(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047663
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240401BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20240401BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/095
B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153282
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】藤村 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA32
3D241CE05
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC37Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL09
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】移動体にとって最適な目標軌道を生成すること。
【解決手段】移動体の周辺状況を認識する認識部と、認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定するリスク領域設定部と、前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成する目標軌道生成部と、生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させる走行制御部と、を備え、前記目標軌道生成部は、前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成する、移動体制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺状況を認識する認識部と、
認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定するリスク領域設定部と、
前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成する目標軌道生成部と、
生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させる走行制御部と、を備え、
前記目標軌道生成部は、前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成する、
移動体制御装置。
【請求項2】
前記目標軌道生成部は、前記3本以上の仮軌道を、少なくとも前記移動体の進行方向上に1本と、前記進行方向に関して鉛直方向かつ前記移動体の左右に2本設定する、
請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項3】
前記目標軌道生成部は、前記左右の仮軌道を、前記移動体の進行方向上に設定された前記仮軌道を基準にして円弧として生成する、
請求項2に記載の移動体制御装置。
【請求項4】
前記目標軌道生成部は、前記円弧の長さを前記移動体の速度に応じて変化させる、
請求項3に記載の移動体制御装置。
【請求項5】
前記目標軌道生成部は、設定された前記リスク領域に基づいて、前記3本以上の仮軌道のうち、前記少なくとも一つの観測点のうち最も前記リスク値が低い観測点を含む仮軌道を前記目標軌道として決定する、
請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項6】
前記目標軌道生成部は、決定された前記目標軌道を、前記3本以上の仮軌道のうちの中央の仮軌道として設定し、設定された前記中央の仮軌道から前記3本以上の仮軌道のうちの左右の仮軌道を生成するサイクルを繰り返す、
請求項5に記載の移動体制御装置。
【請求項7】
前記3本以上の仮軌道のうちの中央の仮軌道のリスク値には、前記リスク値を低減する係数が乗算され、
前記目標軌道生成部は、設定された前記リスク領域に基づいて、前記3本以上の仮軌道のうち、前記少なくとも一つの観測点のうち最も前記リスク値が低い観測点を含む仮軌道を前記目標軌道として決定する、
請求項5に記載の移動体制御装置。
【請求項8】
前記目標軌道生成部は、前記3本以上の仮軌道のうちの中央の仮軌道の曲率が閾値以下である場合、前記中央の仮軌道を前記目標軌道として決定する、
請求項5に記載の移動体制御装置。
【請求項9】
移動体の周辺状況を認識する認識部と、
認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定するリスク領域設定部と、
前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成する目標軌道生成部と、
生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させる走行制御部と、を備え、
前記目標軌道生成部は、前記移動体の進行方向上に一点の観測点と、前記進行方向の鉛直方向かつ前記移動体の進行方向に関して左右に二点の観測点とを設定し、前記リスク領域と前記観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成する、
移動体制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、
移動体の周辺状況を認識し、
認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定し、
前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成し、
生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させ、
前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成する、
移動体制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
移動体の周辺状況を認識させ、
認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定させ、
前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成させ、
生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させ、
前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の進行方向に存在する障害物を特定し、特定された障害物を回避するように当該移動体の走行を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自車両に搭載されたカメラによって撮像された画像情報に基づいて、自車両の周辺領域に異なるコストを設定し、当該コストが小さくなるように自車両の目標軌道を生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、コストを最小化するように目標軌道を探索する過程で、当該目標軌道が局所的最小値(local minimum)を取り、移動体にとって最適な目標軌道を生成できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、移動体にとって最適な目標軌道を生成することができる、移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る移動体制御装置は、移動体の周辺状況を認識する認識部と、認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定するリスク領域設定部と、前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成する目標軌道生成部と、生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させる走行制御部と、を備え、前記目標軌道生成部は、前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記目標軌道生成部は、前記3本以上の仮軌道を、少なくとも前記移動体の進行方向上に1本と、前記進行方向に関して鉛直方向かつ前記移動体の左右に2本設定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記目標軌道生成部は、前記左右の仮軌道を、前記移動体の進行方向上に設定された前記仮軌道を基準にして円弧として生成するものである。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記目標軌道生成部は、前記円弧の長さを前記移動体の速度に応じて変化させるものである。
【0010】
(5):上記(1)の態様において、前記目標軌道生成部は、設定された前記リスク領域に基づいて、前記3本以上の仮軌道のうち、前記少なくとも一つの観測点のうち最もリスク値が低い観測点を含む仮軌道を前記目標軌道として決定するものである。
【0011】
(6):上記(5)の態様において、前記目標軌道生成部は、決定された前記目標軌道を、前記3本以上の仮軌道のうちの中央の仮軌道として設定し、設定された前記中央の仮軌道から前記3本以上の仮軌道のうちの左右の仮軌道を生成するサイクルを繰り返すものである。
【0012】
(7):上記(5)の態様において、前記3本以上の仮軌道のうちの中央の仮軌道のリスク値には、前記リスク値を低減する係数が乗算され、前記目標軌道生成部は、設定された前記リスク領域に基づいて、前記3本以上の仮軌道のうち、前記少なくとも一つの観測点のうち最もリスク値が低い観測点を含む仮軌道を前記目標軌道として決定するものである。
【0013】
(8):上記(5)の態様において、前記目標軌道生成部は、前記3本以上の仮軌道のうちの中央の仮軌道の曲率が閾値以下である場合、前記中央の仮軌道を前記目標軌道として決定するものである。
【0014】
(9):この発明の別の態様に係る移動体制御装置は、移動体の周辺状況を認識する認識部と、認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定するリスク領域設定部と、前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成する目標軌道生成部と、生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させる走行制御部と、を備え、前記目標軌道生成部は、前記移動体の進行方向上に一点の観測点と、前記進行方向の鉛直方向かつ前記移動体の進行方向に関して左右に二点の観測点とを設定し、前記リスク領域と前記観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成するものである。
【0015】
(10):この発明の別の態様に係る移動体制御方法は、コンピュータが、移動体の周辺状況を認識し、認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定し、前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成し、生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させ、前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成するものである。
【0016】
(11):この発明の別の態様に係るプログラムは、コンピュータに、移動体の周辺状況を認識させ、認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定させ、前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成させ、生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させ、前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成させるものである。
【発明の効果】
【0017】
(1)~(11)の態様によれば、移動体にとって最適な目標軌道を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る移動体制御装置を利用した車両システム1の構成図である。
【
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
【
図3】リスク領域設定部132によって実行される処理を説明するための図である。
【
図4】行動計画生成部140によって実行される処理を説明するための図である。
【
図5】行動計画生成部140によって決定される目標軌道の一例を示す図である。
【
図6】目標軌道の決定に応じて後方伝播される曲率の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る移動体制御装置によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。本発明における移動体とは、四輪車両や二輪車両、マイクロモビリティ、ロボット等である。以下の説明において移動体は四輪車両であるものとする。
【0020】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る移動体制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0021】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0022】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0023】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0024】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0025】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。
【0026】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0027】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0028】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0029】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0030】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0031】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0032】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステアリングホイール、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0033】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0034】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。第1制御部120は、「移動体制御装置」の一例である。
【0035】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0036】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0037】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。本実施形態において、認識部130はリスク領域設定部132を含むが、リスク領域設定部132の機能の詳細は後述する。
【0038】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0039】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。行動計画生成部140は、「目標軌道生成部」の一例である。
【0040】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0041】
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0042】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0043】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0044】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0045】
[動作]
次に、リスク領域設定部132および行動計画生成部140によって実行される処理について説明する。
図3は、リスク領域設定部132によって実行される処理を説明するための図である。
図3において、符号Pは、交通参加者である歩行者を示し、符号Lは、自車両Mが走行する車線の道路境界を示し、符号RA1およびRA2は、リスク領域設定部132によって設定されたリスク領域を示す。
【0046】
リスク領域設定部132は、認識部130によって認識された自車両Mの周辺状況に基づいて、移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を周辺状況の位置に対応付けてリスク領域RAとして設定する。より具体的には、リスク領域設定部132は、自車両Mの周辺に存在する異なる種類の物標を識別し、識別された物標に近いほどより大きな値(すなわち、否定的な値)を取るリスク値Rを当該物標の周辺領域に設定することによって、リスク領域RAとして設定する。例えば、
図3の場合、リスク領域設定部132は、乗員Pを中心とする円領域であって、当該乗員Pに近いほど、より大きなリスク値Rを取る円領域をリスク領域RA1として設定している。さらに、
図3の場合、リスク領域設定部132は、道路境界Lに近いほど、より大きなリスク値Rを取るグラデーション領域をリスク領域RA2として設定している。
【0047】
行動計画生成部140は、目標軌道を構成する軌道点ごとにリスク値を算出し、算出されたリスク値の総和が閾値以上である場合には、目標軌道が当該閾値未満となるように、目標軌道を修正する。例えば、
図3の場合、行動計画生成部140は、円弧モデルC
1(例えば、軌道点Z
m11、Z
m12、Z
m13を含む)、円弧モデルC2(例えば、軌道点Z
m2を含む)、および円弧モデルC3(例えば、軌道点Z
m3を含む)を接続することによって生成した目標軌道を構成する各軌道点についてリスク値を算出し、算出されたリスク値の総和が閾値以上である場合には、当該目標軌道を修正する。より具体的には、例えば、行動計画生成部140は、算出されたリスク値の総和が閾値未満となるまで、各円弧モデルの曲率を探索的に修正することによって、目標軌道を修正する。
【0048】
しかしながら、上述した
図3の手法を用いた場合、各円弧モデルの曲率を探索的に修正する過程で、目標軌道が局所的最小値(local minimum)を取り、必ずしも、大域的に最適な目標軌道を取得できない場合がある。例えば、
図3の場合、円弧モデルC3の曲率を軌道点Z
m3のリスク値が減少するように修正することで、円弧モデルC3が歩行者Pと道路境界Lとの間の空間を通過するように円弧モデルC3’に修正される場合がある。しかしながら、この場合、自車両Mは、歩行者Pと道路境界Lとの間のごく狭い空間を走行するように制御されることとなり、好ましくない。このような事情を背景にして、本実施形態では、行動計画生成部140は、円弧モデルC
1の終点Z
m13を基準にして、円弧モデルC2および円弧モデルC3について複数の仮軌道を生成し、生成された仮軌道上の軌道点ごとに算出されたリスク値の総和が最も低い仮軌道を目標軌道として選択する。
【0049】
図4は、行動計画生成部140によって実行される処理を説明するための図である。
図4において、符号C
2_1、C
2_2、C
2_3は円弧モデルC
2の仮軌道を表し、符号C
3_1、C
3_2、C
2_3は円弧モデルC3の仮軌道を表す。
図4に示す通り、行動計画生成部140は、目標軌道の仮軌道として、3つの仮軌道、すなわち、円弧モデルC
1と、円弧モデルC
2_1と、円弧モデルC
3_1とを接続した第1の仮軌道TT1、円弧モデルC
1と、円弧モデルC
2_2と、円弧モデルC
3_2とを接続した第2の仮軌道TT2、および円弧モデルC
1と、円弧モデルC
2_3と、円弧モデルC
3_3とを接続した第3の仮軌道TT3を生成している。仮軌道TT1は、軌道点として、軌道点Z
m11、Z
m12、Z
m13、Z
m2_1、Z
m3_1を含み、仮軌道TT2は、軌道点として、軌道点Z
m11、Z
m12、Z
m13、Z
m2_2、Z
m3_2を含み、仮軌道TT3は、軌道点として、軌道点Z
m11、Z
m12、Z
m13、Z
m2_3、Z
m3_3を含む。このように、行動計画生成部140は、自車両Mの前方の所定箇所(すなわち、軌道点Z
m13)で分岐する3本以上の仮軌道を設定し、設定された仮軌道のそれぞれの軌道点(「観測点」の一例である)のリスク値の合計を算出し、最もリスク値の合計が低い軌道点を含む仮軌道を目標軌道として決定する。以下、仮軌道の設定について、より詳細に説明する。
【0050】
まず、行動計画生成部140は、中央の仮軌道TT2(これは、
図3に示した従来の仮軌道と同一であってもよく、また、前回の制御サイクルにおける目標軌道である。)の軌道点Z
m2_2を、第2円弧モデルC
2_2を基準にして、所定角度θ
m2_2+Φ分、左右方向に回転させる。ここで、Φはオフセット値である。行動計画生成部140は、軌道点Z
m2_2を、第2円弧モデルC
2_2を基準にして、所定角度θ
m2_2+Φ分、左方向に回転させることによって得られる軌道点を軌道点Z
m2_1として設定し、軌道点Z
m2_2を、第2円弧モデルC
2_2を基準にして、所定角度θ
m2_2+Φ分、右方向に回転させることによって得られる軌道点を軌道点Z
m2_3として設定する。行動計画生成部140は、軌道点Z
m13と、設定された軌道点Z
m2_1とを接続して円弧モデルC
2_1を生成し、軌道点Z
m13と、設定された軌道点Z
m2_3とを接続して円弧モデルC
2_3を生成する。
【0051】
次に、行動計画生成部140は、円弧モデルC2_1の接線TL1との間のなす角度が所定角度θm2_2-Φとなる位置に、反転させた円弧モデルC2_1を配置することによって、円弧モデルとしての円弧モデルC3_1を得る。このとき、円弧モデルC2_1上の軌道点Zm2_1に対応する円弧モデルC3_1上の軌道点がZm3_1となる。同様に、行動計画生成部140は、円弧モデルC2_2の接線TL2との間のなす角度が所定角度θm2_2-Φとなる位置に、反転させた円弧モデルC2_2を配置することによって、円弧モデルとしての円弧モデルC3_2を得る。このとき、円弧モデルC2_2上の軌道点Zm2_3に対応する円弧モデルC3_3上の軌道点がZm3_3となる。次に、行動計画生成部140は、円弧モデルC1と、円弧モデルC2_1と、円弧モデルC3_1とを接続して仮軌道TT1を取得し、円弧モデルC1と、円弧モデルC2_3と、円弧モデルC3_3とを接続して仮軌道TT3とを取得する。これにより、仮軌道TT2に基づいて、仮軌道TT1と仮軌道TT3とが生成され、3つの仮軌道を得る。
【0052】
上記のようにして得られた3つの仮軌道のうち、仮軌道TT1と仮軌道TT3を生成するための基準として用いられた仮軌道TT2は、自車両Mの進行方向に延伸する仮軌道であり、仮軌道TT1は、当該進行方向に関して鉛直方向かつ自車両Mの左方に延伸する仮軌道であり、仮軌道TT3は、当該進行方向に関して鉛直方向かつ自車両Mの右方に延伸する仮軌道である。すなわち、行動計画生成部140は、軌道点Zm13を基準にこれら異なる方向に3本以上の仮軌道を生成し、生成した仮軌道のうち、最もリスク値の合計が低い軌道点を含む仮軌道を目標軌道として決定する。これにより、目標軌道が局所的最小値を取る可能性を低減し、自車両Mにとって、大域的に最適な目標軌道を生成することができる。
【0053】
図5は、行動計画生成部140によって決定された目標軌道の一例を示す図である。
図5の上部に示す状況において、仮軌道TT1に含まれる軌道点Z
m3_1について算出されるリスク値と、仮軌道TT2に含まれる軌道点Z
m3_2について算出されるリスク値はそれぞれ正の値を取る一方、仮軌道TT3に含まれる軌道点Z
m11、Z
m12、Z
m13、Z
m2_3、Z
m3_3について算出されるリスク値はゼロとなる。そのため、行動計画生成部140は、仮軌道TT3を、最もリスク値の合計が低い軌道点を含む仮軌道として特定し、目標軌道として決定する。
【0054】
行動計画生成部140は、目標軌道として決定された仮軌道を、次回の制御サイクルにおける中央の仮軌道として設定する。すなわち、
図5の下部に示す通り、行動計画生成部140は、目標軌道として決定された仮軌道TT3を、次回の制御サイクルにおける中央の仮軌道TT2として設定し、それに応じて、新たに設定された仮軌道TT2の軌道点を、上述した通り、所定角度θ
m2_2+Φ分、左右方向に回転させて円弧モデルC
2_1およびC
2_3を生成し、円弧モデルC
2_1およびC
2_3の接線TL1およびTL2との間のなす角度が所定角度θ
m2_2-Φとなる位置に、反転させた円弧モデルC
2_1およびC
2_3(すなわち、円弧モデルC
3_1およびC
3_3)を配置することによって、新たな仮軌道TT1およびTT3を得る。
【0055】
行動計画生成部140は、同時に、目標軌道として決定された仮軌道を構成する円弧モデルの曲率を後方伝播させることによって、当該仮軌道を補正する。
図6は、目標軌道の決定に応じて後方伝播される曲率の一例を示す図である。
図6の上部は、
図5の下部と同一の場面を表す。この場合、行動計画生成部140は、
図6の下部に示す通り、目標軌道TT2を構成する円弧C
2_2の曲率を円弧C
1の曲率に伝播させる。ここで、伝播とは、自車両Mが円弧C
2_2に沿ってスムーズに走行可能となるように、直後の円弧(すなわち、円弧C
1)の曲率を直前の円弧(すなわち、円弧C
2_2)の曲率に合わせ込む(近づける)ことを意味する。行動計画生成部140は、このようにして、最終的な目標軌道TT2を得る。さらに続けて、行動計画生成部140は、目標軌道TT2に対して、例えば、extremum seeking control等の極値探索制御を実行して、当該目標軌道TT2を補正して、最終的な目標軌道TT2として確定させても良い。
【0056】
なお、上記の説明において、行動計画生成部140は、生成した仮軌道について算出されたリスク値の比較を行い、最もリスク値の合計が低い軌道点を含む仮軌道を目標軌道として決定している。この構成において、行動計画生成部140は、中央の仮軌道のリスク値に、当該リスク値を低減する係数を乗算した上で、リスク値の比較を行い、最もリスク値の合計が低い軌道点を含む仮軌道を目標軌道として決定してもよい。これは、上述した通り、中央の仮軌道は、前回の制御サイクルにおける目標軌道として定義されるものであるため、左右の仮軌道のリスク値と大きさが近い場合には、目標軌道を前回の制御サイクルから変更することなく、今回の制御サイクルにおいても維持することが走行の安定性の観点で好ましいからである。
【0057】
さらに、行動計画生成部140は、リスク値の比較に先立って、中央の仮軌道の曲率が閾値以内であるか否かを判定し、中央の仮軌道の曲率が閾値より大きいと判定された場合にのみ、他の仮軌道のリスク値との比較を行ってもよい。これは、中央の仮軌道の曲率が閾値以内である場合には、中央の仮軌道を生成する前提として用いられたリスク値(すなわち、中央方向のリスク値)が低いことを意味しており、自車両Mにとって軌道を変更する必要性が低く、中央の仮軌道を目標軌道として維持することが走行の安定性の観点で好ましいからである。このため、代替的に、行動計画生成部140は、中央の仮軌道のリスク値が閾値以内であるか否かを判定し、中央の仮軌道のリスク値が閾値より大きいと判定された場合にのみ、他の仮軌道のリスク値との比較を行ってもよい。
【0058】
さらに、上記の説明において、仮軌道を構成する各円弧モデルの長さは一定値であることを前提としていた。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、例えば、行動計画生成部140は、自車両Mの速度に応じて、各円弧モデルの長さを変化させてもよい。より具体的には、行動計画生成部140は、自車両Mの速度が大きくなればなるほど各円弧モデルの長さを大きくする一方、自車両Mの速度が小さくなればなるほど各円弧モデルの長さを小さくしてもよい。これは、自車両Mの速度が大きくなればなるほど、自車両Mはより遠方のリスク値を事前に算出する必要が生じるからである。このような構成により、自車両Mの速度に応じて、適切な長さの目標軌道を生成することができる。
【0059】
さらに、上記では、説明の簡潔性のために、行動計画生成部140が、ある時点における各軌道点のリスク値の合計に基づいて、仮軌道の中から目標軌道を決定する例について説明した。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、行動計画生成部140が、ある周期(例えば、数秒)における複数の時点における各軌道点のリスク値の合計を算出してもよい。その場合も同様に、行動計画生成部140は、複数の時点にわたって合計されたリスク値が最小となる仮軌道を、当該周期における目標軌道として決定する。このような構成により、より多くのデータに基づいて各仮軌道のリスク値を算出および比較することにより、より信頼性の高い目標軌道を生成することができる。
【0060】
さらに、上記の説明では、行動計画生成部140が三本の仮軌道を生成する例について説明した。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、行動計画生成部140は、4本以上の仮軌道を生成してもよい。その場合、行動計画生成部140は、まず、基準となる仮軌道(上記のTT2に相当)を指定し、基準となる仮軌道の軌道点を、所定角度θ+Φずつ間隔をあけて左右方向に回転させて円弧モデルを生成し、生成された円弧モデルの接線との間のなす角度が所定角度θ-Φとなる位置に、反転させた当該円弧モデルを配置することによって、他の仮軌道を生成することができる。
【0061】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る移動体制御装置によって実行される処理の流れについて説明する。
図7は、本実施形態に係る移動体制御装置によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、移動体制御装置によって所定の制御サイクルで繰り返し実行されるものである。
【0062】
まず、認識部130は、物体認識装置16から取得した情報に基づいて、自車両Mの周辺状況を認識する(ステップS100)。次に、リスク領域設定部132は、認識部130によって認識された周辺状況に基づいて、リスク領域を設定する(ステップS102)。次に、行動計画生成部140は、前回の制御サイクルの目標軌道を中央の仮軌道として用いて計3本の仮軌道を生成し、生成した仮軌道ごとにリスク値の合計を算出する(ステップS104)。
【0063】
次に、行動計画生成部140は、中央の仮軌道について算出されたリスク値を低減する係数を当該リスク値に乗算する(ステップS106)。次に、行動計画生成部140は、中央の仮軌道のリスク値が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS108)。中央の仮軌道のリスク値が閾値以下であると判定された場合、行動計画生成部140は、中央の仮軌道を今回の制御サイクルの目標軌道として決定する(目標軌道としての設定を継続する)(ステップS110)。
【0064】
一方、中央の仮軌道のリスク値が閾値より大きいと判定された場合、行動計画生成部140は、仮軌道のうち、リスク値の合計が最小となる仮軌道を選択し、目標軌道として決定する(ステップS112)。次に、行動計画生成部140は、目標軌道として決定された仮軌道を構成する各円弧モデルの曲率を後方伝播する(ステップS114)次に、行動計画生成部140は、目標軌道として決定された仮軌道を、次回の制御サイクルにおける中央の仮軌道として設定する(ステップS116)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0065】
以上の通り説明した本実施形態によれば、移動体の周辺状況を認識し、認識された周辺状況に基づいて、移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定し、移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成し、生成された目標軌道に沿って、移動体を走行させ、移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、リスク領域と少なくとも一つの観測点とに基づいて、目標軌道を生成する。これにより、移動体にとって最適な目標軌道を生成することができる。
【0066】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
移動体の周辺状況を認識し、
認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体が避けて走行するべき度合いを示す指標値であるリスク値を前記周辺状況の位置に対応付けてリスク領域として設定し、
前記移動体が将来走行する経路を示す目標軌道を生成し、
生成された前記目標軌道に沿って、前記移動体を走行させ、
前記移動体の前方の所定箇所で分岐する3本以上の仮軌道のそれぞれに少なくとも一つの観測点を設定し、前記リスク領域と前記少なくとも一つの観測点とに基づいて、前記目標軌道を生成する、
ように構成されている、移動体制御装置。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 LIDAR
16 物体認識装置
100 自動運転制御装置
120 第1制御部
130 認識部
132 リスク領域設定部
140 行動計画生成部
160 第2制御部
162 取得部
164 速度制御部
166 操舵制御部