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特開2024-47559導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法、電磁波シールドフィルムの製造方法および面状発熱体の製造方法
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  • 特開-導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法、電磁波シールドフィルムの製造方法および面状発熱体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047559
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法、電磁波シールドフィルムの製造方法および面状発熱体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20240329BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B29C65/08
H05K3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147637
(22)【出願日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2022152640
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】柴田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小川 孝之
【テーマコード(参考)】
4F211
5E343
【Fターム(参考)】
4F211AA01
4F211AA19
4F211AA21
4F211AA24
4F211AA37
4F211AA39
4F211AB13
4F211AD03
4F211AD06
4F211AE03
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH33
4F211AR07
4F211AR12
4F211AR13
4F211TA01
4F211TC08
4F211TJ11
4F211TN23
4F211TQ03
5E343AA03
5E343AA05
5E343AA18
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB40
5E343BB44
5E343BB48
5E343BB49
5E343BB76
5E343DD03
5E343DD12
5E343DD20
5E343EE42
5E343EE60
5E343ER60
5E343FF02
5E343FF09
5E343FF30
5E343GG06
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】超音波により基材上に導電性層を設けて導電性基材を製造する際に、基材や導電性層の損傷を抑えつつ、高い導電性を有する導電性層を得ること。
【解決手段】基材と、導電性粒子を含む導電性組成物により基材の表面に設けられた塗膜と、を備える積層体を、超音波ホーンと、ステージまたはロールと、で挟みながら、ホーンから超音波を発振して塗膜を導電性層とする超音波印加工程を含む、導電性基材の製造方法。この製造方法において、ホーンにおける塗膜と接する面の算術平均粗さをRaとし、ステージまたはロールにおける基材と接する面の算術平均粗さをRaとしたとき、RaおよびRaの一方または両方は、0.001~2μmであり、かつ、ホーンにおける塗膜と接する面の最大高さをRzとしたとき、Rzは、塗膜の厚みの50%以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、導電性粒子を含む導電性組成物により前記基材の表面に設けられた塗膜と、を備える積層体を、超音波ホーンと、ステージまたはロールと、で挟みながら、前記ホーンから超音波を発振して前記塗膜を導電性層とする超音波印加工程を含む、導電性基材の製造方法であって、
前記ホーンにおける前記塗膜と接する面の算術平均粗さをRaとし、前記ステージまたはロールにおける前記基材と接する面の算術平均粗さをRaとしたとき、RaおよびRaの一方または両方が、0.001~2μmであり、
かつ、前記ホーンにおける前記塗膜と接する面の最大高さをRzとしたとき、Rzが、前記塗膜の厚みの50%以下である導電性基材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性基材の製造方法であって、
Raが0.001~2μmである、導電性基材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
Raが0.001~2μmである、導電性基材の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記基材は、樹脂および紙からなる群より選ばれる少なくともいずれかで構成されている、導電性基材の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記基材は、フィルム状またはシート状である、導電性基材の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記基材は、可撓性を有する、導電性基材の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記超音波印加工程は、前記積層体を搬送しながら行う、導電性基材の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記ホーンは円形で、円の中心を軸として回転可能であり、前記軸は超音波振動子と連結しており、
前記超音波印加工程では、前記ホーンの円周部が前記塗膜に接触した状態で前記ホーンが回転し、前記ホーンの回転速度にあわせて前記基材が搬送される、導電性基材の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記導電性粒子が、銅および銀からなる群より選ばれる少なくともいずれかの元素を含有する、導電性基材の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記塗膜は、前記導電性組成物を前記基材上に塗布する塗布工程と、前記基材上に塗布された前記導電性組成物を硬化させる硬化工程と、を含む塗膜形成工程により設けられる、導電性基材の製造方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記超音波印加工程の前に、前記塗膜を押圧する押圧工程を含む、導電性基材の製造方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法であって、
前記導電性層は、パターン構造を有する、導電性基材の製造方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法で製造された導電性基材を用いて電子デバイスを製造する、電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電子デバイスの製造方法であって、
前記電子デバイスが、RFタグである、電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法により得られた導電性基材を用いて電磁波シールドフィルムを製造する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載の導電性基材の製造方法により得られた導電性基材を用いて面状発熱体を製造する、面状発熱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基材の製造方法、電子デバイスの製造方法、電磁波シールドフィルムの製造方法および面状発熱体の製造方法に関する。より具体的には、超音波を用いて導電性基材を製造する方法、および、その方法により製造された導電性基材を用いて、電子デバイス、電磁波シールドフィルムまたは面状発熱体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属に超音波を印加することにより、接合界面に存在する酸化皮膜や付着物を破壊・分散し、塑性変形により金属同士を密着させる技術(超音波金属接合)が知られている。この技術の応用として、金属微粒子に超音波を印加することにより、導電性層を形成すること、また、導電性層を備える導電性基材を製造する試みが知られている。
【0003】
超音波により金属を接合する場合、基本的には金属を溶融させるための加熱を要しない。よって、例えば樹脂などの低耐熱性の基材の表面に、金属粒子を含む膜を形成し、その膜に超音波を印加することで、基材(樹脂)の溶融や変形を抑えつつ、導電性層を形成することが可能と考えられる。
このような導電性層の形成に関する先行技術として、特許文献1を挙げることができる。特許文献1には、(i)合成樹脂からなる基材上に、金属微粒子及び樹脂バインダーを含有するインクを塗布するステップと、(ii)インクを硬化させ、基材と樹脂バインダーを密着させるステップと、(iii)硬化したインクの表面に超音波振動を与えながら圧力を加えることにより、金属微粒子どうしの接触面積を増加させるステップと、を備える導電性基材の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-086895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1の記載やその他の従来技術を参考にしつつ、超音波により基材上に導電性層を設けることを試みた。しかし、超音波の印加により基材や導電性層が損傷してしまう不具合が発生する場合があった。また、基材や導電性層の損傷を抑えるために超音波の出力を弱めると、高い導電性を有する導電性層を形成できない場合があった。すなわち、基材や導電性層の損傷を抑えることと、高い導電性を有する導電性層を形成することは、トレードオフの関係にあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、超音波により基材上に導電性層を設けて導電性基材を製造する際に、基材や導電性層の損傷を抑えつつ、高い導電性を有する導電性層を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0008】
1.
基材と、導電性粒子を含む導電性組成物により前記基材の表面に設けられた塗膜と、を備える積層体を、超音波ホーンと、ステージまたはロールと、で挟みながら、前記ホーンから超音波を発振して前記塗膜を導電性層とする超音波印加工程を含む、導電性基材の製造方法であって、
前記ホーンにおける前記塗膜と接する面の算術平均粗さをRaとし、前記ステージまたはロールにおける前記基材と接する面の算術平均粗さをRaとしたとき、RaおよびRaの一方または両方が、0.001~2μmであり、
かつ、前記ホーンにおける前記塗膜と接する面の最大高さをRzとしたとき、Rzが、前記塗膜の厚みの50%以下である導電性基材の製造方法。
2.
1.に記載の導電性基材の製造方法であって、
Raが0.001~2μmである、導電性基材の製造方法。
3.
1.または2.に記載の導電性基材の製造方法であって、
Raが0.001~2μmである、導電性基材の製造方法。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記基材は、樹脂および紙からなる群より選ばれる少なくともいずれかで構成されている、導電性基材の製造方法。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記基材は、フィルム状またはシート状である、導電性基材の製造方法。
6.
1.~5.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記基材は、可撓性を有する、導電性基材の製造方法。
7.
1.~6.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記超音波印加工程は、前記積層体を搬送しながら行う、導電性基材の製造方法。
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記ホーンは円形で、円の中心を軸として回転可能であり、前記軸は超音波振動子と連結しており、
前記超音波印加工程では、前記ホーンの円周部が前記塗膜に接触した状態で前記ホーンが回転し、前記ホーンの回転速度にあわせて前記基材が搬送される、導電性基材の製造方法。
9.
1.~8.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記導電性粒子が、銅および銀からなる群より選ばれる少なくともいずれかの元素を含有する、導電性基材の製造方法。
10.
1.~9.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記塗膜は、前記導電性組成物を前記基材上に塗布する塗布工程と、前記基材上に塗布された前記導電性組成物を硬化させる硬化工程と、を含む塗膜形成工程により設けられる、導電性基材の製造方法。
11.
1.~10.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記超音波印加工程の前に、前記塗膜を押圧する押圧工程を含む、導電性基材の製造方法。
12.
1.~11.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法であって、
前記導電性層は、パターン構造を有する、導電性基材の製造方法。
13.
1.~12.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法で製造された導電性基材を用いて電子デバイスを製造する、電子デバイスの製造方法。
14.
13.に記載の電子デバイスの製造方法であって、
前記電子デバイスが、RFタグである、電子デバイスの製造方法。
15.
1.~12.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法により得られた導電性基材を用いて電磁波シールドフィルムを製造する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
16.
1.~12.のいずれか1つに記載の導電性基材の製造方法により得られた導電性基材を用いて面状発熱体を製造する、面状発熱体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超音波により基材上に導電性層を設けて導電性基材を製造する際に、基材の損傷が抑えられ、かつ、高い導電性を有する導電性層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】基材上への塗膜の形成について説明するための図である。
図2】超音波印加工程について説明するための図である。
図3】超音波印加工程(図2に示される形態とは別の形態)について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0012】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0013】
本明細書中、「算術平均粗さ」とは、JIS B 0601-2001で定義されている算術平均粗さRaのことを表す。また、「最大高さ」とは、JIS B 0601-2001で定義されている最大高さRzのことを表す。
【0014】
<導電性基材の製造方法>
本実施形態の導電性基材の製造方法は、基材と、導電性粒子を含む導電性組成物により基材の表面に設けられた塗膜と、を備える積層体を、超音波ホーンと、ステージまたはロールと、で挟みながら、ホーンから超音波を発振させる超音波印加工程を含む。このとき、ホーンにおける塗膜と接する面の算術平均粗さをRaとし、ステージまたはロールにおける基材層と接する面の算術平均粗さをRaとしたとき、RaおよびRaの一方または両方が、0.001~2μmであり、かつ、ホーンにおける塗膜と接する面の最大高さをRzとしたとき、Rzが、塗膜の厚みの50%以下である。
【0015】
本発明者らは、超音波により基材上に導電性層を設けて導電性基材を製造する際に、基材や導電性層が損傷することがある原因を検討した。検討の結果、基材や導電性層が超音波すなわち高速振動に晒されることにより、ホーンと積層体との間や、積層体における基材とステージ(またはロール)の間で「擦れ」が発生し、この擦れにより基材や導電性層が損傷してしまうらしいことを知見した。
【0016】
そこで、本発明者らは、ホーンにおける積層体が接する部分や、ステージ(またはロール)における積層体が接する部分の「表面粗さ」が比較的小さく、平滑性が高ければ、上記の「擦れ」が発生したとしても、基材や導電性層の損傷が抑えられるのではないかと考えた。
【0017】
本発明者らは上記考えを具現化した。具体的には、ホーンにおける塗膜と接する面の算術平均粗さRaを0.001~2μmとすることで、ホーンと積層体との間における「擦れ」による損傷を軽減した。かつ/または、ステージまたはロールにおける基材層と接する面の算術平均粗さRaを0.001~2μmとすることで、ステージまたはロールと積層体との間における「擦れ」による損傷を軽減した。
RaおよびRaの一方のみが0.001~2μmであり、他方が2μmを超える場合であっても、積層体の少なくとも片面側については損傷が抑えられるから、基材または導電性層の損傷を低減していると言える。
【0018】
好ましくは、RaおよびRaの両方が0.001~2μm、より好ましくは、RaおよびRaの両方が0.001~2μmで、かつ、Ra<Raである。こうすることで積層体の損傷を一層低減することができる。
損傷の原因は、超音波の振動エネルギーが塗膜以外の場所で作用してしまうためと推定される。また、損傷が起きやすい場所は、ホーンにおける塗膜が接する部分の表面粗さと、ホーンの相対位置による振動バランスによって決まると考えられる。詳細は不明な点もあるが、塗膜はステージまたはロールより、振動するホーンに位置的に近いため、Ra<Raである方が、塗膜以外へ振動エネルギーが作用することを低減できると推定される。
【0019】
なお、ステージまたはロール、ないしホーンの表面が「平滑すぎる」場合には、積層体がこれらに「貼りついてしまう」ことで、工業的な生産性が損なわれる懸念がある。この点を考慮し、本実施形態においては、RaおよびRaの下限値を0.001μmと設定している。
【0020】
Raの値は、好ましくは0.001~2μm、より好ましくは0.01~1μm、さらに好ましくは0.02~0.5μmである。
Raの値は、好ましくは0.001~2μm、より好ましくは0.02~1μm、さらに好ましくは0.03~0.5μmである。
【0021】
また、本実施形態においては、ホーンにおける塗膜と接する面の最大高さをRzとしたとき、Rzが、塗膜の厚みの50%以下である。塗膜の厚みに対してRzが大きすぎると、塗膜とホーンとの間で発生する擦れにより、塗膜(または塗膜に超音波が印加されて得られる導電性層)に損傷が生じやすくなる。よって、本実施形態においては、Rzを塗膜の厚みの50%以下としている。
Rzは、塗膜の厚みの好ましくは0.001~20%、より好ましくは0.005~10%、さらに好ましくは0.01~2%である。
Rzそのものの値は、例えば0.001~5μm、好ましくは0.005~2μm、より好ましくは0.01~0.5μmである。
【0022】
以下、本実施形態にについて、図面を参照しつつ説明する。具体的には、超音波印加工程において積層体を超音波ホーンとステージとで挟む第1実施形態と、超音波印加工程において積層体を超音波ホーンとロールとで挟む第2実施形態と、を説明する。
【0023】
[第1実施形態]
(積層体の準備)
まず、図1に示すように、基材1と、導電性粒子を含む導電性組成物により基材1の表面に設けられた塗膜3と、を備える積層体を準備する。
【0024】
・基材1について
製造コストや、最終的に得られる導電性基材の最終用途を考慮し、基材1は、樹脂および紙からなる群より選ばれる少なくともいずれかで構成されていることが好ましい。より具体的には、基材1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリイミドおよび紙からなる群より選択される少なくともいずれかであることが好ましい。ここで、紙は、コート紙(紙表面がコート剤でコーティングされた紙)であってもよいし、コート紙ではない通常の紙であってもよい。
超音波により金属を接合する場合、基本的には金属を溶融させるための加熱を要しない。よって、本実施形態においては、樹脂などの低耐熱性の基材も採用可能である。
【0025】
量産適性の観点から、基材1は、フィルム状またはシート状であることが好ましい。後述の超音波印加工程を、基材1を搬送しながら行う場合に、基材1がフィルム状またはシート状であると、搬送がしやすいためである。
【0026】
基材1は、好ましくは可撓性を有する。可撓性を有する基材1を採用することで、最終製品としてフレキシブル基材(FPC)を製造することができる。
念のため述べておくと、基材1は、可撓性を有しないリジッドな基材であってもよい。
【0027】
・導電性組成物について
導電性組成物は、少なくとも導電性粒子を含む。
導電性粒子は、典型的には金属粒子である。好ましくは、導電性粒子は、銅および銀からなる群より選ばれる少なくともいずれかの元素を含有する。換言すると、導電性粒子としては、銅粒子、銀粒子などが好ましく用いられる。
【0028】
より具体的には、導電性粒子は、銀を主成分とする粒子、および、銅を主成分とする粒子からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含むことが好ましい。ここで、「銀を主成分とする」との表現は、粒子中の全構成元素中の銀元素の比率が、好ましくは50mol%以上、より好ましくは75mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上、特に好ましくは95mol%以上であることをいう。同様に、「銅を主成分とする」との表現は、粒子中の全構成元素中の銅元素の比率が、好ましくは50mol%以上、より好ましくは75mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上、特に好ましくは95mol%以上であることをいう。
念のため述べておくと、所望の導電性が得られる限り、導電性粒子は、銀および銅以外の元素を含んでもよい。銀および銅以外の元素としては、金、アルミニウム、白金、パラジウム、イリジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、鉛、亜鉛等を挙げることができる。
【0029】
導電性粒子は、2以上の元素を含んでもよい。例えば、銅粒子の表面に銀めっきがされている導電性粒子(銀コート銅粒子)などは本実施形態で好ましく用いられる。銀コート銅粒子は、銅を主成分とする粒子であり、例えば粒子の全質量を基準として最大35質量%までの量の銀が、銅粒子の表面にめっきされている。
【0030】
導電性粒子の粒径分布を調整することにより、最終的に得られる導電性層の導電性を一層高められる場合がある。
一例として、導電性粒子の、体積基準におけるメジアン径D50は、好ましくは10nm~50μm、より好ましくは50nm~40μm、さらに好ましくは100nm~30μmである。適度に大きいメジアン径D50を有する導電性粒子を用いることで、単位体積あたりの導電性粒子間の粒界の数が少なくなるため、導電性が一層高まると考えられる。また、導電性粒子のメジアン径D50が大きすぎないことにより、導電性粒子間に大きな「すき間」が空くことが抑えられて、導電性が一層高まると考えられる。
【0031】
本実施形態で使用可能な導電性粒子は、例えば、DOWAエレクトロニクス社、福田金属箔粉工業社などから購入可能である。
【0032】
超音波印加工程を経て得られる導電性層の導電性を一層高める観点から、導電性組成物中の導電性粒子の比率は大きいことが好ましい。具体的には、導電性組成物の全不揮発成分中の導電性粒子の比率は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
別観点として、導電性層の基材層に対する密着性向上の観点で、後述するバインダーを用いる場合には、バインダーの量を勘案し、導電性組成物の全不揮発成分中の導電性粒子の比率は、例えば75~100質量%、好ましくは75~99質量%、より好ましくは80~95質量%、さらに好ましくは85~90質量%とすることができる。
【0033】
導電性組成物は、導電性粒子を少なくとも含有するが、導電性粒子以外の成分を含んでいてもよい。
【0034】
導電性組成物は、溶剤を含むことができる。導電性組成物が溶剤を含むことにより、導電性組成物の基材への塗布性が向上する。溶剤は、典型的には有機溶剤を含む。
溶剤の種類は特に限定されない。溶剤は、導電性組成物中の各成分を実質的に変質させないものであればよい。
溶剤の使用量は、導電性組成物の塗布方法などに応じて適宜調整すればよい。溶剤の使用量は、導電性組成物の全体中、例えば3~30質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。
【0035】
導電性組成物は、基材1との密着性、塗布性、印刷性などの観点で、バインダーを含んでもよいし、含まなくてもよい。
バインダーを用いる場合、バインダーの種類は特に限定されない。ポリビニルピロリドン、ポリエステル、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂(例えばエチルセルロースなど)、フェノール樹脂などを好ましく挙げることができる。
導電性層の導電性を維持する観点からは、導電性組成物の全不揮発成分中のバインダーの量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。バインダーの量の下限は0であってもよい。ただし、バインダーを用いることにより密着性向上などの効果を積極的に得ようとする場合には、バインダーの量は、導電性組成物の全不揮発成分中、1質量%以上とすることが好ましく、2質量%以上とすることがより好ましく、3質量%以上とすることがさらに好ましいい。すなわち、諸性能のバランスの観点からは、バインダーの量は、導電性組成物の全不揮発成分中、好ましくは1~25質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%である。
【0036】
導電性組成物は、その他、従来のインク組成物や導電性ペーストにおける各種添加成分を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0037】
・塗膜3を設ける方法(塗膜形成工程)について
導電性組成物を基材1の表面に塗布して塗膜3を設ける方法は、特に限定されない。
導電性組成物は、基材1の表面の全体に塗布されてもよいし、基材1の表面の一部にのみ塗布されてもよい。前者の場合、ブレードコーター、エアナイフコーター、ドクターコーター、ロールコーター、バーコーター(ロッドコーター)、カーテンコーターなどの装置を用いて塗布を行うことができる。後者の場合、各種の印刷法、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、平板印刷法(オフセット印刷法)、インクジェット法など適用することができる。塗布の「パターン」を適切に設計することで、回路として働くことができる導電膜(回路パターン)や、電磁波シールド能を有するメッシュパターンなどの、パターン構造を備えた基材を製造することができる。導電性組成物を基材1の一面の一部にのみ塗布する場合、塗布の「パターン」は、最終的に得られる導電性層の用途に応じて適切に設計されることが好ましい。
所望の場所以外に導電性組成物が塗布されないように、例えば孔をくりぬいたフィルムを基材1の上に置き、その上から導電性組成物を塗布し、その後フィルムを除去するという工程を行ってもよい。
【0038】
導電性層としたときの十分な導電性を得る観点と、塗布のしやすさの観点から、塗膜3の厚み(導電性組成物が溶剤を含む場合は乾燥厚み)は、好ましくは1~80μm、より好ましくは2~40μmである。
【0039】
導電性組成物が溶剤を含む場合には、溶剤を乾燥させるための加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の条件は、溶剤が十分に乾燥する限り特に限定されないが、溶剤の十分な乾燥と、過度な加熱による導電性粒子の変質抑制の観点から、加熱処理の温度は好ましくは50~150℃、より好ましくは80~120℃である。加熱処理の時間は好ましくは1~60分、より好ましくは3~30分である。
溶剤を乾燥させるための加熱処理は、具体的には、塗膜3に対して熱風を当てることで行うことができる。もちろんこれ以外の方法で加熱処理を行ってもよい。
【0040】
また、基材1上に塗布された導電性組成物を硬化させる硬化工程を行ってもよい。硬化工程は、特に、導電性組成物が熱硬化性を有するときに好ましく行われる。硬化工程は、基材1上に塗布された導電性組成物を、例えば50~200℃、好ましくは70~180℃で、例えば1~60分、より好ましくは3~30分加熱することで行うことができる。基材1上に塗布された導電性組成物が適切に硬化することで、後掲の超音波印加工程で超音波が印加されて形成される導電性層の導電性を一層高めることができる。
【0041】
・塗膜の押圧について
超音波印加工程の前に、塗膜3を押圧する押圧工程を行ってもよい。押圧工程を行うことで、塗膜3中の導電性粒子間のすき間がより小さくなるため、その後の超音波印加工程を経ることで導電性が特に良好な導電性層を得やすい。
【0042】
押圧は、例えばロールプレス法により行うことができる。すなわち、塗膜3が設けられた基材1を、対向して回転する2本のロールの間に挟んで搬送することにより、塗膜3に圧力を加えることができる。また、押圧は平面プレス法により行ってもよい。
押圧工程を行う場合、塗膜3を、例えば2~150MPa、好ましくは5~100MPaの圧力で押圧する。
【0043】
押圧工程においては、塗膜3を加熱しながら押圧してもよい。このようにすることで、塗膜3中の導電性粒子間のすき間が一層小さくなり、超音波印加工程後に得られる導電性層の導電性が一層高まると考えられる。この場合の加熱の温度は、基材1の耐熱性などを考慮して適宜設定すればよい。加熱の温度は、70~180℃、より好ましくは80~150℃である。
【0044】
(超音波印加工程)
図2に、第1実施形態における超音波印加工程の一例を示す。
超音波印加工程では、準備された積層体に対して、超音波を印加することで、塗膜3を導電性層とする。具体的には、積層体における少なくとも塗膜3の部分に、超音波を印加する。これにより、塗膜3中の導電性粒子同士が接合する。そして、塗膜3は、導電性層となる。
【0045】
超音波印加工程においては、積層体を、超音波振動可能なホーン10と、ステージ30とで挟みながら、ホーン10から超音波を発振する。そして少なくとも塗膜3に超音波を印加する。
ここで、ホーン10における積層体(塗膜3)と接する面の算術平均粗さRaが0.001~2μmであることにより、ホーン10と積層体との間で、超音波振動による「擦れ」が発生したとしても、損傷を抑えることができる。かつ/または、ステージ30における積層体(基材1)と接する面の算術平均粗さRaが0.001~2μmであることにより、ステージ30と積層体(基材1)との間で、超音波振動による「擦れ」が発生したとしても、損傷を抑えることができる。
さらに、ホーン10における塗膜3(積層体)と接する面の最大高さRzが、塗膜の厚みの50%以下であることにより、塗膜3とホーン10との間で発生する擦れによる損傷を抑えることができる。
【0046】
基材1(積層体)と接する面のRaが0.001~2μmであること以外、ステージ30の形態は特に限定されない。ただし、積層体の位置ずれを抑制したり、積層体を搬送させやすくしたりする観点から、特に積層体がフィルム状またはシート状である場合には、ステージ30には、積層体の幅に合わせた溝、凹部、ガイドレールなどが設けられていてもよい。
ステージ30の、積層体が接する部分は、通常、平面状である。
ステージ30は、超音波に対する耐久性などを考慮し、通常、ステンレスなどの金属製である。
【0047】
量産性の観点から、超音波印加工程においては、ホーン10を積層体に接触させた状態で、積層体とホーン10とを相対運動させながら、塗膜3に超音波を印加してもよい。より具体的には、超音波印加工程は、積層体を搬送しながら行われてもよい。
超音波を用いる従来の接合技術では、主として、超音波振動子(ホーン)を、接合対象に「単純に押し当てて」いた。しかし、従来のやり方は、量産や、大面積の導電性層の形成には不向きである。第1実施形態においては、積層体とホーン10とを相対運動させながら、塗膜3に超音波を印加するようにすることにより、量産や、大面積の導電性層の形成をしやすくしている。
【0048】
積層体とホーン10とを相対運動させやすくする、具体的には積層体を搬送しながら超音波を印加しやすくするため、ホーン10は円形であり、円の中心を軸として回転可能であることが好ましい。このようなホーン10を用いることで、円形のホーン10の円周部を塗膜3に接触させつつ、ホーン10を回転させ、ホーン10の回転速度にあわせて、積層体(基材1)を搬送する、というやり方で超音波印加工程を行うことができる。このようなやり方は、量産性や、大面積の導電性層の形成を考慮したときに好ましい。また、円形で回転可能なホーン10を用いることで、積層体とホーン10との間の「擦れ」が一層低減され、積層体の損傷をより一層抑えることができる。
【0049】
ホーン10における軸は、通常、超音波振動子20と連結している。また、超音波振動子20は、通常、超音波発振器(不図示)と連結している。ただし、装置の具体的構成は、ホーン10が塗膜3(積層体)に接触した状態で、積層体とホーン10とが互いに相対運動しながら、塗膜3に超音波を可能である限り、特に限定されない。
【0050】
ホーン10に対する積層体の相対速度(積層体を搬送する場合には搬送速度に相当)は、量産性と、塗膜に十分な超音波を印加するための時間とを考慮し、適宜設定すればよい。
【0051】
超音波印加工程における超音波の周波数は、導電性粒子の接合性や、損傷を一層抑える観点などから適宜選択すればよい。超音波の周波数は、例えば10~100kHz、好ましくは12~50kHzである。
【0052】
超音波印加工程においては、超音波として、基材1の表面と平行な方向に振動する超音波を印加してもよいし、基材1の表面と垂直な方向に振動する超音波を印加してもよい。損傷をより低減する観点では、基材1の表面と平行な方向に振動する超音波を印加することが好ましい。
ここで「平行な方向」とは、厳密に平行な方向であってもよいが、必ずしも厳密に平行な方向でなくてもよい。ちなみに、もし基材1が曲面を有し、その曲面部分に塗膜3が形成され、その塗膜3の部分に超音波を印加する場合には、曲面におけるホーン10が接している点の接平面と平行な方向に振動する超音波を印加する。「垂直な方向」についても、同様に、厳密に垂直な方向であってもよいが、必ずしも厳密に垂直な方向でなくてもよい。
【0053】
特許文献1の段落0013には、超音波振動の振動方向は、硬化したインクに対して(すなわち、基材の表面に対して)垂直方向であることが好ましい旨が記載されている。しかし、本発明者らの検討の限りは、基材1の表面に対して平行な方向に振動する超音波を印加することで、損傷をいっそう低減しやすくなる。また、基材1の表面に対して平行な方向に振動する超音波を印加した場合でも、十分に導電性が高い導電性層を得ることができる。
【0054】
[第2実施形態]
(積層体の準備)
第2実施形態における積層体の準備は、第1実施形態と同様とすることができる。よって改めての説明は省略する。
【0055】
(超音波印加工程)
図3に、第2実施形態における超音波印加工程の一例を示す。
第2実施形態においては、積層体を、超音波振動可能なホーン10と、ロール40とで挟みながら、ホーン10から超音波を発振する。そして少なくとも塗膜3に超音波を印加する。つまり、第1実施形態では、積層体を、ホーン10とステージ30とで挟むが、第2実施形態では、積層体を、ホーン10とロール40とで挟む。
【0056】
ホーン10における積層体(塗膜3)と接する面の算術平均粗さRaが0.001~2μmであることにより、ホーン10と積層体との間で、超音波振動による「擦れ」が発生したとしても、損傷を抑えることができる。かつ/または、ロール40における積層体(基材1)と接する面の算術平均粗さRaが0.01~2μmであることにより、ロール40と積層体(基材1)との間で、超音波振動による「擦れ」が発生したとしても、損傷を抑えることができる。
さらに、ホーン10における塗膜3(積層体)と接する面の最大高さRzが、塗膜の厚みの50%以下であることにより、塗膜3とホーン10との間で発生する擦れによる損傷を抑えることができる。
【0057】
積層体の位置ずれを抑制したり、積層体を搬送させやすくしたりする観点から、特に積層体がフィルム状またはシート状である場合には、ロール40の表面には、積層体の幅に合わせた溝、凹部、ガイドレールなどが設けられていてもよい。
ロール40は、超音波に対する耐久性などを考慮し、通常、ステンレスなどの金属製である。
【0058】
第1実施形態におけるステージ30に替えてロール40を用いる利点としては、(i)塗膜3に「押圧力」を加えやすいこと、(ii)積層体を搬送させやすいこと、などを挙げることができる。より具体的に説明すると、(i)につては、塗膜3に対して超音波だけでなく圧力が加えられることで、得られる導電性層の導電性が一層高まると考えられる。また、(ii)については、ロール40の回転速度(およびホーン10の回転速度)にあわせて積層体を搬送することで、スムーズな搬送を実現することができる。また、第1実施形態においては積層体(基材1)を搬送すると、積層体はステージ30と擦れてしまうが、第2実施形態のようにしてロール40の回転速度(およびホーン10の回転速度)にあわせて積層体を搬送すれば、搬送による擦れが発生せず、損傷を一層低減することができる。
【0059】
<電子デバイスの製造方法>
上記のようにして製造された導電性基材を用いて、電子デバイスを製造することができる。例えば、積層体における塗膜の「パターン」を適切に設計することで、回路として働くことができる導電膜を備えた基材を製造することができる。そして、この基材と他の電子素子とを組み合わせることで電子デバイスを製造することができる。
【0060】
ここで、「電子デバイス」の例をいくつか記載するが、第1実施形態または第2実施形態の導電性基材の製造方法で得られた導電性基材を含む電子デバイスは、当然、これらのみに限定されない。
・センサー:例えば感圧センサー、バイタルセンサー等のセンサー中の、導電性部材/回路について、本実施形態の導電性基材の製造方法で得られた導電性基材を適用することができる。
・太陽電池:例えば太陽電池の集電配線について、本実施形態の導電性基材の製造方法で得られた導電性基材を適用することができる。
・メンブレンスイッチ:メンブレンスイッチとは、薄いシート状のスイッチでフィルムに回路と接点を印刷して貼り重ねたものである。これの回路や接点を形成するために、本実施形態の導電性基材の製造方法を適用することができる。
・タッチセンサー・タッチパネル:例えばタッチセンサー・タッチパネルにおける引き出し配線を形成するために、本実施形態の導電性基材の製造方法を適用することができる。また、タッチセンサー・タッチパネルにおける透明電極を形成するために、本実施形態の導電性基材の製造方法を適用することも考えられる。
・フレキシブル基材:従来は、まず可撓性フィルムの全面に金属膜をコーティングし、その後、薬剤を使って金属膜の不要な部分を取り除くことで回路を形成している。このような従来の方法の代わりに、本実施形態の導電性基材の製造方法で回路を形成することが考えられる。
【0061】
特に、従来は導電ペーストを用いて回路を形成していた電子デバイスにおいて、回路形成を本実施形態の導電性基材の製造方法を利用することで、回路の比抵抗が小さくなり、電子デバイスの性能向上を期待することができる。
【0062】
とりわけ好ましい電子デバイスとしては、RFタグを挙げることができる。すなわち、RFタグにおけるアンテナ部等の導電回路を製造するために、本実施形態の導電性基材の製造方法は好ましく用いられる。
RFタグの具体的構造については、例えば特開2003-332714号公報、特開2020-46834号公報などを参考にすることができる。
【0063】
<電磁波シールドフィルムの製造方法>
電子デバイスとは別の応用として、上記の導電性基材の製造方法により、電磁波シールドフィルムを製造することが考えられる。具体的には、塗膜のパターンを、電磁波シールドフィルム特有のパターンとすることで、電磁波シールドフィルムを製造することができる。
【0064】
<面状発熱体の製造方法>
さらに別の応用として、上記の導電性基材の製造方法により、面状発熱体を製造することが考えられる。面状発熱体とは、基材上に電気配線が設けられ、その配線に電流を流すことで発熱するもののことをいう。面状発熱体の具体例としては、例えば乗用車のリアガラスなど、防曇や防寒のための面状発熱体を挙げることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0066】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0067】
<導電性組成物の調製>
銅粒子(福田金属箔粉工業製、品番:EFC-09LML、メジアン径D50:1.37μm)70質量部と、ポリビニルブチラール系樹脂(積水化学工業社製「S-LEC BH-A」)10質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート20質量部とを、遊星式攪拌機を用いて攪拌した。これにより均一なペースト状の導電性組成物Aを得た。
【0068】
また、銀粒子(福田金属箔粉工業製、品番:Ag-HWQ、グレード:1.5μm,メジアン径D50=1.70μm)70質量部と、ポリビニルブチラール系樹脂(積水化学工業社製「S-LEC BH-A」)10質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート20質量部とを、遊星式攪拌機を用いて攪拌した。これにより均一なペースト状の導電性組成物Bを得た。
【0069】
<導電性基材の製造>
(塗膜形成工程)
それぞれの導電性組成物を用いて、厚さ75μmのPETフィルム上に、15mm×5mmの大きさの塗膜(ベタ膜)を形成した。具体的には、PETフィルム上にセロテープ(登録商標)を貼って15mm×5mmの大きさの「くりぬき部」を設け、そのくりぬき部の上から導電性組成物を塗布した。その後、スキージーを用いて、塗膜の厚みをセロテープの厚みとほぼ同じとした。さらにその後、セロテープを剥がした。このときの塗膜の厚みは20μm程度であった。
塗膜を形成したフィルムを、熱風循環式大気オーブンに入れ、100℃で15分間加熱した。これにより溶剤を乾燥させた。
【0070】
(押圧工程)
塗膜形成工程で溶剤を乾燥させた後のフィルムを、荷重調節式のロールプレス機(テスター産業製、ロールプレス機(SA-602)で加圧・加熱処理した。ロール温度は100℃、圧力は10MPa、搬送速度は0.1m/分に調整した。膜厚は、12μmだった。
【0071】
(超音波印加工程)
概略としては、図2に示したような装置構成により、塗膜に超音波を印加した。具体的には以下の通りである。
【0072】
・装置
超音波発振器としては、日本アビオニクス社製SW-D900S-20(周波数20kHz)または日本アビオニクス社製SW-D900S-39(周波数39kHz)を用いた。
ホーンとしては、SUS(ステンレス)材質の、厚さ12mm、直径150mmの円板が、円板の中心に取り付けられた直径20mmの軸で振動子に接続されているものを用いた。実施例および比較例用に、円板外周(塗膜に接する部分)の表面性状が異なる複数のホーンを準備した。
ステージとしては、SUS(ステンレス)材質で、平坦面を有するものを用いた。実施例および比較例用に、平坦面(基材に接する部分)の表面性状が異なる複数のステージを準備した。
【0073】
・超音波印加の具体的手順
概略としては図2に示すような装置を構成して、塗膜に超音波を印加した。
具体的には、ホーンの円板平面が地面に対して実質的に垂直にセットされ、円板外周の厚さ12mmの面が、フィルム上の塗膜に接し、フィルムの搬送にあわせてホーンが回転する装置を用いた。
ホーンからは、超音波振動子に接続されている軸方向に振動する超音波が発振された。すなわち、超音波の振動方向は、フィルム(基材)の表面と平行な方向であって、かつ、搬送方向に対して垂直な方向であった。周波数については20kHzとした。
フィルムの搬送速度は約5m/min、ホーンの回転速度は約42rpmとした。
各実施例および比較例において、ホーンとステージについては、後掲の表に示される表面粗さのものを用いた。
【0074】
<評価>
(導電性層の損傷)
導電性層が損傷を受けると、光沢性に変化が生じる。よって、導電性層の損傷の程度を、目視により、以下の基準で評価した。
・全面に光沢がある(損傷が十分に抑えられている)
・一部に光沢がある(損傷が抑えられている)
・全面に光沢のむらがある(損傷が抑えられていない)
【0075】
また、導電性層が損傷を受けると、クラックが生じる場合がある。よって、クラックの有無についても目視で評価した。
【0076】
(基材の損傷)
基材表面における塗膜が形成されていない部分については、超音波による損傷で基材(PETフィルム)の透明性が悪くなる場合がある。よって、基材(PETフィルム)表面において、塗膜は形成されていないが超音波は印加された部分を目視で観察し、以下の基準で評価した。
・基材がほぼ透明であった場合:とても良い
・やや白色になったが、透明性が維持されていた場合:良い
・全く透明性が失われた場合:悪い
【0077】
(導電性)
得られた導電性層について、4端子抵抗測定器で抵抗値を測定し、また、膜厚計で膜厚を測定した。測定された抵抗値および膜厚から、比抵抗を算出した。
【0078】
評価結果を含む各種情報をまとめて下表に示す。表中、指数表記を記号「E」で表している。例えば2.0E-03とは2.0×10-3を意味する。
【0079】
【表1】
【0080】
評価結果が示すとおり、ホーンにおける塗膜と接する面や、ステージまたはロールにおける基材と接する面の「粗さ」に着目して、製造方法・製造装置に適切な工夫を施すことにより、基材や導電性層の損傷を抑えつつ、導電性が良好な導電性層を備える導電性基材を製造することができた。
【0081】
この出願は、2022年9月26日に出願された日本出願特願2022-152640号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0082】
1 基材
3 塗膜
10 ホーン
20 超音波振動子
30 ステージ
40 ロール
図1
図2
図3