(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047704
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】トークン移転システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20240401BHJP
【FI】
G06Q20/06
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153348
(22)【出願日】2022-09-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】397041185
【氏名又は名称】三菱UFJ信託銀行株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 達哉
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA12
(57)【要約】
【課題】 セキュリティトークンの移転時の決済時間短縮により決済リスクやコストの極小化を図ると共に、セキュリティトークンの移転処理と資金決済手段との連関を簡潔に実行可能なトークン移転システムを提供する。
【解決手段】 トークン移転システム100は、セキュリティトークン、及び法定通貨にペッグされたステーブルコインの双方の移転を実行するために、複数の業者サーバ200A、200Bと、複数の業者サーバの間でセキュリティトークンの移転を仲介するマッチングサーバ400とに対して、通信可能に接続される。トークン移転システム100は、セキュリティトークン、及びステーブルコインの双方の移転を実行する移転用ブロックチェーン110を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティトークン、及び法定通貨にペッグされたステーブルコインの双方の移転を実行するために、複数の業者サーバと、前記複数の業者サーバの間で前記セキュリティトークンの移転を仲介するマッチングサーバとに対して、通信可能に接続されたトークン移転システムであって、
前記トークン移転システムは、前記セキュリティトークン、及び前記ステーブルコインの双方の移転を実行する移転用ブロックチェーンを備える、トークン移転システム。
【請求項2】
請求項1に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークンの移転を管理するセキュリティトークン原簿管理端末装置と、前記ステーブルコインの移転を管理するステーブルコイン原簿管理端末装置とを備える、トークン移転システム。
【請求項3】
請求項2に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインの二重移転が発生していないことを検証する検証端末装置を備える、トークン移転システム。
【請求項4】
請求項1に記載のトークン移転システムにおいて、
前記マッチングサーバは、
前記複数の業者サーバ間で前記セキュリティトークンの移転がマッチングしたことを示す出来通知情報を生成し、前記複数の業者サーバに送信すること、及び/又は
前記複数の業者サーバ間で前記セキュリティトークンの移転がマッチングしたことを示す出来通知トランザクションを生成し、前記移転用ブロックチェーンに送信すること
を実行する、トークン移転システム。
【請求項5】
請求項4に記載のトークン移転システムにおいて、
前記複数の業者サーバは、前記出来通知トランザクションを前記移転用ブロックチェーンから取り込む、トークン移転システム。
【請求項6】
請求項5に記載のトークン移転システムにおいて、
前記複数の業者サーバは、セキュリティトークン売側業者サーバと、セキュリティトークン買側業者サーバとから構成され、
前記セキュリティトークン売側業者サーバと前記セキュリティトークン買側業者サーバとの間で、前記セキュリティトークン買側業者サーバが保有者として記録されている前記ステーブルコインの残高が、前記セキュリティトークンの移転金額を充足していることの確認処理が完了すると、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する移転トランザクションを生成し、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項7】
請求項6に記載のトークン移転システムにおいて、
前記ステーブルコインの前記残高が、前記セキュリティトークンの前記移転金額を充足していない場合、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する処理を進めずに、前記セキュリティトークン買側業者サーバにおける前記ステーブルコインの追加発行処理に移行する、トークン移転システム。
【請求項8】
請求項7に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン買側業者サーバにおける前記ステーブルコインの追加発行処理の完了を定期的に確認する、トークン移転システム。
【請求項9】
請求項8に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバが前記追加発行処理の完了を確認すると、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する処理を進める、トークン移転システム。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン買側業者サーバは、前記セキュリティトークン売側業者サーバから送信された前記移転トランザクションに対して移転を確認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項11】
請求項10に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン原簿管理端末装置は、前記セキュリティトークン買側業者サーバから送信された前記移転トランザクションに対して前記セキュリティトークンの移転を承認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項12】
請求項11に記載のトークン移転システムにおいて、
前記ステーブルコイン原簿管理端末装置は、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置から送信された前記移転トランザクションに対して前記ステーブルコインの移転を承認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項13】
請求項12に記載のトークン移転システムにおいて、
前記検証端末装置は、前記セキュリティトークン売側業者サーバの署名履歴、前記セキュリティトークン買側業者サーバの署名履歴、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置の署名履歴、及び前記ステーブルコイン原簿管理端末装置の署名履歴が加えられた前記移転トランザクションに対して、前記二重移転の有無を検証済みの署名履歴を加えて、前記セキュリティトークン売側業者サーバに送信する、トークン移転システム。
【請求項14】
請求項13に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記検証端末装置から送信された前記移転トランザクションに対して、取引確定の署名履歴を加えて、前記セキュリティトークン買側業者サーバ、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置、及び前記ステーブルコイン原簿管理端末装置に送信する、トークン移転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティトークンを移転するトークン移転システムに関し、より詳細には、法定通貨の移転を伴わずにセキュリティトークンを移転するトークン移転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセキュリティトークン取引において、資金決済手段が法定通貨の銀行間送金しか存在しない場合、取引から決済完了までに、取引日に加えて2営業日程度の期間が必要となる。
【0003】
一方、本発明者により、特許文献1に、金融商品に基づくトークンを管理するトークン管理システムが提案されている。このトークン管理システムは、法定通貨に関連付けられたコインを移転するコイン用ブロックチェーンと、前記トークンを移転するトークン用ブロックチェーンとを用いて、前記コイン用ブロックチェーンによる前記コインの移転、及び前記トークン用ブロックチェーンによる前記トークンの移転を連動させて移転を処理する(請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
取引から決済完了までの期間中、決済リスクが生じる上、セキュリティトークンを取り扱う金融商品取引業者間での相対ネッティングのための金額確認や銀行関連オペレーション等の事務コストが掛かり、更に他行送金手数料も発生する。
【0006】
また、特許文献1は、法定通貨に関連付けられたコインを移転するコイン用ブロックチェーンと、トークンを移転するトークン用ブロックチェーンとをそれぞれ備えるため、処理が比較的複雑になり、異なるブロックチェーンを連関させる機構に関する新たなリスクも発生する可能性がある等、セキュリティトークンを取り扱う金融商品取引業者にとって課題が残存する場合がある。
【0007】
そこで本発明は、セキュリティトークンの移転時の決済時間短縮により決済リスクやコストの極小化を図ると共に、セキュリティトークンの移転処理と資金決済手段との連関を簡潔に実行可能な、トークン移転システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各態様は次の通りである。
[態様1]
セキュリティトークン、及び法定通貨にペッグされたステーブルコインの双方の移転を実行するために、複数の業者サーバと、前記複数の業者サーバの間で前記セキュリティトークンの移転を仲介するマッチングサーバとに対して、通信可能に接続されたトークン移転システムであって、
前記トークン移転システムは、前記セキュリティトークン、及び前記ステーブルコインの双方の移転を実行する移転用ブロックチェーンを備える、トークン移転システム。
【0009】
[態様2]
態様1に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークンの移転を管理するセキュリティトークン原簿管理端末装置と、前記ステーブルコインの移転を管理するステーブルコイン原簿管理端末装置とを備える、トークン移転システム。
[態様3]
態様2に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインの二重移転が発生していないことを検証する検証端末装置を備える、トークン移転システム。
[態様4]
態様1に記載のトークン移転システムにおいて、
前記マッチングサーバは、
前記複数の業者サーバ間で前記セキュリティトークンの移転がマッチングしたことを示す出来通知情報を生成し、前記複数の業者サーバに送信すること、及び/又は
前記複数の業者サーバ間で前記セキュリティトークンの移転がマッチングしたことを示す出来通知トランザクションを生成し、前記移転用ブロックチェーンに送信すること
を実行する、トークン移転システム。
【0010】
[態様5]
態様4に記載のトークン移転システムにおいて、
前記複数の業者サーバは、前記出来通知トランザクションを前記移転用ブロックチェーンから取り込む、トークン移転システム。
[態様6]
態様5に記載のトークン移転システムにおいて、
前記複数の業者サーバは、セキュリティトークン売側業者サーバと、セキュリティトークン買側業者サーバとから構成され、
前記セキュリティトークン売側業者サーバと前記セキュリティトークン買側業者サーバとの間で、前記セキュリティトークン買側業者サーバが保有者として記録されている前記ステーブルコインの残高が、前記セキュリティトークンの移転金額を充足していることの確認処理が完了すると、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する移転トランザクションを生成し、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
[態様7]
態様6に記載のトークン移転システムにおいて、
前記ステーブルコインの前記残高が、前記セキュリティトークンの前記移転金額を充足していない場合、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する処理を進めずに、前記セキュリティトークン買側業者サーバにおける前記ステーブルコインの追加発行処理に移行する、トークン移転システム。
【0011】
[態様8]
態様7に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン買側業者サーバにおける前記ステーブルコインの追加発行処理の完了を定期的に確認する、トークン移転システム。
[態様9]
態様8に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバが前記追加発行処理の完了を確認すると、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する処理を進める、トークン移転システム。
[態様10]
態様6~9のいずれか一項に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン買側業者サーバは、前記セキュリティトークン売側業者サーバから送信された前記移転トランザクションに対して移転を確認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【0012】
[態様11]
態様10に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン原簿管理端末装置は、前記セキュリティトークン買側業者サーバから送信された前記移転トランザクションに対して前記セキュリティトークンの移転を承認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
[態様12]
態様11に記載のトークン移転システムにおいて、
前記ステーブルコイン原簿管理端末装置は、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置から送信された前記移転トランザクションに対して前記ステーブルコインの移転を承認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
[態様13]
態様12に記載のトークン移転システムにおいて、
前記検証端末装置は、前記セキュリティトークン売側業者サーバの署名履歴、前記セキュリティトークン買側業者サーバの署名履歴、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置の署名履歴、及び前記ステーブルコイン原簿管理端末装置の署名履歴が加えられた前記移転トランザクションに対して、前記二重移転の有無を検証済みの署名履歴を加えて、前記セキュリティトークン売側業者サーバに送信する、トークン移転システム。
【0013】
[態様14]
態様13に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記検証端末装置から送信された前記移転トランザクションに対して、取引確定の署名履歴を加えて、前記セキュリティトークン買側業者サーバ、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置、及び前記ステーブルコイン原簿管理端末装置に送信する、トークン移転システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトークン移転システムは、ステーブルコイン及びセキュリティトークンを1つのブロックチェーンを用いて処理することにより、セキュリティトークンの移転と資金決済処理をブロックチェーン上の処理で完結可能となり、セキュリティトークンを移転するための決済時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るトークン移転システムを示すネットワーク図である。
【
図2】
図1のトークン移転システムによる処理を示す第1の業務フロー図である。
【
図3】
図2に続く処理を示す第2の業務フロー図である。
【
図4】
図3に続く処理を示す第3の業務フロー図である。
【
図5】
図4に続く処理を示す第4の業務フロー図である。
【
図6】
図5に続く処理を示す第5の業務フロー図である。
【
図7】
図6に続く処理を示す第6の業務フロー図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るトークン移転システムを示すネットワーク図である。
【
図9】
図8のトークン移転システムによる処理を示す第1の業務フロー図である。
【
図10】
図9に続く処理を示す第2の業務フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のトークン移転システムに関する各実施形態を図面を参照して説明する。各実施形態において、セキュリティトークン(ST)は、デジタル証券等の金融資産を意味し、ステーブルコイン(SC)は、円やドル等の法定通貨にペッグされた資金決済手段を意味する。ST及びSCは、いずれもブロックチェーン上で管理される。
【0017】
第1の実施形態に係るトークン移転システム100を
図1を参照して説明する。トークン移転システム100は、ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bに接続されたカストディアンサーバ500と、ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bの間の売買をマッチングするマッチングサーバ400とに対して、通信可能に接続されている。なお、マッチングサーバ400は、私設取引システム(Proprietary Txading System,PTS)とすることができる。PTSは、金融商品取引所を介さずに金融商品を売買することができる。
【0018】
トークン移転システム100は、ST及びSCの移転を管理する分散型台帳としての移転用ブロックチェーン110と、STの移転を確認する署名履歴トランザクション(Tx)を生成するアセットノード(AN)を有するST原簿管理端末装置120と、SCの移転を確認する署名履歴Txを生成するSCノード(SN)を有するSC原簿管理端末装置130と、ST及びSCの二重移転を検証し、ST及びSCの検証済みを示す署名履歴Txを生成するノータリノード(NN)を有する検証端末装置140と、カストディアンサーバ500とから構成される。
【0019】
ST売側業者サーバ200Aは、取引部210Aと、約定管理部220Aとを有する。取引部210Aは、STの売りを希望する売側投資家が操作するST売側端末装置300Aから売注文情報を受信する。取引部210Aは、売注文情報をマッチングサーバ400に送信する。売注文情報は好ましくは専用線で送信される。約定管理部220Aは、取引部210Aから得た各種情報を、カストディアンサーバ500に送信する。
【0020】
ST買側業者サーバ200Bは、取引部210Bと、約定管理部220Bとを有する。取引部210Bは、STの買いを希望する買側投資家が操作するST買側端末装置300Bから買注文情報を受信する。取引部210Bは、買注文情報をマッチングサーバ400に送信する。買注文情報は好ましくは専用線で送信される。約定管理部220Bは、取引部210Bから得た各種情報を、カストディアンサーバ500に送信する。
【0021】
マッチングサーバ400は、ST売側業者サーバ200Aから送信された売注文情報と、ST買側業者サーバ200Bから送信された買注文情報とを受信し、マッチング処理部が売情報と買情報のマッチングを実行する。売買が成立する(出来となる)と、出来情報をST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bに送信する。マッチングサーバ400は、移転用ブロックチェーン110上で出来を示す出来情報トランザクション(Tx)を生成するエクスチェンジノード(EN)を有する。マッチングサーバ400のENは、出来情報の送信に換えて又は出来情報の送信と共に、出来情報Txを生成し移転用ブロックチェーンに送信する。
【0022】
カストディアンサーバ500は、ST売側業者サーバ200Aの約定管理部220A及びST買側業者サーバ200Bの約定管理部220Bから送信された各種情報を処理するAPI提供基盤と、カストディアンノードCNとを有する。カストディアンサーバ500は、API提供基盤で処理された各種情報に基づき、CNの各種処理を実行する。カストディアンサーバ500は、カストディアンサーバ500のカストディアンノードCNを用いて移転用ブロックチェーン110上でSC及びSTの移転する署名履歴Txを生成することができる。
【0023】
次に、第1の実施形態に係るトークン移転システム100による処理を
図2~
図7の業務フロー図を参照しつつ説明する。
図2~
図7の上側の行番号1~6は、移転用ブロックチェーン110外の各サーバ及び端末装置による処理を示している。
図2~
図7の下側の行番号7~11は、移転用ブロックチェーン110内の各サーバ及び端末装置のノードによる処理を示している。
【0024】
図2において、ST売側業者サーバ200Aは、ST売注文情報を売側投資家のST売側端末装置300Aから受信すると、売側投資家が保有するSTの残高確認を実行する。STの残高が売りST以上と判断した場合に、ST売側業者サーバ200Aは、ST売注文発注情報をマッチングサーバ400に送信する。マッチングサーバ400は、ST売注文発注情報を受信すると、ST売注文情報に対する売注文IDを採番(生成)し、ST売側業者サーバ200Aと売注文IDを連携するために、ST売側業者サーバ200Aに売注文IDを送信し、
図3の行番号1の処理に移行する。
【0025】
図2において、ST買側業者サーバ200Bは、ST買注文情報を買側投資家のST買側端末装置300Bから受信すると、顧客(買側投資家)預かり金のロックを実行した後、ST買側業者サーバ200Bの業者自己口保有SCの残高確認を実行し、
図3の行番号3の処理に移行する。なお、第1及び第2の実施形態においては、各投資家は自己の端末装置にSC残高を持たず、ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bが、業者間決済目的で「業者自己口」のSCを保有している。
【0026】
図3は、ST買側業者サーバ200Bにおいて、ST買側業者サーバ200Bの業者自己口保有SCの残高が不足時の、SCを追加発行するSC追加発行処理を示している。SC追加発行処理は、
図3の「自己口SC保有残高不足時の対応」にしたがって処理される。なお、SC追加発行処理完了は、ST買側業者サーバ200Aによって定期的に確認される。また、SC追加発行処理完了の定期的な確認は、後述する
図5に示すように、約定後の移転Tx回付時においてSC残高不足を検知した場合にも自動実施される処理である。
【0027】
業者自己口保有SC残高が不足していない場合、または追加発行処理が完了した場合、ST買側業者サーバ200Bは、ST買注文発注情報をマッチングサーバ400に送信する。マッチングサーバ400は、ST買注文発注情報を受信すると、ST買注文情報に対する注文IDを採番(生成)し、ST買側業者サーバ200Bと買注文IDを連携するために、ST買側業者サーバ200Bに買注文IDを送信し、
図3の行番号1の処理に移行する。
【0028】
図4において、マッチングサーバ400は、STの売注文と買注文とのマッチングを実行し、マッチングが成立すれば、出来通知をST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bに送信する。ST売側業者サーバ200Aは、売側出来通知を受領(受信)すると、売側ST及びSC移転指図(移転指令)をカストディアンサーバ500に送信する。ST買側業者サーバ200Bは、買側出来通知を受領(受信)すると、買側ST及びSC移転指図(移転指令)をカストディアンサーバ500に送信する。なお、
図4は、マッチングサーバ400がENを有しない場合の処理であり、マッチングサーバ400がENを有する場合は、マッチングサーバ400のENが出来通知Txを生成し、これを買側業者サーバ200BのCN、カストディアンサーバ500のCNに移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。
【0029】
図4の行番号4に示すように、カストディアンサーバ500は、売側及び買側ST及びSC移転指図を受領(受信)すると、ST及びSC移転情報を生成すると共に、カストディアンサーバ500のCNは、ST及びSC移転情報登録Txを生成する。SC移転情報登録を生成した後、カストディアンサーバ500は、買側SC残高事前確認処理を実行し、
図5の行番号9の処理に移行する。
【0030】
図5は、ST買側業者サーバ200Bの業者自己口SCの保有残高が不足時の、SCを追加発行するSC追加発行処理を示している。SC追加発行処理は、
図5の「自己口SC保有残高不足時の対応」にしたがって処理される。SC追加発行処理が完了すると、
図6の行番号9の処理に移行する。
【0031】
図6において、カストディアンサーバ500は、追加発行処理の完了確認(売側SC残高の確認)を定期的に実行し、業者自己口保有SC残高が不足していない場合、ST及びSC移転Txを生成し、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。ST原簿管理端末装置120のANが、ST及びSC移転Txを受信すると、ST及びSC移転TxにAN署名履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。SC原簿管理端末装置130のSNが、AN署名履歴付きST及びSC移転Txを受領(受信)すると、AN署名履歴付きST及びSC移転TxにSN署名履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。カストディアンサーバ500のCNは、SN署名履歴付きST及びSC移転Txを受領すると、
図7の行番号9の処理に移行する。
【0032】
図7において、カストディアンサーバ500のCNは、検証端末装置140に対して二重消費(二重移転)有無の検証依頼を送信し、検証端末装置140がSC及びSTについて二重消費(二重移転)の有無を検証する処理を実行する。二重消費(二重移転)が無い場合、検証端末装置140のNNは、ST及びSC移転TxにNN署名履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。
【0033】
カストディアンサーバのCNは、NN署名履歴付きST及びSC移転Txに対して移転確定履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110を介して、ST原簿管理端末装置120のAN、及びSC原簿管理端末装置130のSNに配布(送信)する。また、カストディアンサーバ500は、ST及びSC移転結果(移転確定情報)を生成し、ST及びSC移転結果の連携のために、ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bに送信する。ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bは、それぞれST及びSC移転結果を確認の上、それぞれ内に登録する。
【0034】
ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200BでST及びSC移転結果の確認が登録されると共に、ST原簿管理端末装置120のAN及びSC原簿管理端末装置130のSNでST及びSC移転Txの取り込み処理が実行されると、取引が終了する。
【0035】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るトークン移転システム100を説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一部分は、その説明を省略する。第1の実施形態において、
図1に示すように、トークン処理システム100とST売側業者サーバ200Aとの間、及びトークン処理システム100とST買側業者サーバ200Bとの間に、カストディアンサーバ500を設けている。これに対して第2の実施形態は、
図9に示すように、カストディアンサーバ500を設けず、トークン処理システム100とST売側業者サーバ200Aとを直接接続し、かつトークン処理システム100とST買側業者サーバ200Bとを直接接続する。この場合、ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bは、それぞれカストディアンサーバ500の機能及びカストディアンサーバ500のCNを有するよう構成される。
【0036】
次に、第2の実施形態に係るトークン移転システム100による処理を
図2~
図7の業務フロー図を参照しつつ説明する。第2の実施形態の
図9の業務フローは、基本的に第1の実施形態に係る
図2の業務フローと同じである。ただし、
図9において、マッチングサーバ400から売側注文IDを受領したST売側業者サーバ200Aは、売側注文IDとST及びSCの移転に必要となる情報を紐づけして管理する。
【0037】
図9に続く
図10の業務フローも、基本的に第1の実施形態に係る
図3の業務フローと同じである。ただし、
図10において、マッチングサーバ400から買側注文IDを受領した買側業者サーバ200Bは、買側注文IDとST及びSCの移転に必要となる情報を紐づけして管理する。
【0038】
図11において、マッチングサーバ400は、STの売注文と買注文とのマッチングを実行し、マッチングが成立すれば、出来通知情報を自動生成する。マッチングサーバ400のENは、出来通知情報に基づき出来通知Txを生成し、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。ST売側業者サーバ200A及びST売側業者サーバ200BのCNは、それぞれ出来通知Txを移転用ブロックチェーン110から取り込む。ST売側業者サーバ200Aは、買側移転情報連携依頼をST買側業者サーバ200Bに送信する。ST買側業者サーバ200Bは、買側移転情報連携依頼を受領(受信)すると、これを確認の上、買側移転情報連携の承認をST売側業者サーバ200Aに送信する。
【0039】
ST売側業者サーバ200Aは、ST買側業者サーバ200Bから買側移転情報連携の承認を受領(受信)すると、SC移転金額確認依頼をST買側業者サーバ200Bに送信する。ST買側業者サーバ200Bは、SC移転金額確認依頼を受領(受信)すると、これを確認の上、SC移転金額確認結果を連携するために、SC移転金額確認結果をST売側業者サーバ200Aに送信する。ST売側業者サーバ200Aは、SC移転金額確認結果を受領(受信)すると、
図12の行番号8の処理に移行する。
【0040】
図12は、ST買側業者サーバ200Bにおいて、ST買側業者サーバ200Bの業者自己口保有SCの残高が不足時の、SCを追加発行するSC追加発行処理を示している。SC追加発行処理は、
図12の「自己口SC保有残高不足時の対応」にしたがって処理される。
【0041】
図12の行番号8において、SC残高不足通知を受信したST売側業者サーバ200Aは、SC移転金額確認依頼をST買側業者サーバ200Bに送信する。ST買側業者サーバ200Bは、SC移転金額確認依頼を受領(受信)すると、SC移転金額を確認できた場合、SC移転金額確認結果を連携するために、SC移転金額確認結果をST売側業者サーバ200Aに送信する。ST売側業者サーバ200Aは、SC移転金額確認結果を受領(受信)すると、
図13の行番号8の処理に移行する。なお、SC追加発行処理完了(SC移転金額の確認完了)は、ST売側業者サーバ200AからST買側業者サーバ200Bに対して定期的に確認される。
【0042】
図13において、ST売側業者サーバ200Aは、売側ST残高確認を定期的に実行し、業者自己口保有SC残高が不足していない場合、ST売側業者サーバ200AのCNは、ST及びSC移転Txを生成し、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。ST買側業者サーバ200BのCNは、ST及びSC移転Txを受領(受信)すると、ST及びSC移転TxにCN署名履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。
【0043】
ST原簿管理端末装置120のANが、CN署名履歴付きST及びSC移転Txを受領(受信)すると、CN署名履歴付きST及びSC移転TxにAN署名履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。SC原簿管理端末装置130のSNが、AN署名履歴付きST及びSC移転Txを受領(受信)すると、このST及びSC移転TxにSN署名履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。ST売側業者サーバ200AのCNは、SN署名履歴付きST及びSC移転Txを受領すると、
図14の行番号8の処理に移行する。
【0044】
図14において、ST売側業者サーバ200AのCNは、検証端末装置140に対して二重消費(二重移転)有無の検証依頼を送信し、検証端末装置140がSC及びSTについて二重消費(二重移転)の有無を検証する処理を実行する。二重消費(二重移転)が無い場合、検証端末装置140のNNは、ST及びSC移転TxにNN署名履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110に回付(送信)する。
【0045】
ST売側業者サーバ200AのCNは、NN署名履歴付きST及びSC移転Txに対して移転確定履歴を加えて、移転用ブロックチェーン110を介して、ST買側業者サーバ200BのCN、ST原簿管理端末装置120のAN、及びSC原簿管理端末装置130のSNに配布(送信)する。
【0046】
ST売側業者サーバ200Aにおいて、ST売側業者サーバ200AのCNからST及びSC移転Txの取り込み処理が実行され、ST売側業者サーバ200A内でST及びSC移転結果の確認が登録される。ST買側業者サーバ200Bにおいて、ST売側業者サーバ200AのCNから送信されたST及びSC移転Txの取り込み処理が実行され、ST買側業者サーバ200B内でST及びSC移転結果の確認が登録される。ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bにおいて、ST及びSC移転結果の確認が登録されると、取引が終了する。
【0047】
第2の実施形態において、
図8に示したように、トークン処理システム100と、ST売側業者サーバ200A及びST買側業者サーバ200Bとを直接接続しているが、トークン処理システム100とST売側業者サーバ200Aとの間、またはトークン処理システム100とST買側業者サーバ200Bとの間に、カストディアンサーバ500を設けてもよい。この場合、カストディアンサーバ500は、ST売側業者サーバ200AまたはST買側業者サーバ200Bの機能の一部、及びST売側業者サーバ200AまたはST買側業者サーバ200BのCNを有するように構成される。
【符号の説明】
【0048】
100 トークン処理システム
110 ブロックチェーン
200A ST売側業者サーバ
200B ST買側業者サーバ
300A ST売側端末装置
300B ST買側端末装置
400 マッチングサーバ
500 カストディアンサーバ
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティトークン、及び法定通貨にペッグされたステーブルコインの双方の移転を実行するために、複数の業者サーバと、前記複数の業者サーバの間で前記セキュリティトークンの移転を仲介するマッチングサーバとに対して、通信可能に接続されたトークン移転システムであって、
前記トークン移転システムは、前記セキュリティトークン、及び前記ステーブルコインの双方の移転を実行する移転用ブロックチェーンと、前記セキュリティトークンの移転を管理するセキュリティトークン原簿管理端末装置と、前記ステーブルコインの移転を管理するステーブルコイン原簿管理端末装置と、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインの二重移転が発生していないことを検証する検証端末装置とを備える、トークン移転システム。
【請求項2】
請求項1に記載のトークン移転システムにおいて、
前記マッチングサーバは、
前記複数の業者サーバ間で前記セキュリティトークンの移転がマッチングしたことを示す出来通知情報を生成し、前記複数の業者サーバに送信すること、及び/又は
前記複数の業者サーバ間で前記セキュリティトークンの移転がマッチングしたことを示す出来通知トランザクションを生成し、前記移転用ブロックチェーンに送信すること
を実行する、トークン移転システム。
【請求項3】
請求項2に記載のトークン移転システムにおいて、
前記複数の業者サーバは、前記出来通知トランザクションを前記移転用ブロックチェーンから取り込む、トークン移転システム。
【請求項4】
請求項3に記載のトークン移転システムにおいて、
前記複数の業者サーバは、セキュリティトークン売側業者サーバと、セキュリティトークン買側業者サーバとから構成され、
前記セキュリティトークン売側業者サーバと前記セキュリティトークン買側業者サーバとの間で、前記セキュリティトークン買側業者サーバが保有者として記録されている前記ステーブルコインの残高が、前記セキュリティトークンの移転金額を充足していることの確認処理が完了すると、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する移転トランザクションを生成し、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項5】
請求項4に記載のトークン移転システムにおいて、
前記ステーブルコインの前記残高が、前記セキュリティトークンの前記移転金額を充足していない場合、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する処理を進めずに、前記セキュリティトークン買側業者サーバにおける前記ステーブルコインの追加発行処理に移行する、トークン移転システム。
【請求項6】
請求項5に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン買側業者サーバにおける前記ステーブルコインの追加発行処理の完了を定期的に確認する、トークン移転システム。
【請求項7】
請求項6に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバが前記追加発行処理の完了を確認すると、前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記セキュリティトークン及び前記ステーブルコインを移転する処理を進める、トークン移転システム。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン買側業者サーバは、前記セキュリティトークン売側業者サーバから送信された前記移転トランザクションに対して移転を確認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項9】
請求項8に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン原簿管理端末装置は、前記セキュリティトークン買側業者サーバから送信された前記移転トランザクションに対して前記セキュリティトークンの移転を承認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項10】
請求項9に記載のトークン移転システムにおいて、
前記ステーブルコイン原簿管理端末装置は、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置から送信された前記移転トランザクションに対して前記ステーブルコインの移転を承認する署名履歴を加えて、前記移転用ブロックチェーンに送信する、トークン移転システム。
【請求項11】
請求項10に記載のトークン移転システムにおいて、
前記検証端末装置は、前記セキュリティトークン売側業者サーバの署名履歴、前記セキュリティトークン買側業者サーバの署名履歴、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置の署名履歴、及び前記ステーブルコイン原簿管理端末装置の署名履歴が加えられた前記移転トランザクションに対して、前記二重移転の有無を検証済みの署名履歴を加えて、前記セキュリティトークン売側業者サーバに送信する、トークン移転システム。
【請求項12】
請求項11に記載のトークン移転システムにおいて、
前記セキュリティトークン売側業者サーバは、前記検証端末装置から送信された前記移転トランザクションに対して、取引確定の署名履歴を加えて、前記セキュリティトークン買側業者サーバ、前記セキュリティトークン原簿管理端末装置、及び前記ステーブルコイン原簿管理端末装置に送信する、トークン移転システム。