(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047532
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】積層体の分離回収方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240329BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B29K23:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091211
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2022152562の分割
【原出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】敷地 渉
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 香紀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宣仁
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA06
4F401AA08
4F401AA09
4F401AC10
4F401AD01
4F401AD02
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA27
4F401CA41
4F401EA46
4F401EA79
4F401FA01Z
4F401FA04Z
4F401FA07Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】脱離液の懸濁(汚染)を抑制しながら、ラミネート積層体からポリオレフィン樹脂を分離・回収する方法の提供。脱離液の再利用が容易で、環境負荷を低減した積層体の分離回収方法の提供。
【解決手段】上記課題は、少なくとも、第一基材層、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ単位面積あたりの質量が5~100mg/m2である接着剤層、及び、ポリオレフィン樹脂層をこの順に備える積層体を、脱離液に浸漬して積層体からポリオレフィン樹脂を分離する分離工程と、前記分離したポリオレフィン樹脂を回収する回収工程とを有する、積層体の分離回収方法によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第一基材層、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ単位面積あたりの質量が5~100mg/m2である接着剤層、及び、ポリオレフィン樹脂層をこの順に備える積層体を、脱離液に浸漬して積層体からポリオレフィン樹脂を分離する分離工程と、前記分離したポリオレフィン樹脂を回収する回収工程とを有する、積層体の分離回収方法。
【請求項2】
前記積層体が、第一基材層と接着剤層との間に印刷層を備える、請求項1に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項3】
前記接着剤層を形成する接着剤に含まれる硬化剤の含有率が、接着剤の固形分質量を基準として5質量%以下である、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項4】
前記印刷層を形成する印刷インキに含まれる硬化剤の含有率が、印刷インキの固形分質量を基準として5質量%以下である、請求項2又は3に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂層が、押出しラミネート法により形成されてなる層である、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項6】
前記接着剤層は、単位面積あたりの質量が10~50mg/m2である、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項7】
前記接着剤層が、接着剤層の質量を基準として、ポリエチレンイミン及びポリブタジエンを合計で50質量%以上含む、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項8】
前記脱離液が、水と界面活性剤とを含む、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項9】
前記界面活性剤は、HLB値が7以上の界面活性剤である、請求項8に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項10】
前記脱離液が、さらにHLB値が1~3の消泡剤を含む、請求項9に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項11】
前記脱離液は、温度が40℃~90℃且つpHが12以上のアルカリ性水溶液である、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
【請求項12】
前記回収工程が、前記分離したポリオレフィン樹脂を比重分離により選別回収する工程を含む、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層構成である積層体からポリオレフィン樹脂を回収する積層体の分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋にゴミとして廃棄・投棄されたプラスチックフィルムを原料とする包装体、プラスチックボトル、その他のプラスチック製品等がマイクロプラスチックとなり、海洋生態系に影響を与えることが懸念されている。
【0003】
このような環境汚染問題に対し、通常、複数の異種素材から構成される包装材を、例えばポリオレフィンのような単一素材から構成されるモノマテリアル包装材とすることで、リサイクルを容易にする試みが行われている。しかし、ポリオレフィンのみから構成される包装材は、耐レトルト適性や遮光性が不十分であり用途が限定される。
また、印刷層や接着剤層が付着したモノマテリアル包装材をそのままリサイクルした場合、得られる再生樹脂は着色しているため、リサイクル後の用途が制限される。さらに、再生樹脂は、印刷層や接着剤層に由来する成分により物性が低下するため、石油由来のバージン樹脂を混合して使用する必要が生じ、リサイクル率を向上することが困難である。
【0004】
一方、複数の異種素材から構成される包装フィルムを単層フィルムに分離し、且つ印刷層や接着剤層を脱離することで、透明な再生樹脂を得る技術が開発されている。
上記技術に関し、例えば特許文献1には、酸性基を有する化合物とポリイソシアネート組成物とポリオール組成物とを含む反応性接着剤でラミネートされた積層フィルムを、アルカリ性水溶液に浸漬し、単層フィルムに分離する技術が開示されている。
特許文献2には、第1の基材、印刷層、第2の基材を脱離するためのポリウレタン系接着剤層及び第2の基材を積層した包装材をアルカリ性水溶液に浸漬し、第2の基材を分離、回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/066652号
【特許文献2】特開2021-088184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
即ち、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、ポリオールとポリイソシアネートとを含む反応性接着剤の硬化物である接着剤層が、アルカリ性水溶液により膨潤し微細化することで、単層フィルムを分離・回収可能とするものである。しかしながら、このような反応性接着剤の塗布量は一般的に1.0~5.0g/m2程度であり積層体の分離工程において接着剤層の微細片が多量に発生するため、脱離液が懸濁し、懸濁した成分が脱離フィルムに付着し洗浄性を低下させるという課題がある。
また、脱離液中に懸濁成分が増えると、使用後の脱離液を再利用する際の濾過や浄化工程に必要なエネルギーが増加し、環境負荷を増大させてしまうという課題がある。
そこで、本発明の課題は、脱離液の懸濁(汚染)を抑制しながら、ラミネート積層体からポリオレフィン樹脂を分離・回収する方法を提供することにある。すなわち、本発明の課題は、脱離液の再利用が容易で、環境負荷を低減した積層体の分離回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、少なくとも、第一基材層、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ単位面積あたりの質量が5~100mg/m2である接着剤層、及び、ポリオレフィン樹脂層をこの順に備える積層体を、脱離液に浸漬して積層体からポリオレフィン樹脂を分離する分離工程と、前記分離したポリオレフィン樹脂を回収する回収工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記積層体が、第一基材層と接着剤層との間に印刷層を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記接着剤層を形成する接着剤に含まれる硬化剤の含有率が、接着剤の固形分質量を基準として5質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記印刷層を形成する印刷インキに含まれる硬化剤の含有率が、印刷インキの固形分質量を基準として5質量%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記ポリオレフィン樹脂層が、押出しラミネート法により形成されてなる層であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記接着剤層が、単位面積あたりの質量が10~50mg/m2であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記接着剤層が、接着剤層の質量を基準として、ポリエチレンイミン及びポリブタジエンを合計で50質量%以上含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記脱離液が、水と界面活性剤とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記界面活性剤が、HLB値が7以上の界面活性剤であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記脱離液が、さらにHLB値が1~3の消泡剤を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記脱離液が、温度が40℃~90℃且つpHが12以上のアルカリ性水溶液であることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る積層体の分離回収方法は、前記回収工程が、前記分離したポリオレフィン樹脂を比重分離により選別回収する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、脱離液の懸濁(汚染)を抑制しながら、ラミネート積層体からポリオレフィン樹脂を分離・回収する方法を提供することができる。これにより、積層体の分離・回収において、脱離液の再利用が容易となり、さらに環境負荷低減を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、少なくとも、第一基材層、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ単位面積あたりの質量が5~100mg/m2である接着剤層、及び、ポリオレフィン樹脂層をこの順に備える積層体を、脱離液に浸漬して積層体からポリオレフィン樹脂を分離する分離工程と、前記分離したポリオレフィン樹脂を回収する回収工程とを有する、積層体の分離回収方法に関する。
ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ塗布量5~100mg/m2である接着剤層に接してポリオレフィン樹脂層を備える上記積層体と、上記分離工程及び回収工程とを組合せることで、積層体の分離回収において、脱離液の懸濁を大幅に低減することができる。また、回収したポリオレフィン樹脂を溶融リサイクルした際に、機械物性の低下や着色を抑えた再生樹脂を得ることができる。
以下に本発明について詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
<積層体>
本発明における積層体は、少なくとも、第一基材層、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ単位面積あたりの質量が5~100mg/m2である接着剤層、ポリオレフィン樹脂層をこの順に備えることを特徴とする。
【0022】
<第一基材層>
第一基材層は特に制限されず、食品等の包装パッケージに一般的に用いられる、フィルム状又はシート状のプラスチック基材、金属箔、紙等が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。
プラスチック基材としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のフィルムが挙げられ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
【0023】
プラスチック基材の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体;等が挙げられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチック基材の厚みは、好ましくは5μm~200μm、より好ましくは10μm~100μm、さらに好ましくは10μm~50μmである。
【0024】
プラスチック基材は、金属若しくは金属酸化物の蒸着層、又は、ポリビニルアルコール等の有機層からなるバリア層を備えていてもよく、該蒸着層としては、例えば、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。
このようなバリア層を備えるプラスチック基材の市販品としては、例えば、プラスチック基材上にアルミナ等の無機蒸着層が積層された、「GL FILM」(凸版印刷社製)や、IB-FILM(大日本印刷社製)が挙げられる。
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。アルミニウム箔は、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みであることが好ましい。
なお、アルミニウムやアルミナはアルカリ性水への溶解性を有するため、脱離液としてアルカリ性水溶液を用いて後述する分離工程を実施した場合、アルミニウムやアルミナか
らなる蒸着層又はアルミニウム箔は、第一基材層から脱離することができる。
【0025】
本発明では、上述するように、第一基材層として、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のようなポリオレフィン樹脂フィルムを使用することができる。第一基材層としてポリオレフィン樹脂を用い、且つ、後述する印刷層を脱離する技術と組み合わせることで、ポリオレフィン樹脂層の分離回収と同時に、第一基材層であるポリオレフィン樹脂フィルムも、印刷層が脱離した透明なポリオレフィン樹脂として回収することができ、積層体から回収するポリオレフィン樹脂の総量を増やすことができる。
【0026】
[印刷層・プライマー層]
第一基材層は、さらに印刷層を有していてもよい。印刷層とは、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は第一基材に直接接して配置されていてもよく、第一基材層上に、プライマー層を介して配置されていてもよい。
以下に、プライマー層及び印刷層について説明する。
【0027】
[プライマー層]
第一基材層が印刷層を備える場合、第一基材層と印刷層との間に、公知のプライマー層が配置されていてもよい。プライマー層は、後述する脱離液に浸漬することで、印刷層と共に、第一基材層から脱離可能なものであってもよい。このようなプライマー層を設けることで、分離工程において、第一基材層から印刷層を容易に脱離することができる。これにより、第一基材層がポリオレフィン樹脂フィルムである場合、積層体から回収するポリオレフィン樹脂の総量を増やすことができる。
プライマー層は、好ましくは、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物(但し、水溶性樹脂を除く)を含むものである。
【0028】
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂としては、水で膨潤又は溶解し、第一基材層から脱離することができる樹脂であればよい。水は温度25~100℃程度に加温されていてもよい。これにより、プライマー層を水(温水含む)で脱離することができる。
このような樹脂としては、水溶性を損なわない範囲で、公知の樹脂から選択でき、例えば、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリイミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアリルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノキシ樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、入手のしやすさ、脱離性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂が好適に用いられる。
水溶性樹脂が造膜性を有する場合、プライマー層を構成するバインダー樹脂として水溶性樹脂を用いてもよい。
【0029】
ポリビニルアルコール樹脂としては、未変性のポリビニルアルコールの他に、ビニルエステル系樹脂の製造時に各種モノマーを共重合させ、これをケン化して得られる変性ポリビニルアルコールや、未変性ポリビニルアルコールに後変性によって各種官能基を導入した各種の後変性ポリビニルアルコールを用いてもよい。また、変性ポリビニルアルコールを更に後変性させたものでもよい。これらの変性は、ポリビニルアルコール樹脂の水溶性が損なわれない範囲で行うことができる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ポリビニルアルコール樹脂として好ましくは、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有する樹脂、エチレン変性ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。中でも、溶融成形性
に優れ、さらに水溶性に優れる点で、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するポリビニルアルコール樹脂が好ましい。これらの構造単位における一級水酸基の数は、通常1~5個、好ましくは1~2個、より好ましくは1個である。また、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。
【0031】
本発明で用いられるポリビニルアルコール樹脂のケン化度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常60~100モル%である。また、ケン化度の好ましい範囲は、変性種によって異なり、例えば、未変性ポリビニルアルコール樹脂の場合、通常60~99.9モル%、好ましくは70~99.0モル%、より好ましくは75~98.5%である。側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常60~99.9モル%、好ましくは65~99.8モル%、より好ましくは70~99.5モル%である。かかるケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向がある。少量のエチレンで変性されたエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常60モル%以上、好ましくは70~99.5モル%、特に好ましくは75~99.0モル%である。
ケン化度が上記範囲内であると、水溶性に優れ脱離性が良好になるため好ましい。また、プライマー層を形成する際の、塗工性にも優れるため好ましい。
【0032】
ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常100~3000であり、好ましくは150~2000、より好ましくは180~1000、特に好ましくは200~800である。市販品としては、例えば、日本酢ビ・ポバール社のJFシリーズ、クラレ社製のポバールシリーズ、エクセバールシリーズが挙げられる。
【0033】
(酸性基を有する化合物)
酸性基を有する化合物としては、酸性基を有する樹脂又は酸性基を有する低分子化合物を用いてもよい。これにより、プライマー層を脱離液(アルカリ性水溶液)で脱離することができる。
酸性基を有する樹脂における樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。上記酸性基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、スルフィノ基等若しくはそれらのエステル又は塩が挙げられる。
また、酸性基を有する樹脂として、マレイン化ロジンやフマル化ロジン等の酸価を有するロジン変性樹脂を用いることができる。
また、酸性基を有する樹脂として、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシ基を有する重合性モノマー;無水イタコン酸、無水マレイン酸等の酸無水物である重合性モノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー;のような酸性基を有する重合性モノマーを共重合させた、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、テルペン-(無水)マレイン酸樹脂等のラジカル共重合体や、酸変性されたポリオレフィン樹脂を用いることができる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
酸性基を有する低分子化合物は、分子量分布を有しない化合物であって、且つ分子量が1,000以下の化合物を指す。このような化合物としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;アコニット酸等のトリカルボン酸;ピルビン酸、オキサ
ロ酢酸等のオキソカルボン酸;アミノ酸、ニトロカルボン酸等のカルボン酸誘導体;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物が挙げられる。
酸性基を有する低分子化合物は、上述する酸性基を有する樹脂又は公知のバインダー樹脂と組合せて、プライマー層を形成してもよい。
【0035】
[印刷層]
印刷層の形成方法は制限されず、公知の方法を用いて形成することができる。
印刷層は、印刷インキや塗料で使用される公知のバインダー樹脂と着色剤とを含む。
バインダー樹脂としては、例えば、ニトロセルロース系、セルロースアセテート・プロピオネート等の繊維素材、塩素化ポリプロピレン系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン樹脂系及びアクリルウレタン系、ポリアミド系、ポリブチラール系、環化ゴム系、塩化ゴム系の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも第一基材をプラスチック基材とした際に、プラスチック基材との接着性に優れるウレタン樹脂系、ポリエステル系、塩素化ポリプロピレン系が好適に用いられる。
【0036】
着色剤は特に制限されず、無機顔料、有機顔料、染料のほか、金属光沢を与える金属粉、近赤外吸収材料、紫外線吸収材料を用いてもよい。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料;炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料;が挙げられる。有機顔料としては、カラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが挙げられ、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を好適に用いることができる。
また印刷層は、着色剤の分散剤として、顔料誘導体又は樹脂型分散剤を含有してもよい。
【0037】
印刷層は、脱離液からの脱離性を有していてもよく、例えば、水溶性樹脂又は酸性基を含む化合物(但し、水溶性樹脂を除く)を含んでいてもよい。上記水溶性樹脂及び酸性基を有する化合物は、上述する[プライマー層]の項における(水溶性樹脂)、(酸性基を有する化合物)の記載を援用できる。
このような印刷層を設けることで、分離工程において、第一基材層から印刷層を容易に脱離することができる。これにより、第一基材層がポリオレフィン樹脂フィルムである場合、積層体から回収するポリオレフィン樹脂の総量を増やすことができる。
【0038】
本発明における印刷層を形成する印刷インキは、本発明の効果を損なわない範囲で硬化剤を含有してもよい。硬化剤を含有することで、印刷インキ中のバインダー樹脂、並びに基材表面の水酸基やカルボキシ基と反応し、積層体の接着強度や耐内容物性が向上する。
印刷インキに含まれる硬化剤の量は、印刷インキの固形分質量を基準として、好ましくは0質量%以上、5質量%以下である。硬化剤の量が5質量%以下であると、印刷層に含まれる硬化剤が、印刷層上に形成された接着剤層に過剰に移行することを抑制でき、分離性を損なうことがない。
印刷インキが含有してもよい硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤が挙げられる。
【0039】
印刷層の厚みは、好ましくは0.1μm~100μm、より好ましくは0.1μm~10μm、さらに好ましくは1μm~5μmである。
【0040】
<接着剤層>
本発明における接着剤層は、第一基材層とポリオレフィン樹脂層との間、より詳細には、第一基材層、若しくは第一基材層が備える印刷層に接して配置された層であり、ポリエ
チレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み、且つ、単位面積あたりの質量が5~100mg/m2であることを特徴とする層である。
該接着剤層は、5~100mg/m2という少ない塗布量で第一基材層と、後述するポリオレフィン樹脂層とのラミネート強度を発揮することができる。また、該接着剤層は、脱離液に浸漬することにより、溶解・剥離してポリオレフィン樹脂を分離することができ、さらに、従来と比較して、脱離液の懸濁・汚染を大幅に低減することができる。
【0041】
[ポリエチレンイミン]
本発明で用いられるポリエチレンイミンは、エチレンイミンを重合した水溶性ポリマーであり、水やアルコールに溶解させることが可能なものを表す。該ポリエチレンイミンとして好ましくは、分子内に第一級、第二級、第三級アミノ基を有し、分子内に分岐構造を有する分岐状ポリエチレンイミンであり、公知のものを使用できる。
このようなポリエチレンイミンの市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポミンSP-003、エポミンSP-006、エポミンSP-012、エポミンSP-018、エポミンSP-200、エポミンHM-2000、エポミンP-1000、エポミンP-3000;BASF社製のLOXANOL MI6721、LOXANOL MI6730、LOXANOL MI6735;が挙げられる。これらポリエチレンイミンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレンイミンの数平均分子量は、ラミネート強度の観点から、好ましくは10,000以上、180,000以下、より好ましくは30,000以上、150,000以下、さらに好ましくは50,000以上、100,000以下である。
【0042】
[ポリブタジエン]
本発明で用いられるポリブタジエンは、ブタジエンを構成単位とするポリマーであればよく、大日精化工業(株)から商品名セイカダイン、日本曹達(株)から商品名チタボンドなどが市販されている。ブタジエンとして好ましくは1,2-ポリブタジエン由来のものであり、中でも、日本曹達社製「チタボンドT180E」等の1,2-ポリブタジエン変性体が、脱離性の観点から好適に用いられる。これは、「チタボンドT180E」がエマルションを形成可能であり親水性構造を有するためであると推察される。ポリブタジエンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい
【0043】
本発明における接着剤層は、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかと、水およびアルコール系有機溶剤のうち1種以上を含む媒体とを含む組成物(接着剤)を用いて、例えば、グラビアコーター法、ロールコーター法等の公知の方法により設けることができる。接着剤を塗布した後、必要に応じて乾燥工程を設けてもよい。
接着剤層の単位面積あたりの質量は、脱離液の汚染を抑制する観点から、5~100mg/m2であることが重要である。5mg/m2未満である接着剤層の塗布量が不十分であり、積層体として必要な接着強度を維持することが困難とある。また、100mg/m2を超えると、脱離液中へ溶解又は分散する量が多くなり、脱離液の汚染を引き起こす。
接着剤層の単位面積あたりの質量は、接着強度の観点から、好ましくは10mg/m2以上であり、脱離液の汚染抑制の観点から、好ましくは50mg/m2以下、より好ましくは30mg/m2以下である。
接着剤層の質量は、接着剤を塗布する際の版深やロール転移量の調節、接着剤の固形分調整により制御することができる。
【0044】
本発明における接着剤層を形成する接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で硬化剤を含有してもよい。硬化剤を含有することで、接着剤中のバインダー樹脂、印刷層表面、並びにポリオレフィン樹脂表面の水酸基やカルボキシ基と反応し、積層体の接着強度や耐内容物性が向上する。接着剤に含まれる硬化剤の量は、接着剤の固形分質量を基準として、好ましくは0質量%以上、5質量%以下である。硬化剤の量が5質量%以下であると、
脱離液に対する接着剤層の溶解速度及び膨潤速度が低下することなく、分離性を損なうことがない。
接着剤が含有してもよい硬化剤としては、例えば、水分散型イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤が挙げられる。
【0045】
[その他成分]
上記接着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他成分を含有してもよい。このような成分としては、例えば、成膜性や耐ブロッキング性を向上させるための、その他樹脂、濡れ性を向上させるためのレベリング剤、塗工時の泡を抑制するための消泡剤が挙げられる。
上記その他樹脂としてはポリ酢酸ビニルが好適に用いられ、市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製のゴーセ二ールシリーズ、高圧ガス工業社のペガールシリーズ、WACKER POLYMER社製のVINNAPASシリーズが挙げられる。
レベリング剤や消泡剤の市販品としては、例えば、日信化学社製のサーフィノールシリーズ、TEGO社製のTEGOGLIDEシリーズ、TEGOFOAMEXシリーズが挙げられる。
【0046】
接着剤層は、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み、接着剤層の質量を基準として、ポリエチレンイミン及びポリブタジエンを合計で50質量%以上含むことが好ましい。接着剤層中における、ポリエチレンイミン及びポリブタジエンの合計の含有量は、接着強度の維持と分離性との両立の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。
【0047】
<ポリオレフィン樹脂層>
本発明におけるポリオレフィン樹脂層は、主成分としてポリオレフィン樹脂を含む層であればよい。ポリオレフィン樹脂は安定性に優れるため、脱離液を汚染しない点で優れる。また、主成分とは、ポリオレフィン樹脂層の質量を基準として、90質量%以上であることを意味し、好ましくは95質量%以上である。
【0048】
ポリオレフィン樹脂層は、接着強度の観点から押出しラミネート法により形成されてなることが好ましい。押出しラミネート法を用いて積層することで、接着剤層が5~100mg/m2という少ない塗布量であっても、良好な接着強度を発揮することができるため好ましい。押出しラミネート法としては、例えば、溶融したポリオレフィン樹脂を押出機にて押し出し、Tダイと呼ばれる治具にてフィルム状へ押し出したのち、プレスロールと冷却ロールにて、第一基材上に配置された接着剤層と圧着し、ポリオレフィン樹脂層を積層する方法が挙げられる。
【0049】
押出しラミネートに使用するポリオレフィン樹脂は、公知のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等から適宜選択することができる。加工性の観点から、密度が0.85~0.93g/cm3、且つメルトフローレート(MFR)が1~30g/10分の低密度ポリエチレン、若しくはポリプロピレンが好適に用いられる。
ポリオレフィン樹脂の溶融温度は、含有する樹脂のメルトフローレート等により調整でき、接着強度の観点から、好ましくは、Tダイ押し出し直下で270℃以上であり、より好ましくは290℃以上である。
このようなポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、ノバテックLDシリーズ(日本ポリエチレン社製)、ペドロセンシリーズ(東ソー社製)、ノバテックPPシリーズ(日本ポリプロ社製)が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ポリオレフィン樹脂層の厚みは、用途と目的に応じて押出し速度を変更することで調整
可能であるが、薄膜且つ良好な接着強度を発現するという観点から、好ましくは10μm~50μm、より好ましくは10μm~30μmである。
【0051】
<積層体の製造>
本発明における積層体は、少なくとも、第一基材層、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ単位面積あたりの質量が5~100mg/m2である接着剤層、及び、ポリオレフィン樹脂層をこの順に備えていればよく、例えば、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含む接着剤層を備える第一基材層の接着剤層上に、溶融したポリオレフィン樹脂を押出しラミネート法にて積層する方法が挙げられる。接着剤層は、例えば、ポリエチレンイミン及び/又はポリブタジエンを含む接着剤を、グラビアコーター法、ロールコーター法等の公知の方法で塗布することで形成することができる。
【0052】
[シーラント基材層]
本発明における積層体は、さらに、シーラント基材層を有していてもよい。シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
シーラント基材層は、上述するように、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂フィルムであってもよい。シーラント基材がポリオレフィン樹脂フィルムであると、上述するポリオレフィン樹脂を分離・回収する際に、シーラント基材も併せて回収でき、積層体から回収するポリオレフィン樹脂の総量を増やすことができるため好ましい。
【0053】
シーラント基材層の配置位置及び積層方法は特に限定されないが、例えば、第一基材層に接して接着剤層とは反対の面に、ドライラミネート法や押出しラミネート法のような公知の方法により設けることができる。ドライラミネートに用いる接着剤としては公知の接着剤を用いることができ、脱離液により脱離する、脱離性を有する接着剤を使用してもよい。脱離性を有する接着剤を用いることで、シーラント基材を分離・回収することができる。
【0054】
また、例えば、シーラント基材層は、上述するポリオレフィン樹脂層に接して接着剤層とは反対の面に設けることができる。この場合、接着剤層を備える第一基材層の接着剤層面と、シーラント基材とを、溶融させたポリオレフィン樹脂を介して押出しラミネートすることでシーラント基材層を積層することができる。
【0055】
シーラント基材がポリオレフィン樹脂フィルムであり、ポリオレフィン樹脂層に接して配置された構成である場合、シーラント基材層とポリオレフィン樹脂層との間を分離することなく、まとめて分離・回収することができる。
【0056】
また、例えば、シーラント基材層は、金属若しくは金属酸化物の蒸着層からなるバリア層を備えていてもよい。該蒸着層としては、例えば、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。該蒸着層は、アルカリ性水溶液により溶解するため、シーラント基材がポリオレフィン樹脂フィルムである場合、ポリオレフィン樹脂の回収時に併せて回収することができる。
【0057】
シーラント基材層の厚みは特に制限されないが、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~200μm、より好ましくは15~150μmである。また、シーラント基材は、数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包
装材の引き裂き性を付与していてもよい。
【0058】
[その他層]
本発明における積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに公知の層を有していてもよい。有していてもよい層としては、例えば、接着剤層、プラスチック基材層、金属箔、紙、オーバーコート層、ヒートシール層が挙げられ、金属若しくは金属酸化物の蒸着層を有していてもよい。
【0059】
本発明における積層体の具体的な構成例を挙げる。
第一基材層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層
第一基材層/印刷層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層/シーラント基材層
第一基材層/プライマー層/印刷層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層/シーラント基材層
第一基材層/印刷層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層/シーラント基材層
第一基材層/印刷層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層/蒸着フィルム層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層/シーラント基材層
シーラント基材層/ポリオレフィン樹脂層/接着剤層/第一基材層/印刷層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層
【0060】
<積層体の分離回収方法>
本発明の積層体の分離回収方法は、上述する積層体を、脱離液に浸漬して積層体からポリオレフィン樹脂を分離する分離工程と、前記分離したポリオレフィン樹脂を回収する回収工程とを有するものである。本発明において、分離回収したポリオレフィン樹脂を、リサイクル基材・再生基材として再利用する場合、回収後のポリオレフィン樹脂に含まれる、ポリオレフィン樹脂以外の成分(例えば、第一基材、接着剤、印刷インキ等に由来する成分)は少ない方が好ましい。
さらに、第一基材、ポリオレフィン樹脂層と接して設けられたシーラント基材のような、積層体に含まれる別の層がポリオレフィンからなるものである場合、これらの樹脂も、ポリオレフィン樹脂を回収する際に併せて回収することができ、回収するポリオレフィン樹脂の総量を増やすことができ好ましい。
回収するポリオレフィン樹脂の量(回収率)は、積層体中に含まれる全てのプラスチック基材の質量を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0061】
[分離工程]
上記分離工程において使用する脱離液は、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ単位面積あたりの質量が5~100mg/m2である接着剤層を溶解又は膨潤させることにより、ポリオレフィン樹脂を分離できるものであればよい。積層体を脱離液に浸漬することで、接着剤層が溶解又は膨潤して、第一基材層及び接着剤層から剥離し、第一基材層から接着剤層を分離することができる。
【0062】
(脱離液)
このような脱離液としては、例えば、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、フッ素系溶剤が挙げられ、界面活性剤及び/又は消泡剤を含有してもよい。
脱離液は、環境負荷低減、及び回収されたポリオレフィン樹脂の性状維持の観点から、好ましくは、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液のような水を含む水溶液であり、より好ましくは、水、アルカリ性水溶液であり、さらに好ましくは、HLB値が7以上の界面活性剤を含むものであり、特に好ましくは、HLB値が7以上の界面活性剤及びHLB値が1~3の消泡剤を含むものである。また脱離液は加温されていてもよく、分離性の観点から、好ましくは温度40℃~90℃である。
なおHLB値とは、水及び油への親和性に関する指標値であり、親水基を持たない物質のHLB値を0、親水基のみを有する物質のHLB値を20として等分したものである。HLBの概念は1949年にAtlas Powder Companyのウィリアム・グリフィンによって提唱され、計算によって決定する方法がいくつか提案されており、本発明においてHLB値は、グリフィン法を用いて次式から求めることができる。
式:HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の分子量)]
界面活性剤中に含まれる親水基としては、例えば、水酸基、エチレンオキシ基が挙げられる。
【0063】
《アルカリ性水溶液》
アルカリ性水溶液は、塩基性化合物を含むpH12以上の水溶液であることが好ましい。塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が好適に用いられるが、これらに限定されない。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
アルカリ性水溶液は、塩基性化合物を水溶液中に0.5~20質量%含むことが好ましく、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは3~15質量%含む。濃度が上記範囲内にあると、接着剤層が効率的に溶解又は膨潤し、ポリオレフィン樹脂の分離に優れる。
【0064】
《界面活性剤》
HLB値が7以上の界面活性剤は、接着剤層等の分離性を向上させる役割を担う。これは、脱離液がHLB値7以上の界面活性剤を含有することで、脱離液が接着剤層中に浸透しやすくなり、分離が促進されるためと考えられる。
脱離液中の界面活性剤の含有量は、脱離液の質量を基準として、好ましくは0.001~10質量%の範囲であり、より好ましくは0.03~3質量%の範囲である。
【0065】
HLB値が7以上の界面活性剤の種類としては、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性が挙げられ、要求特性に応じて適宜好適な種類、配合量を選択できる。脱離性や発泡性の観点から、好ましくは、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である。また、界面活性剤は、アルキレンオキサイド(以下、AOともいう)を付加した構造であることで、脱離性が良好となるため好ましい。
【0066】
《消泡剤》
本発明において、消泡剤とは、HLB値が1~3の範囲であるものを指し、上述のHLB値が7以上の界面活性剤と組み合わせて用いることで良好な消泡性を発現し、界面活性剤による発泡を抑制することができる。これにより脱離時の泡の抑止による攪拌速度の向上や、後述する比重分離時の泡による分離妨害を抑制し、浮上するポリオレフィン樹脂を回収しやすくなる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、非シリコーン系化合物が挙げられる。消泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
脱離液中の消泡剤の含有量は、脱離液の質量を基準として、好ましくは0.0001~3質量%の範囲であり、より好ましくは0.01~1質量%の範囲である。
【0067】
(細断工程)
脱離液は、積層体の端部分から浸透して接着剤層に接触し、接着剤層を溶解または膨潤させることで、ポリオレフィン樹脂層を、第一基材層及びポリオレフィン樹脂層が接する
その他層から脱離させる。したがって効率的に分離工程を進めるために、分離工程の前に、積層体を裁断又は破砕し、断面に接着剤層が露出させる細断工程を有することが好ましい。細断工程を設けることで、より短時間でポリオレフィン樹脂を第一基材及びポリオレフィン樹脂層が接するその他層から分離することができる。
積層体を細断又は破砕する方法は特に制限されず、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミルを用いる方法が挙げられる。
【0068】
脱離液への浸漬時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは1分間~12時間、さらに好ましくは1分間~6時間である。脱離液の使用量は、再生プラスチックの品質と処理効率の観点から、積層体の質量に対して、好ましくは10~100倍量、より好ましくは25~100倍である。分離効率を向上させるために、脱離液の攪拌又は循環等を行うことが好ましい。攪拌の回転速度は、好ましくは80~3000rpm、より好ましくは200~2000rpmである。
【0069】
[回収工程]
ポリオレフィン樹脂の回収方法は特に制限されず、例えば、比重分離法を用いて、ポリオレフィン樹脂を選択的に回収することができる。
比重分離法では、分離工程で分離されたポリオレフィン樹脂と、印刷層及び第一基材とを、比重の違いを利用して分離することができる。また、積層体に含まれる第一基材やシーラント基材がポリオレフィンからなり、且つ、分離工程において印刷層等が除去できる場合は、ポリオレフィン樹脂層と併せて回収することができる。
【0070】
(除去工程・洗浄工程)
本発明の分離回収方法では、回収工程の後に、印刷層や接着剤層が付着した基材を除去する除去工程を有していてもよい。除去方法は特に制限されず、例えば、赤外線センサー、色仕分けセンサー等の光学センサーを用いる方法が挙げられる。
本発明の分離回収方法では、回収工程の後に、回収したポリオレフィン樹脂を水で洗浄し、付着した脱離液や不純物を洗い流す洗浄工程を設けてもよく、必要に応じて乾燥工程をさらに設けてもよい。
除去工程と洗浄工程との順序は制限されず、いずれを先に行ってもよい。
【0071】
<ポリオレフィン樹脂の再利用>
本発明の分離回収方法により回収されたポリオレフィン樹脂は、ペレタイズ工程を行い再生樹脂として再利用することができる。
上記ペレタイズ工程は、必要に応じて各種添加剤を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合した後、溶融混練する工程である。
溶融混錬の装置としては、例えば、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機が挙げられる。
ペレタイズ後の形状は特に制限されず、ペレット状、粉体状、顆粒状、ビーズ状等のいずれの形状であってもよい。
【0072】
再生樹脂は、さらにマスターバッチを含有してもよい。マスターバッチは、再生樹脂に対して相溶性を有するものであれば特に制限されず、一般的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂と着色剤とを混練したものを使用できる。マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
上記着色剤は、一般的にマスターバッチに用いられるものであれば、特に制限されず、例えば、酸化チタン、クロムチタンエイロー、弁柄、群青、カーボンブラックのような無機顔料;アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料のような有機顔料が挙げられる。
【0074】
マスターバッチは、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ金属やアルカリ土類金属又は亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、帯電防止剤、ハロゲン系、リン系又は金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤を含有してもよい。
【実施例0075】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における「部」及び「%」は、特に注釈の無い場合、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0076】
合成したポリエステルポリオールP1~P2およびウレタンワニスB1、B3の分子量及び分子量分布、酸価、水酸基価の測定方法を以下に示す。
<分子量及び分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。測定条件を以下に示す。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0077】
<酸価、水酸基価>
酸価及び水酸基価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定した。
【0078】
<接着剤の製造>
(接着剤T1の製造)
エポミンP-1000(日本触媒社製ポリエチレンイミン溶液)0.70部、水29.79部、エタノール69.51部を混合し不揮発分0.2%の接着剤T1を得た。
【0079】
(接着剤T2~T14の製造)
表1に示した原料及び配合組成に変更した以外は、接着剤T1と同様の手法により、接着剤T2~T14を得た。
【0080】
【0081】
表1中の略称を以下に示す。
エポミンP-1000(日本触媒社製ポリエチレンイミン溶液):数平均分子量70,000、不揮発分30質量%
エポミンSP-018(日本触媒社製ポリエチレンイミン):数平均分子量1,800
エポミンSP-200(日本触媒社製ポリエチレンイミン):数平均分子量10,000チタボンドT-180E(日本曹達社製エマルション型ポリブタジエン):不揮発分10質量%
ゴーセ二ールM50-Z8(三菱ケミカル社製ポリ酢酸ビニル)不揮発分50質量%
ペガール150(高圧ガス工業社製ポリ酢酸ビニル)不揮発分42質量%
KBM-403(信越化学工業社製3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0082】
(接着剤T15~T17の製造)
特開2021-088184号公報に記載のポリウレタン系接着剤を、接着剤T15~T17として用いた。具体的には以下に示すポリエステルポリオール(P1)の溶液90部、ポリエステルポリオール(P2)の溶液10部、ポリイソシアネート(C1)の溶液8部を混合し、酢酸エチルを加えて不揮発分30%の接着剤溶液を調整した。
該接着剤溶液をさらに酢酸エチルにて不揮発分2%に希釈して接着剤T15を得た。同様にして不揮発分6%に希釈して接着剤T16を、不揮発分18%に希釈して接着剤T17を得た。
【0083】
《ポリエステルポリオールP1の合成》
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール124部、ネオペンチルグリコール212部、1,6-ヘキサンジオール368部、イソフタル酸645部、アジピン酸36部、セバシン酸265部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧し、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート35部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部にエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを12.0部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量9,000、酸価30.3mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオールP1の溶液を得た。
【0084】
《ポリエステルポリオールP2の合成》
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール58部、ジエチレングリコール412部、ネオペンチルグリコール343部、イソフタル酸517部、アジピン酸393部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧し、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール100部に無水トリメリット酸を4.0部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量2,000、酸価23.5mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオールP2の溶液を得た。
【0085】
《ポリイソシアネートC1の調整》
コロネート2785(ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO%=9.6%に調整し、ポリイソシアネートC1の溶液を得た。
【0086】
<印刷インキの製造>
(印刷インキI1の製造)
ポリウレタンワニスB1(荒川化学社製KL-593:ポリエステルポリエーテル併用系ポリウレタンワニス固形分濃度30%)30部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂ワニス(日信化学社製ソルバインTAO:固形分濃度30%酢酸エチル溶液)10部、藍顔料(トーヨーカラー社製リオノールブルーFG7330)10部、及び酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=70/30(質量比)の混合溶剤20部を、撹拌混合した後、サンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、同混合溶剤30部を撹拌混合して、印刷インキI1を得た。
【0087】
(印刷インキI2の製造)
ポリウレタンワニスB1をポリエステルワニスB2(東洋紡社製バイロン200:ポリエステルワニス固形分濃度30%酢酸エチル溶液)に変更した以外は、印刷インキI1と同様の手法により印刷インキを得た。この印刷インキ100部に対しヘキサメチレンジイソシアネート2官能プレポリマー(旭化成製 デュラネートD101 酢酸エチルにて固形分濃度50%に希釈した溶液)3部を加え、印刷インキI2を得た。
【0088】
(印刷インキI3の製造)
印刷インキI1を100部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネート2官能プレポリマー(旭化成製 デュラネートD101 酢酸エチルにて固形分濃度50%に希釈した溶液)3部を加え、印刷インキI3を得た。
【0089】
<プライマー組成物の製造>
(ポリウレタン樹脂B3の製造)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPA(プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール)135.7部、PPG(ポリプロピレングリコールからなる、数平均分子量2,000のポリエーテルポリオール)13.6部、2,2-ジメチロールプロパン酸28.3部、イソホロンジイソシアネート106.7部、酢酸ノルマルプロピル200部を仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールを16.7部、イソプロピルアルコールを350部混合したものを、室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、酢酸ノルマルプロピル150部を加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、重量平均分子量30,000、Mw/Mn=3.0、酸価38.3mgKOH/g、水酸基価30.5mgKOH/gのポリウレタン樹脂B3の溶液を得た。
【0090】
(プライマー組成物S1の製造)
ポリウレタン樹脂B3溶液を87部、酢酸エチル5部、イソプロピルアルコール5部、シリカ粒子(水澤化学社製P-73:平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子)3部を、ディスパーを用いて撹拌混合して、プライマー組成物S1を得た。
【0091】
(プライマー組成物S2の製造)
ポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製JF-03)5部と水95部とを、ディスパーを用いて95℃にて撹拌混合して、プライマー組成物S2を得た。
【0092】
(プライマー組成物S3の製造)
ポリウレタンワニスB1を30部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂ワニス10部、無水ピロメリット酸2部、及び酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=70/30(質量比)の混合溶剤58部、をディスパーを用いて撹拌混合して、プライマー組成物S3を得た。
【0093】
<積層体の製造>
(積層体L1)
OPP(コロナ処理2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm)の処理面に、接着剤T1を版深15μmのグラビア版を備えたグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥することで接着剤層を形成した。接着剤層上に、LDPE(日本ポリエチレン社製低密度ポリエチレン:ノバテックLD LC520)を溶融温度310℃で押出しラミネートすることにより、CPP(コロナ処理無延伸ポリプロピレンフィルム、厚み30μm)と圧着して積層体L1を得た。接着剤層の単位面積あたりの質量(塗布量)は10mg/m2、LDPE層の厚みは15μmであった。
【0094】
(積層体L2)
表2に記載の内容に変更した以外は積層体L1と同様の手法により積層体L2を得た。
【0095】
(積層体L3)
OPP処理面に対し、希釈した印刷インキI1を版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して印刷層を形成した。その後、印刷層上に、接着剤T1を版深15μmのグラビア版を備えたグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥することで接着剤層を形成した。接着剤層上に、LDPEを溶融温度310℃で押出しラミネートすることにより、CPPと圧着して積層体L3を得た。接着剤層の塗布量は10mg/m2、LDPE層の厚みは15μmであった。
【0096】
(積層体L4~L15、L17~L20、L24~L29)
表2に記載の内容に変更した以外は積層体L3と同様の手法により、積層体L4~L15、L17~L20、L24~L29を得た。なお、積層体L19、L27、L29はシーラント基材の圧着は行わずに、積層体を製造した。
【0097】
(積層体L16)
OPP処理面に対し、希釈した印刷インキI1を版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して印刷層を形成した。印刷層上に、接着剤T1を版深15μmのグラビア版を備えたグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥することで接着剤層を形成した。接着剤層上に、LDPEを溶融温度310℃で押出しラミネートすることにより、VMPETの蒸着面と圧着して積層させた。
次いで、VMPETのPET面に、接着剤T1を版深15μmのグラビア版を備えたグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥することで接着剤層を形成した。接着剤層上に、LDPEを310℃で押出しラミネートすることにより、CPPと圧着して積層体L16を得た。接着剤層の塗布量は各10mg/m2、LDPE層の厚みは各15μmであった。
【0098】
(積層体L21)
OPP処理面に対し、不揮発分1%に酢酸エチルにて希釈したプライマー組成物S1を版深15μmのグラビア版にて印刷し50℃で乾燥し、プライマー層を形成した。プライマー層上に、印刷インキI1を版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して印刷層を形成した。印刷層上に、接着剤T1を版深15μmのグラビア版を備えたグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥することで接着剤層を形成した。
その後、接着剤層上に、LDPEを溶融温度310℃で押出しラミネートすることによりCPPと圧着して積層体L21を得た。接着剤層の塗布量は各10mg/m2、LDPE層の厚みは各15μmであった。
【0099】
(積層体L22、L23)
表2に記載の内容に変更した以外は積層体L21と同様の手法により、積層体L22、L23を得た。なお、積層体L22におけるプライマーS2の希釈には水を使用した。
【0100】
(積層体LL1、8、10)
表3に記載の材料、溶融温度に変更し、接着剤層を使用しない以外は積層体L1と同様の手法により、比較用の積層体LL1、8、10を得た。なお、積層体LL10はシーラント基材の圧着は行わずに積層体を製造した。
【0101】
(積層体LL2、9、11、12)
表3に記載の材料、溶融温度に変更し、且つ、接着剤層を使用しない代わりに印刷層に対し押し出しラミネート直前にコロナ放電処理を施した以外は、積層体L1と同様の手法により、比較用の積層体LL2、9、11、12を得た。なお、積層体LL11はシーラント基材の圧着は行わずに積層体を製造した。
【0102】
(積層体LL3~7)
表3に記載の材料、溶融温度に変更した以外は積層体L1と同様の手法により、比較用の積層体LL3~7を得た。なお、積層体LL7はシーラント基材の圧着は行わずに積層体を製造した。
【0103】
(積層体LL13)
積層体L1と同様に印刷層を形成した後、接着剤T4を用いて、版深45μmのグラビア版を備えたドライラミネート機にてポリオレフィン樹脂層を介さずにCPPとラミネートし、比較用の積層体LL13を得た。接着剤層の塗布量は300mg/m2であった。
【0104】
(積層体LL14)
接着剤T4を接着剤T17に変更した以外は、積層体LL13と同様にして、比較用の積層体LL14を得た。接着剤層の塗布量は2700mg/m2であった。
【0105】
<積層体の接着強度>
得られた積層体を1.5cm幅に切り取り、インテスコ引っ張り試験機にて90°剥離し接着強度を測定した。
A:接着強度が1.0N以上
B:接着強度が0.6N以上、1.0N未満
C:接着強度が0.3N以上、0.6N未満
D:接着強度が0.3N未満
【0106】
【0107】
【0108】
表2及び表3中の略称を以下に示す。なお、表中の*印は、ポリオレフィン樹脂として回収した基材である。
(第一基材層)
OPP:コロナ処理2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm
PET:コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み12μm
紙:カップ用コート紙、270g/m2
(ポリオレフィン樹脂層)
LDPE:ノバテックLD LC520(日本ポリエチレン社製低密度ポリエチレン)
PP:ノバテックPP FL02A(日本ポリエチレン社製ポリプロピレン)
(蒸着フィルム層)
VMPET:アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み12μm
(シーラント基材層)
CPP:コロナ処理無延伸ポリプロピレンフィルム、厚み30μm
VMCPP;アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム、厚み25μm
LLDPE:コロナ処理直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、厚み50μm
【0109】
積層体LL1~3、5、8~10は、接着強度が著しく低く積層体が作成できなかったため、以降の積層体の分離回収へは進めなかった。
【0110】
<積層体の分離回収>
まず、積層体の分離回収に用いる脱離液を、以下の配合処方、条件で混合して調整した。
【表4】
【0111】
表4中の略称を以下に示す。
界面活性剤Y1:POEステアリルエーテル(POE付加数;12、HLB値13.9)界面活性剤Y2:ラウリル硫酸ナトリウム(HLB値>20)
消泡剤T1:BYK-1650(ビックケミー社製シリコーン系エマルション、固形分濃度27.5%)
【0112】
[実施例1]
脱離液W1を1Kg準備し、当該脱離液に対し、5mm角に裁断した積層体L1を0.02Kg投入した。ディスパーを用いて800rpmで180分攪拌することで、接着剤層が脱離し、第一基材とLDPEとの間で分離した。攪拌を止め30分間静置した後、比重により浮上したポリオレフィン成分(OPP及びLDPE/CPPの混合物)を漉し網で掬い取り、水で洗浄した後、オーブンにて乾燥した。残った脱離液は80メッシュにてろ過した。
【0113】
[実施例2~35、比較例1~14]
積層体及び脱離液を、表5に示す内容に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体の分離回収を行い、回収ポリオレフィンを得た。乾燥後残存している着色成分は目視にて
除去した。
【0114】
<評価>
分離性、分離回収後の脱離液の懸濁度、およびポリオレフィンの回収率について、以下の通り評価を行った。
【0115】
[分離性]
攪拌中の積層体において、撹拌後60分、120分、180分に、分離したポリオレフィン樹脂、又は、ポリオレフィン樹脂層とシーラント基材層の積層体を無作為に10枚サンプリングし、水洗乾燥後、ポリオレフィン樹脂表面のATR-IRを測定し、接着剤の吸収ピークが10枚全てにおいて消失することを確認し、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
A(優):60分撹拌後に、接着剤層の吸収ピーク消失が確認される。
B(良):120分撹拌後に、接着剤層の吸収ピーク消失が確認される。
C(可):180分撹拌後に、接着剤層の吸収ピーク消失が確認される。
D(不可):180分撹拌後に、接着剤層の吸収ピーク消失が確認されない、又は、積層体が分離せず測定対象となる透明フィルムが存在しない。
【0116】
[脱離液の濁度]
80メッシュにてろ過した後の脱離液から200ml採取し、JIS K0101に準拠してホルマジン比濁法濁度を測定した。
(評価基準)
A(優):濁度が50NTU未満
B(良):濁度が50NTU以上、100NTU未満
C(可):濁度が100NTU以上、300NTU未満
D(不可)濁度が:300NTU以上
【0117】
[回収率]
回収率を以下の計算式により算出し評価した。
式)回収率(%)=回収された透明ポリオレフィン樹脂の質量/積層体中のプラスチック成分の合計質量×100
(評価基準)
A:回収率が80%以上
B:回収率が50%以上、80%未満
C:回収率が50%未満
【0118】
【0119】
上記の評価結果によれば、ポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含み且つ塗布量5~100mg/m2である接着剤層に接してポリオレフィン樹脂層を備える積層体と、分離工程及び回収工程とを組合せることで、脱離液の懸濁を大幅に低減しながら、付着成分の少ないポリオレフィン樹脂を分離回収することができた。これにより、回収したポリオレフィン樹脂を溶融リサイクルした際に、機械物性の低下や着色を抑えた再生樹脂を得ることができる。
特に、接着剤の塗布量が10~50mg/m2であり、印刷インキ、接着剤へ硬化剤を含まず、数平均分子量50,000以上、100,000以下のポリエチレンイミンを接着剤としている実施例8~10、24,25は、良好な接着強度を発現しつつ、ポリオレフィン樹脂の分離性に優れ、且つ脱離液の濁度が抑制されていた。
接着剤層がポリエチレンイミン又はポリブタジエンのいずれかを含むが、塗布量が100mg/m2を超える比較例1、6は、ポリオレフィン樹脂の分離は可能であるが、脱離液が大きく懸濁した。
脱離性を有するポリウレタン系接着剤を使用した比較例2、3、7は、ポリオレフィン樹脂の分離は可能であるが、脱離した接着剤成分により脱離液が著しく懸濁し、接着剤層の塗布量が100mg/m2であっても、大きく懸濁していた(比較例2)。
比較積層体LL1、LL2、LL8~LL12は、接着強度が不足しているか、又は、ポリオレフィン樹脂層が分離しなかった(比較例4、5)。