(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000476
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】虫の侵入防止方法
(51)【国際特許分類】
A01M 29/34 20110101AFI20231225BHJP
【FI】
A01M29/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022109341
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久田 祐士
(72)【発明者】
【氏名】延原 健二
(72)【発明者】
【氏名】松原 晶
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121AA17
2B121CC02
2B121CC31
2B121EA30
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】 室外にいる虫がエアコン室内機内に侵入してくることを簡単に防止できる手段を提供すること。
【解決手段】 エアコン室内機内に設けられた熱交換器に向けて、有効量の界面活性剤を含有した薬液を噴霧し、噴霧した薬液をドレンパン及びドレンホースを経由して室外に排出させることを特徴とする、虫の侵入防止方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコン室内機内に設けられた熱交換器に向けて、有効量の界面活性剤を含有した薬液を噴霧し、噴霧した薬液をドレンパン及びドレンホースを経由して室外に排出させることを特徴とする、虫の侵入防止方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外にいる虫がエアコン室内機内に侵入してくることを防止する、虫の侵入防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンを冷房運転している時、熱交換器には水滴が付着するため、その水滴を集めて室外へ排出できるようドレンホースがエアコン室内機には接続されている。そのため室外とエアコン室内機はドレンホースによって結ばれることになり、室外にいる虫がドレンホースを経由してエアコン室内機内に侵入することがある。虫の侵入はエアコンの故障の原因となったり、時には室内に虫が侵入したりすることもあるため、室外から虫が侵入することを防ぐ手段が求められている。例えば、ドレン水を排出するドレンホースの室外側端部にキャップ等を取り付けたり(例えば、特許文献1参照)、ドレンホース内面に虫忌避剤の皮膜をつくり虫の侵入を防止すること(例えば、特許文献2参照)などが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-212033号公報
【特許文献2】特開2015-224839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドレンホースの室外側端部にキャップを取り付ける手段は簡単であるが、取り付けが不十分であったり、太陽光や風雨に曝されることで、キャップとドレンホースとの間に隙間が生じたり、劣化によりキャップが壊れたりして虫の侵入を許してしまうことがある。またドレンホース内面に虫忌避剤の皮膜をつくる場合、ドレンホースと虫忌避剤との相性によって皮膜が十分に形成されなかったり、皮膜が剥がれ落ちたりして十分な効果が得られないという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、従来の課題を解消し、室外にいる虫がエアコン室内機内に侵入してくることを簡単に防止できる新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、界面活性剤のもついくつかの働きが複合的に作用することで、簡単に、虫がエアコン室内機内に侵入してくることを防止することを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は以下の(1)によって達成されるものである。
(1)エアコン室内機内に設けられた熱交換器に向けて、有効量の界面活性剤を含有した薬液を噴霧し、噴霧した薬液をドレンパン及びドレンホースを経由して室外に排出させることを特徴とする、虫の侵入防止方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、実施者はエアコン室内機内の熱交換器に向かって薬液を処理するだけで、室内にいながら、簡単に、虫がエアコン室内機内に侵入してくることを防止することができる。またドレンホースに取り付けるキャップで見られるような自然劣化による問題もない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、界面活性剤のもついくつかの働きが複合的に作用することで効果を奏するものと推察される。具体的には界面活性剤によるエアコン室内機内の熱交換器(例えば、アルミフィン)、ドレンパン及びドレンホースに対する洗浄作用や皮膜形成作用が挙げられる。
例えば、洗浄作用により虫の誘引源となるドレンホース、エアコン室内機内の様々な有機物を除去することができる。また皮膜形成作用によりドレンホース内面に虫の侵入を阻害する膜をつくることができる。
【0010】
本発明の界面活性剤としては、例えば、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルアミン、アルキルポリグリコシド、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、加水分解コラーゲンペプチド塩、アシルメチルタウリン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アルキル硫酸塩、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩、ラニネートおよびその塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアミン塩、アルキルアミドプロピルアミノオキシド、アルキルベタイン、酢酸ベタイン、脂肪酸石鹸等の1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0011】
具体的には、モノグリセリン酸トリグリセリル、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、モノラウリル酸ポリグリセリル、モノステアリン酸POE(5)グリセリル、POEソルビタンモノラウレート、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン、ヘキサステアリン酸POE(6)ソルビット、モノラウリン酸POE(6)ソルビット、モノステアリン酸PEG(1EO)、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンデフェン酸エステル、POEノニフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、POE(5)フィトステロール、POE(10)フィトステロール、POE(30)フィトステロール、ポリオキシエチレン誘導体、POEラノリン、POE(20)ラノリンアルコール、POE(6)ソルビットミツロウ、精製水添大豆レチシン、水添酵素分解大豆レチシン、ヒドロキシル化大豆レチシン、ラウリルアミンオキサイド、ヤシ油アミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、オキシエチレンドデシルアミン、オクタデシルアミン、POEアルキル(牛脂)プロピレンジアミン、POEドデシルアミン、POEオクタデシルアミン、POEアルキル(ヤシ基)アミン、POEアルキル(牛脂)アミン、POEアルキル(大豆油)アミン、POEオレイルアミン、POE(硬化牛脂)アミン、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリル酸ジエタノールアミド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、混合脂肪酸カリ、パルミチン酸カリ、ステアリン酸カリ、オレイン酸ソーダ、オレイン酸カリ、TEAサルフェート塩、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸Na、セチル硫酸Na、高級アルコール硫酸Na,POE(2)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEアルキルエーテル硫酸Na、POEアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸Na、アルキルベンゼンスルホン酸Mg、アルキルナフタレンスルホン酸Na、POEアルキルフェニルエーテルスルホン酸Na、POEラウリルエーテル酢酸Na、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸Na、アルキルリン酸カリウム、ココイルサルコシンNa、ココイルサルコシンK、オレイルアルコシン、アシルメチルタウリン酸Na,N-ココイルメチルタウリンNa、N-ラウロイルメチルタウリンNa、N-パルミトイルタウリンNa、POE(4)ラウリルエーテルリン酸Na、POE(12)オレイルエーテルリン酸Na、カルボキシル化POE(3)トリデシルエーテルNa、カルボキシル化POE(3)トリデシルエーテル、カルボキシル化POE(4.5)ラウリルエーテルNa、ヤシ油脂肪酸コラーゲンペプチドNa、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のNa塩、ラウロイルメチル-β-アラニンNa、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニントリエタノールアミン、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12-18)ジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルベタイン、ジメチルアルキル(ラウリル)ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリン、2-アルキル-N-ソジウムカルボキシメチル-N-カルボキシメチルイミダゾリン、ラウリル酸アミドプロピルアミンオキシド、ラウリル酸アミドプロピルアミドベタイン等が挙げられる。
【0012】
これらの中でも、脂肪酸石鹸、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。例えば、パルミチン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸石鹸;ジメチルラウリルベタイン、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、アミドベタイン型、イミダゾリン型等のアルキルベタイン;ジメチルヤシ油アミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド;ポリオキシエチレン牛脂プロピレンジアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0013】
本発明の薬液は、上記の界面活性剤を0.01~10w/v%、好ましくは0.05~5w/v%含有するのがよい。少ないと虫の侵入防止効果が不十分となるおそれがあり、多すぎるとエアコン室内機の部材やドレンホースに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
本発明の薬液とするには、液体担体を利用することができ、例えば、水やアルコールを用いることができる。エアコン室内機の部材やドレンホースに及ぼす影響を考慮して、水と低級アルコールの混合液を用いるのがよく、その際、低級アルコールを20w/v%以下、好ましくは5~20w/v%として含有する水溶液とするのがよい。
低級アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の1種又は2種以上を組合せて用いることができ、これらの中でも、エチルアルコールが好ましい。
【0015】
本発明の薬液には、目的に応じて公知の各種成分を配合することができる。例えば、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、芳香剤、防錆剤、害虫防除剤、消泡剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0016】
抗菌剤、防カビ剤としては、例えば、PCMX、IPBC、イソプロピルメチルフェノール、チモール、フェノール系化合物、ポリフェノール、2-(4‘-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチン酸アセトフェノン、グリオキザール、アビエチン酸、フラボノイド、ポリフェノール等が挙げられる。
【0017】
芳香剤としては、例えば、バラ油、ラベンダー油、ベルガモット油、シナモン油、シトロネラ油、レモン油、ハッカ油等の精油類;ピネン、リナロール、メントール、シトラール、シトロネラール、バニリン、ボルネオール等の芳香物質類;これらの混合物;これらの配糖体等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。
【0018】
害虫防除剤としては、例えば、ペルメトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、シフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト、ブロフラニリド等の化合物;ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種精油成分;アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類等が挙げられる。
【0019】
本発明は、実施者が上述した薬液をエアコン室内機内に設けられた熱交換器(例えば、アルミフィン)に向けて噴霧することで実施される。この時、実施者はポンプ等の噴霧装置を用いて薬液を噴霧することができる。また予め薬液と噴射剤とを耐圧缶に加圧充填し、噴霧装置(アクチュエーター)を取り付けて調製されたエアゾール剤を用いることもできる。
エアゾール剤を調製する際に用いる噴射剤としては、例えば、液化石油ガス、ジメチルエーテル、ジフルオロモノクロロエタン等の液化ガス;炭酸ガス、窒素、圧縮空気等の圧縮ガスの1種又は2種以上を用いることができる。これら噴射剤はエアゾール剤において、10~90v/v%、好ましくは20~60v/v%とすればよい。
これらの中でも液化石油ガスを含有すること、また内圧が0.2~0.9Mpaに調整されることがよい。
【0020】
薬液を熱交換器に向けて噴霧する際には、エアコン室内機1台につき50~600ml、好ましくは100~400mlとなるように噴霧量を調整するのがよい。少ないとドレンパンおよびドレンホースに十分な薬液が届かず、虫の侵入防止効果が十分に得られないことがある。また過剰に噴霧すると、エアコン室内機から薬液が漏れ出たり、故障を誘発する原因になる可能性もあるため好ましくない。
【0021】
本発明の対象となる虫としては、例えば、ワモンゴキブリ、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ等のゴキブリ類、アオズムカデ、セスジアカムカデ、トビズムカデ等のムカデ類、ヒメアリ、クロヤマアリ、アミメアリ、トビイロケアリ等のアリ類;ヤスデ、ダンゴムシ、ワラジムシ、ナメクジ、ゲジゲジ、カナブン等が挙げられる。
【実施例0022】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
<試験検体の調製>
表1に示した薬液と噴射剤からなるエアゾール剤を調製して試験に用いた。
【0024】
【表1】
pH: 7.5
内圧: 0.34-0.36MPa
薬液/噴射剤(液化石油ガス)293mL/127mL
【0025】
<侵入防止効果の試験>
以下の手順でドレンホース内へのチャバネゴキブリ成虫に対する侵入防止効果を確認した。試験装置の概要は
図1に示した。
1.下部プラスチックカップ(直径14cm、高さ6cm)にチャバネゴキブリ雄成虫3 頭を入れ、同時にシェルターと水を含ませた脱脂綿を設置した。
2.試験検体をドレンホース(直径1.4cm、長さ180cm)の内部全体に薬液が届 くように420ml噴霧し、その後30分間乾燥させた。
3.上記のとおりに準備したドレンホースを
図1に示したとおり先端部を下部プラスチッ クカップ内に設置した。またドレンホースの他方先端部を上部プラスチックカップ( 直径14cm、高さ6cm)に取り付けた。また上部プラスチックカップ内面全体に 粘着スプレーを塗布し、中心部に固形餌(マウス・ラット・ハムスター用(オリエン タル酵母工業製))を置いた。
4.4日後、固形餌に誘引されてドレンホースを経由して上部プラスチックカップに移動 し捕獲されたチャバネゴキブリの数を確認した。
【0026】
試験の結果、ドレンホースに試験検体を噴霧した試験区では、4日後に捕獲されたチャバネゴキブリは0頭であった。一方、ドレンホースに試験検体を噴霧していない試験区では、4日後に2頭のチャバネゴキブリが捕獲されていた。試験は2回繰り返し、同じ結果となった。
この結果から、本発明の薬液がドレンホース内に処理(流れる)されることでドレンホース内を虫が移動することを効果的に防止することが確認された。
本発明は、エアコン室内機内の熱交換器に向かって薬液を処理するだけで、室内にいながら、簡単に虫がエアコン室内機内に侵入してくることを防止することができ有用である。