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特開2024-47582熱分析機器用の試料交換器、るつぼ、およびトレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047582
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】熱分析機器用の試料交換器、るつぼ、およびトレイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
G01N25/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023161710
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】22197861
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ジョエリマン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ワーグナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マイヤー
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB12
2G040CA02
2G040CA16
2G040FA03
(57)【要約】
【課題】試料物体の取扱いの制御の改善を可能にする熱分析機器用の試料交換器、そのような試料交換器を組み込む熱分析機器、ならびにそれと共に使用するためのるつぼおよびトレイを提供する。
【解決手段】熱分析機器用の試料交換器(5)が、試料物体(16)を試料支持体(3)に置くとき、または試料物体(16)を試料支持体(3)から取り上げるときの位置制御を改善するためのカメラ(12)および画像処理機能を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分析機器(33)用の試料交換器(5)であって、少なくとも、取出側試料支持体(3)で試料物体(16)を取り上げるための受取位置と、受取側試料支持体(3)に前記試料物体(16)を置くための解放位置との間で移動するように駆動される可動部材(6)を備える試料交換器(5)において、前記可動部材(6)と共に移動するように前記可動部材(6)に取り付けられたカメラ(12)を備え、前記カメラ(12)が、前記試料物体(16)、前記取出側試料支持体(3)、または前記受取側試料支持体(3)のうちの少なくとも1つの少なくとも部分的な画像を捕捉するように適合された視野および焦点深度を有することを特徴とする試料交換器(5)。
【請求項2】
前記カメラ(12)の前記視野を照明するために、前記可動部材(6)と共に移動するように前記可動部材(6)に取り付けられた光源(12a)をさらに備える、請求項1に記載の試料交換器(5)。
【請求項3】
前記光源(12a)が、前記カメラ(12)を取り囲むリングライトである、請求項2に記載の試料交換器(5)。
【請求項4】
前記カメラ(12)によって捕捉された前記画像のうちの少なくとも1つを分析するための画像処理手段(33)をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の試料交換器(5)。
【請求項5】
前記画像処理手段(33)が、前記試料物体(16)と前記取出側試料支持体(3)または前記受取側試料支持体(3)のうちの少なくとも一方との間の位置関係に関して、前記少なくとも1つの画像を分析するように動作する、請求項4に記載の試料交換器(5)。
【請求項6】
前記位置関係を示す信号が、前記可動部材(6)の前記移動を制御するために使用される、請求項5に記載の試料交換器(5)。
【請求項7】
前記画像処理手段(33)が、前記試料物体(16)の少なくとも1つの視覚的に識別可能な特徴について前記少なくとも1つの画像を分析するように動作する、請求項5または6に記載の試料交換器(5)。
【請求項8】
前記画像処理手段(33)が、前記試料物体(16)の少なくとも1次元の特徴について前記少なくとも1つの画像を分析するように動作する、請求項5から7のいずれか一項に記載の試料交換器(5)。
【請求項9】
ラインまたはクロスヘアレーザ(21)をさらに備え、前記ラインまたはクロスヘアレーザ(21)が、好ましくは前記可動部材(6)と共に移動するように取り付けられ、前記取出側または受取側試料支持体(3)のうちの一方の上に前記試料物体(16)の観察可能な影を生じるように向けられたレーザ光軸(22)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の試料交換器(5)。
【請求項10】
熱的に接触して試料物体(16)を受け取るための熱分析センサ(32)と、前記試料物体(16)を保持するための少なくとも1つの保管場所(28)を有するトレイ(4)と、請求項1から9のいずれか一項に記載の試料交換器(5)とを備える熱分析機器(33)であって、前記取出側試料支持体(3)が、前記トレイ(4)の前記保管場所(28)のいずれかであり、前記受取側試料支持体(3)が、前記熱分析センサ(32)である、熱分析機器(33)。
【請求項11】
前記熱分析センサ(32)が、好ましくは前記センサ(32)の外周部分に配置され、カラーカメラである前記カメラ(12)によって捕捉された画像に対するホワイトバランス処理を行うための色較正領域(20)を備える、請求項10に記載の熱分析機器(33)。
【請求項12】
前記試料交換器(5)をその移動経路全体に沿って周囲大気から遮蔽するように構成されたカバー(15)をさらに備える、請求項10または11に記載の熱分析機器(33)。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の試料交換器(5)と共に使用するための、または請求項10から12のいずれか一項に記載の熱分析機器(33)と共に使用するためのトレイ(4)であって、前記トレイ(4)と前記試料物体(16)とが、前記カメラ(12)の異なるチャンネルのスペクトル範囲内で支配的に色を有するか、または、前記カメラ(12)の少なくとも2つのチャンネルのスペクトル範囲にわたって、前記チャンネルのうちの2つの比率によって明確に区別することができるように分布された色を有し、好ましくは、トレイ(4)は青色であり、前記試料物体(16)は、好ましくは金色、メタリックグレー、および/または白色である、トレイ(4)。
【請求項14】
前記カメラ(12)による撮像のために、好ましくはバーコード、および/または抽象記号、数字、もしくは英数字記号を備える少なくとも1つのトレイマーカ(30)を備え、前記カメラ(12)によって捕捉された画像上で、前記トレイマーカ(30)に関連付けられた前記トレイ(4)の少なくとも1つのセクションの識別を可能にする、請求項13に記載のトレイ(4)。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の試料交換器(5)と共に使用するための、または請求項10から12のいずれか一項に記載の熱分析機器と共に使用するためのるつぼであって、前記カメラ(12)による撮像のための抽象記号、数値、もしくは英数字記号、パターン、またはオーナメントを好ましくは備える少なくとも1つのるつぼマーカ(31)を備え、前記カメラ(12)によって捕捉された画像上で前記るつぼの識別を可能にする、るつぼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分析機器用の試料交換器であって、少なくとも、取出側試料支持体で試料物体を取り上げるための受取位置と、受取側試料支持体に上記試料物体を置くための解放位置との間で移動するように駆動される可動部材を備える試料交換器に関する。特に、本発明は、そのような試料交換器を組み込む熱分析機器、ならびにそれと共に使用するためのるつぼおよびトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
熱分析機器用の従来の試料交換器は、試料物体、例えば空のるつぼ、または分析対象の物質の標本を収容しているるつぼを取り上げるように適合されたグリッパを備えた自由端を有するロボットアームを備えることがあり、上記試料物体を、例えば熱分析機器の作業空間内の様々な位置の間で移動させる。典型的には、ロボットアームは、受取位置に移動して、取出側試料支持体にある試料物体を取り上げる。取出側試料支持体は、トレイに形成された複数の試料保持位置のうちの1つであり得る。次いで、ロボットアームは解放位置に移動して、把持された試料物体を、熱分析機器の熱分析センサでよい受取側試料支持体に置き、それによって試料物体の熱分析による分析を実施できるようにする。測定中、ロボットアームは、測定プロセスに干渉しないように解放位置から引き戻される。測定の完了後、ロボットアームは、再び前の解放位置に移動されて、測定された試料物体を取り上げ、前の解放位置がここでは現在の取上げ位置となる。そこから、把持された試料物体を有するロボットアームを現在の解放位置(例えば、前の受取位置でよい)に移動させることができ、測定された試料物体を現在の受取側試料支持体(トレイの空の試料保持位置でよい)に置く。
【0003】
ロボットアームの上述した動作は、試料物体を保管場所と測定場所との間で自動的に搬送するには十分であるが、ロボットアームによる取扱い中の試料物体の位置制御および識別は依然として改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、試料物体の取扱いの制御の改善を可能にする、上で参照したタイプの試料交換器を提供することである。さらなる目的は、そのような試料交換器を組み込む熱分析機器、ならびにそれと共に使用するためのるつぼおよびトレイに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的の解決策として、熱分析機器用の試料交換器は、上記可動部材と共に移動するように上記可動部材に取り付けられたカメラを備え、上記カメラが、上記試料物体、上記取出側または受取側試料支持体のうちの少なくとも1つの少なくとも部分的な画像を捕捉するように適合された視野および焦点深度を有することを特徴とする。
【0006】
本発明による試料交換器のカメラは、最も好ましくは、カメラによって捕捉された画像をさらなる処理および/または評価に適した2次元ピクセル表現に変換する画像センサを有するデジタルカメラである。カメラは可動部材の動きを追跡するので、上記可動部材がそれぞれ上記受取位置または解放位置に向けて動かされるときに、取出側または受取側試料支持体(空であっても、試料物体が置かれていてもよい)の画像または少なくとも部分画像を捕捉することができる。それにより、捕捉された画像から、上記試料物体と上記取出側または受取側試料支持体のうちの一方との間の位置関係を決定することが可能になる。さらに、捕捉された画像により、対応する支持体が空であるか、それとも試料物体が置かれているかを確認することができ、例えば測定の前後に特に文書化の目的で試料物体を撮像することもでき、試料物体は、空のるつぼでも、熱分析の対象物質の標本を収容しているるつぼでもよい。さらに、例えば色、幾何学的寸法、またはるつぼに設けられたマークを評価することによって、試料物体の識別を可能にする画像を捕捉することができる。
【0007】
可動部材の動きは、例えば、水平に延びるX軸およびY軸と、垂直に延びるZ軸とを有する3つの相互に直交する並進軸に沿って駆動される。カメラの光学的な軸線であるカメラ光軸が、可動部材の移動の垂直Z軸と平行に延びることがさらに好ましい。
【0008】
可動部材は、自由端部分に配置され、可動部材の垂直長手方向軸を中心とする把持手段を備えることができ、上記把持手段は、その垂直運動方向に沿って上記試料物体に向けて降下されたときに、摩擦係合またはポジティブロック係合で上記試料物体を把持するように適合されている。カメラは、カメラ光軸が上記可動部材の上記垂直長手方向軸から水平方向にオフセットされた状態で可動部材に取り付けられることもある。したがって、上記試料物体およびその試料支持体の画像または少なくとも部分画像が捕捉されるとき、可動部材をその受取または解放位置からそれに応じてオフセットされた位置に移動させる必要があり得る。
【0009】
本発明による試料交換器の好ましい実施形態は、上記カメラの上記視野を照明するために、上記可動部材と共に移動するように上記可動部材に取り付けられた光源を備える。光源による照明は、外部実験室環境における光強度の変化の影響を低減するという利点がある。
【0010】
光源は、好ましくはカメラを囲むリングライトであり、それにより照明の非対称性を避ける。
【0011】
光源が偏光を放出し、上記カメラが偏光フィルタを含むことも好ましい。それにより、特に試料物体の表面からの反射によって引き起こされる悪影響が低減される。
【0012】
別の有益な態様によれば、光源は、可視スペクトル内の白色光を放出し、上記カメラは、可視スペクトル内の少なくとも第1および第2のスペクトルチャンネル、好ましくは赤色、緑色、および青色チャンネルで感受するカラーカメラである。これにより、様々な色を検出し、試料物体の観察に使用することができる。
【0013】
本発明による試料交換器は、特に、上記カメラによって捕捉された画像のうちの少なくとも1つを分析するための画像処理手段を備える。画像処理手段は、特に、画像セグメンテーションを可能にし、それによって上記試料物体および/または上記試料支持体のうちの一方の少なくとも1つの特徴を抽出することができる。
【0014】
特に、上記画像処理手段は、上記試料物体と上記取出側または受取側試料支持体のうちの少なくとも一方との間の位置関係について、上記少なくとも1つの画像を分析するように動作する。
【0015】
さらなる改良として、上記位置関係を示す信号は、上記可動部材の上記移動を制御するために使用される。それにより、フィードバック制御を確立して、それぞれの支持体に対して正しい位置関係で試料物体を取り上げるまたは置くために、可動部材を上記受取位置または解放位置のうちの一方に正確に位置決めすることができる。フィードバック制御は、好ましくは、上記位置関係を示す信号を受信し、可動部材を制御するコマンドを発行するコントローラによって実現される。
【0016】
特に、上記画像処理手段は、上記試料物体の少なくとも1つの視覚的に区別可能な特徴について上記少なくとも1つの画像を分析するように動作する。
【0017】
代替または追加として、上記画像処理手段は、上記試料物体の少なくとも1次元の特徴について上記少なくとも1つの画像を分析するように動作する。上記試料物体の視覚的に区別可能な特徴の一例は、その色、または施されたマークである。寸法的な特徴の例としては、試料物体の形状の一部であり、例えば、試料物体としてのるつぼの場合、るつぼの垂直高さを検出することができる。
【0018】
本発明による試料交換器のさらなる態様によれば、上記試料物体の少なくとも一部分と上記取出側または受取側試料支持体のうちの一方の少なくとも一部分との両方が上記カメラの視野内で合焦される上記可動部材の位置は、それぞれ上記受取位置または解放位置からオフセットされている。したがって、上記可動部材の上記オフセット位置では、上記取出側または受取側試料支持体のうちの一方にカメラの視野の中心を合わせることができ、上記受取または解放位置では、上記試料物体を把持または解放するために可動部材を最適に位置させることができる。
【0019】
本発明による試料交換器の別の好ましい実施形態では、上記可動部材の上記移動は、水平方向ではずれているが垂直方向では同一の2つの位置を含み、上記試料物体の垂直寸法は、上記2つの位置で捕捉された画像から計算される。2つの画像からの垂直寸法の計算は、幾何光学の法則に従って容易に行うことができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、試料交換器は、好ましくは上記可動部材と共に移動するように取り付けられたラインまたはクロスヘアレーザをさらに備え、ラインまたはクロスヘアレーザの光学的な軸線であるレーザ光軸が、上記取出側または受取側試料支持体のうちの一方に上記試料物体の観察可能な影を生じさせるように向けられる。試料物体によって支持体に生じる影は、捕捉された画像上のレーザラインのギャップとして現れ、ギャップの長さは、幾何光学の法則から試料物体、特にるつぼの高さを計算するために使用することができる。さらに重要なことに、画像上のギャップの出現は、試料支持体上の試料物体の存在を示し、試料物体とその支持体との色のコントラストが不十分な場合でも、試料物体の存在を安全に検出することが可能になる。
【0021】
別の実施形態では、上記カメラは、それぞれ上記取出側または受取側試料支持体のそれぞれまでの距離に従って制御される焦点距離を有する集光対物レンズを備える。代替実施形態のこのセルフフォーカス機能により、焦点深度を適切に調整するためにカメラを垂直方向で動かす必要がなくなる。
【0022】
本発明はまた、熱的に接触して試料物体を受け取るための熱分析センサと、試料物体を保持するための少なくとも1つの保管場所を有するトレイと、試料交換器とを備える熱分析機器であって、上記取出側試料支持体が、上記トレイの上記保管場所のいずれかであり、上記受取側試料支持体が、上記熱分析センサである、熱分析機器を含む。
【0023】
熱分析機器は概して、分析対象の試料物体に熱励起を供給し、試料物体の熱応答を測定するように機能する。熱分析機器の代表的な例は、示差走査熱量計または熱重量測定装置である。これらの機器では、本発明による試料交換器は、トレイから試料物体を取り上げ、機器の熱分析センサに試料物体を搬送し、上記熱分析センサ上に試料物体を置くように機能し、熱分析センサは、機器の測定チャンバの装入/排出開口を通して、試料交換器に対して露出させることができる。次いで、試料交換器が試料物体から引き戻され、測定プロセスのために開口部が閉じられる。測定の完了後、測定された試料物体は、再び試料交換器に対して露出されて、再び把持され、適切な受取側試料支持体に搬送される。それにより、本発明による熱分析機器は、機器の完全自動動作を可能にする。
【0024】
好ましい実施形態では、上記熱分析センサは、上記カメラによって捕捉された画像上での上記試料物体と上記センサとの位置関係を撮像するために、上記カメラによる撮像に適合された上記センサ上の目標位置を中心とする円弧状セクションを好ましくは含む位置決めパターンを備える。具体的には、位置決めパターンは2つの円弧状セクションを備え、円弧状セクションは、上記センサ上の目標位置の周りに対称的に配置され、試料物体、好ましくはるつぼの円形底部を密に取り囲むように寸法設定される。位置決めパターンは、単一の十字、または3つまたは4つの十字のセット、角括弧、または同様のマークを含むこともできる。好ましくは、位置決めパターンは、試料物体が目標位置に配置されたときに、依然として少なくとも部分的に見えており、これは、試料物体の正確な位置決めの視覚的な確認を可能にする。
【0025】
最も好ましくは、上記熱分析センサは、カラーカメラである上記カメラによって捕捉された画像のホワイトバランス処理を行うための、好ましくは上記センサの外周部分に配置された色較正領域を備える。センサでの目標位置は、好ましくは、支持領域の一部である。支持領域は、熱分析センサによって形成される試料支持体のサブ領域である。目標位置ごとに1つの支持領域があり、単一のセンサに複数の支持領域がある場合、それらは重ならない。位置決めパターンは、存在する場合、好ましくは、位置決めパターンによって示されるそれぞれの目標位置に関連付けられた支持領域内で見つかる。支持領域は、試料物体が目標位置を占めるときに支持領域の一部が見えるように、支持すべき試料物体よりも大きいサイズを有する。好ましくは、上記支持領域は、上記カメラのスペクトルチャンネルのうちの1つにおいて支配的である色を有する。好ましくは、センサのすべての支持領域が同じ色を有する。ホワイトバランス処理を実行すると、画像の色の正確さが向上する。好ましくは、色較正領域は白または灰色であり、中間色または既知の反射スペクトルを有する。色較正領域は、既知の反射スペクトルを有するカラーチャートをさらに含むか、またはそれによって形成することができる。
【0026】
好ましくは、熱分析機器は、上記試料交換器をその移動経路全体に沿って周囲大気から遮蔽するように構成されたカバーをさらに備える。それにより、環境によって引き起こされる測定の妨害が最小限に抑えられる。
【0027】
熱分析機器の別の好ましい実施形態は、上記カメラによって捕捉された画像上での上記試料物体の少なくとも1つの特徴に基づいて上記試料物体の識別を評価するための評価手段をさらに備える。具体的には、上記評価手段は、上記試料物体の捕捉された画像上に現れるように試料物体に関連付けられた色、形状、記号、または英数字表示などの特徴を感受し得る。
【0028】
本発明による試料交換器または熱分析機器と共に使用するためのトレイにおいて、上記トレイと上記試料物体とが、上記カメラの異なるチャンネルのスペクトル範囲内で支配的に色を有するか、または、上記カメラの少なくとも2つのチャンネルのスペクトル範囲にわたって、上記チャンネルのうちの2つの比率によって明確に区別することができるように分布された色を有する。好ましくは、トレイは青色であり、試料物体は、好ましくは金色、メタリックグレー、および/または白色である。メタリックグレーは、好ましくは、アルミニウム、プラチナ、またはステンレス鋼のような色である。カメラによって撮影された写真の色を認識することによって、試料物体、トレイ、およびそれらの相互位置関係を決定することができる。青いトレイは青色チャンネルを支配し、金色の試料物体は赤色チャンネルを支配する。灰色と白色とは通常、すべてのチャンネルをほぼ均等に占める。青色チャンネルと赤色チャンネルとの比率について、トレイは高い値を特徴とし、灰色、プラチナ色、白色の試料物体は1に近い値を特徴とし、金色は低い値を有する。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明による熱分析機器のすべての試料支持体が、共通の支持体色を有する。支持体の色と試料物体の色とは、上記カメラの異なるチャンネルのスペクトル範囲内で支配的である、または、支持体の色と試料物体の色とは、上記カメラの少なくとも2つのチャンネルのスペクトル範囲にわたって、上記チャンネルのうちの2つの比率によって明確に区別することができるように分布された色を有する。
【0030】
好ましい実施形態では、熱分析センサおよびトレイのすべての支持領域が同じ色を有する。
【0031】
好ましい実施形態では、トレイは、上記カメラによる撮像のために、好ましくはバーコード、および/または抽象記号、数字、もしくは英数字記号を備える少なくとも1つのトレイマーカを備え、上記カメラによって捕捉された画像上で、上記トレイマーカに関連付けられた上記トレイの少なくとも1つのセクションの識別を可能にする。
【0032】
本発明による試料交換器または熱分析機器と共に使用するためのるつぼが、上記カメラによる撮像のための抽象記号、数値、もしくは英数字記号、パターン、またはオーナメントを好ましくは備える少なくとも1つのるつぼマーカを備え、上記カメラによって捕捉された画像上で上記るつぼの識別を可能にする。好ましくは、画像が捕捉されているときに上記画像でのるつぼマーカの視認性を高めるために、るつぼマーカは、カメラに面するるつぼの環状上縁部に配置される。
以下、図面を参照して、例示的な実施形態を述べる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】熱分析機器の密閉された作業空間内に配置された試料交換器の概略図である。
図2】熱分析機器の試料支持体に面する位置に移動された図1の試料交換器の概略図である。
図3図3(a)は、図1または2による試料交換器のカメラによって捕捉された試料支持体の画像を示す図である。図3(b)は、図1または2による試料交換器のカメラによって捕捉された試料支持体の画像を示す図である。
図4図4(a)は、中央位置にあるカメラでの撮像に関する光学関係を概略的に示す図である。図4(b)は、横方向にオフセットされた位置にあるカメラでの撮像に関する光学関係を概略的に示す図である。
図5】ラインまたはクロスヘアレーザをさらに備えた実施形態を概略的に示す図である。
図6図5の実施形態のレーザによって引き起こされる光学効果を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、熱分析機器33を示す。図1に示されるように、本質的に水平に広がる作業領域1が、そこに形成された漏斗状のアクセスチャンネル2を有し、アクセスチャンネル2は、例えば示差走査熱量計または熱重量測定装置である熱分析機器33の受取側試料支持体3にアクセスできるようにする。受取側試料支持体3は、熱分析センサ32である。そのような熱分析機器に精通した当業者は、図1の図示の概略的な性質をよく理解するであろうが、そのような機器の実際の実施形態は、センサ32の取外し可能な蓋および/または摺動可能なサスペンションを含むことが多く、それにより、分析対象の試料物体16の装填または取出しの目的でのみセンサ32を露出させることができる。
【0035】
アクセスチャンネル2から水平方向でいくらか離して、トレイ4は、作業領域1に配置され、複数の試料物体16を保持するために形成された保管場所28を備え、試料物体16は、具体的には、分析対象の物質の標本を受け取るためのるつぼであり得る。保管場所28は、取出側試料支持体3を形成する。そのようなトレイ4は、例えば、試料物体16またはるつぼが例えば行および列からなるアレイとして配置されるように形成されることがある。るつぼは、試料物体16の一例である。
【0036】
試料交換器5が、垂直方向に延びる長手方向軸7を有する可動部材6を備え、可動部材6は、例えば、円筒形上部8、上部8に隣接する中間部分9、および中間部分9に隣接する円筒形下部10を備え、3つの部分すべてが長手方向軸7を中心とし、可動部材6の直径は、上部8のより大きな直径と下部10のより小さな直径との間の中間部分9に沿って増加する。下部10の下向きの自由端に配置されたグリッパ11は、試料物体16、特にるつぼを把持および保定するように構成される。
【0037】
カメラ12、この例ではデジタルカメラが、可動部材6の上部8の外周に取り付けられ、カメラ光軸17が垂直に、すなわち長手方向軸7と平行に配置される。カメラ12には、カメラの視野を照明するための光源12aが取り付けられる。好ましくは、光源12aは、カメラ12を取り囲むリングライトの形態である。光源12aは、好ましくは、偏光を放出し、カメラ12は、カメラ12への望ましくない反射を減衰させるために偏光フィルタを含む。光源12aは、例えば可視スペクトルの白色光を放出する。
【0038】
図1はさらに、可動部材6をカメラ12および光源12aと共に作業領域1の上方の様々な位置に水平方向(X、Y軸)と垂直方向(Z軸)の両方向で移動させるように動作する駆動ユニット13を概略的に示す。これらの位置は、特に、センサ32またはトレイ4の保管場所28である試料支持体3のうちの任意の1つで可動部材6が試料物体16を受け取るまたは解放するのに適切な位置を含み、試料支持体3および/または試料物体16のうちの任意の1つの画像または少なくとも部分画像が捕捉され、および/または垂直方向でのカメラ12のレンズ距離が適切に調整される。可動部材6が移動してその様々な位置に達するワークスペース14全体は、作業領域1の外周から上に延びるカバー15によって環境から遮蔽されている。
【0039】
熱分析機器33は、さらなる評価手段34を備える。評価手段34は、カメラ12によって捕捉された1つまたは複数の画像を使用して試料物体16を識別する。
【0040】
図2は、試料物体16(図示せず)を試料支持体3に置く、または試料物体16を試料支持体3から取り上げることができる位置に移動されたときの可動部材6を概略的に示す。この場合、可動部材6は、試料支持体3に向けて垂直に下降され、横方向で試料支持体3に中心合わせされる。この位置では、カメラ12は、試料支持体3の中心から横方向にオフセットされ、その視野は、主に試料支持体3のアクセスチャンネル2をカバーするように位置合わせされる。
【0041】
特にるつぼを備える試料支持体3の画像捕捉のためのより好ましい位置合わせが、図4(a)および4(b)に示されている。図4(a)では、可動部材6は、試料支持体3に置かれた試料物体16にカメラ12のカメラ光軸17が中心を合わされる位置に横方向で移動され、試料支持体3とカメラ12の対物レンズ12cとの間の垂直距離は、試料支持体3および試料物体16をカメラ12の対物レンズ12cの焦点深度内に位置させるように可動部材6の垂直運動によって調整されている。この位置で、カメラ12は、試料物体16および試料支持体3の第1の画像を捕捉する。試料物体16の第1の見かけの位置29を得ることができ、ここで、見かけの位置29は、試料物体16の中心があるように見える試料支持体3上の位置である。次いで、カメラ12は、試料支持体3上の試料物体16を依然としてカメラ12の視野内に維持しながら、図4(b)に示されるように距離dだけ横方向にシフトされる。シフトされた位置で捕捉された画像上で、図4(b)に示される横方向シフトsだけ第1の見かけの位置に対してシフトされた第2の見かけの位置29を導出することができる。図4(b)に示される幾何光学の関係に基づいて、試料物体16の高さhは、既知の値d、s、および試料支持体3とカメラ12との間の距離gから容易に計算することができる。
【0042】
図3(a)および3(b)は、試料支持体3が、それぞれ示差走査熱量計のセンサ32である場合(図3(a))、またはトレイ4の一部である場合(図3(b))に関して、カメラ12によって捕捉された画像の例を示す。
【0043】
具体的には、図3(a)に示されるように、示差走査熱量計のセンサ32は、示差走査熱量計(DSC)の技術分野で一般に知られているように、第1の目標位置26と第2の目標位置27とを含む。典型的な示差走査熱量測定中、対象の材料を含むるつぼが第1の目標位置26に配置され、空のるつぼが第2の目標位置27に配置される。どちらのるつぼも、試料物体16の例である。DSCで使用されるこの従来の構造を超えて、図3(a)のセンサ32は、その周囲の正反対の位置に白色の2つのラグ部分を備え、ラグ部分は、カメラ12のホワイトバランス処理における色較正領域20として使用するように設計され、同時に、センサ32を交換可能に収容するように設計されたセンサ支持フレームの協働する凹部に係合するように設計される。いずれのラグ部分にも属さない図3(a)のセンサ32の領域は、第1の支持領域18または第2の支持領域19のいずれかに属する。第1の支持領域18は、第1の目標位置26を含む領域であり、第2の支持領域19は、第2の目標位置27を含む領域である。第1の支持領域18は、説明の目的で、図3(a)において白い破線で強調表示されている。
【0044】
図3(b)は、複数の保管場所28を有するトレイ4の一部を示す、カメラ12によって捕捉されたカラー画像の青色チャンネルを示す。試料物体16の例であるるつぼは、保管場所28のいくつかを占有し、他の場所は空である。図示の例では、トレイ4は青色であり、るつぼは灰色である。したがって、カメラ12の青色チャンネルでは、トレイ4は明るい色で現れ、るつぼは、より暗い色で現れ、より小さい青色光反射率を表す。図3(b)に示されるトレイには、例えば青色トレイ4に白色で印刷された星形のトレイマーカ30がさらに設けられている。図3(b)はさらに、るつぼマーカ31でマークされたるつぼを示し、るつぼマーカ31は、この例では、るつぼの上縁部に配置された2つの青い点のパターンである。
【0045】
試料交換器5には、例えば、図5に示されるようにカメラ12に取り付けることができるラインまたはクロスヘアレーザ21をさらに設けることができる。図5に示される試料交換器5は、この例ではカメラ12と共通のハウジング内に位置するさらなる画像処理手段33を備える。図示される試料交換器5の光源12aは偏光を放出し、カメラ12の前に偏光フィルタ12bが配置される。さらに、カメラには集光対物レンズ12cが備えられる。
【0046】
図6は、レーザ光軸22と試料支持体3に投影される光のラインとによって画定される平面内でのラインまたはクロスヘアレーザ21の照明状態を示す。試料支持体3上の試料物体16の一例としてのるつぼが概略的に示されており、水平方向に延びる上側環状リム23を有して形成されている。外周24によって投影される影の長さは、図6において記号xによってマークされており、カメラ12によって捕捉される画像上で検出可能である。図6から明らかなように、試料支持体3の上方の環状リム23の垂直高さは、検出された長さxと、環状リム23の外周24に当たる周縁光線25の傾きとから容易に計算することができる。
【0047】
上述した構成により、画像処理を使用して試料支持体3および/または試料物体16の色および/または色の相違を評価し、それぞれ目標位置26、27を取り囲む正反対に位置する円弧状セクションのような位置決めパターン18a、19aを使用し(図3(a))、および/またはそれらの寸法に従って試料物体16を識別することによって、試料物体16の有無および/または位置座標を検出することができる。横方向寸法、特に直径は、カメラ12の撮像スケールから容易に決定することができるが、高さ方向の寸法は、図4(a)および図4(b)に関して、または代替として図5および6に関して上で論じたように、追加の考察を必要とする。
【0048】
可動部材6とカメラ12との上述した組合せの結果、測定プロセスの前後に文書化の目的で、分析対象の、るつぼに収容されている物質の画像を捕捉することができる。さらに、カメラ12によって捕捉された画像を処理することによって、それぞれの試料支持体3が空であるか、それとも試料物体16によって占有されているかを検出することが可能であり、これにより、可動部材6またはロボットアームの運動を制御して、試料支持体3に位置する試料物体16と、可動部材6によって試料支持体3に向けて輸送されている別の試料物体16との衝突を安全に回避することが可能になる。カメラ12によって捕捉された画像の処理により、試料支持体3の中心に対する試料物体16の位置を正確に決定することも可能になる。さらに、一組のるつぼのうち、特に色、サイズ、および/または設けられたマーク、例えばるつぼマーカが互いに異なる個々のるつぼを識別することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 作業領域
2 アクセスチャンネル
3 試料支持体
4 トレイ
5 試料交換器
6 可動部材
7 長手方向軸
8 上部
9 中間部分
10 下部
11 グリッパ
12 カメラ
12a 光源
12b 偏光フィルタ
12c 集光対物レンズ
13 駆動ユニット
14 ワークスペース
15 カバー
16 試料物体
17 カメラ光軸
18 第1の支持領域
18a 第1の位置決めパターン
19 第2の支持領域
19a 第2の位置決めパターン
20 色較正領域
21 ラインまたはクロスヘアレーザ
22 レーザ光軸
23 環状リム
24 外周
25 周縁光線
26、27 第1/第2の目標位置
28 保管場所
29 見かけの位置
30 トレイマーカ
31 るつぼマーカ
32 センサ
33 熱分析機器
34 評価手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】