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特開2024-47543管内面のブラスト装置及び管内面のブラスト方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047543
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】管内面のブラスト装置及び管内面のブラスト方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 3/16 20060101AFI20240329BHJP
   B24C 3/32 20060101ALI20240329BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20240329BHJP
   B24C 5/06 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B24C3/16
B24C3/32 C
B24C5/02 A
B24C5/06 E
B24C5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117635
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2022152847
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 康治
(72)【発明者】
【氏名】池宗 省三
(72)【発明者】
【氏名】田村 征哉
(57)【要約】
【課題】研掃効率を高めることができる管内面のブラスト装置及び管内面のブラスト方法を提供すること。
【解決手段】本発明の管内面のブラスト装置は、回転軸を中心に回転することによって研掃材を放出するブラストヘッドと、ブラストヘッドから放出された研掃材をガイド面で反射させて、管材の内周面である管内面にガイドするガイド部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転することによって研掃材を放出するブラストヘッドと、
前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材をガイド面で反射させて、管材の内周面である管内面にガイドするガイド部材と、
を備えることを特徴とする管内面のブラスト装置。
【請求項2】
平面視にて、前記回転軸と前記管材の長手方向である管長手方向との両方に直交する方向をX軸とし、前記管長手方向をY軸とし、前記研掃材が前記ブラストヘッドから放出される際の放出位置と前記回転軸とを結んだ直線と前記X軸とのなす角をθとしたとき、前記ガイド面の形状の少なくとも一部がXY平面内で、dy/dx=-tan(π/4-θ/2)の関係式を満足する形状であることを特徴とする請求項1に記載の管内面のブラスト装置。
【請求項3】
複数の前記ガイド部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の管内面のブラスト装置。
【請求項4】
複数の前記ガイド部材のうちの一つ以上が着脱可能であることを特徴とする請求項3に記載の管内面のブラスト装置。
【請求項5】
前記ブラストヘッドと前記ガイド部材とが、同一の支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の管内面のブラスト装置。
【請求項6】
前記ブラストヘッドが第一の支持部材に支持されており、
前記ガイド部材が前記第一の支持部材とは別の第二の支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の管内面のブラスト装置。
【請求項7】
平面視にて、前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材が管内面に衝突するときの、研掃材入射方向と前記管内面とのなす角が45度以下となる領域の少なくとも一部に前記ガイド部材が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の管内面のブラスト装置。
【請求項8】
平面視にて、前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材が管内面に衝突するときの、研掃材入射方向と前記管内面とのなす角が45度以下となる領域の少なくとも一部に前記ガイド部材が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の管内面のブラスト装置。
【請求項9】
回転軸を中心にブラストヘッドを回転させることによって前記ブラストヘッドから放出された研掃材を、ガイド部材のガイド面で反射させて管材の内周面である管内面に衝突させることを特徴とする管内面のブラスト方法。
【請求項10】
平面視で、前記回転軸と前記管材の長手方向である管長手方向との両方に直交する方向をX軸とし、前記管長手方向をY軸とし、前記研掃材が前記ブラストヘッドから放出される際の放出位置と前記回転軸とを結んだ直線と前記X軸とのなす角をθとしたとき、前記ガイド面の形状の少なくとも一部がXY平面内で、dy/dx=-tan(π/4-θ/2)の関係式を満足する形状であることを特徴とする請求項9に記載の管内面のブラスト方法。
【請求項11】
複数の前記ガイド部材を用いることを特徴とする請求項10に記載の管内面のブラスト方法。
【請求項12】
複数の前記ガイド部材のうちの一つ以上が着脱可能であることを特徴とする請求項11に記載の管内面のブラスト方法。
【請求項13】
同一の支持部材に支持された前記ブラストヘッドと前記ガイド部材とを、前記管材の長手方向である管長手方向で一端側から前記管材内に進入させることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の管内面のブラスト方法。
【請求項14】
前記ブラストヘッドが第一の支持部材に支持されており、
前記ガイド部材が前記第一の支持部材とは別の第二の支持部材に支持されており、
前記管材の長手方向である管長手方向で一端側から前記ブラストヘッドを前記管材内に進入させ、
前記管長手方向で他端側から前記ガイド部材を前記管材内に進入させることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の管内面のブラスト方法。
【請求項15】
平面視で、前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材が管内面に衝突するときの、研掃材入射方向と前記管内面とのなす角が45度以下となる領域の少なくとも一部に前記ガイド部材が配置されていることを特徴とする請求項13に記載の管内面のブラスト方法。
【請求項16】
平面視で、前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材が管内面に衝突するときの、研掃材入射方向と前記管内面とのなす角が45度以下となる領域の少なくとも一部に前記ガイド部材が配置されていることを特徴とする請求項14に記載の管内面のブラスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内面のブラスト装置及び管内面のブラスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管内面をコーティングする場合には、内表面の汚れを落とすことや内面の表面粗さを調整することなどを目的として、研掃材を内表面に衝突させるブラスト処理が実施されることが多い。鋼管内面を研掃するブラスト装置は、圧力空気と研掃材を混合させたのち、研掃材を管内壁に対して吹き付ける方式(圧空吹き付け方式)が主流である。例えば、特許文献1に開示された技術は、この圧空吹き付け方式のブラスト装置に対する応用技術である。前記圧空吹き付け方式は、一般には鋼管を回転させながら、鋼管内でブラスト装置を管長手方向に移動させて、管内面に研掃材を吹き付けて管内面を研掃するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-052029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のブラスト装置において、管内面を均質に研掃するためには、管内で進行させるブラスト装置の進行速度に対して、鋼管の回転速度を著しく速くする必要があり、生産性や操業条件に制約が生じる。これらの制約を緩和するために、例えば、回転軸を中心に回転させたブラストヘッドから遠心力によって研掃材を放出して管内壁に衝突させて、管内面を研掃するブラスト装置が考えられる。しかしながら、ブラストヘッドを回転させて研掃材を管内面に衝突させるブラスト装置においては、ブラストヘッドから放出された研掃材が管内面に衝突する際の入射角が小さいと研掃効率が悪くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、研掃効率を高めることができる管内面のブラスト装置及び管内面のブラスト方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る管内面のブラスト装置は、回転軸を中心に回転することによって研掃材を放出するブラストヘッドと、前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材をガイド面で反射させて、管材の内周面である管内面にガイドするガイド部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明に係る管内面のブラスト装置は、上記の発明において、平面視にて、前記回転軸と前記管材の長手方向である管長手方向との両方に直交する方向をX軸とし、前記管長手方向をY軸とし、前記研掃材が前記ブラストヘッドから放出される際の放出位置と前記回転軸とを結んだ直線と前記X軸とのなす角をθとしたとき、前記ガイド面の形状の少なくとも一部がXY平面内で、dy/dx=-tan(π/4-θ/2)の関係式を満足する形状であることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る管内面のブラスト装置は、上記の発明において、複数の前記ガイド部材を備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る管内面のブラスト装置は、上記の発明において、複数の前記ガイド部材のうちの一つ以上が着脱可能であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る管内面のブラスト装置は、上記の発明において、前記ブラストヘッドと前記ガイド部材とが、同一の支持部材に支持されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る管内面のブラスト装置は、上記の発明において、前記ブラストヘッドが第一の支持部材に支持されており、前記ガイド部材が前記第一の支持部材とは別の第二の支持部材に支持されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る管内面のブラスト装置は、上記の発明において、平面視にて、前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材が管内面に衝突するときの、研掃材入射方向と前記管内面とのなす角が45度以下となる領域の少なくとも一部に前記ガイド部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る管内面のブラスト方法は、回転軸を中心にブラストヘッドを回転させることによって前記ブラストヘッドから放出された研掃材を、ガイド部材のガイド面で反射させて管材の内周面である管内面に衝突させることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係る管内面のブラスト方法は、上記の発明において、平面視で、前記回転軸と前記管材の長手方向である管長手方向との両方に直交する方向をX軸とし、前記管長手方向をY軸とし、前記研掃材が前記ブラストヘッドから放出される際の放出位置と前記回転軸とを結んだ直線と前記X軸とのなす角をθとしたとき、前記ガイド面の形状の少なくとも一部がXY平面内で、dy/dx=-tan(π/4-θ/2)の関係式を満足する形状であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る管内面のブラスト方法は、上記の発明において、複数の前記ガイド部材を用いることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る管内面のブラスト方法は、上記の発明において、複数の前記ガイド部材のうちの一つ以上が着脱可能であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る管内面のブラスト方法は、上記の発明において、同一の支持部材に支持された前記ブラストヘッドと前記ガイド部材とを、前記管材の長手方向である管長手方向で一端側から前記管材内に進入させることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る管内面のブラスト方法は、上記の発明において、前記ブラストヘッドが第一の支持部材に支持されており、前記ガイド部材が前記第一の支持部材とは別の第二の支持部材に支持されており、前記管材の長手方向である管長手方向で一端側から前記ブラストヘッドを前記管材内に進入させ、前記管長手方向で他端側から前記ガイド部材を前記管材内に進入させることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る管内面のブラスト方法は、上記の発明において、平面視で、前記ブラストヘッドから放出された前記研掃材が管内面に衝突するときの、研掃材入射方向と前記管内面とのなす角が45度以下となる領域の少なくとも一部に前記ガイド部材が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る管内面のブラスト装置及び管内面のブラスト方法は、研掃効率を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態1に係るブラスト装置の概略構成を示した側面図である。
図2図2は、実施形態1に係るブラスト装置の概略構成を示した上面図である。
図3図3は、ガイドを設けていない場合においてブラストヘッドから放出された研掃材の噴射方向について示した図である。
図4図4は、実施形態1に係るブラスト装置におけるガイド面の形状の一例についての説明図である。
図5図5は、実施形態1に係るブラスト装置でのガイド部材の設け方の他例を示した図である。
図6図6は、実施形態2に係るブラスト装置の概略構成を示した上面図である。
図7図7は、実施形態2に係るブラスト装置における2つのガイド部材の配置についての一例を示した説明図である。
図8図8は、実施形態3に係るブラスト装置の概略構成を示した上面図である。
図9図9は、実施形態4に係るブラスト装置の概略構成を示した上面図である。
図10図10は、実施形態5に係るブラスト装置の概略構成を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下に、本発明に係るブラスト装置及びブラスト方法の実施形態1について説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、実施形態1に係るブラスト装置の概略構成を示した側面図である。図2は、実施形態1に係るブラスト装置の概略構成を示した上面図である。
【0024】
実施形態1に係るブラスト装置1は、台車11、ブラストヘッド12、上ブーム13、下ブーム14、ベルトコンベア15、及び、ガイド部材16などを備えている。台車11は、複数の車輪111を有しており、床2上を走行可能に構成されている。上ブーム13と下ブーム14とは、長尺な板状部材であって、長手方向の基端側が台車11の側面に片持ち支持されている。上ブーム13と下ブーム14とは、台車11の高さ方向で所定間隔をあけて対向して配置されており、互いの長手方向の先端側に、ブラストヘッド12が回転軸121を介して回転可能に支持されている。なお、本実施形態においては、上ブーム13及び下ブーム14がブラストヘッド12を支持する第一の支持部材を構成している。ブラストヘッド12は、ブラスト装置1に設けられる不図示のモータなどの駆動源によって回転駆動され、図2に示すように、上面視で反時計回り方向(図2中の矢印C方向)に回転可能となっている。
【0025】
ベルトコンベア15は、搬送ベルト151と、搬送ベルト151を回転可能に張架する複数の搬送ロール152とを備えている。ベルトコンベア15は、上ブーム13の上方に配置されており、不図示の支持部材によって台車11と上ブーム13との少なくとも一方に支持されている。搬送ベルト151は、上ブーム13の長手方向と同方向に長尺であって、上側の外周面に複数の研掃材17を載せて、搬送ベルト151の長手方向で先端側(図中矢印B方向)に搬送する。複数の搬送ロール152のうちの少なくとも1つの搬送ロールは、不図示のモータなどの駆動源によって回転駆動される駆動ロールであり、残りの搬送ロールは駆動ロールの回転駆動に伴って回転する搬送ベルト151の回転に連れ回る従動ロールである。搬送ベルト151の長手方向の先端位置は、上ブーム13の先端位置よりも台車11側に位置している。上ブーム13の先端側には、上ブーム13の厚み方向で貫通し、ブラストヘッド12に研掃材17を投入するための投入口131が設けられている。搬送ベルト151によって長手方向の先端位置まで搬送された研掃材17は、搬送ベルト151から投入口131を通ってブラストヘッド12に投入される。ブラストヘッド12に投入された研掃材17は、ブラストヘッド12の回転に伴って発生する遠心力によって放出される。
【0026】
ガイド部材16は、ブラストヘッド12から放出された複数の研掃材17の一部をガイド面161で反射して、管材である鋼管3の管内面31に向かって飛翔するようにガイドするガイド部材である。ガイド部材16は、支持部材162,163によって上ブーム13及び下ブーム14に支持されている。
【0027】
実施形態1に係るブラスト装置1では、台車11を鋼管3の長手方向である管長手方向に前進させて、上ブーム13及び下ブーム14の先端部分に設けられたブラストヘッド12を、管長手方向の一端側から鋼管3内に進入させる。そして、台車11を管長手方向と同方向の矢印A方向に前後進させることにより、鋼管3内でブラストヘッド12を管長手方向に前後進させながら、ブラストヘッド12から放出された複数の研掃材17を管内面31に衝突させてブラスト(研掃)する。また、本実施形態においては、鋼管3が複数のターニングロール4に載置されており、ブラスト装置1によって管内面31をブラストする際に、複数のターニングロール4によって鋼管3の軸線を中心に図1中の矢印D方向へ鋼管3を回転させる。これにより、実施形態1に係るブラスト装置1によって、管内面31の全体を均質にブラストすることが可能となっている。
【0028】
なお、実施形態1に係るブラスト装置1においては、ブラストヘッド12から放出されて管内面31をブラストした後の使用済みの研掃材17を、回収したり再利用したりする機構を設けても良い。
【0029】
図3は、ガイド部材16を設けていない場合においてブラストヘッド12から放出された研掃材17の噴射方向について示した図である。
【0030】
実施形態1に係るブラスト装置1では、ブラストヘッド12の回転の遠心力によって研掃材17を管内面31に吹き付けてブラストする。ここで、管内面31に対する研掃材17の入射角Φは、図3に示すような平面視で、ブラストヘッド12から放出された研掃材17が管内面31に衝突するときの、研掃材入射方向と管内面31とのなす角である。この際、図3に示すように、管長手方向に噴射される研掃材17は管内面31に対する入射角Φが小さいため、研掃材17の運動エネルギーが管内面31に効率的に伝わらず、研掃効率が悪い。一方、管内面31に対する入射角Φが大きい場合、例えば、入射角Φが45度より大きい場合には、入射角Φが小さい場合、例えば入射角Φが45度以下の場合に比べて、研掃材17の運動エネルギーが管内面31に効率的に伝わり、研掃効率が良好である。実施形態1に係るブラスト装置1において、入射角Φは大きいほど好ましい。例えば、入射角Φは50度以上であることが好ましく、70度以上であることがさらに好ましく、最大値である90度が最適である。
【0031】
実施形態1に係るブラスト装置1では、ブラストヘッド12から噴射された研掃材17が、ガイド部材16のガイド面161に衝突した後に管内面31に対して垂直に衝突するように、ガイド面161に対する研掃材17の衝突角度が設定された形状をガイド部材16の一部に有する。
【0032】
そして、実施形態1に係るブラスト装置1においては、図2に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から管長手方向に噴射される研掃材17を、ガイド部材16のガイド面161に当てて反射させ、管内面31に向けて飛翔させる。これにより、ガイド部材16のガイド面161がない場合に研掃効率の悪い噴射角度で、ブラストヘッド12から管長手方向に噴射される研掃材17を、効率良く管内面31に衝突させることができる。その結果、管内面31の全体的な研掃効率を高めることができる。ガイド部材16のガイド面161の形状は、ガイド面161で反射して管内面31に向けて飛翔する研掃材17の入射角Φが、好ましくは50度以上に、より好ましくは70度以上に、最も好ましくは90度となるように設計される。
【0033】
図4は、実施形態1に係るブラスト装置1におけるガイド面161の形状の一例についての説明図である。なお、図4に示すように平面視にて、ブラストヘッド12の回転軸121を原点とし、ブラストヘッド12の回転軸121と管長手方向との両方に直交する方向をX軸とし、管長手方向をY軸としたXY平面の座標系が形成されている。また、前記XY平面において、研掃材17がブラストヘッド12から放出される際の放出位置P1と回転軸121とを結んだ直線L1と、X軸とのなす角である噴射角度をθとする。そして、実施形態1に係るブラスト装置1では、ガイド部材16におけるガイド面161の形状の少なくとも一部がXY平面内において、dy/dx=-tan(π/4-θ/2)の関係式を満足する形状としている。すなわち、実施形態1に係るブラスト装置1では、前記XY平面において、ブラストヘッド12の放出位置P1から放出された研掃材171が衝突する位置におけるガイド面161(曲面)の傾きが、上記関係式を満たすようにガイド部材16の形状を設計している。ガイド面161(曲面)のうち、dy/dx=-tan(π/4-θ/2)の関係式を満足する部位に研掃材17が衝突すると、研掃材17は管内面31に対してほぼ直角に飛翔して管内面31に衝突する。その結果、研掃効率が良好となる。
【0034】
本発明において、ガイド部材16におけるガイド面161の形状の少なくとも一部がXY平面内において、dy/dx=-tan(π/4-θ/2)の関係式を満足する形状である、とは、以下の(1)~(3)のような場合を含むものとする。
(1)ガイド面161の全体が上記関係式を満足する曲線である場合。
(2)ガイド面161の少なくとも一部が上記関係式を満足する曲線であり、他の部分では満足していない場合。
(3)ガイド面161の少なくとも一部が平面視で複数の直線から構成された折れ線形状をなしており、その折れ線形状の近似曲線の少なくとも一部が上記関係式を満足する場合。
【0035】
図5は、実施形態1に係るブラスト装置1でのガイド部材16の設け方の他例を示した図である。
【0036】
実施形態1に係るブラスト装置1においては、ガイド部材16は、ブラストヘッド12を支持する第一の支持部材を構成する上ブーム13及び下ブーム14にではなく、図5に示すように、これらとは別の第二の支持部材であるブーム5に支持されていても良い。ブーム5は、長尺な板状部材であって、長手方向の基端側が、例えば、管長手方向に前進後退可能な不図示の台車の側面に片持ち支持されている。ブーム5の長手方向の先端側には、ガイド部材16が設けられている。ガイド部材16は、管長手方向でブラストヘッド12を鋼管3内に進入させる側(管長手方向で一端側)とは反対側(管長手方向で他端側)から、管長手方向と同方向である図5中の矢印E方向にブーム5を進めて、鋼管3内に進入させる。そして、ブラストヘッド12とガイド部材16とが適切な位置関係となるように、鋼管3内にガイド部材16を配置すれば良い。
【0037】
(実施形態2)
以下、本発明に係るブラスト装置及びブラスト方法の実施形態2について説明する。なお、本実施形態において、実施形態1に係るブラスト装置1と同様の説明は適宜省略する。
【0038】
図6は、実施形態2に係るブラスト装置1の概略構成を示した上面図である。図6に示すように、実施形態2に係るブラスト装置1においては、ブラストヘッド12から放出された研掃材17を反射して管内面31に衝突させるためのガイドを行う2つのガイド部材16A,16Bを備えている。なお、2つのガイド部材16A,16Bのうちの一つ以上は、ブラスト装置1から着脱可能に構成されていてもよい。また、以下の説明において、2つのガイド部材16A,16Bを特に区別しない場合には、単にガイド部材16とも記す。
【0039】
ガイド部材16Aは、図6に示すように平面視にて、ブラストヘッド12の前進方向に対して左側に向けてブラストヘッド12から噴射される研掃材17を、同じく左側の管内面31Aに衝突させるように、当該研掃材17をガイド面161Aによって反射させる。ガイド部材16Bは、図6に示すように平面視にて、ブラストヘッド12の前進方向に対して右側に向けてブラストヘッド12から噴射される研掃材17を、同じく右側の管内面31Bに衝突させるように、当該研掃材17をガイド面161Bによって反射させる。
【0040】
これにより、前記前進方向に対して左右に向けて噴射される研掃材17を、一つのガイド部材16に反射させる場合よりも、少なくとも一部の研掃材17については管内面31A,31Bに衝突するまでの距離を短くすることが可能となる。よって、研掃材17の勢いが弱まることを抑えつつ、研掃材17を管内面31A,31Bに衝突させることができるため、更なる研掃効率の向上を図ることができる。
【0041】
図7は、実施形態2に係るブラスト装置1における2つのガイド部材16A,16Bの配置についての一例を示した説明図である。
【0042】
2つのガイド部材16A,16Bは、図7に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から放出された研掃材17が、そのまま管内面31に向かって飛翔して衝突するときの入射角Φが45度以下となる領域の少なくとも一部に配置する。
【0043】
ここで、図7に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から管内面31Bに向けて放出される研掃材17の入射角Φが45度となる放出位置を放出位置P2とする。また、図7に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から管内面31Aに向けて放出される研掃材17の入射角Φが45度となる放出位置を放出位置P3とする。そして、ブラストヘッド12の回転方向において、放出位置P2から放出位置P3までの範囲における放射位置が、研掃効率の悪い噴射角度θ(入射角Φ)の範囲となる。
【0044】
ガイド部材16A,16Bを入射角Φが45度以下となる領域の少なくとも一部に配置することにより、研掃効率の悪い噴射角度で放出された研掃材17を、ガイド部材16A,16Bで反射して管内面31A,31Bに衝突させて研掃効率を高めることができる。
【0045】
(実施形態3)
以下、本発明に係るブラスト装置及びブラスト方法の実施形態3について説明する。なお、本実施形態において、実施形態1に係るブラスト装置1と同様の説明は適宜省略する。
【0046】
図8は、実施形態3に係るブラスト装置1の概略構成を示した上面図である。
【0047】
図8に示すように、実施形態3に係るブラスト装置1は、平面視にて、ブラストヘッド12の回転軸121を中心に点対称となるように配置された2つのガイド部材16A,16Bを備えている。なお、2つのガイド部材16A,16Bのうちの一つ以上は、ブラスト装置1から着脱可能に構成されていてもよい。また、以下の説明において、2つのガイド部材16A,16Bを特に区別しない場合には、単にガイド部材16とも記す。
【0048】
ガイド部材16Aは、図8に示すように平面視にて、管長手方向でブラストヘッド12の回転軸121よりも右側から放出されて、管内面31A,31Bのそれぞれに対する入射角Φが45度以下となる領域の少なくとも一部に配置されている。ガイド部材16Bは、図8に示すように平面視にて、管長手方向でブラストヘッド12の回転軸121よりも左側から放出されて、管内面31A,31Bのそれぞれに対する入射角Φが45度以下となる領域の少なくとも一部に配置されている。
【0049】
ここで、図8に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から管内面31Bに向けて放出される研掃材17の入射角Φが45度となる放出位置を放出位置P2とする。また、図8に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から管内面31Aに向けて放出される研掃材17の入射角Φが45度となる放出位置を放出位置P3とする。そして、ブラストヘッド12の回転方向において、放出位置P2から放出位置P3までの範囲における放射位置が、研掃効率の悪い噴射角度θ(入射角Φ)の範囲となる。すなわち、この範囲は、管長手方向で回転軸121よりも右側に存在する、研掃効率の悪い噴射角度の範囲である。
【0050】
また、図8に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から管内面31Aに向けて放出される研掃材17の入射角Φが45度となる放出位置を放出位置P4とする。また、図8に示すように平面視にて、ブラストヘッド12から管内面31Bに向けて放出される研掃材17の入射角Φが45度となる放出位置を放出位置P5とする。そして、ブラストヘッド12の回転方向において、放出位置P4から放出位置P5までの範囲における放射位置が、研掃効率の悪い噴射角度θ(入射角Φ)の範囲となる。すなわち、この範囲は、管長手方向で回転軸121よりも左側に存在する、研掃効率の悪い噴射角度の範囲である。
【0051】
実施形態3に係るブラスト装置1では、管長手方向で回転軸121よりも右側と左側とにそれぞれ存在する、研掃効率の悪い噴射角度の範囲から放出される研掃材17を、ガイド部材16A,16Bで反射して管内面31A,31Bに衝突させることができる。これにより、実施形態3に係るブラスト装置1では、研掃効率の悪い噴射角度で放出されたより多くの研掃材17を、ガイド部材16A,16Bで反射して管内面31A,31Bに衝突させて研掃効率を高めることができる。
【0052】
(実施形態4)
以下、本発明に係るブラスト装置及びブラスト方法の実施形態4について説明する。なお、本実施形態において、実施形態1に係るブラスト装置1と同様の説明は適宜省略する。
【0053】
図9は、実施形態4に係るブラスト装置1の概略構成を示した上面図である。
【0054】
図9に示すように、実施形態4に係るブラスト装置1においては、ブラストヘッド12から放出された研掃材17を反射して管内面31に衝突させるためのガイドを行う複数のガイド部材16A~16Fを備えている。なお、複数のガイド部材16A~16Fのうちの一つ以上は、ブラスト装置1から着脱可能に構成されていてもよい。また、以下の説明において、複数のガイド部材16A~16Fを特に区別しない場合には、単にガイド部材16とも記す。
【0055】
実施形態4に係るブラスト装置1では、研掃材17を管内面31Aに衝突させるためのガイド部材16を、ガイド部材16A,16Bの二つに分割して設けている。ガイド部材16A,16Bは、図9に示すように平面視にて、ブラストヘッド12の前進方向に対して左側に向けてブラストヘッド12から噴射される研掃材17を、同じく左側の管内面31Aに衝突させるように反射させる。なお、ガイド部材16A,16Bは、どちらか一方のガイド部材16に衝突して反射した研掃材17が、他方のガイド部材16に接触することなく管内面31Aに衝突するような形状としている。
【0056】
また、実施形態4に係るブラスト装置1では、研掃材17を管内面31Bに衝突させるためのガイド部材16を、ガイド部材16C,16D,16E,16Fの四つに分割して設けている。ガイド部材16C,16D,16E,16Fは、図9に示すように平面視にて、ブラストヘッド12の前進方向に対して右側に向けてブラストヘッド12から噴射される研掃材17を、同じく右側の管内面31Bに衝突させるように反射させる。なお、ガイド部材16C,16D,16E,16Fは、いずれか一つのガイド部材16に衝突して反射した研掃材17が、他のガイド部材16に接触することなく管内面31Bに衝突するような形状としている。
【0057】
実施形態4に係るブラスト装置1では、同じ側の管内面31に向けて放出される研掃材17を反射するガイド部材16を複数に分割して設ける。これによって、それぞれのガイド部材16を小型化できるので、より小さい内径の鋼管3内にもガイド部材16を配置して研掃効率を高めることができる。
【0058】
(実施形態5)
以下、本発明に係るブラスト装置及びブラスト方法の実施形態5について説明する。なお、本実施形態において、実施形態4に係るブラスト装置1と同様の説明は適宜省略する。
【0059】
図10は、実施形態5に係るブラスト装置1の概略構成を示した上面図である。
【0060】
実施形態5に係るブラスト装置1には、図10に示すように、実施形態4に係るブラスト装置1と同様の複数のガイド部材16A~16Fと、平面視にて、これらと回転軸121を中心に点対称で配置された複数のガイド部材16G~16Lとが設けられている。なお、複数のガイド部材16A~16Lのうちの一つ以上は、ブラスト装置1から着脱可能に構成されていてもよい。また、以下の説明において、複数のガイド部材16A~16Lを特に区別しない場合には、単にガイド部材16とも記す。
【0061】
ガイド部材16G,16Hは、図10に示すように平面視にて、ブラストヘッド12の前進方向に対して右後ろ側に向けてブラストヘッド12から噴射される研掃材17を、右側の管内面31Bに衝突させるように反射させる。また、ガイド部材16G,16Hは、どちらか一方のガイド部材16に衝突して反射した研掃材17が、他方のガイド部材16に接触することなく管内面31Bに衝突するような形状としている。
【0062】
ガイド部材16I,16J,16K,16Lは、図10に示すように平面視にて、ブラストヘッド12の前進方向に対して左後ろ側に向けてブラストヘッド12から噴射される研掃材17を、左側の管内面31Bに衝突させるように反射させる。また、ガイド部材16I,16J,16K,16Lは、いずれか一つのガイド部材16に衝突して反射した研掃材17が、他のガイド部材16に接触することなく管内面31Aに衝突するような形状としている。
【0063】
なお、実施形態5に係るブラスト装置1において、複数のガイド部材16A~16Fについては、実施形態4に係るブラスト装置1と同様のため説明は省略する。
【0064】
実施形態5に係るブラスト装置1においては、実施形態4に係るブラスト装置1に対して、点対称となる位置にもガイド部材16を複数に分割して設けることにより、より小さい内径の鋼管3内にも多くのガイド部材16を配置して研掃効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ブラスト装置
2 床
3 鋼管
4 ターニングロール
5 ブーム
11 台車
12 ブラストヘッド
13 上ブーム
14 下ブーム
15 ベルトコンベア
16 16A,16B,16C,16D,16E,16F,16G,16H,16I,16J,16K,16L ガイド部材
17 研掃材
31,31A,31B 管内面
111 車輪
121 回転軸
131 投入口
151 搬送ベルト
152 搬送ロール
161,161A,161B ガイド面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10