(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047628
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】置換空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0007 20190101AFI20240401BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20240401BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F24F1/0007
F24F11/80
F24F7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153223
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 匠
(72)【発明者】
【氏名】下川 良二
(72)【発明者】
【氏名】栗山 学
(72)【発明者】
【氏名】西村 繁
【テーマコード(参考)】
3L049
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L049BB11
3L058BE02
3L058BF09
3L260AA06
3L260AB07
3L260BA13
3L260BA17
3L260BA27
(57)【要約】
【課題】局所的な冷え過ぎを抑制可能な置換空調方法を提供する。
【解決手段】本開示の置換空調方法は、空調装置2が設置された空調対象空間11の下部に、床面1aから所定高さまで形成される空調対象域10を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、空調装置2は、空調装置2に吸い込まれた空調対象空間11の空気を冷却する冷却機構22と、空調対象空間11の空気を吸い込むとともに、空調装置2内の空気流れ方向において冷却機構22の上流側に配置される第1吸込口21と、空調空気Acを空調対象空間11に送り出す送風ファン23と、空調対象空間11の空気を吸い込むとともに、空調装置2内の空気流れ方向において冷却機構22の下流側かつ送風ファン23の上流側に配置される第2吸込口26と、空調空気Acを空調装置2の下方に向けて給気する給気口25と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置が設置された空調対象空間の下部に、床面から所定高さまで形成される空調対象域を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、
前記空調装置は、
前記空調装置に吸い込まれた前記空調対象空間の空気を冷却する冷却機構と、
前記空調対象空間の空気を吸い込むとともに、前記空調装置内の空気流れ方向において前記冷却機構の上流側に配置される第1吸込口と、
空調空気を前記空調対象空間に送り出す送風ファンと、
前記空調対象空間の空気を吸い込むとともに、前記空調装置内の空気流れ方向において前記冷却機構の下流側かつ前記送風ファンの上流側に配置される第2吸込口と、
前記空調空気を前記空調装置の下方に向けて給気する給気口と、
を備える
ことを特徴とする置換空調方法。
【請求項2】
前記送風ファンの動作により、前記第2吸込口から吸い込まれた前記空調対象空間の空気と、前記第1吸込口から吸い込まれ前記冷却機構により冷却された空気とが前記空調装置内で合流する
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項3】
前記空調対象空間に空調された外気を導入する第1導入口が備えられ、
前記空調装置と前記第1導入口とは近傍に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項4】
前記空調装置は、空調された外気を前記空調装置に導入する第2導入口を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項5】
前記空調対象空間はクリーンルームの内部空間であり、
前記空調装置は、塵埃を除去するフィルタを備え、前記フィルタを通過した空気が前記給気口を通じて給気される
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項6】
前記空調対象空間はクリーンルームの内部空間であり、
前記空調対象空間には、前記空調対象空間の塵埃を吸い込んで除去する除塵装置が配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項7】
前記空調装置は、前記給気口を通じた給気の温度制御機構を備え、
前記空調対象域の温度に基づき、前記温度制御機構により前記給気口を通じた給気の温度が制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項8】
前記給気口の下方における温度に影響を与える指標に基づいて、前記送風ファンの回転速度、又は、前記第2吸込口の開口面積の少なくとも一方が制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項9】
前記指標に基づき前記給気口の下方の温度が所定温度以下になると判断された場合に、前記給気口から給気される空気の温度を上昇させるように、前記送風ファンの回転速度、又は、前記第2吸込口の開口面積の少なくとも一方が制御される
ことを特徴とする請求項8に記載の置換空調方法。
【請求項10】
前記指標に基づき前記給気口の下方の温度が所定温度以下になると判断された場合に、当該判断時よりも前記送風ファンの回転速度を大きくする、又は、前記第2吸込口の開口面積を大きくする、の少なくとも一方の制御が行われる
ことを特徴とする請求項9に記載の置換空調方法。
【請求項11】
前記冷却機構は、冷却媒体の供給によって空気を冷却する熱交換器と、前記熱交換器への冷却媒体の流量を制御する弁とを備え、
前記弁の開度が前記所定開度以上のときに、前記指標に基づき前記給気口の下方の温度が所定温度以下になると判断される
ことを特徴とする請求項8に記載の置換空調方法。
【請求項12】
前記給気口から給気される空気の温度が所定温度以下のときに、前記指標に基づき前記給気口の下方の温度が所定温度以下になると判断される
ことを特徴とする請求項8に記載の置換空調方法。
【請求項13】
前記空調対象空間の熱負荷に対応して前記給気口からの給気温度が制御されるとともに、前記熱負荷が所定の熱負荷になると判断されたときに、前記給気口から給気される空気の温度を上昇させるように、前記送風ファンの回転速度、又は、前記第2吸込口の開口面積の少なくとも一方が制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項14】
前記空調装置は、前記給気口からの給気風量を制御する給気量制御機構を備え、
前記空調対象域の清浄度に基づき、前記給気量制御機構により前記給気口からの給気風量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は置換空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換空調は、温度に起因する密度差で温度成層化することで、空調対象室を空調する方式である。空調対象室の下部には作業領域が存在し、作業領域は、例えば、作業員が作業する領域(例えば作業員の頭付近から床面までの領域)である。置換空調に関する技術として、特許文献1には、「温度制御し、フィルタを通過させて浄化した空気を、クリーンルーム天井面からクリーンルーム内に給気する給気開口部と、クリーンルーム内の空気を還気として吸い込む吸い込み開口部と、を有し、前記給気開口部からクリーンルーム内に給気される清浄空気の風速が1m/s以下であることを特徴とするクリーンルーム用空調システム。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-219219号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術において、生産装置等からの発熱に起因してクリーンルームが昇温した場合、給気の供給により、クリーンルームが所定の室温に維持される。しかし、発熱量が多い場合にはクリーンルームの室温も高くなる。この結果、給気の温度が低くなり過ぎ、特に給気開口部の下方において局所的な冷え過ぎ(下降冷気に起因する冷え過ぎ)が生じ得る。
本開示が解決しようとする課題は、局所的な冷え過ぎを抑制可能な置換空調方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の置換空調方法は、空調装置が設置された空調対象空間の下部に、床面から所定高さまで形成される空調対象域を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、前記空調装置は、前記空調装置に吸い込まれた前記空調対象空間の空気を冷却する冷却機構と、前記空調対象空間の空気を吸い込むとともに、前記空調装置内の空気流れ方向において前記冷却機構の上流側に配置される第1吸込口と、空調空気を前記空調対象空間に送り出す送風ファンと、前記空調対象空間の空気を吸い込むとともに、前記空調装置内の空気流れ方向において前記冷却機構の下流側かつ前記送風ファンの上流側に配置される第2吸込口と、前記空調空気を前記空調装置の下方に向けて給気する給気口と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、局所的な冷え過ぎを抑制可能な置換空調方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】給気口から給気された空調空気の流れ方を説明する図であり、風速が遅く、距離が短い場合である。
【
図3】給気口から給気された空調空気の流れ方を説明する図であり、風速が速く、距離が短い場合である。
【
図4】給気口から給気された空調空気の流れ方を説明する図であり、風速が遅く、距離が長い場合である。
【
図5】給気口から給気された空調空気の流れ方を説明する図であり、風速が速く、距離が長い場合である。
【
図6】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図7】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図8】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図9】別の一実施形態の空調装置を示す模式図である。
【
図10】制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図11】
図9に示す空調装置を使用した温度制御を示すフローチャートである。
【
図12A】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図13】風量制御機構に係る別の実施形態を示す模式図である。
【
図14】
図12Aに示す空調装置を使用した置換空調方法を示すフローチャートである。
【
図15】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図16】
図15に示す空調装置を使用した置換空調方法を示すフローチャートである。
【
図17】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図18】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図19】
図18に示す空調装置を使用した置換空調方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
【0009】
図1は、一実施形態の空調システム100の模式図である。本開示の置換空調方法は、例えば、空調装置2を備える空調システム100(本開示の置換空調システム)によって実行できる。本開示の置換空調方法は、空調装置2が設置された空調対象空間11の下部に、床面1aから所定高さまで形成される空調対象域10を所定の環境に維持するための方法である。ここでいう下部は、空調対象室1の内側全体を占める空調対象空間11の下部である。空調システム100では、空調対象室1はクリーンルームであり、空調対象室1に空調装置2が設置される。空調装置2は、空調対象室1の天井付近(例えば上部)に設置され、かつ、側壁の付近にも配置される。
【0010】
空調対象室1の内部には空調対象空間11が形成され、図示の例では、空調対象空間11は、クリーンルームの内部空間である。空調対象域10は、空調対象空間11内にあって、その下部の領域である。空調装置2は、空調空気Acを空調対象空間11に供給するとともに給気口25を備えるものである。
【0011】
空調対象室1には、発熱負荷源及び発塵源となる装置類3及び作業員4が存在する。また、空調対象室1では、空調装置2の動作とは別に、空調対象室1外の汚染空気が空調対象室1に流入しないように、室内を陽圧に維持するために使用される外気が外調機5で調整される。そして、調整後の外気が、ダクト6a及び第1導入口7を介して空調対象室1に供給され、排気口8及びダクト6bから余剰空気が空調対象室1の系外に排気される。
【0012】
図1中の一点鎖線は、空調対象室1で、温度管理及び清浄度管理が求められる空調対象域10の上限を示す仮想のライン9であり天井等の間仕切りが存在する訳ではない。このライン9の高さ以下が、空調対象室1の空調対象域10となる。空調対象域10の高さは、装置類3の高さ及び作業員4の身長を超える高さに設定され、一般的には2m程度であるが、装置類3の高さによっては3m~4mに設定される場合もある。
【0013】
空調装置2は、第1吸込口21と、冷却機構22と、送風ファン23と、給気口25と、第2吸込口26とを備える。第1吸込口21は、空調対象空間11の空気を吸い込むとともに、空調装置2内の空気流れ方向において冷却機構22の上流側に配置される。冷却機構22は、第1吸込口21を通じて空調装置2に吸い込まれた空調対象空間11の空気を冷却する。送風ファン23は、空調空気Acを給気口25を通じて空調対象空間11に送り出す。空調空気Acは、詳細は後記するが、冷却機構22によって冷却された室内空気と、冷却機構22によって冷却されていない室内空気とを含む空気である。第2吸込口26は、空調対象空間11の空気を吸い込むとともに、空調装置2内の空気流れ方向において冷却機構22の下流側かつ送風ファン23の上流側に配置される。従って、空調装置2では、冷却機構22を境に、上流側と下流側とに少なくとも2つの吸込口(第1吸込口21及び第2吸込口26)が備えられる。
【0014】
給気口25は、空調空気Acを空調装置2の下方に向けて給気する。空調空気Acは、第1吸込口21から吸い込まれ冷却機構22で温度調整された空気と、第2吸込口26から吸い込まれ冷却機構22で温度調整されていない空気との混合気体である。ここでいう混合は、厳密な意味での混合である必要は無く、同一系である空調装置2内の流路に両空気が併存していればよい程度の混合を意味する。
【0015】
空調対象室1は、本開示の例ではクリーンルームであるため、空調装置2は更にフィルタ24を備える。フィルタ24は、送風ファン23と給気口25との間に配置され、塵埃を除去する例えば高性能除塵フィルタである。従って、フィルタ24を通過した空気が給気口25を通じて空調対象空間11に給気される。これにより、空調対象空間11の清浄度を高く維持できる。
【0016】
空調装置2は、送風ファン23の動作により、第1吸込口21を通じて空調対象室1内の空気を吸い込み、冷却機構22を通過する際に空気を冷却する。冷却後の空気は、第2吸込口26を通じて吸い込まれた空気と合流する。従って、送風ファン23の動作により、第2吸込口26から吸い込まれた空調対象空間11の空気と、第1吸込口21から吸い込まれ冷却機構22により冷却された空気とが空調装置2内で合流する。これにより、詳細は後記するが、冷却機構22による冷却によって、給気口25の下方で局所的な冷え過ぎが生じる程度に迄空気が冷却されても、第2吸込口26からの空気によって空調空気Acを昇温できる。これにより、給気口25の下方での局所的な冷え過ぎを抑制できる。ここでいう給気口25の下方での局所的な冷え過ぎとは、給気口25の下側に存在する例えば空調対象域10での局所的な冷え過ぎをいう。ただし、冷え過ぎは、給気口25の厳密な直下(真下)で生じる必要は無く、給気口25の下方とは、空調対象空間11に設置された構造物等の条件によって、例えば水平方向にある程度幅を持った下方でもよい。
【0017】
空調装置2は、フィルタ24によって、合流後の空気中の塵埃を除去する。そして、空調装置2は、フィルタ24を通過した空気が給気口25を通じて給気されるように構成される。即ち、空調装置2は、給気口25を介して空調及び除塵された空気(空調空気Ac)を空調対象室1に対し、下方に向けて吹き出し供給する。このとき、
図1中に示す距離Lは、空調対象室1の床面1aから空調装置2の給気口25までの距離(高さ)である。
【0018】
図2は、給気口25から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が遅く、距離Lが短い場合である。
図3は、給気口25から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が速く、距離Lが短い場合である。
図4は、給気口25から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が遅く、距離Lが長い場合である。
図5は、給気口25から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が速く、距離Lが長い場合である。
図2~
図5において、白抜き矢印は風速を概念的に示したものであり、実線矢印は誘引及び混合する周囲空気Aaの流れ方を概念的に示したものである。また、
図2及び
図3で距離Lは等しく、
図4及び
図5で距離Lは等しい。
図2~
図5は、風速及び距離Lによって誘引状態が異なることを示している。
【0019】
給気口25から下方に向け吹き出された、空調空気Acは、周囲の空気(周囲空気Aa)を誘引及び混合しながら下方に向かう。このとき、誘引及び混合する空気量に応じて、下降風速は減衰するとともに、同伴して下方に移動する空気量が増大する。また同時に、下方に移動する空気の温度は、誘引及び混合する周囲空気Aaの量に応じて、給気口25から吹出された、空調空気Acの温度よりも高い温度になる。誘引及び混合する周囲空気Aaの量が多いほど、空調空気Acは吹き出されてからの昇温度合いが高まる。
【0020】
周囲流体との風速差(せん断力)が大きいと誘引及び混合は促進され、流れが発達する下流になるほど同伴して流れる流体の量は多く、風速は遅くなる。このような現象は、
図2~
図5に示すように、距離L及び風速が異なっていても、不変である。従って、例えば距離Lに応じて、どの程度の周囲空気Aaを誘引及び混合するか、即ち、風速を決定することができる。
【0021】
これら一連の動作により、空調対象域10に到達する、空調空気Acの温度は、給気口25から吹出された、空調空気Acの吹出し時の温度よりも高くなり、空調対象域10の上下温度差が小さくなるように機能する。また、空調対象域10には、空調装置2で空調空気Acが供給されるため、空調対象域10の塵埃数は一定値以下に保たれる。
【0022】
図1に戻って、空調装置2及び空調装置2の給気口25の高さ(距離L)は、空調対象室1の室内高さ、使用方法、機器及び設備の配置状況、空調設備の施工、メンテナンスの計画、コスト等、種々の要因で決定される。このため、空調対象室1の床面1aから空調装置2の給気口25までの距離Lは一般に計画毎(建築物毎、部屋毎)に異なる。
【0023】
本開示では、給気口25から吹き出された、空調空気Acが空調対象域10に到達する間に周囲空気Aaを誘引する状態は、上記のように、給気風速と、周囲空気の誘引に係る流路になる床面1aから給気口25までの距離Lに影響され、所定風速で吹き出すことが望ましい。この所定風速は、空調対象室1の設計条件に応じて適宜設定できるが、周囲空気Aaの巻き込み量を、例えば熱流体シミュレーション等を活用して推測し、給気口25からの風速を設定することが好ましい。
【0024】
空調対象域10には、フィルタ24を通過した空調空気Acが供給されるため、空調対象域10の塵埃数は一定値以下に保たれる。また、給気口25下方の温度は、誘引及び混合による周囲空気Aaによって給気温度(吹出温度)より上がるため、局所的な冷え過ぎが抑制される。しかし、装置類3の稼働、作業員4の増員等によって空調対象空間の熱負荷が増えると、増えた熱負荷に起因する空調対象空間11の温度上昇を抑制するために、冷却機構22による冷却量が増加される。量的な評価は難しいものの、概念的にいえば、空調対象空間11の熱負荷量と、冷却機構22による冷却量とがバランスする。このようにすれば、空調対象空間11の温度上昇を抑制できるが、空調空気Acの給気温度が低下し、これにより、給気口25の下方での局所的な冷え過ぎが生じ得る。特に、給気口25の大きさ、風量、距離Lによっては、周囲空気Aaの誘引及び混合が弱く、局所的な冷え過ぎが生じ易くなる。
【0025】
そこで、本開示の例では、第2吸込口26から吸い込まれた空気を、冷却機構22による冷却後の空気(冷気)に合流させることで、給気温度の上昇が図られる。これにより、空調対象空間11の熱負荷量に対応するように冷却機構22で冷却するとともに、給気温度を上昇させて給気口25の下方での局所的な冷え過ぎを十分に抑制できる。
【0026】
図6は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。空調対象空間11には、第1導入口7が配置される。第1導入口7は、空調対象室1外の汚染空気が空調対象室1に流入しないよう、空調対象室1を室外に対し陽圧に維持するための、外調機5により空調された外気をダクト6aを介して空調対象空間11に導入するものである。
【0027】
空調装置2と第1導入口7とが近傍に配置されることが好ましく、具体的には、第1導入口7と空調装置2の第1吸込口21とは近傍に備えられることが好ましい。ここでいう近傍は例えば1m以内である。外気を導入する第1導入口7と第1吸込口21が近傍に設置されることで、外調機5により温湿度が調整され、かつ、清浄度も整えられた調整後の外気は、空調対象室1の上部の空気とほとんど混合せず、速やかに第1吸込口21から空調装置2に導入される。これにより、空調された外気を効率よく利用できるようになる。
【0028】
図7は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図7に示す例では、空調装置2は、外調機5により空調された外気をダクト6aを介して空調装置2に直接導入する第2導入口7aを備える。
【0029】
このように、外調機5により空調された外気をダクト6a及び第2導入口7aを介して、空調装置2に直接導入することで、外調機5によって温湿度及び清浄度も整えられた外気は、空調対象室1の上部の空気と全く混合せず、空調された外気を効率よく利用できる。
【0030】
図8は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図8に示す例では、空調システム100は、空調対象空間11の塵埃を吸い込んで除去する除塵装置27a,27bを備え、除塵装置27a,27bは空調対象空間11(具体的には空調対象域10)に配置される。
【0031】
このような除塵装置27a,27bを備えるのは、空調対象室1又は空調対象域10の発熱負荷源の熱処理に必要な空調風量(A)と、要求される清浄度を基準として必要となる空調風量(B)との差異が大きく、A<Bとなる場合である。
【0032】
除塵装置27a,27bは、除塵機能を有する高性能除塵フィルタ24a(フィルタ24の一例)と、送風ファン23aと、ケーシング28aとを備える。
【0033】
また、熱処理機能と除塵機能とを分離する場合には、空調装置2のフィルタ24を備えなくとも良い。この場合、冷却機構22の出口側に第2吸込口26を設けても、清浄度がより高くなる効果はない。しかし、空調装置2周囲の空調対象空間11の空気を吸い込むことにより、より温度が上昇した状態で、周囲空気Aaと混合することになり、空調対象域10において、局所的な冷え過ぎを抑えることができる効果がある。
【0034】
除塵装置27の設置位置及び設置台数は、
図8に限定されず、必要な向き及び位置に、必要な台数を設置して良い。
【0035】
図9は、別の一実施形態の空調装置2を示す模式図である。冷却機構22は、冷却媒体CS(例えば冷水)の供給によって空気を冷却する熱交換器22aと、熱交換器22aへの冷却媒体CSの流量を制御する弁22bとを備える。空調装置2による空調対象域10の温度制御は、弁22bと、温度センサ29と、制御装置30とによって実行される。温度センサ29は、空調対象域10に設置される。制御装置30は、温度センサ29により測定される空調対象域10の温度に基づき弁22bの開度信号を弁22bに出力する。これにより、給気口25を通じた給気の温度が制御される。弁22b、温度センサ29及び制御装置30は、破線で示す電気信号線により接続される。弁22bは、給気口25を通じた給気の温度制御機構の一例として、空調装置2に備えられる。
【0036】
このとき、冷却機構22の出口側にある第2吸込口26には図示していないが、粗塵を除去する粗塵フィルタ(フィルタの一例)を設置し、送風ファン23及びフィルタ24に対する塵埃負荷を抑えるようにした方が好ましい。
図9及び後記
図11に示す実施形態では、第2吸込口26は開いていても、閉じていてもよい。ただし、第2吸込口26を開くことで、上記のように効果的に局所的な冷え過ぎを抑制できる。
【0037】
冷却機構22が例えば冷却媒体CSを用いた熱交換器である場合、熱交換器には図示しないチラー等から冷却媒体CSが供給され、制御装置30からの信号に応じて弁22bの開度が増減される。空調対象室1の上部から導入された空気は熱交換器を通過する際に冷却される一方で、冷却媒体CSは昇温され冷却媒体CR(例えば還水)としてチラー等に戻る。
【0038】
図10は、制御装置30のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置30は、CPU252等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。制御装置30は、例えば、メモリ251、CPU252、記憶装置253(SSD,HDD等)、通信装置254及びI/F255を備える。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HDDに格納すること以外に、メモリ、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。また、クラウド上に情報を記憶するようにしたり、クラウド上で演算等の処理を行うようにしたりすることもできる。
【0039】
図11は、
図9に示す空調装置2を使用した温度制御を示すフローチャートである。
図11は、本開示の置換空調方法を示すものであり、空調対象域10(
図1)の温度に基づき、弁22b(温度制御機構)により給気口25(
図1)を通じた給気の温度が制御される。このようにすることで、空調対象域の温度を、弁22bの制御によって設定温度に制御できる。
【0040】
制御装置30(
図9)は、温度センサ29(
図9)により、空調対象域10の温度Tを測定する(ステップS11)。制御装置30は、温度Tが設定温度よりも低いか否かを判断する(ステップS12)。測定した温度Tが設定温度よりも低い場合(Yes)、弁22bの開度を絞る(減らす)ことにより、冷却機構22での冷却が抑制されて、給気温度が上昇する(ステップS13)。一方、ステップS12において、測定された温度Tが設定温度よりも高い場合(No)、制御装置30は弁22bの開度を増やし、これにより、冷却機構22での冷却が促進され、給気温度が低下する(ステップS14)。この動作を一定の時間ステップにより、実行することで空調対象域10の温度が制御される。
【0041】
なお、ステップS12において、設定温度±数℃以内のような範囲を不感温度帯として、弁22b(
図9)の開度を現状の状態に保持してもよい。
【0042】
図12Aは、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図12Aは、上記
図9に示した空調装置2において、更に、弁22bの開度情報に基づき、制御装置30によって、給気量制御機構32及び吸込量制御機構33が調整される。給気量制御機構32は、送風ファン23による給気口25からの給気風量を制御するものであり、空調装置2に備えられる。給気量制御機構32は、インバータを備え、インバータの回転速度制御により、給気風量が制御される。ただし、給気量制御機構32は、インバータに代えて、印加電圧を変えて風量を制御できるファンでもよいし、開度調整可能なダンパでもよく、例えば送風ファン23を一定速度で回転させ、ダンパの開度を調整することで、給気風量を制御することができる。吸込量制御機構33は、第2吸込口26の開口面積を制御するものであり、空調装置2に備えられる。開口面積の制御により、吸い込まれる空気量が制御される。
【0043】
図12Bは、
図12Aに示す空調装置2における吸込量制御機構33の模式図である。吸込量制御機構33は、図示の例ではダンパである。吸込量制御機構33は、第2吸込口26の開口を閉塞可能な形状を有する。第2吸込口26は長方形状(これに限定されず、例えば円形、長方形以外の矩形等でもよい)を有し、吸込量制御機構33は第2吸込口26の例えば内側寸法とほぼ同じ寸法を有する羽根(金属平板)を備える。吸込量制御機構33は、例えば鉛直方向に延在する軸Axを中心に回動可能である。吸込量制御機構33は、例えばアクチュエータ(不図示)によって開度調整機構の回動の程度を制御することで、第2吸込口26の開口面積を制御して、吸い込まれる空気の風量を制御できる。ここでいう開口面積は、第2吸込口26と吸込量制御機構33としての平板との間に形成される開口の面積である。回動の程度は、単なる開閉の2段階でもよく、3段階以上にすることで細かに風量を制御してもよい。
【0044】
図13は、吸込量制御機構33に係る別の実施形態を示す模式図である。吸込量制御機構33は、複数の羽根33a,33b,33c(いずれも吸込量制御機構33の一例)を備える。複数の羽根33a,33b,33cは、それぞれ独立して、軸Ax1,Ax2,Ax3(いずれも軸Axの一例)を中心に回動可能である。このような吸込量制御機構33によれば、
図12Bに示した例と比べて、より細かに風量を制御できる。
【0045】
図12Aに戻って、送風ファン23は、給気量制御機構32としてのインバータや印加電圧等によって回転速度を制御される。給気量制御機構32、吸込量制御機構33、制御装置30、弁22b、及び温度センサ29は、破線で示す電気信号線により接続される。
【0046】
図14は、
図12Aに示す空調装置2を使用した置換空調方法を示すフローチャートである。
図14に示すフローは、制御装置30(
図12A)によって実行される。
図14に示す例では、送風ファン23の回転速度は、一例として、0ではない第1速度と、前記第1速度よりも高速の第2速度とで制御される。また、第2吸込口26の開口面積は、一例として、0ではない第1面積と、前記第1面積よりも大きな第2面積とで制御される。
図14では、通常モードとして、空調対象域10の温度に基づき、弁22bにより給気口25を通じた給気の温度が制御される。通常モードは、上記
図11を参照して説明したフローと同じである。
図14では、更に、抑制モードとして、弁22bの開度が所定開度以上のときに、送風ファン23の回転速度を大きくして給気風量が増えるとともに、第2吸込口26の開口面積を大きくして吸込量も増える。
【0047】
本開示の置換空調方法では、給気口25(
図1)の下方における温度に影響を与える指標に基づいて、送風ファン23の回転速度、又は、第2吸込口26の開口面積の少なくとも一方が制御される。このようにすることで、給気口25の下方で局所的な冷え過ぎが発生しそうな場合に、送風ファン23の回転速度、又は、第2吸込口26の開口面積の少なくとも一方を制御して局所的な冷え過ぎを抑制できる。
図14に示す例では、送風ファン23の回転速度、及び第2吸込口26の開口面積の双方が制御される。以下、
図14の説明において同様である。また、ここでいう指標は、詳細は後記するが、
図14に示す例では、弁22bの開度である。弁22bの開度が大きくなれば給気温度が低下し、給気口25の下方における温度が低下する。一方で、弁22bの開度が小さくなれば給気温度が上昇し、給気口25の下方における温度が上昇する。
【0048】
上記指標に基づき給気口25の下方の温度が所定温度以下になると判断された場合に、給気口25から給気される空気の温度を例えば判断時よりも上昇させるように、送風ファン23の回転速度、又は、第2吸込口26の開口面積の少なくとも一方が制御される。ここでいう所定温度は、作業員4(
図1)が寒いと感じる温度(限定されないが、例えば18℃以下の温度)であり、所定温度以下であれば、局所的な冷え過ぎが生じたといえる。このようにすることで、給気口25の下方で局所的な冷え過ぎが発生しそうな場合に、送風ファン23の回転速度、又は、第2吸込口26の開口面積の少なくとも一方を制御して給気温度を上昇させることで、局所的な冷え過ぎを抑制できる。
【0049】
この場合において、上記指標に基づき給気口25の下方の温度が所定温度以下になると判断された場合に、上記判断時(例えば後記ステップS25)よりも送風ファン23の回転速度を大きくする、又は、第2吸込口26の開口面積を大きくする、の少なくとも一方の制御が行われる。これにより、第2吸込口26から吸い込まれる室内空気量を増やすことができ、冷却機構22によって冷却された空気に合流させる室内空気の量を増大できる。この結果、給気温度を上昇でき、局所的な冷え過ぎを抑制できる。
【0050】
また、詳細は後記するが、
図14に示す例では、弁22bの開度が所定開度以上のときに、上記指標に基づき給気口25の下方の温度が所定温度以下になると判断される。これにより、給気口25の下方に温度計を備えなくても弁22bの開度に基づいて制御できる。
【0051】
以下、
図14を参照しながら、具体的に説明する。上記
図11を参照して説明したように、ステップS11~ステップS14が実行される。ステップS11~ステップS14では、送風ファン23は第1速度で回転しており、第2吸込口26の開口は第1面積を有する。制御装置30(
図12A)は、ステップS13,14での開度調整の結果、弁22bの開度が所定開度以上になったか否かを判断する(ステップS25)。ここでいう所定開度は、給気温度が低すぎるために給気口25(
図1)の下方の温度が低くなりすぎる結果、局所的な冷え過ぎを生じさせる開度である。所定開度は、例えば、シミュレーション、試運転等によって決定できる。
【0052】
弁22bの開度が所定開度以上の場合(Yes)、制御装置30は、抑制モードを実行する(ステップS26,S27)。具体的には、制御装置30は、送風ファン23の回転速度を第1速度から第2速度に大きくすることで、給気量を増やす(ステップS26)。これとともに、制御装置30は、第2吸込口26の開口面積を第1面積から第2面積に増やすことで、吸込量を増やす(ステップS27)。ステップS26,S27の後、制御装置30は、ステップS11以降を繰り返す。
【0053】
ステップS25において、弁22bの開度が所定開度未満の場合(No)、制御装置30は、抑制モードを実行中であるか否かを判断する(ステップS28)。ここでいう実行中とは、送風ファン23の回転速度が第2速度、又は、第2吸込口26の開口面積が第2面積の少なくとも一方(
図14の例では双方)になっている状態である。実行中ではない場合(No)、制御装置30は、ステップS11以降を繰り返す。実行中の場合(Yes)、制御装置30は、送風ファン23の回転速度を第2速度から第1速度に戻すことで、給気量を通常モードに戻す(ステップS29)。これとともに、制御装置30は、第2吸込口26の開口面積を第2面積から第1面積に戻すことで、吸込量を通常モードに戻す(ステップS30)。ステップS29,S30の後、制御装置30は、ステップS11以降を繰り返す。このようにして、本開示の置換空調方法が実行される。
【0054】
なお、ステップS12において、設定温度±数℃以内のような範囲を不感温度帯として、弁22bの開度を現状の状態に保持してもよい。また、ステップS25の弁22bの開度による通常モードと抑制モードの切り替えにおいてもある一定時間、現状の状態に保持してもよい。また、今回の実施例では抑制モードにおける回転速度及び開口面積を一定値にしたが、これらは可変にしてもよい。
【0055】
図15は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図15に示す例では、上記
図12Aにおいて、空調システム100は、更に給気温度を測定する温度センサ29aを備える。
【0056】
図16は、
図15に示す空調装置2を使用した置換空調方法を示すフローチャートである。
図16に示すフローは、上記
図14に示したステップS25に代えてステップS31を含む。ステップS31では、給気口25から給気される空気の温度(給気温度)が所定温度以下であるか否かが判断される(ステップS31)。給気口25から給気される空気の温度は、温度センサ29a(
図15)により測定される。ここでいう所定温度は、当該所定温度以下の給気を受けた作業員4(
図1)が寒いと感じる温度であり、給気温度が所定温度以下であれば、局所的な冷え過ぎが生じたといえる。所定温度は、例えば、シミュレーション、試運転等によって決定できる。
【0057】
従って、
図16に示す例では、給気口25(
図1)から給気される空気の温度が所定温度以下のときに、上記指標に基づき給気口25の下方の温度が所定温度以下になると判断される。このようにすることで、給気温度に基づいて、空調対象域10(
図1)に存在する作業員4が寒いと感じることを抑制でき、局所的な冷え過ぎを抑制できる。
【0058】
図17は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図17に示す例では、上記
図12Aにおいて、空調システム100は、更に、空調対象空間11の熱負荷を把握する分析評価装置31を備える。分析評価装置31は、例えば、制御装置30と、空調対象空間11に存在する作業員4の人数を把握する人感センサ41と、装置類3に接続され、装置類3の状態を把握する装置42と、を備える。なお、人感センサ41又は装置42の一方のみが備えられてもよい。
【0059】
図17に示す例では、空調対象空間11の熱負荷に対応して、給気口25からの給気温度が制御される。これとともに、分析評価装置31により把握された熱負荷が所定の熱負荷になると判断されたときに、給気口25から給気される空気の温度を例えば判断時の温度よりも上昇させるように、送風ファン23の回転速度、又は、第2吸込口26の開口面積の少なくとも一方(双方でもよい)が制御される。
【0060】
図17に示す例では、抑制モードにおいて、弁22b及び給気温度を指標とせず、分析評価装置31に基づいて把握可能な熱負荷の大きさによって、抑制モードが実行される。例えば、作業員4の人数が所定人数以上になると、冷却機構22によって処理される熱負荷が大きくなる。この結果、冷却機構22による冷却が強化されるが、給気温度が低すぎて局所的な冷え過ぎが想定される。また、装置類3が同時に多数100%の能力で稼働しても、冷却機構22によって処理される熱負荷が大きくなり、給気温度が低すぎて局所的な冷え過ぎが想定される。従って、これらの場合には、抑制モードが実行される。このような分析評価装置31を用いることでも、局所的な冷え過ぎを抑制できる。
【0061】
図18は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図18に示す例では、上記
図12Aにおいて、空調システム100は、空調対象空間11に清浄度センサ34を備える。清浄度センサ34は、空調対象域10の清浄度を測定するものであり、例えば塵埃濃度、塵埃数等を測定するセンサである。空調装置2による空調対象域10の清浄度制御は、清浄度センサ34と、給気量制御機構32と、制御装置30によって実行される。制御装置30は、清浄度センサ34により測定される空調対象域10の空気中に含まれる塵埃濃度に基づき、給気量制御機構32に制御信号を出力する。清浄度センサ34、制御装置30、及び給気量制御機構32は、破線で示す電気信号線により接続される。
【0062】
図19は、
図18に示す空調装置2を使用した置換空調方法を示すフローチャートである。
図19は、本開示の置換空調方法を示すものであり、空調対象域10の清浄度に基づき、給気量制御機構32により給気口25の給気風量を制御するフローである。制御装置30は、清浄度センサ34により計測された空調対象域10の清浄度に係る塵埃濃度C(ステップS31)が規定清浄度に係る塵埃濃度よりも多いか否かを判断する(ステップS32)。塵埃濃度Cは、清浄度センサ34(
図18)により測定できる。
【0063】
計測された塵埃濃度Cが規定清浄度に係る規定塵埃濃度より多い場合(Yes)、制御装置30は、給気量制御機構32を制御して送風ファン23の回転速度を上げて、給気風量を上げる(ステップS33)。一方、ステップS22において、測定された清浄度に係る塵埃数Cが規定清浄度に係る規定塵埃濃度以下の場合(No)、制御装置30は給気量制御機構32を制御して送風ファン23の回転速度を下げて給気風量を下げる(ステップS34)。この動作を一定の時間ステップにより実行することにより空調対象域10の清浄度が制御される。
【0064】
なお、ステップS32において、設定塵埃濃度から不感帯塵埃濃度幅を差し引いた値を下限値とし、当該下限値から設定塵埃濃度迄の範囲を不感帯塵埃濃度として、この範囲では給気量制御機構32にて送風ファン23の回転数を現状の状態に保持してもよい。
【0065】
空調対象域10の温度制御と清浄度(塵埃数)制御を同時に行う場合には、
図14又は
図16のフローと、
図19のフローとを並行して実行できる。
【0066】
これまで示した図示の例では、空調対象空間11はクリーンルームの内部空間であるが、例えば、工場、ホール、その他の用途の部屋等の各空間に適用してもよい
【0067】
本開示の置換空調方法によれば、空調装置2の第2吸込口26を設けることで、作業員4の快適性を阻害する要因となる低温の空調空気Acが空調対象域10に供給されることをより抑制できる。このため、局所的な冷え過ぎを抑制できる。また、上下温度差が軽減され、作業員4の快適性が向上するとともに、装置類3に対しても安定した温度等の環境を提供できる。
【0068】
置換空調が行われる空調対象空間11を形成する空調対象室1の下部にある空調対象域10に空調空気Acを供給することで、空調対象室1全体を混合して空調する方式に比べ、少風量で効率良く空調でき、エネルギ削減にも貢献できる。
【0069】
空調対象室1に配置される空調装置2を介して室内空気を循環処理するため、空調対象室1の外部にダクトを介して室内空気を搬送し、外調機5等に戻す必要がなくなる。このため、空気搬送に係るエネルギの削減も可能となる。
【0070】
空調装置2を空調対象域10よりも高い位置に設置することが可能であり、空調対象室1内のフットプリントが改善され、装置類3の設置の自由度も向上する。これとともに、空調対象室1のレイアウト変更への対応も容易となる。
【符号の説明】
【0071】
100 空調システム
10 空調対象域
11 空調対象空間
1 空調対象室
1a 床面
2 空調装置
21 第1吸込口
22 冷却機構
22a 熱交換器
22b 弁
23 送風ファン
23a 送風ファン
24 フィルタ
24a 高性能除塵フィルタ
25 給気口
251 メモリ
252 CPU
254 通信装置
255 I/F
26 第2吸込口
27 除塵装置
27a 除塵装置
27b 除塵装置
28a ケーシング
29 温度センサ
29a 温度センサ
3 装置類
30 制御装置
31 分析評価装置
32 給気量制御機構
33 吸込量制御機構
33a 羽根
33b 羽根
33c 羽根
34 清浄度センサ
4 作業員
41 人感センサ
42 装置
5 外調機
6a ダクト
6b ダクト
7 第1導入口
7a 第2導入口
8 排気口
9 ライン