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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047592
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】直接還元鉄の製造設備及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/02 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
C21B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019147145
(22)【出願日】2019-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】519293036
【氏名又は名称】合同会社KESS
(74)【代理人】
【識別番号】100181630
【弁理士】
【氏名又は名称】原 晶子
(72)【発明者】
【氏名】鉄本 理彦
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DC03
4K012DC06
4K012DC09
(57)【要約】
【課題】 外熱式改質器を用いずに、また循環ガス加熱器でのメタルダスティング等の問題及び炉内での還元鉄の融着等の問題を引き起こさずに、改質、還元を行い、且つ製品である還元鉄の炭素量を広範囲に調整することができる直接還元鉄の製造設備を提供する。
【解決手段】 本発明の直接還元鉄の製造設備は、竪型還元炉から排出されたガスの水分を調整するための水分調整装置と、水分の一部が除去されたガスに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合するための第1のガス混合装置と、混合ガスを自己のエネルギーで改質するオートサーマルリフォーマーとを有する。また、クーリングガスを循環させるクーリングガスループを有し、クーリングガスは炭化水素濃度が50%以上であり、クーリングガスループは流量調整機能及びクーリングガスの温度を調整するクーリングガスアフタークーラーを有する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元ガスで還元し冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する直接還元鉄の製造設備であって、
前記竪型還元炉で製造された還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループを有し、
前記クーリングガスは、炭化水素濃度が50%以上であり、
前記クーリングガスループは、前記竪型還元炉へ導入するクーリングガスの流量を調整できるように構成されており、且つ、クーリングガスの還元炉入口温度を調整するクーリングガスアフタークーラーを有することを特徴とする直接還元鉄の製造設備。
【請求項2】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元ガスで還元し冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する直接還元鉄の製造設備であって、
前記竪型還元炉は、還元ゾーンとクーリングゾーンとを有し、
前記還元ゾーンと前記クーリングゾーンとは、互いに独立した炉として構成され、還元鉄を前記クーリングゾーンへ降下させるシュートと、クーリングガスを前記還元ゾーンへ通過させる還元ゾーン用ガスダクトとで繋がれていることを特徴とする直接還元鉄の製造設備。
【請求項3】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元ガスで還元し冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する直接還元鉄の製造設備であって、
前記竪型還元炉で製造された直接還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループを有し、
前記竪型還元炉は、還元ゾーンと、クーリングゾーンと、前記還元ゾーンと前記クーリングゾーンとの間に設けられる中間クーリングゾーンとを有し、
前記クーリングガスループは、前記中間クーリングゾーンに設けられる上部クーリングガスループと、前記クーリングゾーンに設けられる下部クーリングガスループとを有し、
前記竪型還元炉のクーリングガスの出口において、前記上部クーリングガスループのクーリングガスの出口温度は、前記下部クーリングガスループのクーリングガスの出口温度よりも高温であることを特徴とする直接還元鉄の製造設備。
【請求項4】
前記竪型還元炉の前記クーリングゾーンに導入されるクーリングガスの入口におけるクーリングガスの温度が35℃以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項5】
還元ガスを製造するための改質器を備え、
前記竪型還元炉の前記クーリングゾーンから抜き出されたクーリングガスは、直接接触型クーリングガス冷却器を介することなく前記竪型還元炉に導入する還元ガス及び前記改質器の上流を流れるガスの少なくとも一方に混合されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項6】
竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造設備であって、
前記竪型還元炉から排出されたガスから水分を調整するための水分調整装置と、
水分が調整されたガスに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合するための第1のガス混合装置と、
混合ガスを自己のエネルギーで改質するオートサーマルリフォーマーと、を有し、
前記第1のガス混合装置は、混合する酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスの量を調整することで、前記オートサーマルリフォーマーの入口のガスの温度、出口のガスの温度及び出口のガスの還元度が適正範囲内となるように調整することを特徴とする直接還元鉄の製造設備。
【請求項7】
前記オートサーマルリフォーマーから排出されたガスに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合する第2のガス混合装置をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項8】
前記竪型還元炉から排出されたガスから二酸化炭素の一部又は全部を除去するCOリムーバーをさらに有することを特徴とする請求項6又は7に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項9】
前記オートサーマルリフォーマーの入口のガスの圧力が600kPa(A)未満であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項10】
前記竪型還元炉と前記第1のガス混合装置との間に、前記竪型還元炉から排出されたガスを予熱する熱交換器をさらに有し、
前記熱交換器で予熱した後のガスの温度が850℃未満であることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項11】
前記オートサーマルリフォーマーの入口のガスの温度が1500℃以下で、且つ、前記オートサーマルリフォーマーの出口のガスの温度が700℃以上となるように、前記第1のガス混合装置で混合する酸素量及び炭化水素ガス量を調整することを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項12】
前記オートサーマルリフォーマーを複数段有し、
最終段のオートサーマルリフォーマー出口のガスの還元度が7以上となることを特徴とする請求項11に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項13】
前記竪型還元炉で製造された還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループを有し、
前記クーリングガスは、炭化水素濃度が50%以上であり、
前記クーリングガスループは、前記竪型還元炉へ導入するクーリングガスの流量が調整できるように構成されており、且つ、クーリングガスの温度を調整するクーリングガスアフタークーラーを有することを特徴とする請求項6から12のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項14】
前記竪型還元炉は、還元ゾーンとクーリングゾーンとを有し、
前記還元ゾーンと前記クーリングゾーンとは、互いに独立した炉として構成され、還元鉄を前記クーリングゾーンへ降下させるシュートと、クーリングガスを前記還元ゾーンへ通過させる還元ゾーン用ガスダクトとで繋がれていることを特徴とする請求項6から12のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項15】
前記竪型還元炉で製造された直接還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループを有し、
前記竪型還元炉は、還元ゾーンと、クーリングゾーンと、前記還元ゾーンと前記クーリングゾーンとの間に設けられる中間クーリングゾーンとを有し、
前記クーリングガスループは、前記中間クーリングゾーンに設けられる上部クーリングガスループと、前記クーリングゾーンに設けられる下部クーリングガスループとを有し、
前記竪型還元炉のクーリングガスの出口において、前記上部クーリングガスループのクーリングガスの出口温度は、前記下部クーリングガスループのクーリングガスの出口温度よりも高温であることを特徴とする請求項6から12のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項16】
竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造方法であって、
前記竪型還元炉から排出されたガスの水分を調整する水分調整工程と、
水分が調整されたガスに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合する第1ガス混合工程と、
混合ガスを自己のエネルギーで改質し、改質ガスを製造する改質ガス製造工程と、を有することを特徴とする直接還元鉄の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接還元鉄(DRI)の製造設備及び製造方法に関し、外熱式改質器(リフォーマー)を用いず、還元帯での条件に依存せず還元鉄の炭素量を広範囲に調整することができ、また循環ガス加熱器(プレヒータ)でのメタルダスティング等の問題を引き起こさず、改質、還元を効率的に行うことができる直接還元鉄の製造設備及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塊鉱石、又は鉄鉱石粉を用いた焼成ペレットなどの酸化鉄原料(原料)を還元して金属鉄を竪型還元炉(シャフト炉)で製造する方法としては、主に、高炉製銑法の他に、直接還元製鉄法と呼ばれる方法がある。
【0003】
直接還元製鉄法は、特許文献1で示されているミドレックス法、特許文献2で示されているHYL法に代表される。これらの方法は竪型還元炉に水素(H)及び一酸化炭素(CO)を主成分とした還元ガスを導入して酸化鉄を固相のまま還元して固体金属鉄を製造するものである。
【0004】
竪型還元炉に導入された水素及び一酸化炭素を主成分とする還元ガスは、還元ゾーンで酸化鉄と反応し、その一部は酸化鉄から酸素を除去して水蒸気(HO)及び二酸化炭素(CO)を生成する。
【0005】
この竪型還元炉から排出されるガス(トップガス)は、ミドレックス法ではスクラバーにて除塵、冷却される。その後、その一部は昇圧され、新たに炭化水素含有ガスが加えられて改質器にて改質され、循環利用されている。
【0006】
またHYL法では同様に除塵、冷却されたトップガスの一部に、水蒸気と炭化水素含有ガスから新たに改質された改質ガスを混合し、外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)で加熱して竪型還元炉に導入し循環利用されている。
【0007】
製造された還元鉄を冷却して排出する場合には、還元ゾーンの下部にクーリングゾーンを設け、冷却用のガス(クーリングガス)をクーリングゾーンに導入し、還元鉄を冷却している。この冷却に使用されたクーリングガスは、竪型還元炉の還元ガス導入部よりも下方の竪型還元炉の中間部から排出され、スクラバーで除塵、冷却された後、昇圧され循環利用されている。
【0008】
上記のいずれの場合も、還元ガスを製造するために、触媒を充填した外熱式改質器(リフォーマー)で通常900℃以上に加熱して改質している。この外熱式改質器に用いられるリフォーマーチューブは、改質ガス温度以上の高温に曝されるため高価な合金チューブを必要としている。
【0009】
ミドレックス法では、低圧下、例えば350kPa(A)以下の圧力下で、二酸化炭素及び水蒸気を含む循環ガスと炭化水素含有ガスとを混合して、予熱後に外熱式改質器(リフォーマー)に通して改質ガスを製造している。
【0010】
上述の通りミドレックス法は改質時の圧力が350kPa(A)程度の低圧であるので、リフォーマーの触媒上で炭素を析出させることなく、ガスの還元度(R-Value=(H+CO)/(HO+CO))が効率的な酸化鉄の還元を達成するために必要な10~12以上となるまで単位操作で改質できる。
【0011】
HYL法では、高圧下、例えば700kPa(A)以上の圧力で、水蒸気と炭化水素含有ガスとを混合し、予熱後、外熱式改質器(リフォーマー)に通して改質ガスを製造している。
【0012】
HYL法の場合は高圧なので、外熱式改質器(リフォーマー)での炭素析出を防止するため、余剰の水蒸気、例えばS/C(Steam/Carbon)比が3以上の混合ガスで改質を行い、改質後の余剰水蒸気成分を除去する。このために、一旦冷却し水蒸気成分の一部を除去した後に再加熱している。
【0013】
したがって、HYL法の場合には外熱式改質器(リフォーマー)及び外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)の両方を必要とする。
【0014】
このように、いずれの場合にも、非常に高価な合金を、外熱式改質器(リフォーマー)又は外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)のチューブに用いる必要があり、初期投資額が多大になる問題があった。
【0015】
加えて、合金チューブ表面での炭素析出に伴うメタルダスティングによる損傷のために、短期間のうちにチューブの交換が必要となるケースもある。また、そのような短期間での損傷が生じない場合でも高熱負荷のため5年から10年ごとにチューブを交換する必要が生じ、その交換費用及び交換に伴う生産停止による機会損失が問題となっていた。
【0016】
ミドレックス法で行われている低圧操業の場合には、炭素析出やメタルダスティングの問題は回避されているが、上述のように5年から10年ごとにリフォーマーチューブの交換が必要であり、また低圧であるが故、還元鉄の炭素含有量は高くて3%前後であり、概ね1.5%から2%程度に留まっている。
【0017】
また近年、製鉄プロセスから排出されるCO削減のために水素還元が検討されているが、水素還元では炭素源が存在しないため製品還元鉄中に炭素を付加することは不可能である。
【0018】
一方、製鋼プロセスにおいては最終製品の品質維持のため、また凝固温度を低く保つために熔鉄中に適量の炭素は不可欠で、加えて現在の還元鉄電気炉熔解では酸素吹きによる熔解時間の短縮、電気消費量の低減及び製品品質の向上が志向されており、還元鉄中の炭素量は2%以上、好ましくは3%以上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第3764123号明細書
【特許文献2】米国特許第4336063号明細書
【特許文献3】米国特許第5858057号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記技術的背景から、特許文献3で開示されているようにHYL ZR法に代表される方法では、多大な初期投資を必要とする外熱式リフォーマーを用いず、その初期投資額を削減するとともに外熱式リフォーマーチューブの交換費用を削減することが提案されている。
【0021】
この方法では、竪型還元炉から排出されるトップガスからHO及びCOの酸化性ガスを除去したガスと炭化水素含有ガス及び水蒸気とを混合し、850℃から1000℃程度まで加熱して循環使用するように提案されている。
【0022】
さらにその加熱された混合ガスに酸素を混合し、その部分燃焼熱で900℃から1150℃程度に加熱して炉に投入することが提案されている。
【0023】
この方法では、鉄の還元を効率的に行うのに適した還元度(例えばR-Value10以上)までのガスの改質、及びその改質されたガスによる酸化鉄の還元、を一つの炉内で行う。すなわち、この方法では必要な熱量は循環ガスの予熱及び混合酸素の部分燃焼熱で賄われる。
【0024】
したがって、混合ガスを上述の温度領域(850℃から1000℃程度)まで外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)で加熱し、さらに酸素を混合してその部分燃焼熱で900℃から1150℃程度まで昇温している。
【0025】
このプレヒータで加熱されるガスは、上述の通りCO及びHOの大部分が除去されたCO及びHを主成分としたガスに、炭化水素含有ガスと適量のHOとを再度添加したガスである。
【0026】
このガスの主成分はCO、H及びCHであり、このガスは強力な浸炭性を有するガスである。よって、このガスを高温、例えば特許文献3で開示されている850℃以上までプレヒータで加熱すると、プレヒータのチューブ表面での炭素析出や合金鉄上での浸炭及びメタルダスティングの問題を引き起こすことが報告されている。
【0027】
ここで、改質反応はCH+HO=CO+3H及びCH+CO=2CO+2Hに代表されるように体積が増加する反応であり、高圧(例えば700kPa(A)以上)の条件下でこの改質反応を起こさせるには、より高い炭化水素ガス分圧が必要となる。そのため多量の炭化水素含有ガスを混合する必要があり、この炭化水素ガス分圧の高いガスを高温にすることにより炭素析出や合金鉄上での浸炭及びメタルダスティングの問題を引き起こす。
【0028】
この問題を回避するには、プレヒータでの循環ガス圧力を下げるとともに炭化水素濃度を下げるか、もしくは循環ガスの予熱温度を下げることが有効であるが以下に説明する課題がある。
【0029】
特許文献3では、改質と同時に起こる炭素の析出反応を炉内の還元鉄の金属鉄上で起こさせることにより、還元鉄の炭素量増加を図ることが提案されている。
【0030】
しかしながら、ガス圧力を下げるとともに炭化水素濃度を下げてプレヒータでの炭素析出問題を回避すると、還元炉内での金属鉄表面での炭素析出反応及び金属鉄との浸炭反応も抑制されてしまい製品還元鉄中の炭素含有量の低下を招く。
【0031】
一方、循環ガス予熱温度を下げてプレヒータでの炭素析出や合金鉄上での浸炭及びメタルダスティングの問題を回避すると、予熱により与えることのできる熱量が減少するので、それを補償するために後流で多くの酸素及び炭化水素含有ガスを混合する必要が生じ、還元炉投入ガス温度が上昇する。
【0032】
このように還元炉への投入温度を高温まで、例えば特許文献3で開示されている900℃から1150℃程度もしくはそれ以上の温度に昇温すると、原料によっては炉内での粉化、還元鉄同士の融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等の問題を引き起こす。
【0033】
逆に還元炉内での融着などの問題を引き起こさない程度に炉への投入温度を抑制すると、炉内での改質反応後の温度も低下し、且つ改質後のガスの還元度も低くなるので酸化鉄の還元を効率的に行うことが困難となる。
【0034】
以上の状況を鑑みて、本発明は、一酸化炭素及び/又は水素で還元して還元鉄を製造するプロセスで、且つ、外熱式リフォーマーを用いないプロセスであって、還元の条件に依存することなく、例えば水素還元であっても還元鉄中の炭素量を低下させることなく所望の炭素量に調整でき、また、同時に還元炉入口ガス温度を炉内での粉化、還元鉄同士の融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等を引き起こさない温度に維持しながらも還元炉内で改質した後の還元ガスの温度及び還元度を高く保つことができ、且つ、外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)での炭素析出や合金鉄上での浸炭及びメタルダスティングの問題を解消することができ、設備的信頼性が高く、高品質の還元鉄が製造できる還元効率の良いプロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元した後、冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する設備及び方法であって、クーリングガス中の炭化水素濃度を50%以上、好ましくは70%以上に調整し、このクーリングガスの還元炉へ導入する流量を調整でき、且つ、このクーリングガスの還元炉の入口温度を調整するためにクーリングガスアフタークーラー、好ましくは湿球大気温度+3~4℃以下に冷却できるチラー型クーラー(クーリングガスチラー)を有することを第一の特徴とする。
【0036】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元した後、冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する設備及び方法であって、クーリングガス中の炭化水素濃度を50%以上、好ましくは70%以上に調整し、且つ還元ゾーンとクーリングゾーンとを互いに分割して構成し、両ゾーンを、還元鉄を降下させるシュートで繋ぐとともに、還元鉄の降下を阻害することなくクーリングゾーンから還元ゾーン及び循環ガスラインの少なくとも一方にクーリングガスを導入できるように別途ガスダクトで繋ぐことを第二の特徴とする。
【0037】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元した後、冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する設備及び方法であって、還元ゾーンとクーリングゾーンとの間に中間クーリングゾーンを設け、2つのクーリングガスループを配置し、上部クーリングガス(中間クーリングゾーン)の出口温度を下部クーリングガス(クーリングゾーン)の出口温度よりも高温に調整することを第三の特徴とする。
【0038】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し直接還元鉄(DRI)を製造する設備及び方法であって、竪型還元炉から排出されるトップガスから酸化成分である水分(HO)の一部を除去して水分を調整するスクラバー等の水分調整装置を有し、水分を調整したガスを循環するために昇圧し、昇圧後の循環ガスに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを後流のオートサーマルリフォーマー(自己熱型改質装置)の入口ガス温度、出口ガス温度、及び出口ガスの還元度が適正範囲内になるように調整し得る第1のガス混合装置を有し、酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスが混合された循環ガスを自己のエネルギーで改質してガスの還元度を高めるオートサーマルリフォーマーを有することを第四の特徴とする。
【0039】
上記竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し直接還元鉄(DRI)を製造する設備及び方法であって、竪型還元炉内でさらに還元炉投入ガスを改質し還元度を向上させ、且つ還元ガス温度を上昇させるために、オートサーマルリフォーマーの後流において酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合する第2のガス混合装置を有することを第五の特徴とする。
【0040】
上記竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し直接還元鉄(DRI)を製造する設備及び方法であって、竪型還元炉から排出されるトップガスから、水蒸気を除去するとともに、もう一つの酸化成分である二酸化炭素(CO)の一部又は全部を除去するCOリムーバーを有し、オートサーマルリフォーマーの入口でのCO濃度を調整できる設備を有することを第六の特徴とする。
【0041】
上記竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し直接還元鉄(DRI)を製造する設備及び方法であって、オートサーマルリフォーマーでの炭素析出トラブルを回避するためにオートサーマルリフォーマーの入口のガスの圧力を600kPa(A)未満、好ましくは500kPa(A)未満、より好ましくは350kPa(A)未満に調整し、高還元度の改質ガスを製造し、且つオートサーマルリフォーマーでの炭素析出の問題を回避することを第七の特徴とする。
【0042】
上記竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し直接還元鉄(DRI)を製造する設備及び方法であって、循環ガスに酸素含有ガスを混合する前に循環ガスを予熱する熱交換器を有し、且つ熱交換器での炭素析出及び浸炭によるトラブルを解消するために予熱後の循環ガス温度を850℃未満、好ましくは700℃未満、より好ましくは550℃未満とすることを第八の特徴とする。
【0043】
上記竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し直接還元鉄(DRI)を製造する設備及び方法であって、オートサーマルリフォーマーの入口のガスの温度を1500℃以下、好ましくは1400℃以下に調整し、且つ出口のガスの温度を700℃以上、好ましくは750℃以上、より好ましくは800℃以上となるように、混合する酸素含有ガスの量及び炭化水素含有ガスの量を調整することを第九の特徴とする。
【0044】
上記竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し直接還元鉄(DRI)を製造する設備及び方法であって、オートサーマルリフォーマーの入口のガスの温度を1500℃以下、好ましくは1400℃以下に調整し、且つ出口のガスの温度を700℃以上、好ましくは750℃以上、より好ましくは800℃以上となるように混合する酸素含有ガスの量及び炭化水素含有ガスの量を調整するとともに、竪型還元炉の入口ガスを所望の還元度となるようにオートサーマルリフォーマーを複数段有することを第十の特徴とする。
【0045】
より具体的には本発明は以下の構成を有している。
【0046】
本発明の一形態は、竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し、その後冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造、排出する設備である。Cold DRIの製造設備は、酸化鉄原料を還元する竪型還元炉(シャフト炉)と、還元鉄を冷却するためのクーリングガスを除塵、冷却するためのクーリングガススクラバー(直接接触型クーリングガス冷却器)と、クーリングガスコンプレッサーと、還元鉄中の炭素量を調整するためにクーリングガスコンプレッサーの出側に設けられるクーリングガスアフタークーラー、好ましくはチラー型クーラーとを備える。
【0047】
クーリングガスアフタークーラー、好ましくはチラー型クーラー、は、炉に導入するクーリングガスの温度を、大気湿球温度+3~4℃以下となる、例えば35℃以下に調整し得るクーラーである。
【0048】
また別の形態のCold DRIの製造設備では、竪型還元炉の還元ゾーンとクーリングゾーンを互いに分割して構成し、還元鉄を降下させるシュートとは別に還元ゾーン及び循環ガスラインの少なくとも一方にクーリングガスを導入できるガスダクト(クーリングガス繋ぎダクト)を備える。循環ガスラインに導入するクーリングガスは、循環ガスラインの特に竪型還元炉に導入する還元ガス及び還元鉄製造設備に備えられる改質器の上流を流れるガスの少なくとも一方に混合されることが好ましい。なお、この改質器とは、オートサーマルリフォーマーのみでなく外熱式改質器も含むものである。
【0049】
また別の形態のCold DRIの製造設備では、還元ゾーンとクーリングゾーンとの間に中間クーリングゾーンを有し、中間クーリングゾーンとクーリングゾーンとにそれぞれガスループを有する。中間クーリングゾーンに設けた上部ガスループ及びクーリングゾーン設けた下部ガスループのクーリングガスの温度、流量は、それぞれ別々に制御できる。
【0050】
上記Cold DRIの製造設備において好ましい形態では、高温となる出側のクーリングガスから熱回収を行うために、乾式のクーリングガス除塵器及び炭化水素含有ガス予熱器やボイラーなどのクーリングガス熱交換器を備える。
【0051】
また中間クーリングゾーンにおいては乾式の昇圧機を備える。
【0052】
また別の形態の還元鉄製造設備では酸化鉄原料を還元する竪型還元炉(シャフト炉)と、還元後にシャフト炉から排出されるガス(トップガス)を除塵、冷却、水分除去して調整するトップガススクラバーと、循環ガスコンプレッサーと、純酸素等の高濃度酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合する第1のガス混合装置と、そのガスを改質するオートサーマルリフォーマーと、還元鉄を冷却するためのクーリングガスを除塵、冷却するためのクーリングガススクラバーと、クーリングガスコンプレッサーとを備える。
【0053】
好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、竪型還元炉内で改質(In-situ reforming)を促進せしめるように、オートサーマルリフォーマーの後流において高濃度酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合する第2のガス混合装置を備える。
【0054】
より好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、竪型還元炉から排出されるトップガスから、水蒸気を除去するとともに、もう一つの酸化成分である二酸化炭素(CO)の一部又は全部を除去し、オートサーマルリフォーマーの入口でのCO濃度を調整できるCOリムーバーを備える。
【0055】
さらに好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、酸化反応と改質反応とを一つのリフォーマーで進行させるオートサーマルリフォーマーを備える。
【0056】
さらに好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、オートサーマルリフォーマーをU字型又はV字型に配置し、下部から使用済み触媒を排出し、上部から新たな触媒を充填することで触媒の交換を容易にしたオートサーマルリフォーマーを備える。また、より好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、触媒の交換頻度を削減するため、煤、ダスト等の微細固形分を除去できるアルミナボール等を充填した同様の不活性触媒充填層を前段に備える。
【0057】
さらに好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、循環ガスの予熱温度を調整するため、トップガスとCOリムーバーの出口のガスとで熱交換を行う熱交換器(トップガス熱回収熱交換器及び循環ガス予熱器(プレヒータ)の少なくとも一つ)を備える。
【0058】
さらに好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、原料に応じて炉内での粉化、還元鉄同士の融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等の問題を引き起こさないように炉導入ガスの温度を調整するための改質ガス冷却器を備える。
【0059】
さらに好ましい形態の直接還元鉄の製造設備では、上記の冷却された改質ガス及び炭化水素ガスを炉投入ガスラインに混合するための改質ガス混合器を備える。
【0060】
また、本発明は、竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造方法である。直接還元鉄の製造方法は、竪型還元炉から排出されるトップガスから水分の一部を除去して調整する水分調整工程と、水分が調整されたガスに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合するガス混合工程と、混合ガスを自己のエネルギーで改質し、改質ガスを製造する改質ガス製造工程とを備える。
【発明の効果】
【0061】
竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する設備において、クーリングガス中の炭化水素濃度を50%以上、好ましくは70%以上とし、このクーリングガスの還元炉の入口温度をクーリングガスアフタークーラー、好ましくはチラー型クーラー(クーリングガスチラー)でクーリングガス入口温度を下げると同時に炉に投入するクーリングガス流量を減少させることで、還元鉄を所望の温度まで冷却し、且つクーリングガス出口温度を上昇させることが可能となる。
【0062】
これによりクーリングゾーン上部において、還元された高温還元鉄と充分に加熱された炭化水素ガスが接することになり、還元の条件に依存することなく、例えば水素還元であっても、還元ゾーンの圧力が低く、炭化水素分圧が低い場合であっても、還元鉄中の炭素量を3%以上に増加させることが可能となる。
【0063】
すなわちクーリングガスの温度、流量を調整することで、還元ゾーンのガスの組成、圧力に大きく依存することなく還元鉄の炭素量を制御できることから、改質ガスの製造方法、条件に関わらず、電気炉への搬送設備、電気炉の操業条件に応じた最適な温度、炭素量の還元鉄を供給することが可能となる。
【0064】
また、還元ゾーンとクーリングゾーンを互いに分割した場合には、還元鉄の降下シュートとは別にクーリングゾーンから還元ゾーン又は循環ガスラインにクーリングガスを導入できるようにガスダクト(還元ゾーン用ガスダクト又は循環ガスライン用ガスダクト)を配置している。
【0065】
このクーリングガスはクーリングゾーンで還元鉄と熱交換し還元鉄を冷却するとともに加熱される。この加熱されたクーリングガスは上記還元ゾーン用ガスダクトを通して還元ゾーンに導入されるので、還元鉄の降下シュートで還元鉄の降下を阻害することなくクーリングガスを還元ゾーンに導入することができる。
【0066】
この加熱されたクーリングガスは還元ゾーンの還元ガス導入部分より下方の領域でさらに還元鉄と熱交換することでほぼ還元鉄と同じ温度まで加熱される。
【0067】
これにより、充分に加熱された、炭化水素ガスが主成分のクーリングガスと高温の還元鉄とが還元ガス導入部分より下方の領域で接することとなり、還元鉄中の炭素量を上記の場合と同様に増加させることが可能となる。
【0068】
またその後、クーリングガスは還元ゾーンを上昇していくが、すでにその温度が充分に高いことから、上昇するクーリングガスの冷却効果による還元停滞を起こすことはなく、効率的な還元を阻害することも無い。
【0069】
また、この加熱されたクーリングガスの一部を直接接触型クーリングガス冷却器で冷却することなく循環ガスラインに導入する場合には以下のような効果がある。
【0070】
クーリングガスループにはクーリングガス中の炭化水素ガス濃度を維持するため炭化水素含有ガスを導入しているが、還元ゾーンとの圧力バランスの関係で、クーリングガスに導入する炭化水素含有ガス量は、還元ゾーンに導かれるクーリングガス量と、クーリングガスループ系外に抜き出されるガス量の和にほぼ等しく、系外に抜き出さない限り多量の炭化水素含有ガスをクーリングガスループに導入することはできない。
【0071】
この時、クーリングガスを冷却した後に循環ガスラインに戻すと、低温のクーリングガスが循環ガスに混合され、トータルの熱効率及び還元効率を低下させる問題があるが、加熱されたクーリングガスを直接接触型クーリングガス冷却器で冷却することなく、循環ガスラインに戻すことで熱効率は低下しない。
【0072】
また還元に必要な炭化水素ガスの大部分を、別途予熱器を設置することなく予熱できるので、炭化水素含有ガスの外部予熱器の設備費も削減できる。
【0073】
このようにクーリングゾーンに導入するほとんどのクーリングガスを、還元ゾーンに直接導入し、また冷却することなく循環ガスライン(還元炉投入ガス(還元ガス)及び/又は循環ガス)に混合することで、プロセス全体に必要な炭化水素含有ガスのほとんどを予熱して使用できる。加えて、クーリングゾーンから抜き出され冷却された後、再度クーリングゾーンに導入される循環クーリングガス量が大幅に削減される。すなわちワンスループロセスに近い状態となる。
【0074】
したがって、クーリングガスのほとんどは新たに導入される炭化水素含有ガスとなるので、循環クーリングガスを昇圧するクーリングガスコンプレッサーのサイズを小さくでき且つ必要動力も減る。加えて冷却するクーリングガスが減少するので水の消費量も削減できる。
【0075】
さらに、循環クーリングガス中の炭化水素濃度が向上し、還元鉄中の炭素量を向上させることができる。
【0076】
また、クーリングゾーン入口の温度は新たに導入する炭化水素含有ガスの温度に大きく依存することになるが、この炭化水素含有ガスはほとんどの場合天然ガス供給ステーションから高圧で供給されるので、この高圧天然ガスを減圧して混合することで断熱膨張によりクーリングゾーン入口の温度を低下させる効果もある。
【0077】
また還元ゾーンとクーリングゾーンとの間に中間クーリングゾーンを設け、中間クーリングゾーンとクーリングゾーンとに個別にガスループを設けた場合には、上部の中間クーリングゾーンの還元炉入口のガスの温度及びガスの流量、並びに、下部のクーリングゾーンの還元炉入口のガスの温度及びガスの流量を個別に制御する。
【0078】
この時、中間クーリングゾーンのガスの入口の温度を高めに設定し、且つ流量を少なく設定することで中間クーリングゾーンのガスの出口の温度を高くすることが可能となる。また、その下部のクーリングゾーンのガスの入口の温度を低めに設定し、且つ流量を多めに設定することで還元鉄を所望の温度まで冷却することが可能となる。
【0079】
したがって、中間クーリングゾーンの上部では、炭化水素ガスが主成分の高温のクーリングガスと高温の還元鉄とが接することとなり、還元鉄中の炭素量を同様に増加させることが可能となる。
【0080】
さらに、還元ガスに水素を用いた場合には、水素還元からはCOが排出されず、またクーリングゾーンに導入する炭化水素の反応の大部分は炭化水素のクラッキング反応であり、炭化水素中の炭素は還元鉄に付加されるので、還元鉄製造設備からのCOの排出量を大幅に削減することができる。
【0081】
また、竪型還元炉に還元ガスを導入して還元鉄を製造する設備において、竪型還元炉から排出されるトップガスから酸化成分である水分の一部を除去して水分を調整した循環ガスに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合し、オートサーマルリフォーマー(自己熱型改質装置)に導入することで酸化鉄の還元に必要な改質ガスを製造できる。
【0082】
したがって、高価な合金チューブを必要とする外熱式改質器(リフォーマー)が不要となり初期投資額を大幅に削減できる。
【0083】
この時、第1のガス混合装置で酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスの混合量を調整することでオートサーマルリフォーマーの入口ガス温度、出口ガス温度、及び出口ガスの還元度を適正範囲内に調整できる。
【0084】
また、オートサーマルリフォーマーに循環ガスを導入する前に水分や二酸化炭素の酸化剤でなく、高濃度酸素含有ガスを混合することで循環ガスの総熱量が高くなるので循環ガスを高温(例えば850℃以上)まで予熱する必要がなくなる。
【0085】
したがって、プレヒータにおいて高価な合金チューブを必要とせず、且つ炭素析出や浸炭に起因する詰まりの問題やメタルダスティング問題及び高熱負荷による損傷等の問題を解消できるのでチューブの交換頻度も減少し、初期投資額を大幅に削減できるとともに保全費用も大幅に削減できる。且つ保全に関わる直接還元鉄の製造設備の運転停止時間も減少し、還元鉄の製造停止による機会損失も大幅に削減できる。
【0086】
また、外熱式改質器(リフォーマー)を用いず、循環ガスから回収した熱及び純酸素等の高濃度酸素含有ガスの内部燃焼による熱を利用することから、トータルの熱効率も向上し運転コストの低減に繋がるとともに、リフォーマー燃焼用の送風機などの燃焼設備、リフォーマー及びその排ガス処理設備が不要となり初期投資額を大幅に削減できる。
【0087】
また、通常の直接還元鉄の製造設備において、外熱式改質器(リフォーマー)、燃焼設備、排ガス処理設備、及び排ガスからの熱回収設備(オフガスプレヒータ)が占める敷地面積は、ユーティリティー設備、マテリアルハンドリング以外のプロセス設備全体のおおよそ70%以上であり、それらを削除できることから必要敷地面積が30%以下とできる利点がある。
【0088】
また、オートサーマルリフォーマーで必要ガス改質の大部分を行うので、還元炉入口でのガスの還元度を高めることが可能となる。
【0089】
この時、還元炉内でのガス改質(In-situ reforming)の割合を削減できるので、還元炉内でのガス改質後の温度を高温に維持するために炉入口温度を過剰に高める必要がなくなる。
【0090】
従って、還元炉入口温度を還元鉄の炉内での粉化、融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等の問題を引き起こさない温度領域に維持し、且つ還元ゾーンでのガス改質後の還元度及び温度を高く維持することが可能となる。
【0091】
また、余剰のCO及びH含有ガスが発生する場合には、単なる燃焼用燃料として用いるのではなく、メタノール製造用原料等の化学原料として有効利用できる。
【0092】
一方で酸化鉄原料性状が良好で、還元鉄の炉内での粉化、融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等の問題を起こしにくい場合には、上記オートサーマルリフォーマーで改質されたガスに、さらに酸素含有ガス及び炭化水素含有ガスを混合することで、還元炉入口のガスの温度を上げるとともに、炉内の金属鉄の触媒効果による多くのガス改質(In-situ reforming)を行うことが可能となる。これにより、炉内での改質後の還元ガスの温度、還元度とも上昇するのでより効率的な酸化鉄の還元が可能となる。
【0093】
この時、還元鉄上では炭素析出反応を伴うが、炭化水素含有ガスを混合した後に合金を用いた機器は無いので合金金属表面での炭素析出及び浸炭に伴う問題は発生しない。
【0094】
一方で還元鉄上での炭素析出反応は製品還元鉄の炭素含有量の向上につながることから有益であり製品品質の観点からも好ましい。
【0095】
また循環ガスの水分量を水分調整装置出側のガス圧力と温度で調整するとともにCOリムーバーでCOの大部分を除去して循環ガス中の水分とともにCO成分も調整すると必要な改質ガス製造の大部分を酸素と炭化水素ガスで行えるため、改質に必要な循環ガスの予熱温度をさらに低くすることが可能となり、プレヒータの熱負荷をさらに低減させることが可能となる。
【0096】
したがって、プレヒータをより安価なものとでき、且つプレヒータでのトラブルを解消できる。
【0097】
また、外熱式改質器(リフォーマー)からの燃焼排ガスもなくなり、プレヒータでの必要燃焼量も削減できるので、トップガスから除去されたCOを油田等で有効に活用することで、還元鉄製造設備からのCOの排出量を大幅に削減できる利点がある。
【0098】
また、竪型還元炉で酸化鉄原料を還元し、冷却して直接還元鉄(Cold DRI)を製造する設備において、上記クーリングガスシステム及び上記オートサーマルリフォーマーを備えた還元鉄製造設備においては、外熱式リフォーマーを用いず、還元鉄中の炭素量を低下させることなく所望の炭素量に調整でき、また、同時に還元炉入口ガス温度を炉内での粉化、還元鉄同士の融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等を引き起こさない温度に維持しながらも還元炉内で改質した後の還元ガスの温度及び還元度を高く保つこができ、且つ、外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)での炭素析出や合金鉄上での浸炭及びメタルダスティングの問題を解消することのできる、安価で設備的信頼性が高く、高品質の還元鉄が製造できる還元効率の良いプロセスが具現化される。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】本発明の実施形態1のプロセスフローを説明する図である。
図2】本発明の還元ゾーンとクーリングゾーンとを分けた実施形態2のプロセスフローを説明する図である。
図3】本発明の実施形態2の変形例のプロセスフローを説明する図である。
図4】本発明のクーリングガスのガスループを2つのガスループにした実施形態3のプロセスフローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、本発明の直接還元鉄の製造設備及び製造方法について添付図面を参照しながら説明する。
【0101】
まず、本発明の実施形態1の直接還元鉄の製造設備30aについて図1を参照しながら説明する。
【0102】
本実施形態1の直接還元鉄の製造設備30aは、竪型還元炉(シャフト炉)1、還元ゾーン2、熱交換器3、水分調整装置(トップガススクラバー)4、循環ガスコンプレッサー5、COリムーバー6、第1のガス混合装置7a、第1の炭化水素含有ガス混合装置7b、オートサーマルリフォーマー8、第2のガス混合装置9、改質ガス冷却器10、改質ガス混合器11、クーリングゾーン12、クーリングガススクラバー13、クーリングガスコンプレッサー14、クーリングガスアフタークーラー15及び炭化水素含有ガスラインA1,A2,A3,A4,A5、酸素含有ガスラインB1,B2を備えている。
【0103】
竪型還元炉1は、還元ガスと接触させて酸化鉄原料を還元するものであり、還元ゾーン2とクーリングゾーン12とを備えている。熱交換器3は、トップガス熱回収熱交換器3aと、循環ガス予熱器(プレヒータ)3bとで構成されている。トップガス熱回収熱交換器3aは、還元後にシャフト炉1から排出されるガス(トップガス)とCOリムーバー6の出側ガスとの熱交換により、トップガスから熱回収を行うとともに循環ガスの予熱温度を調整するものである。プレヒータ3bは、循環ガスの温度を必要に応じてさらに調整するための予熱器である。熱交換器3は、竪型還元炉1と第1のガス混合装置7との間に設けられている。水分調整装置(トップガススクラバー)4は、トップガスを除塵し、冷却し、水分除去して水分を調整するものである。循環ガスコンプレッサー5は、トップガスを循環利用するためのガス循環のための昇圧コンプレッサーである。COリムーバー6は、トップガスから二酸化炭素の一部又は全部を除去するものである。
【0104】
第1のガス混合装置(酸素部分燃焼設備)7aは、水分及びCOを除去し酸性化ガス成分を低減したガスに、純酸素等の高濃度酸素含有ガスと炭化水素含有ガスとを混合し部分酸化、燃焼させるものである。第1の炭化水素含有ガス混合装置7bは、炭化水素含有ガスを混合するものである。この第1のガス混合装置7a及び第1の炭化水素含有ガス混合装置7bは、第1のガス混合装置7a及び第1の炭化水素含有ガス混合装置7bで加える酸素含有ガスB1及び炭化水素含有ガスA1,A2の量を調整することで、オートサーマルリフォーマー8の入口温度、出口温度、出口ガス還元度を調整する。そのため、第1の炭化水素含有ガス混合装置7bは、第1のガス混合装置7aでの炭化水素含有ガスA1の混合では炭化水素含有ガスの量が不足する場合に、必要に応じて設けられる。
【0105】
オートサーマルリフォーマー8は、トップガスから水分及び二酸化炭素が除去されたガスに、第1のガス混合装置7a及び第1の炭化水素含有ガス混合装置7bで酸素含有ガスB1及び炭化水素含有ガスA1,A2を混合させた混合ガスを、混合ガスの自己のエネルギーで改質するものである。オートサーマルリフォーマー8は、U字型又はV字型に配置することが好ましい。これにより、下部から使用済み触媒を排出し、上部から新たな触媒を充填することができ、触媒の交換を容易にすることができる。また、オートサーマルリフォーマー8は、煤等の微細固形分を除去できるアルミナボール等を充填した同様の不活性触媒充填層を前段に備えることがより好ましい。これにより、触媒の交換頻度を削減することができる。また、オートサーマルリフォーマー8は、酸化反応と改質反応とを一つのリフォーマーで進行させる形態を取ることが好ましい。
【0106】
第2のガス混合装置9は、オートサーマルリフォーマー8から排出されるガスに酸素含有ガスB2及び炭化水素含有ガスA3を混合し部分酸化、燃焼させ、さらに還元炉内においても適正量の改質をさせるために還元炉1の入口のガスの昇温と炭化水素濃度とを調節するためのものである。
【0107】
改質ガス冷却器10は、原料に応じて炉内での粉化、還元鉄同士の融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等の問題を引き起こさないように炉導入ガスの温度を調整するものである。改質ガス混合器11は、冷却された改質ガス及び炭化水素含有ガスを炉投入ガスラインに混合するものである。
【0108】
また、直接還元鉄の製造設備30aは、冷却された直接還元鉄(Cold DRI)を製造するために、クーリングゾーン12において還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループ23を備えている。クーリングガススクラバー13、クーリングガスコンプレッサー14及びクーリングガスアフタークーラー15は、クーリングガスループ23に備えられている。クーリングガスループ23には、クーリングガスの流量を調整する流量調整手段(図示せず)を備えており、還元炉1へ導入するクーリングガスの流量を調整できるようになっている。
【0109】
クーリングガススクラバー13は、水冷式の直接接触型冷却器であり、還元炉1から排出される還元鉄を冷却するためのクーリングガスを除塵、冷却するものである。クーリングガスアフタークーラー15は、クーリングガスの温度を調整するものであり、クーリングガスコンプレッサー14の出側に設けられる。例えばクーリングガスアフタークーラー15でクーリングガスの入口温度を下げ、流量調整手段でクーリングガスの流量を減じることでクーリングガスの出口温度が上がり還元鉄中の炭素量を調整することができる。このクーリングガスアフタークーラー15は、チラー型クーラーが好ましく、特に湿球大気温度+3~4℃以下に冷却できるチラー型クーラーが好ましい。
【0110】
以下実施形態1の詳細を説明する。
【0111】
上記設備を備えた直接還元鉄の製造設備30aでは、竪型還元炉1において酸化鉄原料と還元ガスとを接触させることで直接還元鉄が製造される。竪型還元炉1の上部から投入された酸化鉄原料を還元したガスはその炉頂からトップガスとして排出される。
【0112】
このトップガスをトップガススクラバー4で除塵、冷却し、水分の大部分を除去して水分調整し(水分調整工程)、水分を調整したガスを循環ガスコンプレッサー5で昇圧しCOリムーバー6でCOを除去し(CO除去工程)、水分とともにCO成分も調整し、総酸化性ガス成分量を調整する。
【0113】
水分はトップガススクラバー4の供給水量又は供給水温度を調整することで飽和水蒸気圧を調整し、出口圧力を調整することで循環水中の水分量を調整する。
【0114】
COリムーバー6はPSA(圧力変動吸収)型装置でも良いし、化学吸収法(Chemical Absorption method)でも良い。PSA(圧力変動吸収)型装置を用いた際には減圧する必要があるが、減圧に回転式減圧器を用い、回転式減圧器の軸と循環ガスコンプレッサー5の軸とを物理的に繋いで昇圧動力を削減する方法を用いればさらに良い。
【0115】
水分(HO)及び、二酸化炭素(CO)の除去により酸化成分が調整されてCOとHとが主成分となったガスを、必要に応じてトップガス熱回収熱交換器3a及びプレヒータ3bで予熱した(予熱工程)のち、第1のガス混合装置7aにおいて、純酸素等の大気酸素濃度よりも高い酸素濃度の高濃度酸素含有ガスB1及び天然ガス等の炭化水素含有ガスA1を混合して(第1ガス混合工程)酸素で部分酸化、燃焼させる。
【0116】
これにより、HO及びCOの酸化性ガス、水素(H)及び一酸化炭素(CO)の還元ガス、並びに炭化水素ガスが混合された混合ガスを製造するとともに酸化反応による熱量で混合ガスを昇温する。
【0117】
この昇温された混合ガスにさらに第1の炭化水素含有ガス混合装置7bにて炭化水素含有ガスA2を必要量混合し、オートサーマルリフォーマー8に導入して、混合ガスの自己のエネルギーで炭化水素と酸化性ガスとを改質し高還元度の還元ガスを製造する(改質ガス製造工程)。
【0118】
ここで、循環ガスの予熱温度、混合する高濃度酸素含有ガスB1の量、炭化水素含有ガスA1,A2の量は、酸化鉄原料の還元に必要な改質ガスの量と改質ガスの還元度及び温度とオートサーマルリフォーマー8の入口及び出口のガスの温度の条件によって決めれば良い。
【0119】
例えば、多くの還元炉投入還元ガスが必要な場合にはプレヒータ3bでの循環ガスの予熱温度を低めに設定し、オートサーマルリフォーマー8の入口のガスの温度の上限まで酸素含有ガスB1を混合し、それに見合う炭化水素含有ガスA1,A2を混合することでより多くの還元ガスを製造することが可能となる。
【0120】
逆に余剰のトップガスを削減するために還元炉投入還元ガス量を減少させたい場合には、循環ガスの予熱温度を、トップガス熱回収熱交換器3a及びプレヒータ3bで炭素析出及び浸炭による問題が生じない範囲で、例えば850℃未満、好ましくは700℃未満、より好ましくは550℃未満の範囲内で、できるだけ高く設定することで混合可能な酸素量が減少し、新たに製造される還元ガス量が減少する。
【0121】
また、第1のガス混合装置7aにおいては、トップガスに炭化水素含有ガスA1及び高濃度酸素含有ガスB1を混合し、煤を発生させない範囲の比率で部分燃焼させ、さらに第1の炭化水素含有ガス混合装置7bにおいて必要に応じて炭化水素含有ガスA2を混合し、オートサーマルリフォーマー8の入口のガスの温度が許容温度、例えば1500℃以下、好ましくは1400℃以下となるように調整する。
【0122】
同時に、オートサーマルリフォーマー8内で炭素析出が起こらない範囲で、且つオートサーマルリフォーマー8の出口のガスの温度が700℃以上、好ましくは750℃以上、さらに好ましくは800℃以上となるように炭化水素含有ガスA1,A2及び高濃度酸素含有ガスB1を調整する。
【0123】
この条件でオートサーマルリフォーマー8の出口の改質ガスの還元度が所定の還元度、例えば7以上、好ましくは8以上の条件を満足できない場合には、第1のガス混合装置7a、第1の炭化水素含有ガス混合装置7b及びオートサーマルリフォーマー8を多段にする。そして、一段目のオートサーマルリフォーマーの出口で改質反応により温度が低下したガスにさらに高濃度酸素含有ガスと炭化水素含有ガスを混合し、次のオートサーマルリフォーマーに導入することを繰り返し、最後のオートサーマルリフォーマーの出口のガスの還元度を調整し、竪型還元炉1の入口のガスの還元度が所望の還元度及び温度となるようにする。
【0124】
また、トップガス熱回収熱交換器3a及びプレヒータ3bでの炭素析出や浸炭反応及びオートサーマルリフォーマー8での炭素析出反応は、循環ガス中のHO,CO濃度、ガス圧、及びガス温度に依存するので、それぞれを適正な範囲に調整することでそれらの問題を解消できる。
【0125】
例えばトップガススクラバー4の出側ガスの圧力及び温度を調整して、水分濃度を調整する。もしくは循環ガスコンプレッサー5の出口にさらに直接水冷式クーラーを設けて水分濃度を調整しても良い。また、CO濃度はCOリムーバーで調整する。また、ガス圧は、系外に放出するガス量を調整することでトップガススクラバー4の出口圧力を調整し、トップガススクラバー4の出口圧力を調整することでオートサーマルリフォーマー8の入口圧力を循環風量に応じた圧力に調整する。また、ガスの予熱温度は、例えばトップガス熱回収熱交換器3aでトップガスから一定量の熱回収を行い、外部燃焼型プレヒータ3bで、炭素析出が起こらない範囲で所望の温度まで外部燃焼型プレヒータ3bの燃焼量を調整して昇温すれば良い。
【0126】
オートサーマルリフォーマー8に導入されるガスが600kPa(A)以上の圧力では多量の余剰酸化性ガスが存在しない限りオートサーマルリフォーマー8の触媒上で炭素が容易に析出するので、炭素析出問題を回避し、且つ所定の還元度の改質ガスを得ることはできない。
【0127】
したがって、本発明の実施形態1の直接還元鉄の製造設備30aにおいては、オートサーマルリフォーマー8での炭素析出を防ぎ、所望の還元度の還元ガスを得るため、オートサーマルリフォーマー8に導入するガスの圧力は、600kPa(A)未満、好ましくは500kPa(A)未満、さらに好ましくは350kPa(A)未満に調整する。
【0128】
上記説明では、第1のガス混合装置7a、第1の炭化水素含有ガス混合装置7b及びオートサーマルリフォーマー8を別々に設置するケースを説明したが、これに限らず酸化反応と改質反応とを一つのリフォーマーで行えるオートサーマルリフォーマー8を用いれば第1のガス混合装置7及び第1の炭化水素含有ガス混合装置7bにおいて炭化水素ガスA1,A2を別々に混合する必要はなく、オートサーマルリフォーマー8に高濃度酸素含有ガスB1及び炭化水素含有ガスA1,A2の必要量をすべて混合すれば良い。
【0129】
またこの時、オートサーマルリフォーマー8の入口のガスの温度も低下するので広範囲の調整が可能となる。
【0130】
上記の条件で製造された改質ガスに、さらに第2のガス混合装置9において、高濃度酸素含有ガスB2及び炭化水素含有ガスA3を混合し(第2ガス混合工程)、その後流でさらに炭化水素含有ガスA4を混合することで、炉入口ガスを昇温するとともに炉内の金属鉄の触媒効果により改質(In-situ reforming)させる。これにより、炉内でのガス還元度を上げ、且つ酸化鉄の還元反応を高温で行うことが可能となる。
【0131】
加えて、炉内での改質反応とともに、発熱反応であるCH生成反応による炉内の部分的高温化を防ぐために必要な炭化水素混合を行うための改質ガス混合器11を設け炭化水素含有ガスA4をさらに混合できるようにすれば尚良い。
【0132】
また、竪型還元炉1の入口のガス温度が1000℃近辺の領域であっても原料によっては改質ガスを還元炉1に導入した時に炉内で還元鉄同士が融着して排出不良の原因となるクラスターの形成や炉内での粉化を引き起こす場合がある。この場合には改質ガス冷却器10を設けて温度制御を行っても良い。
【0133】
一方、クラスター特性に優れた原料である場合には、第2のガス混合装置9への高濃度酸素含有ガスB2と炭化水素含有ガスA3とを増量し、酸素の部分燃焼量を増やすとともに、炭化水素ガス量も増量することで炉内温度上昇及び炉内での改質反応(In-situ reforming)をさらに促進させることができる。
【0134】
この場合に、改質ガス混合器11からの炭化水素含有ガスA4の量を増加させ、還元炉1に導入する還元ガス(炉導入ガス)中の炭化水素ガスの濃度を上げれば上記改質反応とともに炭素析出反応も促進され、還元鉄の炭素濃度を向上させることもできる。
【0135】
この時、還元鉄上では炭素析出反応を伴うが、炭化水素含有ガスA4を混合した後に合金を用いた機器はないので炭素析出及び浸炭に伴う機器の損傷等の問題は発生せず、一方で製品還元鉄の炭素含有量が増加することから製品品質の観点からも好ましい。
【0136】
しかしながら、本実施形態1のように還元ガスの圧力が低いケースでは、還元炉内での改質に必要な炭化水素ガス分圧は低く、高い生産性を維持するためには余剰の炭化水素ガスを混合できない。したがって、還元ゾーン2での還元鉄への炭素析出反応は起こりにくく、還元ゾーン2出側での還元鉄中の炭素含有量は概ね1.5%から2%程度に留まる。
【0137】
一方で本実施形態1では、クーリングゾーン12での炭素付加量は前述の通り還元ゾーン2の状態に大きく依存せず調整可能となるので以下に説明するように排出される還元鉄中の炭素量の調整が可能となる。
【0138】
竪型還元炉1での炭素析出反応の主反応は炭化水素のクラッキング反応であり、その反応は炭化水素ガス分圧と温度に大きく依存する。
【0139】
実施形態1では、還元炉1のクーリングゾーン12から排出されたクーリングガスは、クーリングガスループ23により、クーリングガススクラバー(直接接触型クーリングガス冷却器)13で除塵、冷却された後、クーリングガスコンプレッサー14で昇圧され、その後、クーリングガスアフタークーラー15でさらに冷却されてクーリングゾーン12に導入される。
【0140】
ここで炭化水素ガス分圧の高いガスを高温で還元鉄と接触させるために、循環クーリングガスの炭化水素濃度を50%以上、好ましくは70%以上とし、クーリングガスコンプレッサー14の出側にクーリングガスアフタークーラー15、好ましくはチラー型クーラーを設けている。
【0141】
通常のCold DRI製造設備においては、還元鉄の再酸化によるトラブルを防ぐために還元鉄の排出温度が50℃から55℃以下になるようにクーリングガスの流量を調整している。
【0142】
しかしながら、クーリングガスの還元炉1の入口温度は水噴霧冷却型のクーリングガスコンプレッサー14を用いた場合でも、その昇圧に伴い概ね40℃前後である。このように、クーリングガスと還元鉄の管理排出温度の温度差が小さいため多量のクーリングガスが必要となり、必然的にクーリングガスの還元炉からの排出温度は低くなり概ね400℃前後となる。
【0143】
上述の通りクーリングガスの主成分を炭化水素とし、還元鉄と接する炭化水素ガス分圧をできるだけ高くするようにしているが、そのガス温度が400℃程度の場合、高温の還元鉄と接した瞬間に還元鉄を冷却してしまい、炭化水素ガスのクラッキング反応を充分に起こさせることができない。
【0144】
また、このクーリンガスの一部を還元ゾーン2に上昇させても、常に温度の低いガスが還元炉中央を流れるため、炭素析出反応を起こさせるのに充分な高温に達することはなく炭素析出反応を起こさないばかりか、還元反応の停滞を招いてしまう。
【0145】
一方、本実施形態1のようにクーリングガスコンプレッサー14の出側にクーリンガスアフタークーラー15、好ましくはチラー型クーラーを設けて、クーリングガスの還元炉1の入口温度を下げると所望の還元鉄排出温度(通常50℃から55℃程度以下)との温度差を大きく取れることから、少量のクーリングガスでも所望の還元鉄の排出温度に冷却することが可能となる。このクーリングガスの還元炉1の入口温度は、35℃以下であることが好ましい。
【0146】
この時、還元鉄を冷却するのに必要なクーリングガスの流量は少なくなり、クーリングガスのトータル熱容量が小さくなるのでクーリングゾーン12の出側の温度は必然的に高くなる。
【0147】
したがって、本実施形態1では、クーリングゾーン12の上部で高温のクーリングガスが還元鉄と接することになる。この部分では炭化水素ガス分圧も高く、且つ高温であるので炭化水素ガスのクラッキング反応は促進され、還元鉄中の炭素量を増加させることができる。加えてクーリングガスを冷却することでクーリングガスに含まれる水分量も低減することから、水分による還元鉄中の炭素の消費を防ぐことにもなる。加えてクーリングガス出口温度が高くなることから、例えばクーリングガスループ23にボイラー等の熱回収器を備えると、クーリングガスから効率的な熱回収が可能となる。
【0148】
すなわち、外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)での炭素析出や合金鉄上での浸炭及びメタルダスティングの問題を回避し、同時に還元炉入口のガスの温度を炉内での粉化、還元鉄同士の融着(クラスター)、粉化した鉄による耐火物の損傷等を引き起こさない温度に維持する条件であっても、それらの条件に関わらずクーリングガスの入口温度と流量を調整することで還元鉄中の炭素量を例えば3%以上に調整することが可能となる。
【0149】
以下、本実施形態1での直接還元鉄の製造条件の一例を示す。
【0150】
循環ガスの予熱温度を約450℃、トップガススクラバー4の出側圧力を50kPa(A)、出口温度を45℃として循環ガス中の水分量を調整し、乾式のプロセスガスコンプレッサー5を用いて、COリムーバーを介してCOを除去した後オートサーマルリフォーマー8に導入するガスの圧力を約250kPa(A)~350kPa(A)に制御する。
【0151】
第1のガス混合装置7a及び第1の炭化水素含有ガス混合装置7bにおいて、オートサーマルリフォーマー8の出口で改質ガスをR-Value10程度となるように炭化水素含有ガスA1、高濃度酸素含有ガスB1及び炭化水素含有ガスA2を混合、部分燃焼させると、オートサーマルリフォーマー8の入り口温度は1500℃以下となり、出口のガスの温度は約950℃程度となる。この時、オートサーマルリフォーマー8の出側での酸化性物質の炭化水素ガス比(CO+HO)/CH4は触媒上での炭素の析出が起こらない程度の比率を維持できる。
【0152】
これにさらに、第2のガス混合装置9において炭化水素含有ガスA3と高濃度酸素含有ガスB2とを加え、920℃程度で還元炉1に投入すると、炉内で改質(In-situ reforming)及び炭素析出反応を起こし、改質及び炭素析出反応後のガスは温度約780℃、還元度13程度の良質な還元ガスを得ることができる。
【0153】
上記の一例で挙げた条件では、炉導入ガス中の炭化水素ガスの濃度は概ね約5~8%程度又はそれ以下で充分である。すなわち多量の余剰の炭化水素含有ガスを必要としないことから、還元鉄当たりに必要な炉導入ガスの量は高圧操業に比較して少なくて良く、例えば循環ガス圧力700kPa(A)以上での運転と比べても還元炉1内での圧力損失はほぼ同等となり、低圧ガス操業の一つの短所である圧力損失の増大という点においてその短所が顕著にならない。
【0154】
また生産性においては、必要な還元反応の時間は圧力よりも温度に大きく依存するので、炉内改質、炭素析出反応後の還元ガスの温度を下げないことが還元反応速度すなわち生産性に大きく寄与する。
【0155】
本製造条件では、事前に大半の改質反応をオートサーマルリフォーマー8で終えているので、炉内改質反応(In-situ reforming)による温度低下は小さく改質及び炭素析出反応後のガスは温度約780℃となる。
【0156】
一方、高圧条件下で改質反応(In-situ reforming)の大部分を炉内で行わせる場合には、その吸熱反応により炉内ガス温度は著しく低下し、生産性も著しく低下する。
【0157】
したがって、高圧での還元にも関わらず大きな竪型還元炉が必要となり、本条件での竪型還元炉より大幅にそのサイズを縮小することはできず、高圧ガス操業の長所である設備サイズの縮小化のメリットも享受できない。
【0158】
また、本条件における製品中の炭素量の調整はクーリングゾーン12で行うことができる。
【0159】
本例においては、クーリングガス温度をチラー型のクーリングガスアフタークーラー15で35℃以下好ましくは25℃以下に調整し、還元鉄の排出温度が所望の温度、例えば50℃以下となるようにクーリングガス量を調整する。
【0160】
この時、還元鉄の排出温度(通常50℃程度)とクーリングガスの還元炉1の入口温度の差は25℃となり、40℃程度のクーリングガス温度時の温度差10℃に比べて2倍以上の温度差となる。
【0161】
したがって、必要クーリングガス量は大幅に削減されクーリングガスの還元炉出口温度は上昇し、還元鉄中の炭素量を3%以上に調整することが可能となる。
【0162】
以上のように、本例で示す通り本実施形態1の方が、炭素析出問題、炉内圧力損失、炉内流動化現象、生産性、設備の信頼性、設備サイズ、製品品質の総合的観点から高圧ガスの条件よりも優れたものになる。
【0163】
次に本発明の別の実施形態2の直接還元鉄の製造設備30bを、図2を参照して説明する。
【0164】
本実施形態2の直接還元鉄の製造設備30bは、実施形態1の直接還元鉄の製造設備30aと同様に、竪型還元炉(シャフト炉)1、還元ゾーン2、熱交換器3、水分調整装置(トップガススクラバー)4、循環ガスコンプレッサー5、COリムーバー6、第1のガス混合装置7a、第1の炭化水素含有ガス混合装置7b、オートサーマルリフォーマー8、第2のガス混合装置9、改質ガス冷却器10、改質ガス混合器11、クーリングゾーン12、クーリングガススクラバー(直接接触型クーリングガス冷却器)13、クーリングガスコンプレッサー14、クーリングガスアフタークーラー15及び炭化水素含有ガスラインA1,A2,A3,A4,A5、酸素含有ガスラインB1,B2を備えている。また、熱交換器3は、トップガス熱回収熱交換器3aと、循環ガス予熱器(プレヒータ)3bとで構成されている。実施形態1と同様の構成は同じ符号を付けることにより説明を省略する。
【0165】
本実施形態2の直接還元鉄の製造設備30bは、所望の高温のクーリングガスを抜き出し還元ゾーン2に導入できるよう、還元ゾーン2とクーリングゾーン12を別々の炉として互いに独立して構成されている。還元ゾーン2とクーリングゾーン12とは、還元鉄をクーリングゾーン12へ降下させるシュート22で繋いでいる。
【0166】
また、直接還元鉄の製造設備30bは、冷却された直接還元鉄(Cold DRI)を製造するために、クーリングゾーン12において還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループ23を備えている。クーリングガスループ23は、クーリングゾーン12から排出されるクーリングガスを除塵するクーリングガス除塵機17,18及びクーリングガスから熱回収を行うとともにクーリングガスを冷却するクーリングガス熱交換器(ボイラー)19を備えている。クーリングガス除塵機17,18は乾式集塵機として構成される。
【0167】
本実施形態2のように還元ゾーン2とクーリングゾーン12とを別々の炉に分割することで、還元炉1とクーリングゾーン12の上部を繋ぐダクトをすべて耐火物で施工することが容易にでき、設備的な問題を引き起こすことなく高温のクーリングガスを抜き出すことができる。
【0168】
このようにして高温まで予熱された炭化水素が主成分のクーリングガスと還元された金属鉄とを接触させることができるので容易に還元鉄の炭素量を向上させることができる。
【0169】
さらにクーリングガスを還元ゾーン2に炉内上昇流として導入する場合、還元ゾーン2の下部の領域でさらに加熱され、還元鉄とほぼ同じ温度まで加熱されるので、周囲のガス圧力に関わらず還元鉄の炭素量をさらに増加させることが可能となる。
【0170】
また、還元ゾーン2へ導入されるクーリングガスは充分に昇温されているので、還元帯でのクーリングガスの上昇流による冷却効果はなくなり還元ゾーン2で還元停滞を引き起こすこともない。
【0171】
加えて、還元ゾーン2の下部には十分な滞留時間があるので反応時間の観点からも充分な浸炭が期待できる。
【0172】
また、クーリングガスの出側温度が上昇することで、クーリングガスから熱回収を行う場合、熱回収効率が向上する。例えば乾式集塵機17,18を介してボイラー19で熱回収を行い、発電を行っても良い。この場合、蒸気温度を高くまで加熱できるので発電効率が飛躍的に向上する。またボイラー19の代わりに循環ガスや炭化水素含有ガスを予熱しても良い。
【0173】
一方で、直接還元鉄降下シュートを通してクーリングガスをクーリングゾーンから還元ゾーンに導入すると、還元鉄の降下不良やシュートの振動による機器損傷の問題を引き起こす。
【0174】
しかしながら本実施形態2の直接還元鉄の製造設備30bでは、還元鉄が降下する還元ゾーン2とクーリングゾーン12とを繋ぐシュート22以外に、クーリングガスを還元ゾーン2へ通過させる還元ゾーン用ガスダクト16aを別途備えている。この還元ゾーン用ガスダクト16aはクーリングゾーン12の上部から還元ゾーン2の下部に繋がれている。本実施形態2では、還元ゾーン用ガスダクト16aがガスダクト(クーリングガス繋ぎダクト)16を構成している。
【0175】
これにより、クーリングガスは還元鉄の降下を阻害することなく、還元ゾーン用ガスダクト16aを介して還元ゾーン2に導入することが可能となる。すなわち、クーリングゾーン12から還元ゾーン2へ直接導入されるクーリンガスの量は還元鉄の降下不良等の理由により制限されることなく、クーリングガスループ23に導入する炭化水素含有ガスA5の量により調整できる。なお、炭化水素含有ガスA5は図1図4においてクーリングガスコンプレッサー14の入口側に導入されているが、そのガス圧力に応じてクーリングガスコンプレッサー14の入口側、出口側の適切な位置から導入すれば良い。
【0176】
これにより本実施形態2では必要に応じて充分に予熱されたクーリングガスを還元ゾーン2に導くことで還元ゾーン2での還元停滞を引き起こさず還元鉄中の炭素量を増加させることができ、且つ還元鉄の降下を阻害することなく安定操業を維持でき、トータルの熱効率も向上させることができる。
【0177】
次に実施形態2の変形例の直接還元鉄の製造設備30bについて、図3を参照して説明する。この変形例では、クーリングガス繋ぎダクト16は、還元ゾーン用ガスダクト16aと、クーリングゾーン12から抜き出されたクーリングガスの一部を循環ガスラインに戻す循環ガスライン用ガスダクト16bとで構成されている。この循環ガスライン用ガスダクト16bはクーリングゾーン12又はクーリングガスループ23と循環ガスラインとに繋がれている。具体的には、循環ガスライン用ガスダクト16bは、還元ゾーン用ガスダクト16aから分岐されて設けられ、オートサーマルリフォーマー8の下流、例えば改質ガス混合器11、及び/又はオートサーマルリフォーマー8の上流、例えば第1の炭化水素含有ガス混合装置7bに繋がれている。これにより、クーリングガスの一部は、オートサーマルリフォーマー8の下流、例えば改質ガス混合器11に戻され、及び/又はオートサーマルリフォーマー8の上流、例えば第1の炭化水素含有ガス混合装置7bに戻され、還元炉1に導入する還元ガス及び/又はオートサーマルリフォーマー8の上流を流れるガスに混合される。
【0178】
このように予熱されたクーリングガスを冷却することなく循環ガスラインに戻すことで、予熱されたクーリングガスを炭化水素含有ガスA2,A4の一部もしくは代替として利用しても良い。これにより、炭化水素含有ガスA2,A4の供給ラインが不要となる場合は、炭化水素含有ガスA2,A4の供給ラインを無くしても良い。また、循環ガスライン用ガスダクト16bを循環ガスラインに直接繋ぐ場合は、第1の炭化水素含有ガス混合装置7bなどは設けなくても良い。
【0179】
また、循環ガスライン用ガスダクト16bは、還元炉1から排出されたクーリングガスが直接接触型クーリングガス冷却器13を介することなく循環ガスラインに戻せれば任意の形態を取り得る。例えば、クーリングガス除塵機17,18で除塵された後で且つクーリングガススクラバー13の上流からクーリングガスを上記同様に還元炉1に導入する還元ガス及び/又はオートサーマルリフォーマー8の上流を流れるガスに混合しても良い。この場合は、すでに除塵されているので新たな除塵機を設置する必要は無い。
【0180】
このように循環ガスライン用ガスダクト16bを設けることにより、還元に必要な炭化水素含有ガスを予熱されたクーリングガスから得ることができ、炭化水素含有ガスを予熱するための予熱器を別途設置する必要がなく、炭化水素含有ガスの外部予熱器の設備費を削減することができる。
【0181】
また、このようにクーリングゾーン12に導入するほとんどのクーリングガスを、還元ゾーン2に直接導入するか、または直接水で冷却することなく循環ガスライン(還元炉投入ガス(還元ガス)及び/又は循環ガス)に抜き出すことで、クーリングゾーン12から抜き出され、冷却された後、再度クーリングゾーン12に導入される循環クーリングガス量が大幅に削減される。
【0182】
したがって、クーリングゾーン12を流れるクーリングガスのほとんどは新たに導入される炭化水素含有ガスA5となるので、炭化水素含有ガスA5の圧力が高く、クーリングガスコンプレッサー14の出側から導入する場合には、循環クーリングガスを昇圧するクーリングガスコンプレッサー14のサイズを小さくでき且つ必要動力も減る。加えて冷却するクーリングガスが減少するので水の消費量も削減できる。
【0183】
さらに、循環クーリングガス中の炭化水素濃度が向上し、還元鉄中の炭素量を向上させることができる。
【0184】
また、クーリングゾーン12の入口の温度は新たに導入する炭化水素含有ガスA5の温度に依存することになるが、この炭化水素含有ガスA5はほとんどの場合天然ガス供給ステーションから高圧で供給されるので、この高圧天然ガスを減圧して混合することで断熱膨張によりクーリングゾーン12の入口の温度を低下させる効果もある。
【0185】
次に本発明の別の実施形態3の直接還元鉄の製造設備30cを、図4を参照して説明する。
【0186】
本実施形態3の直接還元鉄の製造設備30cは、実施形態1及び2の直接還元鉄の製造設備30a,30bと同様に、竪型還元炉(シャフト炉)1、還元ゾーン2、熱交換器3、水分調整装置(トップガススクラバー)4、循環ガスコンプレッサー5、COリムーバー6、第1のガス混合装置7a、第1の炭化水素含有ガス混合装置7b、オートサーマルリフォーマー8、第2のガス混合装置9、改質ガス冷却器10、改質ガス混合器11、クーリングゾーン12、クーリングガススクラバー(直接接触型クーリングガス冷却器)13、クーリングガスコンプレッサー14、クーリングガスアフタークーラー15及び炭化水素含有ガスラインA1,A2,A3,A4,A5、酸素含有ガスラインB1,B2を備えている。また、熱交換器3は、トップガス熱回収熱交換器3aと、循環ガス予熱器(プレヒータ)3bとで構成されている。実施形態1及び2と同様の構成は同じ符号を付けることにより説明を省略する。
【0187】
本実施形態3では、実施形態2においてクーリングゾーン12を別の形態としている。具体的には、還元ゾーン2とクーリングゾーン12とが一体となっている実施形態1の還元炉1に近い構造であるが、還元ゾーン2とクーリングゾーン12との間に中間クーリングゾーン21を設けている。
【0188】
また、本実施形態3では、直接還元鉄の製造設備30cは、冷却された直接還元鉄(Cold DRI)を製造するために、クーリングゾーン12及び中間クーリングゾーン21において還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループ23を備えている。クーリングガスループ23は、中間クーリングゾーン21とクーリングゾーン12とのそれぞれに設けられている。具体的には、クーリングガスループ23は、上部クーリングガスループ231と下部クーリングガスループ232とを有し、上部クーリングガスループ231が中間クーリングゾーン21に設けられ、下部クーリングガスループ232がクーリングゾーン12に設けられている。
【0189】
上部クーリングガスループ231は、中間クーリングゾーン21から排出されるクーリングガスを除塵するクーリングガス除塵機17,18、クーリングガスを冷却するクーリングガス熱交換器(ボイラー)19、及び、クーリングガスを昇圧する中間クーリングガスコンプレッサー20を備えている。
【0190】
中間クーリングガスコンプレッサー20は、乾式の昇圧機として構成される。中間クーリングゾーン21から排出されたクーリングガスは、クーリングガス除塵機17,18で除塵された後、クーリングガス熱交換器19で熱回収を行い冷却され、その後、中間クーリングガスコンプレッサー20で昇圧されて中間クーリングゾーン21に導入される。
【0191】
この上部クーリングガスループ231を高温ガスループとし、例えば還元炉1のクーリングガス入口のクーリングガスの温度を150℃から200℃程度の温度にし、還元炉1のクーリングガス出口のクーリングガスの温度を還元直後の還元鉄の温度に近い温度、例えば700℃前後となるように流量を調整する。これにより、還元ゾーン2とクーリングゾーン12とを別々の炉に分割した場合と同様に高温クーリンガスの長所を享受できる。
【0192】
ここでクーリングガスの抜出部を耐火物構造物とすることで合金等の金属構造物が不要となり金属構造物での浸炭、メタルダスティング等の問題は生じない。
【0193】
下部クーリングガスループ232は、実施形態1と同様のクーリングガススクラバー13、クーリングガスコンプレッサー14及びクーリングガスアフタークーラー15を備えている。クーリングゾーン12から排出されたクーリングガスは、クーリングガススクラバー13で除塵、冷却された後、クーリングガスコンプレッサー14で昇圧され、その後、クーリングガスアフタークーラー15で冷却されてクーリングゾーン12に導入される。
【0194】
この下部クーリングガスループ232は、上部クーリングガスループ231のクーリングガスよりも温度が低い低温ガスループとし、還元鉄の排出温度を所望の温度に制御する。この時、還元鉄は中間クーリングゾーン21ですでに冷却されているので、中間クーリングゾーン21を持たない場合に比べて少量のクーリングガスの流量で所望の温度まで冷却が可能である。
【0195】
クーリングガスコンプレッサー14の出側にアフタークーラー15、好ましくはチラー型クーラーを設置することで、必要流用はさらに少なくなる。
【0196】
このように、上部クーリングガスループ231と下部クーリングガスループ232のそれぞれの温度及び流量を調整することで前の形態と同様に還元鉄の排出温度及び還元鉄の炭素量を任意に制御できる。
【0197】
以上、図面を参照して本発明の実施形態1~3を説明したが、本発明は上記実施形態1~3に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0198】
例えば、本実施形態1~3では竪型還元炉1一基に対してオートサーマルリフォーマー8を用いた単独の改質、還元ガスの循環ループを説明したが他のガス循環ループと併用しても良い。
【0199】
すなわち、既設の還元鉄の製造設備のトップガス又は循環ガスを一部抜出し、本発明を適用して改質ガスを製造し、既設の炉導入ガスと合流させることにより、竪型還元炉に導入できる還元ガスを増量させることが可能となり、既設還元鉄の製造設備の生産能力を向上させることができる。
【0200】
逆に本発明に補助的にミドレックス法やHYL法で採用されているリフォーマーを用いて改質ガスを製造し、両方のガスを竪型還元炉に導入しても良い。
【0201】
また、第1のガス混合装置7a又は第2のガス混合装置9の一部ガスを、廃プラスチック等の固体炭化水素充填塔又は流動層に導入し、固体炭化水素を熱分解し、水素、一酸化炭素及び炭化水素含有ガスを発生させて炭化水素含有還元ガスとして利用しても良い。
【0202】
この場合、必要な炭化水素含有ガスの量を削減することができ、また同時に廃プラスチックスチックの処理も行えるので炭化水素含有ガスが高価な地域や廃プラスチック処理が必要な地域に非常に有効である。
【0203】
また、トップガスの一部を、酸素含有ガスを混合する前に分岐し酸素含有ガス及び水蒸気を必要に応じて廃プラスチック等の固体炭化水素処理設備に導入し、固体炭化水素を部分酸化及び熱分解し水素、一酸化炭素及び炭化水素含有ガスを発生させて炭化水素含有還元ガスとして利用しても良い。
【0204】
また、下流の電気炉の要求や、下流に電気炉がなく直接還元鉄を輸出する場合でもそれぞれの要求に従った種々の対応が可能である。
【0205】
例えば、電気炉の原料ハンドリング設備が常温仕様のため電気炉で常温の還元鉄を熔解する場合、できるだけ電気炉への吹き込み酸素量を増加し生産性を上げたいので炭素量の高い還元鉄が望ましい。
【0206】
この場合には、上述の通り還元鉄の温度が常温となるようにチラー型クーラー15等でできるだけ還元炉1へのクーリングガスの入口温度を下げる一方で、クーリングガスの流量を下げることでクーリングゾーン12の出口温度を上げ、高温まで予熱された炭化水素含有ガスで還元鉄中の炭素量を増加させ常温の高炭素含有還元鉄を製造、供給できる。
【0207】
また、還元ゾーン2とクーリングゾーン12を分けて、高温のクーリングガスを還元ゾーン2に導入しても良いし、クーリングゾーン12を分割して中間クーリングゾーン21を設けて高温のクーリングガスと高温還元鉄が接するようにしても良い。
【0208】
一方、搬送設備が高温仕様、例えば500℃以上の還元鉄を熔解できる設備仕様の場合には、還元鉄に含まれる炭素量があまりに高いと、電気炉において完全熔解した後に脱炭工程が必要となり電気炉の生産性を却って低下させる。
【0209】
この場合には、完全にクーリングガスを停止し、高濃度炭化水素含有ガスをクーリングゾーン12及び還元ゾーン2に導入しないようにすれば、炭化水素ガスのクラッキング反応は起きず、高温の低炭素含有還元鉄を製造、供給することができる。
【0210】
また、図2に示したように還元ゾーン2とクーリングゾーン12とを分割する場合には、還元ゾーン2から直接還元鉄を排出しても良い。
【0211】
また、直接還元鉄を海上輸送するために、熱間ブリケット鉄(HBI)を製造する場合には、竪型還元炉1の下流に熱間ブリケットマシンを配置し、還元ゾーン2から直接高温還元鉄をブリケットマシンに供給することでHBIの製造が可能となる。
【0212】
さらに、中間温度の還元鉄が必要な場合には、例えばクーリングガスの一部をアフタークーラー15やチラー型クーラー15をバイパスさせることで、ある程度クーリングガスの入口温度を上げ、クーリングガスの量を増やすことも可能である。この場合、クーリングゾーン12の出側温度は中温となり、中温の中炭素含有還元鉄を製造、供給することができる。
【0213】
上記還元鉄中の炭素量の調整は、改質ガスの製造方法、条件によらず調整可能であるのでオートサーマルリフォーマーを用いない、例えば既存の直接還元鉄の製造設備を改造しても良い。具体的には、上記実施形態1~3のクーリングゾーン12、中間クーリングゾーン21及びクーリングガスループ23の構成を、既存の外熱式改質器(リフォーマー)や外部燃焼型循環ガス加熱器(プレヒータ)を備えた直接還元鉄の製造設備に取り入れてもよい。これにより、既存の直接還元鉄の製造設備においても、製造される還元鉄に含有される炭素量を容易に調整でき、高品質の還元鉄を得ることができる。
【0214】
また加熱されたクーリングガスを第1の炭化水素含有ガス混合装置7bに混合するとき、第1の炭化水素含有ガス混合装置7bをイジェクター型にすることで高温昇圧機が不要となり設備的にシンプル且つ信頼性の高いシステムとなる。
【0215】
また混合する前に、例えばセラミックフィルターなどの高温除塵機を介することで、オートサーマルリフォーマー8での還元鉄粉等による触媒の問題を引き起こさないのでさらに良い。
【0216】
また、本発明のクーリングガスループ23は水素還元製鉄の設備と組み合わせても良い。すなわち酸化鉄の還元を水素で行い、クーリングゾーン12及び還元ゾーン2の下部で炭化水素により還元鉄に炭素を付加することができる。
【0217】
この場合、酸化鉄の還元を水素で行うことから還元に伴う二酸化炭素は発生しない。またクーリングゾーン12での浸炭反応は;
CH=C+2H
であり、浸炭反応によっても二酸化炭素は発生せず、二酸化炭素の発生は、還元ゾーン2に導かれた少量の炭化水素の改質によるわずかな発生となる。
【0218】
したがって、水素還元製鉄での大きな欠点であった、還元鉄中の必要炭素量の問題を解消でき、その目的である二酸化炭素発生量の大幅な削減も水素のみの還元鉄製鉄法とほぼ同等に達成できる。
【0219】
また、還元炉1から抜き出されたクーリングガスを循環ガスに混合するための循環ガスライン用ガスダクト16bは、上記実施形態2に限らず、上記実施形態1又は3に適用してもよい。実施形態1に適用する場合は、クーリングゾーン12のクーリングガス抜出口から直接接触型クーリングガス冷却器13の間に循環ガスライン用ガスダクト16bが設けられれば良い。また、実施形態3に適用する場合は、クーリングゾーン12のクーリングガス抜出口から直接接触型クーリングガス冷却器13の間、及び、中間クーリングゾーン21の場合は直接水で冷却する機器を有していないので、クーリングガスループ231の任意の箇所のいずれか一方又は両方に循環ガスライン用ガスダクト16bが設けられれば良い。この実施形態1及び3では、循環ガスライン用ガスダクト16bがガスダクト16を構成する。
【0220】
また、上記実施形態1~3の直接還元鉄の製造設備30a,30b,30cでは、第2ガス混合装置9、改質ガス冷却器10、改質ガス混合器11及びクーリングガスアフタークーラー15を備えているが、これらは必須の構成ではなく、必要に応じて備えればよい。また、熱交換器3は、トップガス熱回収熱交換器3a及び循環ガス予熱器(プレヒータ3b)の少なくとも一方を備えればよい。また、図1図4に示されている炭化水素含有ガスA5をクーリングガスループ23に導入するラインは、図1図4に示されている位置に限らず、クーリングガスループ23の任意の位置とすることができる。
【符号の説明】
【0221】
1 竪型還元炉
2 還元ゾーン
3 熱交換器
3a トップガス熱回収熱交換器
3b 循環ガス予熱器(プレヒータ)
4 水分調整装置(トップガススクラバー)
5 循環ガスコンプレッサー
6 COリムーバー
7a 第1のガス混合装置
7b 第1の炭化水素含有ガス混合装置
8 オートサーマルリフォーマー(改質器)
9 第2のガス混合装置
10 改質ガス冷却器
11 改質ガス混合器
12 クーリングゾーン
13 クーリングガススクラバー(直接接触型クーリングガス冷却器)
14 クーリングガスコンプレッサー
15 クーリングガスアフタークーラー(チラー型クーラー)
16 ガスダクト(クーリングガス繋ぎダクト)
16a 還元ゾーン用ガスダクト
16b 循環ガスライン用ガスダクト
17 クーリングガス除塵機
18 クーリングガス除塵機
19 クーリングガス熱交換器(ボイラー)
20 中間クーリングガスコンプレッサー
21 中間クーリングゾーン
22 シュート
23 クーリングガスループ
231 上部クーリングガスループ
232 下部クーリングガスループ
30a,30b,30c 直接還元鉄の製造設備
A1,A2,A3,A4,A5 炭化水素含有ガス
B1,B2 高濃度酸素含有ガス

図1
図2
図3
図4