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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004769
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】空調機及びファンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20240110BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240110BHJP
   F24F 1/0047 20190101ALN20240110BHJP
   F24F 1/005 20190101ALN20240110BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/64
F24F1/0047
F24F1/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104584
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石塚 浩史
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA27
3L260BA41
3L260CA12
3L260CB04
3L260CB63
3L260EA07
3L260FA07
3L260FB12
(57)【要約】
【課題】空調負荷が低下した状況で、室内温度の均一化と省エネルギー化を実現することができる空調機を提供する。
【解決手段】空調機は、部屋の天井又は天井の近傍に設けられた空気の吸込口と、吸込口に設けられたファンと、ファンを制御する制御装置と、ファンの回転によって吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、部屋の床又は床の近傍に設けられた空気の吹出口と、空調ユニットと吹出口を接続するダクトと、を有し、制御装置は、部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、ファンの回転数を、通常運転時の下限値よりも低下させて運転する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吸込口と、
前記吸込口に設けられたファンと、
前記ファンを制御する制御装置と、
前記ファンの回転によって前記吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、
前記部屋の床又は前記床の近傍に設けられた空気の吹出口と、
前記空調ユニットと前記吹出口を接続するダクトと、
を有し、
前記制御装置は、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファンの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する、
空調機。
【請求項2】
部屋の床又は前記床の近傍に設けられた空気の吸込口と、
前記吸込口に設けられたファンと、
前記ファンを制御する制御装置と、
前記ファンの回転によって前記吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、
前記部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吹出口と、
前記空調ユニットと前記吹出口を接続するダクトと、
を有し、
前記制御装置は、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファンの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する、
空調機。
【請求項3】
前記下限値よりも低下させて運転するときの前記ファンの回転数は、前記部屋に自然対流を生じさせ、前記部屋の快適性を達成できるよう定められた所定の回転数である、
請求項1または請求項2に記載の空調機。
【請求項4】
前記部屋の面積および快適性に基づく高さによって規定される体積の空気を、快適性に基づく時間をかけて吸入できるような回転数を定めた設定テーブル、をさらに有し、
前記制御装置は、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記体積と、前記設定テーブルとに基づいて、前記ファンを運転する、
請求項1または請求項2に記載の空調機。
【請求項5】
前記快適性に基づく高さが、1.1mである、
請求項4に記載の空調機。
【請求項6】
前記吹出口が、前記床から0.6m以下の位置に設けられている、
請求項1に記載の空調機。
【請求項7】
部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吸込口および前記部屋の床又は前記床の近傍に設けられた空気の吹出口、又は、前記床又は前記床の近傍に設けられた空気の吸込口および前記天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吹出口、の何れかと、前記吸込口に設けられたファンと、前記ファンの回転によって前記吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、前記空調ユニットと前記吹出口を接続するダクトと、を有する空調機が、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファンの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する、ファンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機及びファンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の空調機は、室内の空気を循環させて空調を行う。そのため、空調機のファンを、室内空気が循環するような風量となるように、常時又は断続的に運転する。冷暖房の能力が不要な場合でも室内空気を循環させるためだけにファンを運転すると、ファンの動力エネルギーを無駄に使用してしまう。これに対処するために、風量を低下させると室内温度が均一にならず、快適性が損なわれる。また、室内温度が均一でないと、適切なタイミングで空調を再開することができない可能性がある。
【0003】
特許文献1には、天井から室内の空気を吸い込んで、空調後の空気を床の近傍から吹き出す構成を有した空調機において、冷暖房の負荷が小さい場合には、冷暖房能力を下げるか停止する制御を行うことが開示されている。特許文献1には、冷暖房の負荷が小さいときのファンの制御については開示が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-193743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空調負荷が低下した状況において、室内温度の均一化と省エネルギー化を実現するファンの運転方法が求められている。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる空調機及びファンの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、空調機は、部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吸込口と、前記吸込口に設けられたファンと、前記ファンを制御する制御装置と、前記ファンの回転によって前記吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、前記部屋の床又は前記床の近傍に設けられた空気の吹出口と、前記空調ユニットと前記吹出口を接続するダクトと、を有し、前記制御装置は、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファンの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する。
本開示の一態様によれば、空調機は、部屋の床又は前記床の近傍に設けられた空気の吸込口と、前記吸込口に設けられたファンと、前記ファンを制御する制御装置と、前記ファンの回転によって前記吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、前記部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吹出口と、前記空調ユニットと前記吹出口を接続するダクトと、を有し、前記制御装置は、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファンの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する。
【0008】
本開示の一態様によるファンの制御方法では、部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吸込口および前記部屋の床又は前記床の近傍に設けられた空気の吹出口、又は、前記床又は前記床の近傍に設けられた空気の吸込口および前記天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吹出口、の何れかと、前記吸込口に設けられたファンと、前記ファンの回転によって前記吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、前記空調ユニットと前記吹出口を接続するダクトと、を有する空調機が、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファンの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の空調機及びファンの制御方法によれば、空調負荷が低下した状況で、室内温度の均一化と省エネルギー化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る空調機の一例を示す概略図である。
図2】実施形態に係るファンの自然対流運転について説明する図である。
図3】実施形態に係る自然対流運転時のファンの回転数の設定例を示す図である。
図4】実施形態に係るファンの制御の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る空調機の他の例を示す概略図である。
図6】実施形態に係る空調機の他の例におけるファンの自然対流運転について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態による空調機及びファンの制御方法について図1図6を参照して説明する。
(構成)
空調機100は、室内機10と、室外機20と、ダクト30を備える。室内機10は、空調対象となる部屋Aの天井裏などに設置され、吸込口W1から部屋Aの空気を吸入し、吸入した空気を適切な温度に調節してダクト30へ送出する。ダクト30は、室内機10と部屋Aの吹出口W2を接続する。吹出口W2は、部屋Aの床や側壁の下部に設けられている。室内機10から供給される空気は、ダクト30を通じて吹出口W2から部屋Aへ吹き出され、部屋Aを冷房または暖房する。このように空調機100は、対流式の空調を行って部屋Aの冷暖房を行う。図1では、吹出口W2が床と側壁の両方に設けられているが、吹出口W2は、どちらか一方に設けられていればよい。図では、吸込口W1、吹出口W2がそれぞれ天井、側壁、床の1か所ずつ設けられているが、吸込口W1、吹出口W2の数、形状、面積などは任意に設定することができる。吹出口W2を設ける部屋Aの側壁の下部とは、例えば、床からの高さ0.6m以下の位置である。これは、部屋Aにて座っているユーザの快適性を評価する場合に基準とする高さである。吹出口W2は、この基準高さ以下の位置に設けられる。吹出口W2から部屋Aへ吹き出された空気は、部屋Aを冷房または暖房して、再び吸込口W1から室内機10へ吸入される。
【0012】
室内機10は、室内熱交換器11と、ファン12と、制御装置13と、温度センサ14を有している。ファン12が回転することにより空気の流れが生じ、部屋Aの空気が、吸込口W1から室内機10へ吸入され、ダクト30へ送出される。室内機10へ吸入された空気は、室内熱交換器11との間で熱交換を行い、適切な温度に調節されて、ダクト30へ送出される。制御装置13は、例えばマイコン等のCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を備えたコンピュータである。制御装置13は、吸込口W1から吸入された空気の温度を計測する温度センサ14と接続されている。制御装置13は、温度センサ14の計測値などから判断される空調負荷(冷房や暖房の負荷)に基づいて、ファン12の回転数を制御する。例えば、部屋Aの設定温度と温度センサ14の計測値に所定の閾値以上の差があれば、制御装置13は、ファン12を通常運転し、部屋Aの設定温度と温度センサ14の計測値の差が閾値未満であれば(冷暖房を行う必要が無い温度差であれば)、ファン12の回転数を通常運転の下限値よりもさらに低下させた「自然対流運転」を行う。室内機10は、室外機20と冷媒配管15、通信線(図示せず)等で接続されている。図示は省略するが、室外機20は、圧縮機、膨張弁、室外熱交換器、四方弁などを備えている。冷媒は、冷媒配管15を通じて室内機10と室外機20を循環する。また、通信線で互いの情報の送受信をすることで、室内機10では、室外機20の圧縮機(図示せず)などの運転状態を検出することができ、室外機20では、例えば、温度センサ14の計測値を取得することができる。室内機10と室外機20は、冷凍サイクルを構成し、冷媒を冷凍サイクル内で循環させることによって冷媒の加熱・冷却を行う。例えば、室外機20は、温度センサ14の計測値に基づいて、冷凍サイクルを制御し、吸込口W1から吸入した空気を所望の温度に調整する。
【0013】
なお、図1に示す空調機100の構成は一例であってこれに限定されない。例えば、吸込口W1は部屋Aの天井ではなく、部屋Aの上部(人の背より高い位置)の側壁に設けられていてもよい。また、室内機10は天井裏以外の位置に設けられていてもよい。室内機10内の構成についても、例えば、ファン12の回転軸が、地面と平行となるように設けられていてもよい。
【0014】
次に図2を参照して、ファン12の自然対流運転について説明する。「自然対流運転」とは、部屋A内に自然対流を生じさせるような運転のことである。自然対流運転は、室内熱交換器11が熱交換する必要が無い場合、又は、必要な熱交換量が所定の閾値未満の場合、つまり、部屋Aの空調負荷が十分に小さい場合に実行される。部屋Aの空調負荷が十分に小さい場合、ファン12が通常運転を行うと、必要以上の風力を発生させることになり、エネルギーを無駄に消費することになる。反対に、ファン12の運転を停止してしまうと、部屋Aの快適性が損なわれ、部屋Aの空気が撹拌・循環しない為に室内温度が不均一となり、温度センサ14が計測する温度が正確な部屋Aの温度ではなくなる。そのため、冷暖房運転を再開する(又は空調負荷を高める)タイミングに狂いが生じる。そこで、本実施形態では、部屋Aの空調負荷が十分に小さい場合、室内で自然対流が生じるように、部屋Aの空気を移動させ、この目的のためにファン12を運転する。部屋Aの上部には温かい空気が集まり、部屋Aの下部には冷たい空気が集まる。この性質を利用して、部屋Aの上部の温かい空気を部屋Aの下部に移動させる。すると、部屋Aの下部に移動した暖かい空気は、自然と上昇する。これを繰り返すことにより、自然対流が発生し、部屋Aの空気が循環する。制御装置13は、部屋Aの上部の暖かい空気を下部へ移動するためにファン12を運転する。ファン12を運転すると、部屋Aの上部に集まった暖かい空気が吸入口W1から吸入される。部屋Aの空調負荷が十分に小さければ、室内熱交換器11による熱交換はほとんど(あるいは全く)行われず、暖かい空気は、ダクト30を通じて、部屋Aの下部へ移動する。移動した空気は、部屋Aの床又は下部に設けられた吹出口W2から部屋Aへ供給される。これにより、温かい空気が部屋Aの上部から下部へ移動する。部屋Aの下部から供給された温かい空気は上昇し、再び吸入口W1から吸入されて吹出口W2から室内へ供給される。このような空気の移動を繰り返すことで、継続的な自然対流が生じ、室内空気の循環や撹拌により、部屋Aの空気が均一化する。
【0015】
次に部屋Aの上部から下部へ移動する空気の量について検討する。ある空間内に立っている人の快適性を計る高さの基準として1.1mが用いられる。従って、床から1.1mの高さの範囲V1に存在する量(体積)の空気を、人が快適さを感じるような速度vで循環させることができれば、快適性を達成できると考えられる。換言すれば、速度vで、部屋A上部の範囲V2(範囲V2の体積=範囲V1の体積)の空気を部屋Aの下部へ移動できれば、快適性を達成できる。ここで単純化して、部屋Aから空気を吸入した速度のまま、ダクト30を通じて、部屋Aの下部へ空気を移動し、室内へ供給できると考えると、制御装置13は、部屋A上部の範囲V2を速度vで吸入できるようにファン12を運転すればよいことになる。
【0016】
そこで、部屋の面積に応じた範囲V2の体積の空気を速度vで移動するために必要な風量、ファンの回転数を事前に実験や計算などで求め、例えば、図3に例示する設置テーブルとして制御装置13に記憶させる。そして、空調機100を設置するときに部屋Aの面積を制御装置13に設定する。制御装置13は、自然対流運転を行う際に設置テーブルを参照して、面積に応じた回転数を取得し、この回転数でファン12を運転する。例えば、図3の設置テーブルを作成する場合には、部屋の面積Y(m)×高さ1.1(m)の体積の空気を、例えば10分間で循環させるというような設定の下で、実験や計算により作成する。10分間というのは、快適と感じる速度vに対応する時間の例である。図3に例示するテーブルの場合、部屋Aの面積が25(m)であれば、制御装置13は、空調負荷が十分に小さい状況となると、X3(rpm)でファン12を回転させる。なお、図3の例では、部屋の面積「11~20(m)」に対し、一律のファン回転数を設定しているが、さらに細分化して、例えば、1(m)ごとのファン回転数を設定したテーブルを用意してもよい。また、高さについても、1.1m以外の高さを採用して、ファン回転数を算出するようにしてもよいし、設定テーブルに1.1mを含む複数の高さおよび複数の面積と対応付けたファンの回転数を登録してもよい。冷暖房の負荷が十分に小さい状況となった場合に、図3の設定テーブルに基づいてファン12を運転することで、自然対流による空気の循環を促し、快適性を損なわずに、室内空気の均一化を実現することができる。なお、自然対流を発生させるためには、ある程度以上の空気を上部から下部へ移動させて、部屋Aの下部から室内へ供給しなければ、自然対流を発生させることができないが、上記の方法で設定テーブルに設定された回転数によれば、自然対流の発生に十分な空気の移動を生じさせることができる。
【0017】
また、通常運転のファンの回転数は、空調機100における熱交換の効率(COP:Coefficient Of Performance)が向上するように設計されるが、自然対流運転時には熱交換が行われない為、熱交換のCOPは無視することができる。上記した方法で算出される自然対流を生じさせ、且つ快適性を維持することができるファンの回転数(図3の設置テーブルに登録される回転数)は、通常運転にて要求されるファンの回転数の下限値よりもさらに低速となる。従って、自然対流運転を実行することにより、従来のように熱交換が必要ない状況でもファン12を通常運転させる場合と比較して、省エネルギー化を達成することができる。
【0018】
(動作)
次に図4を参照して、ファン12の制御について説明する。
図4は、実施形態に係るファンの制御の一例を示すフローチャートである。
前提として制御装置13は、図3に例示する設定テーブルを記憶している。まず、オペレータが、各種の設定を行う(ステップS1)。例えば、オペレータは、空調機100のリモコン(リモートコントローラ)を操作して、空調対象の部屋Aの面積を設定する。また、設定テーブルにて、部屋Aの面積だけではなく、高さh1についても複数種類設定されている場合、オペレータは、循環させる空気量に関する高さを設定してもよい。また、オペレータは、空調負荷がどのような状態となるとファン12の運転を「通常運転」から「自然対流運転」へ切り替え、「自然対流運転」から「通常運転」へ復帰するかの設定を行う。例えば、室外機20が備える圧縮機が停止又はそれに近い状態(圧縮機の回転数が所定の閾値未満となる等)となるとファン12の運転を「通常運転」から「自然対流運転」へ切り替え、圧縮機が運転を再開すると、「自然対流運転」から「通常運転」へ復帰する等の設定を行う。あるいは、設定温度と温度センサ14の計測温度の差が所定値未満となると「自然対流運転」へ切り替え、温度差が所定値以上となると「通常運転」に復帰するといった設定でもよい。制御装置13は、部屋Aの面積や切り替え条件の設定などを取得し記憶する。「自然対流運転」への切り替え条件と、「通常運転」への復帰条件は異なっていてもよいが、ここでは、一例として、ある切り替え条件を満たす場合に、「自然対流運転」への切り替え、同条件を満たさない場合に「通常運転」への復帰することとする。
【0019】
ユーザがリモコンを操作して空調の開始を指示すると、空調機100が運転を開始する(ステップS2)。制御装置13は、ファン12の運転を開始する。制御装置13は、ファン12を通常運転する。通常運転についても空調負荷に応じた様々な回転数が定められていて、制御装置13は、空調負荷に応じた回転数でファン12を運転する。
【0020】
次に、制御装置13は、所定の周期で空調負荷を算出する(ステップS3)。例えば、制御装置13は、室外機20から圧縮機の運転状態を取得したり、温度センサ14の計測値と部屋Aの設定温度の差を算出したりする。空調負荷を算出すると、制御装置13は、算出した空調負荷と、ステップS1で設定した切り替え条件に基づいて、ファン12の運転を切り替えるかどうかを判定する(ステップS4)。例えば、制御装置13は、圧縮機の回転数が所定値未満又は停止中ならば「自然対流運転」でファン12を運転し、圧縮機が運転中ならば「通常運転」でファン12を運転すると判定する。あるいは、制御装置13は、温度センサ14の計測値と部屋Aの設定温度の差が所定値未満となっていれば「自然対流運転」でファン12を運転し、そうでなければ「通常運転」でファン12を運転すると判定する。
【0021】
制御装置13は、ステップS4にて「自然対流運転」と判定した場合、通常運転の下限値よりも風量を低下させてファン12を運転する(ステップS5)。具体的には、制御装置13は、図3の設定テーブルと、ステップS1で設定した部屋Aの面積等に基づいて、ファン12の回転数を決定し、決定した回転数でファン12を運転する。一方、ステップS4にて「通常運転」と判定した場合、制御装置13は、従来どおりに通常運転を行う(ステップS6)。
【0022】
次に制御装置13は、空調機の運転を終了するかどうかを判定する(ステップS7)。例えば、ユーザがリモコンを操作して空調を終了する操作を行うと、制御装置13は、空調機の運転を終了すると判定し、そうでない場合には、空調機100の運転を終了しないと判定する。空調機100の運転を終了すると判定すると、制御装置13は、ファン12を停止する(ステップS8)。空調機100の運転を終了しないと判定した場合、ステップS3以降の処理を繰り返し行う。
【0023】
以上、説明したように本実施形態によれば、空調機100の空調負荷が十分に小さくなると、ファン12の運転を「通常運転」から「自然対流運転」に切り替える。これにより、通常運転よりも少ないエネルギーで部屋Aに自然対流を発生させ、部屋全体の空気を混合し、部屋Aの温度を均一化することができる。室内機10の吸込み温度(温度センサ14の計測値)が部屋Aの温度と同一になる為、適切なタイミングで冷暖房運転を再開することができる。また、自然な空気の流れを創出することで、部屋Aに存在するユーザの快適性を損なうことなく、省エネルギー化を実現することができる。
【0024】
なお、図4のステップS3~S7の処理は、制御装置13が備えるプロセッサが、自身の記憶部からプログラムを読み出して実行することで実現される機能である。
【0025】
(他の構成例)
上記の実施形態では、部屋Aの上部の温かい空気を部屋Aの下部に移動させて、室内に移動させた温かい空気を供給することで自然対流を発生させることとしたが、部屋Aの下部に溜った冷たい空気を部屋Aの上部に移動させて室内に供給することにより、自然対流を発生させてもよい。図5に、冷たい空気の移動により自然対流を生じさせる制御を適用することができる空調機100aの一例を示す。空調機100aは、室内機10aと、室外機20aと、ダクト30aを備える。室内機10aは、部屋Aの床下などに設置され、吸込口W1aは部屋Aの床や側壁の下部(例えば、床から0.6m以下の高さ)に設けられる。また、吹出口W2aは、部屋Aの天井や側壁の上部に設けられる。室内機10aは、室内熱交換器11aと、ファン12aと、制御装置13aと、温度センサ14aとを備える。制御装置13aがファン12aを運転することにより、室内機10aは、部屋Aの下部に溜った空気を吸入し、吸入した空気を適切な温度に調節してダクト30aへ送出する。室内機10から供給される空気は、ダクト30aを通じて吹出口W2aから部屋Aへ吹き出され、部屋Aを冷房または暖房する。図4のフローチャートで説明したように、図5に示す空調機100aの場合でも制御装置13aは、空調負荷に応じて、ファン12aを通常運転又は自然対流運転させる。自然対流運転を行う場合、制御装置13aは、図3に例示する設定テーブルから部屋Aの面積等に応じた回転数を読み出して、読み出した回転数でファン12aを運転する。
【0026】
自然対流運転の場合の空気の流れについて、図6を参照して説明する。上述のように、冷房であれ暖房であれ、あるいは送風運転であれ、部屋Aの上部には温かい空気が集まり、部屋Aの下部には冷たい空気が集まる。ファン12aの運転により、部屋Aの下部の空気を、ダクト30aを通じて、部屋Aの上部に移動し、室内に供給すると、供給された冷たい空気は自然と下降する。これを繰り返すことにより、自然対流が発生し、部屋Aの空気が循環する。制御装置13aは、快適性を維持できる速度vで、部屋A下部の範囲V1の空気を部屋A上部へ移動するような回転数(図3の設定テーブルに登録された回転数)でファン12aを運転する。このような運転により、図5に例示する構成の空調機100aにおいても、空調負荷が十分に小さい状況となった場合、自然対流による空気の循環を促し、快適性を損なわずに、室内空気の均一化を実現することができる。また、通常運転の下限値よりも低速でファン12aを運転することで省エネルギー化を達成することができる。
【0027】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0028】
<付記>
各実施形態に記載の空調機及びファンの制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0029】
(1)第1の態様の空調機100は、部屋Aの天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吸込口W1と、前記吸込口W1に設けられたファン12と、前記ファン12を制御する制御装置13と、前記ファン12の回転によって前記吸込口W1から吸入した空気を空調する空調ユニット(室内熱交換器11、室内機10、室外機20)と、前記部屋Aの床又は前記床の近傍に設けられた空気の吹出口W2と、前記空調ユニットと前記吹出口W2を接続するダクト30と、を有し、前記制御装置13は、前記部屋Aの空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファン12の回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数(通常運転の回転数)の下限値よりも低下させて運転する。
空調負荷が低下した状況で、通常運転の下限値より低速でファンを運転することで、省エネルギー化を実現することができる。また、部屋の下部から上部への自然対流を生じさせることで、部屋の空気を循環・撹拌することができるので、部屋の温度の均一化を達成することができる。
【0030】
(2)第2の態様の空調機100aは、部屋Aの床又は前記床の近傍に設けられた空気の吸込口W1aと、前記吸込口W1aに設けられたファン12aと、前記ファン12aを制御する制御装置13aと、前記ファン12aの回転によって前記吸込口W1aから吸入した空気を空調する空調ユニット(室内熱交換器11a、室内機10a、室外機20a)と、前記部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吹出口W2aと、前記空調ユニットと前記吹出口W2aを接続するダクト30aと、を有し、前記制御装置13aは、前記部屋Aの空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファン12aの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する。
空調負荷が低下した状況で、通常運転の下限値より低速でファンを運転することで、省エネルギー化を実現することができる。また、部屋の上部から下部への自然対流を生じさせることで、部屋の空気を循環・撹拌することができるので、部屋の温度の均一化を達成することができる。
【0031】
(3)第3の態様の空調機100、100aは、(1)~(2)の空調機であって、前記下限値よりも低下させて運転するときの前記ファンの回転数は、前記部屋に自然対流を生じさせ、前記部屋の快適性を維持できるよう定められた所定の回転数である。
これにより、部屋の温度の均一化および省エネルギー化に加えて、快適性を維持する効果が得られる。
【0032】
(4)第4の態様の空調機100、100aは、(1)~(3)の空調機であって、前記部屋の面積および快適性に基づく高さによって規定される体積の空気を、快適性に基づく時間をかけて吸入できるような回転数を定めた設定テーブル、をさらに有し、前記制御装置は、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記体積と、前記設定テーブルとに基づいて、前記ファンを運転する。
これにより、快適性を損なうことなく温度の均一化、省エネルギー化を達成することができる部屋の面積に応じたファン12,12aの回転数を決定することができる。
【0033】
(5)第5の態様の空調機100、100aは、(4)の空調機であって、前記快適性に基づく高さが、1.1mである。
これにより、立った人が快適性を感じられる風量で室内の空気を循環させることができる。
【0034】
(6)第6の態様の空調機100は、(1)、(1)を引用する(3)~(5)の空調機であって、前記吹出口が、前記床から0.6以下の位置に設けられている。
これにより、座った人の快適性を維持することができる。
【0035】
(7)第7の態様の空調機100は、(2)、(2)を引用する(3)~(5)の空調機であって、前記吸込口が、前記床から0.6m以下の位置に設けられている。
これにより、座った人の快適性を維持することができる。
【0036】
(8)第8の態様のファンの制御方法は、部屋の天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吸込口および前記部屋の床又は前記床の近傍に設けられた空気の吹出口、又は、前記床又は前記床の近傍に設けられた空気の吸込口および前記天井又は前記天井の近傍に設けられた空気の吹出口、の何れかと、前記吸込口に設けられたファンと、前記ファンの回転によって前記吸込口から吸入した空気を空調する空調ユニットと、前記空調ユニットと前記吹出口を接続するダクトと、を有する空調機が、前記部屋の空調負荷の大きさが所定の閾値未満となると、前記ファンの回転数を、空調負荷の大きさが前記閾値以上となるときの回転数の下限値よりも低下させて運転する。
これにより、空調負荷が低下した状況で、部屋の温度の均一化および省エネルギー化を達成するようにファンを制御することができる。
【符号の説明】
【0037】
10,10a・・・室内機
11,11a・・・室内熱交換器
12,12a・・・ファン
13,13a・・・制御装置
14,14a・・・温度センサ
15,15a・・・冷媒配管
20,20a・・・室外機
30,30a・・・ダクト
100、100a・・・空調機
A・・・部屋
W1,W1a・・・吸入口
W2,W2a・・・吹出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6