペホルダ9、ルーペ本体3、視力調整用レンズのレンズ枠または乱視補正用レンズのレンズ枠の原材料となるサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末又はネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末に熱硬化性樹脂に必要に応じて添加剤を配合した原材料を準備し、以下のa)乃至e)の行程により作成する。すなわち、
a)筒状のルーペホルダ9とルーペ本体3における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するマグネット部材と熱可撓性樹脂素材は、混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、
e)前記溶融された原料を射出成型機で所望の形状型に磁場内で射出成型した上で、必要に応じて脱磁し、
f)前記射出成型された成形品に対して、前記磁性体粉末の結晶分子配列が前記所定の方向に配向するように外部磁界を与えて着磁する、工程とからなる。
【0109】
次に、上記行程f)における、射出成型された成形品に対して、磁性体粉末の結晶分子配列が前記所定の方向に配向するように外部磁界を与えて着磁する、異方性着磁について説明する。
【0110】
本発明に係る双眼ルーペは、施術者の乱視の程度等に対応して、ルーペホルダにおけるルーペ本体、視力調整用レンズまたは乱視補正用レンズに対する装着角度(レンズ面の中心を中心とする回転方向角度)を所定の角度に合わせる必要性があり、そのために、上記行程による異方性着磁が必要である。
【0111】
図16は、本発明の双眼ルーペのルーペホルダとルーペ本体の作成に使用するプラスチックマグネット部材の第1の例として、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末をプラスチック素材に混合又は混錬された製品例の(a)磁気特性及び(b)物理的機械的特性を示す。
【0112】
ここで、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体は、ネオジウム磁石、サマコバ磁石を超える性能を持つ磁石として開発された希土類磁石であり、異方性配向を備えることが可能である。このサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体は、従来の粉末冶金法により製造される酸化鉄を主原料とするフェライト系プラスチックマグネットのみならず、ネオジウム磁石、サマコバ磁石を超える磁束密度を有する。
【0113】
図17は、本発明の双眼ルーペのルーペホルダとルーペ本体の作成に使用するプラスチックマグネット部材の第2の例として、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末をプラスチック素材に混合又は混錬された製品例の(a)磁気特性及び(b)物理的機械的特性を示す。
【0114】
ここで、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体は、Nd(ネオジウム)、Fe(鉄)、B(ホウ素)を主原料とした希土類磁石であり、このNdFeBの磁粉末とエポキシ系の熱硬化性樹脂を混合した磁性材料をプレス成型等することにより成形し、熱硬化させることにより作成するプラスチックマグネットである。
【0115】
尚、
図16及び
図17において、保持力とは、磁化された磁性体を磁化されていない状態に戻すために必要な反対向きの外部磁力の強さを言うものであり、抗磁力ともいう。磁性体の特性を表すH/B(磁化力/磁束密度)特性における、H(磁化力)がゼロの時のB(磁束密度)を表す。
【0116】
この、保持力に単位には、CGS単位系ではエルステッド(Oe)、SI単位では、アンペア毎メートル(A/m)を用い、1(A/m)は、4n×10-3(Oe)である。
【0117】
ところで、
図6に示すように、ルーペ本体3は、突起部12aを有する突起付きリング12を介してルーペホルダ9に装着され、ルーペホルダ9は、突起部12aに係合する鈎型溝の係合部9bを有し、ルーペ本体3がルーペホルダ9から離脱しないように形成される。
【0118】
ここで、突起付きリング12は、プラスチック素材に磁性体粉末を混ぜて成形されたプラスチックマグネットにより形成される。
【0119】
また、少なくともルーペホルダ9及びルーペ本体3の夫々は、磁性体粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成され、ルーペ本体3の夫々は、ルーペホルダ9に対して所定の回転方向に装着されることを特徴とする。
【0120】
上述したように、本発明に係る双眼ルーペにおいては、学系を内蔵する左右一対のルーペ本体3と、この一対のルーペ本体3を観察対象に向けた視野方向に支持するキャリアレンズ4を保持する眼鏡フレーム10と、キャリアレンズ4に取り付けられ、一対のルーペ本体3の接眼側端を挿入状態で着脱可能に受け入れる筒状のルーペホルダ9と、を備え、ルーペホルダ9及び一対のルーペ本体3の接眼側部材は、プラスチック素材に磁性体粉末を混ぜて成形されたプラスチックマグネット素材を精密欧高圧縮成形又は多ゲート射出成型等の作成方法により、薄型でありながら高磁束密度性能に形成されるのである。
【0121】
これにより、本双眼ルーペ100においてルーペ本体3は、ルーペホルダ9の筒状内面に磁気吸引力により密接に係止されるので、ルーペ本体3がルーペホルダ9から落下することなく、後述するように、施術者が複数のルーペ本体の中から、任意の一つを選択して容易に装着交換することを可能にしたのである。
【0122】
そして、本双眼ルーペにおいては、観察対象を拡大して視認する光学系を内蔵するルーペ本体と焦点調整部と所望の倍率を有するルーペ本体3若しくは焦点距離を一定の範囲で連続的に可変可能なズーム機構を有するルーペ本体3に差し替えることができる双眼ルーペにおいて、従来技術の双眼ルーペと比較して、施術者の視界をより広くすると共に、より明るくクリアな画質を備えた双眼ルーペ及びその作成方法を可能にしたのである。
【符号の説明】
【0123】
3 ルーペ本体
4 キャリアレンズ
9 ルーペホルダ
9b ルーペホルダの係合部
10 眼鏡フレーム
12 突起付きリング
12a 突起部
100 双眼ルーペ
【手続補正書】
【提出日】2023-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手元の観察対象を拡大する光学レンズ系を内蔵する左右一対のルーペ本体と、
前記一対のルーペ本体を前記観察対象に向けた視野方向に支持する左右のキャリアレンズと、
前記キャリアレンズを保持する眼鏡フレームと、前記一対のルーペ本体を左右夫々の前記キャリアレンズに着脱可能に取り付ける筒形状の一対のルーペホルダと、から構成され、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの筒状内面に接する接触部は、所定のプラスチック素材と所定の磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成され、
前記一対のルーペ本体の夫々は、前記一対のルーペホルダにおける前記ルーペ本体の接触部との磁気吸引力により前記ルーペホルダの筒状内面において吸引された状態で密接に係止され、且つ、
前記ルーペホルダの円筒先端面に行き当たって当接する当接面と前記ルーペ本体の接眼端側面間には、その間の摺動性を高める潤滑剤が塗布される、
ことを特徴とする医療施術者用双眼ルーペ。
【請求項2】
前記ルーペ本体は、さらに、突起部を有するリングを介して前記ルーペホルダに装着され、前記ルーペホルダは、前記突起部に係合する鈎型溝の係合部を有することにより、前記ルーペ本体が前記ルーペホルダから離脱しないように形成された、ことを特徴とする請求項1に記載の医療施術者用双眼ルーペ。
【請求項3】
前記ルーペ本体は、焦点距離が異なる単倍率又は所定範囲で焦点距離を連続的に変更可能なズーム機構を備える複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療施術者用双眼ルーペ。
【請求項4】
前記ルーペ本体の前記接眼端側面には、予め複数準備された遠近の視力調整用レンズ及び乱視補正用レンズの一つが選択されて着脱可能に嵌め込まれる、ことを特徴とする請求項3に記載の医療施術者用双眼ルーペ。
【請求項5】
請求項1に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法であって、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱硬化性樹脂素材を不活性ガス中で均一に混合し、
b)前記混合した原材料を圧縮成型機でプレス成型し、
c)前記プレス成型された成形品を、固着炉内で熱を加えて硬化させ、
d)前記硬化された成形品を、バレル洗浄し、表面処理した上で防錆処理し、
e)前記成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項6】
請求項1に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法であって、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、当該融解した原料を射出成型機で所望の形状型に射出成型し、
e)前記射出成型された成形品に対して外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項7】
前記行程d)において、前記射出成型機は、1又は複数のピンポイント射出ゲートから前記溶融された原料を前記形状型に射出する、ことを特徴とする請求項6に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項8】
前記行程d)において、前記射出成型機は、1又は複数のサイド射出ゲートを用いて前記溶融された原料を前記形状型に射出する、ことを特徴とする請求項6に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項9】
前記行程d)において、前記射出成型機は、ディスク射出ゲートを用いて前記溶融された原料を前記形状型に射出する、ことを特徴とする請求項6に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項10】
前記一対のルーペ本体の夫々は、前記ルーペホルダに対して所定の回転方向に装着されるべく、少なくとも前記ルーペホルダ及び前記ルーペ本体の夫々は、前記磁性体粉末の結晶分子配列が所定の方向に配向された異方性着磁素材により形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の医療施術者用双眼ルーペ。
【請求項11】
請求項10に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法であって、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの少なくとも前記筒状の内面に接する接触部を構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、
e)前記溶融された原料を射出成型機で所望の形状型に磁場内で射出成型した上で、必要に応じて脱磁し、
f)前記射出成型された成形品に対して、前記磁性体粉末の結晶分子配列が前記所定の方向に配向するように外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項12】
前記プラスチックマグネット部材は、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項5乃至11の何れかの項に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項13】
前記プラスチックマグネット部材は、フェライト酸化鉄を含むサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項12に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項14】
前記プラスチックマグネット部材は、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項5乃至11の何れかの項に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項15】
前記ルーペホルダを、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定する行程f)を有する請求項5に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項16】
前記ルーペホルダを、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定する行程g)を有する請求項6に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項17】
前記ルーペ本体は、焦点距離が異なる単倍率又は所定範囲で焦点距離を連続的に変更可能なズーム機構を備える複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられる、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項18】
前記ルーペ本体の前記接眼端側面には、予め複数準備された遠視の視力調整用レンズ及び乱視補正用レンズの一つが選択されて着脱可能に嵌め込まれる、ことを特徴とする請求項17に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項19】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズは、レンズの周囲を囲むリムにより保持され、当該リムはフェライト磁性体により形成されている、ことを特徴とする請求項18に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項20】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、
a)磁性体粉末と熱可撓性樹脂素材を混錬器に投入して均一に混錬し、
b)前記混錬された原料を射出成型し易いようにペレット化し、
c)前記ペレット化した原料を乾燥処理し、
d)前記乾燥処理されたペレット化された原料を溶融し、
e)前記溶融された原料を射出成型機で所望の形状型に磁場内で射出成型した上で、必要に応じて脱磁し、
f)前記射出成型された成形品に対して、前記磁性体粉末の結晶分子配列が前記所定の方向に配向するように外部磁界を与えて着磁する、
各行程により作成されることを特徴とする請求項19に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項21】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項19に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項22】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、フェライト酸化鉄を含むサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項19に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【請求項23】
前記視力調整用レンズ又は乱視補正用レンズを構成するプラスチックマグネット部材は、ネオジウム鉄ホウ素(NdFeB)系磁性体粉末を所定のプラスチック素材に混合又は混錬された部材構成のものである、ことを特徴とする請求項17に記載の医療施術者用双眼ルーペの作成方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するべく、手元の観察対象を拡大する光学レンズ系を内蔵する左右一対のルーペ本体と、前記一対のルーペ本体を前記観察対象に向けた視野方向に支持する左右のキャリアレンズと、前記キャリアレンズを保持する眼鏡フレームと、前記一対のルーペ本体を左右夫々の前記キャリアレンズに着脱可能に取り付ける筒形状の一対のルーペホルダと、から構成され、前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの筒状内面に接する接触部は、所定のプラスチック素材と所定の磁性体粉末を混合又は混錬して形成されたプラスチックマグネット部材により形成され、前記一対のルーペ本体の夫々は、前記一対のルーペホルダにおける前記ルーペ本体の接触部との磁気吸引力により前記ルーペホルダの筒状内面において吸引された状態で密接に係止され、且つ、前記ルーペホルダの円筒先端面に行き当たって当接する当接面と前記ルーペ本体の接眼端側面間には、その間の摺動性を高める潤滑剤が塗布される、ことを特徴とする医療施術者用双眼ルーペを提供するものである。