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特開2024-47581サンプルトレイ、およびサンプルトレイを備える熱量測定または熱分析調査のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047581
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】サンプルトレイ、およびサンプルトレイを備える熱量測定または熱分析調査のための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/20 20060101AFI20240329BHJP
   G01N 25/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G01N25/20 D
G01N25/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023161698
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】22197862
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ワーグナー
(72)【発明者】
【氏名】サムエル・シュナイダー
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA02
2G040AB12
2G040CA02
2G040EA07
2G040EA11
2G040EB02
2G040FA01
2G040FA04
2G040GC01
(57)【要約】
【課題】制御された周囲条件下でサンプルを熱量測定または熱分析測定装置に供給する手段を開発する。
【解決手段】本発明は、熱量測定または熱分析調査の準備ができた材料のサンプルを保持するためのサンプルトレイに関し、熱量測定または熱分析測定装置およびそれに関連する上記サンプルトレイを備える、熱量測定または熱分析調査のための装置に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱量測定または熱分析調査の準備ができた材料のサンプルを保持するためのサンプルトレイ(1)であって、前記サンプルを収容するための内部トレイスペース(11)を取り囲むように適合されたレセプタクル(10)と、前記内部トレイスペース(11)と前記レセプタクル(10)の外側(12)との間に熱を流すための熱輸送手段(20)とを備える、サンプルトレイ(1)。
【請求項2】
前記熱輸送手段(20)は、前記内部トレイスペース(11)内部に配置された熱電気ペルチエ冷却器(30)であって、熱吸収側(31)と熱放出側(32)とを有する、ペルチエ冷却器(30)を備え、前記熱輸送手段(20)は、前記ペルチエ冷却器(30)と前記レセプタクル(10)の前記外側(12)との間に熱を流すための手段を備える、請求項1に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項3】
前記熱輸送手段(20)が熱交換器(24)を備える、請求項1または2に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項4】
前記熱輸送手段(20)は、前記内部トレイスペース(11)と前記レセプタクル(10)の前記外側(12)との間に延びる回路(26)内を循環する熱伝達媒体を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項5】
サンプルパン(14)のための支持体(13)であって、前記内部トレイスペース(11)内部に配置されて、前記熱輸送手段(20)と熱接触している、支持体(13)をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項6】
前記支持体(13)が円板形を有する、請求項5に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項7】
前記レセプタクル(10)は、前記サンプルを前記内部トレイスペース(11)に挿入するとともに、前記サンプルを前記内部トレイスペース(11)から取り外すための開口(15)と、第1の位置において前記開口(15)を閉鎖し、第2の位置において前記開口(15)を開放して、それによって前記サンプルの挿入および取外しを可能にするように適合されたカバー(17)とを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項8】
ガスを前記内部トレイスペース(11)に導入するためのガス入口と、前記内部トレイスペース(11)からガスを除去し、それによって前記内部トレイスペース(11)を通るガス流を可能にするためのガス出口とをさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項9】
前記外側(12)から前記内部トレイスペース(11)を熱的に絶縁するための絶縁体(40)をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項10】
前記絶縁体(40)は、前記サンプルがその中に収容されることを可能にするように内部陥凹領域を有する前記レセプタクル(10)の内部ライニングの形態である、請求項9に記載のサンプルトレイ(1)。
【請求項11】
熱量測定または熱分析調査のための装置(100)であって、熱量測定または熱分析測定装置(110)を備えるとともに、サンプルトレイ(1)から前記測定装置(110)における測定位置までのサンプルの転送を可能にするようにそれと関連づけられた請求項1から10のいずれか一項による前記サンプルトレイ(1)を有する、装置(100)。
【請求項12】
前記熱量測定または熱分析測定装置(110)は、前記測定装置(110)のための動作エリアを含むハウジング(111)を備え、前記サンプルトレイ(1)は、前記動作エリアに装着されるように適合されている、請求項11に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記サンプルトレイ(1)から前記熱量測定または熱分析測定装置(110)の測定位置までの前記サンプルの前記転送をもたらすための転送デバイス(120)をさらに備える、請求項11または12に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記サンプルトレイ(1)から前記熱量測定または熱分析測定装置(110)の前記測定位置までの転送の経路を、大気環境から密封するように適合されたフード(130)をさらに備える、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記測定位置が、前記測定装置(110)の炉(112)内部に位置している、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱量測定または熱分析調査の準備ができた材料のサンプルを保持するためのサンプルトレイに関し、熱量測定または熱分析測定装置およびそれに関連する上記サンプルトレイを備える、熱量測定または熱分析調査のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明では、熱量測定または熱分析調査という用語は、それらに限定はされないが、熱量測定、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)、熱重量分析(TGA:thermogravimetric analysis)、誘電率の決定、およびこれらの方法の組合せを含む、様々な測定方法を包含する。
【0003】
これらの調査の内の特定のタイプには、サンプル材料を温度プログラムに供するように適合された、熱量測定または熱分析測定装置の炉内に、材料の少なくとも1つのサンプルを配置することが含まれる。材料の特性は、その材料が温度とともに変化するときに、試験される。
【0004】
従来方式では、材料の1つまたは複数のサンプルが、実験室の周囲条件下でオペレータによって準備される。次いで、熱量測定または熱分析調査の準備ができているサンプル(1つまたは複数)が、1つまたは複数のそのようなサンプルを保持するための、サンプルトレイに配置される。サンプルトレイは、周囲条件下でオペレータによって測定装置に運ばれる。次いで、1つまたは複数のサンプルが、手動または自動で上記炉に挿入される。
【0005】
しかしながら、特定のタイプの調査に対しては、例えば、湿度、酸素の不在、および、最も重要なのは、温度に関して、制御された周囲条件下でサンプルを炉に供給することが有益であるか、または必要であることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、制御された周囲条件下でサンプルを熱量測定または熱分析測定装置に供給する手段を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、熱量測定または熱分析調査の準備ができた材料のサンプルを保持するためのサンプルトレイであって、上記サンプルを収容するための内部トレイスペースを取り囲むように適合されたレセプタクルと、上記内部トレイスペースと上記レセプタクルの外側との間に熱を流すための熱輸送手段とを備える、サンプルトレイによって達成される。
【0008】
本発明の第1の態様によるサンプルトレイの熱輸送手段に起因する熱流によって、サンプルが熱量測定または熱分析調査のために使用されるときまで、例えば、サンプルが炉に挿入されるときまで、レセプタクル内に配置されたサンプルの温度を制御することが可能である。
【0009】
レセプタクルは、所望の数のサンプルを内部トレイスペースに挿入することを可能にする、任意の形状を有することができる。例えば、レセプタクルおよび/または内部トレイスペースは、立方体の形態を有してもよい。
【0010】
熱輸送手段は、周囲実験室条件に対するサンプルの冷却が達成されるように、上記内部トレイスペースと上記レセプタクルの外側との間で熱を流してもよい。すなわち、熱は内部トレイスペースから上記レセプタクルの外側へと運ばれる。このようにして、室温直下の温度へのサンプルの冷却が達成され得る。代替的に、サンプルは、-30℃またはそれを超える低い温度に冷却され得る。
【0011】
代替的に、熱輸送手段は、大気実験室条件に対するサンプルの加熱が達成されるように、上記内部トレイスペースと上記レセプタクルの外側との間に熱を流してもよい。すなわち、熱は、上記レセプタクルの外側から内部トレイスペースまで運ばれる。
【0012】
本発明の第1の態様の一実施形態では、上記熱輸送手段は、上記内部トレイスペース内部に配置された熱電気ペルチエ冷却器(thermo-electrical Peltier cooler)を備え、このペルチエ冷却器は、熱吸収側と熱放出側とを有し、上記熱輸送手段は、ペルチエ冷却器の少なくとも片側とレセプタクルの外側との間に熱を流すための手段を備えてもよい。
【0013】
そのような実施形態では、ペルチエ冷却器の熱吸収側が、サンプルと熱接触していてもよく、熱輸送手段は、上記熱放出側から上記レセプタクルの外側へ熱を伝達する手段を備えてもよい。このようにして、サンプルの冷却が達成できる。
【0014】
ペルチエ冷却器の熱放出側がサンプルと熱接触していてもよく、熱輸送手段が上記レセプタクルの外側から熱吸収側へ熱を伝達する手段を備えてもよい、実施形態があってもよい。このようにして、サンプルの加熱が達成できる。
【0015】
ペルチエ冷却器は、長寿命であり、可動部品または循環液体を必要としない、小寸である、および形状が柔軟である点で有利である。さらに、例えば、-30℃の範囲の非常に低い温度を達成することができる。
【0016】
本発明の第1の態様によるサンプルトレイの熱輸送手段は、熱交換器を備えてもよい。熱輸送手段が、上述のようなサンプルの冷却に使用されるペルチエ冷却器を備えるときには、熱交換器は、ペルチエ冷却器の熱放出側と熱接触していてもよい。熱交換器は、熱放出側からレセプタクルの外側へ熱を運ぶように適合されていてもよい。熱輸送手段が、上述のようなサンプルの加熱に使用されるペルチエ冷却器を備えるとき、熱交換器は、ペルチエ冷却器の熱吸収側と熱接触していてもよい。熱交換器は、レセプタクルの外側から熱吸収側へと熱を運ぶように適合されていてもよい。
【0017】
本発明の第1の態様の一実施形態では、上記熱輸送手段は、上記内部トレイスペースと上記レセプタクルの上記外側との間に延びる回路内を循環する熱伝達媒体を備えてもよい。上記熱伝達媒体は、水でもよい。回路は、管を備えてもよい。
【0018】
サンプルトレイは、サンプルパンのための支持体をさらに備え、この支持体は上記内部トレイスペース内部に配置されて、上記熱輸送手段と熱接触していてもよい。例えば、熱輸送手段が上述のようなサンプルを冷却するためのペルチエ冷却器を備えるとき、ペルチエ冷却器の熱吸収側は、支持体および/またはサンプルパンと熱接触していてもよい。
【0019】
一実施形態では、支持体は、複数のサンプルパンを支持するように装備されており、サンプルパンは、例えば、円形に配置されるか、長方形パターンに配置されるか、または2番目毎の列が、隣接する列に対して、列内の2つのサンプルパンの間の距離の半分ずらされている、列群にサンプルが配置されているパターンに配置されている。そのような支持体は、制御された周囲条件において、複数のサンプルを維持することを可能にする。一実施形態では、支持体は、48または96個のサンプルパンを保持する。
【0020】
支持体は、少なくとも1つのサンプルパンを支持するのに実用的である、任意の形状を有してもよい。例えば、支持体は円板形であってもよい。支持体は、回転軸のまわりに回転可能となるように装着されてもよい。支持体は、少なくとも1つのサンプルパンを支持するように適合されてもよい。サンプルパンは、支持体に装着可能であるとともに、上記支持体から取外し可能としてもよい。サンプルパンは、材料の1つのサンプルを受け入れるように適合されてもよい。さらに、サンプルパンは、測定位置、例えば、熱量測定または熱分析測定装置の炉内、に配置されるように適合されてもよい。
【0021】
本発明の第1の態様の一実施形態では、レセプタクルは、上記サンプルを上記内部トレイスペースに挿入するとともに、上記サンプルを上記内部トレイスペースから取り外すための開口と、第1の位置において開口を閉鎖し、第2の位置において開口を開放して、それによって上記サンプルの挿入および取外しを可能にするように適合されたカバーとを備えてもよい。レセプタクルは、2つの部分を備えてもよい。第1の部分は、上記サンプルを受け入れるように適合された、受入部としてもよい。受入部は、開口が定義されている領域内を除く内部トレイスペースを取り囲んでもよい。第2の部分は、上記第1の位置において開口を閉鎖し、上記第2の位置において上記開口を開放するように適合されたカバーであってもよい。カバーは、例えば、ヒンジを介して、上記受入部に接続されてもよい。代替的に、上記カバーを上記受入部から完全に切断することが可能であり、それによってレセプタクルの開口を開放する。
【0022】
サンプルトレイは、内部トレイスペースにガスを導入するためのガス入口と、内部トレイスペースからガスを除去し、それによって上記内部トレイスペースを通るガス流を可能にするためのガス出口とをさらに備えてもよい。内部トレイスペースを通って流れるガスは、とりわけ、上記内部トレイスペース内部の湿度および/または酸素条件を制御することを可能にできる。ガス流は、例えば、内部トレイスペースの容積および内部幾何学形状に依存する。
【0023】
一実施形態では、サンプルトレイは、外側から内部トレイスペースを熱的に絶縁するための絶縁体をさらに備えてもよい。このようにして、内部トレイスペース内部の温度、およびそれによってサンプルの温度が、より容易に、かつより安定して維持され得る。絶縁体は、内部トレイスペースの一部を絶縁するように配置されてもよい。代替的に、絶縁体は、内部トレイスペース全体を絶縁するように配置されてもよい。
【0024】
本発明の第1の態様の一実施形態では、上記絶縁体は、上記サンプルがその中に収容されることを可能にするように内部陥凹領域を有する上記レセプタクルの内部ライニング(inner lining)の形態であってもよい。これは、サンプルの非常に良好な熱的絶縁を可能にする。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、熱量測定または熱分析調査のための装置であって、熱量測定または熱分析測定装置を備えるとともに、上記サンプルトレイから上記測定装置における測定位置までサンプルの転送を可能にするように、それと関連づけられた本発明の第1の態様によるサンプルトレイを有する、熱量測定または熱分析調査のための装置が提供される。熱量測定または熱分析測定装置(以降、「測定装置」と略される)は、当該技術において一般に知られている従来型測定装置であってもよい。例えば、測定装置は、示差走査熱量測定計(Differential Scanning Calorimetry instrument)または熱重量分析計(Thermogravimetric Analysis instrument)を備えてもよい。
【0026】
本発明の第2の態様による装置の一実施形態では、上記熱量測定または熱分析測定装置は、上記測定装置のための動作エリアを含むハウジングを備えてもよく、上記サンプルトレイは上記動作エリアに装着されるように適合されてもよい。サンプルトレイは、動作エリアに永久的に固定されるように適合されてもよい。代替的に、サンプルトレイは、上記動作エリアから取外し可能に適合されてもよい。サンプルトレイは、測定位置の近傍に配置されるように上記動作エリアに装着可能としてもよい。このようにして、サンプルトレイから測定位置までの輸送経路が短くできる。すなわち、サンプルの温度は、上記レセプタクルから上記測定位置までの輸送中に、わずかに影響を受けるだけか、またはまったく影響を受けないようにすることができる。これにより、熱量測定または熱分析調査の結果の品質を向上させることができる。
【0027】
装置は、サンプルトレイから熱量測定または熱分析測定装置の測定位置までの上記サンプルの上記転送をもたらすための転送デバイスをさらに備えてもよい。転送デバイスは、内部トレイスペース内部に収容された1つまたはいくつかのサンプルを把持して、それ/それらを上記測定装置の測定位置まで転送するように適合されてもよい。転送デバイスは、自動的に動作してもよい。転送デバイスは、ロボット式デバイスであってもよい。
【0028】
装置は、サンプルトレイから熱量測定または熱分析測定装置の上記測定位置までの転送の経路を、周囲環境から密封するように適合されたフードをさらに備えてもよい。次いで、例えば、上記で説明されたようなロボット式転送デバイスを使用することによって、フードを介して外側から離隔された内部スペースとして定義された内部フードスペースの完全に内部にある上記転送の経路に沿って、サンプルトレイから測定位置までサンプルを転送することが可能である。上記内部フードスペースの内側に所望の周囲条件を生成することを可能にし得る。例えば、内部フードスペースの内側に乾性ガスを供給することを可能にし得る。サンプルが、サンプルトレイ内で低い温度まで冷却されるとき、乾性ガスは、サンプルトレイから測定位置までの輸送中のサンプルのアイシングを予防することができる。
【0029】
本発明の第2の態様の一実施形態では、上記測定位置は、上記測定装置の炉内部に位置していてもよい。この炉は、炉ハウジング内に配置されてもよい。測定装置は、炉の動作を制御することを可能にする制御ユニットをさらに備えてもよい。制御ユニットには、上記炉の温度を制御する温度プログラムを含めてもよい。
【0030】
以下の説明においては、以下の図面を参照して、本発明が、例を用いてより詳細に明記される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の態様の実施形態によるサンプルトレイの概略断面図である。
図2】本発明の第2の態様の実施形態による、熱量測定または熱分析調査のための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の第1の態様の実施形態によるサンプルトレイ1の概略断面図である。上記サンプルトレイ1は、サンプルを収容するための内部トレイスペース11を取り囲むように適合されたレセプタクル10を備える。上記サンプルは、熱量測定または熱分析調査によって検査される材料を含む。
【0033】
図1に示される実施形態では、レセプタクル10は、受入部16およびカバー17を備える。受入部16は、上記サンプルを受け入れるように適合されている。受入部16は、開口15が定義されている領域を除いて内部トレイスペース11を取り囲む。受入部16は、内部トレイスペース11を外側12から熱的に絶縁するための絶縁体40を備えてもよい。絶縁体40は、上記サンプルをその中に収容することを可能にするように内部陥凹領域を有するレセプタクル10の内部ライニングの形態であってもよい。カバー17は、第1の位置で開口15を閉鎖して、第2の位置で開口15を開放するように適合されている。図1に示された実施形態では、カバー17は、受入部16から取外し可能であり、それによって内部トレイスペース11中へのサンプルの挿入、および内部トレイスペース11からのサンプルの取外しが可能になる。図1に示されたレセプタクル10の内部トレイスペース11は、立方体の形態を有する。
【0034】
図1に示されているサンプルトレイ1は、少なくとも1つのサンプルパン14を支持する、支持体13をさらに備える。サンプルパン14は、材料のサンプルを受け入れるように適合されるとともに、熱量測定または熱分析測定装置(以下を参照)の炉内部に位置する測定位置に配置されるようにさらに適合されている。1つの可能な実施例では、支持体13は円板形であってもよい。さらに、支持体13は、円板の中心を通る軸のまわりに回転可能であってもよい。さらに、または代替的に、支持体13は、2×48個のサンプルパン14を受け入れるように適合されてもよい。
【0035】
サンプルトレイ1は、内部トレイスペース11と上記レセプタクル10の外側12との間に熱を流すための熱輸送手段20をさらに備える。図1に示されている実施形態では、熱輸送手段20は、上記内部トレイスペース11内部に配置された、熱電気ペルチエ冷却器30を備える。ペルチエ冷却器30は、熱吸収側31と熱放出側32とを有する。熱吸収側31は、支持体13および/またはサンプルパン14と熱接触していてもよい。図1に示されている実施形態の熱輸送手段20は、上記内部トレイスペース11内部に配置されて、ペルチエ冷却器30の熱放出側32と熱接触している、熱交換器24をさらに備える。熱輸送手段20は、上記内部トレイスペース11とレセプタクル10の外側12との間に延びる回路26を循環する熱伝達媒体、例えば、水をさらに備える。熱交換器24は、回路26と接続している。回路26は、熱交換器24に接続された第1端26aと、レセプタクル10の外側12に配置されて、熱交換器24から冷却器27まで熱を運ぶ熱伝達媒体を冷却するように適合されている冷却器27に接続された第2端26bとを有する。このようにして、サンプルの冷却が達成され得る。
【0036】
図2は、本発明の第2の態様の実施形態による熱量測定または熱分析調査のための装置100の概略図である。装置100は、熱量測定または熱分析測定装置110(測定装置110と略される)と、それに関連するサンプルトレイ1とを備える。サンプルトレイ1は、それに限定はされないが、図1に示されているサンプルトレイ1であってもよい。図2に示されている実施形態では、測定装置110はハウジング111を備える。ハウジング111は、上記測定装置110のための動作エリアを含み、サンプルトレイ1は、上記動作エリアに装着されるように適合されている。
【0037】
測定装置110は、炉ハウジング113に配置された炉112と、炉112の動作を制御する制御ユニット(図示せず)とを備える。制御ユニットは、炉112の温度を制御する温度プログラムを含む。測定装置110の側定位置は、上記炉112内部に位置している。
【0038】
図2に示されている実施形態では、装置100は、サンプルトレイ1から炉112の内側の測定位置までのサンプルの転送をもたらすための転送デバイス120をさらに備える。図2に示されている実施形態では、転送デバイス120は、ロボットアーム121を備える。ロボットアーム121は、水平方向Hに第1の位置と第2の位置の間でレイル122に沿って移動可能である。把持器123が、ロボットアーム121の下端121aに配置されており、この把持器123は、水平方向Hに直角の垂直方向Vに沿って移動可能に適合されている。第1の位置において、ロボットアーム121は、サンプルトレイ1の上方に配置される。次いで、把持器123は、サンプルトレイ1の開口15を通って垂直方向Vに移動される(図1のサンプルトレイ1の場合には、カバー17を前もって取り外さなくてはならない)。把持器123は、材料のサンプルを運搬するサンプルパン14を把持するように適合されている。把持器123がサンプルパン14を把持すると、把持器123は、垂直方向Vを上方に移動される。次いで、図2に示されているように、ロボットアーム121が炉ハウジング113の上方に配置される第2の位置に到達するまで、ロボットアーム121は、水平方向Hにレイル122に沿って図2における左へ移動される。次いで、サンプルパン14が炉ハウジング113内部に位置する測定位置に到達するまで、把持器123は、(そうでない場合には図示されていない炉カバーによって閉鎖されている)炉ハウジング113のアクセス114を通って垂直方向Vを下方に移動される。次いで、把持器123は、炉112から後退させられて、炉カバーが、炉112を閉鎖するようにアクセス114の上に配置される。次いで、熱量測定または熱分析調査が開始され得る。
【0039】
任意選択で、また図2の実施形態に示されているように、装置100は、内部フードスペース131を取り囲むフード130を備えてもよい。上記内部フードスペース131は、図2に示されているように、上記ハウジング111の動作エリアに装着されるサンプルトレイ1とともに、熱量測定または熱分析測定装置110の炉112へのアクセス114も収容する。例えば、乾性ガスを挿入することによって、内部フードスペース131の内側に所望の周囲条件を生成することを可能にし得る。次いで、例えば、上記で説明された転送デバイス120を使用することによって、所望の周囲条件下でサンプルトレイ1から炉112内部に位置する測定位置までサンプルパン14内のサンプルを転送することが可能である。すなわち、フード130は、所望の周囲条件下で測定位置までのサンプルの転送を可能にする。サンプルトレイ1が熱輸送手段20の一部として冷却器27を備えている場合には、好ましくは、この冷却器27の少なくとも一部は、冷却器27によって生成された熱を大気中に廃棄できるように、フード130の外側に配置される。
【符号の説明】
【0040】
1 サンプルトレイ
10 レセプタクル
11 内部トレイスペース
12 レセプタクルの外側
13 支持体
14 サンプルパン
15 開口
16 受入部
17 カバー
20 熱輸送手段
24 熱交換器
26 回路
26a 第1端
26b 第2端
27 冷却器
30 ペルチエ冷却器
31 熱吸収側
32 熱放出側
40 絶縁体
100 熱量測定または熱分析調査のための装置
110 熱量測定または熱分析測定装置
111 ハウジング
112 炉
113 炉ハウジング
114 アクセス
120 転送デバイス
121 ロボットアーム
121a 下端
122 レイル
123 把持器
130 フード
131 内部フードスペース
H 水平方向
V 垂直方向
図1
図2
【外国語明細書】