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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047684
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04303 20160101AFI20240401BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M8/04303
H01M8/0606
H01M8/04228
H01M8/04746
H01M8/04701
H01M8/0432
H01M8/04858
H01M8/0438
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153312
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 すみか
(72)【発明者】
【氏名】横尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 直
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB23
5H127AC05
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127DA11
5H127DB22
5H127DB47
5H127DC09
5H127DC22
5H127DC73
5H127DC83
5H127DC90
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】発電運転の停止時に水蒸気が燃料供給装置に逆流することを抑制して補機の故障を防ぎ、信頼性の高い燃料電池装置を提供する。
【解決手段】発電運転を停止する停止工程において、燃料ポンプ154を停止する際には、空気の供給量を低下させるようエアブロア142を制御する。これにより、原燃料流路22へ水蒸気が逆流することが抑制されるので、原燃料流路22に設けられた燃料ポンプ154に水蒸気が到達せず、故障を防止することができる。その結果、逆流防止用の逆止弁を廃止することができるため、コストダウンも可能となる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、
原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、
前記改質器に原燃料を供給する燃料ポンプと、
前記改質器に水を供給する改質水ポンプと、
前記燃料電池に酸素含有ガスを供給するエアブロアと、
前記燃料電池の発電を停止する停止工程において、前記エアブロアの駆動を制御して前記燃料電池に酸素含有ガスを供給することで前記燃料電池を冷却し、前記燃料電池の温度が原燃料および水の供給を停止させる温度に低下すると、前記燃料ポンプと前記改質水ポンプとを停止させて原燃料と水の供給を停止する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記燃料ポンプを停止する際に、酸素含有ガスの供給量を低下させるよう前記エアブロアを制御する燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記停止工程において、前記燃料ポンプの停止前は前記エアブロアを第1のデューティ比で駆動し、前記燃料ポンプの停止後は前記エアブロアを前記第1のデューティ比よりも低い第2のデューティ比で駆動する請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記燃料電池に供給される酸素含有ガスの流量を検知する空気流量センサを備え、
前記制御装置は、前記停止工程における酸素含有ガスの流量の最小値および最大値を設定し、前記空気流量センサが検知する酸素含有ガスの流量が最小値以下または最大値以上となった場合は、最小値から最大値の間の所定値に流量を固定して前記エアブロアを駆動する固定流量制御を行う請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記燃料ポンプの停止前に前記エアブロアを固定流量制御している場合、前記燃料ポンプを停止する際には前記エアブロアを前記第2のデューティ比で駆動する請求項3記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を含有する燃料ガスと酸素含有ガス(空気)とを用いて発電を行ない、電気を外部に供給する燃料電池装置が知られており、発電を行う燃料電池モジュールと、燃料電池モジュールを動作させるための補機等を筐体内に備えて構成される。
【0003】
このような燃料電池装置は、天然ガスやLPガス等の原燃料を水蒸気改質し、燃料電池モジュールに供給する燃料ガスを生成するための改質器を備えている。また改質器の上流には、水を気化して水蒸気を生成する気化器を備えており、この気化器に原燃料と水とが導入されるようになっている。そして、気化器で発生した水蒸気と原燃料とが混合されて下流側の改質部に導入され、改質器で燃料ガスが生成されるように構成されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
そして、気化器へ原燃料を供給する燃料供給装置には、上流側より、供給源から供給される原燃料ガスを遮断する2連の電磁弁、原燃料ガスを送出するガスポンプ、原燃料ガスが一時的に滞留するタンク、原燃料ガスの流量を検知する流量センサ、原燃料ガスに含まれる硫黄分を除去する脱硫器、原燃料ガスの逆流を防止する逆止弁、などの補機が設けられており、原燃料ガスの供給源および各補機の間をガス供給管により接続している。
【0005】
上述のように構成される燃料電池装置では、気化圧が燃料供給圧力を上回ると、気化器で発生した水蒸気が燃料供給装置の配管内に逆流する現象が起こる。水蒸気が逆流すると、燃料供給装置に設けられている燃料ポンプ、流量センサ、脱硫器といった補機を故障させてしまうおそれがある。また、配管が銅の場合には腐食してしまうおそれもある。そのため、燃料供給装置の最下流に逆止弁を設け、この逆止弁を閉じることによって、水蒸気の逆流を防止している。
【0006】
また、逆止弁を連続して2つ設け、逆止弁の間の流路に、地上側に曲がったU字部を形成している。これにより、配管抵抗を上昇させるとともに、万一水蒸気が逆流した場合であっても結露水はU字部の底に滞留するため、上流の補機へ水蒸気が流れ込むことが防止されて故障を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-109234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、故障や動作不良等で逆止弁が正常に開閉しなかった場合には、水蒸気が燃料供給装置に逆流して補機を故障させてしまうおそれがある。また、逆止弁を設けたり、さらには配管をU字に構成することは、製造コストの上昇にもつながる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、発電運転の停止時に水蒸気が燃料供給装置に逆流することを抑制して補機の故障を防ぎ、信頼性の高い燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、
原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、
前記改質器に原燃料を供給する燃料ポンプと、
前記改質器に水を供給する改質水ポンプと、
前記燃料電池に酸素含有ガスを供給するエアブロアと、
前記燃料電池の発電を停止する停止工程において、前記エアブロアの駆動を制御して前記燃料電池に酸素含有ガスを供給することで前記燃料電池を冷却し、前記燃料電池の温度が原燃料および水の供給を停止させる温度に低下すると、前記燃料ポンプと前記改質水ポンプとを停止させて原燃料と水の供給を停止する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記燃料ポンプを停止する際に、酸素含有ガスの供給量を低下させるよう前記エアブロアを制御する燃料電池装置である。
【発明の効果】
【0011】
上述のように構成することにより、発電運転の停止時に、水蒸気が燃料供給装置に逆流することを抑制して補機の故障を防ぐことができるため、信頼性の高い燃料電池装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。
図2】本実施形態の燃料電池装置における工程遷移を示す図である。
図3】本実施形態の燃料電池装置における停止工程のフローチャートである。
図4】ガス停止準備工程におけるエアブロアの制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
本発明は、原燃料を水蒸気改質して発電に使用される燃料ガスを生成する改質器を備えた燃料電池装置であって、燃料電池の発電を停止する停止工程において、エアブロアの駆動を制御して燃料電池に酸素含有ガスを供給することで燃料電池を冷却し、燃料電池の温度が原燃料および水の供給を停止させる温度に低下すると、燃料ポンプと改質水ポンプとを停止させて原燃料と水の供給を停止させ、燃料ポンプを停止する際には、酸素含有ガスの供給量を低下させるようエアブロアを制御する。つまり、停止工程においては、燃料電池の冷却のための空気が供給されているが、原燃料ガスの供給を停止する際には、原燃料の供給流路へ水蒸気が逆流するのを抑制するよう、酸素含有ガスの供給量を低下させる。これにより、原燃料の供給流路に設けられた燃料ポンプに水蒸気が到達せず、故障を防止することができる。そのため、逆流防止用の逆止弁を廃止することも可能となる。
【0015】
また、制御装置は、停止工程において、燃料ポンプの停止前はエアブロアを第1のデューティ比で駆動し、燃料ポンプの停止後はエアブロアを第1のデューティ比よりも低い第2のデューティ比で駆動する。エアブロアをデューティ比で駆動することで、圧力の上昇を抑制し、水蒸気の逆流を効果的に抑制することができる。
【0016】
また、燃料電池に供給される酸素含有ガスの流量を検知する空気流量センサを備え、制御装置は、停止工程における酸素含有ガスの流量の最小値および最大値を設定し、空気流量センサが検知する酸素含有ガスの流量が最小値以下または最大値以上となった場合は、最小値から最大値の間の所定値に流量を固定してエアブロアを駆動する固定流量制御を行う。つまり、外乱の影響によって酸素含有ガスの供給量が、最小値と最大値の間で規定される制御範囲を外れてしまう場合は、エアブロアの制御方式を、デューティ比で制御するデューティ制御から、流量センサの検出値に基づいて制御する固定流量制御へ切り換える。これにより、酸素含有ガスの流量が制御範囲から外れることなく、適切に制御することができる。
【0017】
また、制御装置は、燃料ポンプの停止前にエアブロアを固定流量制御している場合、燃料ポンプを停止する際にはエアブロアを前記第2のデューティ比で駆動する。燃料ポンプを停止するタイミングで固定流量制御からデューティ制御への変更することで、空気の供給量が増加し過ぎてしまうことを防止することができる。
【実施例0018】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0019】
図1は本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1を含み、燃料電池モジュール1を作動させるための、第1熱交換器2、蓄熱タンク3、凝縮水タンク4、放熱器5、空気供給装置14、燃料供給装置15、改質水供給装置16等の複数の補機が筐体50内に納められている。筐体50内には上述の装置全てが収められる必要はなく、例えば、第1熱交換器2や蓄熱タンク3を筐体50の外部に設けてもよい。また、上述の装置の一部を省略した燃料電池装置も可能である。
【0020】
燃料電池モジュール1は、箱状の収納容器10の内部に、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行なう燃料電池11と、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する改質器12と、を収容して構成される。
【0021】
燃料電池11の構成については特に限定はしないが、例えば、複数の燃料電池セルが配列されてなるセルスタック構造を有していてもよい。セルスタック構造の燃料電池11は、例えば、各燃料電池セルの下端を、ガラスシール材等の絶縁性接合材を用いて、マニホールドに固定することによって構成される。
【0022】
改質器12は、天然ガス、LPガス等の原燃料ガスを水蒸気改質し、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する。改質器12には、原燃料ガスを供給する燃料供給装置15と、改質水を供給する改質水供装置16が接続されており、原燃料ガスと改質水は加熱された改質器12で改質反応し、水素を含む燃料ガスが生成される。
【0023】
燃料電池11には、改質器12で生成された燃料ガスと、空気供給装置14によって導入された空気(酸素含有ガス)が供給される。燃料ガスは、燃料電池セル内を通過するときに酸素含有ガスと反応して発電が行われる。燃料電池11と改質器12の間の空間は燃焼部13であり、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスは燃焼部13で合流して燃焼する。この燃料ガスの燃焼によって高温の排ガスが生成され、改質器12はこの熱によって加熱される。このようにして燃料電池モジュール1内で生じた排ガスは、第1熱交換器2に供給される。
【0024】
第1熱交換器2には配管を介して、蓄熱タンク3、熱媒ポンプP1および放熱器5が接続され、第1熱媒循環ラインHC1が形成されている。放熱器5は放熱ファン5aを備えている。この第1熱媒循環ラインHC1には熱媒体が導入されており、第1熱交換器2ではこの熱媒体と前述の排ガスとで熱交換が行われて熱媒体が加熱される。熱媒体としては水などを用いることができ、蓄熱タンク3は熱交換により温度が上昇した熱媒体を蓄える。蓄熱タンク3に蓄えられた熱媒体は、放熱器5に送られて冷却され、再び第1熱交換器2で排ガスと熱交換を行った後、蓄熱タンク3に還流する。これにより、蓄熱タンク3には上部から温度の高い熱媒体が蓄えられ温度成層が形成される。
【0025】
蓄熱タンク3には、水を補給するための補給流路25が接続されている。補給流路25は、外部の水供給源に接続された供給流路26から分岐して設けられ、途中に流路を開閉する給水弁25aを備えている。燃料電池装置100の設置時や、運転中に蓄熱タンク3内の水位が所定以下となったときには給水弁25aを開くことで補給流路25を通じて蓄熱タンク3に水道水が供給される。
【0026】
また、蓄熱タンク3には、蓄熱タンク3内の水量を監視するための水位検知手段7と、熱媒体を加熱するための加熱ヒータ8が設けられている。水位検知手段としては、フロートセンサや静電容量センサなど公知の水位センサを用いることができ、蓄熱タンク3内の水量が所定量以上であるときに水有を検知し、所定量を下回ったときに水無しを検知する。本実施形態においては、水位検知手段7が1箇所に設けられている例を示しているが、水位検知手段7を上下方向に複数設け、複数箇所における水位を検知するようにしてもよい。
【0027】
加熱ヒータ8は、蓄熱タンク3内に配設されて蓄熱タンク3内の水を加熱する。例えば、外気温が低く、燃料電池装置100内で水が凍結するおそれのあるときは、加熱ヒータ8に通電することで水温を上昇させて凍結を防止することができる。さらには、燃料電池11での発電量が需要家での消費電力量を超える場合には、余った電力(余剰電力)を消費させるために加熱ヒータ8に通電するようにしてもよい。
【0028】
また、第1熱交換器2には、凝縮水回収路20を介して凝縮水タンク4が接続されている。燃料電池モジュール1で発生した排ガスが熱交換によって冷却されると、排ガス中に含まれる水蒸気が水と気体に分離され、分離された水は、凝縮水回収流路20を通って凝縮水タンク4に回収される。凝縮水タンク4では、イオン交換器(図示せず)などを経て、回収した水から不純物を取り除いて純水化する。純水化した水は水供給装置16により改質器12に供給され、改質水として使用される。一方で、水分が取り除かれた気体は、排気流路21を通ってから筐体50の外に排出される。
【0029】
改質器12に原燃料を供給する燃料供給装置15は、燃料の供給源から繋がる原燃料流路22上に、電磁弁150、圧力センサ151、脱硫器152、ガス流量センサ153、燃料ポンプ154等の補機が設けられている。改質器12に改質水を供給する改質水供給装置16は、凝縮水タンク4から繋がる改質水流路23上に改質水ポンプ160等の補機が設けられている。燃料電池モジュール1に酸素含有ガスを供給する空気供給装置14は、酸素含有ガス流路24上に、エアフィルタ140、空気流量センサ141、エアブロア142等の補機が設けられている。なお、ここに挙げた補機は一例であって、この他の補機を備える構成としてもよい。
【0030】
また、燃料電池装置100は、第2熱交換器6、蓄熱タンク3から熱媒を循環させる与熱ポンプP2およびこれらを繋ぐ配管を含む第2熱媒循環ラインHC2を備えていてもよい。第2熱媒循環ラインHC2では、外部から供給流路25を介して供給された水道水を、蓄熱タンク3に貯留された高温の熱媒体を用いて第2熱交換器6で加温する。加温された水を外部の給湯器等の再加熱装置に向けて送給流路26を介して送給することができる。燃料電池装置100は、外部への温水供給を行わない、いわゆるモノジェネレーションシステムであってもよい。
【0031】
さらに燃料電池装置100は、筐体50内外の各部の温度を計測するための、温度センサやサーミスタ等の温度検知手段を複数備える。
【0032】
第1熱媒循環ラインHC1や第2熱媒循環ラインHC2のように熱媒体が流れる流路には、熱媒体の温度を計測するため温度検知手段TH1~TH6が設けられている。
【0033】
例えば、蓄熱タンク3内の熱媒体の温度を検知する手段として、タンク低サーミスタTH1、タンク高サーミスタTH2を有している。タンク低サーミスタTH1は、蓄熱タンク3内の比較的低温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3の下部に設けられている。タンク高サーミスタTH2は、蓄熱タンク3内の比較的高温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3近傍の第2熱媒循環ラインHC2上に設けられている。また、第1熱媒循環ラインHC1を流れる熱媒体の温度を検知する手段として、熱媒低サーミスタTH3、熱媒高サーミスタTH4を有している。熱媒低サーミスタTH3は熱媒ポンプP1と第1熱交換器2の間に設けられ、放熱器5で冷却されて第1熱交換器2に流入する熱媒体の温度を検知する。熱媒高サーミスタTH4は第1熱交換器2と蓄熱タンク3との間に設けられ、第1熱交換器2を通過した後の熱媒体の温度を検知する。さらに、供給流路26には外部から供給される水の温度を検知する入水サーミスタTH5、送給流路27には第2熱交換器6により加温された水の温度を検知する出湯サーミスタTH6が設けられる。
【0034】
燃料電池モジュール1内には、燃料電池11の中心部の温度を検知する中心部温度センサTC1と、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスが燃焼する燃焼部13の温度を検知する燃焼部温度センサTC2が配設されている。
【0035】
また、燃料電池装置100の周囲の気温を検知するために、外気温サーミスタTH7が配設されている。この外気温サーミスタTH7は、直接外気温を測定してもよいし、筐体50内において外気温と相関を有する部分の温度を測定してもよい。
【0036】
なお、上述のサーミスタや温度センサは温度検知手段の一例であって、検知する温度や配置場所は本実施形態に限らない。また、これ以外の温度検知手段を備えていてもよい。
【0037】
さらに、燃料電池装置100には、各種機器の動作を制御する制御装置30が設けられているほか、燃料電池モジュール1にて発電された直流電力を交流電力に変換し、変換された電気の外部負荷への供給量を調整するための供給電力調整部(パワーコンディショナ)40、筐体50内に換気用の空気を取り入れる換気ファン17を備えている。
【0038】
制御装置30は、燃料電池装置100を構成する補機や各種センサに接続されており、各種センサが検知する値や図示しないリモコンからの指示に基づいて燃料電池装置100の動作を制御する。
【0039】
上述のように構成される燃料電池装置100において、制御装置30は発電運転中に運転停止の指示を受けた場合、もしくは運転停止が必要と判断した場合には、停止工程に移行する。運転停止の指示は、例えばユーザ宅に設けられたリモコンから送信することができる。また、制御装置30は、燃料電池装置100に異常が発生した場合だけでなく、制御上必要と判断する場合(例えば、マイコンメータのガス漏洩検知の回避、運転メリットの低下抑制、凝縮水の回収量が少なく水自立運転を継続することができない、など)にも、運転を停止する。
【0040】
図2は、本実施形態の燃料電池装置における工程遷移を示す図である。停止工程は、ガス停止準備工程、水停止準備工程、冷却工程、停止完了工程を含んで構成されており、エアブロア142を駆動して燃料電池11を冷却しながら、原燃料ガスと改質水の供給を停止する。停止工程が終了すると、運転開始の指示を待つ待機状態となる。
【0041】
ガス停止準備工程は、原燃料ガスの供給を停止してもよい温度まで燃料電池11の温度を低下させる工程である。ガス停止準備工程では、燃料ポンプ154の流量を発電時の流量よりも低下させる。そしてエアブロア142を駆動して、燃料電池モジュール1内に空気を流入させることで燃料電池11を冷却する。燃料ポンプ154の流量は、発電時の最小流量より低下させてもよい。
【0042】
ガス停止準備工程において、中心部温度センサTC1が検知する燃料電池11の中心部の温度が所定温度T1(例えば250℃)以下になった場合には、燃料ポンプ154を停止するとともに電磁弁150を閉じて原燃料ガスの供給を停止し、水停止準備工程へ遷移する。
【0043】
水停止準備工程は、改質水の供給を停止してもよい温度まで燃料電池11の温度を低下させる工程である。水停止準備工程では、改質水ポンプ160の流量を発電時の流量よりも低下させる。そしてエアブロア142の駆動を継続して、燃料電池モジュール1内に空気を流入させることで燃料電池11を冷却する。改質水ポンプ160の流量は、発電時の最小流量より低下させてもよい。
【0044】
水停止準備工程において、中心部温度センサTC1が検知する燃料電池11の中心部の温度が所定温度T2(例えば249℃)以下になった場合には、改質水ポンプ160を停止して改質水の供給を停止し、冷却工程へ遷移する
【0045】
冷却工程は、再起動可能な温度になるまで、燃料電池11を冷却する工程である。エアブロア142を駆動して、燃料電池モジュール1内に空気を流入させることで燃料電池11を冷却し、中心部温度センサTC1の検知温度が所定温度T3(例えば150℃)以下になった場合には、停止完了工程へ遷移する。
【0046】
停止完了工程は、補機を停止させて待機状態への遷移の準備をする工程である。停止完了工程では、エアブロア142の他、放熱ファン5a、換気ファン17なども停止させる。
【0047】
このように、停止工程においては、まず原燃料ガスの供給を停止した後、水の供給を停止する。そして、原燃料ガスと水の供給が停止した後も、燃料電池11の冷却のためにエアブロア142が駆動される。発電運転中は、燃料供給装置15には原燃料ガスが流れており、原燃料流路22の内圧は燃料電池モジュール1の内圧よりも高く維持されるので、原燃料流路22に水蒸気が逆流することはない。しかしながら、停止工程において原燃料ガスの供給を停止すると、原燃料流路22の圧力が低下する。そして、原燃料流路22の内圧が燃料電池モジュールの内圧より低くなると、改質器12で発生した水蒸気が原燃料流路22に逆流してしまう。原燃料流路22に設けられた燃料ポンプ154、ガス流量センサ153、脱硫器152といった補機に水蒸気が流入すると故障の原因となる。また、配管に銅を使用している部分においては腐食してしまうおそれもある。そのため、本実施形態の制御装置30は、原燃料流路22への水蒸気の逆流を抑制するために空気流量を制御する。
【0048】
空気流量制御では、制御装置30は燃料ポンプ154を停止する際に、空気の供給量を低下させるようにエアブロア142の駆動を制御する。空気の供給量を低下させることで燃料電池モジュール1の内圧を低下させて、燃料ポンプ154が停止して原燃料流路22に原燃料ガスが流れなくなった場合においても、原燃料流路22の内圧と燃料電池モジュール1の内圧との差が大きくなってしまうことを防止する。これにより、原燃料流路22への水蒸気の逆流が抑制され、燃料ポンプ154(本実施形態において燃料供給装置15を構成する補機の中で、最も下流側に設けられている補機)へ水蒸気が到達することを防止する。
【0049】
さらに、燃料ポンプの下流側にはごく小さなタンクを配置してもよい。このタンクに水蒸気を受けることで、より水蒸気の逆流を抑制することができる。
【0050】
空気の流量を低下させるタイミングについては、燃料ポンプ154の停止と同時に実行してもよいし、燃料ポンプ154の停止前に実行してもよい。つまり、「燃料ポンプ154を停止する際に」とは、燃料ポンプ154の停止に関連して空気の供給量が低減されることを意味しているから、燃料ポンプ154を停止する若しくは停止が近いとの判断を受けて、エアブロア142の動作が制御されるように構成されていればよい。ただし、燃料ポンプ154の停止前に空気の流量を低下させた方が、より水蒸気の逆流を抑制する効果を得ることができる。
【0051】
さらに本実施形態では、制御装置30は、エアブロア142のデューティ比を変更して、燃料ポンプ154の停止前と停止後とで空気の流量を低下させるよう制御する。ガス停止準備工程では、エアブロア142を第1のデューティ比D1で駆動し、燃料電池11の温度が所定温度T1に低下したことが検知されると、エアブロア142を第2のデューティ比D2(D1>D2)で駆動する。第2のデューティ比D2は、原燃料流路22に原燃料ガスが流れていない場合に、原燃料流路22に水蒸気が逆流したとしても、水蒸気が流路上に設けられている補機(本実施形態では燃料ポンプ154)や、腐食のおそれがある部位に到達しない程度に燃料電池モジュール1の内圧を保持することのできる流量である。
【0052】
その後、水停止準備工程、冷却工程でもエアブロア142を第2のデューティ比D2で駆動を継続する。つまり、燃料ポンプ154の停止前は第1のデューティ比D1でエアブロア142を駆動し、燃料ポンプ154を停止する際にエアブロア142の駆動を第2のデューティ比D2に変更し、その後燃料ポンプ154が停止した後は第2のデューティ比D2でエアブロア142を駆動する。
【0053】
また、ガス停止準備工程では、空気の流量を段階的に低下させてもよい。中心部温度センサTC1の検知する値から、燃料ポンプ154を停止するタイミングが近づいていることを判断して、段階的に空気の流量を低下させることもできる。
【0054】
図3は、本実施形態の燃料電池装置における停止工程のフローチャートである。制御装置30が発電停止の指示を受けるか、運転停止が必要と判断した場合に、停止工程に遷移して本フローチャートがスタートする。
【0055】
停止工程では、まずエアブロア142を駆動するデューティ比を第1のデューティ比D1(D1は例えば60%)に設定する(ステップ1)。エアブロア142を第1のデューティ比D1で駆動して、燃料電池モジュール1に空気を供給して燃料電池11を冷却する。そして、中心温度センサTC1が検知する燃料電池11の中心部の温度と所定温度T4とを比較する(ステップ2)。所定温度T4は、例えば255℃に設定される。
【0056】
ステップ2で、燃料電池11の温度が所定温度T4以下であると判断されると、制御装置30はエアブロア142を駆動するデューティ比を第2のデューティ比D2(D2は例えば40%)に変更して空気の供給量を低下させる(ステップ3)。
【0057】
次に、中心温度センサTC1が検知する燃料電池11の中心部の温度と所定温度T1とを比較する(ステップ4)。所定温度T1は原燃料ガスを停止することのできる温度であり、例えば250℃に設定される。ステップ4で、燃料電池11の温度が所定温度T1以下であると判断されると、燃料ポンプ154を停止する(ステップ5)。
【0058】
次に、中心温度センサTC1が検知する燃料電池11の中心部の温度と所定温度T2とを比較する(ステップ6)。所定温度T2は改質水を停止することのできる温度であり、例えば249℃に設定される。ステップ4で、燃料電池11の温度が所定温度T2以下であると判断されると、制御装置30は改質水ポンプを停止する(ステップ7)。
【0059】
さらに、中心温度センサTC1が検知する燃料電池11の中心部の温度と所定温度T3とを比較する(ステップ8)。所定温度T3は燃料電池11の冷却が完了し、再起動を行うことのできる温度であり、例えば150℃に設定される。ステップ6で、燃料電池11の温度が所定温度T3以下であると判断されると、制御装置30はエアブロア142を停止して燃料電池11の冷却を完了し、その他の補機の動作も停止する(ステップ9)。
【0060】
ところで、燃料電池装置100は、多くの場合が屋外に設置される。そのため、外気による外乱の影響を受けやすく、エアブロア142をデューティ比で一定に制御していても外乱によって実際の流量が変動してしまうことがある。燃料電池モジュール1に供給される空気の流量が少なすぎると燃料ガスの濃度が爆発下限界に到達してしまうおそれがあり、反対に空気の流量が多すぎると急激に燃料電池11が冷却されることでスタックが劣化してしまうおそれがある。そのため、空気の流量に最小値と最大値を設け、空気流量センサ141で検知される流量が、最小値と最大値の間の制御範囲を外れないようにエアブロア142を制御する必要がある。
【0061】
そこで、本実施形態では、停止工程における空気の流量の最小値Aminおよび最大値Amaxを設定し、空気流量センサ141が検知する空気の流量が最小値Amin以下または最大値Amax以上となった場合には、デューティ制御から固定流量制御に切り換えてエアブロア142の駆動を制御する。デューティ制御は、印加するパルスをONにする比率でエアブロア142の駆動を制御するのに対し、固定流量制御は、目標とする流量を設定し、空気流量センサ141の検知する値がその設定された流量になるようエアブロア142の駆動を制御する。したがって、固定流量で制御することで、外乱の影響を受けずに空気の流量を決められた量に維持することができる。よって、外乱の影響によって、デューティ制御では制御範囲を外れてしまう状況のときには、固定流量制御に切り換えることで燃料電池11に悪影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0062】
また、固定流量制御に切り換えた場合には、最小値Aminから最大値Amaxの間の所定値に流量を固定する。この所定値は1つでもよいし、複数設けてもよい。例えば、流量が最小値Amin以下になったために固定流量制御に切り換えた場合には第1所定値に固定し、流量が最大値Amax以上になったために固定流量制御に切り換えた場合には第2所定値(第1所定値<第2所定値)に固定することもできる。このとき、第1所定値をAmin、第2所定値をAmaxとしてもよい。
【0063】
しかしながら、上述のように所定値を複数設定した場合、第2所定値に固定してエアブロア142を駆動すると、デューティ制御の場合と比べて空気の供給量が増加し過ぎてしまうおそれがある。よって、エアブロア142は固定流量制御よりもデューティ制御するのが望ましい。そこで、ガス停止準備工程において、エアブロア142を固定流量制御している場合、燃料ポンプ154を停止する際にはエアブロア142をデューティ制御に切り換える。デューティ制御に切り換えた場合には、第2のデューティ比D2でエアブロア142を駆動する。
【0064】
そして、所定値を複数設定している場合には、少なくとも最も大きい所定値で固定流量制御していた場合にデューティ制御に切り換えればよい。上述の例では、第2所定値で固定流量制御していた場合に、固定流量制御からデューティ制御に切り換えられる。
【0065】
図4は、ガス停止準備工程におけるエアブロアの制御フローチャートである。ガス停止準備工程がスタートすると、制御装置30はエアブロア142を第1のデューティ比D1で駆動する(ステップ11)。なお、制御開始前のデューティ比がD1より小さい場合は、D1になるまで段階的に増加させる。D1より大きい場合は、D1になるまで段階的に減少させる。
【0066】
次に、空気流量センサ141の検知する流量が、最大値Amaxと最小値Aminの間の制御範囲内であるかを判定する。まず、空気流量センサ141の検出値と最大値Amaxとを比較し(ステップ12)、検出値が最大値Amax以上であった場合は、デューティ制御から固定流量制御に切り換え、流量をAmaxに固定してエアブロア142を駆動する(ステップ13)。
【0067】
ステップ12で検出値が最大値Amax未満の場合は、次に空気流量センサ141の検出値と最小値Aminとを比較する(ステップ14)。検出値が最小値Amin以下であった場合は、デューティ制御から固定流量制御に切り換え、流量をAminに固定してエアブロア142を駆動する(ステップ15)。
【0068】
ステップ14で検出値が最小値Aminより大きい場合、つまり空気流量センサ141の検出値が制御範囲内であった場合には、デューティ制御が継続され第1のデューティ比D1でエアブロア142を駆動する(ステップ16)。
【0069】
次に、中心温度センサTC1が検知する燃料電池11の中心部の温度と所定温度T4とを比較する(ステップ17)。所定温度T4は、例えば255℃が設定されている。ステップ17で燃料電池の温度が255℃以下であると判断されると、エアブロア142の駆動がAminの固定流量制御であるかを判定する(ステップ18)。Aminの固定流量制御の場合には風量を変えずにフローを終了する。
【0070】
一方で、Aminの固定流量制御でない場合には、エアブロア142の駆動を第2のデューティ比D2に変更して空気の供給量を低下させる(ステップ19)。したがって、エアブロア142を第1のデューティ比D1で制御していた場合にはデューティ比が変更され、固定値Amaxの固定流量制御していた場合には、固定流量制御からデューティ制御に切り換えられることになる。
【0071】
以上で説明したように、本実施形態の燃料電池装置100は、発電運転を停止する停止工程において、燃料ポンプ154を停止する際には、空気の供給量を低下させるようエアブロア142を制御する。これにより、原燃料流路22へ水蒸気が逆流することが抑制されるので、原燃料流路22に設けられた燃料ポンプ154に水蒸気が到達せず、故障を防止することができる。その結果、逆流防止用の逆止弁を廃止することができるため、コストダウンも可能となる。
【0072】
また、燃料ポンプ154の停止前はエアブロア142を第1のデューティ比で駆動し、燃料ポンプ154の停止後はエアブロア142を第1のデューティ比よりも低い第2のデューティ比で駆動することで、燃料ポンプ154の停止前と停止後とで空気の供給量を低下させることができる。
【0073】
また、空気流量センサ141が検知する空気の流量が最小値Amin以下または最大値Amax以上となった場合には、デューティ制御から固定流量制御に切り換えてエアブロア142の駆動を制御する。固定流量で制御することで、外乱の影響を受けずに空気の供給量を決められた量に維持することができるので、外乱の影響によって、デューティ制御では制御範囲を外れてしまう状況のときには、固定流量制御に切り換えることで燃料電池11に悪影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0074】
また、ガス停止準備工程において、エアブロア142を固定流量制御している場合、燃料ポンプ154を停止する際にはエアブロア142をデューティ制御に切り換える。これにより、空気の供給量が増加し過ぎてしまうことを防止することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、燃料供給装置15の最下流(燃料ポンプ154の下流)に逆流防止用の電磁弁を備えていない構造について説明した。逆流防止用の電磁弁を廃止することでコストダウンすることができる。しかしながら、逆流防止用の電磁弁を備えて構成してもよいことは言うまでもない。その上で上述のようにエアブロア142を制御することで、電磁弁が故障して正常に動作しなかった場合に水蒸気の逆流を抑制して、補機の故障を防止することができる。
【符号の説明】
【0076】
11 燃料電池
12 改質器
30 制御装置
141 空気流量センサ
142 エアブロア
154 燃料ポンプ
160 改質水ポンプ
図1
図2
図3
図4