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特開2024-47688フルオレン化合物ならびにその製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047688
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】フルオレン化合物ならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 59/72 20060101AFI20240401BHJP
   C07C 69/712 20060101ALI20240401BHJP
   C07C 67/31 20060101ALI20240401BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C07C59/72 CSP
C07C69/712 Z
C07C67/31
C07C51/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153321
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】鞍谷 裕嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC46
4H006AC48
4H006BC10
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BS10
4H006KA31
4H006KC12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性(または安定性)に優れ、かつ高い生産性で製造可能な化合物またはその塩、およびその化合物またはその塩を原料(反応成分)とする樹脂、ならびにそれらの製造方法および用途を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物またはその塩を調製する。

[式中、Rは置換基を示し、k1は0~8の整数を示し、Z1aおよびZ1bは独立して置換または未置換のアレーン環を示し、A1aおよびA1bは独立してアルキレン基を示し、m1aおよびm1bは独立して0以上の整数を示し、R2aおよびR2bは独立して炭素数3以上のアルキレン基を示し、R3aおよびR3bは独立してヒドロキシル基、基[-ORh3](式中、Rh3は炭化水素基を示す)またはハロゲン原子を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物またはその塩。
【化1】
[式中、Rは置換基を示し、k1は0~8の整数を示し、
1aおよびZ1bは独立して置換または未置換のアレーン環を示し、
1aおよびA1bは独立してアルキレン基を示し、m1aおよびm1bは独立して0以上の整数を示し、
2aおよびR2bは独立して炭素数3以上のアルキレン基を示し、
3aおよびR3bは独立してヒドロキシル基、基[-ORh3](式中、Rh3は炭化水素基を示す)またはハロゲン原子を示す。]
【請求項2】
前記式(1)において、Rがハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORh1](式中、Rh1は炭化水素基を示す)、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、k1が0~4の整数であり、
1aおよびZ1bのアレーン環が独立して単環式または縮合多環式アレーン環であり、
m1aおよびm1bが0であり、
2aおよびR2bが独立してC3-10アルキレン基である請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
前記式(1)において、Rが炭化水素基であり、k1が0~2の整数であり、
1aおよびZ1bのアレーン環が独立してベンゼン環またはC10-14縮合多環式アレーン環であり、
m1aおよびm1bが0であり、
2aおよびR2bが独立して直鎖状C3-5アルキレン基である請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
10%重量減少温度が、200℃以上である請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
結晶の形態である請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)で表される化合物またはその塩および下記式(3b)で表される化合物またはその塩とを反応させる反応工程を含む、請求項1または2記載の式(1)で表される化合物またはその塩を製造する方法。
【化2】
[式中、X1aおよびX1bは独立してハロゲン原子を示し、
、k1、Z1aおよびZ1b、A1aおよびA1b、m1aおよびm1b、R2aおよびR2b、R3aおよびR3bは、前記式(1)に同じ。]
【請求項7】
反応工程において、反応温度が90℃以下であり、反応時間が18時間以下である請求項6記載の方法。
【請求項8】
得られた前記式(1)で表される化合物またはその塩の収率が80%以上であり、LC純度が80面積%以上である請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の化合物またはその塩を原料とする樹脂。
【請求項10】
請求項1記載の化合物またはその塩、および/または請求項9記載の樹脂を含む成形体。
【請求項11】
光学部材である請求項10記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(またはその塩)およびその誘導体ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、屈折率や耐熱性などに優れており、樹脂原料などとして有効に利用されている。9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物としては、例えば、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するポリカルボン酸などが知られているが、近年の急速な技術革新に伴って、耐熱性や屈折率のさらなる向上が要求されている。
【0003】
特開2009-256332号公報(特許文献1)には、耐熱性などの特性に優れ、樹脂原料などとして使用可能な新規なフルオレン骨格を有するポリカルボン酸について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-256332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の実施例1では、フルオレン骨格を有するポリカルボン酸として、9,9-ビス[6-(カルボキシメトキシ)-2-ナフチル]フルオレンを調製したことが記載されているものの、耐熱性などの具体的な特性は評価されていない。また、特許文献1の実施例2には、9,9-ビス[6-(2-カルボキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンを調製したことも記載されているが、具体的な特性のみならず、収率や純度についても何ら記載されていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、耐熱性(または安定性)に優れ、かつ高い生産性で(容易にまたは効率よく)製造可能な化合物(またはその塩)、およびその化合物(またはその塩)を原料(反応成分)とする樹脂、ならびにそれらの製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物(またはその塩)が高い耐熱性を示し、かつ生産性にも優れることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記態様などを包含していてもよい。
【0009】
態様[1]:下記式(1)で表される化合物またはその塩。
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、Rは置換基を示し、k1は0~8の整数を示し、
1aおよびZ1bは独立して置換または未置換のアレーン環を示し、
1aおよびA1bは独立してアルキレン基を示し、m1aおよびm1bは独立して0以上の整数を示し、
2aおよびR2bは独立して炭素数3以上のアルキレン基を示し、
3aおよびR3bは独立してヒドロキシル基、基[-ORh3](式中、Rh3は炭化水素基を示す)またはハロゲン原子を示す。]
【0012】
態様[2]:前記式(1)において、Rがハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORh1](式中、Rh1は炭化水素基を示す)、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、k1が0~4の整数であり、
1aおよびZ1bのアレーン環が独立して単環式または縮合多環式アレーン環であり、
m1aおよびm1bが0であり、
2aおよびR2bが独立してC3-10アルキレン基である態様[1]記載の化合物またはその塩。
【0013】
態様[3]:前記式(1)において、Rが炭化水素基であり、k1が0~2の整数であり、
1aおよびZ1bのアレーン環が独立してベンゼン環またはC10-14縮合多環式アレーン環であり、
m1aおよびm1bが0であり、
2aおよびR2bが独立して直鎖状C3-5アルキレン基である態様[1]または[2]記載の化合物またはその塩。
【0014】
態様[4]:10%重量減少温度が、200℃以上である態様[1]~[3]のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【0015】
態様[5]:結晶の形態である態様[1]~[4]のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【0016】
態様[6]:下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)で表される化合物またはその塩および下記式(3b)で表される化合物またはその塩とを反応させる反応工程を含む、態様[1]~[5]のいずれかに記載の式(1)で表される化合物またはその塩を製造する方法。
【0017】
【化2】
【0018】
[式中、X1aおよびX1bは独立してハロゲン原子を示し、
、k1、Z1aおよびZ1b、A1aおよびA1b、m1aおよびm1b、R2aおよびR2b、R3aおよびR3bは、前記式(1)に同じ。]
【0019】
態様[7]:反応工程において、反応温度が90℃以下であり、反応時間が18時間以下である態様[6]記載の方法。
【0020】
態様[8]:得られた前記式(1)で表される化合物またはその塩の収率[前記式(2)で表される化合物を基準とした収率]が80%以上であり、LC純度が80面積%以上である態様[6]または[7]記載の方法。
【0021】
態様[9]:態様[1]~[5]のいずれかに記載の化合物またはその塩を原料とする樹脂。
【0022】
態様[10]:態様[1]~[5]のいずれかに記載の化合物またはその塩、および/または態様[9]記載の樹脂を含む成形体。
【0023】
態様[11]: 光学部材である態様[10] 記載の成形体。
【0024】
なお、本発明では、以下の従たる目的を達成(または課題を解決)してもよい。
【0025】
すなわち、本発明の他の目的は、高い屈折率を示す化合物(またはその塩)、およびその化合物(またはその塩)を原料とする樹脂、ならびにそれらの製造方法および用途を提供することにある。
【0026】
また、本発明のさらに他の目的は、高い溶剤溶解性を示す樹脂を調製可能な化合物(またはその塩)、およびその化合物(またはその塩)を原料とする樹脂、ならびにそれらの製造方法および用途を提供することにある。
【0027】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル基」で示し、炭素数が6~10のアリール基は「C6-10アリール基」で示す。
【発明の効果】
【0028】
本発明の化合物(またはその塩)は、耐熱性(または安定性)に優れ、かつ高い生産性で(容易にまたは効率よく)製造可能である。また、本発明の化合物(またはその塩)は、高い屈折率を示す。さらに、本発明の化合物(またはその塩)は、高い溶剤溶解性を示すこともできる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[式(1)で表される化合物]
本発明は、下記式(1)で表される化合物(ジカルボン酸化合物)(またはその塩)およびその誘導体を包含する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、式(1)で表される化合物を、単に、「化合物(1)」という場合がある。
【0030】
【化3】
【0031】
[式中、Rは置換基を示し、k1は0~8の整数を示し、
1aおよびZ1bは独立して置換または未置換のアレーン環を示し、
1aおよびA1bは独立してアルキレン基を示し、m1aおよびm1bは独立して0以上の整数を示し、
2aおよびR2bは独立して炭素数3以上のアルキレン基を示し、
3aおよびR3bは独立してヒドロキシル基、基[-ORh3](式中、Rh3は炭化水素基を示す)またはハロゲン原子を示す。]
【0032】
前記式(1)において、Rで表される置換基としては、反応に不活性な非反応性基(または非重合性基)であってもよく、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORh1](式中、Rh1は炭化水素基を示す)、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基(モノまたはジ置換アミノ基)などが挙げられる。
【0033】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0034】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
【0035】
アルキル基(直鎖状または分岐鎖状アルキル基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのC1-10アルキル基が挙げられ、好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基である。
【0036】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
【0037】
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(またはトリル基)、ジメチルフェニル基(またはキシリル基)などのモノないしトリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
【0038】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
【0039】
前記基[-ORh1]において、炭化水素基Rh1としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの上記炭化水素基と同様の基が挙げられる。前記基[-ORh1]としては、例えば、前記炭化水素基Rh1の例示に対応する基が挙げられ、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられる。アルコキシ基(直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基)としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基が挙げられる。
【0040】
アシル基としては、C1-12アシル基などが挙げられ、例えば、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。
【0041】
モノまたはジ置換アミノ基としては、例えば、モノまたはジアルキルアミノ基、モノまたはビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。モノまたはジアルキルアミノ基としては、例えば、モノまたはジメチルアミノ基などのモノまたはジC1-4アルキルアミノ基が挙げられる。モノまたはビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、モノまたはジアセチルアミノ基などのモノまたはビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。
【0042】
これらの基のうち、代表的なRとしては、ハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORh1]、シアノ基などが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基などの炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基などの基[-ORh1]が挙げられる。
【0043】
置換数k1は、例えば0~6程度の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、特に0が好ましい。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環における基Rの各置換数(1~4位における置換数と、5~8位における置換数と)は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0044】
なお、基Rの置換数k1が複数(2以上)である場合、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環のうち、一方のベンゼン環に置換する2以上の基Rの種類は、同一または異なっていてもよく;また、双方のベンゼン環にそれぞれ置換する基Rの種類は異なっていてもよいが、同一が好ましい。なお、基Rの結合位置(置換位置)は、フルオレン環の1~8位であれば特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2,7位などが挙げられ、2,7位が好ましい。
【0045】
1aおよびZ1bは独立して、置換または未置換のアレーン環(置換基を有していてもよいアレーン環)を示し、前記アレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環としては、例えば、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0046】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式C10-14アレーン環である。
【0047】
環集合アレーン環としては、例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
【0048】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
【0049】
1aおよびZ1bにおける好ましいアレーン環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-14アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環であり、特にナフタレン環である。Z1aおよびZ1bにおけるアレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式アレーン環が好ましいようである。
【0050】
1aおよびZ1bにおけるアレーン環の種類は、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0051】
1aおよびZ1bのアレーン環において、フルオレン環の9位、および基[-O-(A1aO)m1a-R2a-C(=O)-R3a],[-O-(A1bO)m1b-R2b-C(=O)-R3b]との置換位置(結合位置)は特に制限されないが、フルオレン環の9位との結合位置に対して、例えば、隣接していない離れた置換位置、好ましくは最も離れた置換位置に基[-O-(A1aO)m1a-R2a-C(=O)-R3a],[-O-(A1bO)m1b-R2b-C(=O)-R3b]が置換(結合)するのが好ましい。具体的には、Z1a,Z1bがベンゼン環の場合、フルオレン環の9位との結合位置としてのベンゼン環の1位(またはフェニル基)に対して、例えば、2位、3位または4位、好ましくは3位または4位、さらに好ましくは4位に基[-O-(A1aO)m1a-R2a-C(=O)-R3a],[-O-(A1bO)m1b-R2b-C(=O)-R3b]が置換(結合)するのが好ましい。また、Z1a,Z1bがナフタレン環の場合、例えば、フルオレン環の9位との結合位置としてのナフタレン環の1位または2位(1-ナフチル基または2-ナフチル基)に対して、5~8位に、好ましくは5位または6位に(1,5位または2,6位の位置関係で)、さらに好ましくは6位に(2,6位の位置関係で)基[-O-(A1aO)m1a-R2a-C(=O)-R3a],[-O-(A1bO)m1b-R2b-C(=O)-R3b]が置換(結合)するのが好ましい。また、Z1a,Z1bがビフェニル環の場合、例えば、フルオレン環の9位との結合位置としてのビフェニル環の3位(3-ビフェニリル基)に対して、6位に(3,6位の位置関係で)基[-O-(A1aO)m1a-R2a-C(=O)-R3a],[-O-(A1bO)m1b-R2b-C(=O)-R3b]が置換(結合)するのが好ましい。
【0052】
1aおよびZ1bにおいて、前記アレーン環は、未置換のアレーン環、すなわち、フルオレン環の9位、および基[-O-(A1aO)m1a-R2a-C(=O)-R3a],[-O-(A1bO)m1b-R2b-C(=O)-R3b]との置換位置(結合位置)以外の位置に置換基(以下、基[-RZ1]ともいう)を有しないアレーン環であってもよく、1または複数の置換基(基[-RZ1])を有するアレーン環であってもよい。このような置換基[-RZ1]としては、反応に不活性な非反応性基(または非重合性基)であってもよく、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORhZ1](式中、RhZ1は炭化水素基を示す)、基[-SRhZ1](式中、RhZ1は炭化水素基を示す)、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基(モノまたはジ置換アミノ基)などが挙げられる。
【0053】
置換基[-RZ1]におけるハロゲン原子、アシル基、置換アミノ基(モノまたはジ置換アミノ基)としては、例えば、Rとして例示したハロゲン原子、アシル基、置換アミノ基(モノまたはジ置換アミノ基)とそれぞれ同様のものが例示できる。
【0054】
置換基[-RZ1]における炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、Rにおいて炭化水素基として例示した基とそれぞれ同様のものが例示できる。なお、置換基[-RZ1]としての炭化水素基は、アリール基を除く炭化水素基であってもよい。
【0055】
基[-ORhZ1]、基[-SRhZ1]において、炭化水素基RhZ1としては、例えば、Rにおいて炭化水素基として例示したアルキル基(直鎖状または分岐鎖状アルキル基)、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基とそれぞれ同様の基などが挙げられる。基[-ORhZ1]、基[-SRhZ1]において、炭化水素基RhZ1の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0056】
基[-ORhZ1]としては、例えば、Rにおいて基[-ORh1]として例示したアルコキシ基(直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基)、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基とそれぞれ同様の基などが挙げられる。
【0057】
基[-SRhZ1]としては、例えば、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基などが挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキルチオ基が挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基(チオフェノキシ基)などのC6-10アリールチオ基が挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基が挙げられる。
【0058】
代表的な置換基[-RZ1]としては、ハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORhZ1]、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられ;好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基、アルコキシ基などの基[-ORhZ1]が挙げられ;さらに好ましくはメチル基などのC1-6アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基、フェニル基などのC6-14アリール基、メトキシ基などのC1-4アルコキシ基が挙げられる。置換基[-RZ1]のなかでもアルキル基などの炭化水素基が好ましく、特に、メチル基などのC1-4アルキル基が好ましい。
【0059】
1a,Z1bの各アレーン環における置換基[-RZ1]の数(置換数)は、アレーン環の種類に応じて、それぞれ、例えば0~5程度の整数、好ましくは以下段階的に、0~3の整数、0~2の整数、0または1、0である。Z1aにおける置換数と、Z1bにおける置換数とは、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。Z1aにおける置換数が2以上である場合、2以上の置換基[-RZ1]の種類は、互いに同一または異なっていてもよく;Z1bにおける置換数が2以上である場合、2以上の置換基[-RZ1]の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、Z1aにおける置換基[-RZ1]の種類と、Z1bにおける置換基[-RZ1]の種類とは、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0060】
1a、A1bで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基などが挙げられ、好ましくはC2-4アルキレン基、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基、特にエチレン基が好ましい。
【0061】
アルキレンオキシ基[-(A1aO)-]、[-(A1bO)-]の繰り返し数(付加モル数)m1a,m1bは、それぞれ0以上であればよく、例えば0~15程度の整数から選択してもよく、屈折率、耐熱性および生産性を向上し易い点から、好ましくは以下段階的に、0~10の整数、0~8の整数、0~6の整数、0~4の整数、0~2の整数、0または1であり、特に0が好ましい。
【0062】
なお、「繰り返し数(付加モル数)」m1a,m1bは、平均値(算術平均値、相加平均値)、すなわち、前記化合物(1)の集合体(分子集合体)としての平均付加モル数であってもよく、例えば0~15程度の範囲から選択してもよく、屈折率、耐熱性および生産性を向上し易い点から、好ましくは以下段階的に、0~10、0~8、0~6、0~4、0~2、0~1であり、特に0が好ましい。
【0063】
本発明では、m1a,m1bが0であっても、耐熱性(または安定性)を有効に向上できる。
【0064】
また、m1a,m1bは、互いに同一または異なっていてもよい。m1aが2以上の場合、2以上のアルキレンオキシ基[-(A1aO)-]の種類は互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく;m1bが2以上の場合、2以上のアルキレンオキシ基[-(A1bO)-]の種類は互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。なお、A1aおよびA1bの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0065】
2aおよびR2bは炭素数が3以上のアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基)であればよく、例えば、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのC3-10アルキレン基などが挙げられ、好ましくは以下段階的に、C3-8アルキレン基、C3-6アルキレン基、C3-5アルキレン基、C3-4アルキレン基である。また、R2aおよびR2bは、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよいが、直鎖状アルキレン基の方が好ましいようである。R2aおよびR2bのアルキレン基の炭素数が大きすぎると、耐熱性や屈折率が低下するおそれがある。
【0066】
一方、特許文献1で具体的に記載されているように、炭素数が3よりも小さいアルキレン基である場合、例えば、R2aおよびR2bが、炭素数が1のメチレン基であると、高温条件下および/またはアルカリ条件下などにおいて、カルボニル基のα位の水素が脱離し易く(化合物が分解し易く)、特に、m1aおよびm1bが0である場合(R2aおよびR2bのメチレン基が、Z1aおよびZ1bとエーテル結合を介して結合する場合)、なかでもZ1aおよびZ1bがナフタレン環などの縮合多環式アレーン環である場合などでは、耐熱性(安定性)が大きく低下し易いようである。また、R2aおよびR2bが、炭素数が2のエチレン基であると、反応が進行し難く、生産性が著しく低下するようである。そのため、本発明は、R2aおよびR2bを炭素数が3以上のアルキレン基とすることにより、耐熱性(安定性)および/または生産性を向上する方法も包含する。
【0067】
3aおよびR3bは、ヒドロキシル基、基[-ORh3](式中、Rh3は炭化水素基を示す)またはハロゲン原子のいずれであってもよい。
【0068】
基[-ORh3]における炭化水素基Rh3としては、例えば、アルキル基(直鎖状または分岐鎖状アルキル基)、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、Rにおいて炭化水素基として例示した基とそれぞれ同様のものが例示できる。好ましい炭化水素基Rh3はアルキル基であり、なかでも低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、t-ブチル基などのC1-4アルキル基がさらに好ましい。
【0069】
基[-ORh3]としては、例えば、アルコキシ基(直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基)、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられ、具体的には、Rにおいて基[-ORh1]として例示した基とそれぞれ同様の基などが挙げられる。好ましい基[-ORh3]としては、前記好ましい炭化水素基Rh3に対応し、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-4アルコキシ基がさらに好ましい。
【0070】
3aおよびR3bにおけるハロゲン原子としては、例えば、Rとして例示したハロゲン原子と同様のものが例示でき、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0071】
なお、R3aおよび/またはR3bがヒドロキシル基である場合、前記化合物(1)は塩の形態(カルボン酸塩の形態)であってもよい。塩の形態としては、カルボキシル基との塩を形成可能な金属または化合物との塩であればよく、例えば、金属塩、アンモニウム塩(NH )、アミン塩などのオニウム塩などが挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。アミン塩としては、例えば、ジメチルアミン塩(ジメチルアンモニウム塩)、トリメチルアミン塩(トリメチルアンモニウム塩)、トリエチルアミン塩(トリエチルアンモニウム塩)などのモノないしテトラアルキルアミン塩(モノないしテトラアルキルアンモニウム塩)、ピリジン塩(ピリジニウム塩)などが挙げられる。
【0072】
また、R3aおよび/またはR3bがヒドロキシル基である場合、前記化合物(1)はカルボン酸から誘導されるアミド誘導体の形態であってもよく、例えば、未置換のアミド(カルボン酸アミド)、モノまたはジ置換アミド、具体的にはモノまたはジアルキルアミドなどの形態であってもよい。
【0073】
好ましいR3aおよびR3bは、ヒドロキシル基または基[-ORh3]であり、さらに好ましくはヒドロキシル基である。R3aおよびR3bの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0074】
なお、化合物(1)が、置換または未置換のアミノ基を有する場合、例えば、有機酸、無機酸などの酸との塩を形成してもよい。
【0075】
前記式(1)で表される代表的な化合物(またはその塩)としては、
が、ハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORh1]、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、k1が0~4の整数であり、
1aおよびZ1bのアレーン環が独立して、単環式または縮合多環式アレーン環であり、
1aおよびZ1bの置換基[-RZ1]が独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、基[-ORhZ1]、基[-SRhZ1]、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、置換基[-RZ1]の数が、独立して0~3の整数であり、
m1aおよびm1bが0であり、
2aおよびR2bが独立して、C3-10アルキレン基である化合物(またはその塩)が挙げられ;
好ましくは、
が、炭化水素基、またはアルコキシ基などの基[-ORh1]、特にアルキル基、アリール基などの炭化水素基であり、k1が0~2の整数であり、
1aおよびZ1bのアレーン環が、独立してベンゼン環または縮合多環式C10-14アレーン環であり、
1aおよびZ1bの置換基[-RZ1]が独立して、炭化水素基、またはアルコキシ基などの基[-ORhZ1]、特にアルキル基、アリール基などの炭化水素基であり、置換基[-RZ1]の数が独立して、0~2の整数であり、
m1aおよびm1bが0~6であり、
2aおよびR2bが独立して、直鎖状C3-5アルキレン基などのC3-5アルキレン基である化合物(またはその塩)が挙げられ;
さらに好ましくは、
が、C1-4アルキル基またはC6-12アリール基、k1が0~2の整数であり、
1aおよびZ1bのアレーン環が、独立してベンゼン環またはナフタレン環、特にナフタレン環であり、
1aおよびZ1bの置換基[-RZ1]が独立して、C1-4アルキル基であり、置換基[-RZ1]の数が独立して、0または1であり、
m1aおよびm1bが0であり、
2aおよびR2bが独立して、直鎖状C3-4アルキレン基などのC3-4アルキレン基であり、
3aおよびR3bが独立して、ヒドロキシル基または基[-ORh3]、特にヒドロキシル基である化合物(またはその塩)が挙げられる。
【0076】
前記式(1)で表される具体的な化合物(またはその塩)としては、例えば、9,9-ビス(カルボキシC3-8アルキルオキシ-アリール)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC3-10アルキルオキシ-アリール)フルオレン、およびこれらの誘導体、例えば、アルキルエステルなどのエステル、酸クロリドなどの酸ハライド、金属塩などの塩などが挙げられる。前記化合物(1)としては、例えば、9,9-ビス[4-(3-カルボキシプロピルオキシ)-フェニル]フルオレン、9,9-ビス[6-(3-カルボキシプロピルオキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(3-カルボキシプロピルオキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC3-6アルキルオキシ-アリール)フルオレン、好ましくは以下段階的に、9,9-ビス(カルボキシC3-5アルキルオキシ-アリール)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシC3-4アルキルオキシ-アリール)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシCアルキルオキシ-アリール)フルオレン、およびこれらの誘導体、例えば、アルキルエステルなどのエステル、酸クロリドなどの酸ハライド、金属塩などの塩などが挙げられる。
【0077】
(式(1)で表される化合物の特性)
化合物(1)(またはその塩)は、結晶の形態であってもよい。
【0078】
化合物(1)(またはその塩)は耐熱性に優れており、1%重量減少温度は、例えば50~150℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、80~140℃、90~130℃、100~120℃である。5%重量減少温度は、例えば130℃以上、具体的には150~250℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、180~230℃、190~220℃、195~215℃である。10%重量減少温度は、例えば200℃以上、具体的には250~350℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、270~340℃、280~330℃、290~320℃、295~315℃である。
【0079】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、重量減少温度は、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件下で測定した温度であり、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0080】
また、化合物(1)(またはその塩)は高屈折率であり、その屈折率nDは、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば1.62~1.66程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、1.625~1.65、1.63~1.645、1.635~1.64である。
【0081】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、屈折率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0082】
化合物(1)(またはその塩)は、溶剤(溶媒)に対する溶解性に優れ、高耐熱性および高屈折率と、溶解性とをバランスよく充足できる。化合物(1)(またはその塩)は、比較的容易に溶液(または液状組成物)を形成でき、このような溶剤(溶媒)としては、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなどの芳香族エーテル類など;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2-ヘプタノンなどの鎖状ケトン類、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどの環状ケトン類など;エステル類、具体的には、酢酸エチルなどの酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル類、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類など;エーテルエステル類、具体的には、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、3-エトキシプロピオン酸エチルなどのアルコキシカルボン酸エステル類など;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。
【0083】
これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、ハロゲン化炭化水素類、グリコールエーテル類、ケトン類、乳酸エステル類などのエステル類、エーテルエステル類、アミド類が好ましく;さらに好ましくは塩素化炭化水素類、アルキレングリコール(モノまたはジ)アルキルエーテルなどのグリコールエーテル類、環状ケトン類などのケトン類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートなどのエーテルエステル類、アミド類であり;特に、クロロホルムなどの塩素化脂肪族炭化水素類、PGMEなどのC2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのC4-8環状ケトン類、PGMEAなどのC2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルアセテート、NMPなどの環状アミド類が好ましい。
【0084】
化合物(1)(またはその塩)と溶媒とを含む組成物(溶液または液状組成物)において、化合物(1)(またはその塩)の割合は、前記組成物全体に対して、例えば1~50質量%、好ましくは3~40質量%、さらに好ましくは5~35質量%、特に10~25質量%である。化合物(1)(またはその塩)と溶媒とを含む組成物(溶液または液状組成物)は、例えば、溶液重合するための反応溶液などとしてもよい。
【0085】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、溶剤溶解性は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0086】
(式(1)で表される化合物の製造方法)
前記化合物(1)(またはその塩)の製造方法は特に制限されないが、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)で表される化合物(またはその塩)および下記式(3b)で表される化合物(またはその塩)[またはハロアルカン酸(またはその塩)もしくはその誘導体]とを反応(求核反応または脱ハロゲン化水素反応)させる反応工程を含むのが好ましい。
【0087】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、式(2)で表される化合物を、単に、「化合物(2)」という場合があり、同様に、式(3a)で表される化合物を「化合物(3a)」、式(3b)で表される化合物を「化合物(3b)」という場合がある。また、化合物(3a)および化合物(3b)を「化合物(3a)(3b)」という場合がある。
【0088】
【化4】
【0089】
[式中、X1aおよびX1bは独立してハロゲン原子を示し、
、k1、Z1aおよびZ1b、A1aおよびA1b、m1aおよびm1b、R2aおよびR2b、R3aおよびR3bは、それぞれ好ましい態様も含めて前記式(1)に同じ]。
【0090】
化合物(2)としては、化合物(1)の好ましい態様に対応する化合物、例えば、m1aおよびm1bが0であるフェノール性水酸基を有する化合物、すなわち、9,9-ビス(ヒドロキシC6-12アリール)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、具体的には、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
【0091】
9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-ヒドロキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0092】
9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[3-メチル-4-ヒドロキシ-フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0093】
9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[3-フェニル-4-ヒドロキシ-フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0094】
9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[6-ヒドロキシ-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-ヒドロキシ-1-ナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
【0095】
前記式(3a)および(3b)において、X1aおよびX1bのハロゲン原子としては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子などが挙げられ、好ましくは臭素原子である。
【0096】
化合物(3a)(3b)(またはその塩)[またはハロアルカン酸(またはその塩)もしくはその誘導体]としては、炭素数4以上のハロゲン化カルボン酸(またはその塩)またはその誘導体であってもよく、好ましくは化合物(1)の好ましい態様に対応する化合物、例えば、ハロアルカン酸、具体的には2-ブロモ酪酸、3-ブロモ酪酸、4-ブロモ酪酸などのC4-11ブロモアルカン酸、これらのC4-11ブロモアルカン酸に対応するC4-11クロロアルカン酸(臭素原子に代えて塩素原子が結合したアルカン酸)、およびこれらの誘導体、例えば、アルキルエステルなどのエステル、酸クロリドなどの酸ハライド、金属塩などの塩などが挙げられる。好ましい化合物(3a)(3b)は、C4-6ブロモアルカン酸、C4-6クロロアルカン酸などのC4-6ハロアルカン酸またはこれらの誘導体であり、さらに好ましくはC4-5ブロモアルカン酸、C4-5クロロアルカン酸などのC4-5ハロアルカン酸またはこれらのエステル、なかでも、さらに好ましくは直鎖状C4-5ブロモアルカン酸、直鎖状C4-5クロロアルカン酸などの直鎖状C4-5ハロアルカン酸またはこれらのアルキルエステル、特に、4-ブロモ酪酸エチルなどの直鎖状C4-5ブロモアルカン酸またはそのC1-4アルキルエステルが好ましい。これらの化合物(3a)(3b)(またはその塩)は、比較的安価で取り扱い性(または安全性)に優れ、生産性(または量産性)を有効に向上できる。
【0097】
化合物(3a)(またはその塩)と化合物(3b)(またはその塩)とは、互いに同一の化学構造を有するのが好ましい。化合物(3a)(3b)(またはその塩)は、市販品などを利用できる。
【0098】
化合物(2)と、化合物(3a)(3b)(またはその塩)の合計量との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/2~1/10程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、1/2.2~1/5、1/2.4~1/3、1/2.5~1/2.7である。
【0099】
化合物(2)と化合物(3a)(3b)(またはその塩)との反応は、通常、塩基性化合物(塩基性触媒、塩基触媒)の存在下で行ってもよい。塩基性化合物としては、例えば、無機塩基、有機塩基などが挙げられる。
【0100】
無機塩基としては、例えば、金属水酸化物、金属水素化物、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩などが挙げられる。
【0101】
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などが挙げられる。
【0102】
金属水素化物としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物などが挙げられる。
【0103】
金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩などが挙げられる。
【0104】
金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩などが挙げられる。
【0105】
また、有機塩基としては、例えば、アミン類、カルボン酸金属塩、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0106】
アミン類としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどが挙げられる。
【0107】
脂肪族アミンとしては、例えば、脂肪族第3級アミンなどの第1ないし3級脂肪族アミン、具体的には、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn-プロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、トリシクロヘキシルアミンなどのトリシクロアルキルアミン、メチルジシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0108】
芳香族アミンとしては、第1ないし3級芳香族アミン、例えば、N,N-ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミンなどが挙げられる。
【0109】
複素環式アミンとしては、例えば、第1ないし3級複素環式アミン、具体的には、ピコリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1-メチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ-7-センなどの複素環式第3級アミン、ピペリジンなどの複素環式第2級アミンなどが挙げられる。
【0110】
カルボン酸金属塩としては、例えば、酢酸ナトリウムなどの酢酸アルカリ金属塩、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0111】
第4級アンモニウム塩としては、塩化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。
【0112】
第4級ホスホニウム塩としては、例えば、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0113】
これらの塩基性化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうち、金属炭酸塩などの無機塩基が好ましく、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩がさらに好ましい。アルカリ金属炭酸塩は、アルカリ金属水酸化物などと比べて、アルカリ性(塩基性)が比較的低く、取り扱い性(または安全性)に優れるとともに、生産性(または量産性)を有効に向上できる。
【0114】
塩基性化合物の使用量は、反応に応じて調整してもよく、化合物(2)のヒドロキシル基1モルに対して、例えば0.1~10モル、好ましくは以下段階的に、1~5モル、1.5~4モル、2~3モルである。
【0115】
化合物(2)と化合物(3a)(3b)(またはその塩)との反応は、溶媒の非存在下で行ってもよく、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば限定されないが、例えば、アルコール類、アミド類、ニトリル類、硫黄化合物、エーテル類、炭化水素類などの有機溶媒;水などの無機溶媒などが挙げられる。
【0116】
アルコール類としては、例えば、アルカノール、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどのC1-6アルカノール;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、具体的には、2-メトキシエタノールなどのC1-4アルコキシ-C2-4アルカノール;シクロヘキサノールなどのシクロアルカノール;グリセリンなどが挙げられる。
【0117】
アミド類としては、例えば、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのN-モノまたはジC1-4アルキルホルムアミド;N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのN-モノまたはジC1-4アルキル-アセトアミドなどが挙げられる。
【0118】
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。
【0119】
硫黄化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホン類、具体的には、スルホランなどの環状スルホンなどが挙げられる。
【0120】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテルなどが挙げられる。
【0121】
炭化水素類としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0122】
これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。また、溶媒としては、DMFなどのアミド類が好ましい。
【0123】
溶媒の割合は、例えば、化合物(2)および化合物(3a)(3b)(またはその塩)の総量100質量部に対して、例えば10~1000質量部、好ましくは100~500質量部、さらに好ましくは200~400質量部である。
【0124】
化合物(2)と化合物(3a)(3b)(またはその塩)との反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中または不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよく、好ましくは窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下である。化合物(2)と化合物(3a)(3b)(またはその塩)との反応は、減圧下、常圧下または加圧下で行ってもよい。反応温度は、例えば0~250℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30~150℃、50~120℃、60~100℃、70~90℃、75~85℃である。なお、本発明では、比較的低温であっても反応が効率よく進行するようであり、例えば90℃以下、好ましくは50~85℃であっても効率よく進行するため、生産性を有効に向上できる。また、反応は、溶媒を還流させながら行ってもよい。反応時間は、例えば0.5~72時間程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、48時間以下、24時間以下、18時間以下、12時間以下、6時間以下、1~3時間である。本発明では、比較的短時間であっても反応が効率よく進行するようであり、生産性を有効に向上できる。
【0125】
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、中和、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、乾燥、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0126】
(加水分解工程)
なお、反応工程において、R3aおよびR3bが基[-ORh3]である化合物(1)を調製した場合、必要に応じて、得られたR3aおよびR3bが基[-ORh3]である化合物(1)を慣用の方法により加水分解(またはけん化)する加水分解工程(けん化工程)を経て、R3aおよびR3bがヒドロキシル基である化合物(1)(またはその塩)を調製してもよい。このように、反応工程後に加水分解(またはけん化)工程を経て、R3aおよびR3bがヒドロキシル基である化合物(1)(またはその塩)を調製すると、副生成物の生成を抑制でき、生産性を有効に向上できるようである。なお、反応工程で、化合物(2)とR3aおよびR3bがヒドロキシル基である化合物(3a)(3b)(またはその塩)とを反応させて、直接的に(加水分解することなく)R3aおよびR3bがヒドロキシル基である化合物(1)(またはその塩)を調製しようとすると、副生成物として、化合物(2)とR3aおよびR3bがヒドロキシル基である化合物(3a)(3b)(またはその塩)とのエステルなどが生成して、純度や収率が低下し易いようである。
【0127】
加水分解(またはけん化)は、前述した化合物(2)と化合物(3a)(3b)との反応後、得られた反応混合物を分離精製することなく、または分離精製してから行ってもよく、例えば、得られた反応混合物を水などで洗浄し、有機溶媒(抽出溶媒)で抽出して、得られた抽出物(有機溶媒層)に加水分解(またはけん化)反応に供してもよい。抽出溶媒としては、例えば、前述した化合物(2)と化合物(3a)(3b)(またはその塩)との反応の項で例示した有機溶媒(反応溶媒)、ケトン類、具体的には、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの鎖状ケトン類(またはジアルキルケトン)などが挙げられる。
【0128】
加水分解(またはけん化)反応は、通常、水の存在下で行われる。水の割合は、R3aおよびR3bが基[-ORh3]である化合物(1)1モル[または、前述した化合物(2)と化合物(3a)(3b)との反応に用いた化合物(2)1モル]に対して、例えば2~20モル、好ましくは以下段階的に、3~15モル、4~10モル、5~7モル、5.5~6.5モルである。なお、水は、後述する塩基性化合物の水溶液の形態で添加してもよい。
【0129】
加水分解(またはけん化)反応は、塩基性化合物の存在下で行ってもよい。塩基性化合物としては、前述した化合物(2)と化合物(3a)(3b)(またはその塩)との反応の項で例示した塩基性化合物などが挙げられる。これらの塩基性化合物は、必要に応じて、水溶液の形態などで添加してもよい。これらの塩基性化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい塩基性化合物は金属水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物であり、有機溶媒への溶解性に優れ、反応系を不均一化し難く、反応を効率よく進行できる点から、少なくとも水酸化カリウムを用いるのが特に好ましい。加水分解(またはけん化)反応の際に添加する水酸化カリウムなどの塩基性化合物の割合は、R3aおよびR3bが基[-ORh3]である化合物(1)1モル[または、前述した化合物(2)と化合物(3a)(3b)との反応に用いた化合物(2)1モル]に対して、例えば2~20モル、好ましくは以下段階的に、3~15モル、4~10モル、5~9モル、6~8モル、6.5~7.5モルである。なお、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの双方を用いる場合の割合は、例えば、前者/後者(モル比)=10/90~70/30程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、20/80~50/50、25/75~45/55、30/70~40/60である。水酸化カリウムの割合が少なすぎると、反応の進行に伴って析出が生じ、反応系が不均一になり、反応を効率よく進行できないおそれがある。
【0130】
加水分解(またはけん化)反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中または不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよく、好ましくは空気中(大気中)で行ってもよい。加水分解(またはけん化)反応は、減圧下、常圧下または加圧下で行ってもよい。反応温度は、例えば50~150℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、80~140℃、90~130℃、100~120℃である。また、反応は、溶媒を還流させながら行ってもよい。反応時間は、例えば1~24時間程度であってもよく、好ましくは6~18時間である。
【0131】
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、中和、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、乾燥、晶析、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0132】
例えば、反応混合物は、塩酸などの酸を加えて析出させてろ過し、得られたろ物をTHFなどのエーテル類、MIBKなどのケトン類を用いて溶解して、水洗などで洗浄した後、晶析または再沈殿により精製してもよい。晶析または再沈殿では、反応混合物をトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類に溶解し、貧溶媒としてのn-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類と混合することで晶析または再沈殿してもよい。晶析または再沈殿は、常温下または低温下(冷却しながら)で行ってもよく、例えば-10℃~30℃、好ましくは-5℃~20℃、さらに好ましくは0~15℃、特に5~10℃である。
【0133】
本発明の製造方法では、化合物(1)(またはその塩)を高収率かつ高純度に調製することができ、生産性に優れている。前記化合物(1)(またはその塩)の収率は、前記化合物(2)を基準として、例えば70~100%程度、具体的には75~98%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、80%以上、85%以上、90%以上である。前記収率は、反応工程でR3aおよびR3bが基[-ORh3]である化合物(1)を調製した後に、加水分解(またはけん化)工程を経て、R3aおよびR3bがヒドロキシル基である化合物(1)(またはその塩)を調製したときの収率(反応工程および加水分解工程を総合した収率)であってもよい。
【0134】
化合物(1)(またはその塩)の純度(LC純度)は、例えば80~100面積%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、85面積%以上、90面積%以上、95面積%以上、98面積%以上である。
【0135】
本明細書および特許請求の範囲において、純度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0136】
[樹脂]
本発明は、前記化合物(1)(またはその塩)またはその誘導体を原料(前駆体成分または中間体)または重合成分(またはモノマー成分)として少なくとも含む樹脂を包含する。
【0137】
本発明の樹脂は、硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂)であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0138】
硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂)としては、前記化合物(1)(またはその塩)を原料とする樹脂であればよく、例えば、エピハロヒドリンなどとの反応によるグリシジルエステル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂(またはこのエポキシ樹脂を含む硬化性組成物の硬化物);ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどとの反応による(メタ)アクリル系樹脂(またはこの(メタ)アクリル系樹脂を含む硬化性組成物の硬化物);前記化合物(1)(またはその塩)と、ポリオール成分、ポリアミン成分および/またはポリイソシアネート成分などとの反応物(硬化物または三次元架橋物)などが挙げられる。
【0139】
熱可塑性樹脂としては、重合成分(モノマー成分)として少なくともジカルボン酸成分を含み、このジカルボン酸成分が少なくとも前記化合物(1)(またはその塩)を含んでいればよく、例えば、重合成分としてのジカルボン酸成分に加えて、さらに、ジオール成分を含むポリエステル系樹脂であってもよく、ジアミン成分などを含むポリアミド系樹脂であってもよい。
【0140】
前記ポリエステル系樹脂としては、主鎖中の連結基[重合反応により、互いに隣接する構成単位(重合成分由来の構成単位)を繋ぐ結合として形成される基(2価の基)]として、少なくともエステル結合を含む樹脂であればよく、連結基全体に対して、例えば30~100モル%、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上のエステル結合を含んでいればよい。なお、連結基としての前記エステル結合には、炭酸エステル結合も含まれる。代表的なポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0141】
これらの樹脂のうち、成形性や光学的特性などの観点から、熱可塑性樹脂が好ましく、耐水性や寸法安定性の観点から、ポリエステル系樹脂がさらに好ましく、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0142】
[成形体]
本発明は、前記化合物(1)(またはその塩)またはその誘導体、および/または前記化合物(1)を原料とする樹脂(第1の樹脂)を少なくとも含む成形体も包含する。なお、成形体が、前記化合物(1)(またはその塩)またはその誘導体を含む場合、前記化合物(1)(またはその塩)またはその誘導体は第2の樹脂に対する樹脂添加剤として配合されていてもよい(前記化合物(1)(またはその塩)またはその誘導体と、第2の樹脂とを含む樹脂組成物の成形体であってもよい)。なお、第2の樹脂は、慣用の樹脂、例えば、(熱または光)硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などであってもよい。
【0143】
成形体は、慣用の添加剤を含んでいてもよく、前記添加剤としては、例えば、充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、炭素材、安定剤、低応力化剤などが挙げられる。安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の合計割合は、前記樹脂100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは以下段階的に、30質量部以下、0~10質量部であり、0.1~5質量部程度であってもよい。
【0144】
成形体の製造方法は、特に制限されず、樹脂の種類などに応じて、慣用の成形方法であってもよい。例えば、第1および/または第2の樹脂が熱可塑性樹脂である場合、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して成形体を製造できる。
【0145】
また、成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状などのレンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
【0146】
成形体は、優れた光学的特性や耐熱性などをバランスよく備えているため、光学フィルム(光学シート)、光学レンズなどの光学部材として有効に利用できる。
【0147】
なお、フィルムは、前記樹脂を、慣用の成膜方法、例えば、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(または成形)することにより製造できる。
【0148】
フィルムの平均厚みは、1~1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば1~200μm、好ましくは5~150μm、さらに好ましくは10~120μmである。
【0149】
フィルムは、未延伸または延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであっても低い複屈折を維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0150】
延伸倍率は、一軸延伸または二軸延伸において各方向にそれぞれ、例えば1.1~10倍、好ましくは1.2~8倍、さらに好ましくは1.5~6倍である。なお、二軸延伸の場合、等延伸、例えば、縦横両方向に1.5~5倍延伸であってもよく、偏延伸、例えば、縦方向に1.1~4倍、横方向に2~6倍延伸であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸、例えば、縦方向に2.5~8倍延伸であってもよく、横延伸、例えば、横方向に1.2~5倍延伸であってもよい。
【0151】
延伸フィルムの平均厚みは、例えば1~150μm、好ましくは3~120μm、さらに好ましくは5~100μmである。
【0152】
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(または未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限が無く、一軸延伸の場合、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法)またはチューブ法のいずれであってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
【実施例0153】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価項目の詳細について示す。
【0154】
[評価方法]
H-NMR)
試料を、内部標準物質としてテトラメチルシランを用い、重クロロホルムなどの重溶媒に溶解し、核磁気共鳴装置(BRUKER社製「AVANCE III HD」)を用いて、H-NMRスペクトルを測定した。
【0155】
(LC純度)
HPLC(高性能または高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「LC-2010A HT」、カラムとして東ソー(株)製「ODS-80TM」を用いて、試料をアセトニトリルに溶解して測定し、HPLC純度[面積%]を算出した。
【0156】
(屈折率)
屈折率は、屈折率計((株)アタゴ製「RX-7000i」)を用いて、温度25℃、波長589nm(D線)で測定した。なお、屈折率の算出は、試料をN-メチルー2-ピロリドン(NMP)に溶解して、濃度が異なる複数の溶液を調製し、得られた溶液の屈折率を測定することで作成した検量線(近似直線)において、濃度を100質量%に外挿して求めた。
【0157】
(重量減少温度)
熱重量測定-示差熱分析装置(TG-DTA)(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TG/DTA6200」)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件下で30~520℃の温度範囲を測定し、試料の質量が1%、5%および10%減少したときの温度をそれぞれ求めた。
【0158】
(溶剤溶解性)
試料を所定の濃度となるよう溶剤(溶媒)に添加して、溶解性を確認し、以下の基準で評価した。
【0159】
◎…常温(25℃程度)で1時間以内に溶解した
○…常温(25℃程度)で1時間を超えて3時間以内に溶解した
△…常温(25℃程度)で3時間以内に溶解せず、50℃で1時間以内に溶解した
×…常温(25℃程度)で3時間以内に溶解せず、50℃で1時間以内に溶解しなかった。
【0160】
[実施例1]
【0161】
【化5】
【0162】
窒素雰囲気下、1Lの反応容器に、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン(BNF) 22.5g(50mmol)と4-ブロモ酪酸エチル 25.4g(130mmol、2.6当量(eq))、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 140gを加え攪拌した。そこへ炭酸カリウム 34.6g(250mmol、5.0当量(eq))を加え80℃、2時間攪拌した。原料のBNFの消失を確認した後に、40℃程度に冷却し、メチルイソブチルケトン(MIBK) 168gを加えた。得られた混合物にイオン交換水280gを加えて水層を除去し、有機層を抽出(回収)する作業を2回繰り返した。
【0163】
得られた有機層に48質量%水酸化ナトリウム水溶液 10g(120mmol、2.4当量(eq))と水酸化カリウム(固形、純度85質量%) 15.2g(230mmol、4.6当量(eq))とを加え、大気雰囲気下、110℃で還流させ、12時間反応した。反応終了後、テトラヒドロフラン(THF)およびMIBKを加えたのちに、15質量%塩酸 31.6g(130mmol)を加えてpH1に調整した後、析出した結晶をろ取した。得られた結晶をTHFおよびMIBKに溶解した。得られた溶液にイオン交換水を加えて水洗し、有機層を回収する作業を3回繰り返し、得られた有機層を濃縮して有機溶媒を除去した後、トルエン 45gを加えて加温溶解し、均一な溶液にした。得られた溶液を5~10℃に冷却したn-ヘプタンの中にゆっくり滴下し、結晶化させて単離して、目的物である9,9-ビス[6-(3-カルボキシプロピルオキシ)-2-ナフチル]フルオレン(以下、BNFジブチルカルボン酸ともいう)を28.8g(収率93%、LC純度98面積%)と高収率、高純度で得ることができた。
【0164】
得られたBNFジブチルカルボン酸のH-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
【0165】
H-NMR(CDCl、300MHz):δ(ppm)=2.1(m,4H)、2.5-2.6(t,4H)、4.1(t,4H)、7.0(m,4H)、7.2-7.3(m,14H)、7.3-7.4(m,2H)。
【0166】
得られたBNFジブチルカルボン酸の単体での屈折率nD(D線、25℃)は1.6386であり、高屈折であった。また、BNFジブチルカルボン酸の1%重量減少温度は109℃、5%重量減少温度は206℃、10%重量減少温度は307℃であり、高い耐熱性を示した。
【0167】
BNFジブチルカルボン酸の溶剤溶解性試験の結果を下記表1に示す。なお、表1中、「PGMEA」は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味し、「PGME」は、プロピレングリコールモノメチルエーテルを意味し、「NMP」はN-メチル-2-ピロリドンを意味する。
【0168】
【表1】
【0169】
表1の結果から明らかなように、BNFジブチルカルボン酸は溶剤溶解性に優れていた。PGMEA、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、PGME、NMPおよびクロロホルムに対する溶解性は特に優れ、高屈折率なネガ型レジスト材料として適していた。
【0170】
なお、表1中の結果が△であった溶液は、常温(25℃程度)で数日間保管したところ、析出が確認された。
【0171】
[比較例1]
特開2009-256332号公報の実施例1に準じて、下記式で表される9,9-ビス[6-(カルボキシメトキシ)-2-ナフチル]フルオレンを調製した。高温条件下やアルカリ条件下において分解が確認され、耐熱性が低かった。
【0172】
【化6】
【0173】
[比較例2]
ブロモ酪酸エチルに代えて、ブロモプロピオン酸を用い、反応温度を110℃、反応時間を72時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、下記式で表される9,9-ビス[6-(2-カルボキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンの調製を試みた。反応終了後(72時間後)にHPLCで転化率を確認したところ、転化率0%と反応性が極めて低く、原料のほとんどが回収された(ほとんどの原料が未反応であった)。比較例2では、実施例1とは異なって反応が進行しなかったのは、ブロモプロピオン酸骨格とブロモ酪酸骨格との電荷の偏り方の違いが影響したためではないかと推測された。
【0174】
【化7】
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明のジカルボン酸(またはその塩)またはその誘導体は、高い屈折率および耐熱性を示すため、樹脂原料や、屈折率向上剤、耐熱性向上剤、硬化剤などの添加剤(または樹脂添加剤)などとして有効に利用できる。前記硬化剤としては、エポキシ樹脂に対する硬化剤などが挙げられる。また、レジスト材料、例えば、ネガ型(硬化型)またはポジ型レジスト材料などとしても有効に利用できる。例えば、ネガ型(硬化型)レジスト材料では、アルカリ可用性樹脂の架橋剤などの形態などで利用でき、ポジ型レジスト材料では、R3aおよびR3bを分岐鎖状アルコキシ基などとして、光酸発生剤とともに用いる形態などで利用してもよい。
【0176】
本発明の樹脂は、高い耐熱性を示すため、様々な用途で利用でき、例えば、コーティング剤またはコーティング膜、具体的には、塗料、インキ、電子機器や液晶部材などの保護膜など;接着剤、粘着剤;樹脂充填剤;電気・電子材料または電気・電子部品(電気・電子機器)、具体的には、帯電防止剤、キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、フォトクロミック材料、ホログラム記録材料、帯電防止トレイ、導電シート、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、カラーフィルタ、有機EL素子、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、センサ、EMIシールドフィルムなど;機械材料または機械部品(機器)、具体的には、自動車用材料または部品、航空・宇宙関連材料または部品、摺動部材などに利用してもよい。
【0177】
また、本発明の樹脂は、高い耐熱性とともに高い屈折率などの優れた光学的特性も示すため、光学部材として有効に利用できる。
【0178】
代表的な光学部材としては、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどの光学フィルム(光学シート);メガネ用レンズ、カメラ用レンズなどの光学レンズ;プリズム、ホログラム、光ファイバーなどが挙げられる。
【0179】
光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルム、偏光フィルムを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。これらの光学フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)、電子ペーパなどのディスプレイ用の光学フィルムとして有効に利用でき、具体的な機器または装置としては、テレビジョン;デスクトップ型PC、ノート型PCまたはタブレット型PCなどのパーソナル・コンピュータ(PC);スマートフォン、携帯電話;カー・ナビゲーションシステム;タッチパネルなどフラットパネルディスプレイ(FPD)を備えた機器または装置などが挙げられる。
【0180】
光学レンズとしては、例えば、メガネ用レンズ、コンタクトレンズ、カメラ用レンズ、VTRズームレンズ、ピックアップレンズ、フレネルレンズ、太陽集光レンズ、対物レンズ、ロッドレンズアレイなどが挙げられる。
【0181】
光学レンズが搭載される代表的な機器または装置としては、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラなどのカメラ機能を有する小型機器またはモバイル機器;ドライブレコーダー、バックカメラ(リアカメラ)などの車載用カメラなどが挙げられる。