(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047579
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】把持器具、トレー、ならびに当該把持器具を利用するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240329BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240329BHJP
G01N 25/20 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G01N1/00 101B
B25J15/08 L
G01N25/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023161641
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】22197863
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22197861
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】00128/23
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】サムエル・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ルネ・ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】レト・クロパス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マイヤー
【テーマコード(参考)】
2G040
2G052
3C707
【Fターム(参考)】
2G040AB05
2G040AB12
2G040FA03
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA02
2G052BA25
2G052CA04
2G052CA45
2G052CA48
2G052DA12
2G052DA22
2G052DA26
2G052EB11
2G052GA20
2G052HA12
2G052HA19
2G052HB04
2G052HC02
2G052HC04
2G052HC15
2G052HC32
2G052HC42
2G052JA06
2G052JA07
2G052JA09
2G052JA27
3C707AS01
3C707ES05
3C707ES15
3C707EU14
3C707HS27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基部部材と、プランジャアクチュエータと、プランジャと、を備える把持装置が開示される。
【解決手段】把持装置1が、基部部材11に解除可能に取り付けられて基部部材11から遠位側に延在するヘッド組立体20をさらに備える。ヘッド組立体20が、キャリア21および少なくとも2つの把持脚部24を備える。キャリアが、そこを通してプランジャ30を受けるように構成および配置された貫通開口部を有する。把持脚部24の作動部分が、プランジャ30が延伸遠位位置にあるときに、プランジャ30に接触するように構成される。把持脚部の固定部分がヘッド組立体20のキャリア21に堅固に設置される。把持脚部の作動部分および先端部分がヘッド組立体のキャリア21の遠位側に配置され、把持脚部24が、プランジャ30から把持脚部に力が伝達されないときに、把持脚部の先端部分を把持装置の近位-遠位方向に収束させるように、配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部部材(11)と、プランジャアクチュエータ(31)と、プランジャ(30)と、を備える把持装置(1)であって、前記把持装置が、前記基部部材(11)に解除可能に取り付けられて前記基部部材(11)から遠位側に延在するヘッド組立体(20)をさらに備え、
前記プランジャアクチュエータ(31)が、前記把持装置の近位-遠位軸(2)に沿って前記プランジャ(30)を移動させるように配置および構成され、
前記ヘッド組立体(20)が、キャリア(21)および少なくとも2つのいくつかの把持脚部(24)を備え、前記キャリア(21)が、そこを通して前記プランジャ(30)を受けるように構成および配置された、前記近位-遠位軸(2)に沿って延在する貫通開口部を有し、
前記把持脚部(24)が、各々、固定部分(201)、前記固定部分の遠位側にある先端部分(204)、前記先端部分に近位側で隣接する作動部分(203)、および、前記作動部分(203)と前記固定部分(201)との間に画定された湾曲部分(202)を備え、前記把持脚部の前記作動部分(203)は、少なくとも前記プランジャが延伸遠位位置にあるときに、前記プランジャ(30)に接触するように構成され、
前記把持脚部の前記固定部分(201)が前記ヘッド組立体(20)の前記キャリア(21)に堅固に設置され、前記把持脚部の少なくとも前記作動部分(203)および前記先端部分(204)が前記ヘッド組立体の前記キャリア(21)の遠位側に配置され、前記把持脚部が、前記プランジャから前記把持脚部に力が伝達されないときに、前記把持脚部の前記先端部分(204)を前記把持装置の近位-遠位方向に収束させるように、配置される、
把持装置(1)。
【請求項2】
前記プランジャ(30)が、前記把持脚部の前記作動部分に接触することを意図された接触部分(301)を備え、前記接触部分(301)が、前記プランジャの遠位端(303)に向かって先細になっている先細部分(302)を備え、前記接触部分の少なくとも近位端が、前記プランジャから前記把持脚部に力が伝達されないときに前記把持脚部の前記作動部分(203)によって囲まれる通路のクリアランスより大きい断面寸法を有する、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記プランジャの遠位端(303)が尖頭である、請求項1または2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記把持脚部の前記先端部分(204)が、最も遠位側の先端部分(207)において、前記把持装置の中心から離れる方向に角度を付けられており、それにより、少なくとも、前記プランジャから前記把持脚部に力が伝達されないときに前記把持脚部のより近位側の部分よりも小さい程度で前記近位-遠位方向において収束するようになる、請求項1から3のいずれか一項に記載の把持装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の把持装置のためのヘッド組立体(20)であって、キャリア(21)が、前記キャリアの外周の周りに回転対称的に配置された、いくつかの平坦な外側設置面を備え、把持脚部の固定部分(201)が、前記平坦な外側設置面に当接する平坦な設置面を備える、ヘッド組立体(20)。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の把持装置および/または請求項5に記載のヘッド組立体のための把持脚部(24)であって、湾曲部分(202)が、前記湾曲部分の平面に対して垂直に作用する力によって誘発されるモーメントに対して最小の曲げ剛性を有するように構成され、作動部分(203)が、先端部分(204)と前記湾曲部分(202)との間に延在して前記先端部分(204)および前記湾曲部分(202)に一体化されている基部を備え、さらに、前記基部を起点とする突起部(205)をさらに備え、前記突起部が、前記基部から突出し、好適には、前記湾曲部分の平面と、前記突起部の起点ポイントと前記基部から最大距離のところの前記突起部のポイントとの間の接続ラインと、の間に5°から85°の間である突起部の角度を画定する、把持脚部(24)。
【請求項7】
前記湾曲部分(202)が台形形状であり、前記作動部分(203)から前記固定部分(201)に向かって広がっており、前記湾曲部分(202)が、特には、前記作動部分と前記固定部分との間で前記湾曲部分の面に沿って延在する2つの湾曲脚部(208)を備えるフレームとして成形される、請求項6に記載の把持脚部。
【請求項8】
前記突起部(205)が前記先端部分(204)に向かって傾斜している、請求項6または7に記載の把持脚部。
【請求項9】
少なくとも2つの位置の間で対象物(100)を運搬するように構成および適合された運搬システムであって、前記運搬システムが、請求項1から4のいずれか一項に記載の把持装置(1)と、前記把持装置の近位-遠位軸(2)に沿って、および前記把持装置の前記近位-遠位軸に対して垂直に、前記把持装置を移動させるように構成された少なくとも1つの駆動装置と、を備える、運搬システム。
【請求項10】
試料操作システムのためのトレー(40)であって、前記トレーが多数の受け用凹部(41、41a、41b)を備える頂面を有し、前記トレー(40)が、好適には電子コーディング(50e)であるコーディング(50)を備える、トレー(40)。
【請求項11】
前記受け用凹部(41、41a、41b)の断面が少なくとも実質的に円形であり、前記受け用凹部(41、41a、41b)から径方向に延在する細長い凹部(42)が設けられる、請求項10に記載のトレー(40)。
【請求項12】
a.好適には請求項9に記載の運搬システムの一部である、好適には請求項1から4のいずれか一項に記載の把持装置である、把持部と、
b.請求項10および11のいずれか一項に記載のトレー(40)を保持するように適合されたトレーホルダ(60)であって、前記トレーホルダ(60)が、好適には、前記トレー(40)のコーディング(50)を読み出すための手段を備える、トレーホルダ(60)と、
c.好適には、前記トレー(40)の前記コーディング(50)に保存されている情報を考慮して前記把持部を制御するのに適する前記把持部の制御装置(80)と、
を備える試料操作システム。
【請求項13】
請求項1から4のいずれか一項に記載の把持装置(1)および/または請求項5に記載のヘッド組立体(20)のうちの少なくとも一方を備え、トレー(40)をさらに備える、試料操作システムであって、前記トレーが、試料を受けることを意図され受けるように適合された多数の受け用凹部(41、41a、42)を備える頂面を有し、前記受け用凹部の断面が少なくとも実質的に円形であり、受け用凹部(41a)の外側リムと最も近い隣り合う受け用凹部(41b)の外側リムとの間の距離(d)が、受け用凹部の直径の20%以下である、試料操作システム。
【請求項14】
少なくとも2つの位置の間で対象物(100)を運搬する方法であって、前記方法が、
請求項1から4のいずれか一項に記載の把持装置(1)を提供するステップと、
前記把持装置の近位-遠位軸(2)が前記対象物(100)と交差し、把持脚部(24)の遠位端先端部が前記対象物の近傍に配置されるように、前記把持装置(1)を配置するステップと、
プランジャ(30)を前記把持装置の遠位方向(D)に移動させるステップであって、前記プランジャ(30)が前記把持脚部の作動部分(203)に接触し、前記把持脚部の先端部分(204)同士を径方向において引き離し、それにより前記把持脚部の湾曲部分(202)の弾性変形を引き起こす、移動させるステップと、
前記対象物(100)を円周方向に包囲するように前記把持脚部の遠位側先端部を配置するために前記把持装置(1)を遠位側に移動させるステップと、
前記プランジャ(30)を近位方向(P)に後退させるステップであって、前記把持脚部の前記湾曲部分の弾性復元力により前記先端部分(204)の把持移動が引き起こされ、それにより前記対象物が前記把持装置に添着される、後退させるステップと、
前記把持装置に添着された前記対象物と共に前記把持装置を目標場所まで移動させるステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記対象物(100)を前記目標場所に配置するステップと、前記プランジャ(30)を前記遠位方向(D)に前進させるステップであって、前記プランジャ(30)が前記把持脚部の前記作動部分(203)に接触し、前記把持脚部の前記先端部分(204)同士を径方向に引き離し、それにより前記対象物を解放する、前進させるステップと、前記把持装置を前記近位方向に移動させるステップと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
多数のヘッド組立体の中からヘッド組立体(20)を選定するステップを含み、前記ヘッド組立体は、前記プランジャが後退させられて前記先端部分が前記対象物に当接するときに前記把持脚部(24)の前記湾曲部分(202)により径方向内向きに作用する定められた力を前記先端部分のところに発生させるように、選定される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヘッド組立体(20)は、前記把持脚部の前記先端部分と前記対象物との間に作用する、前記径方向内向きに作用する力によって誘発された摩擦力が前記対象物の重力より大きくなるように、選定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プランジャ(30)が尖っている遠位側先端部(303)を有し、前記対象物(100)がるつぼであり、前記方法が、前記尖っている遠位側先端部を用いて、前記るつぼを閉じている蓋(101)を貫通して穿孔するために前記プランジャ(30)を遠位側に移動させるステップを含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、把持装置、ならびに、上記把持装置を利用するシステムおよび方法に関し、より詳細には、特許請求の範囲に記載される主題の態様に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の技術分野が、測定装置へのおよび測定装置からの試料の運搬を必要とする。非限定の例として材料特性化のための熱分析システムがあり、ここでは、試料を収容するるつぼが、非限定の例として、示差走査熱量計または熱重量分析器具の炉内に配置される必要があり、測定の完了後に炉から取り出される必要がある。配置公差は、実施される測定および/または分析の最高精度を達成するためには、例えば目標点から0.2mm未満とされる。特開2010-203843号は、パーティションまたは炉本体カバーなどを使用するX線分析または熱分析のための同時の測定デバイス内で複数の試料を自動で成功裏に交換および測定するのに適するデバイスを開示している。この範囲で、特開2010-203843号は、軸によって枢動可能に垂設された把持部材を有する運搬デバイスを提案している。中央に配置されたプランジャが把持部を作動させるように機能し、対して把持部の下側端部がばねにより互いの方に枢動するように付勢される。しかし、高サイクル数を所与とすると、このような把持装置は通常は例えば軸の摩耗を受けることになり、把持部の対応する走行面に問題が生じる可能性がある。また、保守管理におけるダウンタイムを短縮するため、およびコストを低減するためには、構成要素の交換の容易さも関係してくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、冒頭で言及した種類の把持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本明細書で提案される把持装置が当技術分野の特定の問題を解消することになる。把持装置は、複数の態様において、非限定の例として示差走査熱量計または熱重量分析器具の炉へのおよび炉からの試料の運搬に適することになる。別の態様では、本明細書で開示される把持装置は、摩耗を受けるかまたは他のかたちで故障しやすい傾向にある最小量のパートを保守管理することにおいて、および、修理して収容することにおいて、容易となり、迅速となる。別の態様では、摩耗を受けるかまたは他のかたちで故障しやすい傾向にある任意の構成要素が交換することが容易であることが望ましい。さらに、特には、摩耗を受けるかまたは他のかたちで故障しやすい傾向にある構成要素が低コストの構成要素であることが有利と判明する可能性がある。別の態様では、把持装置が試料の高い配置精度を可能にすることになり、および/または、試料の位置する平面において小さい所要空間を有することになる。
【0006】
これは請求項1で説明される主題によって達成される。
開示される主題の別の効果および利点は、明確に言及される場合であってもまたは明確に言及されない場合であっても、以下で提示される本開示を考慮して明らかとなる。
【0007】
したがって、基部部材と、基部部材に解除可能に取り付けられて基部部材から遠位側に延在するヘッド組立体と、を備える把持装置が開示される。把持装置はプランジャアクチュエータおよびプランジャをさらに備える。プランジャアクチュエータは、把持装置の近位-遠位軸に沿ってプランジャを移動させるように配置および構成される。プランジャアクチュエータおよびプランジャは、実施形態では、基部部材の一部を形成することができるがまたは基部部材に取り付けられ得る。「遠位」という用語は、装置が対象物に接触させられて対象物を操作することを意図される装置の端部に向かう方向を示すことができ、対して「近位」は反対方向を示す。近位-遠位軸の空間的向きは、複数の態様において、プランジャがそこに沿って移動することができる軸によって画定され得る。プランジャの長手方向軸が、実施形態では、近位-遠位軸を画定することができる。ヘッド組立体は、キャリアと、少なくとも2つのいくつかの把持脚部と、を備え、把持脚部は、特定の実施形態では、キャリアの円周に沿って等距離に配置され得る。多数の、3つ、4つ、またはそれ以上の把持脚部が有利であると判明する可能性がある。その理由は、特にはヘッド組立体のキャリアの円周に沿って等距離に配置される場合の、3つ以上の把持脚部により、把持される対象物を本質的に中央に配置する機能が得られ、同時に、把持される対象物が横方向にスリップして把持脚部の間から外に出ることが回避されるからである。しかし、把持脚部が適切な輪郭の把持脚部を装備する場合、把持される対象物がスリップして把持脚部の間から外に出るリスクが、回避されないまでも、大幅に低減され得ることが理解されよう。キャリアは、そこを通してプランジャを受けるように構成および配置された、近位-遠位軸に沿って延在する貫通開口部をさらに有する。複数の態様において、貫通開口部の長手方向延在範囲または長手方向軸が把持装置の近位-遠位軸を画定すると言うことが可能である。上記貫通開口部の断面形状および寸法はプランジャの断面形状および寸法に対応することができ、その結果、キャリアの貫通開口部がプランジャをその中で受けるのをおよび貫通開口部の内部でヘッド組立体または把持装置の近位-遠位軸に沿って移動させるのをそれぞれ少なくとも最小の所要動き範囲で可能にする。貫通開口部は、実施形態では、上記移動中にプランジャを案内することができる。上記配置により、プランジャがキャリアから遠位側に延在する場合に、プランジャの遠位側パートが把持脚部の間の空間の内部に位置することになることが暗に画定される。把持脚部は、各々、固定部分と、固定部分の遠位側にある先端部分と、先端部分に近位側で隣接する作動部分と、作動部分と固定部分との間に画定された湾曲部分と、を備える。把持脚部の作動部分は、少なくともプランジャが延伸遠位位置にあるときに、プランジャに接触するように構成される。把持脚部の固定部分は、堅固につまり非連接的に、ヘッド組立体のキャリアに設置される。把持脚部の少なくとも作動部分および先端部分はヘッド組立体のキャリアの遠位側に配置され、把持脚部は、プランジャから把持脚部に力が伝達されないときに把持脚部の先端部分を近位-遠位方向に収束させるようにつまり把持装置の遠位端に向かって収束させるように、配置される。
【0008】
把持脚部の作動部分はプランジャに接触するように構成され得、ここでは、把持脚部が、プランジャから把持脚部に力が伝達されないときの作動部分によって囲まれた通路のクリアランスを、作動部分の軸方向位置または近位-遠位の位置で移動させられることを意図されたプランジャのパートの断面寸法より小さくするように、成形され、キャリアの上に配置される。
【0009】
好適には、プランジャの動き範囲は、把持脚部の作動部分に力を伝達しないように十分に後退させられ得るように、つまり近位側に変位させられ得るように、選定される。別の実施形態では、プランジャの動き範囲および形状は、プランジャの一部を把持脚部の作動部分に接触させて把持脚部の作動部分を第1の量で変位させることになるよう、十分に後退させられ得るように、つまり近位側に変位させられ得るように、選定される。
【0010】
プランジャが延伸させられ得、つまり遠位側に変位させられ得、その結果、プランジャの一部分が把持脚部の作動部分に接触して把持脚部の作動部分を第2の量で変位させる。径方向外向きの方向の作動部分の変位が把持脚部の先端部分を径方向外向きに変位させ、それにより把持装置の把持遠位端が開くようになる。同時に、把持脚部の湾曲部分が湾曲させられ、それにより作動部分および先端部分に作用することになる径方向内向きの復元力を発生させる。
【0011】
本開示の枠組み内で、不定冠詞「a」または「an」の使用は単一性を求めるものではなく、また、多数の指定の部材または特徴の存在を排除するものでもないことに留意されたい。したがって、これは「少なくとも1つ」または「1つまたは多数の」の意味で読まれるべきである。
【0012】
上で示したように、プランジャは、把持脚部の作動部分に接触することを意図された接触部分を備える。特には、接触部分は、プランジャの遠位端に向かって先細になっている先細部分を備えることができる。接触部分の少なくとも近位端または後方端部は、プランジャから把持脚部に力が伝達されないときに把持脚部の作動部分によって囲まれる通路のクリアランスより大きい断面寸法を有する。プランジャは円形断面を有することができ、この事例では断面寸法が直径である。別の実施形態では、プランジャが正多角形の断面を有することができ、多角形の辺の数が把持脚部の数に等しく、この事例では断面寸法が内接円の直径である。先細部分が、プランジャから把持脚部に力が伝達されないときに把持脚部の作動部分によって囲まれる通路のクリアランスより小さい断面寸法または直径までにさらに遠位側に延在することが有利であると判明する可能性がある。これにより、プランジャの接触部分が把持脚部の作動部分に円滑に接触することになることが保証される。先細部分の近位側にプランジャの接触部分が存在し、つまり、接触部分の先細部分に近位側で隣接するプランジャの少なくとも一部分が一定断面部分を有することができるか、または、より具体的な実施形態では、プランジャの近位-遠位延在範囲に沿って円筒形状となり得る。これにより、先細部分の小さいサイズの遠位側パートを先にして、接触部分が把持脚部の接触部分の間に円滑に導入され、この間、遠位側にさらに移動するときに作動部分およびひいては把持脚部の先端部分を徐々に広げることが保証される。先細部分の近位端に到達すると、接触部分の一定断面部分が把持脚部の作動部分に接触し、それにより、プランジャがさらに遠位側に前進させられるときに把持脚部の一定の開口部が維持されることになる。完全性のために、接触部分の上記一定断面部分の断面が少なくとも実質的に先細部分の近位端の断面と同じであることに留意されたい。プランジャの外側表面が、少なくとも接触部分において、連続しており、プランジャの接触部分および把持脚部の作動部分の互いに対しての円滑な摺動を阻害する可能性がある段差を有さない。
【0013】
プランジャの遠位端は尖頭であってよく、遠位側に尖っているスパイクを形成することができる。上記スパイクは、プランジャを遠位側に前進させることにより例えばるつぼの蓋を貫通するのに使用され得る。近位-遠位延在範囲または軸方向延在範囲に沿って一定の断面である近位側部分を備えるプランジャの接触部分を提供することにより、プランジャが、把持脚部のさらなる作動を引き起こすことなく、蓋を貫通するために遠位側に前進させられ得る。
【0014】
別の非限定の実施形態では、把持脚部の遠位端または遠位側先端部に隣接するかたちでこれらを形成する、最も遠位側の先端部分における、把持脚部の先端部分が、先端部分のより近位側の部分に対して、把持アライアンスの中心から離れる方向に角度を付けられており、それにより、少なくとも、プランジャから把持脚部に力が伝達されないときに把持脚部のより近位側の部分より小さい程度で近位-遠位方向において収束するようになる。先端部分の最も遠位側の先端部領域の上記幾何学形状は、把持されることになる対象物に対してのこれらの最も遠位側の先端部分のより円滑な接触を実現する。理想的には、最も遠位側の先端部領域は、対象物を把持しているとき、少なくとも実質的に近位-遠位方向に延在し、径方向内向きの方向または径方向外向きの方向には延在しないかまたは非有意にしか延在しない。したがって、後でより詳細に要点が概説されるように、把持脚部は具体的には把持されることになる特定の対象物のために選定されることが可能となる。
【0015】
ヘッド組立体が基部部材に解除可能に取り付けられることにより、上記タスクが支援される。把持装置において各把持脚部を個別に交換するのではなく、ヘッド組立体全体が、多様な幾何学形状および/または湾曲セクションの多様な剛性を有する把持脚部を支承するヘッド組立体へと変更され得る。把持フィンガは可動パートおよび軸受などを備えず、それによりこのような要素の摩耗が回避される。逆に、把持脚部がヘッド組立体のキャリアに堅固に取り付けられ、把持移動が把持フィンガの湾曲部分によって可能となり、それにより、ヘッド組立体または基部部材を備えるかあるいはヒンジを介してヘッド組立体または基部部材に取り付けられる把持脚部と比較してより優良な耐用年数を提供することができる。湾曲部分が継続的な振動により劣化すると、ヘッド組立体全体が交換され得、把持脚部自体はオフラインで交換され得、それによりダウンタイムが短縮され、保守管理が支援される。
【0016】
上で説明した把持装置は、把持脚部の細い先端部分を装備することができる。把持脚部の駆動装置が、把持脚部から比較的より近位側におよび径方向内側に設けられる。結果として、把持装置の遠位側先端部分は、空間要求を低減して構築され得、それにより、非常に狭く配置される多数の試料と共に把持装置を使用することが可能となる。言い換えると、本明細書で説明される把持装置を用いて試料を狭いところに配置することが可能となり、これはさらに、所与の空間または所与の表面に多数の試料が設けられ得ることを意味する。さらに、本明細書で説明される把持装置は制限される空間環境で使用され得る。
【0017】
別の態様では、上述の把持装置のためのヘッド組立体が開示され、ここでは、キャリアが、キャリアの外周の周りに回転対称的に配置された、いくつかの平坦な外側設置面を備える。特には、平坦な外側設置面の数が把持脚部の数に等しくてよい。把持脚部の固定部分が、平坦な外側設置面に当接される平坦な設置面を備える。非限定の実施形態では、把持脚部が、把持脚部の固定部分を通って延在するねじによりキャリアに設置される。
【0018】
別の態様では、概説された把持装置および/またはヘッド組立体のための把持脚部が開示される。湾曲部分が、湾曲部分の平面に対して垂直に作用する力によって誘発されるモーメントに対して最小の曲げ剛性を有するように構成される。他の方向の曲げに対しての抵抗は大幅により大きくなるように選定され得る。作動部分が、先端部分と湾曲部分との間に延在して先端部分および湾曲部分に一体化されている基部を備える。作動部分が、基部を起点とする突起部をさらに備える。突起部が基部から突出する。好適には、突起部の角度が5°から85°の間である。突起部の角度は、湾曲部分の平面と、突起部の起点ポイントと突起部の先端部ポイントとの間の接続ラインと、の間の角度である。突起部の先端部は、基部から最大距離を有するポイントである。
【0019】
把持脚部が、突起部を径方向内向きに延在させるように、ヘッド組立体のキャリア上に設置され得る。突起部または突起部の先端部が、それぞれ、この事例では、プランジャのための対応する当接部を構築する。
【0020】
好適な実施形態では、突起部の角度がプランジャの先細部分の円錐角より大きい。それにより、突起部の先端部がプランジャとの接触を確立して、それにより先端部分の制御される円滑な動きが実現されることが保証される。
【0021】
好適な実施形態では、突起部の先端部と基部との間の距離が、その先細部分の近位端および遠位端におけるプランジャの断面寸法の間の差の半分より大きい。それにより、把持脚部の基部または湾曲部分がプランジャに接触することが防止される。その結果として、先端部分の動きの制御が改善される。
【0022】
非限定の実施形態では、湾曲部分が台形形状であり、作動部分から固定部分に向かって広がっている。より具体的には、湾曲部分が、作動部分と固定部分との間で湾曲部分の面に沿って延在する2つの湾曲脚部を備えるフレームとして成形され得る。湾曲部分の台形形状が、直線の脚部の移動を実施することなどの、先端部分の動態に対する効果を発生させることができる。
【0023】
作動部分の突起部は先端部分に向かって傾斜していてよく、それにより、プランジャが遠位方向に移動して突起部に接触するときに突起部およびプランジャが相互に係止されることが回避される。突起部は直線の基線を有する台形の形状を有することができ、ここでは、直線の基線の反対側の辺が丸みのある凹形アーチとして形成され、したがって円形断面のプランジャに接触するための先端部ラインを有する。別の実施形態では、突起部が、直線の基線の端点の間に延在する丸みのある凹形アーチの形状を有することができる。
【0024】
窓が作動部分の基部内に形成され得、突起部のサイズおよび形状に少なくとも実質的に適合するかまたはそれより大きいサイズおよび形状を有する。上記窓は直線の基線を有し、ここでは、突起部の直線の基線が窓の直線の基線に接合され、突起部が窓の直線の基線から延在する。窓の直線の基線は、より具体的な実施形態では、窓の近位側境界線を形成する。作動部分は、作動部分の基部の中への例えばレーザー切断により直線の基線を除いて突起部の形状を切断して、次いで、作動部分の基部から離すように突起部を所望の方向に概して所望の量で曲げ、それにより基部内に窓を形成することにより、製造され得る。基部と突起部との間の移行部が直線の基線内に設けられる。
【0025】
把持脚部はシームレスの単一部片部材であってよい。しかし、把持脚部は個別のセグメントから組み立てられてもよい。例えば、突起部が基部に接合され得、より具体的な非限定の例として、接着され得るか、溶接され得るか、はんだ付けされ得るか、ねじ留めされ得るか、またはリベット留めされ得る。把持脚部はシート金属で作られ得る。いくつかの実施形態では、突起部が材料の楔形状のパートによって実現され得る。突起部および基部の材料は、例えば、把持脚部の湾曲部分のための所望の湾曲特性を有する材料を選定する一方で、突起部のための所望の滑り特性を有する材料を選定するために、異なっていてよい。
【0026】
さらに、少なくとも2つの位置の間で例えばるつぼなどの対象物を運搬するように構成および適合された運搬システムが開示される。運搬システムが、上に記載される把持装置と、把持装置の近位-遠位軸に沿って、および把持装置の近位-遠位軸に対して垂直に、把持装置を移動させるように構成された少なくとも1つの駆動装置と、を備える。
【0027】
上で概説したように、本明細書で説明される把持装置では、特には試料が操作されるその遠位側先端部において、非常に低い空間要求がもたらされる。この範囲で、上に記載される把持装置および/またはヘッド組立体のうちの少なくとも一方を備え、さらにはトレーを備える、試料操作システムが開示される。トレーは、試料を受けることを意図され、そのように構成および適合された多数の受け用凹部を備える頂面を有する。受け用凹部は、特定の形状およびサイズの試料またはるつぼと共に使用されるように構成され得る。受け用凹部の断面が少なくとも実質的に円形であること、および、受け用凹部の外側リムと最も近い隣り合う受け用凹部の外側リムとの間の距離が受け用凹部の直径の20%以下であることが実現され得る。したがって、試料および/またはるつぼがトレー上に密集的にパッキングされ得る。さらに、より具体的な実施形態では、受け用凹部から径方向に延在して受け用凹部に一体化している細長い凹部がさらに提供され得る。各々の受け用凹部から径方向に延在して受け用凹部に一体化している細長い凹部の数は、少なくとも、把持装置および/またはヘッド組立体の把持脚部の数に等しく、各々の受け用凹部に一体化している細長い凹部のうちの少なくともいくつかの細長い凹部が、把持装置および/またはヘッド組立体の周りで把持脚部によって形成された円周パターンに適合する円周パターンとして円周方向に分布する。
【0028】
本発明によるトレーは、多数の受け用凹部を備える頂面を有する。受け用凹部の各々が、試料を受けることを意図され、そのように構成および/または適合される。受け用凹部は、特定の形状およびサイズのるつぼなどの試料と共に使用されるように構成され得る。この実施形態によるトレーはコーディングをさらに備える。
【0029】
コーディングは好適には電子コーディングである。最も好適には、電子コーディングは、メモリまたはチップに電力供給する導体と同じ導体を介して読み出され得るメモリまたはチップである。このようなチップは例えば1ワイヤチップとして知られている。このような電子コーディングは、それ自体で電源を有さないようにトレーを保管するのを可能にしながら、コーディングの長さおよび構造に高い融通性を提供するという利点を有する。電子コーディングの代替的実施形態では、コード化された情報を提供するメモリまたはチップが、メモリまたはチップに電力供給する導体とは異なる導体を介して情報を戻す。いくつかの実施形態では、トレーが、再充電可能バッテリーなどの、コーディングのための電源を備えることができる。電子コーディングは融通性があり、また必要である場合には汚れた接点が容易に洗浄され得ることからロバスト性を有し、対してメモリまたはチップ自体はトレー内に埋設され得、したがって周囲から保護される。
【0030】
別の実施形態では、コーディングが機械的コーディングである。最も好適には、機械的コーディングが、1組の接触センサによりあるいは光信号を拡散したりまたは遮断したりする方法により読み出されるのに適する、トレーの側壁または下側に機械加工されるパターンである。別の実施形態では、コーディングがRFIDチップである。別の実施形態では、コーディングが、例えばバーコードまたはQRコードなどの2Dコーディングパターンである。加えてまたは代わりに、コーディングが、トレーの上に付着された対人可読の数字および/または文字の組み合わせであってもよい。
【0031】
好適には、電子コーディング、機械的コーディング、RFIDチップコーディング、および/または2Dコーディングパターンが、トレーの側壁、または、頂面の反対側のトレーの下側、のうちの一方に配置される。最も好適には、対人可読コードおよび/または2Dコーディングパターンがトレーの頂面に配置される。好適には、トレーが、トレーの側壁、または、下側、頂面の反対側、のうちの1つに配置された、電子コーディング、機械的コーディング、RFIDチップコーディング、および/または2Dコーディングパターンに加えて、その頂面にある対人可読コードを備える。
【0032】
好適には、コーディングが、例えば、所与のトレーの属するトレーの種類区分に関する情報、および/または、一意の識別情報を含む。好適には、コーディングが、所与のトレーを一意のものとする識別情報に加えて、所与のトレーの属するトレーの種類区分に関する情報を含む。トレーの所与の種類区分のトレーは、例えば、同じ特定の形状およびサイズの試料を受けることを意図され、そのように構成および適合された受け用凹部を備える。別の実施形態では、トレーの所与の種類区分のトレーが、他の種類区分のトレーとは異なる数の受け用凹部を備える。別の実施形態では、トレーの所与の種類区分のトレーが、他の種類区分のトレーとは異なる受け用凹部の配置を有する。
【0033】
好適には、使用者が、使用されるトレーのための特定のコーディングを自分で作成することができ、最も好適にはコンピュータプログラムを用いて作成することができる。ユーザ固有のコーディングが、電子コーディングに書き込まれ得、RFIDチップの信号に関連付けられ得、ならびに/あるいは、個別の2Dコーディングパターンおよび/または対人可読コードを備えるラベルに印刷され得、それにより、使用者が既存の試料管理システムまたは対象物管理システムに対してトレーを適合させることが可能となる。最も好適には、ユーザ固有のコーディングが一意の識別情報のみを有し、対してトレーの種類区分に関する情報がトレーの製造業者によって予め定められる。これにより、トレーの種類区分を表すために製造業者によって後で選定される一意の識別情報を使用者が誤って設定してしまう場合に起こり得る不一致が防止される。
【0034】
トレーに取り付けられたコーディングを使用することには、試料操作システムおよび/または運搬システムにより、トレーが自動でまたは使用者の支援により識別され得る、という利点がある。これにより、トレーに合うように、ならびに、試料(受け用凹部がこの試料を意図しており、受け用凹部がこの試料に合うように適合されている)に合うように、把持部の動きを適合させることが可能となる。好適な実施形態では、例えば、把持部は、より小さい直径を有する試料に合うように適合された種類区分のトレーとしてトレーが識別される事例と比較して、より大きい直径を有する試料に合うように適合された種類区分のトレーとしてトレーが識別される場合に、より大きく開くように命令される。同様に、把持部の動きが、トレーの識別された種類区分のトレーの上にある受け用凹部の配置に従うように適合され得る。把持部は、好適には、本発明による把持装置である。把持部の動きおよびその開きの程度は、好適には、多様な動きのための個別の駆動装置に対して作用する制御装置によって制御される。
【0035】
各トレーに対して固有のコーディングを有することにより、使用者が、その固有のコーディングと併せたトレー上のその位置により、所与の試料を識別することができる。把持部の制御装置は、その固有のコーディングを使用してトレーを識別して対象のトレー上での試料の所与の位置まで把持部を移動させることにより対象の試料を特別に取り扱うためにこの情報を使用することができる。これは試料を用意することを支援する。さらに、トレーの固有のコーディングにより、使用者が、他のトレーからの試料とは異なるかたちで指定のトレーからの試料を取り扱うように把持部に命令を出すことが可能となり得る。例えば、所与の試料が加速度に特に敏感である場合、試料を把持しているときの把持部の加速度が低減され得る。
【0036】
トレーの頂面の上に対人可読コードおよび/または2Dコーディングパターンを配置することにより、トレーの上に既に試料が載せられている場合であっても、使用者がトレーのコーディングにアクセスすることが支援される。これにより、使用者が、トレーの上に試料が配置された後であってもトレー固有の命令を把持部の制御装置に割り当てることができる。2Dコーディングパターンは、バーコードスキャナまたはQRスキャナなどの適切なスキャナを用いてスキャンされ得、それにより制御装置へのインターフェースに自動で入力され得、それにより、使用者がトレーおよび/またはトレーの上に配置された試料に関連する命令を指定することが可能となる。さらに、対人可読コードは、例えばカメラによって自動で検出され得る。さらに、使用者が、例えばタイピングすることによりまたは声に出して読むことにより、対象のトレーの対人可読コードを制御装置のインターフェースに入力することができる。制御装置に対してのインターフェースはそれ自体が制御装置の一部であってよいか、または、コンピュータ上で実行されるか、または、例えば適切なフォーマットでデータを制御装置に送信するために装備されるモバイルデバイス上で実行される、アシスタントプログラムであってもよい。
【0037】
好適には、トレーが青色である。熱分析システムを用いて分析される試料は、通常、金色、メタリックグレー、および/または白色のるつぼである。したがって、青色のトレーに対しての有意な色の対照性が存在し、これが、トレーの上にある試料を認識することおよび空の受け用凹部を識別することを支援する。このような認識のために、熱分析システムが好適にはカメラを装備する。カメラは、把持部の上に配置され得るか、トレーにアクセスする必要がない場合にはトレーホルダ内に配置されたトレーを覆う蓋の中に配置され得るか、トレーホルダ内の試料トレーを見ることのできるシステムの別の場所に配置され得る。トレー上で試料を視覚的に認識することにより、いずれの受け用凹部が占有されているかおよびいずれの受け用凹部が空であるかを検出することが可能となる。この情報は、例えば、空の受け用凹部に試料を握持しようとするのを回避するために、把持部の制御装置によって使用され得る。さらに、試料およびトレーの状態を使用者が確認するのを可能にするためにならびに/あるいは新しい試料が必要となるまでの時間を使用者が推定するのを可能にするために、この情報が使用者に送信され得る。他の実施形態では、有意な抵抗なしで把持部が閉じることが可能となる量を用いて、把持部自体により空の受け用凹部を検出することができる。
【0038】
一実施形態では、トレーの受け用凹部の断面が少なくとも実質的に円形である。細長い凹部は、受け用凹部から径方向に延在する。この実施形態では、細長い凹部が把持脚部に高い移動自由度を与えるので、トレーは、本発明による把持装置と共に使用されるのに特に好適に装備される。このような細長い凹部を有さない場合、トレーの頂面の上方を延在する試料のみが本発明による把持装置によって握持され得る。多様な形状の細長い凹部が他の種類の把持部と共に使用され得、ここでは脚部が他の経路上の試料に接近することができる。例えば、螺旋状の細長い凹部が把持部と共に使用されるためのトレーのために使用され得、脚部が螺旋状の経路上の試料に接近する。
【0039】
一実施形態では、受け用凹部の外側リムと最も近い隣り合う受け用凹部の外側リムとの間の距離が受け用凹部の直径の20%以下である。したがって、試料および/またはるつぼがトレー上に密集的にパッキングされ得る。
【0040】
一実施形態では、細長い凹部の長さが、受け用凹部の外側リムと最も近い隣り合う受け用凹部の外側リムとの間の距離より大きい。それにより、把持脚部が、試料の側に向かって開くための、試料の間の距離より大きい空間を有することができる。これにより試料および/またはるつぼがトレー上に密集的にパッキングされることが可能となる。細長い凹部の長さは、好適には、受け用凹部の内接円の外側リムと、細長い凹部の細長方向に配置された第2の受け用凹部の内接円の外側リムと、の間の距離として測定される。
【0041】
一実施形態では、径方向に延在して受け用凹部に一体化している細長い凹部が提供され得る。各々の受け用凹部から径方向に延在して受け用凹部に一体化している細長い凹部の数は、少なくとも、把持装置および/またはヘッド組立体の把持脚部の数に等しく、各々の受け用凹部に一体化している細長い凹部のうちの少なくともいくつかの細長い凹部が、把持装置および/またはヘッド組立体の周りで把持脚部によって形成された円周パターンに適合する円周パターンとして円周方向に分布する。
【0042】
好適には、把持部は試料操作システムの一部である。この試料操作システムはトレーホルダを備える。トレーホルダは、コーディングを有するトレーを保持するように適合される。好適には、トレーホルダが、トレーのコーディングを読み出すための手段を備える。
【0043】
別法として、トレーのコーディングを読み出すための手段が、トレーホルダの外側に配置され得、例えば、蓋の中に、把持部の上に、またはトレーの可視コーディングをそこから見ることができる試料操作システムの別のパートもしくはその周囲に、配置されたカメラを備えることができる。カメラおよび可視コーディングの代わりに、電子コーディングが、例えば、把持部、蓋、または試料操作システムの別のパートに取り付けられ得る電子コーディングによって発せられるかまたは反射される電磁信号を受信するためのアンテナを備える読み取り装置によってある程度の距離で読み出され得る。把持部および蓋などの可動パートがさらに、コーディングを読み出すための電気接触および/または機械的接触を確立することができる。好適には、試料操作システムが、把持部の制御装置をさらに備える。この制御装置は、トレーのコーディングに保存されている情報を考慮しながら把持部を制御するのに適する。このような制御装置の利点は上で既に概説されている。
【0044】
好適には、トレーのコーディングを読み出すための手段は、電子コーディング、機械的コーディング、RFIDチップコーディング、および/または2Dコーディングパターンを読み出すための手段である。好適には、トレーのコーディングを読み出すための手段が、トレーホルダの中にトレーが挿入された後でトレーの個別のコーディングを読み出すのを可能にするように、トレーホルダの側壁または下側のうちの一方に配置される。これにより、コーディングおよびコーディングを読み出すための手段を互いから明確に定められた小さい距離に配置することが可能となる。これにより、電気接続などの物理的接触を必要とする読み出すための手段を使用することが可能となり、(読み出すための手段が、発せられるかまたは反射される無線信号あるいは散光信号または反射光信号などの信号を受信するための検出器を備える場合には)信号品質を最適化することが可能となる。これによりさらに、読み出すための手段により、機械的接触または近接を検出することによりコードを読み出すことが可能となる。
【0045】
最も好適には、トレーが、対象のメモリまたはチップに電力を提供するのと同じ導体によって読み出され得るメモリまたはチップを備える電子コーディングを備え、トレーホルダが接触領域を備え、この接触領域内に、トレーのコーディングを備えるメモリまたはチップに電力供給するためのおよびメモリまたはチップを読み出すための導体が設けられる。トレーがトレーホルダ内に配置されると、トレーホルダの接触領域がトレーの電子コーディングの接点に接触し、メモリまたはチップに保存されているコーディングの情報が読み出され得る。さらに、信号を受信することが、トレーホルダ内でのトレーの存在を示す。
【0046】
試料操作システムが、好適には、材料特性化のための熱分析システムの一部である。把持部が好適には本発明による把持装置である。
【0047】
好適には、トレーホルダが所定の向きでトレーを保持するように適合される。最も好適には、トレーホルダが凹部を備え、トレーがこの凹部の中に嵌め込まれる。好適な実施例では、トレーが、その頂面で見ると長方形であり、ここでは、この長方形の辺のうちの少なくとも1の辺が凹部または突出部を備え、その結果、長方形形状の対称性が崩れ、一意の向きが、対応する形状の突出部または凹部を有するトレーホルダに対して画定される。
【0048】
好適には、把持部の制御装置が、把持装置の制御装置であり、材料特性化のための熱分析システムの一部である。
【0049】
好適には、トレーのコーディングを読み出すための手段が、読み出されたデータを把持部の制御装置に送信し、ここでは、制御装置が、コーディングを用いて保存される情報に応じて把持装置の動きを適合させるためにこの情報を使用することができる。
【0050】
好適には、コーディングがトレーの種類区分の情報を含む。好適には、データベースが制御装置によってアクセス可能であるかまたは制御装置に保存され、データベースは、トレーの1つの種類区分に特有の情報を、この種類区分を示すコーディングに関連付ける。この情報は、例えば、この種類区分のトレーの受け用凹部の中に嵌め込まれる試料のサイズおよび直径、ならびに/あるいは、この種類区分のトレーの上にある受け用凹部の配置であってよい。
【0051】
好適には、トレーが貫通位置を備える。好適には、貫通位置がトレーの頂面の上にある隆起部である。この隆起部は断面が実質的に円形である。その周囲部に対してのこの隆起部の高さは、貫通位置の上に配置された試料の貫通アクション中に把持脚部の先端部分をトレーに衝突させないようにする高さである。トレーの上にこのような貫通位置を設けることには、貫通プロセスの制御が支援され、また必要である場合にトレーが容易に交換および洗浄され得るという利点がある。
【0052】
別の態様では、少なくとも2つの位置の間で対象物を運搬する方法が開示される。この方法は、
・上で概説された任意の種類の把持装置を提供することと、
・把持装置の近位-遠位軸が対象物と交差し、把持脚部の先端部分の遠位端または前方端部のところに設けられた遠位端先端部が対象物の近傍に配置されるように、把持装置を配置することと、
・プランジャを把持装置の遠位方向に移動させることであって、プランジャが把持脚部の作動部分に接触し、把持脚部の先端部分同士を径方向において引き離し、それにより把持脚部の湾曲部分の弾性変形を引き起こす、移動させることと、
・対象物を円周方向に包囲するように把持脚部の遠位側先端部を配置するために把持装置を遠位側に移動させることと、
・プランジャを近位方向に後退させることであって、把持脚部の湾曲部分の弾性復元力により先端部分の把持移動が引き起こされ、それにより対象物が把持装置に添着される、後退させることと、
・把持装置に添着された対象物と共に把持装置を目標場所まで移動させることと、
を含む。
【0053】
次いで、対象物が目標場所に配置され得、プランジャが遠位方向に前進させられ得、プランジャが把持脚部の作動部分に接触し、把持脚部の先端部分同士を径方向において引き離し、それにより対象物を解放する。対象物が解放されると、把持装置が対象物から離れるために近位方向に移動させられ得る。
【0054】
上で提案されるように、把持脚部は特定の対象物に適合するように選定され得る。この点に関して、本方法は、多数のヘッド組立体の中から1つのヘッド組立体を選定することをさらに含むことができ、ここでは、ヘッド組立体が、プランジャが後退させられて先端部分が対象物に当接するときに把持脚部の湾曲部分により径方向内向きに作用する定められた力を先端部分のところに発生させるように、選定される。複数の態様において、ヘッド組立体は、把持脚部の先端部分と対象物との間に作用する、径方向内向きに作用する力によって誘発された摩擦力が対象物の重力(weight force)より大きくなるように、選定され得る。
【0055】
さらに上で提案されるように、プランジャが尖っている遠位側先端部を備えることができる。対象物は試料を有するるつぼであってよく、本方法は、プランジャの尖っている遠位側先端部を用いて、るつぼを閉じている蓋を貫通して穿孔するためにプランジャを遠位側に移動させることを含むことができる。
【0056】
上で開示される特徴および実施形態が互いに組み合わされることが理解されよう。さらに、本開示の範囲内において、および、特許請求される主題の範囲内において、本開示により当業者には明白であって容易に理解される別の実施形態も考えられ得ることが認識されよう。
【0057】
次に、添付図面に示される選定された例示の実施形態により、本開示の主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】遠位側を閉じられた把持脚部を備える把持装置の例示の実施形態を示す図である。
【
図2】遠位側を閉じられた把持脚部を備える
図1の把持装置を示す断面図である。
【
図3】遠位側を開けられた把持脚部を備える
図1の把持装置を示す図である。
【
図4】遠位側を開けられた把持脚部を備える
図1の把持装置を示す断面図である。
【
図6】本明細書で説明される種類の把持装置を用いて対象物を把持するプロセスを示す図である。
【
図7】炉内にある、本明細書で説明される種類の把持装置の遠位側パートを示す図であり、さらにるつぼが炉の内部に配置される。
【
図8】本明細書で説明される種類の把持装置およびトレーを備える試料操作システムを示す図である。
【
図9】本明細書で説明される種類の把持装置のための把持脚部の第1の実施形態を示す平面図である。
【
図11】本明細書で説明される種類の把持装置のための把持脚部の第1の実施形態を示す平面図である。
【
図14】
図14aは、多様な種類区分のトレーを示す図である。
図14bは、多様な種類区分のトレーを示す図である。
【
図15】貫通位置を有するトレーを示す切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図面が非常に概略的なものであること、ならびに、理解および描写を容易にするために、指示の目的のために必要ではない細部が省略され得ることが理解されよう。さらに、図面は選定した例示の実施形態のみを示しており、示されない実施形態も本明細書で開示される範囲内におよび/または特許請求される主題の範囲内に十分に含まれ得ることが理解されよう。
【0060】
図1は、閉じている把持脚部を備える、本明細書で開示される種類の例示の把持装置1を示している。把持装置1は、基部部材11と、ヘッド組立体のキャリアから遠位方向に延在する把持脚部24を備えるヘッド組立体20と、を備える。
図1の描写では、ヘッド組立体のキャリアが外側スリーブ12により大部分を覆われている。容易に認識され得るように、把持装置1は近位-遠位の軸方向の向きを有する。把持装置の遠位端または前方端部が把持脚部24の自由端先端部によって画定される。把持装置の近位端は、基部部材11の軸方向において対向する端部によって画定される。「遠位」という用語は器具の作業側を示し、対して「近位」という用語は、器具を支持体に取り付けるかまたは器具がハンドルを備える側を示す。
【0061】
図2は、器具の近位-遠位軸に沿って
図1の把持装置1の長手方向図を示す。基部部材11は、近位側で支持され、例えば、把持装置を移動させるための駆動装置に接続され、対してヘッド組立体20は、基部部材11に解除可能に取り付けられ、基部部材11から遠位側に延在する。ヘッド組立体20は、キャリア21と、示される例示の実施形態では4つの把持脚部24である多数の把持脚部24と、を備える。キャリア21は、マウント22と、ガイドスリーブ23と、備える。キャリア21は、概して、遠位方向において先細になっている。基部部材11は、プランジャアクチュエータ31と、ヘッド組立体20のキャリア21内にある中央貫通開口部を通って延在するプランジャ30と、を備える。プランジャアクチュエータ31は、把持組立体の近位-遠位軸2に沿ってプランジャ30を移動または変位させるように配置および構成される。近位-遠位軸2は、把持組立体の近位側Pと遠位側Dとの間に延在する。プランジャアクチュエータ31は、1つの例では、近位-遠位軸2に沿ってプランジャ30を制御可能に移動させたり配置したりするのを可能にするステッピングモータであってよい。プランジャ30はガイドスリーブ23の内部の貫通開口部の内部を案内される。複数の態様において、ガイドスリーブ23の内部の貫通開口部の長手方向軸が近位-遠位軸2を画定すると言うことができる。把持脚部24の近位側固定部分が、堅固につまり非連接的に、ヘッド組立体20のキャリア21のマウント22に取り付けられる。把持脚部の固定部分が本描写では可視ではない。把持脚部24の各々が、遠位側に配置された先端部分204と、先端部分204に近位側で隣接する作動部分203と、作動部分203と固定部分との間に画定されて接続する、作動部分203に近位側で隣接する湾曲部分202と、を備える。各作動部分203は、突起部205と、基部と、を備える。各々の突起部205は、その作動部分203の基部から径方向内向きに突出して延在する。突起部205は先端部分204に向かって遠位方向において傾斜している。以下の説明により完全に認識されるように、突起部205は、少なくともプランジャ30が延伸遠位位置にあるときに、プランジャ30に接触するように構成される。以下の説明によりさらに認識されるように、プランジャ30は、近位-遠位軸2に沿うプランジャ30の位置に応じて、径方向外側の向きの力を把持脚部24の作動部分203に作用させて、作動部分およびひいては先端部分を径方向外向きに変位させるように、構成および適合される。しかし、
図1および
図2に描かれる状況では、プランジャ30は後退近位位置にあり、プランジャから把持脚部に力が伝達されないかまたは力がほぼ伝達されない。把持脚部は、プランジャ30が後退位置にあるときに把持脚部の先端部分204が把持装置の近位-遠位方向においてその遠位側先端部または把持装置の遠位側Dに向かってそれぞれ収束するように、配置される。
【0062】
図3および
図4は、開いている把持脚部24を備える
図1および
図2の把持装置1を示している。
図1および
図3または
図2および
図4の間のそれぞれの比較により、プランジャ30がより遠位側の延伸位置にあることが明らかとなる。プランジャ30はその側面に接触部分301を備える。接触部分301は、相対的に遠位側に設けられた先細部分302と、上記先細部分に近位側で隣接する一定断面部分または特定の非限定の実施例では円筒形部分と、を備える。プランジャ30が
図1および
図2に示される後退近位位置から
図3および
図4に示される延伸遠位位置まで遠位方向に変位させられるとき、プランジャ30の接触部分301の先細部分302は、把持脚部の作動部分203の間のクリアランスの中へ徐々に押されるか、またはより具体的には、突起部205の径方向内側先端部が先細部分302の比較的小さい断面の延在範囲から始まって、先細部分302の比較的大きい断面の延在範囲まで延びている。結果として、把持脚部24の作動部分203および先端部分204が連続的に離間され、把持装置が開けられる。把持脚部の近位側固定部分が、堅固につまり非連接的に、マウント22に取り付けられることを理由として、把持脚部の湾曲部分202が湾曲し、それにより、より遠位側に配置された作動部分203および先端部分204に作用する径方向内向きの復元力を発生させる。上記復元力がプランジャ30に作用し、それにより把持脚部24の作動部分203に対して径方向外向きの力を作用させる。プランジャが遠位方向に前進させられる間に上記力が増大すること、ならびに、作動部分203または突起部205がそれぞれプランジャ30の先細部分302を支承することが認識されよう。プランジャが遠位方向に十分に前進させられ、その結果として作動部分203または突起部205がそれぞれ接触部分301の一定断面部分を支承すると、プランジャ30の近位-遠位位置に関係なく、把持脚部24の径方向外側の変位およびひいては把持脚部24の作動部分に作用する拡大力が一定を維持する。プランジャ30の遠位端は尖頭であり、スパイク303を形成する。把持脚部の作動部分203または突起部205がそれぞれプランジャ30の作動部分301の一定断面部分を支承すると、スパイク303が例えばるつぼの蓋などの対象物に接触するようになるまで、プランジャ30が把持脚部に影響することなく遠位方向に前進させられ得、蓋を貫通することができ、それによりるつぼ内部に含まれる試料を環境に対して露出させる。プランジャ30が近位方向に後退移動して、即座に、作動部分203または突起部205がそれぞれ接触部分301の先細部分302を支承すると、把持脚部の作動部分および先端部分204が、湾曲した湾曲部分302によって作用される復元力により、径方向内側に継続的に移動し、つまり把持装置を閉じる、ことを当業者であればさらに認識するであろう。しかし、プランジャ30を
図3および
図4に示される位置から後退させる前に対象物が先端部分204の間に配置される場合、先端部分204が上記対象物を支承することになり、対象物の断面寸法に左右される残留復元力が対象物に作用することになる。これは、上記対象物が先端部分204の間で保持されるかまたは把持されることを意味する。プランジャ30を再び遠位方向に前進させることにより上記把持力が解除され得る。プランジャ30の接触部分301の先細部分302の比較的急である角度が、プランジャの定められた軸方向の移動を、先端部分の比較的大きい径方向の移動へと変換する。しかし、上記動態は、これに応じた先細部分302の円錐角の選定の影響を受け得る。
【0063】
図5は、1から4に示される把持装置の分解図を示している。この図で見ることができるように、ヘッド20のキャリア21のマウント22は、マウント22の外周の周りで円周方向に等距離に配置された、回転対称である多数の外側設置面を備える。把持脚部の近位側固定部分201が、例えばねじにより、設置面のところでマウントに固定的に取り付けられる。把持脚部24の固定部分201がマウント22またはキャリア21のそれぞれの上で移動することが一切阻止されることに十分に留意されたい。したがって、把持脚部24の先端部分とキャリア21との間の任意の相対移動は、把持脚部の湾曲部分を湾曲させることによってのみ達成され得る。プランジャアクチュエータ31が基部部材11に取り付けられる。プランジャ30がプランジャアクチュエータ31から遠位側に延在し、
図2および4に関連して概説したように、キャリア21およびガイドスリーブ23のそれぞれの貫通開口部を通して受けられることを意図される。
【0064】
図1から
図4に関連して概説された把持装置が少なくとも1つの駆動装置に接続され得、この少なくとも1つの駆動装置は、把持装置の近位-遠位軸に沿わせて、さらには、把持装置の近位-遠位軸に対して垂直である平面において、把持装置を移動させるように構成され、それにより、少なくとも2つの位置の間でるつぼまたは他の対象物を運搬するように構成および適合された運搬システムを形成する。
【0065】
図6に関連して、対象物を把持する例示のプロセスを概説する。例えばるつぼである対象物100が表面の上に配置される。
図6aに示されるように、初期状態において把持装置1が対象物の上に配置され、ここでは、把持装置の近位-遠位軸が対象物と交差しており、把持脚部24の遠位側先端部が対象物の近傍に配置されており、つまり具体的に示される実施例では下方を指している。プランジャが把持装置の遠位方向につまり対象物100の方に向かって前進させられ、それにより把持脚部24の遠位側先端部同士を引き離し、
図6bに描かれるように、把持装置を開ける。次いで、把持装置1が、示される例示の実施例では下向きである、遠位方向に移動させられ、それにより
図6cに描かれるように円周方向において対象物を包囲するように把持脚部の遠位側先端部を配置する。次いで、プランジャが近位方向に後退させられ得、それにより、把持脚部の湾曲した湾曲部分の弾性復元力により把持脚部24の先端部分が径方向内向きに移動する。したがって、先端部分が対象物100に当接し、径方向内向きの力を対象物100に作用させる。対象物に作用する上記力が、一方で対象物の断面寸法に左右され、他方で把持脚部の幾何学形状および把持脚部の湾曲部分のばね剛性に左右されることを、当業者であれば容易に認識するであろう。したがって、ヘッドは対象物100の断面寸法および重量に応じて選定され得る。その理由は、一方で対象物の重量より大きい摩擦力を誘発するのに十分な範囲内で対象物に作用する径方向内向きの把持力を発生させるように、それでも他方で過剰な力による対象物の損傷を回避するように、選定された把持脚部をヘッドが装備するからである。湾曲部分の径方向内側に作用する復元力により対象物が把持装置に添着されると、把持装置を近位側にまたは特定の実施例では上方に移動させるときに対象物が表面から持ち上げられ得る。把持装置が目標場所まで移動することができる。上に提示されるプロセスおよび把持装置の機能に関する説明から、対象物を目標場所に配置する次のプロセスは当業者には明らかである。把持脚部の数が3つ以上である場合、また特には、さらに、把持脚部が円周方向において等距離に分布する場合、対象物に作用する径方向内向きの力が自然に中心に向かい、対象物が把持脚部の間から外へ横方向にスリップする危険がなくなる。
【0066】
図7に示される実施例では、るつぼ100が炉500内に配置されている。るつぼ100が蓋101により頂面において閉じられており、試料を収容することができる。遠位側スパイク303を備えるプランジャが、スパイク303を用いて蓋101を貫通して通過するために遠位側に前進させられ得、それにより、炉500内部の環境に対して、るつぼ100内に収容される試料を露出させる。
【0067】
図8は、把持装置1と、トレー40と、を備える試料操作システムを概説する。トレーが、るつぼ100を受けることを意図され、受けるように適合された多数の受け用凹部41、41a、41bを備える頂面を有する。把持脚部24の先端部分を含めた把持装置1の遠位端の細くなっている設計により、2つの隣り合うるつぼを互いの非常に近くに配置することが可能となる。受け用凹部は円形断面を有することができ、2つの直接に隣り合う受け用凹部(例えば、41aおよび41bなど)の間の距離dが、受け用凹部の直径の20%未満であってよい。これによりトレー上でるつぼを密集的に配置することが可能となる。受け用凹部に加えて、細長い凹部42がトレー40の頂面に設けられる。細長い凹部42が受け用凹部41から径方向に延在し、受け用凹部に一体化している。4つの細長い凹部42が各受け用凹部41に一体化されて示される。この数は、把持装置に設けられた把持脚部24の数に等しい。細長い凹部42は、把持装置の近位-遠位軸の周りにある把持脚部と等しい、受け用凹部41の周りでの円周方向分布を有する。細長い凹部42の幅は、少なくとも、把持脚部の先端部分の遠位側部分の幅である。これにより、受け用凹部41に一体化している細長い凹部42の内部で把持脚部の先端部分(少なくとも、それらの遠位側先端部領域)を受けること、および、上記細長い凹部の内部で受け用凹部に対して把持脚部の先端部分を径方向に移動させることが可能となる。これにより、把持脚部24の先端部分の把持移動および解放移動が可能となる。示される実施形態では、細長い凹部が2つの対角線上に隣り合う受け用凹部に接続されて一体化されている。したがって、細長い凹部の長さは2つの最も近い受け用凹部41aおよび41bの間の最小距離dの約1.4倍であり、これにより、るつぼが密集的にパッキングされているトレーの上で把持脚部24の先端部分の十分な移動距離を得ることが可能となる。さらに、細長い凹部42は受け用凹部41より深くなっており、それによりさらに、細長い凹部の内部で把持脚部24の先端部分を非制限的に移動させるのを支援する。
【0068】
図9から
図12は、このような把持脚部24の例示の実施形態を示す。
図9は平面図を示しており、
図10は把持脚部の第1の実施形態の側面図を示している。
図11は平面図を示しており、
図12は把持脚部の第2の実施形態の側面図を示している。
図9から明らかなように、把持脚部24は、上で概説したように、把持脚部をヘッドのキャリアに取り付けるためのねじを受けるための貫通する孔209を備える近位側固定部分201を備える。把持脚部24は、湾曲部分202と、作動部分203と、先端部分204と、をさらに備える。湾曲部分202は、固定部分201から遠位側に延在する。湾曲部分202は、概略台形形状であり、遠位方向において先細になっており、さらに、湾曲部分に遠位側で隣接する作動部分203に一体化している。湾曲部分202は固定部分から延在する2つの湾曲脚部208を備え、2つの湾曲脚部208の間に窓210が成形されている。湾曲部分202が、図面の平面に対して垂直である本描写においては、湾曲部分の平面に対して垂直な軸に沿って作用する力によって誘発されるモーメントに対して最小曲げ剛性を有する。しかし、他の方向においては、曲げ剛性が先端部分が横方向に逸脱移動するのを防止することなどのために比較的高くなっている。湾曲脚部208は、遠位側に収束しており、作動部分203に一体化している。上で概説されたように、把持脚部が固定部分201において把持装置のヘッドに堅固に取り付けられて、作動部分203が把持装置のプランジャにより径方向外側に押し込まれる場合、上記移動は、固定部分201と作動部分203との間に挿置された部分の曲げを必要とする。この挿置された部分の弾性限界範囲内で上記曲げが起こる場合、この挿置された部分が湾曲して弾性復元力を発生させる。したがって、湾曲部分202は実際には固定部分201と作動部分203との間に画定される。湾曲部分の台形形状が、プランジャによる上で概説された種類の把持装置に設置された把持脚部の作動時に先端部分が径方向に直線的に移動するのを保証する。作動部分203は、突起部205と、窓206と、を備える。
図10および
図12によりそれぞれ明らかとなるように、突起部205が、作動部分203の基部から、把持脚部24の概略の近位-遠位の延在範囲に対しての第1の方向へ、突出する。さらに、突起部205は遠位方向においてつまり先端部分204に向かって傾斜している。したがって、プランジャが遠位側に移動して把持脚部の遠位側パートを径方向外側に引き離すときの、把持装置に設置された把持脚部の突起部と把持装置のプランジャとの間の摺動移動が支援される。
【0069】
図9による実施形態では、窓206および突起部205が概略弓形であり、ここでは、突起部205が、弓形突起部205および弓形窓206の共通の直線基線のところで作動部分203の基部に一体化している。突起部205は、プランジャに接触することを意図された丸みのある先端部を備える。上記の丸みのある形状が、さらに、プランジャと突起部との間の円滑な摺動を支援する。
【0070】
図11による実施形態では、窓206が実質的に長方形であり、対して突起部205が台形形状であり、ここでは、基線の反対側の辺が凹形の弓形である。突起部205は、突起部205および窓206の共通の直線基線のところで作動部分203の基部に一体化している。突起部205は、円筒形プランジャに接触することを意図された丸みのある先端部ラインを備える。上記の丸みのある形状が把持脚部を案内し、横方向の逸脱移動を防止するのを支援する。
【0071】
窓206および突起部205が概して適合するサイズおよび形状を有することができるか、または窓206が突起部205より大きくてもよい。これは、突起部205が、作動部分203の基部の中への、例えばレーザー切断による、適切な切断を実施して、次いで作動部分203の基部を形成するシートの平面から外へ曲げられることにより、製造され得る、という事実による。しかし、他の実施形態では、突起部205が、作動部分203の基部に取り付けられた別個の部材であってもよい。限定しないが、接着、はんだ付け、溶接、ねじ留め、およびリベット留めを含めた、任意適切な取り付け方法が適用され得る。突起部205が作動部分203の基部に取り付けられた個別の部材である場合、作動部分203の基部が窓206を備えない可能性があることが理解されよう。
【0072】
作動部分203は、遠位側において、作動部分203に遠位側で隣接する先端部分204に一体化している。先端部分204は、最も遠位側の部分207において、先端部分のより近位側の部分に対して角度を付けられている。最も遠位側の部分207は、突起部205の方向とは反対の方向に角度を付けられている。認識され得るように、把持脚部24が上で概説されたようにヘッドまたは把持装置に適切に設置されるとき、突起部205は作動部分203の基部から径方向内側に突出する。したがって、ヘッドまたは把持装置に設置された把持脚部の先端部分204の最も遠位側の部分207は、先端部分204のより近位側の部分と比較すると、遠位方向においてより収束的ではないか、または、把持脚部の具体的な幾何学形状およびプランジャの位置に応じて、つまり、把持装置をその遠位端のところで開けているかまたは閉じているかに応じて、遠位側に分岐している可能性もある。最も遠位側の先端部分207の上記の角度付けは、把持されることになる対象物をより良好に受け入れるように機能する可能性がある。把持脚部24は、一般に、シート金属の部片から製造され得、特にはばね鋼のシートから製造され得る。
【0073】
トレー40a、bが
図14aおよびbにより詳細に示される。トレー40a、bは、多数の受け用凹部41を備える頂面43tを有する。受け用凹部41の断面は円形である。受け用凹部41の円形断面の直径はトレー40の種類区分に応じて多様であってよく、
図14aは、るつぼまたは試料などのより大きい対象物100のためのトレー40aを示しており、したがって、より小さい対象物100と共に使用されることを意図された
図14bに示されるトレー40bの直径より大きい直径を有する受け用凹部41を示している。
【0074】
両方のトレーで、細長い凹部42が受け用凹部41から径方向に延在し、受け用凹部41を互いに接続する。
【0075】
図14aに示されるように、細長い凹部42の長さ42lが、受け用凹部の外側リムと最も近い隣り合う受け用凹部の外側リムとの間の距離dより大きい。
図14aでは、細長い凹部の長さが好適には如何にして測定されるかが示される:細長い凹部の長さが、細長い凹部42の2つの端点を含むライン(つまり、径方向に延在する細長い凹部42の事例では、細長方向に延在するライン)上に配置された2つの隣り合う受け用凹部の内接円の間の距離である。
【0076】
図14aおよびbの両方で、細長い凹部42が受け用凹部41から径方向に延在して受け用凹部41に一体化している。描かれるトレー40aおよび40bの両方で4つの径方向に延在する細長い凹部42が存在し、細長い凹部42のこの数は把持装置および/またはヘッド組立体(これらのためにトレー40a、40bが構築される)の把持脚部24の数に等しい。さらに、細長い凹部42が円周方向において均等に分布する:細長い凹部42が常に互いから90°離間される。これは、把持装置および/またはヘッド組立体(これらのためにトレー40a、40bが構築される)の周りで把持脚部によって形成される円周方向パターンに適合する。
【0077】
他の把持部と共に使用されるためのトレー40は、これらの把持部の把持手段の必要な移動自由度を得るのを可能にするために多様な形状の細長い凹部42を装備することができる。受け用凹部41の深さが対象物100の高さより小さい場合、把持部が対象物100を握持することができるのであれば細長い凹部42は排除されてもよい。
【0078】
図14aおよび
図14bに示される両方のトレー40がコーディング50を備える。コーディングのうちの1つのコーディングは電子コーディング50eである。電子コーディング50eは、チップ51に電力供給する導体と同じ導体を介して読み出され得るチップ51を備える。チップ51のための導体の接点51a、51bは、必要である場合に容易に洗浄され得る。
【0079】
別のコーディング50は機械的コーディング50mである。機械的コーディング50mは、トレー40の側壁43sのうちの1つの側壁内に機械加工されたパターンである。機械的コーディング50mは、1組の接触センサなどの適切な検出手段により、1組の近接センサにより、または、光信号を拡散したりまたは遮断したりする方法により、読み出されるのに適する。描かれている別のコーディング50はRFIDチップ50rである。
【0080】
別の実施形態では、コーディング50が、例えばバーコードまたはQRコードなどの、2Dコーディングパターン50pである。加えてまたは代わりに、コーディング50が、トレー40の上に印刷されるかまたは他のかたちで付着される対人可読の数字および/または文字の組み合わせ50ht、50hiとなり得る。
【0081】
電子コーディング50e、機械的コーディング50m、およびRFIDチップ50rであるコーディング50が、トレー40の側壁43sのうちの1つの側壁上に配置される。対人可読コード50ht、50hi、および2Dコーディングパターン50pが、トレー40の頂面43t上に配置される。描かれる実施形態では、コーディング50が、一意の識別情報に加えて、所与のトレーの属するトレーの種類区分に関する情報を含む。これは、対人可読の数字および文字の組み合わせ50ht、50hiの事例では、可視である。文字50htは、この実施例では、
図14aの事例では「大きい試料に適するトレー」を意味する「L」であり、
図14bの事例では「小さい試料に適するトレー」を意味する「S」である、トレーの種類区分を示している。数字50hiは一意のID番号であり、その結果、トレー種類区分識別子およびID番号の組み合わせが、トレーの大きなセットの中で任意のトレー40を識別するのに使用され得るようになる。好適には、使用者が、使用されるトレーのためのユーザ固有のコーディングを自分で作成することができる。ユーザ固有のコーディングがチップ51に書き込まれ得、RFIDチップの信号に関連付けられ得、ならびに/あるいは、2Dコーディングパターン50pとしておよび/または対人可読コード50ht、50hiとしてのラベルを印刷することができ、それにより、使用者が既存の試料管理システムまたは対象物管理システムに対してトレーを適合させることが可能となる。
【0082】
図13はトレーホルダ60を描いている。トレーホルダ60は、所定の向きでトレー40を保持するように適合される。したがって、トレーホルダ60は凹部を備え、トレー40がこの凹部の中に嵌め込まれる。
【0083】
図14aおよびbに描かれるトレー40は、それらの頂面43tで見ると、長方形であり、この長方形の1つの角が、この角において接合される2つの側壁43sの間にある平坦な接続面によって置き換えられている。これにより、この領域の外側において、トレー40の形状を表す長方形形状に対しての凹部43xが得られる。この凹部43xにより、長方形形状の対称性が崩れ、一意的な向きが画定される。
【0084】
図13に示されるトレーホルダ60は、その他の点では長方形形状の1つの角に取って代わる適合する突出部63xを備える対応する形状を有する。
【0085】
トレーホルダ60が、トレー40のコーディング50を読み出すための手段55を備える。読み出すための手段55は、電子コーディング50eの読み出し用電子装置55e、機械的コーディング50mを読み出すためのセンサ55m、RFIDチップ読み取り装置55rである。これらの手段はトレーホルダ60の側壁63s上に配置され、さらに、トレーホルダ60の中にトレー40が挿入されたときにトレー40の個別のコーディング50を読み出すことがきるような位置に配置される。
【0086】
トレー40がトレーホルダ60内に配置されると、トレーホルダ60の接触領域56a、56bがトレー40の電子コーディング50eの接点51a、bに接触し、チップ51に保存されているコーディング50の情報が読み出され得、処理されるかまたは表示されるためにライン70を介して送信される。
【0087】
図15は、貫通位置44を備えるトレー40を通る断面図を示している。貫通位置44はトレー40の頂面43tの上にある隆起部である。この貫通位置44は断面が実質的に円形であるが、これは示される断面では可視ではない。この円形断面の直径は、受け用凹部41の直径に実質的に等しい。その周囲部に対する貫通位置44の高さは、貫通位置44の上に配置された対象物またはるつぼの貫通アクション中に把持脚部の先端部分をトレー40に衝突させないようにするような高さである。示される実施形態では、貫通位置44の高さが、この図ではトレー40の頂面43tからの1組の凹部として見られる受け用凹部41の深さに実質的に等しい。
【0088】
把持装置1は試料操作システムの一部である。試料操作システムは材料特性化のための熱分析システムの一部である。
図16は、熱分析システムの実施例である熱分析器具33を示している。
図16に示されるように、実質的に水平に延在する作業エリア71が中に形成された漏斗形状のアクセスチャンネル72を有し、漏斗形状のアクセスチャンネル72が、例えば示差走査熱量計または熱重量分析器具である熱分析器具33の試料受け支持体73にアクセスするのを可能にする。試料受け支持体73は、この実施形態では、熱分析センサである。このような熱分析器具に精通する当業者であれば
図16の説明図が本質的に概略的であること十分に理解するであろうが、このような器具の実際的な実施形態は、しばしば、分析されることになる対象物100を載せたり降ろしたりすることのみを目的としてセンサを露出させるために、センサの取り外し可能である蓋および/または摺動可能である緩衝装置を有することができる。
【0089】
アクセスチャンネル72からある程度の水平方向距離を置いて、トレー40が、作業エリア71の一部であるトレーホルダ60内に配置される。トレー40は、具体的には分析されることになる物質の標本を受けるためのるつぼであってよい複数の対象物100を保持するように形成された受け用凹部41を備える。このトレー40は、例えば行と列の配列として、中に配置される対象物100またはるつぼを有するように形成され得る。るつぼは対象物100の一例である。
【0090】
トレー40はトレーホルダ60内に配置される。さらに、トレー40は、示される実施形態では、チップ51を備える電子コーディングを装備する。トレーホルダ60は、トレー40の上にある接点51a、bを介してチップ51に電力供給するためのおよびチップ51を読み出すための接点を備える。トレーホルダ60に含まれるチップ51に電力供給するためのおよびチップ51を読み出すための接点がライン70に接続され、ライン70が、コーディングに含まれる情報を制御装置80に送る。
【0091】
図16に示される試料操作システムは、把持装置1と、トレーホルダ60と、制御装置80と、を備える。試料操作システムは、把持装置1により、トレーホルダ60内に配置されたトレー40の上に配置された試料を操作すること、および、この試料操作システム内で使用され得るトレー40の多様な種類区分に対してこの操作を適合させることを可能にする。
【0092】
運搬システム90が、駆動装置91と、示される実施形態では把持装置である把持部と、備える。駆動装置91は、把持装置1の近位-遠位軸2に沿わせて、および、それに対して垂直に、把持装置1を移動させるように構成される。把持装置1は
図1から
図6でより詳細に説明されている。近位-遠位軸2に対して垂直である軸に沿わせて把持装置1を移動させるために、運搬システム90が水平方向レールを備え、駆動装置91が例えばベルトによりこの水平方向レールに沿って移動させられる。近位-遠位軸2に沿わせて把持装置1を移動させるために、把持装置1が近位-遠位軸2に沿って配置された棒に取り付けられ得、この棒が駆動装置91により上下に移動させられる。
【0093】
描かれる実施形態では、この実施例ではデジタルカメラであるカメラ92が把持装置1に取り付けられる。カメラの視野に照光するための光源92aがカメラ92に取り付けられる。好適には、光源92aが、カメラ92を囲むリングライトの形態である。光源92aは好適には偏光を発し、カメラ92が、カメラ92への望ましくない反射を弱めるための偏光フィルタを有する。光源92aは、例えば、可視スペクトルの白色光を発する。
【0094】
駆動装置91は、水平方向(X軸-Y軸)および垂直方向(Z軸)の両方で、カメラ92および光源92aと共に把持装置1を作業エリア71の情報の多様な位置まで移動させる。これらの位置は、具体的には、試料受け支持体73のうちの任意の1つの試料受け支持体73のところで把持装置1により対象物100を受けたりまたは解放したりするのに適するか、あるいは、トレー40の受け用凹部41により、試料受け支持体73、および/または対象物100、および/またはトレー40、のうちの任意の1つの画像または少なくとも部分的な画像を捉えるのに適する、位置を含む。
【0095】
熱分析器具33が評価手段34をさらに備え、評価手段34は、カメラ12によって捉えられた1つまたは複数のイメージを使用して、対象物100を識別するか、または、トレーホルダ60内のトレー40の上にある対象物の位置および存在を識別する。評価手段34からの情報が同様に、示される実施形態では、制御装置80に提供される。
【0096】
ライン70により制御装置80に送信される、コーディング50に含まれる情報が、トレー40の属する種類区分に対して、さらには、対象物100(受け用凹部41がこの対象物100を意図しており、受け用凹部41がこの対象物100に合うように適合されている)に対して、把持装置1の動きを適合させるのを可能にする。描かれる実施例では、種類区分「L」のトレーが、種類区分「S」のトレーより大きい直径を有する対象物に合うように適合される。制御装置80が、トレーホルダ60内のトレー40が種類区分「L」であるという情報をライン70によって受信する場合、制御装置80がトレーホルダ60内のトレー40が種類区分「S」であるという情報をライン70によって受信する事例と比較してより大きい程度で開くように把持装置1が制御装置80によって指示を出される。
【0097】
描かれる実施例では、ライン70により制御装置80に送信される、コーディング50に含まれる情報が一意の識別子をさらに有する。この識別子は熱分析器具33内で手元で使用され得る1組のトレー40において一意である。この実施例では、使用者が、トレーのその位置およびトレーの一意のコーディングを指定することにより、対象物を識別することができる。使用者が、例えば、対象の試料が所与の識別子を有するトレー40の2番目の列内の3番目の受け用凹部41内に配置されることを指定することができる。さらに、使用者が、この対象物100がより低い加速度で移動させられるべきであることまたはこの対象物100がトレー40上で最初に測定されるべきものであることを指定することができる。把持装置の制御装置80が、要求に応じて所定の試料を特別に取り扱うためにこの情報を使用することができる。
【0098】
描かれる実施形態のトレー40は青色である。熱分析システムを用いて分析される試料は、通常は、金色、メタリックグレー、および/または白色のるつぼである。したがって、青色のトレー40に対して有意な色の対照性が存在する。これは、トレーの上にある試料を認識することおよび評価手段34によって行われるかたちで空の受け用凹部を識別することを支援する。
【0099】
本開示の主題を例示の実施形態によって説明してきたが、これらの例示の実施形態が特許請求される発明の範囲を限定することを意図されないことを理解されたい。特許請求の範囲が本明細書で明確には示されたりまたは開示されたりしない実施形態を包含すること、および、本開示の教示を実行する例示の形態で開示されるものから逸脱する実施形態も特許請求の範囲によって包含されることになること、が認識されよう。
【符号の説明】
【0100】
1 把持装置
2 近位-遠位軸
11 基部部材
20 ヘッド組立体
21 キャリア
22 湾曲部分
24 把持脚部
30 プランジャ
31 プランジャアクチュエータ
40 トレー
41 受け用凹部
41a 受け用凹部
41b 受け用凹部
42 細長い凹部
50 コーディング
50e 電子コーディング
60 トレーホルダ
80 制御装置
100 対象物
101 蓋
201 固定部分
202 湾曲部分
203 作動部分
204 先端部分
205 突起部
207 先端部分
208 湾曲脚部
209 孔
301 接触部分
302 先細部分
303 遠位端
500 炉
D 遠位方向
d 距離
P 近位方向
【外国語明細書】