(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047699
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】車両用運転支援装置及び車両用運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153339
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓弥
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両の走行速度に応じてより最適な運転支援を提供する。
【解決手段】本開示の一形態における車両用運転支援装置は、一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えた車両用運転支援装置において、前記一つ又は複数のプロセッサは、移動中の車両の速度情報を取得し、取得した前記車両の速度情報に基づいて、前記移動中の車両の外部における障害物の位置情報、及び、前記移動中の車両内における運転者の身体位置情報を取得し、取得した前記障害物の位置情報、及び、前記運転者の身体位置情報に基づいて、予め定めた電磁波照射目標に応じて、前記運転者の身体に電磁波を照射するための処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えた車両用運転支援装置において、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
移動中の車両の速度情報を取得し、
取得した前記車両の速度情報に基づいて、前記移動中の車両の外部における障害物の位置情報、及び、前記移動中の車両内における運転者の身体位置情報を取得し、
取得した前記障害物の位置情報、及び、前記運転者の身体位置情報に基づいて、予め定めた電磁波照射目標に応じて、前記運転者の身体に電磁波を照射するための処理を実行する、車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、所定時間毎に前記運転者の身体位置情報を取得し、
取得した前記運転者の身体位置情報に基づいて、前記運転者の身体変位値を取得し、
取得した前記身体変位値、及び、前記障害物の位置情報に基づいて、前記運転者の身体に電磁波を照射するための処理を実行する、
請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
移動中の車両の車速を判定する車両速度判定部と、
前記移動中の前記車両の外部における障害物の位置を検出するための障害物位置検出部と、
検出された前記障害物の位置に基づいて、前記車両の運転者の電磁波照射位置を決定する電磁波照射位置決定部と、
前記移動中の前記車両における運転者の身体位置を検出するための運転者身体位置検出部と、
検出した車両速度、前記身体位置、及び、前記障害物位置に基づいて、前記運転者の身体に電磁波を照射する電磁波照射部と、を備える、
車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記電磁波がラジオ波であって、前記ラジオ波は音声情報を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
プロセッサに、
移動中の車両の速度情報を取得する手順と、
取得した前記速度情報に基づいて、前記移動中の車両の外部における障害物の位置情報、及び、前記移動中の車両内における運転者の身体位置情報を取得する手順と、
取得した前記障害物の位置情報、及び、前記運転者の身体位置情報に基づいて、予め定めた電磁波照射目標に応じて、前記運転者の身体に電磁波を照射する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用運転支援装置及び車両用運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波等の電磁波を使用して、位置情報等を取得し、その結果に基づいて車両制御を行う技術が開示されている。例えば下記の特許文献1には、自動車内の特定の座席の乗員を超音波発信器及び受信機を用いて認識し、この情報を用いて、エアバッグの展開による負傷が自動車事故の負傷より大きくなるほど乗員がエアバッグに近づきすぎていないかどうかを判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した特許文献に記載された技術によっては、市場のニーズを適切に満たしているとは言えず、以下に述べる課題が存在する。すなわち、車外の障害物等の位置情報を取得して車両制御を行う場合、走行中に時々刻々と変化する車両の走行速度と、車外の障害物の方向等に応じて、従来技術により車両を制御したとしても、最適な車両制御を行うことが困難である。
【0005】
本開示は上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、本開示の目的とするところは、車両の状況に応じて最適な運転支援を行う車両用運転支援装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一実施形態における車両用運転支援装置は、一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えた車両用運転支援装置において、前記一つ又は複数のプロセッサは、移動中の車両の速度情報を取得し、取得した前記車両の速度情報に基づいて、前記移動中の車両の外部における障害物の位置情報、及び、前記移動中の車両内における運転者の身体位置情報を取得し、取得した前記障害物の位置情報、及び、前記運転者の身体位置情報に基づいて、予め定めた電磁波照射目標に応じて、前記運転者の身体に電磁波を照射するための処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の車両用運転支援装置によれば、状況に応じて最適な車両の運転支援を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両用運転支援装置を備えた車両の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る車両用運転支援装置と周辺装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用運転支援装置における、車両進行方向正面の障害物位置を所定の領域毎に区分した領域図である。
【
図4】本実施形態に係る車両用運転支援装置における、車両右側面の障害物位置を所定の領域毎に区分した領域図である。
【
図5】本実施形態に係る車両用運転支援装置における、車両左側面の障害物位置を所定の領域毎に区分した領域図である。
【
図6】本実施形態に係る車両用運転支援装置における、車両後方の障害物位置を所定の領域毎に区分した領域図である。
【
図7】車両進行方向正面における障害物の領域と運転者の身体位置との対応データベースの一例である。
【
図8】車両右側面における障害物の領域と運転者の身体位置との対応データベースの一例である。
【
図9】車両左側面における障害物の領域と運転者の身体位置との対応データベースの一例である。
【
図10】車両後方における障害物の領域と運転者の身体位置との対応データベースの一例である。
【
図11】本実施形態の車両用運転支援装置100による運転支援方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本開示を実施するための好適な実施形態について説明する。また、以下で詳述する以外の構成については、公知の各種の車載センサを含む公知の車両構造や車載システムを適宜補完してもよい。
【0010】
[車両1]
図1に、本実施形態における車両1の構成例を示す。以下では、本実施形態に好適な車両として四輪駆動の自動車を例示するが、本開示の趣旨を阻害しない限りにおいて二輪車など四輪以外の自動車に適用してもよい。
【0011】
<車両の全体構成>
図1は、本実施形態に係る車両用運転支援装置100を備えた車両1の構成例を示す模式図である。
図1に示した車両1は、車両の駆動トルクを生成する駆動力源9から出力される駆動トルクを左前輪3LF、右前輪3RF、左後輪3LR及び右後輪3RR(以下、特に区別を要しない場合には「車輪3」と総称する)に伝達する四輪駆動車として構成されている。駆動力源9は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよく、駆動用モータであってもよく、内燃機関及び駆動用モータをともに備えていてもよい。
【0012】
なお、車両1は、例えば前輪駆動用モータ及び後輪駆動用モータの二つの駆動用モータを備えた電気自動車であってもよく、それぞれの車輪3に対応する駆動用モータを備えた電気自動車であってもよい。また、車両1が電気自動車やハイブリッド電気自動車の場合、車両1には、駆動用モータへ供給される電力を蓄積する二次電池や、バッテリに充電される電力を発電するモータや燃料電池等の発電機が搭載される。
【0013】
車両1は、車両の運転制御に用いられる機器として、駆動力源9、電動ステアリング装置15及びブレーキ液圧制御ユニット20を備えている。駆動力源9は、図示しない変速機や前輪差動機構7F及び後輪差動機構7Rを介して前輪駆動軸5F及び後輪駆動軸5Rに伝達される駆動トルクを出力する。駆動力源9や変速機の駆動は、一つ又は複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を含んで構成された車両制御装置41により制御される。
【0014】
前輪駆動軸5Fには電動ステアリング装置15が設けられている。電動ステアリング装置15は図示しない電動モータやギヤ機構を含み、車両制御装置41により制御されることによって左前輪3LF及び右前輪3RFの操舵角を調節する。車両制御装置41は、手動運転中には、運転者によるステアリングホイール13の操舵角に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。
【0015】
車両1のブレーキシステムは、油圧式のブレーキシステムとして構成されている。ブレーキ液圧制御ユニット20は、それぞれ前後左右の駆動輪3LF,3RF,3LR,3RRに設けられたブレーキキャリパ17LF,17RF,17LR,17RR(以下、特に区別を要しない場合には「ブレーキキャリパ17」と総称する)に供給する油圧を調節し、制動力を発生させる。ブレーキ液圧制御ユニット20の駆動は、車両制御装置41により制御される。車両1が電気自動車あるいはハイブリッド電気自動車の場合、ブレーキ液圧制御ユニット20は、駆動用モータによる回生ブレーキと併用される。
【0016】
車両制御装置41は、車両1の駆動トルクを出力する駆動力源9、ステアリングホイール13又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両1の制動力を制御するブレーキ液圧制御ユニット20の駆動を制御する一つ又は複数の電子制御装置を含む。車両制御装置41は、駆動力源9から出力された出力を変速して車輪3へ伝達する変速機の駆動を制御する機能を備えていてもよい。車両制御装置41は、後述する車両用運転支援装置100から送信される情報を取得可能に構成され、この車両用運転支援装置100による駆動力上限値に基づく車両制御を実行可能に構成されている。
【0017】
また、車両1は、周囲環境センサ31、乗員監視センサ33、生体センサ34、車両状態センサ35、GPS(Global Positioning System)センサ37、車車間通信部39、ナビゲーション装置40及びHMI(Human Machine Interface)43、電磁波照射装置46、などを具備することができる。
【0018】
このうち周囲環境センサ31は、後述する車両の外部における障害物の位置を検出する障害物センサを含んで構成されている。なお、障害物の位置を検出するセンサとしては、例えば特開2014-169927号公報に例示される如き公知の種々の障害物検知装置を適用してもよい。
【0019】
また、本実施形態における周囲環境センサ31は、前方撮影カメラ31LF,31RF、後方撮影カメラ31R、LiDAR(Light Detection And Ranging)31Sを含んで構成されていてもよい。
【0020】
前方撮影カメラ31LF,31RF、後方撮影カメラ31R及びLiDAR31Sは、車両1の周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサの一部を構成する。前方撮影カメラ31LF,31RF及び後方撮影カメラ31Rは、車両1の前方あるいは後方を撮影し、画像データを生成する。前方撮影カメラ31LF,31RF及び後方撮影カメラ31Rは、CCD(Charged-Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを車両用運転支援装置100へ送信することができる。
【0021】
図1に示した車両1では、前方撮影カメラ31LF,31RFは、左右一対のカメラを含むステレオカメラとして構成され、後方撮影カメラ31Rは、いわゆる単眼カメラとして構成されているが、それぞれステレオカメラあるいは単眼カメラのいずれであってもよい。車両1は、前方撮影カメラ31LF,31RF及び後方撮影カメラ31R以外に、例えばサイドミラーに設けられて左後方又は右後方を撮影する公知のカメラを備えていてもよい。
【0022】
LiDAR31Sは、光を送信するとともに当該光の反射光を受信し、光を送信してから反射光を受信するまでの時間に基づいて物体及び物体までの距離を検知する。LiDAR31Sは、検出データを車両用運転支援装置100へ送信することができる。車両1は、周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサ31として、LiDAR31Sの代わりに、又はLiDAR31Sと併せて、ミリ波レーダ等のレーダセンサ、超音波センサのうちのいずれか一つ又は複数の公知のセンサを備えていてもよい。
【0023】
また、乗員監視センサ33は、車内撮影カメラ33cを含んで構成されていてもよい。
車内撮影カメラ33cは、車両1の乗員の情報を検出する一つ又は複数の公知のセンサからなる。車内撮影カメラ33cは、CCD又はCMOS等の撮像素子を備え、車内を撮影し、画像データを生成する。車内撮影カメラ33cは、生成した画像データを車両用運転支援装置100へ送信することができる。本実施形態において、車内撮影カメラ33cは、車両1の運転者を撮影可能に配置される。設置される車内撮影カメラ33cは1つのみであってもよく、複数であってもよい。
【0024】
生体センサ34は、車両1の乗員の生体情報を検出し、検出データを車両用運転支援装置100へ送信することができる。生体センサ34は、公知の種々のセンサを適用でき、例えば乗員の心拍を検出するための電波式のドップラーセンサであってもよく、乗員の脈拍を検出するための非装着型の脈拍センサであってもよい。また、生体センサ34は、車両1の運転者の心拍又は心電図を計測するためにステアリングホイール13に埋設された電極組であってもよい。
【0025】
車両状態センサ35は、車両1の操作状態及び挙動を検出する一つ又は複数の公知のセンサからなる。車両状態センサ35は、例えばそれぞれ公知の舵角センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキストロークセンサ、ブレーキ圧センサ又はエンジン回転数センサのうちの少なくとも一つを含み、ステアリングホイール13あるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の車両1の操作状態を検出する。また、車両状態センサ35は、例えばそれぞれ公知の車速センサ、加速度センサ、角速度センサのうちの少なくとも一つを含み、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の車両の挙動を検出する。また、車両状態センサ35は、公知の方向指示器の操作を検出するセンサを含み、方向指示器の操作状態を検出する。また、車両状態センサ35は、車両1の傾斜状態を検出するジャイロセンサなどの公知のセンサを含み、道路の傾斜状態を検出する。車両状態センサ35は、検出した情報を含むセンサ信号を車両用運転支援装置100へ送信することができる。
【0026】
車車間通信部39は、車両1の周囲を走行する車両(以下「他車両」ともいう)との間で通信を行うためのインタフェースである。
ナビゲーション装置40は、乗員により設定される目的地までの走行経路を設定し、当該走行経路を運転者に通知する公知のナビゲーション装置である。ナビゲーション装置40にはGPSセンサ37が接続され、GPSセンサ37を介してGPS衛星からの衛星信号を受信し、車両1の地図データ上の位置情報を取得する。なお、GPSセンサ37の代わりに、車両1の位置を特定する他の衛星システムからの衛星信号を受信するアンテナが用いられてもよい。
【0027】
HMI43は、車両用運転支援装置100により駆動され、画像表示や音声出力等の手段により、乗員に対して種々の情報を提示する。HMI43は、例えばインストルメントパネル内に設けられた表示装置及び車両に設けられたスピーカ43aを含む。表示装置は、ナビゲーション装置40の表示装置の機能を有していてもよい。また、HMI43は、車両1のフロントウィンドウ上に画像を表示するヘッドアップディスプレイ43bを含んでいてもよい。
【0028】
電磁波照射装置46は、車両用運転支援装置100により駆動され、運転者の身体に向けて公知の手段で電磁波を照射する。電磁波照射装置46として具体的には、使用者身体に接触させる一対の電極を含んでもよい。この場合、電磁波照射装置46は電極間に電流を流すことによりジュール熱を発生させ、運転者身体に温熱効果を感じさせることができる。またこの場合、電極間に流される電流(照射される電磁波)としては、周波数30~300MHzの周波数域における電波(一般的に「ラジオ波」と称される波長帯)とすることができる。また、当該ラジオ波には音声情報を含むことができる。しかしながら、電磁波照射装置46としてはこれらに限られず、運転者に温熱効果や振動効果を感じさせる公知の装置を適宜使用することができる。例えば、一般的に遠赤外線と称される電磁波等を適用することもできる。電磁波照射装置46の車両1における具体的な配置位置としては、運転者に上記効果を感じさせられる箇所であれば特に制限はない。例えば、電磁波照射装置46を運転者の背面シートの内部に配置し、背面シートに接触した運転者に対して、上記効果を付与するようにしてもよい。あるいは、電磁波照射装置46は車両1のインストルメントパネルやダッシュボードに配置され、運転者に対して非接触で上記効果を付与するようにしてもよい。
【0029】
[車両用運転支援装置100]
続いて、本実施形態に係る車両用運転支援装置100の構成例を具体的に説明する。なお、本実施形態の車両用運転支援装置100は、移動中の車両1の外部における障害物の位置に応じて、車両1の運転支援を行う。運転支援としては具体的には、運転者の身体に電磁波を照射することにより、電磁波の温熱効果により、車外の障害物の位置を運転者に報知するものとする。
【0030】
図2は、本実施形態に係る車両用運転支援装置100の構成例を示すブロック図である。
車両用運転支援装置100には、専用線又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、センサ類30(周囲環境センサ31、乗員監視センサ33、生体センサ34、車両状態センサ35及びGPSセンサ37など)が接続されている。また、車両用運転支援装置100には、専用線又はCANやLIN等の通信手段を介して、上記した車車間通信部39、ナビゲーション装置40、車両制御装置41HMI43、及び電磁波照射装置46が接続されている。また、車両用運転支援装置100は、公知の通信手段45を介して、例えばインターネットなどの外部ネットワークNETと接続可能に構成されている。なお、車両用運転支援装置100は、車両1に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートホンやウェアラブル機器等の端末装置であってもよい。
【0031】
かような本実施形態の車両用運転支援装置100は、制御部50及び公知の記憶部(メモリ60およびデータベース70)を備えている。制御部50は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えて構成される。制御部50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。上記した記憶部のうちメモリ60は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の公知のメモリデバイスで構成される。
【0032】
また、上記した記憶部のうちデータベース70は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)あるいはUSBフラッシュやストレージ装置等の更新可能な公知の記録媒体で構成される。ただし、本実施形態では上記した記憶部の数や種類は特に限定されない。本実施形態の記憶部は、制御部50により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメータ、検出データ、演算結果等の情報を記録するように構成されていてもよい。
【0033】
なお本実施形態におけるデータベース70は、障害物の位置毎に複数に区分された、運転者の身体と障害物の位置との対応データベースを含んでいてもよい。具体的に、データベース70は、車両1の各方向(前方、後方、右側方、左側方)の画像領域内において、車両の中心線からの角度や距離を所定の領域毎に区切った、車外障害物位置の領域
図71(
図3~6参照)を含んで構成される。また、データベース70は、車外障害物の位置のそれぞれに応じた、電磁波を照射すべき運転者の身体位置の対応データベース73を含んで構成される。
【0034】
上記したデータベース70は、車両1に搭載されていてもよい。またデータベース70は、移動体通信等の無線通信手段を介して車両用運転支援装置100と通信可能な外部サーバに少なくともその一部が格納されていてもよい。また、データベース70の全体が単一のデータベースとして構成されていてもよいし、障害物の方向毎等に、別の単一のデータベースとして構成されていてもよい。
【0035】
車両用運転支援装置100の制御部50は、
図2に示されるとおり、車両速度判定部51、障害物位置検出部52、電磁波照射位置決定部53、運転者身体位置検出部54、指令部55、を含んで構成されている。
【0036】
車両速度判定部51は、車両1の走行速度が、予め定められた所定値(一例として20Km/h)以下か否かを判定する機能を有する。より具体的には、車両速度判定部51は、本実施形態の車両用運転支援装置100において、運転支援が実行される車両1の走行速度を、所定値以下と設定することができる。また、車両1の走行速度の範囲を、運転者の運転技量等に基づいて可変とすることができる。これにより、例えば低速時における車両と車外障害物との接触事故を、効果的に抑制することができる。
【0037】
障害物位置検出部52は、車両1が移動する領域における、車外の障害物の有無、及び、その位置の情報を検出する機能を備えている。より具体的には障害物位置検出部52は、例えば上記した障害物センサにより、走行中の車両1の外部に存在する、障害物までの距離、車両中心線からの角度、等の情報を検出することが可能である。また、データベース70中に含まれる、車両1の進行方向正面、左右側面、後方、のそれぞれで、所定の領域毎に区分した車外障害物位置の領域
図71(
図3~6参照)のどの領域に障害物が存在するか、を検出することができる。
【0038】
電磁波照射位置決定部53は、上記障害物位置検出部52により検出された障害物の存在する領域に基づいて、運転者のどの身体位置に電磁波を照射するかを決定する機能を備えている。具体的に、電磁波照射位置決定部53は、上述の障害物位置検出部52が検出した車外障害物の位置に基づいて、運転者の身体位置との対応データベース73に照らし合わせて、運転者のどの身体位置に電磁波を照射するかを決定する。
【0039】
運転者身体位置検出部54は、運転者の実際の身体位置の情報を検出する機能を備えている。具体的には、運転者身体位置検出部54は、上述の電磁波照射位置決定部53が決定した電磁波照射位置に基づいて、運転者の身体における実際の当該位置を、乗員監視センサ33等により検出する。
【0040】
指令部55は、運転者身体位置検出部54が検出した運転者の身体位置に基づいて、車両制御装置41に対して電磁波照射信号を出力する。車両制御装置41は、入力された電磁波照射信号に基づいて、運転者の身体に向けて電磁波を照射することにより、車外障害物位置を運転者に報知する運転支援を実行する。すなわち、運転者は、身体に照射される電磁波の位置に基づいて、車外障害物の位置を認識することができる。なお指令部55は、車外障害物の車両1に対する距離に基づいて、照射する電磁波強度の強弱を変更してもよい。すなわち、車外障害物が車両1に近接した場合に電磁波の照射強度を強くし、車外障害物が車両1から離れた場合に電磁波の照射強度を弱くすることができる。これにより、車外障害物の車両1に対する近接具合を、運転者に認識させることができる。
【0041】
[車両用運転支援装置100における運転支援方法]
次に
図11のフローチャートを参照しつつ、本実施形態の車両用運転支援装置100による運転支援方法について説明する。なお以下で説明する車両の運転支援は、上述した車両用運転支援装置100によって実行される。
【0042】
まずステップ1では、車両速度判定部51によって、車両1の走行速度の情報が判定される。具体的には、公知の車速センサを含む車両状態センサ35により取得された情報が、CANやLIN等の通信手段を介して、車両速度判定部51により取得される。
【0043】
次いでステップ2で、取得された車速情報が、予め定められた所定値以下か否かが、車両速度判定部51により判定される。より具体的には、上記所定値が、予め「20Km/h」と定められていた場合、車両1の走行速度が例えば「18Km/h」であれば、以下のステップ3に進む。一方で、車両1の走行速度が20Km/hを超えていた場合、フローチャートに従ってステップ1から繰り返される。
【0044】
次いでステップ3において、障害物位置検出部52によって、車外障害物の情報が検出される。具体的には、障害物の有無、障害物までの方向、障害物と車両1との距離の情報が検出される。例えば、障害物位置検出部52は、
図3で示される車両進行方向正面の領域
図71において、「F4」で示される領域内に、車両1から1mの距離の車外障害物が存在すること等を検出することができる。
【0045】
次いでステップ4で、電磁波照射位置決定部53により、運転者のどの身体位置に対して電磁波を照射するかが決定される。具体的に、ステップ3で検出された車外障害物の位置に基づいて、運転者の身体位置との対応データベース73に照らし合わせて、電磁波を照射すべき運転者の身体位置が決定される。例えば、ステップ3で検出された障害物の位置が「F4」である場合、
図7~
図10に示される運転者の身体位置との対応データベース73に基づけば、電磁波を照射すべき身体位置が、運転者の「左膝外側」であることが決定される。
【0046】
次いでステップ5では、運転者身体位置検出部54によって、ステップ4で決定された身体位置に基づいた、運転者の実際の身体位置が検出される。具体的には、上述した乗員監視センサ33等により取得された画像データに基づいて、公知のディープラーニング技術等を用いて、運転者の身体位置(例えば、「左膝外側」)を検出することが可能である。なお、運転者身体位置検出部54は、検出した運転者の実際の身体位置から、身体変位値を取得することとしてもよい。
【0047】
次いでステップ6では、指令部55によって、ステップ5で検出された運転者の実際の身体位置に向けて、電磁波信号の照射信号が出力される。具体的には、指令部55は、車両1の車両制御装置41に対して信号を出力することにより、電磁波照射部としての電磁波照射装置46から、電磁波が照射される。
【0048】
ステップ7で、車両1のシステムがOFFとなったかが判定される。換言すれば、ステップ1~6のフローは、車両のシステムがONの間は、所定時間毎に順次繰り返される。従って、運転者が車両を運転中にその身体位置を移動させた場合でも、ステップ5において運転者の実際の位置を検出するため、電磁波の照射位置を運転者の実際の身体位置に追従させることができる。
【0049】
ステップ7で、車両1のシステムがOFFとなった場合、本実施形態における車両1の車両用運転支援装置100による運転支援が終了する。
【0050】
以上説明した本実施形態における車両1の車両用運転支援装置100によれば、車両の走行速度や運転者の身体位置等の状況に応じて、より最適な運転支援を行うことができる。
【0051】
すなわち本実施形態の車両用運転支援装置100において、車両1の運転支援としては低速時における電磁波の照射により説明したが、これに限られない。すなわち、本実施形態の車両用運転支援装置100によれば、車両1の車速が所定速度以下の場合に、車外の障害物の位置を電磁波により報知することができる。これにより、運転者は車外障害物の位置や方向を確認することができ、車両1の接触事故を抑制することができる。
【0052】
一方で、車両1の高速走行時には、車速に応じて運転者の身体に電磁波を照射することもできる。安定した高速走行時に、運転者に電磁波を照射することにより、運転者の身体における血行を促し、リラックス効果を付与する事ができる。
【0053】
また、本実施形態の車両用運転支援装置100による、照射する電磁波の強度に関して、障害物の距離に応じて強弱をつけて照射することも可能である。例えば車両1が車外障害物に近接するにつれ、照射する電磁波の強度を強くし、一方で車両1と車外障害物の距離が離れるにつれ、照射する電磁波の強度を弱くするように制御することも可能である。このような制御により、車両1の運転者は、車両1と車外障害物の距離とをリアルタイムに認識することができる。
【0054】
さらに本実施形態の車両用運転支援装置100は、電磁波の照射に加えて、別の種類の車両制御を同時に行うようにしてもよい。例えば、車両1と車外障害物の距離とが所定値以下となった場合、電磁波の照射に加えて、警告音等を組み合わせて、運転者に車外障害物の存在を報知してもよい。
【0055】
さらには、車両1と車外障害物の距離とが所定値以下となった場合、電磁波の照射に加えて、車両を停止させる等の制御を行うこともできる。
【0056】
本実施形態においては、運転者の身体に照射する電磁波をラジオ波とし、当該ラジオ波に音声情報を含ませることができる。換言すれば、車両において広く一般に適用されているラジオ放送の電波を利用して、上述のように車外障害物の位置を報知するために運転者の身体に照射することができる。
【0057】
本実施形態において、運転者の身体における電磁波照射の目標位置に対して、接触又は非接触の方法で電磁波を照射することが可能である。例えば、電磁波を照射すべき運転者の身体位置が、車両の背面シートで遮蔽される場合等では、予め当該背面シートの内部に配置した電磁波照射装置46から、電磁波を照射することができる。
【0058】
上述のとおり添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、当業者であれば上記した実施形態に対して更なる変形を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
100 車両用運転支援装置
41 車両制御装置
50 制御部
51 車両速度判定部
52 障害物位置検出部
53 電磁波照射位置決定部
54 運転者身体位置検出部
55 指令部