(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047557
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】可変色粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240329BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240329BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240329BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/06
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145461
(22)【出願日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2022152578
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸
(72)【発明者】
【氏名】中山 純一
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 真由
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AH04A
4F100AK01A
4F100AK25
4F100AK45
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA06
4F100CA13
4F100CA13A
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ42
4F100GB41
4F100JL09
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JN28
4F100JN28A
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CD02
4J004DB02
4J004FA01
4J004FA08
4J040DF021
4J040HD18
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA35
4J040LA10
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】被着体への貼合わせ後に少なくとも一部が変色可能であるとともに、良好な透明安定性を実現するのに適した可変色粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着シートXは、粘着剤層21を備える。粘着シートXは、粘着剤層21を支持する基材10を更に備える基材付きの可変色粘着シート、または、基材レスの可変色粘着シートである。基材10または粘着剤層21は、可変色層12を含む。可変色層12は、ポリマー成分と、酸との反応により発色する発色性化合物と、光酸発生剤とを含む。光酸発生剤は、トリフェニルスルホニウムにおけるS-C結合よりも短いS-C結合を少なくとも一つ有する修飾トリフェニルスルホニウム化合物である。修飾トリフェニルスルホニウム化合物は、少なくとも一つの修飾フェニル基を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を備える可変色粘着シートであって、
前記可変色粘着シートが、前記粘着剤層を支持する基材を更に備える基材付きの可変色粘着シート、または、基材レスの可変色粘着シートであり、
前記基材または前記粘着剤層が可変色層を含み、
前記可変色層が、ポリマー成分と、酸との反応により発色する発色性化合物と、光酸発生剤とを含み、
前記光酸発生剤が、少なくとも一つの修飾フェニル基を有する修飾トリフェニルスルホニウム化合物であって、トリフェニルスルホニウムにおけるS-C結合よりも短いS-C結合を少なくとも一つ有する修飾トリフェニルスルホニウム化合物である、可変色粘着シート。
【請求項2】
前記修飾フェニル基が、少なくとも一つの電子供与性置換基を有するフェニル基である、請求項1に記載の可変色粘着シート。
【請求項3】
前記電子供与性置換基が前記修飾フェニル基におけるパラ位に位置する、請求項2に記載の可変色粘着シート。
【請求項4】
前記修飾フェニル基が、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、およびアルキルシリル基からなる群から選択される少なくとも一つを、前記少なくとも一つの電子供与性置換基として有する、請求項2に記載の可変色粘着シート。
【請求項5】
前記修飾トリフェニルスルホニウム化合物が2以上の前記修飾フェニル基を有する、請求項1から4のいずれか一つに記載の可変色粘着シート。
【請求項6】
前記基材が基材フィルムを更に備え、当該基材フィルムと前記可変色層とを含む多層構造を有する、請求項1から4のいずれか一つに記載の可変色粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変色粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELパネルなどのディスプレイパネルは、画素パネルおよびカバー部材などの要素を含む積層構造を有する。そのようなディスプレイパネルの製造過程では、積層構造に含まれる要素どうしの貼り合わせのために、例えば、透明な粘着シートが用いられる。そのような透明粘着シートとしては、基材レスの粘着シート、および、基材を有する両面粘着シートが挙げられる。
【0003】
また、ディスプレイパネルにおける画素パネルの光出射側(画像表示側)に配置される透明粘着シートとして、同シートの所定箇所に着色部分が予め設けられている粘着シートが知られている。着色部分は、例えば、意匠性、遮蔽性、または反射防止性の観点から設けられる。着色部分は、例えば、カーボンブラック顔料を含む。しかし、ディスプレイパネルの製造過程において、着色部分が予め設けられている粘着シートを用いる場合、被着体に対する当該粘着シートの貼り合わせの後に、被着体と粘着シートの着色部分との間における異物および気泡の有無を適切に検査できない。
【0004】
そこで、被着体に対する貼り合わせの後に着色させることが可能な透明粘着シート(可変色粘着シート)が提案されている。可変色粘着シートは、例えば、事後的に着色可能な粘着剤層を有する。そのような可変色粘着シートは、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の可変色粘着シートの粘着剤層は、ベースポリマーと、トリフェニルスルホニウム(TPS)化合物と、酸との反応により発色する色素とを含む。TPS化合物は、TPSとアニオンとの塩であり、紫外領域の光の照射(紫外線照射)を受けて酸を発生する光酸発生剤である。TPS化合物では、硫黄原子(S)と結合しているフェニル基の炭素原子(C)とSとの間の結合(S-C結合)が紫外線照射によって切断されて、ラジカル(硫黄ラジカル)が発生する。このラジカルが、酸発生反応を引き起こす。特許文献1の可変色粘着シートでは、粘着剤層における紫外線照射を受けた部分にて、光酸発生剤(TPS化合物)から酸が発生し、当該酸との反応によって色素が発色する。これにより、粘着剤層に着色部分が形成される。
【0007】
しかしながら、特許文献1の可変色粘着シートは、自然光による着色が生じにくい性質(透明安定性)が十分ではない。このような可変色粘着シートでは、ディスプレイパネルに組み込まれる前、および、ディスプレイパネルに組み込まれた後に、自然光による意図的でない変色が生じやすい。
【0008】
本発明は、被着体への貼合わせ後に少なくとも一部が変色可能であるとともに、良好な透明安定性を実現するのに適した可変色粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、粘着剤層を備える可変色粘着シートであって、前記可変色粘着シートが、前記粘着剤層を支持する基材を更に備える基材付きの可変色粘着シート、または、基材レスの可変色粘着シートであり、前記基材または前記粘着剤層が可変色層を含み、前記可変色層が、ポリマー成分と、酸との反応により発色する発色性化合物と、光酸発生剤とを含み、前記光酸発生剤が、少なくとも一つの修飾フェニル基を有する修飾トリフェニルスルホニウム化合物であって、トリフェニルスルホニウムにおけるS-C結合よりも短いS-C結合を少なくとも一つ有する修飾トリフェニルスルホニウム化合物である、可変色粘着シートを含む。
【0010】
本発明[2]は、前記修飾フェニル基が、少なくとも一つの電子供与性置換基を有するフェニル基である、上記[1]に記載の可変色粘着シートを含む。
【0011】
本発明[3]は、前記電子供与性置換基が前記修飾フェニル基におけるパラ位に位置する、上記[2]に記載の可変色粘着シートを含む。
【0012】
本発明[4]は、前記修飾フェニル基が、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、およびアルキルシリル基からなる群から選択される少なくとも一つを、前記少なくとも一つの電子供与性置換基として有する、上記[2]または[3]に記載の可変色粘着シートを含む。
【0013】
本発明[5]は、前記修飾トリフェニルスルホニウム化合物が2以上の前記修飾フェニル基を有する、上記[1]から[4]のいずれか一つに記載の可変色粘着シートを含む。
【0014】
本発明[6]は、前記基材が基材フィルムを更に備え、当該基材フィルムと前記可変色層とを含む多層構造を有する、上記[1]から[5]のいずれか一つに記載の可変色粘着シートを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の可変色粘着シートは、上記のように、酸との反応により発色する発色性化合物と、光酸発生剤としての修飾トリフェニルスルホニウム化合物とを含む可変色層を有する。そのため、可変色粘着シートを被着体に貼り合わせた後、同シートにおける変色予定部分(同シートの平面視における少なくとも一部)に対する光照射によって、当該部分を局所的に変色させることができる。このような可変色粘着シートでは、貼り合わせ後であって変色部分形成前に、同シートと被着体との間における異物および気泡の有無を検査できる。
【0016】
また、可変色粘着シートの可変色層は、光酸発生剤として上記の修飾トリフェニルスルホニウム化合物を含む。この修飾トリフェニルスルホニウム化合物は、トリフェニルスルホニウム(TPS:置換基を有しない3つのフェニル基がSと結合している)におけるS-C結合よりも短いS-C結合を少なくとも一つ有する修飾トリフェニルスルホニウムの塩である。このような修飾トリフェニルスルホニウム化合物は、TPS化合物よりも、自然光による分解(酸の発生)を生じにくい。このような修飾トリフェニルスルホニウム化合物を光酸発生剤として可変色層に含む可変色粘着シートは、良好な透明安定性を実現するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の可変色粘着シートの一実施形態の断面模式図である。
【
図2】本発明の可変色粘着シートの使用方法の一例を表す。
図2Aは、可変色粘着シートおよび部材(被着体)を用意する工程を表す。
図2Bは、可変色粘着シートを介して部材どうしを接合する工程を表す。
図2Cは、可変色粘着シートの基材に変色部分を形成する工程を表す。
【
図3】本発明の可変色粘着シートの一の変形例の断面模式図である。本変形例の可変色粘着シートは、基材付き片面粘着シートである。本変形例において、可変色層は、基材における粘着剤層とは反対側に配置されている。
【
図4】本発明の可変色粘着シートの他の変形例の断面模式図である。本変形例の可変色粘着シートは、基材付き片面粘着シートである。本変形例において、可変色層は、基材における粘着剤層側に配置されている。
【
図5】本発明の可変色粘着シートの他の変形例の断面模式図である。本変形例の可変色粘着シートは、可変色基材付き両面粘着シートである。
【
図6】本発明の可変色粘着シートの他の変形例の断面模式図である。本変形例の可変色粘着シートは、基材レスの粘着シートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の可変色粘着シートの一実施形態としての粘着シートXは、
図1に示すように、基材10と、粘着剤層21,22とを備える。粘着シートXは、具体的には、粘着剤層21(第1粘着剤層)と、基材10と、粘着剤層22(第2粘着剤層)とを、厚さ方向Hにこの順で備える。すなわち、粘着シートXは、本実施形態では、粘着剤層21,22を支持する基材10を備える基材付きの可変色粘着シートである。また、粘着シートXは、厚さ方向Hと直交する方向(面方向)に広がる。
【0019】
基材10は、第1面10aと、当該第1面10aとは反対側の第2面10bとを有する。粘着剤層21は、基材10の第1面10a側に配置されている。本実施形態では、粘着剤層21は第1面10a上に配置されている。すなわち、粘着剤層21は第1面10aに接する。粘着剤層21は、基材10とは反対側に粘着面21aを有する。粘着剤層22は、基材10の第2面10b側に配置されている。本実施形態では、粘着剤層22は第2面10b上に配置されている。すなわち、粘着剤層22は第2面10bに接する。粘着剤層22は、基材10とは反対側に粘着面22aを有する。また、基材10は、本実施形態では、基材フィルム11と可変色層12とを含む多層構造を有する。基材10は、好ましくは、基材フィルム11と、当該基材フィルム11上に配置されている可変色層12とを備える。このような基材10では、基材フィルム11と可変色層12とは接している。
図1は、可変色層12が粘着剤層22側に配置されている基材10を例示的に示す。この場合、粘着シートXは、粘着剤層21と、基材フィルム11と、可変色層12と、粘着剤層22とを、厚さ方向Hに順に備える。このような粘着シートXは、例えば、ディスプレイパネル(画素パネルおよびカバー部材などの要素を含む積層構造を有する)における画素パネルの画像表示側に配置される光学的に透明な粘着シート(光学粘着シート)として、用いられる。すなわち、粘着シートXは、光学用途の可変色粘着シートである。ディスプレイパネルとしては、例えば、有機ELパネルおよび液晶パネルが挙げられる。
【0020】
基材フィルム11は、支持機能を有するフィルムである。基材フィルム11は、例えば、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。基材フィルム11の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。基材フィルム11の材料としては、透明性および強度の観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂が用いられる。ポリエステル樹脂が用いられる場合、より好ましくはPETが用いられる。
【0021】
基材フィルム11は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤、ベンゾフェノン紫外線吸収剤、サリチル酸エステル紫外線吸収剤、シアノアクリレート紫外線吸収剤、およびニッケル錯塩紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。紫外線吸収剤が配合された樹脂フィルムの市販品としては、例えば、コニカミノルタ社製の「KC4UYW」および「KC2UA」が挙げられる(いずれもトリアセチルセルロースフィルムである)。また、基材フィルム11は、紫外線吸収剤が配合されていなくても紫外線吸収性を有する材料から形成されたフィルムであってもよい。そのような紫外線吸収性フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルムが挙げられる。ポリイミドフィルムの市販品としては、例えば、東レデュポン社製の「カプトン200H」が挙げられる。
【0022】
基材フィルム11の厚さは、粘着シートXの取り扱い性を確保する観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上である。基材フィルム11の厚さは、粘着シートXの薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
【0023】
可変色層12は、ポリマー成分と、酸との反応により発色する発色性化合物と、光酸発生剤とを含む。可変色層12は、例えば、ポリマー成分と、発色性化合物と、光酸発生剤とを含有する可変色樹脂組成物から形成された樹脂硬化層である。
【0024】
ポリマー成分は、可変色層12の成形材料である。ポリマー成分としては、例えば、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびフェノール樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、およびセルロース樹脂が挙げられる。ポリマー成分は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0025】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、およびスチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体が挙げられる。アクリル樹脂としては、透明性および耐候性の観点から、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)が好ましい。
【0026】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのホモポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、飽和共重合ポリエステル樹脂も挙げられる。飽和共重合ポリエステル樹脂とは、ホモポリエステル樹脂(PET、PBT、PENなど)を形成するためのジカルボン酸およびジオールと、これらとは異なるジカルボン酸(異種ジカルボン酸)および/またはジオール(異種ジオール)とを含むモノマー成分の重縮合反応によって生じるポリエステル樹脂のうち、炭素-炭素不飽和結合を実質的に含まない樹脂である。異種ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸が挙げられる。異種ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、およびシクロヘキサングリコールが挙げられる。
【0027】
発色性化合物としては、例えば、ロイコ色素、トリアリールメタン色素、ジフェニルメタン色素、フルオラン色素、スピロピラン色素、およびローダミン色素が挙げられる。発色性化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0028】
ロイコ色素としては、例えば、2'-アニリノ-6'-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3'-メチルスピロ[フタリド-3,9'-[9H]キサンテン]、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、および、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリドが挙げられる。
【0029】
トリアリールメタン色素としては、例えば、p,p',p”-トリス-ジメチルアミノトリフェニルメタンが挙げられる。ジフェニルメタン色素としては、例えば、4,4-ビス-ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテルが挙げられる。フルオラン色素としては、例えば、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオランが挙げられる。スピロピラン色素としては、例えば、3-メチルスピロジナフトピランが挙げられる。ローダミン色素としては、例えば、ローダミン-B-アニリノラクタムが挙げられる。
【0030】
可変色層12において良好な着色性を確保する観点から、発色性化合物としては、好ましくはロイコ色素、より好ましくは2'-アニリノ-6'-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3'-メチルスピロ[フタリド-3,9'-[9H]キサンテン]が用いられる。
【0031】
ポリマー成分100質量部に対する発色性化合物の配合量は、可変色層12において良好な着色性を確保する観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。同配合量は、ポリマー成分に対する発色性化合物の良好な溶解性・分散性を確保する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0032】
光酸発生剤は、所定の波長または波長範囲の光が照射されることによって励起されて、分解して酸発生反応を引き起こし、酸を発生する。可変色層12は、そのような光酸発生剤として、少なくとも一つの修飾フェニル基を有する修飾トリフェニルスルホニウム化合物(修飾TPS化合物)を含む。修飾フェニル基は、少なくとも一つの置換基を有するフェニル基である。修飾TPS化合物は、修飾トリフェニルスルホニウム(修飾TPS)とアニオンとの塩である。この化合物の修飾TPS(修飾TPS化合物のカチオン部分)は、トリフェニルスルホニウム(TPS:置換基を有しない三つのフェニル基がSと結合している)におけるS-C結合(第1のS-C結合)よりも短いS-C結合(第2のS-C結合)を、少なくとも一つ有する。第1のS-C結合は、具体的には、TPSにおいて、硫黄原子と結合している非修飾(無置換)フェニル基の炭素と、硫黄原子との結合である。第2のS-C結合は、具体的には、修飾TPSにおいて、硫黄原子と結合している修飾(置換)フェニル基の炭素と、硫黄原子との結合である。S-C結合が短いほど、当該S-C結合の結合力は強い。上記修飾TPSのS-C結合(第2のS-C結合)の長さは、1.804Å未満であり、好ましくは1.800Å以下、より好ましくは1.790Å以下である。
【0033】
このような修飾TPS化合物は、TPS化合物よりも、自然光による分解を生じにくい。修飾フェニル基と硫黄原子との間のS-C結合を短くする観点から、当該修飾フェニル基が有する置換基は、好ましくは、電子供与性置換基である。すなわち、修飾フェニル基は、好ましくは、電子供与性置換基を有するフェニル基である。また、修飾TPS化合物における修飾フェニル基の数は、1、2、または3である。自然光による修飾TPS化合物の分解を抑制する観点から、修飾TPS化合物は、好ましくは、2以上の修飾フェニル基を有する。置換基を一つ有する修飾フェニル基を三つ有する修飾TPSを、化学式(1)として下記に示す。
【0034】
【0035】
化学式(1)において、R1,R2,R3は、それぞれ、好ましくは電子供与性置換基である。電子供与性置換基は、好ましくは、アルキル基(シクロアルキル基を除く)、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、およびアルキルシリル基からなる群から選択される少なくとも一つである。すなわち、修飾フェニル基は、アルキル基(シクロアルキル基を除く)、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、およびアルキルシリル基からなる群から選択される少なくとも一つを、電子供与性置換基として有する。
【0036】
アルキル基は、例えば、炭素数1~10のアルキル基であり、好ましくは、炭素数1~5のアルキル基である。炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、およびt-ペンチル基が挙げられる。アルキル基としては、良好な電子供与性の観点から、t-ブチル基(t-Bu)が好ましい。
【0037】
シクロアルキル基は、例えば、炭素数3~8のシクロアルキル基である。そのようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0038】
アルコキシ基は、例えば、炭素数1~5のアルコキシ基である。そのようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、およびt-ブトキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、良好な電子供与性および合成のしやすさの観点から、メトキシ基(OMe)が好ましい。
【0039】
アミノ基としては、例えば、モノアルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基が挙げられる。モノアルキルアミノ基としては、例えば、N-メチルアミノ基およびN-エチルアミノ基が挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、およびN-メチル-N-エチルアミノ基が挙げられる。
【0040】
アルキルシリル基としては、例えば、各アルキル基の炭素数が1~5のアルキルシリル基が挙げられる。そのようなアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基およびトリイソプロピルシリル基が挙げられる。
【0041】
化学式(1)において、R1,R2,R3は、互いに、異なってもよいし、同じであってもよい。修飾TPS化合物の合成のしやすさの観点から、R1,R2,R3は、全て同じであるのが好ましい。
【0042】
修飾フェニル基が一つの電子供与性置換基を有する場合、当該電子供与性置換基は、フェニル基への電子供与機能を効果的に発揮してS-C結合を短くする観点から、修飾フェニル基におけるパラ位に位置するのが好ましい。具体的には、修飾フェニル基と結合している硫黄原子と、電子供与性置換基とが、パラ位に位置するのが好ましい。修飾TPSが複数の修飾フェニル基を有する場合、すべての修飾フェニル基において、電子供与性置換基がパラ位に位置するのが好ましい。修飾フェニル基は、好ましくは、パラ位の電子供与性置換基に加えて、オルト位の電子供与性置換基とメタ位の電子供与性置換基とからなる群から選択される少なくとも一つを更に有する。一つの修飾フェニル基が有する複数の電子供与性置換基は、全て同じであるのが好ましい。
【0043】
修飾TPSは、好ましくは、下記の化学式(2)で示されるトリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム、下記の化学式(3)で示されるトリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、下記の化学式(4)で示されるトリス(3,4-ジメトキシフェニル)スルホニウム、および、下記の化学式(5)で示されるトリス(2,3,4-トリメトキシフェニル)スルホニウムからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
修飾TPS化合物のアニオンとしては、例えば、Cl-,Br-,I-,ZnCl3
-,HSO3
-,BF4
-,PF6
-,AsF6
-,SbF6
-,CH3SO3
-,CF3SO3
-,C4F9SO3
-,(C6F5)4B-,(C4H9)4B-,および(C4F9SO2)2N-が挙げられる。アニオンとしては、好ましくは、C4F9SO3
-(パーフルオロ-1-ブタンスルホナート)、および、(C4F9SO2)2N-(ビス((パーフルオロブチル)スルホニル)アミドアニオン)が挙げられる。
【0049】
修飾TPS化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。修飾TPS化合物は、好ましくは、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム・パーフルオロ-1-ブタンスルホナート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム・ビス((パーフルオロブチル)スルホニル)アミド、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム・パーフルオロ-1-ブタンスルホナート、トリス(3,4-ジメトキシフェニル)スルホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸、および、トリス(2,3,4-トリメトキシフェニル)スルホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0050】
発色性化合物100質量部に対する光酸発生剤の配合量は、可変色層12において良好な着色性を確保する観点から、好ましくは100質量部以上、より好ましくは300質量部以上、更に好ましくは500質量部以上である。同配合量は、粘着シートXの色相の耐久性を確保する観点から、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは900質量部以下、更に好ましくは800質量部以下である。
【0051】
ポリマー成分100質量部に対する光酸発生剤の配合量は、可変色層12において良好な着色性を確保する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。同配合量は、粘着シートXの耐久性を確保する観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
【0052】
可変色樹脂組成物は、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、溶剤、酸化防止剤、帯電防止剤、および増感剤が挙げられる。
【0053】
溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびトルエンが用いられる。溶剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0054】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0055】
可変色層12は、例えば、上述の可変色樹脂組成物(ワニス)を基材フィルム11上に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥および硬化させることによって、形成できる。ポリマー成分として熱可塑性樹脂を用いる場合、当該ポリマー成分と、着色剤と、必要に応じて配合される他の成分とを、溶剤に溶解および分散させることにより、可変色樹脂組成物を調製できる。ポリマー成分として熱硬化性樹脂を用いる場合、当該ポリマー成分を形成するモノマー成分と、着色剤と、必要に応じて配合される他の成分とを、溶剤に溶解および分散させることにより、可変色樹脂組成物を調製できる。
【0056】
可変色層12の厚さは、可変色層12において良好な着色性を確保する観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上である。可変色層12の厚さは、粘着シートXの薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。
【0057】
可変色層12のガラス転移温度は、低分子量成分としての発色性化合物および修飾TPS化合物の可変色層12内での熱拡散を抑制する観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上である。可変色層12のガラス転移温度は、基材フィルム11の良好な加工性を確保する観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下である。可変色層12のガラス転移温度は、好ましくは、粘着剤層21,22のガラス転移温度より高い。
【0058】
基材10の厚さは、粘着シートXの取り扱い性を確保する観点から、好ましくは8μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。基材10の厚さは、粘着シートXの薄型化の観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0059】
粘着剤層21は、粘着剤組成物(第1粘着剤組成物)から形成された感圧接着剤層である。粘着剤組成物は、ベースポリマーを含む。ベースポリマーとしては、粘着性を発現させる粘着成分である。ベースポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、およびポリビニルエーテルポリマーが挙げられる。ベースポリマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。粘着剤層21において良好な粘着性および透明性を確保する観点から、ベースポリマーとしては、アクリルポリマーが好ましい。
【0060】
アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを50質量%以上の割合で含むモノマー成分の共重合体である。「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。
【0061】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。そのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、および(メタ)アクリル酸テトラデシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0062】
モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、粘着剤層21において粘着性等の基本特性を適切に発現させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。同割合は、例えば99質量%以下である。
【0063】
モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーを含んでもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、極性基を有するモノマーが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、および、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーは、アクリルポリマーへの架橋点の導入、アクリルポリマーの凝集力の確保など、アクリルポリマーの改質に役立つ。
【0064】
共重合性モノマーは、好ましくは、水酸基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、および、カルボキシ基含有モノマーからなる群から選択される少なくとも一種を含む。より好ましくは、共重合性モノマーは、水酸基含有モノマーおよび/または窒素原子含有環を有するモノマーを含む。
【0065】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、好ましくは(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが用いられ、より好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチルが用いられる。
【0066】
モノマー成分における水酸基含有モノマーの割合は、アクリルポリマーへの架橋構造の導入、および、粘着剤層21における凝集力の確保の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーの極性(粘着剤層21における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0067】
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、およびN-ビニルピペラジンが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては、好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンが用いられる。
【0068】
モノマー成分における、窒素原子含有環を有するモノマーの割合は、粘着剤層21における凝集力の確保、および、粘着剤層21における対被着体密着力の確保の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、アクリルポリマーの極性(粘着剤層21における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0069】
モノマー成分は、他の共重合性モノマーを含んでいてもよい。他の共重合性モノマーとしては、例えば、酸無水物モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、および芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0070】
共重合性モノマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0071】
アクリルポリマーは、上述のモノマー成分を重合させることによって形成できる。重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、および乳化重合が挙げられ、好ましくは溶液重合が挙げられる。重合の開始剤としては、例えば熱重合開始剤が用いられる。重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、例えば0.05質量部以上であり、また、例えば1質量部以下である。
【0072】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ重合開始剤および過酸化物重合開始剤が挙げられる。アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、および2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチルが挙げられる。過酸化物重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエート、および過酸化ラウロイルが挙げられる。
【0073】
ベースポリマーの重量平均分子量は、粘着剤層21における凝集力の確保の観点から、好ましくは100000以上、より好ましくは300000以上、更に好ましくは500000以上である。同重量平均分子量は、好ましくは5000000以下、より好ましくは3000000以下、更に好ましくは2000000以下である。アクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
【0074】
ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下、更に好ましくは-20℃以下である。同ガラス転移温度は、例えば-80℃以上である。
【0075】
粘着剤組成物は、ベースポリマーへの架橋構造の導入の観点から、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、および金属キレート架橋剤が挙げられる。架橋剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0076】
イソシアネート架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート架橋剤としては、これらイソシアネートの誘導体も挙げられる。当該イソシアネート誘導体としては、例えば、イソシアヌレート変性体およびポリオール変性体が挙げられる。イソシアネート架橋剤の市販品としては、例えば、コロネートL(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,東ソー製)、コロネートHL(へキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,東ソー製)、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体,東ソー製)、およびタケネートD110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,三井化学製)が挙げられる。
【0077】
エポキシ架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0078】
架橋剤の配合量は、粘着剤層21の凝集力を確保する観点から、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.07質量部以上である。粘着剤層21において良好なタック性を確保する観点から、ベースポリマー100質量部に対する架橋剤の配合量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0079】
粘着剤組成物は、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、粘着性付与剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、界面活性剤、および帯電防止剤が挙げられる。
【0080】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤、ベンゾフェノン紫外線吸収剤、サリチル酸エステル紫外線吸収剤、シアノアクリレート紫外線吸収剤、およびニッケル錯塩紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0081】
粘着剤層21の厚さは、被着体に対する十分な粘着性を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。粘着剤層21の厚さは、粘着シートXの取り扱い性および薄型化の観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
【0082】
粘着剤層22は、粘着剤組成物(第2粘着剤組成物)から形成された感圧接着剤層である。第2粘着剤組成物は、ベースポリマーと、必要に応じて他の成分とを含む。第2粘着剤組成物の組成と上述の第1粘着剤組成物の組成とは、同じであってもよいし、異なってもよい。粘着剤層21,22において互いに同質・同等の特性を確保する観点から、第2粘着剤組成物の組成と第1粘着剤組成物の組成とは、同じであるのが好ましい。粘着剤層21,22の特性が同質・同等であることは、両面粘着シートとしての粘着シートXを表裏の区別をせずに作業効率よく使用できることから好ましい。
【0083】
粘着剤層22の厚さは、被着体に対する十分な粘着性を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。粘着剤層22の厚さは、粘着シートXの取り扱い性および薄型化の観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
【0084】
粘着シートXの、CIE-XYZ表色系での波長380nm~780nmの視感透過率(Y値)は、粘着シートXの透明性を確保する観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。このような構成は、具体的には、粘着シートXを被着体に貼り合わせた後に粘着シートXと被着体との間における異物および気泡の有無を検査するのに適する。同視感透過率(Y値)は、例えば100%以下である。
【0085】
粘着シートXを、波長320~390nmの紫外線によって照射積算光量6000mJ/cm2の条件で照射した後、当該粘着シートXの上記視感透過率(Y値)は、粘着シートXの十分な着色性を確保する観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、一層好ましくは25%以下、より一層好ましくは22%以下、特に好ましくは19%以下である。同視感透過率(Y値)は、例えば1%以上である。
【0086】
粘着シートXは、例えば、次のようにして製造できる。
【0087】
まず、基材10と、粘着剤層21と、粘着剤層22とを、それぞれ用意する。基材10は、上述のように基材フィルム11上に可変色層12を形成することにより、作製できる。粘着剤層21は、第1はく離ライナー上に第1粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させることによって形成できる。粘着剤層22は、第2はく離ライナー上に第2粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させることによって形成できる。
【0088】
次に、基材10の第1面10aに粘着剤層21を貼り合わせ、第2面10bに粘着剤層22を貼り合わせる。これにより、第1・第2はく離ライナーに挟まれた粘着シートXが得られる。はく離ライナーは、粘着シートXを使用する際に必要に応じて粘着シートXから剥がされる。
【0089】
粘着剤層21は、基材10の第1面10a上に第1粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させることによって形成してもよい。粘着剤層22は、基材10の第2面10b上に第2粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させることによって形成できる。このような方法によっても粘着シートXを製造できる。
【0090】
図2Aから
図2Cは、粘着シートXの使用方法の一例を表す。本方法は、用意工程と、接合工程と、変色部分形成工程とを含む。
【0091】
まず、用意工程では、
図2Aに示すように、粘着シートXと、第1部材31と、第2部材32とを用意する。第1部材31は、例えば、有機ELパネルなどのディスプレイパネルである。第1部材31は、他の電子デバイス、および、光学デバイスであってもよい。第2部材32は、例えば透明基材である。透明基材としては、透明プラスチック基材および透明ガラス基材が挙げられる。
【0092】
次に、接合工程では、
図2Bに示すように、粘着シートXを介して第1部材31および第2部材32を接合する。これにより、積層体Zが得られる。積層体Zにおいて、粘着シートXは、第1部材31の厚さ方向一方面に接触するように配置され、第2部材32は、その粘着シートXの厚さ方向一方面に接触するように配置される。
【0093】
接合工程の後、必要に応じて、部材31,32と粘着シートXとの間における異物および気泡の有無を検査する。
【0094】
次に、変色部分形成工程では、
図2Cに示すように、積層体Zにおける可変色層12の所定箇所に対して所定の波長または波長範囲の光を照射し、可変色層12において変色部分12aを形成する。例えば、透明な第2部材32の側から、可変色層12における所定領域をマスクするためのマスクパターン(図示略)を介して、可変色層12に対して光照射する。可変色層12において光照射を受けた部分では、光酸発生剤としての修飾TPS化合物から酸が発生し、当該酸との反応によって発色性化合物が発色する。これにより、可変色層12に変色部分12aが形成される。
【0095】
本工程での光照射用の光源としては、例えば、紫外線LEDランプ、高圧水銀ランプ、およびメタルハライドランプが挙げられる。また、本工程の光照射においては、光源から出射される光の一部の波長領域をカットするための波長カットフィルターを、必要に応じて用いてもよい。
【0096】
例えば以上のようにして、部材間の接合に粘着シートXを使用できる。第1部材31が有機ELパネルなどのディスプレイパネルである場合、当該パネルが備える画素パネル上に形成された金属配線に対応する(即ち対面する)パターン形状で変色部分12aを設けることにより、当該金属配線での外光反射を抑制できる。
【0097】
粘着シートXは、上述のように、酸との反応により発色する発色性化合物と、光酸発生剤としての修飾TPS化合物とを含む可変色層12を有する。そのため、粘着シートXを被着体に貼り合わせた後、粘着シートXにおける変色予定部分(同シートの平面視における少なくとも一部)に対する光照射によって、当該部分を局所的に変色させることができる。このような粘着シートXでは、貼り合わせ後であって変色部分形成前に、粘着シートXと被着体との間における異物および気泡の有無を検査できる。
【0098】
また、粘着シートXの可変色層12は、光酸発生剤として上述の修飾TPS化合物を含む。この修飾TPS化合物は、TPS(置換基を有しない3つのフェニル基がSと結合している)におけるS-C結合よりも短いS-C結合を少なくとも一つ有する。このような修飾TPS化合物は、TPS化合物よりも、自然光による分解(酸の発生)を生じにくい。このような修飾TPS化合物を光酸発生剤として可変色層12に含む粘着シートXは、良好な透明安定性を実現するのに適する。
【0099】
以上のように、粘着シートXは、被着体への貼合わせ後に少なくとも一部が変色可能であるとともに、良好な透明安定性を実現するのに適する。
【0100】
粘着シートXは、
図3に示すような片面粘着シートであってもよい。
図3に示す粘着シートXは、粘着剤層22を備えないこと以外は、
図1に示す粘着シートXと同様である。具体的には、
図3の粘着シートXは、基材10と、当該基材10の第1面10a側に配置された粘着剤層21とを備える。また、粘着シートXは、
図4に示すような片面粘着シートであってもよい。
図4に示す粘着シートXは、粘着剤層21を備えないこと以外は、
図1に示す粘着シートXと同様である。具体的には、
図4の粘着シートXは、基材10と、当該基材10の第2面10b側に配置された粘着剤層22とを備える。これらのような片面粘着シートとしての粘着シートXは、例えば、マーキング転写シートとして用いることができる。
【0101】
粘着シートXは、
図5に示すように、基材10の代わりに可変色基材10Aを備えてもよい。可変色基材10Aは、上述の基材フィルム11の支持機能と、上述の可変色層12の変色機能とを兼ね備える。このような可変色基材10Aは、例えば、ポリマー成分と、発色性化合物と、修飾TPS化合物(光酸発生剤)と、必要に応じて配合される他の成分とを含有する可変色樹脂組成物の押出成形によって作製できる。ポリマー成分、発色性化合物、修飾TPSおよび他の成分については、可変色層12に関して上述したポリマー成分、発色性化合物、修飾TPS化合物および他の成分と同様である。
【0102】
可変色基材10Aの厚さは、粘着シートXの取り扱い性と可変色基材10Aの良好な着色性とを確保する観点から、好ましくは8μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。基材10の厚さは、粘着シートXの薄型化の観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0103】
粘着シートXは、
図6に示すように、基材10を有さずに可変色粘着剤層23を有する基材レスの可変色粘着シートであってもよい。可変色粘着剤層23は、厚さ方向Hの一方に粘着面23aを有し、厚さ方向Hの他方に粘着面23bを有する。すなわち、
図6に示す粘着シートXは、基材レスの両面粘着シートである。可変色粘着剤層23は、上述の可変色層12の変色機能と、上述の粘着剤層21または粘着剤層22の粘着機能とを、兼ね備える。このような可変色粘着剤層23は、例えば、粘着剤組成物(第3粘着剤組成物)から形成された感圧接着剤層である。第3粘着剤組成物は、ベースポリマーと、上述の発色性化合物と、上述の修飾TPS化合物と、必要に応じて他の成分とを含む。可変色粘着剤層23は、はく離ライナー上に第3粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させることによって形成できる。第3粘着剤組成物のベースポリマーおよび他の成分については、第1粘着剤組成物に関して上述したベースポリマーおよび他の成分と同様である。第3粘着剤組成物の発色性化合物および修飾TPS化合物については、可変色層12に関して上述した発色性化合物および修飾TPS化合物と同様である。
【0104】
可変色粘着剤層23の厚さは、被着体に対する十分な粘着性と十分な着色性との観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。可変色粘着剤層23の厚さは、粘着シートXの取り扱い性および薄型化の観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0105】
また、粘着シートXは、所定の基材フィルムと、当該基材フィルムの片面上に配置された可変粘着剤層23とを有する片面粘着シートであってもよい。粘着シートXは、所定の基材フィルムと、当該基材フィルムの一方面上に配置された可変粘着剤層23と、基材フィルムの他方面上に配置された更なる可変色粘着剤層23とを有する基材付き両面粘着シートであってもよい。
【実施例0106】
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
【0107】
〔実施例1〕
【0108】
〈基材の作製〉
まず、ポリメタクリル酸メチル樹脂(品名「ダイヤナール BR-83」,PMMA樹脂,三菱ケミカル社製)を酢酸エチルに溶解して、樹脂溶液を得た。樹脂溶液は、29質量%のPMMA樹脂を含有する。次に、樹脂溶液に対し、PMMA樹脂100質量部あたり、発色性化合物としてのロイコ色素(品名「S-205」,山田化学工業社製)2質量部と、第1光酸発生剤としてのトリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム塩(Sigma-Aldrich社製のトリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム・パーフルオロ-1-ブタンスルホナート,そのカチオンは上記の化学式(2)で示される)4質量部と、酸化防止剤(品名「アデカスタブ AO-60」,ヒンダードフェノール系酸化防止剤,ADEKA社製)6質量部とを加えて混合し、可変色樹脂組成物を調製した。
【0109】
次に、基材フィルムとしてのポリカーボネート(PC)フィルム(品名「DURABIO」,厚さ70μm,三菱ケミカル社製)の上に、可変色樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した。次に、この塗膜を、130℃で3分間の加熱により、乾燥および硬化させた。これにより、基材フィルム上に厚さ25μmの可変色層を形成した。これにより、基材(基材フィルム/可変色層)を得た。
【0110】
〈可変色粘着シートの作製〉
まず、両面はく離ライナー付きの透明粘着シート(品名「LUCIACS CS9862UAS」,ベースポリマーとしてアクリルポリマーを含有する基材レスの透明両面粘着シート,厚さ50μm,日東電工社製)から一方のはく離ライナーを剥離した。次に、この剥離によって露出した粘着シートを、上述の基材の可変色層側に貼り合わせた。以上のようにして、実施例1の可変色粘着シートを作製した。実施例1の可変色粘着シートは、基材(基材フィルム/可変色層)と、基材フィルム上の粘着剤層(粘着シート)とを有し、粘着剤層側表面がはく離ライナーで被覆されている。
【0111】
〔実施例2〕
基材の作製において、可変色層の光酸発生剤として、第2光酸発生剤としてのトリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム塩(三和ケミファ社製のトリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム・ビス((パーフルオロブチル)スルホニル)アミド,そのカチオンは上記の化学式(3)で示される)4質量部を用いたこと以外は、実施例1の可変色粘着シートと同様にして、実施例2の可変色粘着シート(はく離ライナー付き可変色粘着シート)を作製した。
【0112】
〔実施例3〕
基材の作製において、可変色層の光酸発生剤として、第3光酸発生剤としてのトリス(3,4-メトキシフェニル)スルホニウム塩(そのカチオンは上記の化学式(4)で示される)4質量部を用いたこと以外は、実施例1の可変色粘着シートと同様にして、実施例3の可変色粘着シート(はく離ライナー付き可変色粘着シート)を作製した。第3光酸発生剤は、次のようにして得た。
【0113】
まず、原料として3,4-ジメトキシブロモトルエンとマグネシウムとを用い、且つ溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた常法により、3,4-ジメトキシフェニルグリニャール試薬(0.5mol,5.0等量)を調製した。また、塩化チオニル(1当量)とクロロトリメチルシラン(2.5等量)とをTHFに溶解させて、THF溶液を調製した。そして、3,4-ジメトキシフェニルグリニャール試薬に対し、THF溶液を、0℃~室温の温度条件で添加し、反応液を得た。次に、この反応液を、室温で1時間撹拌して反応させた。次に、反応液に濃塩酸(濃度:約35質量%)を添加した後、生成物をジクロロメタンによって2回抽出した。生成物として得られたトリス(3,4-ジメトキシフェニル)スルホニウム・クロライドを、洗浄した後、メタノール中でトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTF)とアニオンのイオン交換をさせた。これより、第3光酸発生剤としてのトリス(3,4-ジメトキシフェニル)スルホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸を得た。
【0114】
〔実施例4〕
基材の作製において、可変色層の光酸発生剤として、第4光酸発生剤としてのトリス(2,3,4-メトキシフェニル)スルホニウム塩(そのカチオンは上記の化学式(5)で示される)4質量部を用いたこと以外は、実施例1の可変色粘着シートと同様にして、実施例4の可変色粘着シート(はく離ライナー付き可変色粘着シート)を作製した。第4光酸発生剤は、次のようにして得た。
【0115】
まず、原料として2,3,4-トリメトキシブロモトルエンとマグネシウムとを用い、且つ溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた常法により、2,3,4-トリメトキシフェニルグリニャール試薬(0.5mol,5.0等量)を調製した。また、塩化チオニル(1当量)とクロロトリメチルシラン(2.5等量)とをTHFに溶解させて、THF溶液を調製した。そして、2,3,4-トリメトキシフェニルグリニャール試薬に対し、THF溶液を、0℃~室温の温度条件で添加し、反応液を得た。次に、この反応液を、室温で1時間撹拌して反応させた。次に、反応液に濃塩酸(濃度:約35質量%)を添加した後、生成物をジクロロメタンによって2回抽出した。生成物として得られたトリス(2,3,4-トリメトキシフェニル)スルホニウム・クロライドを、洗浄した後、メタノール中でトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTF)とアニオンのイオン交換をさせた。これより、第4光酸発生剤としてのトリス(2,3,4-ジメトキシフェニル)スルホニウム・トリフルオロメタンスルホン酸を得た。
【0116】
〔比較例1〕
基材の作製において、可変色層の光酸発生剤として、第5光酸発生剤としてのトリフェニルスルホニウム化合物(品名「アデカアークルズ SP-056」,トリフェニルスルホニウム・パーフルオロ-1-ブタンスルホナート,ADEKA社製)4質量部を用いたこと以外は、実施例1の可変色粘着シートと同様にして、比較例1の可変色粘着シート(はく離ライナー付き可変色粘着シート)を作製した。
【0117】
〈光酸発生剤におけるS-C結合の長さ〉
上述の第1~第5光酸発生剤のそれぞれについて、硫黄原子(S)と結合している炭素原子(C)とSとの結合(S-C結合)の長さを調べた。具体的には、Gaussian社製の量子化学計算プログラムGaussian16により、密度汎関数法(DFT)において、光酸発生剤の構造最適化計算を実施した。これにより、光酸発生剤の構造を求めた。同計算では、汎関数としてB3LYP-3D(Grimme分散力補正されたB3LYP)を用い、基底関数系として6-31G(d,p)を用いた。光酸発生剤におけるS-C結合の長さを表1に示す。
【0118】
〈光照射前の透明性〉
実施例1~4および比較例1の可変色粘着シートについて、次のようにして、波長380nm~780nmでの視感透過率(Y値)を調べた。
【0119】
まず、測定用サンプルを作製した。具体的には、可変色粘着シート(基材フィルム/可変色層/粘着剤層/はく離ライナー)における粘着剤層からはく離ライナーを剥がした後、当該剥離によって露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(厚さ0.55mm,イーグルガラス,松浪硝子社製)に貼り合わせ、これによって測定用サンプルを得た。そして、測定用サンプルについて、透過率測定装置(品名「U4150形分光光度計」,日立ハイテクサイエンス社製)により、視感透過率を測定した(第1の透過率測定)。この透過率は、具体的には、測定用サンプルに対する波長380nm~780nmの透過光の、CIE-XYZ表色系での透過率(Y値)である。本測定では、測定用サンプルに対してその無アルカリガラス側から光が当たるように測定用サンプルを装置内に設置した。また、本測定では、無アルカリガラス板のみについて同一条件で測定して得られた測定結果(透過率スペクトル)をベースラインとして用いた。測定された視感透過率を、UV照射前の初期のY値(%)として表1に示す。
【0120】
〈着色性〉
実施例1~4および比較例1の各可変色粘着シートの可変色層について、以下のようにして、紫外線照射による着色性を調べた。
【0121】
まず、可変色粘着シート(基材フィルム/可変色層/粘着剤層/はく離ライナー)に対して紫外線(UV)を照射した。具体的には、23℃および相対湿度50%の環境下において、可変色粘着シートに対して可変色層側からUVを照射した。これにより、可変色層中のロイコ色素と光酸発生剤とを反応させて、当該可変色層を着色させた。UV照射では、HOYA社製のランプ式UV照射システム(型番「UL-750」)における高圧水銀ランプを紫外光源として使用し、波長320~390nmの範囲での照射積算光量を6000mJ/cm2とした。
【0122】
次に、測定用サンプルを作製した。具体的には、紫外線照射後の上述の可変色粘着シート(基材フィルム/可変色層/粘着剤層/はく離ライナー)における粘着剤層からはく離ライナーを剥がした後、当該剥離によって露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(厚さ0.55mm,イーグルガラス,松浪硝子社製)に貼り合わせ、これによって測定用サンプルを得た。そして、測定用サンプルについて、透過率測定装置(品名「U4150形分光光度計」,日立ハイテクサイエンス社製)により、視感透過率を測定した(第2の透過率測定)。本測定の方法および条件は、第1の透過率測定の方法および条件と同じである。測定された視感透過率を、UV照射後のY値(%)として表1に示す。実施例1~4および比較例1の可変色粘着シートは、紫外線照射によって視感透過率が低下した(同程度の着色性を有していた)。
【0123】
〈耐光性試験〉
実施例1~4および比較例1の各可変色粘着シートについて、以下のようにして、耐光性試験を実施した。
【0124】
まず、試験用サンプルを作製した。具体的には、まず、可変色粘着シート(基材フィルム/可変色層/粘着剤層/はく離ライナー)における粘着剤層からはく離ライナーを剥がした後、当該剥離によって露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(厚さ0.55mm,イーグルガラス,松浪硝子社製)に貼り合わせた。次に、無アルカリガラス板上の可変色粘着シートの基材上に、厚さ50μmの透明粘着シート(品名「LUCIACS CS9862UAS」,基材レスの透明両面粘着シート,日東電工製)を介して、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(品名「KC4UYW」,厚さ40μm,コニカミノルタ社製)を接合した。次に、このTACフィルム上に、片面粘着剤層付きUVカットガラスフィルム(品名「U4-400CL」,NEXFILM社製)の粘着剤層側を貼り合わせた。このガラスフィルムは、波長400nmまでの紫外領域の光をカットするバンドカットフィルタ機能を有する。以上のようにして、試験用サンプルを作製した。この試験用サンプルは、無アルカリガラス板と、可変色粘着シート(粘着剤層/可変色層/基材フィルム)と、粘着剤層と、TACフィルムと、UVカットガラスフィルムとを、厚さ方向にこの順で有する。
【0125】
次に、耐光性試験機(品名「スーパーキセノンウェザーメーターSX75」,スガ試験機社製)により、試験用サンプルに対してUVカットガラスフィルム側から疑似太陽光(但し、照度は約3倍)を照射した(耐光性試験)。本試験では、波長300nm~400nmにおける照度が120Wであるキセノンランプを光源として用い、照射時間を120時間とした。
【0126】
そして、耐光性試験後の測定用サンプルについて、透過率測定装置(品名「U4150形分光光度計」,日立ハイテクサイエンス社製)により、視感透過率を測定した(第3の透過率測定)。本測定の方法および条件は、第1の透過率測定の方法および条件と同じである。測定された視感透過率を、耐光性試験後のY値(%)として表1に示す。耐光性試験前後のY値の差ΔY値(試験前のY値-試験後のY値)も、表1に示す。
【0127】
比較例1の可変色粘着シートの可変色層は、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(トリフェニルスルホニウム化合物)を含有する。このような比較例1の可変色粘着シートにおけるΔY値は、38.1%であり、大きかった。これに対し、実施例1~4の各可変色粘着シートの可変色層は、トリフェニルスルホニウムにおけるS-C結合よりも短いS-C結合を有する修飾トリフェニルスルホニウムの塩(修飾トリフェニルスルホニウム化合物)を、光酸発生剤として含有する。このような実施例1~4の各可変色粘着シートにおけるΔY値は、10.9%(実施例1)、3.9%(実施例2)、6.4%(実施例3)または1.8%(実施例4)であり、比較例1の可変色粘着シートにおけるΔY値よりも、相当程度に小さかった。
【0128】