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特開2024-47731油圧ポンプモータ及び油圧ポンプモータの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047731
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】油圧ポンプモータ及び油圧ポンプモータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/22 20060101AFI20240401BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20240401BHJP
   F03C 1/08 20060101ALI20240401BHJP
   F04B 1/066 20200101ALI20240401BHJP
【FI】
F04B49/22
F04B49/06 311
F03C1/08
F04B1/066
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153390
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 翔一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】岡 祐介
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀生
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓
(72)【発明者】
【氏名】北本 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】淺坂 雅史
【テーマコード(参考)】
3H070
3H084
3H145
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB02
3H070BB07
3H070BB23
3H070CC08
3H070DD65
3H084AA05
3H084AA15
3H084BB30
3H084CC42
3H084CC50
3H084CC51
3H145AA03
3H145AA13
3H145AA24
3H145AA33
3H145BA31
3H145CA03
3H145DA14
3H145DA17
3H145EA13
(57)【要約】
【課題】エア抜き弁によらず、かつ、ピストンやシリンダに過度の負荷をかけずに、シリンダ内に混入したエアを抜くことを目的とする。
【解決手段】油圧ポンプモータ100は、シリンダ21と、シリンダ21内を往復運動するピストン22と、シリンダ21と低圧ライン50との連通を制御する低圧バルブと、シリンダ21と高圧ライン40との連通を制御する高圧バルブと、を含むバルブユニット10A~Dと、バルブユニット10A~D内の低圧バルブ及び高圧バルブの開閉を制御する制御部60と、を備える。制御部60は、高圧ライン40を所定の圧力にし、ピストン22が上死点後45~135度のときに高圧バルブを開けて高圧ライン40とシリンダ21が連通するように制御する第1モードを実行可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内を往復運動するピストンと、
前記シリンダと低圧ラインとの連通を制御する低圧バルブと、前記シリンダと高圧ラインとの連通を制御する高圧バルブと、を含むバルブユニットと、
前記バルブユニット内の前記低圧バルブ及び前記高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記高圧ラインを所定の圧力にし、前記ピストンが上死点後45~135度のときに前記高圧バルブを開けて前記高圧ラインと前記シリンダが連通するように制御する第1モードを実行可能である、
油圧ポンプモータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記ピストンが上死点後85~95度のときに前記高圧バルブを開けるように制御する、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項3】
前記第1モードにて前記ピストンが所定の回数の往復運動をした後、前記制御部は、前記低圧バルブを開けて前記シリンダ内に作動油を吸入させ、次いで前記高圧バルブを開けて前記シリンダ内の作動油を前記高圧ラインへ送出するよう制御する第2モードを実行する、
請求項1又は請求項2に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項4】
前記シリンダ内の圧力を測定可能な圧力センサ備え、
前記制御部は、前記シリンダ内の圧力の変化に基づいて前記シリンダ内へのエアの混入の有無を判定し、エアが混入していると判定した場合に、前記第1モードを実行する、
請求項1又は請求項2に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項5】
前記高圧ラインにおいて、作動油の圧送先を切り替え可能な切り替え機構が設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項6】
シリンダと、
前記シリンダ内を往復運動するピストンと、
前記シリンダと低圧ラインとの連通を制御する低圧バルブと、前記シリンダと高圧ラインとの連通を制御する高圧バルブと、を含むバルブユニットと、
前記バルブユニット内の前記低圧バルブ及び前記高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記制御部に、
前記高圧ラインを所定の圧力にし、前記ピストンが上死点後45~135度のときに前記高圧バルブを開けて前記高圧ラインと前記シリンダが連通するように制御する第1モードを実行させるステップを含む、
油圧ポンプモータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ポンプモータ及び油圧ポンプモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ又はモータのいずれかとして選択的に作動可能な油圧ポンプモータが開示されている。特許文献1に記載の油圧ポンプモータは、クランクシャフトの周囲に放射状に配置され、クランクシャフトの回転に伴って容積が周期的に変化する複数のシリンダと、各シリンダと低圧ラインとの間の作動油の流れを調整する低圧バルブと、各シリンダと高圧ラインとの間の作動油の流れを調整する高圧バルブと、低圧バルブ及び高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備えている。
【0003】
このような油圧ポンプモータは、例えば、ソレノイドアクチュエータへの通電によって低圧バルブや高圧バルブの開閉を制御することで、低圧ラインから高圧ラインへ作動油をポンピングしたり、高圧ラインの圧力でクランクシャフトを加速するモータリングをしたりする事ができる。ポンピングもモータリングも必要ない場合、ソレノイドアクチュエータへ通電しないことで、低圧ラインから入った作動油が低圧バルブを通ってシリンダ内へ入り、再度低圧バルブを通って低圧ラインへ出ていくだけのアイドリング状態になるよう構成したものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-535906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の油圧ポンプモータのように、シリンダをクランクシャフトの周囲に放射状に配置する構造の場合、シリンダの位置によっては、シリンダの上部に混入したエアが留まり続けることがある。作動油で満たされるべきシリンダ内にエアが混入した状態だと、バルブ作動の応答の悪化、効率の悪化、キャビテーションの発生、潤滑性の低下等の悪影響が生じるおそれがある。よって、何らかの手段でエアを抜くことが望ましいが、このような油圧ポンプモータでは、構造上、シリンダ内のエアを抜くためのエア抜き弁を備えさせることが困難な場合が多い。
【0006】
シリンダ内にエアが混入した状態で高圧ラインを高圧にしてポンピング等の運転をすることで、シリンダ内へ作動油が流入した際にシリンダ内のエアと作動油が撹拌され、自然にシリンダ内のエアが除ける場合もあるが、エアが混入した状態で負荷の高い運転を続けることは、ピストンやシリンダの破損の原因となりうるため、避けることが好ましい。
【0007】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示は、エア抜き弁によらず、かつ、ピストンやシリンダに過度の負荷をかけずに、シリンダ内に混入したエアを抜くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータは、
シリンダと、
前記シリンダ内を往復運動するピストンと、
前記シリンダと低圧ラインとの連通を制御する低圧バルブと、前記シリンダと高圧ラインとの連通を制御する高圧バルブと、を含むバルブユニットと、
前記バルブユニット内の前記低圧バルブ及び前記高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記高圧ラインを所定の圧力にし、前記ピストンが上死点後45~135度のときに前記高圧バルブを開けて前記高圧ラインと前記シリンダが連通するように制御する第1モードを実行可能である。
【0009】
本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータの制御方法は、
シリンダと、
前記シリンダ内を往復運動するピストンと、
前記シリンダと低圧ラインとの連通を制御する低圧バルブと、前記シリンダと高圧ラインとの連通を制御する高圧バルブと、を含むバルブユニットと、
前記バルブユニット内の前記低圧バルブ及び前記高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記制御部に、
前記高圧ラインを所定の圧力にし、前記ピストンが上死点後45~135度のときに前記高圧バルブを開けて前記高圧ラインと前記シリンダが連通するように制御する第1モードを実行させるステップを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、エア抜き弁によらず、かつ、ピストンやシリンダに過度の負荷をかけずに、シリンダ内に混入したエアを抜くことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータを示す模式図である。
図2図2は、図1に示すバルブユニットの構造の一例を示す模式図である。
図3図3は、シリンダ内へのエアの混入の一例を示す模式図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータの制御方法を示すフローチャートである。
図5図5は、シリンダ内のエアの抜き方の一例を示す模式図である。
図6図6は、変形例に係る油圧ポンプモータを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータ及び油圧ポンプモータの制御方法について図面を参照しながら説明する。各図面において、同一又は同等の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、各図面に示された各構成要素の寸法は、説明の便宜上のものであって、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
(油圧ポンプモータ)
まず、図1及び図2を用いて、油圧ポンプモータの構成について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータ100を示す模式図である。図2は、図1に示すバルブユニットの構造の一例を示す模式図である。
【0014】
油圧ポンプモータ100は、電子制御式の可変容量型のポンプモータである。図1に示すように、油圧ポンプモータ100は、バルブユニット10A~D(以下、まとめて「バルブユニット10」とも称する)と、複数のシリンダ21及び複数のピストン22と、クランクカム31と、クランクシャフト32と、高圧ライン40と、低圧ライン50と、制御部60と、タンク70と、を備える。
【0015】
クランクカム31は、駆動源(不図示)に接続されたクランクシャフト32に固定されている。クランクカム31の周囲には、放射状に、かつ作動油の吸入排出サイクル上で等間隔になるように、複数のシリンダ21及び複数のピストン22が配置されている。本実施形態では、シリンダ21及びピストン22の数はそれぞれ4つであり、90°毎に配置されているが、シリンダ21及びピストン22の数は適宜変更可能である。クランクシャフト32の回転に伴ってクランクカム31が回転することにより、クランクカム31の周囲に配置された各ピストン22が、対応するシリンダ21内を往復運動する。
【0016】
各シリンダ21には、バルブユニット10が接続される。図2に示すように、バルブユニット10は、アクチュエータ11と、高圧バルブ12と、低圧バルブ14と、を含む。アクチュエータ11は、例えば、電磁ソレノイドである。
【0017】
高圧バルブ12は、例えば、アクチュエータ11が通電状態である場合に開き、高圧ライン40とシリンダ21とを連通させる。このとき、低圧バルブ14は閉じている。この状態において、排出工程ではシリンダ21内の作動油が高圧ライン40へ排出され、吸入工程では高圧ライン40からシリンダ21内へ作動油が吸入される。高圧ライン40は、例えば、高圧ライン40から送出された作動油によって動作する油圧モータ(不図示)に接続される。
【0018】
低圧バルブ14は、例えば、アクチュエータ11が非通電状態である場合に開き、低圧ライン50とシリンダ21とを連通させる。このとき、高圧バルブ12は閉じている。この状態において、排出工程ではシリンダ21内の作動油が低圧ライン50へ排出され、吸入工程では低圧ライン50からシリンダ21内へ作動油が吸入される。低圧ライン50は、例えば、作動油を貯蔵するタンク70に接続される。
【0019】
また、シリンダ21には、シリンダ21内の作動油の圧力を測定する圧力センサ23が設けられている。圧力センサ23は、シリンダ21と高圧バルブ12の間の流路に設けられていてもよい。圧力センサ23による測定値は、例えば、制御部60へと送信される。
【0020】
制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。制御部60の各機能は、例えば、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAM上で実行することにより実現されうる。
【0021】
制御部60は、アクチュエータ11の通電状態と非通電状態を切り替える制御信号を出力することで、バルブユニット10内の低圧バルブ14及び高圧バルブ12の開閉を制御する。制御部60は、バルブユニット10A~Dのそれぞれを個別に制御することが可能である。制御部60のその他の機能については、後の段落で詳述する。
【0022】
(油圧ポンプモータの制御方法)
次に、図3から図5を用いて、油圧ポンプモータ100の制御方法について説明する。図3は、シリンダ21内へのエアの混入の一例を示す模式図である。図3の上図は、ピストン22が下死点にある状態であり、図3の下図は、ピストン22が上死点にある状態である。この例では、低圧バルブ14が開いており、吸入工程において低圧ライン50からシリンダ21内に作動油Hを吸入し、排出工程においてシリンダ21内の作動油Hを低圧ライン50へ排出するアイドリング状態にある。
【0023】
図3の例のように、ピストン22の往復運動の方向が重力方向に対して傾いている場合、シリンダ21内に混入したエアAは、吸入工程及び排出工程を繰り返してもシリンダ21外へと排出されにくく、シリンダ21の上部に溜まり続ける。油圧ポンプモータ100のように、クランクカム31の周囲に放射状に複数のシリンダ21を配置する場合、そのうちのいくつかのシリンダ21では、図3の例のように混入したエアAがシリンダ21の外部へ排出されにくくなることが想定される。本開示に係る油圧ポンプモータ100の制御方法は、このようなシリンダ21内に混入したエアAを抜くために実施される。
【0024】
なお、本実施形態に係る制御方法は、油圧ポンプモータ100のような、クランクカム31の周囲に放射状に複数のシリンダ21を配置してあるものに好適に用いられるが、他の形状の油圧ポンプモータに適用することもできる。
【0025】
図4は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータ100の制御方法を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、ステップS1において、制御部60は、圧力センサ23により測定されたシリンダ21内の圧力を示す情報を受信し、シリンダ21内の圧力をモニタする。ステップS1では、例えば、ポンピング時の排出工程におけるシリンダ21内の圧力をモニタする。
【0026】
ステップS2において、制御部60は、シリンダ21内の圧力の挙動がエア抜き条件を満たすか否かを判定する。ステップS2では、例えば、ポンピング時の排出工程におけるシリンダ21内の圧力の変化に基づいて、シリンダ21内へのエアAの混入の有無を判定し、エアAが混入していると判定した場合、エア抜き条件を満たすと判定する。
【0027】
シリンダ21内にエアAが混入している場合、シリンダ21内にエアAが混入していない場合よりも、ポンピング時の排出工程におけるシリンダ21内の圧力上昇が緩やかになる。これは、圧力の一部がエアAの圧縮に使われてしまうことに起因する。よって、ポンピング時の排出工程におけるシリンダ21内の圧力の変化をモニタすることで、エアAの混入の有無を判断できる。
【0028】
また、エア抜き条件は、例えば、油圧ポンプモータ100の始動開始であってもよい。また、エア抜き条件は、例えば、油圧ポンプモータ100の始動後、又は、前回のエア抜き後から、所定の時間が経過することであってもよい。これらの契機に予防的にエア抜きをすることで、バルブ作動の応答の悪化、効率の悪化、キャビテーションの発生、潤滑性の低下等の悪影響が生じるおそれをさらに低減できる。エア抜き条件をこれらの契機とする場合、ステップS1は実行せずともよい。エア抜き条件は、上述した3つの条件のいずれかを満たすこととしてもよい。
【0029】
エア抜き条件を満たさない場合(ステップS2においてNO)、制御部60は、エア抜きのための処理を終了する。エア抜き条件を満たす場合(ステップS2においてYES)、制御部60は、第1モードを実行する。具体的には、第1モードとして、高圧ライン40が所定の圧力になるように制御した後に、以下のステップS3からS5の一連の処理を所定の回数に到達するまで、言い換えると、第1モードにてピストン22が所定の回数の往復運動をするまで繰り返す。
【0030】
なお、満たされたエア抜き条件がエアAの混入の有無である場合、ステップS3以降の処理は、エアAが混入されていると判定されたシリンダ21及び対応するバルブユニット10に対してのみ実行し、その他のバルブユニット10はアイドリング状態にしてもよい。エア抜き条件が油圧ポンプモータ100の始動開始である場合や、始動後又は前回のエア抜き後から所定の時間が経過することである場合、ステップS3以降の処理は、すべてのシリンダ21及びバルブユニット10に対して実行することが好ましい。
【0031】
所定の圧力は、シリンダ21やピストン22に過度の負荷をかけない程度の圧力であり、例えば、大気圧程度(例えば、0~0.1MPa)であることが好ましい。また、所定の回数は、特に制限されず、シリンダ21のサイズや作動油Hの種類等に応じて適宜設定すればよい。所定の回数は、1回でもよい。
【0032】
ステップS3において、制御部60は、所定のタイミングで高圧ライン40とシリンダ21とを連通させる。具体的には、制御部60は、アクチュエータ11に制御信号を送って通電状態にし、所定のタイミングで高圧バルブ12が開くように制御する。所定のタイミングは、ピストン22が上死点後45~135度のときである。ステップS3の結果、ステップS4において、高圧ライン40からシリンダ21内に作動油Hが吸入される。
【0033】
上死点後45~135度のタイミングは、ピストン22のスピードが高速になっているタイミングであるため、このタイミングで高圧ライン40とシリンダ21とを連通させることで、作動油Hを高い流速でシリンダ21内に吸入できる。その結果、シリンダ21内のエアAを攪拌して作動油H中の分散気泡とすることができる。作動油Hをより高い流速でシリンダ21内に吸入しやすいという観点から、上記所定のタイミングは、ピストン22が上死点後85~95度のときが好ましく、ピストン22が上死点後90度であるときがより好ましい。
【0034】
次に、ステップS5において、制御部60は、排出工程が終わるまでアクチュエータ11への通電状態を維持させ、分散気泡を含む作動油Hを高圧ライン40へ排出する。
【0035】
ステップS3からS5の一連の処理が所定の回数に到達するまで繰り返された場合、制御部60は、第2モードとして、以下のステップS6及びS7の処理を所定の回数に到達するまで繰り返し実行する。なお、第2モードにおける所定の回数は、特に制限されず、シリンダ21のサイズや作動油Hの種類等に応じて適宜設定すればよい。第2モードにおける所定の回数は、第1モードにおける所定の回数と同じであっても異なっていてもよく、1回でもよい。
【0036】
ステップS6において、制御部60は、低圧ライン50からシリンダ21内へ作動油Hが吸入されるよう制御する。具体的には、制御部60は、アクチュエータ11に制御信号を送って非通電状態にし、高圧バルブ12が閉じ低圧バルブ14が開くように制御し、吸入工程において低圧ライン50とシリンダ21を連通させる。
【0037】
次に、ステップS7において、制御部60は、シリンダ21内の作動油Hが高圧ライン40へ排出されるよう制御する。具体的には、制御部60は、アクチュエータ11に制御信号を送って通電状態にし、低圧バルブ14が閉じ高圧バルブ12が開くように制御し、排出工程において高圧ライン40とシリンダ21を連通させる。
【0038】
ステップS6及びS7の一連の処理が所定の回数に到達するまで繰り返された後、ステップS8において、制御部60は、圧力センサ23により測定されたシリンダ21内の圧力を示す情報を受信し、シリンダ21内の圧力を再度モニタする。ステップS8の処理は、ステップS1の処理と同様である。また、ステップS9において、制御部60は、シリンダ21内の圧力の挙動がエア抜き条件を満たすか否かを再度判定する。ステップS9の処理は、ステップS2の処理と同様である。
【0039】
ステップS8及びS9の処理は、第1モード及び第2モードによってエア抜きがきちんと出来たか否かを確認するものである。エア抜きがきちんとできていない場合(ステップS9においてYES)、ステップS3に戻る。エア抜き条件を満たさない場合(ステップS9においてNO)、制御部60は、エア抜きのための処理を終了する。
【0040】
図5は、シリンダ21内のエアAの抜き方の一例を示す模式図である。以下、図5を用いて、第1モード及び第2モードについて詳述する。図5の状態C1からC4は、第1モードの動作を示す。状態C1は、ピストン22が下死点にあり、排出工程が開始するところである。このとき、低圧バルブ14が開いている。また、高圧ライン40の圧力は、大気圧程度に設定されている。
【0041】
状態C2は、図4のステップS3及びS4が実行された状態である。状態C1では、ピストン22のスピードが高速になっているタイミングで高圧ライン40とシリンダ21を連通させたことにより、高い流速で作動油Hがシリンダ21内に吸入され、作動油Hの液面が乱されている。その結果、状態C3に示すように、エアAは分散気泡A’になる。
【0042】
状態C4は、図4のステップS5が実行されている状態である。状態C4において、分散気泡A’を含む作動油Hは、ポンピングによって高圧ライン40へ排出される。第1モードでは、状態C1からC4に示す一連の動作が所定の回数実行することで、エアAを排出されやすい分散気泡A’にしてシリンダ21内から排出する。
【0043】
図5の状態C4及びC5は、第2モードの動作を示す。状態C5は、図4のステップS6が実行されている状態である。状態C5では、低圧ライン50から気泡混入のない作動油Hをシリンダ21内に吸入させて、シリンダ21内の作動油Hに対する分散気泡A’の割合を低下させている。この状態の作動油Hは、状態C4に示すように高圧ライン40へ排出される。なお、状態C4は、図4のステップS7が実行されている状態でもある。この第2モードを実行することで、高圧ライン40に排出された分散気泡A’が再びシリンダ21内に吸入されることを抑制できる。
【0044】
高圧ライン40に排出された分散気泡A’が再びシリンダ21内に吸入されることを抑制するため、図6に示す変形例のように構成してもよい。図6の変形例は、高圧ライン40に分散気泡A’を送ることが好ましくないときにも有用である。
【0045】
図6の例では、高圧ライン40において、作動油Hの圧送先を切り替え可能な切り替え機構41が設けられている。切り替え機構41は、例えば、三方弁を用いてもよい。切り替え機構41は、流路43を介して、サブタンク44に接続されている。サブタンク44に送られた分散気泡A’を含む作動油Hは、例えば、消泡器(不図示)によって消泡され、タンク70へ送られる。
【0046】
以上、本開示に係る一実施形態について詳述したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。本発明には、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
[付記]
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) シリンダと、
前記シリンダ内を往復運動するピストンと、
前記シリンダと低圧ラインとの連通を制御する低圧バルブと、前記シリンダと高圧ラインとの連通を制御する高圧バルブと、を含むバルブユニットと、
前記バルブユニット内の前記低圧バルブ及び前記高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記高圧ラインを所定の圧力にし、前記ピストンが上死点後45~135度のときに前記高圧バルブを開けて前記高圧ラインと前記シリンダが連通するように制御する第1モードを実行可能である、
油圧ポンプモータ。
この構成によれば、エア抜き弁によらず、かつ、ピストンやシリンダに過度の負荷をかけずに、シリンダ内に混入したエアを抜くことが可能である。
具体的には、高圧ラインを所定の圧力にすることで、高圧ラインからの作動油の吸入及び高圧ラインへの作動油の排出時にシリンダやピストンに過度の負荷をかけないようにすることができる。また、その状態であっても、ピストンのスピードが高速になっているタイミングで高圧ラインとシリンダとを連通させることで、作動油を高い流速でシリンダ内に吸入し、シリンダ内のエアを攪拌して作動油中の分散気泡にすることができる。結果として、気泡を分散気泡としてシリンダ外へ排出することが可能である。
【0048】
(2) 前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記ピストンが上死点後85~95度のときに前記高圧バルブを開けるように制御する、
上記(1)に記載の油圧ポンプモータ。
この構成によれば、作動油をより高い流速でシリンダ内に吸入しやすくなるため、気泡を分散気泡としてシリンダ外へ排出しやすくなる。
【0049】
(3) 前記第1モードにて前記ピストンが所定の回数の往復運動をした後、前記制御部は、前記低圧バルブを開けて前記シリンダ内に作動油を吸入させ、次いで前記高圧バルブを開けて前記シリンダ内の作動油を前記高圧ラインへ送出するよう制御する第2モードを実行する、
上記(1)又は(2)に記載の油圧ポンプモータ。
この構成によれば、高圧ラインに排出された分散気泡が再びシリンダ内に吸入されることを抑制できる。
【0050】
(4) 前記シリンダ内の圧力を測定可能な圧力センサ備え、
前記制御部は、前記シリンダ内の圧力の変化に基づいて前記シリンダ内へのエアの混入の有無を判定し、エアが混入していると判定した場合に、前記第1モードを実行する、
上記(1)から(3)のいずれかに記載の油圧ポンプモータ。
この構成によれば、エアの混入を検知でき、エア抜きが必要なタイミングでエア抜きを行うことが可能になる。結果として、エアの混入に気づかずにバルブ作動の応答の悪化、効率の悪化、キャビテーションの発生、潤滑性の低下等の悪影響が生じさせてしまうおそれを低減できる。
【0051】
(5) 前記高圧ラインにおいて、作動油の圧送先を切り替え可能な切り替え機構が設けられている、
上記(1)から(4)のいずれかに記載の油圧ポンプモータ。
この構成によれば、高圧ラインに排出された分散気泡が再びシリンダ内に吸入されることを抑制できる。また、高圧ラインに分散気泡を送ることが好ましくない場合に有用である。
【0052】
(6) シリンダと、
前記シリンダ内を往復運動するピストンと、
前記シリンダと低圧ラインとの連通を制御する低圧バルブと、前記シリンダと高圧ラインとの連通を制御する高圧バルブと、を含むバルブユニットと、
前記バルブユニット内の前記低圧バルブ及び前記高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記制御部に、
前記高圧ラインを所定の圧力にし、前記ピストンが上死点後45~135度のときに前記高圧バルブを開けて前記高圧ラインと前記シリンダが連通するように制御する第1モードを実行させるステップを含む、
油圧ポンプモータの制御方法。
この構成によれば、エア抜き弁によらず、かつ、ピストンやシリンダに過度の負荷をかけずに、シリンダ内に混入したエアを抜くことが可能である。
具体的には、高圧ラインを所定の圧力にすることで、高圧ラインからの作動油の吸入及び高圧ラインへの作動油の排出時にシリンダやピストンに過度の負荷をかけないようにすることができる。また、その状態であっても、ピストンのスピードが高速になっているタイミングで高圧ラインとシリンダとを連通させることで、作動油を高い流速でシリンダ内に吸入し、シリンダ内のエアを攪拌して作動油中の分散気泡にすることができる。結果として、気泡を分散気泡としてシリンダ外へ排出することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10,10A~D:バルブユニット
11:アクチュエータ
12:高圧バルブ
14:低圧バルブ
21:シリンダ
22:ピストン
23:圧力センサ
31:クランクカム
32:クランクシャフト
40:高圧ライン
41:切り替え機構
43:流路
44:サブタンク
50:低圧ライン
60:制御部
70:タンク
100:油圧ポンプモータ
A:エア
A’:分散気泡
H:作動油
図1
図2
図3
図4
図5
図6