(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004757
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104564
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】増田 心一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EB40
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC13
2C056FA13
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】不良記録素子を有する画像処理装置であっても、可能な限り本来の位置にインク滴を着弾させることで、ドットを形成する白スジのない、または目立たない印刷画像を得る。
【解決手段】画像データを印刷機に入力する画像入力部21と、インクジェットヘッドのインクを吐出しないノズル位置が記録された記憶部40と、不良記録素子が画像内においてドット形成をおこなう量に関する少なくとも一つの評価値を算出する評価値算出部25と、評価値に基づいて給紙向きを決定する給紙向き決定部26とを備え、決定部26が決定した結果に応じた給紙方向で、印刷実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを印刷機に入力する画像入力部と、
インクジェットヘッドのインクを吐出しないノズル位置が記録された不良記録素子情報記憶部と、
前記不良記録素子が画像内においてドット形成をおこなう量に関する少なくとも一つの評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて給紙向きを決定する給紙向き決定部と、を備え、
前記決定部が決定した結果に応じた給紙方向で、印刷実行する
ことを特徴とした画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に係り、特に、白スジのない、または目立たない印刷画像を生成する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データに基づいて、搬送される用紙に対してインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して印刷を行うライン型のインクジェット装置が良く知られている。
【0003】
このライン型のインクジェット装置において不良ノズルが存在すると、そのノズルからインク滴が吐出されない、または吐出されてもずれた位置にインク滴が着弾してしまい、印刷画像に白スジが発生してしまう。
【0004】
特許文献1には、ラインヘッドプリンターの印刷画像に現れるスジを目立ちにくくするような給紙向きで印刷する技術が開示されている。具体的には、画像の天地方向(縦方向)にわたるスジよりも横方向のスジの方が目の感度が鈍いことを利用し、画像縦方向の幅がヘッド幅より小さければ、ヘッドと画像縦方向が平行となるような給紙向きで印刷を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のラインヘッドプリンターでは、画像のサイズだけで給紙向きを決めているので、画像パターンと不良記録素子(不良ノズル)位置によっては白スジがより目立つ給紙向きとして印刷してしまう場合がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、白スジのない、または目立たない印刷画像を得ることができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像処理装置の特徴は、
画像データを印刷機に入力する画像入力部と、
インクジェットヘッドのインクを吐出しないノズル位置が記録された不良記録素子情報記憶部と、
前記不良記録素子が画像内においてドット形成をおこなう量に関する少なくとも一つの評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて給紙向きを決定する給紙向き決定部と、を備え、
前記決定部が決定した結果に応じた給紙方向で、印刷実行する
ことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像処理装置の特徴によれば、白スジのない、または目立たない印刷画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のデータ処理部の処理内容を説明した説明図である。(a)は、入力画像の一例を示しており、(b)は、不良ノズルがあった場合における印刷の仕上がりの一例を示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のデータ処理部の処理内容を説明した説明図である。(a)は、入力画像の一例を示しており、(b)は、不良ノズルがあった場合における印刷の仕上がりの一例を示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の評価値算出部により算出された評価値の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。本図に示すように、画像処理装置1は、画像生成部10と、データ処理部20と、インクジェットヘッド制御部30と、記憶部40とを備えている。
【0014】
画像生成部10は、アプリケーションソフトウェアなどを用いて入力画像を生成する。
【0015】
データ処理部20は、画像生成部10により生成された入力画像に基づいて、白スジのない、または目立たない出力画像(印刷画像)を生成する。
【0016】
インクジェットヘッド制御部30は、データ処理部20から出力された出力画像(印刷画像)に基づいて、搬送される用紙に対して図示しないインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させることにより印刷を行う。インクジェットヘッドのノズルの中には、ノズル孔の閉塞などが発生した不良ノズル(不良記録素子)が含まれる場合がある。
【0017】
データ処理部20は、画像入力部21と、ラスタライズ処理部22と、色変換部23と、ハーフトーン処理部24と、評価値算出部25と、給紙向き決定部26とを備える。
【0018】
画像入力部21は、画像生成部10により生成された入力画像を受信する。
【0019】
ラスタライズ処理部22は、受信した入力画像からラスタ画像データを生成する。
【0020】
色変換部23は、ラスタライズ処理部22により生成されたRGBで構成されるラスタ画像データを記録要素色で構成される画像に変換する。
【0021】
ハーフトーン処理部24は、色変換部23により色変換された画像データに対してグレースケールを表現するように、ハーフトーン処理を実行する。
【0022】
評価値算出部25は、不良ノズル(不良記録素子)が印刷画像内においてドット形成をおこなう量に関する少なくとも一つの評価値を算出する。
【0023】
給紙向き決定部26は、評価値算出部25により算出された評価値に基づいて給紙向きを決定する。
【0024】
記憶部40は、予めノズルチェックチャートなどにより測定された不良ノズル(不良記録素子)の位置を示す不良ノズル情報を記憶している。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のデータ処理部20の処理内容を説明した説明図である。
【0026】
図2(a)は、入力画像の一例を示しており、
図2(b)は、不良ノズルがあった場合における印刷の仕上がりの一例を示した図である。
【0027】
図2(a)に示す画像D101は大ドットのベタ画像であり、画像D102~D104は、小ドットのベタ画像である。
【0028】
図2(b)では、説明のため、搬送される用紙に対するインクジェットヘッドのノズルの位置関係をインクジェットヘッド位置P101,P102として示している。インクジェットヘッド位置P101は、用紙の長辺PLと平行となる方向(長辺方向)に用紙を搬送した場合のインクジェットヘッドの位置を示しており、インクジェットヘッド位置P102は、用紙の短辺PSと平行となる方向(短辺方向)に用紙を搬送した場合のインクジェットヘッドの位置を示している。N1は、不良ノズルの位置を示している。
【0029】
図2(b)に示すように、長辺方向に用紙を搬送した場合、不良ノズルN1に対応する白スジラインL1が形成され、印刷画像D202~D204に白スジが発生することになる。
【0030】
一方、短辺方向に用紙を搬送した場合、不良ノズルN1に対応する白スジラインL2が形成されるものの、この白スジラインL2上には、印刷画像D201~D204のいずれも存在しないので、印刷画像に白スジは発生しない。
【0031】
そのため、データ処理部20は、例えば、図示しない操作パネルなどに、短辺方向に搬送できるよう給紙向きを通知する。または、データ処理部20は、その方向に給紙済の給紙トレイを自動で切り替え、印刷を実行する。これにより、不良ノズルN1が存在しても白スジのない印刷画像を得ることができる。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のデータ処理部20の処理内容を説明した説明図である。
【0033】
図3(a)は、入力画像の一例を示しており、
図3(b)は、不良ノズルがあった場合における印刷の仕上がりの一例を示した図である。
【0034】
図3(a)に示す画像D105は大ドットのベタ画像であり、画像D102~D104は、小ドットのベタ画像であり、
図2(a)に示した画像D102~D104と同一である。
【0035】
図3(b)では、
図2(b)と同様に、説明のため、搬送される用紙に対するインクジェットヘッドのノズルの位置関係をインクジェットヘッド位置P101,P102として示している。インクジェットヘッド位置P101は、用紙の長辺PLと平行となる方向(長辺方向)に用紙を搬送した場合のインクジェットヘッドの位置を示しており、インクジェットヘッド位置P102は、用紙の短辺PSと平行となる方向(短辺方向)に用紙を搬送した場合のインクジェットヘッドの位置を示している。N1は、不良ノズルの位置を示している。
【0036】
図3(b)に示すように、長辺方向に用紙を搬送した場合、不良ノズルN1に対応する白スジラインL1が形成され、印刷画像D202~D204に白スジが発生することになる。
【0037】
また、短辺方向に用紙を搬送した場合、不良ノズルN1に対応する白スジラインL2が形成され、印刷画像D205に白スジが発生することになる。
【0038】
この場合、評価値算出部25は、不良ノズル(不良記録素子)が印刷画像内においてドット形成をおこなう量に関する少なくとも1つの評価値を算出する。ここでは、評価値算出部25は、評価値S1および評価値S2を下記のとおり算出する。
【0039】
評価値S1=不良ノズルがドット形成を担当する全画素数
評価値S2=不良ノズルがドット形成を担当する画素に小ドット/大ドットの重みを課し、全画素にわたって合計した値
評価値S1は画像全体の白スジが発生する広さに関係し、評価値S2はドットの大きさを考慮した局所的なドット抜けの目立ちやすさに関係する。いずれの評価値も、小さいほど白スジは目立ちにくい。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の評価値算出部25により算出された評価値S1および評価値S2の一例である。
【0041】
図4に示した短辺方向に搬送した場合の評価値S2は、大ドットの重みづけ係数に、大ドットの画素数を乗算することにより算出される。
【0042】
例えば、小/大ドットの重み係数は、小ドットを「3」(ドット)とし、大ドットを「8」(ドット)とし、大ドットの画素数を「1,100」(画素)とすると、短辺方向に搬送した場合の評価値S2は、「8,800」と算出されている。
【0043】
なお、小/大ドットの重み係数は、例えば各サイズのドット1つあたりのインク重量でも良いし、白スジの目立ちやすさの目視評価結果と整合のとれるような実験値ベースの値としても良い。
【0044】
給紙向き決定部26は、評価値算出部25により算出された評価値S1または評価値S2に基づいて給紙向きを決定する。
【0045】
例えば、長辺方向と短辺方向のうち、評価値S1および評価値S2の小さい搬送方向がある場合、当該方向を適切な搬送方向として操作パネルなどに表示することによりユーザーに推奨する(以下、手段Aという)。
【0046】
または、長辺方向と短辺方向のうち、いずれの搬送方向も評価値S1と評価値S2の一方は小さいが、他方は大きい場合、各搬送方向で印刷した際の白ぬけ具合のプレビュー画像を操作パネルなどに表示することにより、ユーザーに選択を促す(以下、手段Bという)。
【0047】
図4に示した評価値S1,S2の場合、評価値S1,S2ともに短辺方向の方が小さいため、給紙向き決定部26は、手段Aに該当すると判定し、短辺方向での搬送を操作パネルなどに表示することによりユーザーに推奨する。ユーザーが短辺方向に搬送できるよう給紙を行う、または、その方向に給紙済の給紙トレイを自動で切り替え、印刷を実行することで、不良ノズルが存在しても白スジの目立たない印刷画像を得ることができる。
【0048】
なお、手段Aの場合でも、評価値S1と評価値S2との搬送方向間の差が所定の閾値Thよりも小さい場合(評価値が接戦の場合)には、評価値S1と評価値S2に基づく適切な搬送方向を操作パネルなどに表示することによりユーザーに推奨したうえで、手段Bのように各搬送方向で印刷した際の白スジ具合のプレビュー画面を操作パネルなどに表示してユーザーに選択を促すようにしてもよい。
【0049】
また、給紙向き決定部26は、手段Bに該当すると判定した場合、印刷開始時に都度、操作パネルに表示されたプレビュー画像に応じてユーザーが搬送方向を選択しても良いし、評価値S1、評価値S2のどちらかが小さくなる搬送方向を推奨方向として固定して通知させるよう、ユーザーがあらかじめ設定しても良い。
【0050】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0051】
(付記1)
画像データを印刷機に入力する画像入力部と、
インクジェットヘッドのインクを吐出しないノズル位置が記録された不良記録素子情報記憶部と、
前記不良記録素子が画像内においてドット形成をおこなう量に関する少なくとも一つの評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて給紙向きを決定する給紙向き決定部と、を備え、
前記決定部が決定した結果に応じた給紙方向で、印刷実行する
ことを特徴とした画像形成装置。
【0052】
これにより、不良記録素子を有する画像処理装置であっても、可能な限り本来の位置にインク滴を着弾させることで、ドットを形成する白スジのない、または目立たない印刷画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 画像処理装置
10 画像生成部
20 データ処理部
21 画像入力部
22 ラスタライズ処理部
23 色変換部
24 ハーフトーン処理部
25 評価値算出部
26 給紙向き決定部
30 インクジェットヘッド制御部
40 記憶部(不良記録素子情報記憶部)