(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047573
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】転圧ローラ
(51)【国際特許分類】
E01C 19/28 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
E01C19/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023158464
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】17/952,579
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AD13
2D052AD16
2D052BB01
(57)【要約】
【課題】転圧動作時に生じるバッテリの上下方向の揺れを低減しつつ、挿抜操作時のユーザ負荷を低減する。
【解決手段】転圧ローラであって、第1の軸の周りに回転する第1のローラと、第2の軸の周りに回転する第2のローラと、前記第1のローラ及び前記第2のローラの少なくとも一方に駆動力を供給する駆動部と、前記駆動部に電源を供給するためのバッテリを収納する収納部と、を備え、前記収納部は、前記第1の軸と前記第2の軸とを通る平面に対して平行な方向に前記バッテリを挿抜可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧ローラであって、
第1の軸の周りに回転する第1のローラと、
第2の軸の周りに回転する第2のローラと、
前記第1のローラ及び前記第2のローラの少なくとも一方に駆動力を供給する駆動部と、
前記駆動部に電力を供給するためのバッテリを収納する収納部と、を備え、
前記収納部は、前記第1の軸と前記第2の軸とを通る平面に対して平行な方向に前記バッテリを挿抜可能であることを特徴とする転圧ローラ。
【請求項2】
前記バッテリの端子部と、前記バッテリの端子部と電気的に接続する前記収納部の端子部との接続方向が、前記平面に対して平行な方向である、請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項3】
前記収納部は、前記平面に対して平行な方向であり且つ前記第1の軸又は前記第2の軸に垂直な方向に、前記バッテリを挿抜可能であることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項4】
前記バッテリの端子部と、前記バッテリの端子部に電気的に接続する前記収納部の端子部との接続位置は、前記第1の軸を通り前記転圧ローラの車体上下方向に延びる第1の平面と、前記第2の軸を通り前記転圧ローラの車体上下方向に延びる第2の平面との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項5】
前記収納部は、複数のバッテリを収納可能であり、
前記収納部は、前記平面に対して平行な方向に前記複数のバッテリを並べて収納可能であることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項6】
前記収納部は、前記転圧ローラの筐体内部の空間のうち上半分の空間内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項7】
前記駆動部の上端は、前記収納部の端子部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項8】
前記収納部は、前記バッテリの長手方向が、前記第1の軸と前記第2の軸とを通る前記平面に対して平行な方向になるように、前記バッテリを挿抜可能であることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項9】
前記収納部に前記バッテリが収納された状態で前記バッテリをロックするためのロック機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舗装道路の仕上げあるいは地固めに用いられる機械として、例えば特許文献1に示すように路面を転圧する転圧ローラが知られている。特許文献1は、車体の上下方向に挿抜可能なバッテリを備えるローラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、転圧動作時にバッテリの上下方向の揺れに起因して電気系統に不備が生じる可能性がある。また、挿抜操作の実行時に重量のあるバッテリを上下方向に移動させる必要があり、ユーザ負荷が大きい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、転圧動作時に生じるバッテリの上下方向の揺れを低減しつつ、挿抜操作時のユーザ負荷を低減するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の一態様による転圧ローラは、
第1の軸の周りに回転する第1のローラと、
第2の軸の周りに回転する第2のローラと、
前記第1のローラ及び前記第2のローラの少なくとも一方に駆動力を供給する駆動部と、
前記駆動部に電源を供給するためのバッテリを収納する収納部と、を備え、
前記収納部は、前記第1の軸と前記第2の軸とを通る平面に対して平行な方向に前記バッテリを挿抜可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重量のあるバッテリが路面と平行又は略平行に挿入されるため、転圧動作時に生じるバッテリの上下方向の揺れを低減することが可能となる。また、重量のあるバッテリを収納部(バッテリケース)で受けながら挿抜操作を行うことができるため、挿抜操作時のユーザ負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る転圧ローラの側面図である。
【
図2】一実施形態に係る転圧ローラの外観図である。
【
図3】一実施形態に係る転圧ローラを上方から観察した図である。
【
図5】変形例に係る転圧ローラを上方から観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1乃至
図4を参照して、一実施形態に係る転圧ローラの構成を説明する。図面中の上下方向、左右方向、前後方向とは、転圧ローラの車体に対して規定された方向を示している。転圧ローラ10は、第1の軸101の周りに回転する第1のローラ102と、第2の軸103の周りに回転する第2のローラ104とを備える。第1の軸101及び第2の軸103は、車体左右方向に延びる互いに平行な軸である。ユーザは、把持部107を把持して転圧ローラ10を操作しながら、路面、地面等の転圧動作を行うことができる。
【0011】
また、転圧ローラ10は、第1のローラ102及び第2のローラ104の少なくとも一方に駆動力を供給する駆動部105を備える。駆動部105は、例えば電動モータである。そして、転圧ローラ10は、駆動部105に電力を供給するためのバッテリ20を収納する収納部106を備える。収納部106は、1つのバッテリ20を収納可能に構成されてもよいし、複数のバッテリ20を収納可能に構成されてもよい。
図2に示す例では、収納部106は、第1の軸101と第2の軸102とを通る平面30と平行な方向に複数のバッテリ20を並べて収納可能である。これにより、車体上下方向に複数のバッテリ20を並べて(重ねて)収納する場合と比較して車体の重心位置を低くすることができるため、転圧動作時に生じる揺れに対して車体の挙動を安定させることが可能となる。
【0012】
図1に示すように、収納部106は、転圧ローラ10の筐体内部の空間111、112のうち上半分の空間111内に配置されている。すなわち、収納部106は、線110よりも車体上方に配置される。これにより、挿抜操作を行う際にユーザがかがむ必要がなくなるため、挿抜操作を容易に行うことが可能となる。
【0013】
図1及び
図4に示すように、バッテリ20は、モバイルバッテリであり、収納部106の端子部1061と電気的に接続するための端子部201と、ユーザが把持するための把持部202とを備えている。ユーザは、双方向矢印40の方向に沿ってバッテリ20を収納部106に対して挿抜可能である。バッテリ20の長手方向が挿抜方向に沿った方向である。これにより、バッテリの長手方向が路面と平行又は略平行になるようにバッテリが挿入されるため、車体上下方向の揺れに対して挙動を安定化させることができる。バッテリ20の短手方向(すなわち矢印40に垂直な方向)にバッテリ20を挿抜する場合、重心位置が高くなり、揺れに対して車体が安定しにくいが、本実施形態の構成によれば、車体の安定性を向上させることが可能となる。
【0014】
収納部106は、第1の軸101と第2の軸102とを通る平面30に対して平行な方向にバッテリ20を挿抜可能である。平面30は、路面と平行又は略平行な平面である。バッテリ20の端子部201と、バッテリ20の端子部201と電気的に接続する収納部106の端子部1061との接続方向は、平面30に対して平行な方向となるように構成される。転圧時の揺れの方向(鉛直方向)に対して端子部の接続方向が垂直となるため、端子部の接続箇所のズレが生じにくくなり、端子部同士が離間しにくくなる。より具体的には、車体上下方向にバッテリ20が挿入されるような構造では、転圧時に生じる上下方向の揺れによってバッテリ20の端子部201が上方に移動して収納部106の端子部1061から離間する方向に力がかかるため、端子部同士が離間して電気的に切断され得るため故障の原因になり得る。一方、本実施形態の構造によれば、収納部106の端子部1061に対してバッテリ20の端子部201が接しながら上下方向に移動することになるが、接触した状態を維持することが可能となる。
【0015】
図1の例では車体前方から車体後方に向かう方向にバッテリ20を挿入可能に構成されているが、図示の例には限定されない。例えば、車体後方から車体前方に向かう方向にバッテリ20を挿入可能に構成されてもよい。このように、平面30に対して平行な方向であり且つ第1の軸101又は第2の軸103に垂直な方向に(車体前後方向に)、バッテリ20を挿抜可能に構成してもよい。
【0016】
これにより、平面30に対して平行な方向であり且つ第1の軸101又は第2の軸103に平行な方向に(車体左右方向に)バッテリ20を挿抜するような構成と比較して、転圧時に路面の凸凹により車体が左右方向に傾く際に、バッテリ20と収納部106との端子部同士の接続箇所にかかる負荷を低減することができる。よって、故障の発生を抑制することができる。
【0017】
また、
図2に示すように、蓋部151はヒンジ部150を介して開閉可能であり、蓋部151を開放した状態で、収納部106はバッテリ20を車体前方から後方に向かう方向に収納可能である。バッテリ20を収納部106に収納した後にロック機構(不図示)によりバッテリ20が車体前後方向に移動しないように固定してもよい。ロック機構(不図示)によりバッテリ20の位置を固定した後に蓋部151を閉鎖する。ロック機構は、収納部106にバッテリ20を収納した状態で、収納部106の入口部分を覆うように設けられた、蓋部151とは別の蓋部であってもよい。
【0018】
収納部1061の端子部1061は駆動部105と電気的にケーブル等で接続されている。
図1の例では、駆動部105の上端1051は、収納部106の端子部1061よりも下方に位置するように駆動部105が配置されている。これにより、重量のある駆動部105の位置が車体下方になるため、転圧ローラ10の車体の低重心化を実現することができ、転圧時の揺れに対して車体の挙動を安定化させることができる。
【0019】
また、
図1及び
図3に示すように、バッテリ20の端子部201と、収納部106の端子部1061との接続位置は、第1の軸101を通り転圧ローラ10の車体上下方向に延びる第1の平面50と、第2の軸103を通り転圧ローラ10の車体上下方向に延びる第2の平面60との間に位置するように構成される。すなわち、端子部同士の接続箇所が車体中央に近い位置になるように構成する。これにより、転圧時に振動の影響を受けにくい位置に接続箇所が配置されるため、接続箇所の振動を軽減することが可能となる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態によれば、重量のあるバッテリが路面と平行又は略平行に挿入されるため、転圧動作時に生じるバッテリの上下方向の揺れを低減することが可能となる。また、重量のあるバッテリを収納部(バッテリケース)で受けながら挿抜操作を行うことができるため、挿抜操作時のユーザ負荷を低減することができる。
【0021】
[変形例]
上述の実施形態では、バッテリ20を車体前後方向に挿抜可能な構成を説明したが、この例に限定されない。
図5に示すように、例えば車体左側方から車体中心に向かう方向(かつ平面30に平行な方向)にバッテリ20を挿抜可能に構成してもよい。同様に、車体右側方から車体中心に向かう方向(かつ平面30に平行な方向)にバッテリ20を挿抜可能に構成してもよい。あるいは、複数(例えば2つ)のバッテリ20を収納する場合に、車体左側方から車体中心に向かう方向(かつ平面30に平行な方向)に1つのバッテリ20を挿抜可能に構成し、車体右側方から車体中心に向かう方向(かつ平面30に平行な方向)にもう1つのバッテリ20を挿抜可能に構成してもよい。
【0022】
<実施形態のまとめ>
第1の態様による転圧ローラ(10)は、
第1の軸(101)の周りに回転する第1のローラ(102)と、
第2の軸(103)の周りに回転する第2のローラ(104)と、
前記第1のローラ及び前記第2のローラの少なくとも一方に駆動力を供給する駆動部と、
前記駆動部に電力を供給するためのバッテリ(20)を収納する収納部(106)と、を備え、
前記収納部は、前記第1の軸と前記第2の軸とを通る平面(30)に対して平行な方向に前記バッテリを挿抜可能である。
【0023】
これにより、重量のあるバッテリが路面と平行又は略平行に挿入されるため、転圧動作時に生じるバッテリの上下方向の揺れを低減することが可能となる。また、重量のあるバッテリを収納部(バッテリケース)で受けながら挿抜操作を行うことができるため、挿抜操作時のユーザ負荷を低減することができる。例えば、上方から下方に向かってバッテリ20を収納する場合、転圧ローラの車体上面よりもさらに高い位置までバッテリ20を持ち上げて収納する必要があるためユーザの負荷が大きくなるが、横方向から収納する場合は高い位置まで持ち上げる必要がなくなるため、挿抜操作が容易となる。
【0024】
第2の態様による転圧ローラでは、
前記バッテリの端子部(201)と、前記バッテリの端子部と電気的に接続する前記収納部の端子部(1061)との接続方向が、前記平面に対して平行な方向である。
【0025】
これにより、転圧時の揺れの方向(鉛直方向)に対して端子部の接続方向が垂直となるため、端子部の接続箇所のズレが生じにくくなり、端子部同士が離間しにくくなる。
【0026】
第3の態様による転圧ローラでは、
前記収納部は、前記平面に対して平行な方向であり且つ前記第1の軸又は前記第2の軸に垂直な方向に(例えば、車体前後方向に)、前記バッテリを挿抜可能である。
【0027】
これにより、ローラの軸と平行な方向(車体左右方向)にバッテリを挿抜するような構成と比較して、転圧時に路面の凸凹により車体が左右方向に傾く際に、バッテリと収納部との端子部同士の接続箇所にかかる負荷を低減することができる。
【0028】
第4の態様による転圧ローラでは、
前記バッテリの端子部(201)と、前記バッテリの端子部に電気的に接続する前記収納部の端子部(1061)との接続位置は、前記第1の軸を通り前記転圧ローラの車体上下方向に延びる第1の平面(50)と、前記第2の軸を通り前記転圧ローラの車体上下方向に延びる第2の平面(60)との間に位置する。
【0029】
これにより、端子部の接続箇所を車体中心に近づけることができるため、接続箇所の振動を軽減することが可能となる。
【0030】
第5の態様による転圧ローラでは、
前記収納部は、複数のバッテリを収納可能であり(
図2、
図3、
図5)、
前記収納部は、前記平面に対して平行な方向に前記複数のバッテリを並べて収納可能である。
【0031】
これにより、車体上下方向に並べて収納する場合と比較して重心位置を低くすることができるため、転圧動作時に生じる揺れに対して車体の挙動を安定させることが可能となる。
【0032】
第6の態様による転圧ローラでは、
前記収納部は、前記転圧ローラの筐体内部の空間(111、112)のうち上半分の空間(111)内に配置される。
【0033】
これにより、挿抜操作を行う際にユーザがかがむ必要がなく、挿抜操作を容易に行うことが可能となる。
【0034】
第7の態様による転圧ローラでは、
前記駆動部の上端(1051)は、前記収納部の端子部(1061)よりも下方に位置する。
【0035】
これにより、重量のある駆動部の位置が車体下方になるため、車体の低重心化を実現することができ、転圧時の揺れに対して車体の挙動を安定化させることができる。
【0036】
第8の態様による転圧ローラでは、
前記収納部は、前記バッテリの長手方向が、前記第1の軸と前記第2の軸とを通る前記平面(30)に対して平行な方向になるように、前記バッテリを挿抜可能である。
【0037】
これにより、バッテリの長手方向が路面と平行又は略平行になるようにバッテリが挿入されるため、車体上下方向の揺れに対して挙動を安定化させることができる。
【0038】
第9の態様による転圧ローラでは、
前記収納部に前記バッテリが収納された状態で前記バッテリをロックするためのロック機構をさらに備える。
【0039】
これにより、転圧動作時の揺れに起因するバッテリの動きを抑制することができる。
【0040】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
10:転圧ローラ、102:第1のローラ、104:第2のローラ、105:駆動部、106:収納部、20:バッテリ