(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047641
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】マイクロプラスチックファイバーの評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240401BHJP
G01N 33/36 20060101ALI20240401BHJP
D06H 3/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01N33/36 B
D06H3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153246
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】田和 弘輔
【テーマコード(参考)】
2G051
3B154
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB20
2G051CA04
2G051EA11
2G051EA17
2G051ED04
3B154AA06
3B154AB01
3B154BA17
3B154BA53
3B154BB43
3B154BC01
3B154CA13
3B154CA18
3B154CA23
3B154DA28
(57)【要約】
【課題】本発明は、繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を精度よく評価する技術に関する。
【解決手段】本発明の一形態に係るマイクロプラスチックファイバーの評価方法は、繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価するマイクロプラスチックファイバーの評価方法である。前記評価方法は、処理液を撮像した画像からマイクロプラスチックファイバーを検出する工程と、検出された前記マイクロプラスチックファイバーの量を算出することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価するマイクロプラスチックファイバーの評価方法であって、
前記処理液を撮像した画像からマイクロプラスチックファイバーを検出し、
検出された前記マイクロプラスチックファイバーの量を算出することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する
マイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項2】
前記画像から、前記繊維製品の色調と対応する色調を有する第1領域を検出することで、前記マイクロプラスチックファイバーを検出する
請求項1に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項3】
前記画像から、前記第1領域と、前記第1領域とは異なる色調を有する第2領域と、で構成された2値化画像を生成する
請求項2に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項4】
検出された前記マイクロプラスチックファイバーの本数を算出することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する
請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項5】
算出された前記マイクロプラスチックファイバーの量を、基準となる基準処理液を撮像した画像から検出されたマイクロプラスチックファイバーの量と比較することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する
請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項6】
前記評価方法では、さらに、
前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果についての評価情報を出力する
請求項1から5のいずれか一項に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項7】
前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果と、評価対象の前記繊維製品の情報又は前記繊維製品の洗浄条件の情報の少なくとも一方と、を対応付けてデータベースに記憶し、
前記データベースは、複数のマイクロプラスチックファイバーの評価結果毎に、評価対象の前記繊維製品の情報又は前記繊維製品の洗浄条件の情報の少なくとも一方を対応付けて記憶しており、
前記データベースに基づいて、前記複数のマイクロプラスチックファイバーの評価結果と、前記繊維製品の情報又は前記繊維製品の洗浄条件の情報の少なくとも一方と、の関係を分析し、
前記関係の分析結果についての分析情報を出力する
請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項8】
前記分析情報は、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量の少ない繊維製品又は洗浄条件の少なくとも一方を推奨する情報を含む
請求項7に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項9】
前記評価方法では、さらに、
前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果を、評価対象の前記繊維製品と同一種類の繊維製品の製品表示又は販売促進媒体に表示するための製品表示用情報を生成する
請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項10】
前記製品表示用情報は、インターネットを介して、前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果に関する情報にアクセス可能なアクセス情報を含む
請求項9に記載のマイクロプラスチックファイバーの評価方法。
【請求項11】
繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価することが可能な評価装置であって、
前記処理液を撮像した画像から前記マイクロプラスチックファイバーを検出し、
検出された前記マイクロプラスチックファイバーの量を算出することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する
制御部
を具備する評価装置。
【請求項12】
繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価することが可能な評価装置と、インターネットを介して前記評価装置に接続された第1端末装置と、を具備する評価システムであって、
前記評価装置は、
前記処理液を撮像した画像から前記マイクロプラスチックファイバーを検出し、
検出された前記マイクロプラスチックファイバーの量を算出することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価し、
前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果に関する情報を前記第1端末装置へ送信する
制御部を有する
評価システム。
【請求項13】
前記制御部は、
前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果についての評価情報を前記第1端末装置へ送信する
請求項12に記載の評価システム。
【請求項14】
前記評価装置は、
複数のマイクロプラスチックファイバーの評価結果毎に、評価対象の前記繊維製品の情報又は前記繊維製品の洗浄条件の情報の少なくとも一方を対応付けて記憶するデータベースを含む記憶部をさらに有し、
前記制御部は、
前記データベースに基づいて、前記複数のマイクロプラスチックファイバーの評価結果と、前記繊維製品の情報又は前記繊維製品の洗浄条件の少なくとも一方と、の関係を分析し、
前記関係の分析結果についての分析情報を前記第1端末装置に送信する
請求項12又は13に記載の評価システム。
【請求項15】
前記評価装置又は前記第1端末装置の少なくとも一方は、
前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果を、評価対象の前記繊維製品と同一種類の繊維製品の製品表示又は販売促進媒体に表示するための製品表示用情報を生成する
請求項12から14のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項16】
前記評価システムは、インターネットを介して前記評価装置に接続された第2端末装置をさらに具備し、
前記製品表示用情報は、インターネットを介して、前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果に関する情報にアクセス可能なアクセス情報を含み、
前記第2端末装置は、前記アクセス情報に基づいて、前記マイクロプラスチックファイバーの評価結果に関する情報にアクセスする
請求項15に記載の評価システム。
【請求項17】
前記第1端末装置は、前記繊維製品についての評価の依頼元のユーザが使用する端末装置である
請求項12から16のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項18】
前記第1端末装置は、前記処理液についての評価の依頼元のユーザが使用する端末装置である
請求項12から14のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項19】
前記第1端末装置は、前記繊維製品を洗浄した洗浄機として構成される
請求項12から14のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項20】
繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価するためのプログラムであって、情報処理装置に、
前記処理液を撮像した画像から前記マイクロプラスチックファイバーを検出する工程と、
検出された前記マイクロプラスチックファイバーの量を算出することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する工程と
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプラスチックは、自然環境中に存在する微小なプラスチック断片であり、特に海洋環境において問題となっている。マイクロプラスチックは、例えば、自然環境下で破砕されたプラスチックゴミの断片や、化粧品や工業用研磨剤等に含まれる微小なプラスチック等であると考えられている。
【0003】
さらに近年、マイクロプラスチックとして、合成繊維を含む繊維製品から排出されたマイクロプラスチックファイバーが着目されている。マイクロプラスチックファイバーは、例えば、繊維製品に含まれる合成繊維の一部が洗濯排水へ脱落し、下水道等を通って自然環境へ拡散すると考えられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、洗浄工程で排出される排水を、0.1μm~10μm程度の孔径のフィルターでろ過し、当該フィルターで捕捉された繊維屑の質量を計量することで、繊維製品から排出されたマイクロプラスチックを定量的に評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-183933号公報
【特許文献2】特開2021-098809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記孔径のフィルターで捕捉された繊維屑には、合成繊維由来のマイクロプラスチックファイバーの他、洗剤由来のマイクロカプセル等の微小粒子が含まれている可能性がある(特許文献2参照)。このため、特許文献1に記載の技術よりも精度よくマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価できる技術が求められている。
【0007】
本発明は、繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を精度よく評価する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係るマイクロプラスチックファイバーの評価方法は、繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を評価するマイクロプラスチックファイバーの評価方法である。
前記評価方法は、
前記処理液を撮像した画像からマイクロプラスチックファイバーを検出する工程と、
検出された前記マイクロプラスチックファイバーの量を算出することで、前記マイクロプラスチックファイバーの排出量を評価する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバーの排出量を精度よく評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るマイクロプラスチックファイバーの評価方法に用いられる処理液の採取方法を示す図である。
【
図2】上記評価方法に用いられる処理液及びそれを撮像した画像の例を示す図である。
【
図3】上記評価方法を実施する評価装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】上記評価装置により実施される評価処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図5】上記評価処理により生成された2値化画像の例を示す図である。
【
図6】上記実施形態の変形例4に係る評価処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図7】上記実施形態の変形例5に係る評価処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るマイクロプラスチックファイバーの評価システムの構成を例示する図である。
【
図9】上記評価システムによる処理の流れを例示するシーケンス図である。
【
図10】上記評価方法により生成された評価結果表示画面の例を示す図である。
【
図11】上記評価方法により得られた評価結果を表示する製品表示の例を示す図である。
【
図12】上記実施形態の変形例1に係る処理の流れを例示するシーケンス図である。
【
図13】上記実施形態の変形例2に係る評価システムの構成を例示する図である。
【
図14】上記評価処理により生成された評価結果表示画面の例を示す図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係るマイクロプラスチックファイバーの評価システムの構成を例示する図である。
【
図16】上記評価システムによる処理の流れを例示するシーケンス図である。
【
図17】上記実施形態の変形例1に係る処理の流れを例示するシーケンス図である。
【
図18】上記評価処理により生成された分析結果表示画面の例を示す図である。
【
図19】上記実施形態の変形例5に係る評価システムの構成を例示する図である。
【
図20】上記評価システムによる処理の流れを例示するシーケンス図である。
【
図21】本発明の第4実施形態に係るマイクロプラスチックファイバーの評価システムの構成を例示する図である。
【
図22】上記評価システムによる処理の流れを例示するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
[本発明の概要]
本発明は、繊維製品を洗浄した処理液におけるマイクロプラスチックファイバー(Microplastic Fiber:MPF)を評価する技術に関する。MPFは、繊維状のマイクロプラスチックであり、その繊維長は、一般に0.1μm~5mm未満である。MPFは、合成繊維を含む繊維製品の洗濯排水に含まれることが知られており、当該繊維製品の合成繊維の一部が脱落したものであると考えられている。このようなMPFを含む排水が自然環境に拡散した場合、ヒトを含む生物への影響が懸念される。
【0013】
一方で、洗剤や柔軟剤は、機能の発現を制御する観点から、香料等をカプセル化したマイクロカプセルなどの粒子を含むことがある(例えば特許文献2参照)。このため、洗濯排水は、繊維製品由来のMPFのみならず、マイクロカプセルなどの粒子を含むことがある。粒子にはマイクロカプセル、ゼオライト等の無機粒子、泥汚れ等が挙げられる。例えば、マイクロカプセルの粒径は、0.5μm~100μm程度であり、MPFの繊維長と重複したサイズを有する。このため、MPFを捕捉可能なフィルターによって洗濯排水を濾過して得られた捕捉物には、MPFの他、マイクロカプセルも含まれている可能性がある。したがって、この捕捉物の重量を測定するだけでは、繊維製品由来のMPFを精度よく評価することが難しいと考えられる。
【0014】
そこで、本発明では、繊維製品を洗浄した処理液を撮像した画像からMPFを検出し、検出されたMPFの量を算出することを特徴とする。本発明者らの知見から、マイクロカプセルは一般に透明であり、所定の画像処理を行うことで、不透明なMPFと精度よく判別できることがわかった。したがって、本発明によれば、MPFの量を精度よく評価することができる。
【0015】
本発明における繊維製品とは、合成繊維を含む繊維製品であり、例えば、衣料品、寝具、カーテン、敷物、タオル、生地、糸、マスクなどが挙げられる。本発明における繊維製品には、糸などの繊維も含まれる。繊維製品は、所定のサイズを有する試験片として提供されてもよい。また、評価対象の繊維製品は、一つの繊維製品に限定されず、複数の繊維製品を含んでいてもよい。
【0016】
合成繊維とは、例えば、ポリアミド系繊維(ナイロン等)、ポリエステル系繊維(ポリエステル等)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリル等)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロン等)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニル等)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデン等)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタン等)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラール等)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエート等)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレン等)等が挙げられる。また、天然由来成分を化学処理で取り出し、溶解して紡糸した、半合成繊維である、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックス等)、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート等)等も挙げられる。
【0017】
本発明における洗浄とは、処理液を介して、繊維製品に物理的作用及び/又は化学的作用を及ぼす行為を意味する。ここでいう洗浄は、実際に繊維製品の汚れや不純物等を除去する行為に限定されず、繊維製品の汚れや不純物等を除去することが可能に、繊維製品に物理的作用及び/又は化学的作用を及ぼす行為であればよい。具体的に、本発明における洗浄は、洗濯行為又は繊維精錬の少なくとも一方であることが好ましい。例えば、洗濯行為は、洗い工程、すすぎ工程、柔軟剤などの洗濯助剤を用いた処理工程、又は脱水工程の少なくとも一つの工程を含む。繊維精錬は、例えば、界面活性剤等を利用して、染色前の繊維製品に付着している不純物等を取り除く行為である。本発明における洗浄行為は、洗濯機等の機械で行われてもよいし、手洗いでもよい。
【0018】
本発明における処理液とは、繊維製品の洗浄に用いられる液体を意味する。具体的に、処理液は、水又は有機溶剤等の液体を含んでおり、好ましくは、洗浄剤を含む。洗浄剤は洗剤、柔軟剤、繊維精錬に使用される洗浄剤などを含む。
【0019】
本発明における洗浄条件とは、洗浄剤の種類、洗浄剤の製品名、洗浄剤の使用量、衣料の質量と処理液の容量との比、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液の温度、処理液のpH、洗浄工程の時間、繊維製品に及ぼす物理的作用、例えば機械力、使用される洗浄機の機種等から選択された少なくとも一つの条件であることが好ましい。洗浄機は洗濯機、精錬機、繊維製品の洗浄に用いられるその他の洗浄機などを含む。
【0020】
本発明に用いられる処理液の画像は、可視光線をイメージセンサによって検出することで得られた画像である。当該画像は、繊維製品を除く処理液のみの画像であることが好ましい。画像は、評価者によって撮像されてもよいし、撮像装置等によって自動的に撮像されてもよい。以下、本発明の各実施形態に係る、画像を用いた評価方法等について詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態では、MPFの評価者が繊維製品を洗浄した処理液の画像を撮像し、この画像に基づいて、評価装置が処理液におけるMPFの排出量を評価する例について説明する。
【0022】
[処理液の画像の準備]
MPFの評価に用いるための処理液の画像を準備する方法の一例について説明する。まず、評価対象の繊維製品を洗浄する。繊維製品の洗浄は、洗浄機で行われてもよいし、手洗いで行われてもよい。
図1(A)に示す例において、繊維製品の洗浄工程は、洗浄機W1により行われる。洗浄工程は、予め定められた洗浄条件で行われることが好ましい。具体的に、洗浄条件は、洗浄工程又は処理液の少なくとも一方の条件を含んでいることが好ましい。洗浄工程の条件は、洗い工程、すすぎ工程及び脱水工程の各工程の有無、各工程の時間、使用される洗浄機の機種等から選択された少なくとも一つの条件を含んでいることが好ましい。処理液の条件は、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液に含まれる洗浄剤、処理液の温度、処理液のpHから選択された少なくとも一つの条件を含んでいることが好ましい。処理液に含まれる洗浄剤の条件は、例えば、洗浄剤の種類(洗濯洗剤、仕上げ剤、クリーニング用の有機溶剤、繊維精錬に使用される洗浄剤など)、洗浄剤の製品名、洗浄剤の使用量から選択された少なくとも一つの条件を含んでいることが好ましい。
【0023】
続いて、本実施形態では、洗浄後の処理液を採取することが好ましい。処理液は、洗濯槽等の洗浄が行われる槽から採取されたものでもよいし、当該槽から排出されたものを採取してもよい。
図1(A)に示す例では、洗浄機W1の洗浄排水として排出された処理液を、採取用容器C1に採取する。なお、採取された処理液に夾雑物が含まれていた場合は、撮像前に沈降又はろ過等によって処理液から当該夾雑物を除去することが好ましい。
【0024】
続いて、洗浄後の処理液を撮像する。
図1(B)に示す例では、採取用容器C1に採取した処理液Lを、より広い底面を有するシャーレ等の撮像用容器C2に移して撮像する。撮像用容器C2中の処理液Lを静置してから撮像することで、処理液Lに含まれるMPFが撮像用容器C2の底面に沈み、明りょうな画像が撮像しやすくなる。
【0025】
また、撮像した処理液中の繊維製品の色調が画像の背景の色調と同一又は近い色調になり得る場合、撮像用容器C2の撮像面とは反対側の背面に、繊維製品の色調とは異なる色調の背景板やカラーフィルタを配置してもよい。あるいは、合成繊維からなるMPFを染色してもよい。染色方法としては、例えば、疎水性染料のナイルレッドで処理したのちに、エタノールで非特異的に吸着した染料を洗い流すことで、MPFのみを染色できる。
これらにより、処理液の画像の背景がMPFの色調とは異なる色調となり、色調に基づくMPFの検出が容易になる。
【0026】
処理液の撮像には、例えば、イメージスキャナ、カメラ、撮像機能付き光学顕微鏡等の、可視光線を検出することが可能なイメージセンサを備えた撮像装置を用いることができる。撮像された画像は、拡大画像でもよいし、等倍の画像でもよい。等倍の画像を用いる場合は、後の画像処理においてMPFの検出が可能なように、当該画像が十分な画素数を有することが好ましい。本発明においては、MPFとマイクロカプセル、ゼオライト等の無機粒子、泥汚れ等の粒子の形状を判別できる程度の撮像装置を用いることが好ましい。処理液の画像は、撮像用容器C2の全体の画像であってもよいし、一部の画像であってもよい。
【0027】
図2には、処理液Lを含む撮像用容器C2中の画像Mの例を示している。
図2に示すように、画像Mには、処理液Lを背景として複数のMPF5及びマイクロカプセル等の微小粒子6が含まれている。本実施形態では、評価装置が、このような画像中のMPFを画像処理によって検出し、評価する。本実施形態における評価装置100は、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン、又はサーバ等の情報処理装置として構成される。評価装置100は、1つの情報処理装置で構成されてもよいし、複数の情報処理装置が協働することで実現されてもよい。以下、本実施形態における評価装置100の構成について説明する。
【0028】
[評価装置のハードウェア構成]
図3に示すように、評価装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、入出力インタフェース15、及び、これらを互いに接続するバス14を備える。
【0029】
CPU11は、本実施形態における制御部(プロセッサ)として機能し、必要に応じてRAM13等に適宜アクセスし、各種演算処理を行いながら評価装置100の各ブロック全体を統括的に制御する。ROM12は、CPU11に実行させるOS、プログラムや各種パラメータ等のファームウェアが固定的に記憶されている不揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11の作業用領域等として用いられ、OS、実行中の各種アプリケーション、処理中の各種データを一時的に保持する。
【0030】
入出力インタフェース15には、表示部16、操作受付部17、記憶部18、通信部19等が接続される。
【0031】
表示部16は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、OELD(Organic ElectroLuminescence Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等を用いた表示デバイスである。
【0032】
操作受付部17は、例えばマウス等のポインティングデバイス、キーボード、タッチパネル、その他の入力装置である。操作受付部17がタッチパネルである場合、そのタッチパネルは表示部16と一体となり得る。
【0033】
記憶部18は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリ(SSD;Solid State Drive)、その他の固体メモリ等の不揮発性メモリである。当該記憶部18には、上記OSや各種アプリケーション、各種データが記憶される。
【0034】
本実施形態において、記憶部18は、後述する評価処理に必要なプログラムの他、評価結果等を記憶したデータベースを有していてもよい。なお、データベースは、記憶部18ではなく評価装置100に外部接続された記憶装置やサーバに記憶されていてもよい。データベースについての詳細な構成については、後述する。
【0035】
通信部19は、例えばEthernet用のNIC(Network Interface Card)や無線LAN等の無線通信用の各種モジュールであり、他の装置との間の通信処理を担う。
【0036】
[評価装置の動作例]
続いて、以上のように撮像された画像を用いた、評価装置100の具体的な動作例について説明する。本動作例における評価装置100の動作は、評価装置100のCPU11及び通信部19等のハードウェアと、記憶部18に記憶されたソフトウェアとの協働により実行される。以下の説明では、便宜上、評価装置100のCPU11を動作主体とする。
【0037】
図4のフローチャートに示すように、CPU11は、まず、処理液を撮像した画像(
図2参照)を取得する(ST11)。本動作例において、画像は、例えば、洗浄された繊維製品の色調と異なる色調の背景を有するものとする。例えば、画像において、繊維製品の色調が黒色等の濃色である場合は、背景は白色等の淡色であることが好ましい。本明細書において、画像の色調とは、画像の輝度、彩度、明度、又は色相の少なくとも一つを意味する。なお、本動作例においては、画像の輝度値に基づいて処理を行うため、処理対象となる画像はグレースケール等のモノクロ画像であることが好ましい。このため、取得した画像がカラー画像である場合、CPU11は、検出工程ST12の前に、当該カラー画像をグレースケール等のモノクロ画像に変換することが好ましい。
【0038】
画像の取得方法は特に限定されない。例えば、CPU11は、画像を撮像した撮像装置から、有線又は無線により画像を受信してもよい。あるいは、CPU11は、記憶部18に予め記憶された画像を取得してもよい。
【0039】
続いて、CPU11は、当該画像からMPFを検出する(ST12)。本動作例において、CPU11は、
図2に示すような画像Mから、繊維製品の色調と対応する色調を有する第1領域R1を検出することで、MPF5を検出する。第1領域R1は、本動作例において、MPFに対応する領域である。第1領域R1における「繊維製品の色調と対応する色調」は、繊維製品の色調を含む一定の範囲のパラメータを有する色調を意味する。第1領域R1に含まれる色調の範囲は、背景の色調と判別可能な範囲であればよい。
【0040】
より具体的に、CPU11は、
図2に示すような画像Mの輝度値に基づいて、
図5に示すような2値化画像M1を生成する。2値化画像M1は、それぞれ一定の輝度値を有する2つの領域で構成される。本実施例では、CPU11が、所定の閾値以下の輝度値を有する領域を黒色に変換し、かつ、当該所定の閾値より大きい輝度値を有する領域を白色に変換する。本工程の処理は、例えば、Image J等の画像解析ソフトを用いて行うことができる。
【0041】
2値化処理に用いる閾値は、繊維製品の色調及び画像Mの背景の色調を含む画像Mの色調から設定され、記憶部18に記憶されたものであり得る。例えば、当該閾値は、画像M又は繊維製品の色調についての情報等に基づいて、CPU11が自動的に設定したものでもよい。繊維製品の色調についての情報は、他の情報処理装置から取得した情報、又は操作受付部17を介して入力された情報等であり得る。あるいは、当該繊維製品の色調についての情報は、当該繊維製品の画像から解析されたものでもよい。
【0042】
画像の色調についての情報は、例えば、画像の色調分布(例えば輝度値の分布)に関する情報であってもよく、より具体的に、当該色調分布から算出される統計値に基づいて設定されてもよい。画像の色調分布の統計値は、各画素における色調に関するパラメータの統計値であり、例えば中央値、平均値、最頻値、第一四分位数、第三四分位数、標準偏差、最大値、最小値、分散値等から選択された1又は複数の値を用いることができる。
【0043】
CPU11が自動的に閾値を設定する例について説明する。例えば、CPU11は、記憶部18に記憶された閾値テーブルを参照して、閾値を設定することができる。閾値テーブルは、例えば、複数のサンプル画像の色調についての情報と、各サンプル画像において設定された2値化処理の閾値と、を対応付けて記憶する。これにより、CPU11は、閾値テーブルから、処理対象の画像の色調についての情報に対応する閾値を抽出することができる。一例として、閾値テーブルが、複数のサンプル画像の輝度値の中央値と、各サンプル画像において設定された2値化処理の閾値と、を対応付けて記憶しているものとする。この場合、CPU11は、まず、処理対象の画像の輝度値の中央値を算出する。そしてCPU11は、閾値テーブルから、算出された中央値に対応する閾値を抽出することができる。
【0044】
また、CPU11は、閾値テーブルを用いずに、機械学習モデルを用いて閾値を設定することもできる。例えば、CPU11は、複数のサンプル画像の色調についての情報と、各サンプル画像において設定された2値化処理の閾値と、を教師データとする機械学習モデルを生成し、当該機械学習モデルに対して、処理対象の画像の色調についての情報を適用することで、2値化処理の閾値を設定することができる。機械学習の手法としては、例えば、重回帰分析又はロジスティック回帰分析等の回帰分析、多層パーセプトロン、CNN(Convolutional Neural Network)及びRNN(Recurrent Neural Network)などのニューラルネットワーク、ガウシアンカーネル等の任意のカーネル関数を用いるサポートベクターマシーン、回帰木としてモデル化したランダムフォレスト、隠れマルコフモデルなどを利用したモデル等から選択された少なくとも一つの手法を選択することができる。
【0045】
CPU11は、黒色又は白色の領域のいずれか一方を、MPFの評価対象となる第1領域R1と決定する。CPU11は、繊維製品の色調及び画像Mの背景の色調に基づいて、第1領域R1を決定することができる。
図5に示す例では、2値化画像M1のうち、黒色の領域を第1領域R1とし、白色の領域を第2領域R2とする。なお、第2領域R2は、背景の処理液Lに対応する領域となり得る。また、透明のマイクロカプセル等の微小粒子6も、第2領域R2に含まれる。
【0046】
続いて、CPU11は、検出されたMPFの量を算出することで、処理液におけるMPFの排出量を評価する(ST13)。なお、CPU11は、必要に応じて、MPFの評価結果を記憶部18に記憶してもよい。
【0047】
MPFの量は、例えば、MPFの本数又は算出対象範囲におけるMPFの面積率の少なくとも一方を含むことが好ましい。特に、CPU11は、MPFの量をより直感的に把握する観点から、MPFの本数を算出することが好ましい。本動作例では、CPU11が、2値化画像M1における第1領域R1の個数(本数)を算出することができる。本工程の処理は、例えば、Image J等の画像解析ソフトを用いて行うことができる。
【0048】
本動作例では、CPU11が、撮像された1枚の画像全体を算出対象範囲としてもよいし、当該画像の一部を算出対象範囲としてもよい。また、CPU11は、画像を分割して複数の算出対象範囲におけるMPFの量を算出し、それら複数の算出対象範囲におけるMPFの量の合計値又は平均値を算出してもよい。
【0049】
さらに、CPU11は、算出されたMPFの量に基づいて、MPFの排出量をランク分けしてもよい。MPFの排出量のランク分けとは、算出されたMPFの量が属する階級を判定することを意味する。当該階級は、例えば数値又は文字で表されたものであることが好ましく、具体的には、「(MPFの排出量が)多い/少ない」、「Sランク/Aランク」、「1ランク/2ランク」といった例が挙げられる。MPFの排出量の階級の判定方法は、特に限定されない。例えば、算出されたMPFの量を、基準となる基準処理液を撮像した画像から検出されたMPFの量と比較することで、MPFの階級を判定してもよい。あるいは、階級毎にMPFの量の範囲が定められており、算出されたMPFの量がどの階級に属するか判定してもよい。算出されたMPFの量をランク分けして評価することで、よりわかりやすい評価結果が得られる。なお、基準処理液と比較してランク分けする際は、評価に用いた処理液と基準処理液の条件(洗浄剤の種類、洗浄剤の製品名、洗浄剤の使用量、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液の温度、処理液のpH、洗浄工程の時間、使用される洗浄機の機種等)が同一であることが好ましい。
【0050】
続いて、CPU11は、MPFの評価結果についての評価情報を出力することができる(ST14)。本動作例において、評価情報は、例えば、算出されたMPFの量についての情報又はMPFの排出量の階級の情報の少なくとも一方を含む。例えば、CPU11は、評価装置100の表示部16に評価情報を表示してもよい。あるいは、CPU11は、通信部19を介して他の装置に評価情報を送信してもよい。
【0051】
以上の各工程により、評価装置100が、対象となった繊維製品を洗浄した処理液におけるMPFの排出量を評価し、その評価結果を活用することができる。この評価方法では、処理液を撮像した画像からMPFを検出する。処理液にマイクロカプセルが含まれていた場合、画像において、透明なマイクロカプセルが処理液の背景と同化して検出されにくくなる。したがって、MPFのみを検出することができ、処理液におけるMPFの量を精度よく算出することができる。
【0052】
さらに、繊維製品の色調と対応する色調を有する第1領域をMPFに対応する領域として検出することで、背景と同一の色調となり得るマイクロカプセルが第1領域から排除され、MPFの検出精度を高めることができる。また、2値化画像を生成することで、第1領域の色調を一定に揃えることができ、CPU11による処理負荷を低減することができる。
【0053】
[変形例1]
上述の動作例では、検出工程S12が画像の輝度値に基づいて2値化画像M1を生成する処理を含む例について説明したが、MPFの検出方法はこれに限定されない。
【0054】
例えば、検出工程ST12において、CPU11は、繊維製品の色調と対応する範囲として設定された色調を有する領域を、第1領域として検出することもできる。この例において、検出対象の画像は、カラー画像であることが好ましく、例えば、RGB、L*a*b*、HSV、HLS、XYZ等の公知の色空間のパラメータを有する画像であり得る。検出対象となる色調の範囲は、例えば画像の有する色調のパラメータにより設定され得る。例えば、CPU11は、所定の範囲のパラメータを有する画素を抽出することで、第1領域を検出することができる。また、CPU11は、これらの色調のパラメータに基づいて2値化画像を生成してもよい。
【0055】
第1領域として抽出されるパラメータの範囲や、2値化処理のための閾値は、例えば、サンプル画像における繊維製品の色調と上記範囲又は閾値とを対応付けて記憶するテーブルや、機械学習モデル等を用いて設定することができる。
【0056】
さらに、本変形例によれば、繊維製品が複数の色調を有する場合でも、以下のように第1領域を検出することができる。例えばCPU11は、繊維製品の複数の色調のうち、第1の色調と対応する範囲として設定された色調を有する領域を検出する。次に、CPU11は、繊維製品の複数の色調のうち、第2の色調と対応する範囲として設定された色調を有する領域を検出する。このように、CPU11が繊維製品に含まれる複数の色調に対して同様の処理を繰り返し行い、これらの処理によって検出された領域全体を、第1領域とすることができる。これにより、繊維製品から脱落した全ての色調のMPFを検出することができる。
【0057】
上記処理において、CPU11は、記憶部18に記憶された繊維製品の色調についての情報を用いることができる。当該繊維製品の色調についての情報は、他の情報処理装置から受信した情報、又は操作受付部17を介して入力された情報等であり得る。あるいは、当該繊維製品の色調についての情報は、当該繊維製品の画像から解析されてもよい。
【0058】
[変形例2]
処理液がマイクロカプセル以外の夾雑物を含む場合は、上述のように、処理液の濾過又は沈降により、撮像前の処理液から夾雑物を除去することも可能である。一方で本変形例では、以下に説明するように、画像処理によって夾雑物とMPFとを判別することが可能である。画像処理を用いてMPFを検出することで、撮像前の夾雑物の除去処理の負担を軽減することができる。
【0059】
夾雑物の一つとして、天然繊維が挙げられる。処理液中に脱落し得る天然繊維の繊維長は、一般に数mm程度であり、MPFの繊維長よりも長い。このように、本変形例では、MPFと夾雑物とのサイズ又は形状の差を利用して、CPU11がMPFを検出することができる。具体的には、検出工程ST12において、CPU11が、色調に基づいて第1領域を検出し、さらに当該第1領域のうち、所定の範囲のサイズ又は形状の領域をMPFに対応する領域として検出することができる。MPFに対応する領域のサイズの範囲は、例えば、画素数や画像に占める面積等により設定され得る。MPFに対応する領域の形状は、公知の形状認識処理により検出することができる。
【0060】
天然繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポック等)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻等)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻等)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ等)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛等が挙げられる。
【0061】
[変形例3]
さらに、検出工程ST12におけるMPFの検出方法は、色調によるものに限定されず、エッジ検出等の他の特徴検出技術を用いることもできる。例えば、画像において、透明なマイクロカプセルの輪郭線は明確に検出されにくい。一方で、MPFの輪郭線は明確に検出され得る。このことを利用して、例えば、エッジ検出によって検出されたエッジに囲まれた領域を、MPFに対応する領域として検出することができる。また、検出工程ST12におけるMPFの検出方法は、複数の特徴検出技術を組み合わせて行うこともできる。
【0062】
[変形例4]
図6に示すように、評価方法は、出力工程ST14を有していなくてもよい。つまり、CPU11は、1回の評価処理毎に、評価結果を出力しなくてもよい。この場合、CPU11は、得られた評価結果を記憶部18に記憶することができる(ST15)。例えば、CPU11が、複数の繊維製品及び/又は複数の洗浄条件の情報における評価結果を記憶部18に記憶することで、これらの情報を含むデータベースを構築することができる。このようなデータベースは、繊維製品及び/又は洗浄条件のMPFの排出に関する評価結果の分析等に用いることができる。
【0063】
つまり、記憶部18は、複数のMPFの評価結果毎に、評価対象の繊維製品の情報又は繊維製品の洗浄条件の情報の少なくとも一方を対応付けて記憶するデータベースを有していることが好ましい。繊維製品の情報及び洗浄条件の情報等は、他の情報処理装置からの受信、又は操作受付部17を介した入力等により、記憶部18に記憶され得る。なお、データベースは、上述の情報以外の情報を適宜記憶していてもよい。
【0064】
データベースに記憶された繊維製品の情報は、繊維製品の品目、布地の種類(織布、不織布、編地など)、繊維製品における加工の種類、繊維製品の組成、繊維製品の色、繊維製品の量、繊維製品の画像、繊維製品を識別するための製品IDから選択された少なくとも一つの情報を含んでいることが好ましい。さらに、繊維製品の情報は、繊維製品の提供者を識別する提供者ID、当該提供者の氏名(名称)、メールアドレス、住所(居住エリア)、といった繊維製品の提供者に関する情報を含んでいてもよい。
【0065】
データベースに記憶された洗浄条件の情報は、洗浄工程又は処理液の少なくとも一方の情報を含んでいることが好ましい。洗浄工程の情報は、洗い工程、すすぎ工程及び脱水工程の各工程の有無、各工程の時間、洗浄工程を行った洗浄機の機種等から選択された少なくとも一つの情報を含んでいることが好ましい。処理液の情報は、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液に含まれる洗浄剤、処理液の温度、処理液のpH、処理液の採取場所から選択された少なくとも一つの条件を含んでいることが好ましい。処理液に含まれる洗浄剤の情報は、例えば、洗浄剤の種類(洗濯洗剤、仕上げ剤、クリーニング用の有機溶剤、繊維精錬に使用される洗浄剤など)、洗浄剤の製品名、洗浄剤の使用量等から選択された少なくとも一つの情報を含んでいることが好ましい。
【0066】
[変形例5]
さらに、
図7に示すように、CPU11は、上記データベースに基づいて、MPFの評価結果と、繊維製品の情報又は洗浄条件の情報の少なくとも一方と、の関係を分析することができる(ST16)。例えば、CPU11は、MPFの排出量の少ない繊維製品又は洗浄条件を抽出することができる。あるいは、CPU11は、MPFの排出量の多い繊維製品又は洗浄条件を抽出することができる。
【0067】
そして、
図7に示すように、CPU11は、ST16における分析結果についての分析情報を出力することができる(ST17)。分析情報は、例えば、MPFの排出量の少ない繊維製品又は洗浄条件を推奨する情報を含んでいてもよい。具体的に、CPU11は、評価装置100の表示部16に分析情報を表示してもよいし、通信部19を介して他の装置に分析情報を送信してもよい。
【0068】
これにより、精度の高いMPFの評価結果に基づいて、CPU11が、MPFの排出量と繊維製品又は洗浄条件の関係についての信頼性の高い情報を出力することができる。また、分析結果を受け取ったユーザが、MPFの排出量の少ない繊維製品又は洗浄条件などの情報を把握することができる。この結果、本変形例に係る評価方法は、MPFの排出抑制に対して貢献することができる。
【0069】
さらに、本変形例において、CPU11は、データベースに基づいて、複数の繊維製品又は複数の洗浄条件のMPF排出量を比較して、これらの繊維製品又は洗浄条件をMPF排出量に基づいてランク分けしてもよい。これにより、CPU11は、ランク分けされた繊維製品又は洗浄条件(洗浄剤、洗浄機など)の情報を、分析情報として出力することができる。なお、ランク分けの際は、比較する対象以外の評価条件は全て統一されることが好ましい。例えば、繊維製品をランク分けする場合は、繊維製品以外の評価条件(洗浄剤の種類、洗浄剤の製品名、洗浄剤の使用量、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液の温度、処理液のpH、洗浄工程の時間、使用される洗浄機の機種等)は全て統一されることが好ましい。また、洗浄剤をランク分けする場合は、洗浄剤以外の評価条件(繊維製品の種類、繊維製品の製品名、繊維製品の使用量、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液の温度、処理液のpH、洗浄工程の時間、使用される洗浄機の機種等)は全て統一されることが好ましい。さらに、洗浄機をランク分けする場合は、洗浄機以外の評価条件(繊維製品・洗浄剤の種類、繊維製品・洗浄剤の製品名、繊維製品・洗浄剤の使用量、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液の温度、処理液のpH、洗浄工程の時間)は全て統一されることが好ましい。
【0070】
[変形例6]
また、検出工程ST12では、CPU11が画像を補正し、補正された画像に対して第1領域の検出処理を行ってもよい。画像Mの補正方法としては、平滑化処理、色調補正等が挙げられる。平滑化処理に用いられるフィルタは、平均値フィルタや、ガウシアンフィルタ、移動平均フィルタ、メディアンフィルタ、荷重平均フィルタ、ローパスフィルタなどを含む。CPU11が平滑化処理を行うことにより、画像におけるノイズの除去、及び/又は色ムラの補正等が可能となる。
【0071】
さらに、CPU11は、画像Mの補正処理として、元の画像の各成分と、元の画像の各成分に対応する平滑化画像の成分と、を減算または除算して、減除算画像を生成してもよい(例えば、特開2021-189979号公報の段落[0029]参照)。これにより、画像Mの照明ムラを補正することができる。
【0072】
[変形例7]
さらに、処理液がマイクロカプセル以外の夾雑物を含む場合は、検出工程ST12におけるMPFの検出方法は、形状等の特徴検出技術を用いることもできる。例えば、画像において、夾雑物とMPFの特徴的な形状の違いを認識し、MPFのみを検出する方法が挙げられる。例えば長さと幅の特定比率及び特定の長さを規定し、規定した範囲の画像をMPFとして検出する方法が挙げられる。また、検出工程ST12におけるMPFの検出方法は、前記の色調を検出する技術等の複数の特徴検出技術を組み合わせて行うこともできる。
【0073】
[変形例8]
上述の動作例及び各変形例では、CPU11がMPFの検出(ST12)、及びMPFの排出量の評価(ST13)等を行うと説明した。一方で、本変形例では、これらの工程の一部を、ユーザ(評価者)が、情報処理装置である評価装置100を操作して実行することもできる。なお、以下に具体的な例を挙げるが、本変形例に係る評価方法では、例示した以外の動作をユーザが行ってもよい。
【0074】
MPFの検出工程(ST12)における例を挙げる。本変形例に係る検出工程では、ユーザが以下に挙げるような1つの動作を行ってもよいし、複数の動作を行ってもよい。
例えば、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示された画像を確認し、繊維製品の色調及び画像の背景の色調を含む画像の色調に基づいて、2値化画像の閾値を設定することができる。
例えば、ユーザは、2値化画像の生成後、繊維製品の色調等に基づいて、白色又は黒色の領域のいずれかを第1領域として指定することができる。
変形例1において、ユーザは、繊維製品の色調と対応する範囲として設定された色調を有する領域を指定して、CPU11に第1領域を検出させることができる。
変形例2において、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示された画像を確認し、夾雑物と区別可能なMPFのサイズを設定し、CPU11に第1領域を検出させることができる。
変形例3において、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示された画像を確認し、エッジ検出等の特徴検出に係る各種設定を行うことができる。
変形例6において、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示された画像を確認し、画像の補正に係る各種設定を行うことができる。
変形例7において、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示された画像を確認し、特徴検出に係る形状の範囲等の各種設定を行うことができる。
【0075】
MPFの評価工程(ST13)における例を挙げる。本変形例に係る評価工程では、ユーザが以下に挙げるような1つの動作を行ってもよいし、複数の動作を行ってもよい。
例えば、ユーザは、MPFの算出対象範囲を指定することができる。
例えば、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示された画像を確認し、第1領域の個数(本数)をカウントして、その結果を評価装置100に入力することができる。
例えば、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示されたMPFの量に基づいて、MPFの排出量をランク分けすることができる。
変形例5において、ユーザは、評価装置100の表示部16に表示された複数の繊維製品又は複数の洗浄条件のMPF排出量を比較して、これらの繊維製品又は洗浄条件をMPF排出量に基づいてランク分けすることができる。
【0076】
<第2実施形態>
上述のように、MPFの評価を行う評価装置100は、MPFの排出量に関心のあるユーザの使用する端末装置に、MPFの評価結果に関する情報を送信することができる。これにより、上記関心のあるユーザが、MPFの評価結果を有効活用することができる。そこで、以下の実施形態では、MPFの評価を行う評価装置100が、インターネット50を介して端末装置と接続された評価システムの構成例について説明する。なお、MPFの評価結果に関する情報は、例えば、評価情報又は分析情報の少なくとも一方を含むものとする。
【0077】
例えば、繊維製品のMPFの排出量に関心のあるユーザとして、繊維製品を取り扱う繊維業者が挙げられる。そこで、本発明の第2実施形態では、評価装置100が、繊維製品についてのMPFの評価の依頼元である繊維業者の使用する端末装置に、信頼性の高いMPFの評価結果に関する情報を提供することが可能なシステムについて説明する。
【0078】
[システムの構成]
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係るシステムは、評価装置100と、インターネット50を介して評価装置100に接続された第1端末装置200と、を含む。なお、評価装置100は、インターネット50を介して複数の第1端末装置200と接続されていてもよい。本実施形態において、評価装置100は、例えば、繊維製品から排出されたMPFの評価結果に関する情報を提供可能なMPF情報提供サービスを提供する。
【0079】
第1端末装置200は、例えば、繊維製品についての評価の依頼元のユーザである繊維業者により使用される端末装置である。第1端末装置200は、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン等の、
図3と同様のハードウェア構成を有する情報処理装置である。当該繊維業者は、繊維製品の製造販売に関わる事業者であり、例えば、繊維製品の製造メーカー、又は繊維製品のサプライヤー等であり得る。
【0080】
図8に示す例において、本実施形態の評価装置100は、繊維業者から提供された繊維製品を洗浄した処理液におけるMPFの排出量を評価し、その評価結果についての評価情報を第1端末装置200へ送信する。評価情報を受信した第1端末装置200の繊維業者は、評価情報に基づいて、評価対象の繊維製品と同一種類の繊維製品Pに、MPFの排出量の評価結果を表示する製品表示Tを付与する。
【0081】
[システムの動作例]
続いて、
図9のシーケンス図を用いて上記システムの動作例について説明する。この例では、繊維製品を取り扱う繊維業者が、評価装置100を用いるMPF評価サービスの運営者に対し、繊維製品のサンプルを送付してMPFの評価を依頼する。そして、当該運営者が繊維製品のサンプルを洗浄し、処理液におけるMPFの排出量を評価する。
【0082】
まず、第1端末装置200が、MPFの評価対象となる繊維製品の情報を評価装置100に送信する(ST31)。繊維製品の情報は、第1実施形態と同様に、繊維製品を識別するための製品ID、繊維製品の品目、布地の種類(織布、不織布、編地など)、繊維製品における加工の種類、繊維製品の組成、繊維製品の色、繊維製品の量、繊維製品の画像から選択された少なくとも一つの情報を含んでいることが好ましい。さらに、繊維製品の情報は、例えば提供元の繊維業者を識別する繊維業者ID、当該繊維業者の名称、メールアドレス、住所(居住エリア)、といった繊維業者に関する情報を含んでいることが好ましい。
【0083】
そして、評価装置100のCPU11が繊維製品の情報を受信し、記憶部18に記憶する(ST21)。続いて、評価装置100を使用するMPF提供サービス運営者は、第1実施形態と同様に繊維製品の洗浄及び処理液の撮像を行う。CPU11は、第1実施形態と同様に、処理液を撮像した画像を取得する(ST22)。
【0084】
続いて、CPU11は、第1実施形態と同様に、当該画像からMPFを検出し(ST23)、検出されたMPFの量を算出することでMPFの排出量を評価する(ST24)。CPU11は、必要に応じて、MPFの評価結果を記憶部18に記憶してもよい。
【0085】
続いて、CPU11は、第1端末装置200に対して、評価対象の繊維製品の情報と、MPFの評価結果についての評価情報と、を関連付けて送信する(ST25)。第1端末装置200は、これらの情報を受信し、記憶部に記憶する(ST32)。例えば、第1端末装置200は、繊維製品毎に評価情報を記憶するデータベースを有していることが好ましい。
【0086】
そして、第1端末装置200は、評価対象の繊維製品についての評価情報を表示部に表示する(ST33)。
図10(A)に示す例において、第1端末装置200の表示部に表示された評価結果表示画面20は、繊維業者の識別情報21、評価対象の繊維製品の画像22、当該繊維製品の識別情報及び組成情報23、当該繊維製品の評価情報24を含む。評価情報24は、例えば、MPF排出量の階級(ランク)の情報を含み、当該階級を表すマーク25をさらに含む。但し、評価結果表示画面20は、評価対象の繊維製品についての評価情報を含んでいればよく、図示の例に限定されない。
【0087】
評価対象の繊維製品に対するMPFの排出量が少ないという結果であった場合、その繊維製品と同一種類の繊維製品におけるMPFの排出量も少ないと言え、繊維製品を販売する際の有利な点となり得る。ここで、「同一種類の繊維製品」とは、例えば、同一の繊維製品、色のみ異なる繊維製品、サイズのみ異なる繊維製品、生地の少なくとも一部が同一の繊維製品等が挙げられる。
【0088】
そこで、本実施形態では、第1端末装置200を使用する繊維業者が、評価対象の繊維製品と同一種類の繊維製品の製品表示又は販売促進媒体に、評価対象の繊維製品に対する評価結果を表示することができる。製品表示は、製品に直接付される表示を意味し、例えば、製品に付されるタグ(販売用タグ、品質表示タグ)、製品自体に印刷された表示、及び製品の包装等を含む。販売促進媒体は、製品の広告及び製品の販売に係るウェブページ等を含む。
【0089】
具体的な動作例として、第1端末装置200は、受信した評価情報における評価結果を、評価対象の繊維製品と同一種類の繊維製品の製品表示又は販売促進媒体に表示するための製品表示用情報を生成する(ST34)。製品表示用情報は、上述の製品表示又は販売促進媒体に表示される情報である。製品表示用情報は、上述のMPFの量についての情報又はそれを加工した情報を含んでおり、視認性の観点から、MPFの排出量の階級の情報を含んでいることが好ましい。なお、製品表示用情報は、製品表示又は販売促進媒体に表示されるデータそのものでなくてもよく、当該データに含まれる要素(イメージデータ及び/又はテキストデータ等)を含んでいればよい。
【0090】
図11(A)には、繊維製品Pに付されるタグとしての製品表示Tの例を示している。この製品表示Tは、繊維製品の評価情報T1を含む。評価情報T1は、例えば、MPF排出量の階級の情報を含み、当該階級を表すマークT2をさらに含む。
【0091】
このように、本実施形態では、繊維製品を取り扱う繊維業者に対し、信頼性の高いMPFの評価結果を提供することができる。これにより、当該繊維業者は、例えば取り扱う繊維製品とともにMPFの評価結果を提示することができ、環境負荷の低い製品の販売を促進することができる。したがって、本実施形態によれば、評価装置100と繊維業者の使用する第1端末装置200とが協働することで、MPFによる環境負荷を低減させることができる。
【0092】
[変形例1]
上述の動作例では、第1端末装置200が製品表示用情報を生成すると説明したが、これに限定されない。例えば、評価装置100が製品表示用情報を生成してもよい。なお、本変形例に係る
図12に示す工程のうち、上述の
図9に示す動作例と同一である工程は、説明を省略する。
【0093】
例えば、
図12に示すように、第1端末装置200は、評価情報を表示した後(ST33)、評価装置100に対し、製品表示用情報の送信を要求することができる(ST35)。
【0094】
図10(B)に示す例において、第1端末装置200の表示部に表示される評価結果表示画面20は、繊維業者の識別情報21、評価対象の繊維製品の画像22、当該繊維製品の識別情報及び組成情報23、当該繊維製品の評価情報24の他、さらに製品表示用情報の出力ボタン26を含む。第1端末装置200は、例えば、この製品表示用情報の出力ボタン26がクリック又はタップ等によって指定されたと判定した場合に、評価装置100に対し、製品表示用情報の送信を要求することができる。
【0095】
図12に示すように、評価装置100は、製品表示用情報の送信要求を受信し(ST26)、製品表示用情報を生成する(ST27)。そして、評価装置100は、生成した製品表示用情報を第1端末装置200に送信する(ST28)。第1端末装置200は、製品表示用情報を受信する(ST36)。これにより、本変形例においても、第1端末装置200を使用する繊維業者が、評価対象の繊維製品と同一種類の繊維製品の製品表示又は販売促進媒体に、評価対象の繊維製品に対する評価結果を表示することができる。また、本変形例によれば、製品表示用情報の生成についての第1端末装置200の処理負担を軽減することができる。
【0096】
[変形例2]
上述の動作例では、繊維業者が、MPFの評価対象の繊維製品と同一種類の繊維製品に対してMPFの評価結果を付すことで、消費者に対してMPFの評価結果を提示する例について説明した。さらに、MPFの評価結果に対して興味を持った消費者に対しては、評価装置100がより詳細な情報を提供できることが好ましい。そこで、本変形例では、繊維製品の消費者の使用する端末装置をさらに含む評価システムの例について説明する。
【0097】
本変形例に係る評価システムは、
図13に示すように、評価装置100と、繊維製品を取り扱う繊維業者の使用する第1端末装置200と、繊維製品の消費者の使用する第2端末装置300と、を有する。なお、評価装置100は、複数の第1端末装置200及び複数の第2端末装置300と、インターネット50を介して接続されていてもよい。
【0098】
本変形例において、評価装置100は、例えば、インターネット50を介して繊維製品の評価結果に関する情報を提供可能なMPF情報提供サービスを提供するサーバとして構成され得る。本実施形態において、評価装置100は、MPF情報提供サービスとして、評価対象の繊維製品の提供元である繊維業者への評価結果の出力に加えて、繊維製品の消費者に対して、ウェブサイト又はアプリケーション上で、当該繊維製品のMPFの評価結果についての情報提供を行うことができる。
【0099】
評価装置100のCPU11は、第1実施形態の変形例5で説明したように、評価結果の取得後、繊維製品の情報に対応付けて、MPFの評価結果を記憶部18に記憶する。CPU11は、記憶された評価結果に関する情報を、MPF情報提供サイト又はアプリケーションを介して、第2端末装置300に提示することができる。
【0100】
第2端末装置300によるアクセス方法は、特に限定されない。例えば、繊維製品と同一種類の繊維製品の製品表示又は販売促進媒体に表示される製品表示用情報が、MPFの評価結果に関する情報にアクセス可能なアクセス情報(ウェブページのURLや2次元バーコード)を含んでいることが好ましい。アクセス情報は、例えば、MPF情報提供サイトへのアクセス情報でもよいし、MPF情報提供アプリケーションのダウンロードページへのアクセス情報でもよい。
【0101】
図11(B)には、本変形例の製品表示Tの例を示している。本変形例の製品表示Tは、MPFの評価情報T1の他、アクセス情報T3を含んでいる。例えば、第2端末装置300は、繊維製品の製品表示Tに含まれるアクセス情報T3を読み取り、MPF情報提供サイト又はMPF情報提供アプリケーションを介して、評価結果に関する情報にアクセスすることができる。
【0102】
図14に示す例において、第2端末装置300の表示部に表示された評価結果表示画面30は、繊維製品の識別情報31、当該繊維製品の画像32、当該繊維製品の組成情報、当該繊維製品の評価情報34を含む。評価情報34は、例えば、MPF排出量の階級の情報を含み、当該階級を表すマーク35をさらに含む。評価結果表示画面30は、他の繊維製品に係る評価結果表示画面30に遷移するためのボタン36を含んでいてもよい。但し、評価結果表示画面30は、繊維製品の情報及びそれに対応する評価情報を含んでいればよく、図示の例に限定されない。
【0103】
[変形例3]
上述の評価システムの構成例においては、繊維業者が評価対象の繊維製品をMPF情報提供サービスの運営者に送付し、評価を依頼すると説明したが、これに限定されない。例えば、繊維業者が、評価対象の繊維製品の洗浄及び処理液の撮像を行い、処理液の画像を評価装置100に送信してもよい。この場合、第1端末装置200が、評価装置100に対し、繊維製品の情報及び洗浄条件の情報と関連付けて画像を送信することが好ましい。評価装置100のCPU11は、送信された画像を取得し、上述の動作例と同様にMPFの排出量を評価することができる。
【0104】
[変形例4]
第1端末装置200は、製品表示用情報を生成する工程(ST34)を行わなくてもよい。この場合も、第1端末装置200は、繊維製品の情報及び評価情報を対応付けて記憶することで、これらの情報を有するデータベースを構築し、評価結果を活用することができる。具体的な評価結果の活用例として、繊維業者は、当該データベースに基づいて、MPFの排出量の少ない繊維製品の研究開発を行うことができる。
また、この場合、繊維業者が第1端末装置200等の情報処理装置を操作して、評価情報から製品表示用情報を生成することもできる。
【0105】
[変形例5]
さらに、CPU11は、評価情報の送信に加えて、又は評価情報の送信に替えて、分析情報を送信してもよい。例えば、CPU11は、MPFの評価結果を繊維製品の情報に対応付けてデータベースに記憶し、第1実施形態の変形例5(
図7)と同様に、データベースに基づいて、MPFの評価結果と繊維製品の情報との関係を分析して分析情報を生成する。そして、CPU11は、所定のタイミングで分析情報を第1端末装置200に送信する。分析情報の送信タイミングとして、CPU11は、例えば、所定の周期(1週間、1か月、1年等)で分析情報を送信してもよいし、第1端末装置200の送信要求に応じて分析情報を送信してもよい。なお、本変形例において、CPU11は、MPFの評価処理の度に評価情報を送信する必要はなく、必要に応じて評価情報を送信すればよい。
【0106】
本変形例において、分析情報は、MPFの排出量の少ない繊維製品を推奨する情報を含んでいることが好ましい。これにより、第1端末装置200を使用する繊維業者に、より具体的な繊維製品を推奨することができ、MPFの排出量削減を促すことができる。
【0107】
<第3実施形態>
[システムの構成]
コインランドリー業者及びクリーニング業者等の洗濯業者は、業務において、繊維製品の洗浄後の洗濯排水及び排液を排出し得る。また、繊維業者も、繊維製品の製造過程等において、繊維の精錬等の洗浄後の排液を排出し得る。このため、これらの繊維業者又は洗濯業者も、自身の排出するこれらの液におけるMPFの排出量に関心を持ち得る。そこで、本発明の第3実施形態では、評価装置100が、処理液についてのMPFの評価の依頼元である洗濯業者の使用する端末装置に、信頼性の高いMPFの評価結果に関する情報を提供することが可能なシステムについて説明する。
【0108】
図15に示すように、本発明の第3実施形態に係るシステムは、インターネット50上の評価装置100と、第3端末装置400と、を含む。図示はしないが、評価装置100は、複数の第3端末装置400と、インターネット50を介して接続されていることが好ましい。
【0109】
第3端末装置400は、例えば、処理液についての評価の依頼元のユーザである繊維業者又は洗濯業者により使用される端末装置である。第3端末装置400は、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン等の、
図3と同様のハードウェア構成を有する情報処理装置である。第3端末装置400は、本実施形態における「第1端末装置」として機能し得る。繊維業者は、繊維製品の製造販売に関わる事業者であり、例えば、繊維製品の製造メーカー、又は繊維製品のサプライヤー等であり得る。洗濯業者は、衣料品等の洗濯サービスを提供するクリーニング業者又はコインランドリー業者であり得る。繊維業者の場合、評価対象の処理液は、繊維の精錬等の洗浄後の排液となり得る。クリーニング業者の場合、評価対象の処理液は、有機溶剤等の排液となり得る。コインランドリー業者の場合、評価対象の処理液は、洗濯排水となり得る。なお、本実施形態では、これらの排液及び洗濯排水を合わせて、「洗浄排水」と称する。
【0110】
本実施形態において、評価装置100は、例えば、処理液について評価されたMPFの情報を提供可能なMPF情報提供サービスを提供するサーバとして構成される。本実施形態において、評価装置100は、繊維業者又は洗濯業者から提供された処理液におけるMPFの排出量を評価し、その評価結果に関する情報を第3端末装置400へ送信する。評価装置100は、ウェブサイト又はアプリケーション上でMPF情報提供サービスを提供してもよい。
【0111】
[システムの動作例]
続いて、
図16のシーケンス図を用いて上記システムの動作例について説明する。この例では、
図15を参照し、繊維業者又は洗濯業者が、洗浄機W2から採取した処理液をMPF情報提供サービスの運営者に送付して、MPFの評価を依頼する。そして、評価装置100が処理液におけるMPFの排出量を評価する。
【0112】
まず、第3端末装置400が、MPFの評価対象となる処理液の情報とそれに関する洗浄条件の情報を、評価装置100に送信する(ST51)。処理液の情報は、洗浄条件以外の処理液の情報であって、例えば、処理液を含む採取用容器の識別情報、処理液の採取場所(店舗名及び/又は洗浄機の識別情報等)の情報を含んでいることが好ましい。洗浄条件の情報は、洗浄剤の種類、洗浄剤の製品名、洗浄剤の使用量、処理液の親水度(水性又は油性)、処理液の温度、処理液のpH、洗浄工程の時間、使用される洗浄機の機種等から選択された少なくとも一つの条件を含んでいることが好ましい。
【0113】
そして、評価装置100がこれらの情報を受信及び記憶する(ST41)。続いて、上記サービス運営者は、第1実施形態と同様に処理液の撮像を行う。CPU11は、ST11と同様に、処理液を撮像した画像を取得する(ST42)。
【0114】
続いて、CPU11は、ST12と同様に、当該画像からMPFを検出する(ST43)。そして、CPU11は、ST13と同様に、検出されたMPFの量を算出することで、処理液におけるMPFの排出量を評価する(ST44)。CPU11は、MPFの評価結果を処理液及び洗浄条件の情報と対応付けて記憶部18に記憶してもよい。
【0115】
続いて、CPU11は、第3端末装置400に対して、処理液及び洗浄条件の情報と、MPFの評価情報と、を関連付けて送信する(ST45)。
【0116】
第3端末装置400は、これらの情報を受信し、記憶する(ST52)。これにより、第3端末装置400は、メールブラウザ、ウェブブラウザ、アプリケーションの表示画面等を介して、評価情報を表示することができる(ST53)。第3端末装置400に記憶されたこれらの情報は、データベース化されることが好ましい。
【0117】
このように、本実施形態では、処理液についての評価の依頼元の繊維業者又は洗濯業者に対し、信頼性の高いMPFの評価結果を提供することができる。これにより、繊維業者又は洗濯業者は、自身の排出するMPFの量を把握し、環境に対する意識を高めることができる。また、本実施形態によれば、MPFの評価結果を受け取った繊維業者又は洗濯業者に対し、よりMPFの排出量の少ない洗浄条件を検討させることもできる。また、評価されたMPFの排出量が低かった場合、繊維業者又は洗濯業者がこの評価結果を店舗の宣伝活動に利用することもできる。
【0118】
[変形例1]
さらに、CPU11は、評価情報の送信に加えて、又は評価情報の送信に替えて、分析情報を送信してもよい。例えば、
図17に示すように、CPU11は、MPFの評価結果を洗浄条件の情報に対応付けてデータベースに記憶し(ST46)、第1実施形態の変形例5(
図7)と同様に、データベースに基づいて、MPFの評価結果と洗浄条件の情報との関係を分析して分析情報を生成する(ST47)。そして、CPU11は、所定のタイミングで分析情報を第3端末装置400に送信する(ST48)。分析情報の送信タイミングとして、CPU11は、例えば、所定の周期(1週間、1か月、1年等)で分析情報を送信してもよいし、第3端末装置400の送信要求に応じて分析情報を送信してもよい。なお、本変形例において、CPU11は、サンプル毎に評価情報を送信する必要はなく、必要に応じて評価情報を送信すればよい。
【0119】
本変形例において、分析情報は、MPFの排出量の少ない洗浄条件を推奨する情報を含んでいることが好ましく、特定の洗浄剤(種類、製品名)を推奨する情報を含んでいることがより好ましい。これにより、第3端末装置400を使用する繊維業者又は洗濯業者に、より具体的な洗浄方法を推奨することができ、MPFの排出量削減を促すことができる。さらに、この構成により、第3端末装置400による分析処理の負担を低減させることができる。
【0120】
第3端末装置400は、分析情報を受信し(ST54)、受信された分析情報を表示する(ST55)。
図18に示す例において、第3端末装置400の表示部に表示された分析結果表示画面40は、繊維業者又は洗濯業者の識別情報41、所定の期間における繊維業者又は洗濯業者の処理液の評価情報42、分析情報44を含む。なお、
図18では、一例として、本サービスを利用する一の洗濯業者(ここでは「Bクリーニング店」)に対する分析結果表示画面40を示している。評価情報42は、例えば、MPF排出量の階級の情報を含み、当該階級を表すマーク43をさらに含む。分析情報44は、例えば洗浄剤の推奨情報を含み、推奨対象の洗浄剤の画像45及び洗浄剤に関するウェブページへのアクセス情報46を含む。但し、分析結果表示画面40は、少なくとも分析情報44を含んでいればよく、図示の例に限定されない。
【0121】
[変形例2]
例えば、第3端末装置400による送信工程ST51において、第3端末装置400は、処理液の情報と洗浄条件の情報に加えて、繊維製品の情報を送信してもよい。本変形例において、繊維製品の情報は、洗浄対象となった繊維製品の画像を含んでいることが好ましい。これにより、CPU11が、繊維製品の画像に対して画像認識処理を行うことで、繊維製品の色、布地の種類、加工の種類、組成などの詳細な情報を抽出することができる。例えばCPU11が繊維製品の色の情報を取得することで、例えばCPU11の色調に基づくMPFの検出処理の精度を高めることができる。
【0122】
さらに、CPU11が、
図17のST46において、MPFの評価結果を、洗浄条件の情報及び繊維製品の情報に対応付けて記憶部18のデータベースに記憶することができ、データベースの情報を充実させることができる。これにより、CPU11が繊維製品の情報を含む分析情報を生成することができ、より詳細な分析結果を提供することができる。
【0123】
[変形例3]
また、本実施形態の送信工程ST51においては、第3端末装置400が、洗浄条件の情報を評価装置100に送信することは必須ではない。この場合、第3端末装置400は、送信工程ST51において、MPFの評価対象となる処理液の情報及び繊維製品の情報を関連付けて送信してもよい。あるいは、第3端末装置400は、送信工程ST51において、MPFの評価対象となる処理液の情報のみを送信してもよい。これによっても、評価装置100のCPU11は、MPFの評価処理を行うことができ、その評価結果についての評価情報を第3端末装置400に送信することができる。
【0124】
[変形例4]
図15に示すシステムの構成例においては、繊維業者又は洗濯業者が評価対象の処理液をMPF情報提供サービスの運営者に送付して評価を依頼すると説明したが、これに限定されない。例えば、繊維業者又は洗濯業者が、評価対象の処理液の撮像を行い、処理液の画像を評価装置100に送信してもよい。この場合、第3端末装置400が、評価装置100に対し、洗浄条件の情報又は繊維製品の情報の少なくとも一方と対応付けて画像を送信することが好ましい。評価装置100のCPU11は、送信された画像を取得し、上述の動作例と同様にMPFの排出量を評価する。これによっても、繊維業者又は洗濯業者が、自身の業務によって排出されたMPFの量について把握することができ、この情報を店舗の宣伝活動や洗浄方法の開発等に活かすことができる。
【0125】
[変形例5]
さらに、洗浄機W2からの処理液を撮像装置が自動的に撮像して、撮像された画像を評価装置100に送信してもよい。
図19に示すように、本変形例に係るシステムは、例えば、インターネット50上の評価装置100と、第3端末装置400と、撮像装置500と、を含む。撮像装置500は、インターネットを介して評価装置100に接続されている。
【0126】
撮像装置500は、洗浄機W2から排出された処理液の画像の撮像及び送信が可能に構成される。撮像装置500も、
図3と同様のハードウェア構成を有する情報処理装置として構成され、さらに入出力インタフェースに接続されたイメージセンサ等の撮像部を有する。つまり、撮像装置500は、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、バス、入出力インタフェース、表示部、操作受付部、記憶部、通信部、撮像部等を有する。撮像装置500は、洗浄機W2から排出された処理液が通る排水ラインLnの内部を撮像することができる。排水ラインLnは、例えば、洗浄機W2の内部の配管、洗浄機W2の配管に接続されたホース、洗浄機W2の外部の排水管、又は洗浄機W2からの排水が一時的に貯留される撮像用容器の少なくとも一つを含んでいることが好ましい。
【0127】
続いて、撮像装置500を含むシステムの動作例について説明する。
図20のシーケンス図に示すように、まず撮像装置500が、処理液の画像を撮像し(ST81)、その画像を評価装置100に送信する(ST82)。評価装置100のCPU11は、画像を受信し(ST61)、上記ウェブサイト又はアプリケーションの通知機能等を用いて、第3端末装置400に処理液の画像の受信通知を送信する(ST62)。
【0128】
第3端末装置400は、処理液の画像の受信通知を受信し(ST71)、MPFの評価対象となる繊維製品又は洗浄条件の少なくとも一方の情報を、評価装置100に送信する(ST72)。評価装置100は、繊維製品又は洗浄条件の少なくとも一方の情報を受信及び記憶する(ST63)。その後、評価装置100が、上述の変形例1と同様に、MPFの検出(ST64)、MPFの排出量の評価(ST65)、評価情報の記憶(ST66)、分析情報の生成(ST67)、及び分析情報の送信(ST68)を行う。第3端末装置400は、分析情報を受信し(ST73)、表示部に分析情報を表示する(ST74)。
【0129】
本変形例によれば、処理液の画像の撮像が自動化され、繊維業者又は洗濯業者の負担が低減される。これにより、評価装置100による評価サンプル数を増加させることができ、評価装置100のデータベースのデータ量を増加させることができる。したがって、評価装置100が分析情報を生成する際に、多くの評価サンプルに対する結果に基づいて、より精度の高い分析情報を生成することができる。
【0130】
なお、本変形例においても、必要に応じて評価装置100がサンプル毎の評価情報を出力してもよい。また、評価装置100が繊維製品及び/又は洗浄条件の情報を取得する方法については、画像の受信通知を送信する方法に限定されない。例えば、第3端末装置400は、評価装置100に対し、洗浄機W2による洗浄前、又はその他の任意のタイミングで繊維製品及び/又は洗浄条件の情報を送信することができる。
【0131】
<第4実施形態>
上述の第3実施形態では、繊維業者又は洗濯業者を対象としてMPFの排出量を評価した結果を提供する例について示した。一方で、近年、環境意識の増加に伴い、一般家庭の洗濯機から排出された洗濯排水中のMPFの量についても関心が高まっている。そこで、本発明の第4実施形態では、評価装置100が、処理液についてのMPFの評価の依頼元である一般家庭のユーザの使用する端末装置に、信頼性の高いMPFの評価結果に関する情報を提供することが可能なシステムについて説明する。
【0132】
図21に示すように、本発明の第4実施形態に係るシステムは、インターネット50上の評価装置100と、第4端末装置600と、撮像装置500と、洗濯機(洗浄機)700と、を含む。評価装置100は、第4端末装置600、洗濯機700及び撮像装置500と、インターネット50を介して接続されている。
【0133】
洗濯機700は、本実施形態において、
図3と同様のハードウェア構成を有する情報処理装置を含む。つまり、洗濯機700は、洗濯処理を行う洗濯槽及びこれを駆動する駆動部の他に、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、バス、入出力インタフェース、表示部701、操作受付部702、記憶部、通信部等を有する。
【0134】
第4端末装置600は、本実施形態において、処理液についての評価の依頼元である一般家庭のユーザにより使用される端末装置である。第4端末装置600は、例えばスマートフォン、タブレットPC、ノートブックPC、デスクトップPC等の、
図3と同様のハードウェア構成を有する情報処理装置である。
【0135】
本実施形態において、評価装置100は、例えば、処理液におけるMPFの排出量に関する情報を提供可能なMPF情報提供サービスを提供するサーバとして構成される。評価装置100は、ウェブサイト又はアプリケーション上でMPF情報提供サービスを提供することができる。本実施形態において、評価装置100は、撮像装置500から提供された処理液の画像に基づいてMPFの排出量を評価し、その評価結果に関する情報を洗濯機700及び第4端末装置600へ送信する。つまり、洗濯機700及び第4端末装置600は、本実施形態における「第1端末装置」として機能し得る。
【0136】
[システムの動作例]
続いて、
図22のシーケンス図を用いて上記システムの動作例について説明する。なお、本実施形態の動作例は、第3実施形態の変形例5で説明した例と同様の工程を含むため、適宜説明を省略する。
【0137】
まず撮像装置500が、処理液の画像を撮像し(ST111)、その画像を評価装置100に送信する(ST112)。評価装置100は、処理液の画像を受信する(ST91)。
【0138】
一方、第4端末装置600は、MPFの評価対象となる繊維製品又は洗浄条件の少なくとも一方の情報を、評価装置100に送信する(ST101)。当該情報の送信タイミングは、上述のように、評価装置100からの画像の受信通知後であってもよいし、その他の任意のタイミングであってもよい。評価装置100は、繊維製品又は洗浄条件の少なくとも一方の情報を受信及び記憶する(ST92)。
【0139】
その後、評価装置100が、上述の第3実施形態と同様に、MPFの検出(ST93)、MPFの排出量の評価(ST94)、MPFの評価結果の記憶(ST95)を行う。
【0140】
本動作例において、評価装置100は、第4端末装置600及び洗濯機700に評価情報を送信する(ST96)。第4端末装置600は、評価情報を受信し(ST102)、メールブラウザ、ウェブブラウザ、アプリケーションの表示画面等を介して、評価情報を表示する(ST103)。洗濯機700は、評価情報を受信し(ST121)、表示部701に評価情報を表示する(ST122)。
【0141】
さらに評価装置100は、記憶部18に記憶されたデータベースに基づいて、分析情報を生成し(ST97)、かつ分析情報を第4端末装置600に送信する(ST98)。第4端末装置600は、分析情報を受信し、(ST104)、表示部に分析情報を表示する(ST105)。
【0142】
以上のように、本実施形態によれば、第4端末装置600を使用するユーザが、手間をかけることなく、自身によるMPFの排出量を把握することができる。さらに、ユーザは、分析情報によって、MPFの排出量の低い繊維製品や洗浄条件を知ることができ、MPFの排出削減に貢献することができる。
【0143】
[変形例1]
評価装置100は、評価情報又は分析情報の少なくとも一方の送信を行えばよい。また、評価装置100から送信された評価結果に関する情報は、第4端末装置600又は洗濯機700の少なくとも一方が受信すればよい。例えば、洗濯機700が分析情報を受信及び表示してもよいし、第4端末装置600が分析情報のみを受信及び表示してもよい。
【0144】
[変形例2]
洗濯機700が、繊維製品又は洗浄条件の少なくとも一方の情報の一部を、評価装置100に送信してもよい。これにより、ユーザの情報入力の負担を低減させることができる。例えば、洗濯機700は、行った洗濯工程を記憶し、この洗濯工程を、洗浄条件の情報として評価装置100に送信することができる。あるいは、洗濯機700は、洗濯槽の内部の繊維製品を撮像することが可能なカメラを有していてもよい。これにより、洗濯機700が評価の対象となる繊維製品の画像を評価装置100に送信することができる。
【0145】
[変形例3]
撮像装置500は、洗濯機700と別体の構成ではなくてもよい。この場合、本実施形態のシステムは、評価装置100と、第4端末装置600と、洗濯機700と、で構成されてもよい。
【0146】
例えば、洗濯機700は、排水ラインLnの内部を撮像することが可能なカメラを有し、このカメラで撮像された処理液の画像が洗濯機700の記憶部に記憶されるように構成されてもよい。これにより、洗濯機700が、処理液の画像を評価装置100に送信することができる。
【0147】
[変形例4]
例えば、本実施形態における洗濯機700は、洗濯業者や繊維業者が用いる洗浄機として構成されてもよい。これにより、これらの業者が洗浄機を介しても評価に関する情報を確認することができる。
【0148】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0149】
上述の第2、第3及び第4実施形態の評価システムにおいても、第1実施形態の変形例8と同様に、ユーザが、情報処理装置(評価装置、端末装置等)を操作して、工程の一部を実行することもできる。
【符号の説明】
【0150】
11…CPU(制御部)
16…表示部
18…記憶部
19…通信部
100…評価装置
200…第1端末装置
300…第2端末装置
400…第3端末装置
500…撮像装置
600…第4端末装置
700…洗濯機(洗浄機)
【実施例0151】
(洗濯工程)
試験対象衣類は、BODY DRYクルーネックTシャツ黒色(グンゼ株式会社 型番:CL2613H)とした。なお試験衣類としては本衣類に限定されず、様々な化学繊維製衣類を対象とすることができる。試験衣類2枚をミニ洗濯機(株式会社アルミス AK-M60)に入れ、水道水(加温無し)4L、衣料用洗濯洗剤(花王株式会社 アタック3X)を通常使用濃度で加えて10分間洗濯を行った。
【0152】
(洗濯液の分取)
前記洗濯終了後、試験衣類2枚をミニ洗濯機から取り出して軽く手で絞った。この絞った水も含め、槽内に残った洗濯水を十分攪拌して均一化したのち、スクリュー管(株式会社マルエム No.6)1本分の洗濯水を分取した。なお試験条件により、測定したい洗濯水の全量が、後記のシャーレ容量内に収まる量であれば、分取する必要はない。
【0153】
(測定サンプルの準備)
前記工程にて分取した洗濯水を、蓋を取ったシャーレ(アズワン株式会社 アズノールシャーレ 径90mm、高さ15mm)に全量注ぎ、さらにスクリュー管壁面を少量の水道水ですすいだ後、そのすすぎ水もシャーレに加えた。この際、目視可能な明らかにマイクロプラスチックに該当しない粗大な繊維、および夾雑物についてはピンセットを用いて手動で除去した。その後、MPF同士が重ならないよう、スポイト等で全体を軽く攪拌して均一化したのち、MPFがシャーレ底面に沈むまで1分程度静置した。
【0154】
(スキャン)
前記工程にて準備した測定サンプルを、家庭用スキャナー(セイコーエプソン株式会社 GT-X820)にてスキャンした。スキャン条件:「プロフェッショナルモード」、イメージタイプ:48Bitカラー、解像度:600dpi、アンシャープマスク効果「中」
【0155】
(画像処理によるカウント)
前記工程にて作成した画像ファイルをImage Jで読み込み、以下の画像処理工程を経てMPFの本数をカウントした。なお、以下の画像処理工程は、予め記憶された設定に基づき、コンピュータにより自動で行われた。
1.Image>Type>8Bit
2.Process>Subtract Background...>Rooling ball radius:50 pixels(Light backgroundにチェック)
3.シャーレの内側の解析したい領域を円形に選択し、Image>Adjust>Thresholdで閾値を自動で設定
4.Analyze>Analyze Particlesでsizeを「3-Infenity」に設定し、summarizeを出力
5.出力されたSummaryのcountの数値を取得
6.前記のcountの値に、洗濯液全量のうち分取した液量分の倍率をかけて全体の測定量とした。