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特開2024-47642含フッ素化合物およびそれを含む防汚剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047642
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】含フッ素化合物およびそれを含む防汚剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/28 20060101AFI20240401BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240401BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240401BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C08G18/28 085
C08G18/67 010
C08G18/48
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153247
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】519437777
【氏名又は名称】ユニケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(74)【代理人】
【識別番号】100186772
【弁理士】
【氏名又は名称】入佐 大心
(72)【発明者】
【氏名】田中 藤丸
(72)【発明者】
【氏名】上南 亮太
【テーマコード(参考)】
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4J034CA02
4J034CB01
4J034CD12
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DG04
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034QB19
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA07
4J034RA09
4J034RA10
4J034RA13
4J127AA01
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB042
4J127BB051
4J127BB101
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD412
4J127BD441
4J127BD471
4J127BE211
4J127BE21Y
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF121
4J127BF12Z
4J127BF191
4J127BF19X
4J127BF611
4J127BF61X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG081
4J127BG08Z
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG14Z
4J127BG251
4J127BG25Z
4J127BG271
4J127BG272
4J127BG27Y
4J127BG27Z
4J127BG281
4J127BG28X
4J127FA08
4J127FA56
(57)【要約】
【課題】パーフルオロポリエーテル鎖を含んでいても汎用溶剤や汎用ハードコート組成物への溶解性に優れ、かつ高度の防汚性を示す新たな含フッ素化合物、およびそれを含む紫外線硬化型の防汚用組成物ないし防汚剤を提供すること。
【解決手段】本発明として、例えば、次の一般式(1)で表される含フッ素化合物を挙げることができる。
【化1】
(式中、Rは、パーフルオロポリエーテル鎖を含む有機基を表す。Rは、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~4の炭化水素基を表す。Rは、(メタ)アクリル基を含む有機基を表す。MおよびMは、同一または異なって、鎖状または環状の炭化水素基を表す。nは、2~200の整数を表す。)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)で表される、含フッ素化合物。
【化1】
(式中、Rは、パーフルオロポリエーテル鎖を含む有機基を表す。
は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~4の炭化水素基を表す。
は、(メタ)アクリル基を含む有機基を表す。
およびMは、同一または異なって、鎖状または環状の炭化水素基を表す。
nは、2~200の整数を表す。)
【請求項2】
が次の一般式(2)で表される有機基である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【化2】
(式中、Rf1は、水素原子がフッ素原子により置換されている炭素数1~16のアルキル基を表す。PFPEは、次の一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖の一部を表す。
【化3】
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
Xは、2価の有機基を表す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の含フッ素化合物を1種以上含む、組成物。
【請求項4】
防汚用である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに重合禁止剤を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
さらに溶剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
さらに(メタ)アクリレートを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
さらに(メタ)アクリレートを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
さらに光重合開始剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
さらに光重合開始剤を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の組成物からなる硬化塗膜を有する、製造物。
【請求項12】
請求項10に記載の組成物からなる硬化塗膜を有する、製造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物の技術分野に属する。本発明は、汎用溶剤との相溶性に優れ、かつ防汚性や汚れの拭き取り性に優れた含フッ素化合物に関するものであり、またそれを含む組成物ないし防汚剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素系化合物は、フッ素鎖の持つ撥水性・撥油性・防汚性を利用し、各種工業製品・消費者製品に用いられてきた。これらフッ素系化合物の中には、(メタ)アクリル基のような架橋基を持つものもあり、ハードコート(塗料)への添加剤として用いられている。
フッ素鎖の中で、特に防汚性に優れているものとしては、パーフルオロポリエーテル構造を持つものが挙げられ、架橋基とパーフルオロポリエーテル基を併せ持つ添加剤も使用されている。しかしながら、パーフルオロポリエーテル基含油化合物は、汎用溶剤への溶解性に乏しいことから、より汎用溶剤に可溶で、かつ防汚性に優れた添加剤が求められてきた。
【0003】
パーフルオロポリエーテル基と(メタ)アクリル基を併せ持つ添加剤としては、例えば、特許文献1に開示されているようなジイソシアネートの3量体に、水酸基を持つパーフルオロポリエーテル化合物と水酸基を持つ(メタ)アクリル基含有化合物を反応させた化合物が知られている。
また、例えば、特許文献2には、ジイソシアネートとジオール、水酸基を持つ(メタ)アクリレート、水酸基を持つフッ素化合物とを反応させて得られる紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3963169号明細書
【特許文献2】国際公開公報2020/241647
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パーフルオロポリエーテル基と(メタ)アクリル基を併せ持つ、例えば特許文献1に記載の化合物は、汎用溶剤や汎用のハードコート組成物への溶解性に難があり、硬化後の塗膜ムラを生じるおそれがある。また、例えば、特許文献2に記載の発明では、水酸基を持つフッ素化合物のフッ素部分が防汚性に優れたパーフルオロポリエーテル鎖の場合、やはり汎用溶剤や汎用のハードコート組成物への溶解性に乏しい。
【0006】
本発明の課題は、したがって、パーフルオロポリエーテル鎖を含んでいても汎用溶剤や汎用ハードコート組成物への溶解性に優れ、かつ高度の防汚性を示す新たな含フッ素化合物、およびそれを含む紫外線硬化型の防汚用組成物ないし防汚剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、パーフルオロポリエーテル鎖の難溶性を補うためのスペーサー基を導入し、かつそのスペーサー基の影響により防汚効果が減少しないようバランスを取ることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明として、例えば、以下の態様を挙げることができる。
【0008】
[1]次の一般式(1)で表される、含フッ素化合物。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは、パーフルオロポリエーテル鎖を含む有機基を表す。
は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~4の炭化水素基を表す。
は、(メタ)アクリル基を含む有機基を表す。
およびMは、同一または異なって、鎖状または環状の炭化水素基を表す。
nは、2~200の整数を表す。)
[2]Rが次の一般式(2)で表される有機基である、上記[1]に記載の含フッ素化合物。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、Rf1は、水素原子がフッ素原子により置換されている炭素数1~16のアルキル基を表す。PFPEは、次の一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖の一部を表す。
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
Xは、2価の有機基を表す。)
【0015】
[3]上記[1]または[2]に記載の含フッ素化合物を1種以上含む、組成物。
[4]防汚用である、上記[3]に記載の組成物。
[5]さらに重合禁止剤を含む、上記[4]に記載の組成物。
[6]さらに溶剤を含む、上記[5]に記載の組成物。
[7]さらに(メタ)アクリレートを含む、上記[5]に記載の組成物。
[8]さらに(メタ)アクリレートを含む、上記[6]に記載の組成物。
[9]さらに光重合開始剤を含む、上記[7]に記載の組成物。
[10]さらに光重合開始剤を含む、上記[8]に記載の組成物。
【0016】
[11]上記[9]に記載の組成物からなる硬化塗膜を有する、製造物。
[12]上記[10]に記載の組成物からなる硬化塗膜を有する、製造物。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る含フッ素化合物(以下、「本発明化合物」という。)は、汎用溶剤や汎用ハードコート組成物への溶解性に優れると共に、優れた紫外線硬化型の防汚作用を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。
1 本発明化合物について
本発明化合物は、次の一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、Rは、パーフルオロポリエーテル鎖を含む有機基を表す。
は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~4の炭化水素基を表す。
は、(メタ)アクリル基を含む有機基を表す。
およびMは、同一または異なって、鎖状または環状の炭化水素基を表す。
nは、2~200の整数を表す。)
【0021】
本発明においては、パーフルオロポリエーテル基の難溶性を補うためのスペーサー基を導入し、かつそのスペーサー基の影響により防汚効果が減少しないようなバランスを取っているが、そのスペーサーに相当する部分は「-(RO)n-」である。当該スペーサー部分とパーフルオロポリエーテル鎖とのバランスを取ることにより、溶剤溶解性と防汚性を両立することを可能としている。
【0022】
に係る「パーフルオロポリエーテル鎖を含む有機基」としては、例えば、次の一般式(2)で表される有機基を挙げることができる。
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、Rf1は、水素原子がフッ素原子により置換されている炭素数1~16のアルキル基を表す。PFPEは、次の一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖の一部を表す。
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
Xは、2価の有機基を表す。)
【0027】
パーフルオロポリエーテル鎖は、式(2)中、Rf1-PFPE-で表される。
a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であるが、2~200が好ましく、5~120がより好ましい。
Rf1に係る「水素原子がフッ素原子により置換されている炭素数1~16のアルキル基」のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、を挙げることができる。この中、炭素数1~4のアルキルが好ましく、メチル、エチル、プロピル、がより好ましい。
【0028】
当該パーフルオロポリエーテル鎖の平均分子量としては、例えば、1000~5000の範囲内を挙げることができ、好ましくは2000~4000の範囲内である。当該平均分子量が1000未満であると防汚作用が十分でないおそれがあり、5000より大きくなると溶解性が減少するおそれがある。
【0029】
Xに係る「2価の有機基」としては、PFPEと酸素原子とを連結することができる有機基であれば特に制限されないが、例えば、メチレン基、アミド基、エステル基、これらの組み合わせによる2価の基を挙げることができる。この中、メチレン基、アミド基が好ましい。
に係る具体的なパーフルオロポリエーテル鎖を含む有機基としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
【0030】
【化7】
【0031】
に係る「直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~4の炭化水素基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルを挙げることができる。この中、イソプロピルが好ましい。
に係る「(メタ)アクリル基を含む有機基」としては、例えば、エチル(メタ)アクリル基、ポリエトキシエチル(メタ)アクリル基、ポリプロポキシプロピル(メタ)アクリル基、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル基を挙げることができる。この中、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル基、エチル(メタ)アクリル基が好ましい。ここで、(メタ)アクリル基とは、メタクリル基またはアクリル基を意味する。
【0032】
およびMに係る「鎖状または環状の炭化水素基」としては、例えば、テトラメチレン、ヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、1,4-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロへキシルメタン、イソホロン、トリレン、キシリレン、ジフェニルメタン、m-フェニレン、ナフタレンを挙げることができる。この中、ヘキサメチレンが好ましい。
nは2~200の整数であるが、好ましくは10~100である。
【0033】
2 本発明化合物の製造方法
本発明化合物は、水酸基とパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物、ジイソシアネート化合物、ポリアルキレングリコール、および水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって製造することができる。当該反応合成は常法により行うことができる。
【0034】
具体的には、例えば、合成順序として、まずジイソシアネート化合物とポリアルキレングリコールを、モル比2/1(ジイソシアネート化合物/ポリアルキレングリコール)にジラウリン酸ジブチルスズ等のスズ触媒を反応器に添加して、60~70℃で1~2時間反応し、次に水酸基を有する(メタ)アクリレートと重合禁止剤を反応器に添加し、60~70℃で1~2時間反応し、最後に、水酸基とパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物を反応器に添加して、60~70℃で1~2時間反応させるのがよいが、必ずしもこれにとらわれることはない。各反応の追跡は、例えば、赤外吸収分析(IR)でイソシアネートの吸収の減少によって行うことができる。
【0035】
上記反応に用い得る重合禁止剤としては、例えば、当該技術分野で使用されているものであれば特に制限はなく、例えば、ヒドロキノン、1,4-ベンゾキノン、4-メトキシフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、フェノチアジン、4-tert-ブチルピロカテコールなどが挙げられる。当該重合禁止剤は、単独でも任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、原料の4化合物について詳述する。
【0036】
2.1 水酸基とパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物
標記化合物としては、例えば、次の一般式(2a)で表される化合物を挙げることができる。
【0037】
【化8】
【0038】
(式中、Rf1、PFPE、およびXは前記と同義。)
具体的な当該化合物としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
【化9】
【0040】
当該化合物は、単独でも任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
2.2 ジイソシアネート化合物
本発明に係るジイソシアネート化合物とは、分子内にイソシアネート基を2つ持つ化合物であり、例えば、鎖状脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物を挙げることができ、そのいずれでもよい。
【0042】
代表的な鎖状脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
代表的な脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。
【0044】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記ジイソシアネート化合物は、単独でも任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
2.3 ポリアルキレングリコール
本発明に係るポリアルキレングリコールとは、HO(RO)nH(式中、R、およびnは前記と同義。)であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを挙げることができる。これらは単独でも任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ポリプロピレングリコールを用いると、溶剤溶解性をより向上させることができる。
【0046】
当該ポリアルキレングリコールの平均分子量は、600~6000の範囲内であることが適当であり、好ましくは1000~4000の範囲内である。
前述のパーフルオロポリエーテル化合物とのバランスでは、パーフルオロポリエーテル化合物の平均分子量/ポリアルキレングリコールの平均分子量が0.5~2の範囲内であることが好ましい。
【0047】
2.4 水酸基を有する(メタ)アクリレート
本発明に係る水酸基を有する(メタ)アクリレートとは、分子内に1つ以上の水酸基と1つ以上の(メタ)アクリル基を併せ持つ化合物である。ここで、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートまたはアクリレートを意味し、(メタ)アクリル基は前記と同義である。
【0048】
当該(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ) アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ( メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
当該(メタ)アクリレートは、単独でも任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
3 本発明に係る組成物(防汚剤)
本発明に係る組成物は、本発明化合物を1種以上含む。本発明化合物は、防汚剤として用いることができる。以下、本発明に係る組成物を「本発明組成物」または「本発明組成物(防汚剤)」という。
【0051】
本発明組成物(防汚剤)は、必要によって、溶剤に溶解した状態で供することができる。かかる溶剤は、本発明化合物を溶解させるものならば特に制限されないが、代表的には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル等が挙げられる。また、フッ素系溶剤も使用可能であり、そのようなフッ素系溶剤として、例えば、パーフルオロベンゼン、メタキシレンヘキサフロリド等が挙げられる。
【0052】
本発明組成物(防汚剤)は、(メタ)アクリレートモノマーに溶解することも可能である。用い得る(メタ)アクリレートに特に制限はなく、本発明化合物と相溶性のあるものであればよい。例えば、一官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ベンジルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0053】
また、これらに前述の溶剤を加えることも可能であり、本発明組成物(防汚剤)を市販のハードコート用製品に添加することもできる。
【0054】
本発明組成物(防汚剤)には、光重合開始剤を含むことができる。かかる光重合開始剤には特に制限はなく、光重合開始剤として、例えば、公知の紫外線硬化用の光重合開始剤を挙げることができる。具体的には、例えば、アセトフェノン系重合開始剤、フォスフィンオキサイド系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0055】
当該光重合開始剤の含有量は、硬化性および透明性の観点から、本発明組成物(防汚剤)の不揮発成分全量に対して、0.1質量%以上15.0質量%以下が適当であり、好ましくは1.0質量%以上12.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0056】
本発明組成物(防汚剤)には、さらに、適当な添加剤を含むことができる。かかる添加剤として、例えば、帯電防止剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、レベリング剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、可塑剤等を挙げることができる。これら1種以上を必要に応じて適量配合することができる。
【0057】
4 本発明に係る製造物
本発明組成物(防汚剤)は、適当な基材に塗布することができる。本発明組成物(防汚剤)を基材に塗布することにより基材表面に硬化塗膜を形成することができる。このように本発明組成物(防汚剤)が基材に塗布され、基材表面に硬化塗膜が施された製造物も本発明に含めることができる。本発明に係る製造物は、最終製品であってもよいし、最終製品の製造のために用いられる、例えば、部品や原材料等であってもよい。
【0058】
本発明組成物(防汚剤)を塗布可能な基材ないし本発明組成物(防汚剤)が塗布され硬化塗膜が施された製品としては、例えば、ガラス、樹脂(天然樹脂または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ) アクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂が挙げられ、その形態としては、例えば、板状、フィルム状、その他の形態が挙げられる。)、金属(アルミニウム、銅、鉄等の金属単体または合金等の複合体であってよい)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材、建築部材、医療機器、医療材料等、その他任意の適当な材料の組み合わせなどが挙げられる。
【0059】
なお、例えば、製造すべき製品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチック等であってもよい。
【0060】
当該基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、位相差フィルム、および液晶表示モジュール等を有していてもよい。
【実施例0061】
以下に実施例等を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
500mL容フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート6.72g、分子量2000のポリプロピレングリコール40g、メタキシレンヘキサフロリド50gを入れ、60℃に加熱し、ジブチルスズジラウレート0.2gを加えて、60~70℃で2時間撹拌した。次に、ライトアクリレート(登録商標、以下同じ。)PE-3A(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートを60重量%含有)10gとメタキシレンヘキサフロリド10gを加えて、60~70℃で2時間撹拌した。次に、下記構造式Aのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量2000)の40gとメタキシレンヘキサフロリド40gを加えて、60~70℃で2時間撹拌した。
冷却後、溶剤を留去して本発明化合物1を得た。
【0063】
【化10】
【0064】
[実施例2]
構造式Aのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量2000)の40gの代わりに、構造式Bのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量1700)の34gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物2を得た。
【0065】
【化11】
【0066】
[実施例3]
分子量2000のポリプロピレングリコール40gの代わりに、分子量3000のポリプロピレングリコール60gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物3を得た。
【0067】
[実施例4]
構造式Aのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量2000)の40gの代わりに、構造式Aのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量3000)の60gを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、本発明化合物4を得た。
【0068】
[実施例5]
ヘキサメチレンジイソシアネート6.72gの代わりに、1,3-ビス(シアナトメチル)シクロヘキサンの7.76gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物5を得た。
【0069】
[実施例6]
ヘキサメチレンジイソシアネート6.72gの代わりに、ジシクロへキシルメタン4,4’-ジイソシアネート10.48gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物6を得た。
【0070】
[実施例7]
ヘキサメチレンジイソシアネート6.72gの代わりに、イソホロンジイソシアネート8.89gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物7を得た。
【0071】
[実施例8]
ライトアクリレートPE-3Aの10gの代わりに、ヒドロキシエチルメタクリレートの2.6gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物8を得た。
【0072】
[実施例9]
構造式Aのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量2000)の40gの代わりに、構造式Aのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量1000)の20gを、分子量2000のポリプロピレングリコール40gの代わりに分子量1000のポリプロピレングリコール20gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物9を得た
【0073】
[実施例10]
分子量2000のポリプロピレングリコール40gの代わりに、分子量400のポリプロピレングリコール8gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、本発明化合物10を得た。
【0074】
[比較例1]
500mL容フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート6.72g、プロピレングリコール1.52g、メチルエチルケトン12gを入れ、60℃に加熱し、ジブチルスズジラウレート0.2gを加えて、60~70℃で2時間撹拌した。次に、ライトアクリレートPE-3A(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートを60重量%含有)10gとメチルエチルケトン10gを加えて、60~70℃で2時間撹拌した。次に、構造式Aのパーフルオロポリエーテル基と水酸基を含有する化合物(平均分子量2000)の40gとメタキシレンヘキサフロリド40gを加えて、60~70℃で2時間撹拌したところ、白色の不溶物を生じたので、不溶物をろ過後、溶剤を留去して比較化合物1を得た。
【0075】
[試験例1]溶剤溶解性
本発明化合物1~10、比較化合物1を、それぞれ5重量%の濃度になるようにメチルエチルケトン、酢酸エチルを加えて、溶解性を確認した。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
[試験例2]防汚性
紫外線硬化樹脂であるビームセット(登録商標)575CB(荒川化学工業株式会社製)10gに、光開始剤OMNIRAD(登録商標)184(IGM RESINS B.V.製)100mgを加え、これに本発明化合物1~10、比較化合物1を100mg加えてよく撹拌し、各組成物を得た。
スライドガラス上に、上記組成物をバーコーターで均一に塗布し、窒素雰囲気化下、365nmのUV光を含む光線を500mJ/cm2の強度で照射し、硬化させた。
この硬化膜の表面状態を観察した。また、黒色油性ペン(商品名;マッキー(登録商標)、ゼブラ株式会社製)を用いて表面に線を引いて、その弾きを観察した。その結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明化合物ないし本発明組成物は、汎用溶剤や汎用ハードコート組成物への溶解性に優れると共に、優れた紫外線硬化型の防汚作用を有するから、例えば、紫外線硬化型の防汚剤として有用である。