(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047732
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】油圧ポンプモータ及び油圧ポンプモータの制御方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/22 20060101AFI20240401BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20240401BHJP
F04B 1/066 20200101ALI20240401BHJP
F03C 1/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F04B49/22
F04B49/06 311
F04B1/066
F03C1/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153391
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
【テーマコード(参考)】
3H070
3H084
3H145
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB02
3H070BB07
3H070BB23
3H070CC37
3H070DD65
3H084AA05
3H084AA15
3H084BB30
3H084CC42
3H084CC50
3H084CC51
3H145AA03
3H145AA13
3H145AA24
3H145AA33
3H145BA34
3H145CA12
3H145DA17
3H145DA22
3H145EA12
(57)【要約】
【課題】無負荷アイドリング時に意図せずポンピングが起こった場合に、回路構成を複雑化させることなく、高圧ラインに接続された油圧負荷装置が意図せず動作するおそれを低減する。
【解決手段】油圧ポンプモータ100は、制御部60を備える。制御部60は、高圧バルブ12の開閉を検出可能である。制御部60は、アクチュエータ11を非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に高圧バルブ12の開放が検出された場合、開放が検出された高圧バルブ12に対応するピストン22が上死点に到達する前にアクチュエータ11に制御信号を送って高圧バルブ12の開放を維持し、高圧ライン40からシリンダ21内に吸入される作動油が高圧ライン40に送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで高圧バルブ12が閉じるように制御する第1モードを実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備え、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含み、
前記制御部は、前記高圧バルブの開閉を検出可能であり、
前記制御部は、前記アクチュエータを非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを実行する、
油圧ポンプモータ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1モードによる制御が実行された場合、前記第1モードによる制御対象であった第1高圧バルブの開放が検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインに送出されたと推定される作動油量である推定送出量を算出し、前記第1高圧バルブが閉じたことが検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインから吸入したと推定される作動油量である推定吸入量を算出し、
前記推定送出量と前記推定吸入量に差がある場合、前記複数のバルブユニットのうち前記第1高圧バルブを含む第1バルブユニットよりも後に吸入工程を迎え、かつ、前記第1モードによる制御が実行される第2バルブユニットに対して、前記第2バルブユニットに含まれる第2高圧バルブが吸入工程において閉じるタイミングを前記差に基づいて補正する、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1モードによる制御が実行された場合、前記第1モードによる制御対象であった第1高圧バルブの開放が検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインに送出されたと推定される作動油量である推定送出量を算出し、前記第1高圧バルブが閉じたことが検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインから吸入したと推定される作動油量である推定吸入量を算出し、
前記推定送出量と前記推定吸入量に差がある場合であって、前記第1高圧バルブを含む第1バルブユニットにおける次の排出工程及び次の吸入工程において前記第1モードが実行される場合、前記次の吸入工程において前記第1バルブが閉じるタイミングを前記差に基づいて補正する、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油よりも多くなるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項5】
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含むものであり、
前記制御部に、
前記高圧バルブの開閉を検出する検出ステップと、
前記アクチュエータを非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを行うステップと、を実行させることを含む、
油圧ポンプモータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ポンプモータ及び油圧ポンプモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ又はモータのいずれかとして選択的に作動可能な油圧ポンプモータが開示されている。特許文献1に記載の油圧ポンプモータは、クランクシャフトの周囲に放射状に配置され、クランクシャフトの回転に伴って容積が周期的に変化する複数のシリンダと、各シリンダと低圧ラインとの間の作動油の流れを調整する低圧バルブと、各シリンダと高圧ラインとの間の作動油の流れを調整する高圧バルブと、低圧バルブ及び高圧バルブの開閉を制御する制御部と、を備えている。
【0003】
このような従来の油圧ポンプモータは、例えば、低圧バルブは開き方向にバネ力が付勢され、高圧バルブは閉じ方向にバネ力が付勢されており、ソレノイドアクチュエータへの通電によって低圧バルブや高圧バルブの開閉を制御される。この制御によって、低圧ラインから高圧ラインへ作動油をポンピングしたり、高圧ラインの圧力でクランクシャフトを加速するモータリングをしたりする事ができる。また、ポンピングもモータリングも必要ない場合、ソレノイドアクチュエータへ通電しないことで、低圧ラインから入った作動油が低圧バルブを通ってシリンダ内へ入り、再度低圧バルブを通って低圧ラインへ出ていくだけの無負荷アイドリング状態にすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の油圧ポンプモータは、作動油の温度が低く粘性が極めて高い冷間始動時等は、低圧ラインから吸入した作動油を再度低圧ラインへ排出する無負荷アイドリング状態のときに、低圧バルブを通過する作動油の圧力損失が大きくなり、低圧バルブが閉じる方向に作動油から力を受けてしまう。この力が低圧バルブを開き方向に付勢しているバネ力を超えると、ソレノイドアクチュエータへの通電の有無によらず、排出行程で低圧バルブが閉じてしまう。この様に、シリンダから作動油が排出される際に低圧バルブが閉じてしまうと、シリンダ内の作動油は密閉された状態となり、圧力が上昇する。圧力が高圧ラインの圧力以上になるとソレノイドアクチュエータへの通電がなくても高圧バルブが開き、シリンダ内の作動油は高圧ラインへ排出される。
【0006】
このような動作は、ポンピング動作と同じ作動油の流れであるが、使用者が意図しないポンピングである。この意図しないポンピングが引き起こされると、高圧ラインに接続された油圧負荷装置が意図せず動作をするおそれがある。それを避けるために、別途制御されたバイパスバルブを設けると、システムの複雑化の要因となる。
【0007】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示は、無負荷アイドリング時に意図せずポンピングが起こった場合に、回路構成を複雑化させることなく、高圧ラインに接続された油圧負荷装置が意図せず動作するおそれを低減することを目的ととする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータは、
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備え、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含み、
前記制御部は、前記高圧バルブの開閉を検出可能であり、
前記制御部は、前記アクチュエータを非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを実行する。
【0009】
本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータの制御方法は、
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含むものであり、
前記制御部に、
前記高圧バルブの開閉を検出する検出ステップと、
前記アクチュエータを非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを行うステップと、を実行させることを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、無負荷アイドリング時に意図せずポンピングが起こった場合に、回路構成を複雑化させることなく、高圧ラインに接続された油圧負荷装置が意図せず動作するおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータを示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すバルブユニットの構造の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、無負荷アイドリング時の意図せぬポンピングの一例を示すサイクル図である。
【
図4】
図4は、第1モードによる制御の一例を示すサイクル図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータの制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1モードにおける吸入量の補正の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第1モードにおける吸入量の補正の別例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータにおける作動油の流れの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータ及び油圧ポンプモータの制御方法について図面を参照しながら説明する。各図面において、同一又は同等の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、各図面に示された各構成要素の寸法は、説明の便宜上のものであって、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
(油圧ポンプモータ)
まず、
図1及び
図2を用いて、油圧ポンプモータの構成について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータ100を示す模式図である。
図2は、
図1に示すバルブユニットの構造の一例を示す模式図である。
【0014】
油圧ポンプモータ100は、電子制御式の可変容量型のポンプモータである。
図1に示すように、油圧ポンプモータ100は、バルブユニット10A~D(以下、まとめて「バルブユニット10」とも称する)と、複数のシリンダ21及び複数のピストン22と、偏心カム31と、クランクシャフト32と、高圧ライン40と、低圧ライン50と、制御部60と、タンク70と、を備える。
【0015】
偏心カム31は、駆動源(不図示)に接続されたクランクシャフト32に固定されている。偏心カム31の周囲には、放射状に、かつ作動油の吸入排出サイクル上で等間隔になるように、複数のシリンダ21及び複数のピストン22が配置されている。本実施形態では、シリンダ21及びピストン22の数はそれぞれ4つであり、90°毎に配置されているが、シリンダ21及びピストン22の数は適宜変更可能である。クランクシャフト32の回転に伴って偏心カム31が回転することにより、偏心カム31の周囲に配置された各ピストン22が、対応するシリンダ21内を並進運動する。すなわち、各ピストン22は、偏心カムが一回転するサイクルで偏心カム31の回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する。
【0016】
各シリンダ21には、バルブユニット10が接続される。
図2に示すように、バルブユニット10は、アクチュエータ11と、高圧バルブ12と、低圧バルブ14と、を含む。アクチュエータ11は、例えば、電磁ソレノイドである。
【0017】
高圧バルブ12は、閉じ方向にバネ力が付勢されている。高圧バルブ12は、例えば、アクチュエータ11が通電状態である場合に開く。すなわち、アクチュエータ11が通電状態にあるとき、高圧バルブ12はアクチュエータ11によって開き方向に付勢され、高圧ライン40とシリンダ21とを連通させる。このとき、高圧バルブ12の開放と連動して、低圧バルブ14は閉じる。この状態において、排出工程ではシリンダ21内の作動油が高圧ライン40へ排出され、吸入工程では高圧ライン40からシリンダ21内へ作動油が吸入される。高圧ライン40は、例えば、高圧ライン40から送出された作動油によって動作する油圧モータ等の油圧負荷装置(不図示)に接続されうる。
【0018】
低圧バルブ14は、開き方向にバネ力が付勢されている。低圧バルブ14は、例えば、アクチュエータ11が非通電状態である場合に開く。すなわち、アクチュエータ11が通電されない場合、低圧バルブ14を開放し、かつ、高圧バルブ12の開き方向の付勢を解放して、低圧ライン50とシリンダ21とを連通させる。このとき、低圧バルブ14の開放と連動して、高圧バルブ12は閉じている。この状態において、排出工程ではシリンダ21内の作動油が低圧ライン50へ排出され、吸入工程では低圧ライン50からシリンダ21内へ作動油が吸入される。低圧ライン50は、例えば、作動油を貯蔵するタンク70に接続される。
【0019】
制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。制御部60の各機能は、例えば、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAM上で実行することにより実現されうる。
【0020】
制御部60は、アクチュエータ11の通電状態と非通電状態を切り替える制御信号を出力することで、バルブユニット10内の低圧バルブ14及び高圧バルブ12の開閉を制御する。制御部60は、バルブユニット10A~Dのそれぞれを個別に制御することが可能である。
【0021】
また、制御部60は、高圧バルブ12の開閉を検出可能である。高圧バルブ12の開閉を検出するための機構は、特に限定されず、従来公知の機構を適宜採用できる。制御部60は、例えば、高圧バルブ12の開閉を電気的に検出するセンサ(不図示)から情報を受信し、高圧バルブ12の開閉を検出してもよい。また、高圧バルブ12に磁石を配置して、磁石が発生させる磁束を磁気センサ(不図示)によって検出し、制御部60においてその検出値を受信することにより、高圧バルブ12の開閉を検出してもよい。
【0022】
また、制御部60は、第1モードによってバルブユニット10を制御することができる。第1モードによる制御については、後述する。
【0023】
(油圧ポンプモータの制御方法)
次に、本実施形態に係る油圧ポンプモータ100の制御方法について説明する。まず、
図3を用いて、無負荷アイドリング時の意図せぬポンピングについて説明する。まず、下死点から地点P1までの区間C1では、低圧バルブ14が開いており、作動油が低圧ライン50へ排出される。
【0024】
ここで、既に述べたように、作動油の温度が低く粘性が極めて高い冷間始動時等は、排出工程時に作動油の圧力損失が大きくなり、低圧バルブ14が閉じる方向に作動油から力を受けてしまう。
図3の例では、排出工程時の位置P1において意図せず低圧バルブ14が閉じ、シリンダ21内の圧力が高圧ライン40の圧力以上になって、高圧バルブ12が開いている。その結果、位置P1から上死点までの区間C2では、高圧ライン40へのポンピングが行われる。区間C2は、本来ならポンピングする必要の無い区間であるため、高圧ライン40は低圧ライン50と同程度の圧力になっている。
【0025】
位置P2では高圧バルブ12が閉じ、低圧バルブ14が開く。よって、上死点から位置P2までの短い区間C3では、高圧ライン40からシリンダ21内に作動油が吸入される。その後、位置P2から下死点までの区間C4では、低圧ライン50からシリンダ21内に作動油が吸入される。
【0026】
図3に示すような意図せぬポンピングが起こると、意図せず高圧ライン40に作動油が排出され、かつ、高圧ライン40から再吸入される作動油の量も排出された量に比べて少なくなるので、高圧ライン40の圧力上昇が起こったり、油圧負荷装置が意図せず作動したりするおそれがある。
【0027】
そのため、本実施形態に係る油圧ポンプモータ100の制御方法では、第1モードによる制御を行う。以下、
図4から
図8を用いて、第1モードによる制御について詳述する。第1モードによる制御は、作動油の粘性が高い冷間始動直後で、高圧ラインに圧力がない又は圧力が必要ない場合に特に好適に適用できる。
【0028】
図4は、第1モードによる制御の一例を示すサイクル図である。
図4の例においても、
図3の例と同様に、下死点から地点P1までの区間C1では、低圧バルブ14が開いており、作動油が低圧ライン50へ排出される。また、位置P1において、意図せずに低圧バルブ14が閉じ、高圧バルブ12が開き、区間C2において高圧ライン40へのポンピングが行われる。
【0029】
制御部60は、位置P1において高圧バルブ12が開いたことを検出する。そして、高圧バルブ12の意図せぬ開放を検出したことに応じて、第1モードによる制御を開始する。まず、制御部60は、上死点後も高圧バルブ12の開放状態を維持するため、上死点よりも僅かに前の位置で、アクチュエータ11を通電する制御信号を出力する。上死点よりも前に制御信号を出力するのは、通電からアクチュエータ11が駆動するまでのタイムラグを考慮したためである。
【0030】
そして、制御部60は、高圧ライン40からシリンダ21内に吸入される作動油が区間C2において高圧ライン40に送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで高圧バルブ12が閉じるように制御する。
図4の例では、位置P3で高圧バルブ12が閉じるように、位置P3よりも僅かに前の位置でアクチュエータ11を非通電状態にする。その結果、上死点から位置P3までの区間C3において、高圧ライン40からシリンダ21内に作動油が流入する。
【0031】
なお、高圧ライン40から吸入する際にも作動油の圧損により、高圧バルブ12が閉じる方向に力を受けるが、低圧バルブ14を開き状態に維持するバネ力よりも、アクチュエータ11の推力の方が大きいため、作動油がより高粘度の状態であっても、高圧バルブ12の開放状態を維持できる。
【0032】
高圧ライン40からシリンダ21内に吸入される作動油が、高圧ライン40へ送出された作動油と同量になると推定されるタイミングは、高圧バルブ12の意図せぬ開放が検出されたタイミングに基づいて、制御部60が決定する。
図4のようなサイクル図で表した場合、上記タイミングは、通常、上死点と下死点を結ぶ線分に対して、高圧バルブ12の意図せぬ開放が検出された位置と、線対称になる位置に対応するタイミングである。
【0033】
位置P3から下死点までの区間C4では、低圧ライン50からシリンダ21内に作動油が吸入される。
図4に示すような制御方法によれば、意図せぬポンピングが起こった場合でも、高圧ライン40及び低圧ライン50それぞれへの作動油の出入り量を正味ゼロに近づけることができるため、高圧ライン40の圧力上昇や油圧負荷装置の位置せぬ作動の発生を抑制することができる。また、より低温で作動油の粘性がより高い状態であっても、外部の油圧回路なしに油圧ポンプモータ100を無負荷アイドリング状態にすることが可能になる。
【0034】
図5は、本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータ100の制御方法を示すフローチャートである。以下、上述の第1モードをフローチャートによって説明する。なお、
図5のフローチャートの前提として、バルブユニット10は、無負荷のアイドリングを行っているものとする。また、フローチャートに示す各処理は、矛盾の生じない限り順不同であり、並列的に実行されてもよい。
【0035】
ステップS1において、制御部60は、高圧バルブ12の意図せぬ開放を検出する。ステップS1において高圧バルブ12の意図せぬ開放を検出したことに応じて、制御部60は、以降のステップS2からS7の工程を含む第1モードを実行する。
【0036】
次に、ステップS2において、高圧バルブ12の開放を維持し、作動油を高圧ライン40へ送出する。なお、ステップS1において開放された高圧バルブ12は、通常、特段の制御をせずとも、排出工程では開いたままとなる。
【0037】
ステップS3において、制御部60は、高圧ライン40からシリンダ21内に吸入される作動油がステップS2で高圧ライン40に送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで高圧バルブ12が閉じるように制御し、高圧ライン40からシリンダ21内へ作動油を吸入させる。
【0038】
ステップS4において、制御部60は、ステップS1で高圧バルブ12の開放が検出されたタイミングに基づいて、高圧ライン40に送出されたと推定される作動油量である推定送出量を算出する。また、ステップS4において、制御部60は、ステップS3で高圧バルブ12が閉じたことが検出されたタイミングに基づいて、高圧ライン40から吸入したと推定される作動油量である推定吸入量を算出する。そして、制御部60は、推定送出量と推定吸入量の差である補正量(=推定送出量-推定吸入量)を算出する。
【0039】
ステップS3では、高圧ライン40からの作動油の吸入量がステップS2で高圧ライン40に送出された送出量と同量になると推定されるタイミングで高圧バルブ12を閉じるよう制御がされるが、高圧バルブ12が実際に閉じるタイミングは、様々な要因によってずれる場合がある。補正量は、このずれを解消し、高圧ライン40及び低圧ライン50それぞれへの作動油の出入り量を正味ゼロにより近づけるためのものである。
【0040】
ステップS5において、制御部60は、複数のバルブユニット10のうち次に吸入工程を迎えるバルブユニット10において、又はステップS1からS4の対象となっていたバルブユニット10の次の吸入工程において、再度、第1モードを実行する場合に、ステップS3における高圧バルブ12の開放時間を補正量に基づいて調整する。言い換えると、高圧バルブ12が閉じるタイミングを補正量に基づいて補正する。
【0041】
次に、ステップS6において、制御部60は、ステップS5で高圧バルブ12が閉じるタイミングを補正されたバルブユニットについて、ステップS4と同様に、補正量を算出する。ステップS6で算出された補正量が所定値を超える場合(ステップS7においてNO)、ステップS5に戻る。ステップS6で算出された補正量が所定値以下の場合(ステップS7においてYES)、処理を終了する。
【0042】
ステップS7における所定値は、例えば、高圧ライン40の圧力上昇や油圧負荷装置の位置せぬ作動の発生に影響をほぼ与えないような値である。所定値は、油圧ポンプモータ100の構成や油圧負荷装置の種類等に応じて適宜決定することができる。なお、ステップS4で算出した補正量が所定値以下である場合も、そこで処理を終了してよい。
【0043】
ここで、
図6及び
図7を用いて、ステップS5からステップS7の処理を具体的に説明する。
図6は、第1モードにおける吸入量の補正の一例を示す模式図である。
図6において、サイクルR1及びR2は、それぞれ、偏心カム31が1回転するサイクルを表す。また、
図6は、油圧ポンプモータ100に含まれるバルブユニット10が3つの場合の例であり、バルブA~Cはいずれも高圧バルブ12である。また、バルブA~Cに対応するバルブユニットのすべてで意図せぬポンピングが発生している。
【0044】
サイクルR1においてバルブAが意図せず開放され、推定送出量A11の作動油が高圧ライン40に送出されたとする。このとき、吸入工程において高圧ライン40から吸入すべき予定吸入量A12は、推定送出量A11と同量である。よって、制御部60は、吸入工程において予定吸入量A12の作動油を高圧ライン40から吸入できるようにバルブAを制御する。
【0045】
しかし、実際にバルブAが閉じたタイミングから推定される推定吸入量A14は、予定吸入量A12よりも少ない。このとき、「推定送出量A11-推定吸入量A14」によって算出される差A15の量の作動油が高圧ライン40に多く残っていることになる。
【0046】
そこで、次に吸入工程を迎えるバルブBの吸入量を差A15によって補正する。バルブBでも意図せずポンピングが生じており、推定送出量B11が高圧ライン40に送出されている。このとき、「予定吸入量B12=推定送出量B11+補正量B13」としてバルブBを閉じるタイミングを設定する。補正量B13は、差A15と同量である。
【0047】
なお、バルブAで生じた差A15をすぐに解消又は低減するため、バルブBでは、排出工程においてアクチュエータ11を通電させることで意図的にバルブBを開放し、第1モードによる制御を意図的に開始してもよい。これは、バルブBの後のバルブCについても同様であり、バルブCの後のバルブAについても同様である。
【0048】
実際にバルブBが閉じたタイミングから推定される推定吸入量B14は、予定吸入量B12よりも少ない。このとき、「予定吸入量B12-推定吸入量B14」によって算出される差B15の量の作動油が高圧ライン40に多く残っていることになる。
【0049】
そこで、次に吸入工程を迎えるバルブCの吸入量を差B15によって再度補正する。バルブCでも意図せずポンピングが生じており、推定送出量C11が高圧ライン40に送出されている。このとき、「予定吸入量C12=推定送出量C11+補正量C13」としてバルブCを閉じるタイミングを設定する。補正量C13は、差B15と同量である。
【0050】
しかし、実際にバルブCが閉じたタイミングから推定される推定吸入量C14は、予定吸入量C12よりも多い。このとき、「予定吸入量C12-推定吸入量C14」によって算出される差C15の量の作動油が高圧ライン40から減っていることになる。
【0051】
そこで、次に吸入工程を迎えるバルブAのサイクルR2における吸入量を差C15によって再度補正する。バルブAでも再び意図せぬポンピングが生じており、推定送出量A21が高圧ライン40に送出されている。このとき、「予定吸入量A22=推定送出量A21+補正量A23」としてバルブAを閉じるタイミングを設定する。補正量A23は、差C15と同量である。また、差C15は負の値であったため、サイクルR2では、バルブAの予定吸入量A22は、推定送出量A21よりも少なくなる。
【0052】
しかし、実際にバルブAが閉じたタイミングから推定される推定吸入量A24は、予定吸入量B22よりも多い。このとき、「予定吸入量A22-推定吸入量A24」によって算出される差A25の量の作動油が高圧ライン40に多く残っていることになる。
【0053】
そこで、次に吸入工程を迎えるバルブBのサイクルR2における吸入量をA25によって再度補正する。バルブBでも再び意図せぬポンピングが生じており、推定送出量B21が高圧ライン40に送出されている。このとき、「予定吸入量B22=推定送出量B21+補正量B23」としてバルブBを閉じるタイミングを設定する。補正量B23は、差A25と同量である。
【0054】
ここで、実際にバルブBが閉じたタイミングから推定される推定送出量B21は、予定吸入量B22と同量である。このとき、「予定吸入量B22-推定吸入量B24」によって算出される差は、ゼロである。すなわち、高圧ライン40への出入り量は正味ゼロになっている。当然に、低圧ライン50への出入り量も正味ゼロになっている。差が所定量以下であるとして、次のバルブCでは、補正量に基づく補正はなされない。
【0055】
なお、次に吸入工程を迎えるバルブCでも再び意図せぬポンピングが生じており、推定送出量C21が高圧ライン40に送出されている。このとき、「予定吸入量C22=推定送出量C21」としてバルブCを閉じるタイミングを設定する。
【0056】
しかし、実際にバルブCが閉じたタイミングから推定される推定吸入量C24は、予定吸入量C22よりも多い。このとき、「予定吸入量C22-推定吸入量C24」によって算出される差C25の量の作動油が高圧ライン40から減っていることになる。よって、次に吸入工程を迎えるバルブAでは、再度、差C25に基づいて補正をすることになる。
【0057】
図6の例は、予定吸入量と実際の吸入量である推定吸入量のずれを、すぐに解消しやすいという点で優れている。
図6に示す制御は、意図せぬポンピング及びそれを解消するための処理で生じたずれをすぐに解消又は低減させることができ、高圧ライン40及び低圧ライン50それぞれへの作動油の出入り量を安定して正味ゼロに近づけることができる。
【0058】
図7は、第1モードにおける吸入量の補正の別例を示す模式図である。
図7において、サイクルR3及びR4は、それぞれ、偏心カム31が1回転するサイクルを表す。また、
図7は、油圧ポンプモータ100に含まれるバルブユニット10が3つの場合の例であり、バルブA~Cはいずれも高圧バルブ12である。また、バルブA~Cに対応するバルブユニットのすべてで意図せぬポンピングが発生している。
【0059】
図7は、同じバルブ間で補正を行う例である。バルブAの意図せぬポンピングによって第1モードの制御をした結果、バルブAのサイクルR3では、推定送出量A31、予定吸入量A32、推定吸入量A34、差A35となっている。
図7の例では、バルブAの次の吸気工程におけるバルブAが閉じるタイミングを差A35に基づいて補正している。その結果、バルブAのサイクルR4では、推定送出量A41、予定吸入量A42、補正量A43、推定吸入量A44、差A45となっている。この後、バルブAの次の吸気工程におけるバルブAが閉じるタイミングを差A45に基づいて補正することになる。
【0060】
バルブBでも同様である。バルブBの意図せぬポンピングによって第1モードの制御をした結果、バルブBのサイクルR3では、推定送出量B31、予定吸入量B32、推定吸入量B34、差B35となっている。そこで、バルブBの次の吸気工程におけるバルブBが閉じるタイミングを差B35に基づいて補正している。その結果、バルブBのサイクルR4では、推定送出量B41、予定吸入量B42、補正量B43、推定吸入量B44、差B45となっている。この後、バルブAの次の吸気工程におけるバルブBが閉じるタイミングを差B45に基づいて補正することになる。
【0061】
バルブCでも同様である。バルブCの意図せぬポンピングによって第1モードの制御をした結果、バルブCのサイクルR3では、推定送出量C31、予定吸入量C32、推定吸入量C34、差C35となっている。そこで、バルブCの次の吸気工程におけるバルブCが閉じるタイミングを差C35に基づいて補正している。その結果、バルブCのサイクルR4では、推定送出量C41、予定吸入量C42、補正量C43、推定吸入量C44、差C45となっている。この後、バルブCの次の吸気工程におけるバルブCが閉じるタイミングを差C45に基づいて補正することになる。
【0062】
図7の例においても、予定吸入量と実際の吸入量である推定吸入量のずれを解消又は低減させることができ、高圧ライン40及び低圧ライン50それぞれへの作動油の出入り量を安定して正味ゼロに近づけることができる。また、
図7に示す制御は、バルブA~Cに接続されている高圧ライン40及び低圧ライン50の系統が異なる場合に、特に好適に適用できる。
【0063】
制御部60は、
図6及び
図7のような補正量の算出をせずに、第1モードにおいて、高圧ライン40からシリンダ21内に吸入される作動油が高圧ライン40に送出された作動油よりも多くなるタイミングで高圧バルブ12が閉じるように制御してもよい。再び高圧ライン40から吸入する量を、意図せぬポンピングにより高圧ライン40へ排出された量よりも常に多くなる様に調整することで、高圧ライン40の圧力上昇を生じさせない。
【0064】
この場合、高圧ライン40からの吸入量が多くなり、例えば、高圧ライン40が負圧になる。しかし、油圧ポンプモータ100の構造により高圧ライン40が大幅に負圧になることはない。具体的には、
図8に示すように、バルブユニット10Dにおいて高圧ライン40から作動油を多く吸入した場合、他のバルブユニット10A~Cにおいて、低圧ライン50の作動油が高圧ライン40へと流入することになるので、高圧ライン40が大幅に負圧になる事はない。
【0065】
以上、本開示に係る一実施形態について詳述したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。本発明には、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0066】
[付記]
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備え、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含み、
前記制御部は、前記高圧バルブの開閉を検出可能であり、
前記制御部は、前記アクチュエータを非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを実行する、
油圧ポンプモータ。
この構成によれば、無負荷アイドリング時に意図せずポンピングが起こった場合に、回路構成を複雑化させることなく、高圧ラインに接続された油圧負荷装置が意図せず動作するおそれを低減することができる。
【0067】
(2) 前記制御部は、
前記第1モードによる制御が実行された場合、前記第1モードによる制御対象であった第1高圧バルブの開放が検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインに送出されたと推定される作動油量である推定送出量を算出し、前記第1高圧バルブが閉じたことが検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインから吸入したと推定される作動油量である推定吸入量を算出し、
前記推定送出量と前記推定吸入量に差がある場合、前記複数のバルブユニットのうち前記第1高圧バルブを含む第1バルブユニットよりも後に吸入工程を迎え、かつ、前記第1モードによる制御が実行される第2バルブユニットに対して、前記第2バルブユニットに含まれる第2高圧バルブが吸入工程において閉じるタイミングを前記差に基づいて補正する、
上記(1)に記載の油圧ポンプモータ。
この構成によれば、推定送出量と実際の吸入量である推定吸入量のずれを、すぐに解消しやすい。すなわち、意図せぬポンピング及びそれを解消するための処理で生じたずれをすぐに解消又は低減させることができ、高圧ライン40及び低圧ライン50それぞれへの作動油の出入り量を安定して正味ゼロに近づけることができる。
【0068】
(3) 前記制御部は、
前記第1モードによる制御が実行された場合、前記第1モードによる制御対象であった第1高圧バルブの開放が検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインに送出されたと推定される作動油量である推定送出量を算出し、前記第1高圧バルブが閉じたことが検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインから吸入したと推定される作動油量である推定吸入量を算出し、
前記推定送出量と前記推定吸入量に差がある場合であって、前記第1高圧バルブを含む第1バルブユニットにおける次の排出工程及び次の吸入工程において前記第1モードが実行される場合、前記次の吸入工程において前記第1バルブが閉じるタイミングを前記差に基づいて補正する、
上記(1)に記載の油圧ポンプモータ。
この構成によれば、推定吸入量と実際の吸入量である推定吸入量のずれを解消又は低減させることができ、高圧ライン及び低圧ラインそれぞれへの作動油の出入り量を安定して正味ゼロに近づけることができる。また、各バルブユニットに接続されている高圧ライン及び低圧ラインの系統が異なる場合に、特に好適に適用できる。
【0069】
(4) 前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油よりも多くなるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する、
上記(1)に記載の油圧ポンプモータ。
この構成によれば、高圧ラインの圧力上昇を抑制できる。また、1つのバルブユニットにおいて高圧ラインからの吸入量が多くなって高圧ラインが負圧になったとしても、油圧ポンプモータの構造により、低圧ラインの作動油が高圧ラインへと流入することになるので、高圧ラインが大幅に負圧になることはない。結果として、高圧ラインに接続された油圧負荷装置が意図せず動作するおそれをより低減することができる。
【0070】
(5) 偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含むものであり、
前記制御部に、
前記高圧バルブの開閉を検出する検出ステップと、
前記アクチュエータを非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを行うステップと、を実行させることを含む、
油圧ポンプモータの制御方法。
この構成によれば、無負荷アイドリング時に意図せずポンピングが起こった場合に、回路構成を複雑化させることなく、高圧ラインに接続された油圧負荷装置が意図せず動作するおそれを低減することができる。
【符号の説明】
【0071】
10,10A~D:バルブユニット
11:アクチュエータ
12:高圧バルブ
14:低圧バルブ
21:シリンダ
22:ピストン
31:偏心カム
32:クランクシャフト
40:高圧ライン
50:低圧ライン
60:制御部
70:タンク
100:油圧ポンプモータ
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備え、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含み、
前記制御部は、前記高圧バルブの開閉を検出可能であり、
前記制御部は、前記アクチュエータが非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを実行する、
油圧ポンプモータ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1モードによる制御が実行された場合、前記第1モードによる制御対象であった第1高圧バルブの開放が検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインに送出されたと推定される作動油量である推定送出量を算出し、前記第1高圧バルブが閉じたことが検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインから吸入したと推定される作動油量である推定吸入量を算出し、
前記推定送出量と前記推定吸入量に差がある場合、前記複数のバルブユニットのうち前記第1高圧バルブを含む第1バルブユニットよりも後に吸入工程を迎え、かつ、前記第1モードによる制御が実行される第2バルブユニットに対して、前記第2バルブユニットに含まれる第2高圧バルブが吸入工程において閉じるタイミングを前記差に基づいて補正する、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1モードによる制御が実行された場合、前記第1モードによる制御対象であった第1高圧バルブの開放が検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインに送出されたと推定される作動油量である推定送出量を算出し、前記第1高圧バルブが閉じたことが検出されたタイミングに基づいて、前記高圧ラインから吸入したと推定される作動油量である推定吸入量を算出し、
前記推定送出量と前記推定吸入量に差がある場合であって、前記第1高圧バルブを含む第1バルブユニットにおける次の排出工程及び次の吸入工程において前記第1モードが実行される場合、前記次の吸入工程において前記第1バルブが閉じるタイミングを前記差に基づいて補正する、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油よりも多くなるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する、
請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項5】
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含むものであり、
前記制御部に、
前記高圧バルブの開閉を検出する検出ステップと、
前記アクチュエータが非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを行うステップと、を実行させることを含む、
油圧ポンプモータの制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータは、
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備え、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含み、
前記制御部は、前記高圧バルブの開閉を検出可能であり、
前記制御部は、前記アクチュエータが非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを実行する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示の一実施形態に係る油圧ポンプモータの制御方法は、
偏心カムと、
偏心カムが一回転するサイクルで前記偏心カムの回転に連動して互いに異なる時間位相にて並進運動する複数のピストンと、
前記複数のピストンにそれぞれ対応する複数のシリンダと、
前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数のバルブユニットと、
前記バルブユニットを制御する制御部と、を備える油圧ポンプモータの制御方法であって、
前記バルブユニットは、
開き方向にバネ力が付勢された低圧バルブと、
閉じ方向にバネ力が付勢された高圧バルブと、
前記制御装置からの制御信号に基づいて通電された場合、前記低圧バルブを閉じ、かつ、前記高圧バルブを開き方向に付勢させ、通電されない場合、前記低圧バルブを開放し、かつ、前記高圧バルブの開き方向の付勢を解放して前記シリンダと低圧ラインを連通させるアクチュエータと、を含むものであり、
前記制御部に、
前記高圧バルブの開閉を検出する検出ステップと、
前記アクチュエータが非通電状態で吸入工程及び排出工程を行うアイドリングモード時に前記高圧バルブの開放が検出された場合、開放が検出された前記高圧バルブに対応する前記ピストンが上死点に到達する前に前記アクチュエータに制御信号を送って前記高圧バルブの開放を維持し、前記高圧ラインから前記シリンダ内に吸入される作動油が前記高圧ラインに送出された作動油と同量になると推定されるタイミングで前記高圧バルブが閉じるように制御する第1モードを行うステップと、を実行させることを含む。