(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004772
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】射出成形機システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240110BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240110BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
H02M3/28 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104591
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 啓
【テーマコード(参考)】
4F206
5H730
【Fターム(参考)】
4F206AM20
4F206AP15
4F206AR16
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP14
4F206JP30
4F206JQ90
4F206JT31
5H730AA15
5H730AS17
5H730BB21
5H730BB82
5H730BB86
5H730CC01
5H730CC11
5H730FD01
5H730FD31
(57)【要約】
【課題】複数の射出成形機を有する射出成形機システムにおいて、電力変換器のコストを抑制する。
【解決手段】
系統電源10から受電した電力を用いて複数の射出成形機を駆動する射出成形機システム100であって第1射出成形機50Aと第2射出成形機50Bと、第1蓄電装置55Aと第2蓄電装置55Bと、系統電源10から受電した電力を変換し、変換した後の電力を第1蓄電装置および第2蓄電装置の少なくとも一方に供給する電源装置25とを備える。電源装置は、交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ20と、直流電力の電圧変換をするDC/DCコンバータ31と、供給経路を切り替え可能に構成された切替装置41と、制御装置80とを含む。制御装置は、第1蓄電装置および第2蓄電装置の各々のSOCに基づいて、切替装置を切り替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から受電した電力を用いて複数の射出成形機を駆動する射出成形機システムであって、
直流電力の供給によって駆動される第1射出成形機と、
直流電力の供給によって駆動される第2射出成形機と、
前記第1射出成形機に対して直流電力を供給し、直流電力を蓄電可能に構成される第1蓄電装置と、
前記第2射出成形機に対して直流電力を供給し、直流電力を蓄電可能に構成される第2蓄電装置と、
前記系統電源から受電した電力を変換し、変換した後の電力を前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置の少なくとも一方に供給する電源装置とを備え、
前記電源装置は、
前記系統電源から受電した交流電力を直流電力に変換する第1電力変換器と、
前記第1電力変換器が変換した直流電力の電圧変換をする第2電力変換器と、
前記第2電力変換器によって変換された直流電力を前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置の少なくとも一方に供給するための供給経路を切り替え可能に構成された第1切替装置と、
前記第1切替装置を制御する制御装置とを含み、
前記制御装置は、前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置の各々のSOC(State of Charge)に基づいて、前記第1切替装置を切り替える、射出成形機システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1蓄電装置の第1SOCと前記第2蓄電装置の第2SOCとを取得し、
前記第1SOCが前記第2SOCを下回っている場合に前記第1蓄電装置に直流電力が供給されるように前記第1切替装置を切り替え、
前記第2SOCが前記第1SOCを下回っている場合に前記第2蓄電装置に直流電力が供給されるように前記第1切替装置を切り替える、請求項1に記載の射出成形機システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1蓄電装置の第1SOCと前記第2蓄電装置の第2SOCとを取得し、
前記第1SOCの単位時間あたりの第1低下量および前記第2SOCの単位時間あたりの第2低下量を比較し、
前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置のうち、SOCが早期に所定の基準値を下回る蓄電装置を定め、
前記早期に所定の基準値を下回る蓄電装置に直流電力が供給されるように前記第1切替装置を切り替える、請求項1に記載の射出成形機システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記第1蓄電装置の第1SOCと前記第2蓄電装置の第2SOCとを取得し、
前記第1射出成形機の第1消費電力と前記第2射出成形機の第2消費電力とを取得し、
前記第1SOCと前記第2SOCとの比較および前記第1消費電力と前記第2消費電力との比較をし、
前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置のうち、SOCが早期に所定の基準値を下回る蓄電装置を定め、
前記早期に所定の基準値を下回る蓄電装置に直流電力が供給されるように前記第1切替装置を切り替える、請求項1に記載の射出成形機システム。
【請求項5】
前記第2電力変換器は、絶縁式のDC/DCコンバータである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の射出成形機システム。
【請求項6】
前記電源装置は、
前記第2電力変換器に加えて、前記第1電力変換器が変換した直流電力の電圧変換をする第3電力変換器と、
前記第3電力変換器によって変換された直流電力を前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置の少なくとも一方に供給するための供給経路を切り替え可能に構成された第2切替装置とをさらに含み、
前記制御装置は、前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置の各々のSOCに基づいて、前記第2切替装置を切り替える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の射出成形機システム。
【請求項7】
前記電源装置は、再生可能エネルギー電源によって発電された電力を受電する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の射出成形機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場では、射出成形機を用いてプラスチック等の樹脂を基材とする成形品が製造されている。正確な位置決め制御が要求される射出成形処理には、高い精度および応答性を有するサーボモータが用いられ得る。特許文献1(特開2007-168177公報)には、サーボモータを有する電動射出成形機が記載されている。
【0003】
特許文献1では、3相交流の供給電源から供給される交流電力がAC/DCコンバータによって直流電力に変換されて、電動射出成形機のサーボモータへと供給されている。AC/DCコンバータは、3相交流の供給電源から供給される電流を正弦波状に制御し、予め定められた直流電圧を出力する。特許文献1では、1つの射出成形機に対して1つのAC/DCコンバータが設けられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、工場には複数の射出成形機を含むシステムが導入される場合があり、このようなシステムでは、1つの射出成形機に対して1つのAC/DCコンバータを設ければ、複数の射出成形機と同数のAC/DCコンバータが必要となる。複数の射出成形機の数と同数の電力変換器を設けた場合、システム全体のコストが増加してしまう場合がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の射出成形機を有する射出成形機システムにおいて、電力変換器のコストを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る射出成形機は、系統電源から受電した電力を用いて複数の射出成形機を駆動する射出成形機システムである。射出成形機システムは、第1射出成形機と第2射出成形機と第1蓄電装置と第2蓄電装置と電源装置とを備える。第1射出成形機は、直流電力の供給によって駆動される。第2射出成形機は、直流電力の供給によって駆動される。第1蓄電装置は、第1射出成形機に対して直流電力を供給し、直流電力を蓄電可能に構成される。第2蓄電装置は、第2射出成形機に対して直流電力を供給し、直流電力を蓄電可能に構成される。電源装置は、系統電源から受電した電力を変換し、変換した後の電力を第1蓄電装置および第2蓄電装置の少なくとも一方に供給する。電源装置は、系統電源から受電した交流電力を直流電力に変換する第1電力変換器と、第1電力変換器が変換した直流電力の電圧変換をする第2電力変換器と、第2電力変換器によって変換された直流電力を第1蓄電装置および第2蓄電装置の少なくとも一方に供給するための供給経路を切り替え可能に構成された切替装置と、切替装置を制御する制御装置とを含む。制御装置は、第1蓄電装置および第2蓄電装置の各々のSOCに基づいて、切替装置を切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る射出成形機によれば、第1射出成形機と第2射出成形機とを有する射出成形機システムにおいて、1つの第2電力変換器を用いて複数の射出成形機の各々に対して電力を供給でき、コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における射出成形機システムの構成の概略を示す図である。
【
図2】実施の形態1における射出成形機の外観図である。
【
図3】実施の形態1における射出成形機の概略ブロック図である。
【
図4】実施の形態1における切替装置の切替手順を示すフローチャートである。
【
図5】変形例1における切替装置の切替手順を示すフローチャートである。
【
図6】変形例2における切替装置の切替手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2における射出成形機システムの構成の概略を示す図である。
【
図8】実施の形態3における射出成形機システムの構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
<射出成形機システムの構成について>
以下では、
図1を用いて実施の形態1における射出成形機システム100について説明する。
図1は、実施の形態1における射出成形機システム100の構成の概略を示す図である。
【0011】
実施の形態1における射出成形機システム100は、電源装置25と、射出成形機50A~50Dと、バッテリ55A~55Dとを備える。電源装置25は、系統電源10から受電した電力を変換し、変換後の電力をバッテリ55A~55Dのうちの少なくとも1つに対して供給する。
【0012】
射出成形機50A~50Dの各々は、型締装置および射出装置を有する横型の射出成形機である。以下では、射出成形機50A~50Dを総称して単に「射出成形機50」と称する。なお、実施の形態1における射出成形機システム100に含まれる射出成形機50の数は、5基に限られず、射出成形機システム100は2基以上の射出成形機を含んでいればよい。
【0013】
射出成形機50によって実行される射出成形処理は、型締工程、射出工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、突出工程、および可塑化工程などの工程を含む。射出成形機50は、この射出成形処理のサイクルを繰り返し実行する。射出成形機50は、種々の形状、材質の成形品を成形可能であり、形状および材質の種類に応じた射出成形処理を行う。
【0014】
射出成形機50は、射出成形処理に用いられるサーボモータおよび該サーボモータを駆動するサーボアンプを含む。サーボアンプは、直流電圧から三相交流電圧を生成して、サーボモータを駆動する。すなわち、射出成形機50は、電源装置25から受電した直流電力によって射出成形処理を行う。射出成形機50の構成と動作については後述にて説明する。
【0015】
射出成形機50A~50Dには、バッテリ55A~55Dがそれぞれ接続されている。バッテリ55A~55Dは、射出成形機50A~50Dに対して直流電力をそれぞれ供給する。バッテリ55A~55Dは、再充電が可能に構成された直流電源であって、たとえば、ニッケル水素電池または固体または液体の電解質を含むリチウムイオン電池等の二次電池である。なお、バッテリ55A~55Dは、射出成形機50A~50Dの内部にそれぞれ格納されていてもよい。以下では、バッテリ55A~55Dを総称して単に「バッテリ55」と称する場合がある。
【0016】
電源装置25は、AC/DCコンバータ20と、DC/DCコンバータ21,31と、バッテリ22と、切替装置41と、制御装置80と、記憶装置90とを備える。
【0017】
AC/DCコンバータ20は、系統電源10から交流電力を受電する電源装置25の端子に電気的に接続される。AC/DCコンバータ20とDC/DCコンバータ21,31とは、電力線35を介して電気的に接続されている。DC/DCコンバータ21には、バッテリ22が接続されている。DC/DCコンバータ31は、切替装置41を介して、射出成形機50と接続される側の電源装置25の端子と接続されている。
【0018】
AC/DCコンバータ20は、系統電源10から供給される交流電力を直流電力に変換する電力変換器である。AC/DCコンバータ20によって生成された直流電力は、電力線35を介して、DC/DCコンバータ21,31へ供給される。すなわち、電力線35には直流電力が流れる。AC/DCコンバータ20は、本開示における「第1電力変換器」の一例である。
【0019】
バッテリ22は、バッテリ55と同様に、リチウムイオン電池などの二次電池である。DC/DCコンバータ21は、電力線35から供給される電力を降圧してバッテリ22に供給する。また、DC/DCコンバータ21は、バッテリ22から供給される電力の電圧を昇圧して、電力線35への供給電力を生成する。これにより、射出成形機システム100では、災害または電力逼迫などによって系統電源10からの電力供給が制限される場合にバッテリ22を用いて射出成形機50A~50Dに対して一時的に電力供給をすることが可能である。
【0020】
DC/DCコンバータ31は、DC/DCコンバータ21と同様に、電力線35から供給される電力を降圧して射出成形機50またはバッテリ55へと供給する。すなわち、DC/DCコンバータ31は、AC/DCコンバータ20の出力電圧を降圧して、バッテリ55A~55Dおよび射出成形機50の駆動電力への供給電力を生成する。DC/DCコンバータ31は、本開示における「第2電力変換器」の一例である。実施の形態1におけるDC/DCコンバータ31は、絶縁式のDC/DCコンバータである。すなわち、DC/DCコンバータ31は、絶縁トランスを含む。これにより、DC/DCコンバータ31の一次側と二次側とを絶縁することができ、射出成形機50にて地絡が発生しても、当該地絡はDC/DCコンバータ31の一次側には影響を及ぼさない。
【0021】
切替装置41は、DC/DCコンバータ31によって降圧された直流電力の供給経路を切り替える。切替装置41は、たとえば、リレー回路である。切替装置41は、DC/DCコンバータ31によって生成された直流電力がバッテリ55A~55Dのうちの少なくとも1つのバッテリに供給されるように供給経路を切り替えることができる。たとえば、切替装置41は、DC/DCコンバータ31によって生成された直流電力がバッテリ55Aだけに供給されるように供給経路を切り替えることができる。また、切替装置41は、DC/DCコンバータ31によって生成された直流電力がバッテリ55Aおよびバッテリ55Bの2つのバッテリに供給されるように供給経路を切り替えられる。なお、切替装置41は、本開示における「第1切替装置」に対応し得る。
【0022】
さらに、切替装置41は、DC/DCコンバータ31によって生成された直流電力がバッテリ55A~55Dの全てに供給されるように供給経路を切り替えられる。たとえば、夜間に射出成形機50A~50Dを休止させる工場では、制御装置80は、夜間に直流電力がバッテリ55A~55Dの全てに供給されるように供給経路を切り替える。これにより、射出成形機システム100では、夜間にバッテリ55A~55Dの全てへの充電処理を行うことができる。
【0023】
上述したように制御装置80は、切替装置41を制御する。制御装置80は、たとえば、CPUなどの1つ以上のプロセッサ、またはプロセッサとASIC,FPGAなどの回路との組合せによって実現される。実施の形態1における制御装置80は、バッテリ55A~55Dの各々のSOC(State Of Charge)を取得し、取得したSOCに基づいて、切替装置41を制御する。より具体的には、実施の形態1における制御装置80は、バッテリ55A~55DのSOCのうち、最も低いSOCを有するバッテリに対して直流電力が供給されるように切替装置41を制御する。
【0024】
また、実施の形態1では、制御装置80は、射出成形機50A~50Dの各々の消費電力を取得できる。上述したように、射出成形機50は、成形品の形状、材質の種類に応じて異なる射出成形処理を行う。たとえば、射出成形処理の1サイクルにおけるモータの駆動時間、成形品の形状、材質の種類に応じて必要となるトルクなどが異なる。そのため、成形品の形状、材質の種類によって、射出成形機50ごとに各消費電力は異なる。
【0025】
記憶装置90は、不揮発性のメモリデバイスである。制御装置80は、バッテリ55A~55Dの各々から取得したSOC、射出成形機50A~50Dの各々から取得した消費電力を記憶装置90に記憶させることができる。すなわち、記憶装置90には、バッテリ55A~55Dの各々のSOC、射出成形機50A~50Dの各々の消費電力の履歴が格納される。
<射出成形機>
以下では、
図2を用いて実施の形態1における射出成形機50について説明する。
図2は、実施の形態1における射出成形機50の外観図である。射出成形機50は、金型を型締めする型締装置60と、射出材料を溶融して射出する射出装置61と、表示装置30と、制御装置40とを備える。
【0026】
射出成形機50は、XY平面上に載置されている。XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。
図2におけるZ軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。
【0027】
<型締装置>
実施の形態1では、型締装置60は、ベッド11と、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ51とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等の型締装置60が備える構成を保持する。固定盤12は、ベッド11に固定されている。型締ハウジング13は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。同様に、可動盤14は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。
【0028】
タイバー15は、固定盤12と型締ハウジング13との間に配置され、固定盤12と型締ハウジング13とを連結する。タイバー15は、複数のバーを含む。実施の形態1における射出成形機50は、4本のバーを含むタイバー15が備えられている。ある局面では、タイバー15は、5本以上のバーを含んでもよい。
【0029】
可動盤14は、固定盤12と型締ハウジング13との間でX軸方向にスライド可能であるように構成される。型締機構16は、型締ハウジング13と可動盤14との間に設けられる。実施の形態1における型締ハウジング13は、トグル機構を含んで構成される。なお、型締機構16は、直圧式の型締機構を含んで構成されてもよい。直圧式の型締機構とは、すなわち型締シリンダを意味する。
【0030】
金型17,18は、固定盤12と可動盤14との間に設けられる。金型17,18は、型締機構16が駆動することにより、開閉されるように構成されている。ボールねじ51は、回転運動を直線運動に変換することにより、型締機構16を開閉させる。
<射出装置>
射出装置61は、基台62と、加熱シリンダ63と、スクリュ23と、駆動機構24と、ホッパ64と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、熱電対65とを備える。基台62は、ベッド11のX軸の正方向側に配置され、駆動機構24等を保持する。スクリュ23は、加熱シリンダ63の内部に配置される。駆動機構24は、X軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させ、スクリュ23自体をX軸方向にスライドするように駆動させる。
【0031】
ホッパ64は、加熱シリンダ63のZ軸の正方向側に設けられる。射出ノズル26は、加熱シリンダ63のX軸の負方向側の端部に設けられる。ノズルタッチ装置27は、射出装置61をX軸方向にスライドさせて、射出ノズル26を金型18のスプルーブッシュに接触させる。熱電対65は、射出ノズル26の近傍および加熱シリンダ63の近傍に配置され得る。熱電対65は、配置された箇所の温度を検出する温度センサである。ある局面では、射出成形機50は、熱電対65ではない他の温度センサを備えてもよい。
【0032】
基台62は、内部に制御装置40と、サーボアンプ53a,53bとを備える。制御装置40は、CPU、メモリ等を搭載した基板52を含む。制御装置40は、熱電対65を含む各種センサの検出値を取得し、射出成形機50を統括的に制御する。各種センサの検出値とは、たとえば、加熱シリンダ63の温度情報、または、型締機構16、金型17,18、射出ノズル26等の各種可動部品の位置情報等を含む。
【0033】
上述したように、サーボアンプ53a,53bは、直流電圧から三相交流電圧を生成し、対応するサーボモータに対して三相交流電力を供給する。サーボアンプ53aとサーボアンプ53bとは、同一の型式のサーボアンプである。
【0034】
表示装置30は、射出成形機50のY軸の負方向側に設けられている。なお、表示装置30の配置は、射出成形機50のY軸の負方向側に限られず、たとえば、射出成形機50のY軸の正方向側もしくは射出成形機50とは別体として配置されてもよい。表示装置30は、ディスプレイ30Dと入力装置30Bとを備える。入力装置30Bは、たとえば、複数のボタンを含んで構成される。ある局面では、表示装置30は、複数のディスプレイおよびスピーカー等を備えてもよい。また、ディスプレイ30Dと入力装置30Bとは、タッチパネルとして一体的に設けられてもよい。なお、
図2においては、横型の射出成形機の例を説明したが、実施の形態1の射出成形機50は、これに限られるものではなく、竪型の射出成形機であってもよい。
<射出成形機の概略ブロック図>
図3は、射出成形機50の概略ブロック図である。制御装置40は、記憶部44と基板52とを備える。記憶部44は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等を含んで構成され得る。基板52は、制御部57と、入力インターフェース52iと、出力インターフェース52oとが搭載されている。制御部57は、CPU57aとメモリ57bとを備える。
【0035】
メモリ57bは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含み、CPU57aにより実行されるプログラム等を記憶する。CPU57aは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。
【0036】
ある局面では、制御部57は、専用のハードウェア回路により構成されてもよい。すなわち、制御部57は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等により実現され得る。また、制御部57は、プロセッサおよびメモリ、ASIC、FPGA等を適宜組み合わせて実現してもよい。
【0037】
制御部57は、入力インターフェース52iを介して、熱電対65等の各種センサから検出値を受信する。制御部57は、出力インターフェース52oを介して、駆動機構24および表示装置30へ制御命令を送信する。制御部57は、各種センサの検出値を用いて、駆動機構24を駆動させる。制御部57は、各種センサの検出値に基づいて射出成形機50の状態を表示装置30に表示させる。
【0038】
<制御装置における処理手順>
実施の形態1に係る射出成形機システム100の制御装置80における処理について説明する。なお、以下の制御装置80における処理の説明では
図1についても適宜参照する。
図4は、制御装置80における切替装置41の切替手順を示すフローチャートである。
図4に示されるフローチャートは、記憶装置90によってプログラムとして記憶されており、制御装置80によって実行される。
【0039】
制御装置80は、バッテリ55A~55Dの各々のSOCを取得する(ステップS10)。より具体的には、制御装置80は、バッテリ55A~55Dにそれぞれ設けられた図示されない電流センサまたは電圧センサの検出値に基づいて、バッテリ55A~55Dの各々のSOCを推定して取得する。制御装置80は、取得したバッテリ55A~55Dの各々のSOCを比較する(ステップS11)。制御装置80は、最も低いSOCを有するバッテリ55を供給先に決定する(ステップS12)。制御装置80は、供給先として定めたバッテリ55に直流電力が供給されるように切替装置41を切り替える(ステップS13)。
【0040】
制御装置80は、所定期間、ステップS13にて供給先として定めたバッテリ55を充電する(ステップS14)。ステップS14における所定期間とは、たとえば、1分間、10秒間などでもよいし、さらに、短い時間であってもよい。実施の形態1において、射出成形機50は、基本的にバッテリ55からの供給電力に基づいて駆動する。制御装置80は、ステップS14において射出成形機50が駆動中である場合、供給先のバッテリ55および射出成形機50の両方に対して直流電力を供給する。これにより、射出成形機システム100では、電源装置25から受電する直流電力によって射出成形機50を駆動できると同時に、電源装置25から供給される電力をバッテリ55に充電することができる。つまり、電源装置25によって供給される電力は、射出成形機50によるバッテリ55の消費電力よりも大きい電力である。
【0041】
制御装置80は、バッテリ55A~55Dの全てが満充電であるか否かを判断する(ステップS15)。全てのバッテリが満充電ではない場合(ステップS15でNO)、制御装置80は、処理をステップS10へと戻す。これにより、制御装置80は、ステップS14における所定期間ごとにバッテリ55の供給先を切り替えて充電処理をすることができる。すなわち、制御装置80は、時分割で充電処理を行う。全てのバッテリが満充電である場合(ステップS15でYES)、制御装置80は処理を終了する。処理を終了した後、制御装置80は、予め定められた期間が経過したこと、バッテリ55A~55Dから射出成形機50に電力が供給されたこと、あるいは、射出成形機50が駆動されたことに基づいて、
図4のフローチャートを再度、実行する。
【0042】
このように、5基の射出成形機50A~50Dを有する射出成形機システム100において、各バッテリ55A~55DのSOCに基づいて直流電力の供給経路を切り替えている。すなわち、実施の形態1の射出成形機システム100では、DC/DCコンバータ31に各バッテリ55A~55Dへの電力供給処理を時分割にて行わせる。これにより、実施の形態1における射出成形機システム100では、5基の射出成形機50A~50Dの各々に対してDC/DCコンバータ31を設ける必要がないため、1つのDC/DCコンバータ31によって電力供給でき、コストを抑制できる。
【0043】
<変形例1>
実施の形態1のフローチャートでは、
図1に示したバッテリ55A~55Dの各々のSOCのうち、最も低いSOCを有するバッテリを供給先として決定する例について説明した。しかしながら、供給先の決定方法は、SOCを取得したタイミングにおけるSOCの比較だけには限られず、制御装置80は記憶装置90に記憶されている履歴を用いて供給先を定めてもよい。変形例1では、SOCの比較に加えて、単位時間あたりのSOCの低下量を用いて供給先を定める例を説明する。なお、以下の変形例1の説明では
図1についても適宜参照する。また、変形例1では、
図1~
図4にて説明した実施の形態1と同様の構成について、説明を繰り返さない。
【0044】
図5は、変形例1における切替装置41の切替手順を示すフローチャートである。制御装置80は、バッテリ55A~55Dの各々のSOCを取得する(ステップS20)。ステップS20において制御装置80は、取得したSOCの各々と取得した時間を示す情報とを関連付けて、履歴として記憶装置90に記憶させる。
【0045】
制御装置80は、バッテリ55A~55Dの各々のSOC、およびバッテリ55A~55Dの各々のSOCの単位時間あたりの低下量を比較する(ステップS21)。低下量とは、バッテリ55から射出成形機50に対して供給する電力から電源装置25によって充電される電力を差し引いた値である。電源装置25から電力が供給されない場合、低下量は、射出成形機50への供給電力そのものとなる。
【0046】
制御装置80は、記憶装置90に記憶されている履歴に基づいて、バッテリ55A~55Dの各々のSOCの単位時間あたりの低下量を算出する。変形例1では、SOCの推移の傾きを算出するため、単位時間は微小時間である。なお、単位時間は微小時間に限られず、ある局面において単位時間は10秒、1分間または他の期間であってもよい。
【0047】
制御装置80は、SOCと、SOCの単位時間あたりの低下量との比較結果から、SOCが所定の基準値を最も早期に下回るバッテリ55を供給先に決定する(ステップS22)。所定の基準値とは、たとえば、通常使用範囲の下限値または過放電状態を示すSOCの値である。通常使用範囲の下限値とは、たとえば、20%である。
【0048】
すなわち、制御装置80は、ステップS21にて算出した単位時間あたりの低下量のまま継続して各バッテリ55A~55DのSOCが低下すると推定し、ステップS22におけるタイミングから各バッテリ55A~55DのSOCが通常使用範囲の下限値に到達するまでの期間を算出する。制御装置80は、最も早期に通常使用範囲の下限値に到達するバッテリ55を供給先として決定する。
【0049】
制御装置80は、供給先として定めたバッテリ55に直流電力が供給されるように切替装置41を切り替える(ステップS23)。制御装置80は、所定期間、ステップS23にて供給先として定めたバッテリ55を充電する(ステップS24)。制御装置80は、バッテリ55A~55Dの全てが満充電であるか否かを判断する(ステップS25)。全てのバッテリが満充電ではない場合(ステップS25でNO)、制御装置80は、処理をステップS20へと戻す。全てのバッテリが満充電である場合(ステップS25でYES)、制御装置80は処理を終了する。
【0050】
このように、変形例1の射出成形機システム100においても、各バッテリ55A~55DのSOCに基づいて直流電力の供給経路を切り替えている。すなわち、変形例1の射出成形機システム100でも、DC/DCコンバータ31に各バッテリ55A~55Dへの電力供給処理を時分割にて行わせる。これにより、変形例1における射出成形機システム100では、5基の射出成形機50A~50Dの各々に対してDC/DCコンバータ31を設ける必要がないため、1つのDC/DCコンバータ31によって電力供給でき、コストを抑制できる。
【0051】
さらに、変形例1における射出成形機システム100では、SOCに加えて、SOCの単位時間における低下量を用いることによって、早期に通常使用範囲の下限値に到達するバッテリに対して電力を供給することができる。これによって、変形例1では、バッテリ55A~55Dのいずれかが通常使用範囲の下限値に到達することを抑制することができる。
【0052】
<変形例2>
実施の形態1および変形例1では、
図1に示したバッテリ55A~55Dから取得した情報に基づいて供給先を決定する例について説明した。しかしながら、供給先の決定方法は、バッテリ55A~55Dに関する情報だけを用いる方法に限られず、制御装置80は射出成形機50から取得する情報に基づいて供給先を定めてもよい。変形例2では、SOCの比較に加えて、単位時間あたりのSOCの低下量を用いて供給先を定める例を説明する。なお、以下の変形例2の説明では
図1についても適宜参照する。また、変形例2において、実施の形態1と同様の構成について、説明を繰り返さない。
【0053】
図6は、変形例2における切替装置41の切替手順を示すフローチャートである。制御装置80は、バッテリ55A~55Dの各々のSOCを取得する(ステップS30)。続いて、変形例2における制御装置80は、射出成形機50A~50Dから各々の消費電力を取得する(ステップS31)。上述したように、成形品の形状、材質の種類によって、射出成形機50A~50Dの各々の消費電力は互いに異なる。射出成形機50A~50Dの各々は、設定された情報に基づいて射出成形処理に必要な消費電力を算出する。ステップS31において、射出成形機50A~50Dは、制御装置80に対して消費電力を示す情報を送信する。
【0054】
制御装置80は、バッテリ55A~55Dの各々のSOC、および射出成形機50A~50Dの各々の消費電力を比較する(ステップS32)。制御装置80は、SOCと消費電力との比較結果から、SOCが所定の基準値を最も早期に下回るバッテリ55を供給先に決定する(ステップS33)。
【0055】
変形例2においては、制御装置80は、射出成形機50から取得した消費電力に基づいて単位時間あたりのSOCの低下量を推定する。制御装置80は、推定した単位時間あたりの低下量のまま継続してSOCが低下する場合に、ステップS33におけるタイミングからSOCが通常使用範囲の下限値に到達するまでの期間を算出する。制御装置80は、最も早期に通常使用範囲の下限値に到達するバッテリ55を供給先として決定する。
【0056】
制御装置80は、供給先として定めたバッテリ55に直流電力が供給されるように切替装置41を切り替える(ステップS34)。制御装置80は、所定期間、ステップS34にて供給先として定めたバッテリ55を充電する(ステップS35)。制御装置80は、バッテリ55A~55Dの全てが満充電であるか否かを判断する(ステップS36)。全てのバッテリが満充電ではない場合(ステップS36でNO)、制御装置80は、処理をステップS30へと戻す。全てのバッテリが満充電である場合(ステップS36でYES)、制御装置80は処理を終了する。
【0057】
このように、変形例2の射出成形機システム100においても、各バッテリ55A~55DのSOCに基づいて直流電力の供給経路を切り替えている。すなわち、変形例2の射出成形機システム100でも、DC/DCコンバータ31に各バッテリ55A~55Dへの電力供給処理を時分割にて行わせる。これにより、変形例2における射出成形機システム100では、5基の射出成形機50A~50Dの各々に対してDC/DCコンバータ31を設ける必要がないため、1つのDC/DCコンバータ31によって電力供給でき、コストを抑制できる。
【0058】
さらに、変形例2における射出成形機システム100では、SOCに加えて、射出成形機50の消費電力を用いることによって、早期に通常使用範囲の下限値に到達すると予測されるバッテリに対して電力を供給することができる。これによって、変形例2では、バッテリ55A~55Dのいずれかが通常使用範囲の下限値に到達することを抑制することができる。
【0059】
<実施の形態2>
実施の形態1では、1つのDC/DCコンバータ31に対して5基の射出成形機50A~50Dおよびバッテリ55A~55Dが接続されている構成について説明した。しかしながら、電源装置25に含まれるDC/DCコンバータ31の数は、1つに限られない。実施の形態2では、DC/DCコンバータ31に加えて、DC/DCコンバータ32を備える射出成形機システム100Aの構成を説明する。実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成について、説明を繰り返さない。
【0060】
図7は、実施の形態2における射出成形機システム100Aの構成の概略を示す図である。
図7に示されるように、電源装置25は、DC/DCコンバータ31に加えて、DC/DCコンバータ32をさらに備える。DC/DCコンバータ32は、DC/DCコンバータ31と同様の構成を備える。すなわち、DC/DCコンバータ32は、AC/DCコンバータ20が変換した直流電力の電圧変換をする。また、電源装置25は、切替装置41に加えて、切替装置42をさらに備える。切替装置42は、切替装置41と同様の構成を備える。なお、切替装置42は、本開示における「第2切替装置」に対応し得る。
【0061】
DC/DCコンバータ32は、電力線35と接続されている。DC/DCコンバータ32は、切替装置42を介して、各バッテリ55A~55Dを備えている。制御装置80は、切替装置41に加えて、切替装置42を制御する。すなわち、実施の形態2では、各バッテリ55A~55Dは、切替装置41,42を介する2つの供給経路から、直流電力が供給される。
【0062】
これにより、実施の形態2においては、DC/DCコンバータ31,32のうち一方が故障した場合であっても他方を用いて電源装置25から各バッテリ55A~55Dへの電力供給を継続することができる。また、同様に、実施の形態2においては、切替装置41,42のうちの一方が故障した場合であっても他方を用いて電源装置25から各バッテリ55A~55Dへの電力供給を継続することができる。すなわち、DC/DCコンバータ32および切替装置42は、バックアップとして機能する。
【0063】
なお、切替装置42による供給経路の切替方法は、切替装置41による切替方法と異なる方法であってもよい。たとえば、実施の形態2において制御装置80は、最も低いSOCを有するバッテリ55に直流電力が供給されるように切替装置41を切り替え、最も低いSOCの次に低いSOCを有するバッテリ55に直流電力が供給されるように切替装置42を切り替えてもよい。
【0064】
このように実施の形態2の射出成形機システム100Aにおいても、制御装置80は各バッテリ55A~55DのSOCに基づいて直流電力の供給経路を切り替えている。すなわち、実施の形態2の射出成形機システム100Aでも、DC/DCコンバータ31,32に各バッテリ55A~55Dへの電力供給処理を時分割にて行わせる。これにより、実施の形態2における射出成形機システム100Aでは、5基の射出成形機50A~50Dの各々に対してDC/DCコンバータ31,32を設ける必要がないため、1つのDC/DCコンバータ31によって電力供給でき、コストを抑制できる。
【0065】
<実施の形態3>
実施の形態1では、AC/DCコンバータ20から直流電力が供給される電力線35に対して、DC/DCコンバータ21,31が電気的に接続されている構成について説明した。しかしながら、電力線35に接続される構成はコンバータに限られない。実施の形態3では、電力線35に対して、再生可能エネルギー電源が接続される射出成形機システム100Bの構成を説明する。実施の形態3において、実施の形態1と同様の構成について、説明を繰り返さない。
【0066】
図8は、実施の形態3における射出成形機システム100Bの構成の概略を示す図である。
図8に示されるように、電力線35には、再生可能エネルギー電源91が外部電源として系統電源10に加えて接続されている。
図8の例においては、再生可能エネルギー電源91は、たとえば、太陽光発電装置である。なお、再生可能エネルギー電源91は、太陽光発電装置に限られず、風力発電装置、水力発電装置、地熱発電装置、あるいは、潮力発電装置であってもよい。
【0067】
パワーコンディショナ92は、再生可能エネルギー電源91によって発電された電力を調整して、電力線35に直流電力を供給する。パワーコンディショナ92は、たとえば、DC/DCコンバータを含み、太陽電池によって生成された直流電力を電力線35に供給可能な直流電力に変換する。
【0068】
このように、実施の形態3においては、直流電力が流れる電力線35に対して、再生可能エネルギー電源91が接続されている。これにより、射出成形機システム100Bでは、再生可能エネルギー電源91によって発電された電力を用いて、各バッテリ55A~55Dへと電力を供給することができる。また、実施の形態3の例では、再生可能エネルギー電源91によって直流電力が発電される。再生可能エネルギー電源91によって発電された直流電力は、各バッテリ55A~55Dに供給されるまでの間に交流電力へと変換されることがなく、射出成形機システム100Bでは、電力変換によるロスを抑制することができる。
【0069】
また、実施の形態3の射出成形機システム100Bにおいても、制御装置80は各バッテリ55A~55DのSOCに基づいて直流電力の供給経路を切り替えている。すなわち、実施の形態3の射出成形機システム100Bでも、DC/DCコンバータ31,32に各バッテリ55A~55Dへの電力供給処理を時分割にて行わせる。これにより、実施の形態3における射出成形機システム100Bでは、5基の射出成形機50A~50Dの各々に対してDC/DCコンバータ31,32を設ける必要がないため、1つのDC/DCコンバータ31によって電力供給でき、コストを抑制できる。
【0070】
[付記]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0071】
(第1項) 系統電源10から受電した電力を用いて複数の射出成形機50A~50Dを駆動する射出成形機システム100である。射出成形機システム100は、直流電力の供給によって駆動される射出成形機50Aと、直流電力の供給によって駆動される射出成形機50Bと、射出成形機50Aに対して直流電力を供給し、直流電力を蓄電可能に構成されるバッテリ55Aと、射出成形機50Bに対して直流電力を供給し、直流電力を蓄電可能に構成されるバッテリ55Bと、系統電源10から受電した電力を変換し、変換した後の電力をバッテリ55Aおよびバッテリ55Bの少なくとも一方に供給する電源装置25とを備える。電源装置25は、系統電源から受電した交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ20と、AC/DCコンバータ20が変換した直流電力の電圧変換をするDC/DCコンバータ31と、DC/DCコンバータ31によって変換された直流電力をバッテリ55Aおよびバッテリ55Bの少なくとも一方に供給するための供給経路を切り替え可能に構成された切替装置41と、切替装置41を制御する制御装置80とを含む。制御装置80は、バッテリ55Aおよびバッテリ55Bの各々のSOCに基づいて、切替装置41を切り替える。
【0072】
第1項に記載の射出成形機システム100によれば、第1射出成形機と第2射出成形機とを有する射出成形機システムにおいて、射出成形機の各々に対してDC/DCコンバータを設ける必要がないため、1つのDC/DCコンバータ31によって電力供給でき、コストを抑制できる。
【0073】
(第2項) 第1項に係る射出成形機システム100において、制御装置80は、バッテリ55AのSOCとバッテリ55BのSOCとを取得し(ステップS10)、バッテリ55AのSOCとバッテリ55BのSOCとを比較し(ステップS11)、バッテリ55AのSOCがバッテリ55BのSOCを下回っている場合にバッテリ55Aに直流電力が供給されるように切替装置41を切り替え、バッテリ55BのSOCがバッテリ55AのSOCを下回っている場合にバッテリ55Bに直流電力が供給されるように切替装置41を切り替える(ステップS13)。
【0074】
第2項に記載の射出成形機システム100によれば、最も低いSOCを有するバッテリに直流電力を供給できる。
【0075】
(第3項) 第1項に係る射出成形機システムにおいて、制御装置80は、バッテリ55AのSOCとバッテリ55BのSOCとを取得し(ステップS20)、バッテリ55AのSOCの単位時間あたりの低下量およびバッテリ55BのSOCの単位時間あたりの低下量を比較し(ステップS21)、バッテリ55Aおよびバッテリ55Bのうち、SOCが早期に所定の基準値を下回るバッテリを定め(ステップS22)、早期に所定の基準値を下回るバッテリ55に直流電力が供給されるように切替装置41を切り替える(ステップS23)。
【0076】
第3項に記載の射出成形機システム100によれば、SOCの単位時間あたりの低下量に基づいて、早期に所定の基準値を下回るSOCを有するバッテリに直流電力を供給できる。
【0077】
(第4項) 第1項に係る射出成形機システム100において、制御装置80は、バッテリ55AのSOCとバッテリ55BのSOCとを取得し(ステップS30)、射出成形機50Aの消費電力と射出成形機50Bの消費電力とを取得し(ステップS31)、バッテリ55AのSOCとバッテリ55BのSOCとの比較および射出成形機50Aの消費電力と射出成形機50Bの消費電力との比較をし(ステップS32)、バッテリ55Aおよびバッテリ55Bのうち、SOCが早期に所定の基準値を下回るバッテリを定め(ステップS33)、早期に所定の基準値を下回るバッテリに直流電力が供給されるように切替装置41を切り替える(ステップS34)。
【0078】
第4項に記載の射出成形機システム100によれば、射出成形機50の消費電力に基づいて、早期に所定の基準値を下回るSOCを有するバッテリに直流電力を供給できる。
【0079】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に係る射出成形機システム100において、DC/DCコンバータ31は、絶縁式のDC/DCコンバータである。
【0080】
第5項に記載の射出成形機システム100によれば、DC/DCコンバータ31の一次側と二次側とを絶縁することができ、射出成形機50側にて地絡が発生しても、当該地絡はDC/DCコンバータ31の二次側に影響を及ぼさない。
【0081】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか1項に係る射出成形機システム100において、電源装置25は、DC/DCコンバータ31に加えて、AC/DCコンバータ21が変換した直流電力の電圧変換をするDC/DCコンバータ32をさらに含む。
【0082】
第6項に記載の射出成形機システム100Aによれば、DC/DCコンバータ31,32のうち一方が故障した場合であっても他方を用いて電源装置25から各バッテリ55A~55Dへの電力供給を継続することができる。
【0083】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項に係る射出成形機システムにおいて、電源装置(25)は、再生可能エネルギー電源(91)によって発電された電力を受電する。
【0084】
第7項に記載の射出成形機システム100Bによれば、再生可能エネルギー電源91によって発電された電力を用いて、各バッテリ55A~55Dへと電力を供給することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 系統電源、11 ベッド、12 固定盤、13 型締ハウジング、14 可動盤
15 タイバー、16 型締機構、17,18 金型、20 AC/DCコンバータ、21,31,32 DC/DCコンバータ、22,55,55A~55D バッテリ、23 スクリュ、24 駆動機構、25 電源装置、26 射出ノズル、27 ノズルタッチ装置、30 表示装置、30B 入力装置、30D ディスプレイ、35 電力線、41,42 切替装置、44 記憶部、50,50A~55D 射出成形機、51 ボールねじ、52 基板、52i 入力インターフェース、52o 出力インターフェース、53a,53b サーボアンプ、57 制御部、57b メモリ、60 型締装置、61 射出装置、62 基台、63 加熱シリンダ、64 ホッパ、65 熱電対、40,80 制御装置、90 記憶装置、91 再生可能エネルギー電源、92 パワーコンディショナ、100,100A,100B 射出成形機システム。